【文献】
The Journal of Biological Chemistry,1991年 6月25日,Vol.266,pp.12099-12104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スペーサーが、4番目のTNFR-Cysドメイン(TNFR-Cys 4)を含むが、このとき、以下のアミノ酸配列:NHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWが、該ドメインから除去されており、以下のアミノ酸配列:ARAにより置き換えられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のCAR。
スペーサーが、配列番号1、配列番号3、配列番号5もしくは配列番号7、またはそれらに対して少なくとも90%同一な配列からなる群より選択される配列を含む、請求項1または2に記載のCAR。
スペーサーが、配列番号1、配列番号3、配列番号5もしくは配列番号7、またはそれらに対して少なくとも90%同一な配列からなる群より選択される配列からなる、請求項1または2に記載のCAR。
腫瘍抗原が、CD44、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、メソテリン、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、CEA、MAGE A3 TCR、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項13に記載のCAR。
共刺激ドメインが、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DaplO、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40およびそれらの組合せのいずれか1以上に由来する共刺激性ドメインを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載のCAR。
細胞内シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テイル、細胞質受容体を担う免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、およびそれらの組合せのいずれか1以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載のCAR。
抗原特異的標的化ドメインがCD44v6を標的とし、膜貫通ドメインがCD28の膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインがヒトCD3ゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、かつ共刺激ドメインがCD28内因性共刺激性ドメインを含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のCAR。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の種々の好ましい特徴および実施形態を、非限定的な例によって説明する。
【0040】
本発明の実施は、特に記載しない限り、当業者の能力の範囲内である化学、生化学、分子生物学、微生物学および免疫学の慣用技術を利用するであろう。そのような技術は、文献に説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel, F.M. et al. (1995 and periodic supplements) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13 and 16, John Wiley & Sons;Roe, B., Crabtree, J., and Kahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons;Polak, J.M., and McGee, J.O’D. (1990) In Situ Hybridization: Principles and Practice, Oxford University Press;Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press;およびLilley, D.M., and Dahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology: DNA Structures Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般的な教科書のそれぞれが、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0041】
キメラ抗原受容体
本明細書中で用いる場合、「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、細胞(例えば、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞またはそれらの組み合わせなどのT細胞)に対して抗原特異性を賦与できる遺伝子操作型受容体を意味する。CARは、人工的T細胞受容体、キメラT細胞受容体またはキメラ免疫受容体としても知られる。好ましくは、本発明のCARは、抗原特異的標的化領域、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、任意により1個以上の共刺激ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0042】
抗原特異的標的化ドメイン
抗原特異的標的化ドメインは、CARに、対象となる標的抗原に結合する能力を与える。抗原特異的標的化ドメインは、好ましくは、腫瘍死滅をもたらすエフェクター免疫応答をそれに対して惹起することが望ましいであろう臨床的関心の対象である抗原を標的とする。
【0043】
抗原特異的標的化ドメインは、生物学的分子(例えば、細胞表面受容体もしくは腫瘍タンパク質、またはそれらの構成要素)を特異的に認識し、かつそれらに結合する能力を有するいずれかのタンパク質またはペプチドであり得る。抗原特異的標的化ドメインとしては、対象となる生物学的分子に対する、いずれかの天然に存在するか、合成、半合成、または組み換え的に生成された結合パートナーが挙げられる。
【0044】
例示的な抗原特異的標的化ドメインとしては、抗体または抗体断片もしくは誘導体、受容体の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体に対するリガンドまたはその受容体結合性ドメイン、および腫瘍結合性タンパク質が挙げられる。
【0045】
好ましい実施形態では、抗原特異的標的化ドメインは、抗体であるか、または抗体から誘導される。抗体由来標的化ドメインは、抗体の断片であるか、または抗体の1種以上の断片の遺伝子操作生成物であり得、該断片は抗原との結合に関与する。例としては、可変領域(Fv)、相補性決定領域(CDR)、Fab、単鎖抗体(scFv)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)およびラクダ科抗体(VHH)が挙げられる。
【0046】
好ましい実施形態では、結合性ドメインは単鎖抗体(scFv)である。scFvは、ネズミ、ヒトまたはヒト化scFvであり得る。
【0047】
抗体またはその抗原結合性断片に関して、「相補性決定領域」または「CDR」とは、抗体の重鎖または軽鎖の可変領域中の可変性の高いループを意味する。CDRは、抗原コンホメーションと相互作用することができ、抗原への結合性の大部分を決定することができる(ただし、一部のフレームワーク領域が結合性に関与することが知られている)。重鎖可変領域および軽鎖可変領域はそれぞれ、3つのCDRを含む。
【0048】
「重鎖可変領域」または「VH」とは、CDRよりも高度に保存され、CDRを支持する足場を形成するフレームワーク領域として知られる隣接ストレッチの間に存在する3つのCDRを含む、抗体の重鎖断片を意味する。
【0049】
「軽鎖可変領域」または「VL」とは、フレームワーク領域の間に存在する3つのCDRを含む抗体の軽鎖断片を意味する。
【0050】
「Fv」とは、完全な抗原結合性部位を保持する抗体の最小断片を意味する。Fv断片は、1本の重鎖の可変領域に結合した1本の軽鎖の可変領域からなる。
【0051】
「単鎖Fv抗体」または「scFv」とは、直接的にまたはペプチドリンカー配列を介して互いに連結している軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる遺伝子操作型抗体を意味する。
【0052】
腫瘍細胞表面分子に特異的に結合する抗体は、当技術分野で周知の方法を用いて作製することができる。そのような方法としては、ファージディスプレイ、ヒトもしくはヒト化抗体を作製する方法、またはヒト抗体を生成するように遺伝子操作されたトランスジェニック動物もしくは植物を用いる方法が挙げられる。部分的または完全合成抗体のファージディスプレイライブラリーが利用可能であり、標的分子に結合できる抗体またはその断片に関してスクリーニングすることができる。ヒト抗体のファージディスプレイライブラリーもまた利用可能である。特定されたら、該抗体をコードするアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を単離および/または決定することができる。
【0053】
本発明のCARにより標的とされることができる抗原の例としては、限定するものではないが、癌細胞上に発現される抗原ならびに種々の血液疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患および感染性疾患に関連する細胞上に発現される抗原が挙げられる。
【0054】
癌抗原を標的とする標的化ドメインに関して、標的化ドメインの選択は、治療対象の癌の種類に依存するであろうし、また腫瘍抗原を標的とし得る。被験体由来の腫瘍サンプルは、特定のバイオマーカーまたは細胞表面マーカーの存在について特性決定することができる。例えば、被験体由来の肺癌細胞は、Her2Neu、エストロゲン受容体、および/またはプロゲステロン受容体のそれぞれに対して陽性または陰性であり得る。個々の被験体の腫瘍細胞上に見出される腫瘍抗原または細胞表面分子が選択される。好ましくは、抗原特異的標的化ドメインは、腫瘍細胞上に見出され、かつ正常組織では実質的に見出されないか、またはその発現が非生存正常組織に限定される細胞表面分子を標的とする。
【0055】
本発明のCARにより標的とされることができる、癌に特異的なさらなる抗原としては、限定するものではないが、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ephrinB2、ROR1、メソテリン(mesothelin)、c-Met、GD-2、およびMAGE A3 TCR、4-1BB、5T4、腺癌抗原、α-フェトプロテイン、BAFF、B-リンパ腫細胞、C242抗原、CA-125、炭酸脱水酵素9(CA-IX)、CCR4、CD152、CD200、CD22、CD19、CD22、CD123、CD221、CD23(IgE受容体)、CD28、CD30(TNFRSF8)、CD33、CD4、CD40、CD44、CD44 v6、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CS-1、CEA、CNT0888、CTLA-4、DR5、EGFR、EpCAM、CD3、FAP、フィブロネクチンエキストラドメイン-B(fibronectin extra domain-B)、葉酸受容体1、GD2、GD3ガングリオシド、糖タンパク質75、GPNMB、HGF、ヒト散乱因子受容体キナーゼ(human scatter factor receptor kinase)、IGF-1受容体、IGF-I、IgGl、L1-CAM、IL-13、IL-6、インスリン様増殖因子I受容体、インテグリンα5β1、インテグリンαvβ3、MORAb-009、MS4A1、MUC1、ムチンCanAg、N-グリコリルノイラミン酸、NPC-1C、PDGF-Rα、PDL192、ホスファチジルセリン、前立腺癌細胞、RANKL、RON、SCH 900105、SDC1、SLAMF7、TAG-72、テネイシンC、TGFβ2、TGF-β、TRAIL-R1、TRAIL-R2、腫瘍抗原CTAA16.88、VEGF-A、VEGFR-1、VEGFR2またはビメンチンのうちのいずれか1種以上が挙げられる。
【0056】
本発明のCARにより標的とされることができる、炎症性疾患に特異的な抗原としては、限定するものではないが、AOC3(VAP-1)、CAM-3001、CCL11(エオタキシン-1(eotaxin-1))、CD125、CD147(ベイシジン(basigin))、CD154(CD40L)、CD2、CD20、CD23(IgE受容体)、CD25(IL-2受容体の鎖)、CD3、CD4、CD5、IFN-α、IFN-γ、IgE、IgE Fc領域、IL-1、IL-12、IL-23、IL-13、IL-17、IL-17A、IL-22、IL-4、IL-5、IL-5、IL-6、IL-6受容体、インテグリンα4、インテグリンα4β7、ラマ(Lama glama)、LFA-1(CD11a)、MEDI-528、ミオスタチン、OX-40、rhuMAb β7、スクレロスチン、SOST、TGF β1、TNF-aまたはVEGF-Aのうちのいずれか1種以上が挙げられる。
【0057】
本発明のCARにより標的とされることができる、神経障害に特異的な抗原としては、限定するものではないが、β-アミロイドまたはMABT5102Aのうちのいずれか1種以上が挙げられる。
【0058】
本発明のCARにより標的とされることができる、糖尿病に特異的な抗原としては、限定するものではないが、L-1βまたはCD3のうちのいずれか1種以上が挙げられる。糖尿病または他の代謝障害に特異的な他の抗原は、当業者には明らかであろう。
【0059】
本発明のCARにより標的とされることができる、心血管疾患に特異的な抗原としては、限定するものではないが、C5、心臓ミオシン、CD41(インテグリンα-IIb)、フィブリンII、ベータ鎖、ITGB2(CD18)およびスフィンゴシン-1-リン酸のうちのいずれか1種以上が挙げられる。
【0060】
好ましくは、抗原特異的結合性ドメインは、腫瘍抗原に特異的に結合する。具体的な実施形態では、ポリヌクレオチドは、CD44v6に特異的に結合する単鎖Fvをコードする。
【0061】
例示的な抗原特異的標的化ドメインは、Casucci M et al, Blood, 2013, Nov 14;122(20):3461-72に記載されているものなどのCD44v6特異的単鎖断片(scFv)である。そのような配列を、以下に示す:
CD44v6特異的単鎖断片(scFv)
MEAPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSASSSINYIYWLQQKPGQAPRILIYLTSNLASGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCLQWSSNPLTFGGGTKVEIKRGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISSGGSYTYYLDSIKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQGLDYWGRGTLVTVSS(配列番号17)
【0062】
一実施形態では、CD44v6特異的単鎖断片は、配列番号17に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を含む。
【0063】
さらなる好ましい実施形態では、CD44v6特異的単鎖断片の軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、以下の配列を有するペプチドリンカーを介して互いに連結されている:GGGGSGGGGS(4GS2)。そのようなCD44v6特異的単鎖断片(CD44v6-4GS2)は、以下の配列を有する:
MEAPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSASSSINYIYWLQQKPGQAPRILIYLTSNLASGVPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCLQWSSNPLTFGGGTKVEIKRGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSYDMSWVRQAPGKGLEWVSTISSGGSYTYYLDSIKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQGLDYWGRGTLVTVSS(配列番号31)
【0064】
共刺激ドメイン
本発明のCARはまた、1個以上の共刺激ドメインも含むことができる。このドメインは、メモリー細胞の細胞増殖、細胞生存および発達を促進することができる。
【0065】
それぞれの共刺激ドメインが、例えば、TNFRスーパーファミリーのメンバー、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DaplO、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-1、TNFR-II、Fas、CD30、CD40またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1種以上の共刺激ドメインを含む。他のタンパク質由来の共刺激ドメインを、本発明のCARと共に用いることもできる。追加の共刺激ドメインは、当業者には明らかであろう。
【0066】
一実施形態では、膜貫通ドメインと共刺激ドメインの両方がCD28に由来する。一実施形態では、膜貫通ドメインおよび細胞内共刺激ドメインは、以下の配列を含む:
ヒトCD28の膜貫通部分および細胞内部分(UNIPROT:P10747、CD28_HUMAN、153〜220位)
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号18)
【0067】
一実施形態では、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号18に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を含む。
【0068】
一実施形態では、CD28の膜貫通ドメインは、配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号29)を含む。
【0069】
一実施形態では、CD28の細胞内共刺激ドメインは、配列RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号30)を含む。
【0070】
細胞内シグナル伝達ドメイン
本発明のCARは、細胞内シグナル伝達ドメインもまた含むことができる。このドメインは、細胞質側であり得、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞にその特化した機能を発揮させることができる。細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、限定するものではないが、T細胞受容体のζ鎖またはそのホモログのうちのいずれか(例えば、η鎖、FcεR1γおよびβ鎖、MB1(Igα)鎖、B29(Igβ)鎖等)、CD3ポリペプチド(Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP70等)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lyn等)およびT細胞形質導入に関与する他の分子(CD2、CD5およびCD28など)が挙げられる。細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テイル、および細胞質受容体を担う(bearing cytoplasmic receptors)免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)またはそれらの組み合わせであり得る。
【0071】
好ましくは、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0072】
一実施形態では、ヒトCD3ゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインは、以下の配列を含む:
UNIPROT:P20963、CD3Z_HUMAN、31〜143位
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号20)
【0073】
一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号20に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を含む。
【0074】
追加の細胞内シグナル伝達ドメインは当業者には明らかであろうし、かつ本発明の代替的実施形態との関連で用いることができる。
【0075】
膜貫通ドメイン
本発明のCARは、膜貫通ドメインもまた含むことができる。膜貫通ドメインは、I型、II型またはIII型膜貫通タンパク質のうちのいずれかをはじめとする膜貫通ドメインを有するいずれかのタンパク質由来の膜貫通配列を含むことができる。本発明のCARの膜貫通ドメインはまた、人工的疎水性配列も含むことができる。本発明のCARの膜貫通ドメインは、二量体化しないように選択することができる。追加の膜貫通ドメインは当業者には明らかであろう。CAR構築物中で用いられる膜貫通(TM)領域の例は、以下の通りである:(1) CD28 TM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41;Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35;Casucci et al, Blood, 2013, Nov 14;122(20):3461-72.);(2) OX40 TM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41);(3) 41BB TM領域(Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35);(4) CD3ゼータTM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41;Savoldo B, Blood, 2009, Jun 18;113(25):6392-402.);(5) CD8a TM領域(Maher et al, Nat Biotechnol, 2002, Jan;20(1):70-5.;Imai C, Leukemia, 2004, Apr;18(4):676-84;Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35;Milone et al, Mol Ther, 2009, Aug;17(8):1453-64.)。
【0076】
一実施形態では、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインの両方がCD28に由来する。一実施形態では、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインは、以下の配列を含む:
ヒトCD28の膜貫通部分および細胞内部分(UNIPROT:P10747、CD28_HUMAN、153〜220位)
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号18)
【0077】
一実施形態では、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号18に対して少なくとも85%、90%、95%、97%、98%または99%の同一性を含む。
【0078】
スペーサードメイン - 低親和性神経成長因子(LNGFR)
本発明のCARは、細胞外スペーサードメインを含む。細胞外スペーサードメインは、抗原特異的標的化領域および膜貫通ドメインに連結される。
【0079】
本発明のCARは、ヒト低親和性神経成長因子(LNGFR)の細胞外ドメインの少なくとも一部分またはその誘導体を含む細胞外スペーサーを含む。
【0080】
LNGFRは、大部分のヒト造血細胞で発現されず、それにより、単一細胞解像度での免疫蛍光による形質導入遺伝子発現の定量的分析が可能になる。つまり、LNGFRの発現の蛍光活性化細胞ソーター(fluorescence activated cell sorter)分析を、遺伝子発現を調べるために、形質導入された細胞で行なうことができる。LNGFRを用いた分析についてのさらなる詳細は、Mavilio 1994, Blood 83, 1988-1997に見出すことができる。
【0081】
ヒトLNGFRの配列は、
図8に示される(配列番号14)。
【0082】
一実施形態での本発明は、切断型LNGFR(ΔLNGFRとしても知られる)を用いる。好ましくは、本発明で用いられるLNGFRは、その細胞質内ドメインで切断されている。そのような切断は、Mavilio 1994に記載されている。
【0083】
つまり、好ましくは、本発明のLNGFRスペーサーは、細胞外ドメインの少なくとも一部分またはその誘導体を含むが、LNGFRの細胞内ドメインは欠損している。細胞外ドメインは、LNGFRのアミノ酸29〜250またはその誘導体を含むことができる。
ヒトLNGFRの細胞外ドメイン(UNIPROT # P08138、TNR16_HUMAN、29〜250位)
KEACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEANHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWADAECEEIPGRWITRSTPPEGSDSTAPSTQEPEAPPEQDLIASTVAGVVTTVMGSSQPVVTRGTTDN(配列番号19)
【0084】
好ましくは、LNGFRはシグナルペプチドを欠損している。
【0085】
一実施形態では、スペーサーは、LNGFRの細胞外ドメイン(例えば、配列番号19)に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するタンパク質の少なくとも一部分を含む。一実施形態では、スペーサーは、LNGFRタンパク質のアミノ酸29〜250に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するタンパク質の少なくとも一部分を含む。
【0086】
LNGFRは、4個のTNFR-Cysドメイン(TNFR-Cys 1、TNFR-Cys 2、TNFR-Cys 3およびTNFR-Cys 4)を含む。ドメインの配列を、以下に例示する:
TNFR-Cys 1、配列番号9
ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC
TNFR-Cys 2、配列番号10
PCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVC
TNFR-Cys 3、配列番号11
RCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVC
TNFR-Cys 4、配列番号12
ECPDGTYSDEANHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWADAEC
【0087】
一実施形態では、スペーサーは、TNFR-Cys 1、2および3ドメインまたはその断片もしくは誘導体を含む。別の実施形態では、スペーサーは、TNFR-Cys 1、2、3および4ドメインまたはその断片もしくは誘導体を含む。
【0088】
一実施形態では、スペーサーは、TNFR-Cys 1(配列番号9)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性もしくは100%の同一性を有する配列、TNFR-Cys 2(配列番号10)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性もしくは100%の同一性を有する配列、またはTNFR-Cys 3(配列番号11)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性もしくは100%の同一性を有する配列を含む。スペーサーは、TNFR-Cys 4(配列番号12)に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性もしくは100%の同一性を有する配列をさらに含むことができる。
【0089】
完全なTNFR-Cys 4ドメインを含む代わりに、スペーサーは、該ドメインから以下のアミノ酸が欠失しているTNFR-Cys 4ドメインを含むことができる:NHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRW。一実施形態では、このNHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWアミノ酸は、以下のアミノ酸で置き換えられている:ARA。
【0090】
一実施形態では、スペーサーはLNGFRセリン/トレオニンリッチストークを欠失している。別の実施形態では、スペーサーはLNGFRセリン/トレオニンリッチストークを含む。
【0091】
スペーサーは、配列番号1の配列、または配列番号1に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する配列を含むかまたは該配列からなることができる。
【0092】
スペーサーは、配列番号3の配列、または配列番号3に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する配列を含むかまたは該配列からなることができる。
【0093】
スペーサーは、配列番号5の配列、または配列番号5に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する配列を含むかまたは該配列からなることができる。
【0094】
スペーサーは、配列番号1の配列、または配列番号7に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する配列を含むかまたは該配列からなることができる。
【0095】
スペーサーは、CARを発現する細胞、好ましくはT細胞の免疫選択が可能となる性質を、CARに賦与することができる。
【0096】
本発明のCAR(本明細書中で参照されるスペーサーを含む)は、好ましくは、CARを発現するT細胞が、それに対してCARが設計されている抗原を発現する細胞の存在下で増殖することを可能にする。
【0097】
本発明のCAR(本明細書中で参照されるスペーサーを含む)は、好ましくは、CARを発現するT細胞が、CARが標的とするべく設計されている癌に対する治療上顕著な抗癌作用を媒介することを可能にする。
【0098】
本発明のCAR(本明細書中で参照されるスペーサーを含む)は、好ましくは、該CARが形質導入されている細胞の免疫選択を促進するために好適である。
【0099】
LNGFRベースのスペーサーを含む本発明のCARは、望ましくなくかつ毒性である可能性があるオフターゲットの免疫応答の活性化を回避し、かつCAR発現T細胞が未熟な状態で宿主免疫系により排除されることなくin vivoで存続することを可能にする。
【0100】
下記の通り、本発明はまた、本明細書中に記載されるスペーサーエレメントの変異体、誘導体、ホモログおよび断片の使用も包含する。
【0101】
誘導体および断片
本明細書中で言及される具体的なタンパク質、ペプチドおよびヌクレオチドに加えて、本発明はその誘導体および断片の使用をも包含する。
【0102】
本発明のタンパク質またはポリペプチドに関して、本明細書中で用いる場合、用語「誘導体」は、その配列からの、あるいはその配列への1個(またはそれ以上)のアミノ酸残基のいずれかの置換、変異、改変、置き換え、欠失および/または付加を含み、ただし、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドが所望の機能を保持するものである。
【0103】
典型的には、アミノ酸置換、例えば1、2または3〜10または20箇所の置換を施してよく、ただし、改変された配列が必要な活性または能力を保持することを条件とする。アミノ酸置換は、天然に存在しないアナログの使用を含むことができる。
【0104】
本発明で用いられるタンパク質またはペプチドは、サイレントな変化を引き起こし、機能的に等価なタンパク質を生じさせるアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有することもできる。内在性の機能が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質の類似性に基づいて、意図的なアミノ酸置換を施すことができる。例えば、負荷電アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正荷電アミノ酸には、リジンおよびアルギニンが含まれ;ならびに、同等の親水性値を有する非荷電極性頭部基(head group)を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、およびチロシンが含まれる。
【0105】
例えば下記の表に従って、保存的置換を施すことができる。第2欄の同一ブロックおよび好ましくは第3欄の同一行のアミノ酸を互いに置換することができる:
【表1】
【0106】
誘導体はホモログであり得る。本明細書中で用いる場合、用語「ホモログ」は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列との一定の相同性を有する物体を意味する。用語「相同性」は、「同一性」と同一視することができる。
【0107】
相同配列は、対象配列に対して、少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であり得るアミノ酸配列を含むことができる。典型的には、ホモログは、対象アミノ酸配列と同じ活性部位等を含むであろう。相同性は類似性(すなわち、類似の化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)に関して考慮することもできるが、本発明の文脈では、配列同一性に関して相同性を表現することが好ましい。
【0108】
相同配列は、対象配列に対して、少なくとも50%、55%、65%、75%、85%または90%同一、好ましくは少なくとも95%または97%または99%同一であり得るヌクレオチド配列を含むことができる。相同性は類似性に関して考慮することもできるが、本発明の文脈では、配列同一性に関して相同性を表現することが好ましい。
【0109】
相同性比較は、目視により、または、より一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて行なうことができる。これらの市販のコンピュータプログラムは、2種以上の配列間の相同性%または同一性%を算出することができる。
【0110】
相同性%は、連続的な配列にわたって算出することができ、すなわち、一方の配列を他方の配列とアライメントし、一方の配列中のそれぞれのアミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と、一度に1残基ずつ、直接的に比較する。これは、「ギャップなし」(ungapped)アライメントと称される。典型的には、そのようなギャップなしアライメントは、比較的短い残基数に対してのみ行われる。
【0111】
これは非常にシンプルかつ一貫性のある方法ではあるが、例えば、その他の箇所では同一である配列のペアでの、ヌクレオチド配列中の1箇所の挿入または欠失が、その後のコドンをアライメントから除外することになる場合があり、つまり、全体的なアライメントを行なう際には、相同性%の大幅な減少を引き起こす可能性があることを考慮に入れていない。その結果、大多数の配列比較法が、全体的な相同性スコアに過剰にペナルティを課すことなく、考えられる挿入および欠失を考慮に入れた最適なアライメントをもたらすように設計されている。これは、局所的相同性を最大化しようとするために、配列アライメント中に「ギャップ」を挿入することにより達成される。
【0112】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、アライメント中に生じる各ギャップに対して「ギャップペナルティ」を割り当て、それにより、同数の同一アミノ酸に対して、2種類の比較されている配列間でのより高い関連性を反映するできるだけ少ないギャップを有する配列アライメントが、多数のギャップを有するものよりも高いスコアを達成するであろう。ギャップの存在に対して相対的に高いコストを課し、かつギャップ中のそれぞれの後続残基に対しては小さいペナルティを課す「アフィンギャップコスト」(Affine gap cost)が、典型的に用いられる。これは、最も一般的に用いられるギャップスコア付けシステムである。高いギャップペナルティは、当然、より少ないギャップを有する最適化されたアライメントを生じる。大多数のアライメントプログラムは、ギャップペナルティを変更できる。しかしながら、配列比較のためにそのようなソフトウェアを用いる場合には、デフォルト値を用いることが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを用いる場合、アミノ酸配列に関するデフォルトギャップペナルティは、ギャップに対して−12であり、それぞれの伸長に対して−4である。
【0113】
したがって、最大相同性%の算出は、最初に、ギャップペナルティを考慮に入れた最適アライメントの作成を必要とする。そのようなアライメントを行なうために最適なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(米国ウィスコンシン大学;Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 387)である。配列比較を行なうことができる他のソフトウェアの例としては、限定するものではないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) 同書、Ch. 18を参照されたい)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)およびGENEWORKS比較ツールスイートが挙げられる。BLASTおよびFASTAの両方が、オフラインおよびオンライン検索に対して利用可能である(Ausubel et al. (1999) 同書、7-58〜7-60ページを参照されたい)。しかしながら、一部の用途では、GCG Bestfitプログラムを用いるのが好ましい。BLAST 2 Sequencesと称される別のツールもまた、タンパク質およびヌクレオチド配列を比較するために利用可能である(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174: 247-50;FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177: 187-8を参照されたい)。
【0114】
最終的な相同性%は同一性に関して測定することができるが、アライメントプロセスそれ自体は、典型的には、全か無かのペア比較には基づいていない。その代わりに、化学的類似性または進化距離に基づくペアワイズ比較それぞれに対してスコアを割り当てる、スケーリングされた類似性スコアマトリックス(scaled similarity score matrix)が広く用いられている。一般的に用いられるそのようなマトリックスの例はBLOSUM62マトリックスであり、これは、BLASTプログラムスイートに対するデフォルトマトリックスである。GCG Wisconsinプログラムは、一般的に、公開のデフォルト値か、または、提供されている場合にはカスタムシンボル比較表のいずれかを利用する(さらなる詳細については、ユーザーマニュアルを参照されたい)。一部の用途では、GCGパッケージに関しては公開のデフォルト値を、または他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62などのデフォルトマトリックスを用いるのが好ましい。
【0115】
ソフトウェアが最適なアライメントを作成したら、相同性%、好ましくは配列同一性%を算出することが可能である。ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一部としてこれを行ない、数値的結果を生成する。
【0116】
断片とは、典型的には、機能上の関心の対象であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域を意味する。つまり、「断片」とは、全長ポリペプチドの一部分であるアミノ酸配列または全長ポリヌクレオチドの一部分である核酸配列を意味する。断片は機能上の関心の対象であり、例えば、所望の機能性を保持するので、したがって、例えば単一アミノ酸または単一核酸は除外されるであろう。
【0117】
そのような誘導体および断片は、部位特異的突然変異誘発などの標準的な組み換えDNA技術を用いて作製することができる。挿入を行なう場合には、挿入部位の両側の天然に存在する配列に対応する5’および3’隣接領域と共に挿入部分をコードする、合成DNAを作製することができる。隣接領域は、該配列を適切な酵素で切断して、切断部に合成DNAをライゲーションできるように、天然に存在する配列中の部位に対応する便利な制限部位を含むであろう。続いて、DNAを、本発明に従って発現させ、コードされるタンパク質を生成させる。これらの方法はDNA配列の取り扱いのために当技術分野で公知の多数の標準的技術の単なる例示であり、他の公知の技術もまた用いることができる。
【0118】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含むことができる。ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であり得る。遺伝的コードの縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが同じポリペプチドをコードし得ることは、当業者には理解されるであろう。加えて、当業者は、日常的な技術を用いて、本発明のポリペプチドが発現されないいずれかの特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映させるために、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド配列に影響しないヌクレオチド置換を生じさせることができることが、理解されるべきである。
【0119】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能ないずれかの方法により修飾することができる。本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強するために、そのような修飾を行なうことができる。
【0120】
DNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、組み換え的に、合成により、または当業者にとって利用可能ないずれかの手段により作製することができる。ポリヌクレオチドはまた、標準的技術によりクローニングすることもできる。
【0121】
比較的長いポリヌクレオチドは、一般的に、組み換え手段、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を用いて作製されるであろう。これは、クローニングが望まれる標的配列に隣接する一対のプライマー(例えば、約15〜30ヌクレオチドのもの)を作製するステップ、プライマーを、動物またはヒト細胞から取得したmRNAまたはcDNAと接触させるステップ、所望の領域の増幅を引き起こす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行なうステップ、増幅された断片を単離するステップ(例えば、アガロースゲルを用いて反応混合物を精製することにより)、および増幅されたDNAを回収するステップを含むことができる。好適な制限酵素認識部位を含むようにプライマーを設計することができ、それにより、増幅されたDNAを好適なベクター中にクローニングできるようになる。
【0122】
コドン最適化
本発明で用いられるポリヌクレオチドは、コドン最適化することができる。コドン最適化は、国際公開第1999/41397号および同第2001/79518号に以前に記載されている。異なる細胞は、特定のコドンの使用頻度が異なる。このコドンの偏りは、細胞タイプ中の特定のtRNAの相対的存在量の偏りに対応する。配列中のコドンを、対応するtRNAの相対的存在量に合致するように変化させることにより、発現を増大させることが可能である。同様に、特定の細胞タイプ中で対応するtRNAが稀であることが知られているコドンを意図的に選択することにより、発現を低下させることができる。つまり、追加の段階の翻訳制御を行なうことができる。
【0123】
ベクター
ベクターは、ある環境から別の環境への物質の移動を可能にするかまたは促進するツールである。本発明に従って、かつ一例として、組み換え核酸技術で用いられるいくつかのベクターは、物質、例えば核酸のセグメント(例えば異種DNAセグメント、例えば異種cDNAセグメント)が標的細胞に移動することを可能にする。ベクターは、非ウイルスベクターまたはウイルスベクターであり得る。組み換え核酸技術で使用されるベクターの例としては、限定するものではないが、プラスミド、mRNA分子(例えば、in vitro転写mRNA)、染色体、人工染色体およびウイルスが挙げられる。ベクターはまた、例えば、裸の核酸(例えば、DNA)であり得る。最も簡潔な形態では、ベクターは、対象となるヌクレオチドそのものであり得る。
【0124】
本発明で用いられるベクターは、例えば、プラスミド、mRNAまたはウイルスベクターであり得、かつ、ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーターおよび任意によりプロモーターの調節因子を含むことができる。
【0125】
本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは、形質転換および形質導入などの当技術分野で公知の様々な技術を用いて細胞に導入することができる。数種類の技術が当技術分野で公知であり、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルスおよび単純ヘルペスウイルスベクターなどの組み換えウイルスベクターの感染;核酸の直接注入およびバイオリスティック(biolistic)形質転換がある。
【0126】
非ウイルス送達系としては、限定するものではないが、DNAトランスフェクション法が挙げられる。ここでは、トランスフェクションは、標的細胞に遺伝子を送達するための非ウイルスベクターを用いるプロセスを含む。
【0127】
典型的なトランスフェクション法としては、エレクトロポレーション、DNAバイオリスティック、脂質媒介トランスフェクション、凝縮DNA媒介トランスフェクション、リポソーム、免疫リポソーム、リポフェクチン、カチオン性薬剤媒介トランスフェクション、カチオン性表面両親媒性物質(cationic facial amphiphile;CFA)(Nat. Biotechnol. (1996) 14: 556)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0128】
レトロウイルスベクター
一実施形態では、本発明で使用されるベクターは、ウイルスが標的細胞に侵入した後、複製できず、子孫の感染性ウイルス粒子を産生できないように遺伝子操作されているレトロウイルスに基づくベクターである。組織培養条件および生存生物中の両方での遺伝子の送達に広く使用される多数のレトロウイルスが存在する。例としては、限定するものではないが、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、フジナミ肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス-29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)およびレンチウイルスをはじめとするすべての他のレトロウイルス科が挙げられる。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin et al., 1997, “retroviruses”, Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds: JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus pp 758-763に見出すことができる。
【0129】
レトロウイルスゲノムの基本構造は、5’LTRおよび3’LTRと、その間またはその範囲内に、ゲノムのパッケージングを可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、宿主細胞ゲノムへのインテグレーションを可能にするインテグレーション部位およびパッケージング構成要素をコードするgag、polおよびenv遺伝子(これらはウイルス粒子のアセンブリに必要なポリペプチドである)が位置する。さらに複雑なレトロウイルスは、HIVのrevおよびRRE配列などの追加の特徴を有し、これらは、インテグレートされたプロウイルスのRNA転写産物の、感染した標的細胞の核から細胞質への効率的な輸送を可能にする。
【0130】
プロウイルスでは、これらの遺伝子には、長鎖末端反復配列(LTR)と称される領域がその両端につながっている。LTRはプロウイルスのインテグレーション、および転写を担う。LTRはエンハンサー-プロモーター配列としても働き、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。レトロウイルスRNAのカプシド形成は、ウイルスゲノムの5’末端に位置するpsi配列を用いて行なわれる。
【0131】
LTR自体は同一の配列であり、それはU3、RおよびU5と称される3つのエレメントに分けることができる。U3はRNAの3’末端に特有の配列に由来する。RはRNAの両端で反復される配列に由来し、U5はRNAの5’末端に特有の配列に由来する。前記3つのエレメントのサイズは種々のレトロウイルス間でかなり変動し得る。
【0132】
欠損レトロウイルスベクターゲノムでは、gag、polおよびenvは存在しないか、または機能的でない場合がある。RNAの両端のR領域は反復配列である。U5およびU3はそれぞれRNAゲノムの5’および3’末端に特有の配列を表わす。
【0133】
より好ましくは、ウイルスベクターは標的化ベクターであり、すなわち、それは生来型のウイルスと比較して改変された組織親和性を有し、それによりベクターが特定の細胞に標的化される。標的化はレトロウイルスEnvタンパク質を改変することによって達成することができる。好ましくは、エンベロープタンパク質は、無毒なエンベロープまたは主要な標的細胞内で無毒な量で産生されることができるエンベロープ、例えばMMLV広宿主性エンベロープまたは改変型広宿主性エンベロープである。
【0134】
好ましくは、エンベロープはヒト細胞への形質導入を可能にするエンベロープである。好適なenv遺伝子の例としては、限定するものではないが、VSV-G、MLV広宿主性env、例えば4070A env、RD114ネコ白血病ウイルスenvまたはインフルエンザウイルス由来の赤血球凝集素(HA)が挙げられる。Envタンパク質は、限られた数のヒト細胞タイプの受容体に結合することができ、また、標的化部分を含む遺伝子操作されたエンベロープであり得る。envおよびgag-polコード配列は、選択されたパッケージング細胞株にて活性なプロモーターおよび任意によりエンハンサーから転写され、転写ユニットはポリアデニル化シグナルによって終結する。例えば、パッケージング細胞がヒト細胞である場合、好適なプロモーター-エンハンサーの組み合わせはヒトサイトメガロウイルス主要前初期(hCMV-MIE)遺伝子由来のものであり、かつSV40ウイルス由来のポリアデニル化シグナルを用いることができる。他の好適なプロモーターおよびポリアデニル化シグナルは、当技術分野で公知である。
【0135】
MLV
好ましくは、本発明で使用されるレトロウイルスベクターはマウス白血病ウイルス(MLV)ベクターである。広宿主性モロニーマウス白血病ウイルス(MLV-A)由来のレトロウイルスベクターは世界中の臨床プロトコールで一般的に使用されている。これらのウイルスは細胞表面リン酸輸送体受容体を侵入に使用し、次いで増殖性細胞の染色体に恒久的にインテグレートされる。その後、遺伝子は細胞の寿命期間にわたって維持される。MLVに基づく構築物上の遺伝子活性は制御が容易であり、かつ長期間にわたって有効であり得る。これらのMLVに基づく系を用いて行われる臨床試験では、その耐容性が良好であり、有害な副作用がないことが示されている。
【0136】
本発明での使用のためのMLVベクターの一例は、SFCMM-3由来のベクターであり、このベクターは自殺遺伝子HSV-tkおよびマーカー遺伝子ΔLNGFRの両者を担持する(Verzeletti 98, Human Gene Therapy 9:2243)。SFCMM-3の作製に使用される元のベクターはLXSNである(Miller et al. Improved retroviral vectors for gene transfer and expression. BioTechniques 7:980-990, 1989)(Genebank登録番号#28248)。LXSNベクターは、唯一のHpaI部位(「平滑末端切断」)にHSV-tk遺伝子を挿入し、HindIIIおよびNaeIで消化することによってneo遺伝子を除去し、その部位にΔLNGFRをコードするcDNAを挿入することによって改変された。
【0137】
レンチウイルスベクター
一実施形態では、本発明のベクターはレンチウイルスベクターであり得る。レンチウイルスベクターはレトロウイルスベクターの大きな群の一部分である。レンチウイルスの詳細なリストはCoffinら(“Retroviruses” 1997 Cold Spring Harbour Laboratory Press Eds: JM Coffin, SM Hughes, HE Varmus pp 758-763)に見出すことができる。簡潔には、レンチウイルスは霊長類群および非霊長類群に分類することができる。霊長類レンチウイルスの例としては、限定するものではないが:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルス群には、原型「スローウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連するヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)およびさらに近年報告されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が含まれる。
【0138】
レンチウイルスファミリーと他の種類のレトロウイルスとの相違は、レンチウイルスが分裂細胞および非分裂細胞の両者に感染する能力を有することである。対照的に、他のレトロウイルス、例えばMLVは、例えば、筋肉、脳、肺および肝臓組織を構成する細胞などの、非分裂性細胞または緩やかに分裂する細胞には感染することができない。レンチウイルスは最終分化細胞/初代細胞に形質導入することができるので、レンチウイルスによるスクリーニングストラテジーの使用により、主要な標的である非分裂性宿主細胞または緩やかに分裂する宿主細胞でのライブラリーの選択が可能となる。
【0139】
アデノウイルスベクター
別の実施形態では、本発明のベクターはアデノウイルスベクターであり得る。アデノウイルスは二本鎖の直線状DNAウイルスであり、RNA中間体を経由しない。50種を超える種々のヒト血清型のアデノウイルスが存在し、遺伝子配列相同性に基づいて6亜群に分類される。アデノウイルスの天然の標的は呼吸上皮および消化管上皮であり、一般的に軽度の症状しか生じさせない。アデノウイルスベクター系では、血清型2型および5型(95%の配列相同性を有する)が最も一般的に使用され、通常それらは若年者の上気道感染症に関連する。
【0140】
アデノウイルスはエンベロープを有さず、正二十面体(icosohedrons)である。典型的なアデノウイルスは140nmのカプシドに包まれたDNAウイルスを含む。二十面体の対称性のウイルスは、152個のカプソメア(capsomere):240個のヘキソンおよび12個のペントンから構成される。粒子のコアは36kb直線状二重鎖DNAを含有し、これは5’末端で末端タンパク質(TP)と共有結合しており、DNA複製のためのプライマーとして働く。前記DNAは逆方向末端反復配列(ITR)を有し、それらの長さは血清型によって異なる。
【0141】
アデノウイルスはエンベロープを有しない二本鎖DNAのウイルスであり、ヒトおよび非ヒト起源の広範囲の細胞タイプへのin vivoおよびin vitro形質導入が可能である。これらの細胞には、呼吸気道上皮細胞、肝細胞、筋細胞、心筋細胞、滑膜細胞、初代乳房上皮細胞および分裂後の最終分化細胞、例えば神経細胞が含まれる。
【0142】
アデノウイルスベクターはまた、非分裂細胞に形質導入することが可能である。このことは、肺上皮中の罹患細胞が緩やかなターンオーバー速度を有する嚢胞性線維症などの疾患に関して非常に重要である。実際、成人の嚢胞性線維症罹患患者の肺への嚢胞性線維症輸送体(CFTR)のアデノウイルス媒介導入を利用する複数の治験が進行中である。
【0143】
アデノウイルスは遺伝子療法および異種遺伝子の発現用のベクターとして用いられてきた。その大きな(36キロベースの)ゲノムは8kbまでの外来性挿入DNAを収容することができ、補完細胞株で効率的に複製して、最大で10
12の非常に高い力価を得ることができる。つまり、アデノウイルスは、初代非複製細胞で遺伝子の発現を研究するために最良な系の1つである。
【0144】
アデノウイルスゲノムからのウイルス遺伝子または外来遺伝子の発現は、複製中の細胞を必要としない。アデノウイルスベクターは受容体媒介性のエンドサイトーシスによって細胞に侵入する。細胞の内側に入った後、アデノウイルスベクターが宿主染色体にインテグレートされることはめったにない。その代わりに、エピソームとして(宿主ゲノムから独立して)、宿主の核中の直線状ゲノムとして機能する。したがって、組み換えアデノウイルスの使用は、宿主ゲノムへのランダムなインテグレーションに関連する問題を軽減させる。
【0145】
ポックスウイルスベクター
そのゲノムに大きなDNA断片を容易にクローニングすることができ、また、組み換え弱毒化ワクシニア変異体が報告されているので、本発明に従ってポックスウイルスベクターを用いることができる(Meyer, et al., 1991;Smith and Moss, 1983)。
【0146】
ポックスウイルスベクターの例としては、限定するものではないが、レポリポックスウイルス:Upton, et al., 1986,(ショープ線維腫ウイルス);カプリポックスウイルス:Gershon, et al., 1989,(ケニアヒツジ-1(Kenya sheep-1));オルソポックスウイルス:Weir, et al., 1983,(ワクシニア);Esposito, et al.,1984,(サル痘および天然痘ウイルス);Hruby, et al., 1983,(ワクシニア);Kilpatrick, et al., 1985,(ヤバサル腫瘍ウイルス);アビポックスウイルス:Binns, et al.,(1988)(鶏痘);Boyle, et al., 1987,(鶏痘);Schnitzlein, et al., 1988,(鶏痘,ウズラ痘);エントモポックス(Lytvyn, et al., 1992)が挙げられる。
【0147】
ポックスウイルスベクターは、真核細胞での目的の遺伝子に関する発現運搬体として広く使用される。種々の宿主細胞でのそのクローニングおよび増殖の容易さにより、特に、外来タンパク質の発現用に、およびワクチン抗原の送達運搬体として、ポックスウイルスベクターが広く使用されている。
【0148】
ワクシニアウイルスベクター
本発明のベクターは、ワクシニアウイルスベクター、例えばMVAまたはNYVACであり得る。最も好ましいのは、ワクシニア株の改変型ウイルスであるアンカラ(MVA)またはその派生株である。ワクシニアベクターの代替物には、アビポックスベクター、例えば鶏痘またはALVACとして公知のカナリア痘およびその派生株が含まれ、それらはヒト細胞に感染し、組み換えタンパク質を発現することができるが、複製することができない。
【0149】
細胞
本発明はまた、本発明のCARを含みかつこれを安定的に発現する遺伝子操作型細胞も提供する。
【0150】
抗原特異的標的化ドメインは、その様式ではT細胞受容体が通常は結合しない抗原に、MHC非拘束性の様式で特異的に結合することが可能であり得る。一実施形態では、抗原特異的標的化領域は、標的特異的抗体またはその機能的等価物もしくは断片もしくは誘導体を含む。抗原特異的抗体は、抗体のFab断片または抗体の単鎖可変断片(scFv)であり得る。
【0151】
本発明のCARを含みかつそれを発現し得る遺伝子操作型細胞としては、限定するものではないが、T細胞、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、ナチュラルキラー細胞、造血幹細胞および/または治療的に関連する子孫を生じさせることが可能な細胞が挙げられる。一実施形態では、遺伝子操作型細胞は、自家細胞である。例としては、本発明の個々のT細胞は、CD4+/CD8-、CD4-/CD8+、CD4-/CD8-またはCD4+/CD8+であり得る。T細胞は、CD4+/CD8-細胞およびCD4-/CD8+細胞の混合集団、または単一クローンの集団であり得る。
【0152】
遺伝子操作型細胞は、本発明のCARをコードするDNAを用いて細胞を安定的にトランスフェクトすることにより作製できる。
【0153】
様々な方法が、本発明のCARを発現する安定なトランスフェクト細胞を生じる。一実施形態では、細胞を安定的にトランスフェクトし、かつ転換させる方法は、裸のDNAを用いるエレクトロポレーションによるものである。裸のDNAを用いることにより、転換された細胞を生成するのに必要な時間が著しく減少し得る。本発明のCARをコードする裸のDNAを用いて細胞を遺伝子操作するための追加の方法としては、限定するものではないが、化学的形質転換法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソームおよび/またはカチオン性ポリマーを用いる方法)、非化学的形質転換法(例えば、エレクトロポレーション、光学的形質転換、遺伝子エレクトロトランスファーおよび/または流体力学的送達)および/または粒子に基づく方法(例えば、インペールフェクション(impalefection)、遺伝子銃を用いる方法および/またはマグネトフェクション(magnetofection))が挙げられる。単一のインテグレーションされた未再構成ベクターの存在およびCARの発現を示すトランスフェクションされた細胞は、ex vivoで増殖させることができる。一実施形態では、ex vivo増殖のために選択された細胞は、CD8+であり、かつ抗原特異的標的細胞を特異的に認識および溶解する能力を示す。
【0154】
ウイルス形質導入法もまた、本発明のCARを発現する転換細胞を作製するために用いることができる。
【0155】
適切な条件下での抗原によるT細胞の刺激は、細胞の増殖(拡大)および/またはIL-2の産生をもたらす。本発明のCARを含む細胞は、CARの抗原特異的標的化領域に対する1種以上の抗原の結合に応答して数を増やすであろう。本発明はまた、CARを発現する細胞を作製および増殖させる方法も提供する。該方法は、(1)少なくともCD3に特異的な活性化ポリペプチド(polipeptide)(好ましくは抗体)およびCD28に特異的な活性化ポリペプチド(polipeptide)(好ましくは抗体)を含有する無細胞足場(好ましくは最適なサイズのビーズ)などのポリクローナルな刺激;(2)標的抗原を発現する腫瘍細胞;(3)天然の人工的抗原提示細胞、を用いて細胞を刺激するステップ、およびIL-2、IL-7、IL-15、IL-21をはじめとするサイトカインを単独でまたは組み合わせて用いて細胞を培養するステップの後に、CARを発現するベクターを用いて細胞をトランスフェクションまたは形質導入するステップを含むことができる。
【0156】
治療法および医薬組成物
それを必要とする被験体での本発明のCARにより標的とされる抗原に関連する疾患を治療するための方法が、本明細書中に提供される。該方法は、被験体での抗原に関連する疾患を治療できるように、有効量のCAR、CARを発現するポリヌクレオチドもしくはベクター、または該CARを発現する細胞を投与するステップを含む。
【0157】
本発明のCARを含む医薬組成物もまた提供される。組成物中の本発明のCARは、CARをコードするポリヌクレオチド、CARをコードするベクター、CARを含むタンパク質またはCARを含む遺伝的に改変された細胞のうちのいずれか1種以上であり得る。
【0158】
医薬組成物は、治療上有効量の製薬上活性な薬剤を含むか、またはそれからなる組成物である。医薬組成物は、好ましくは、製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤(それらの組み合わせを含む)を含む。治療用途に関して許容される担体または希釈剤は製薬分野において周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。製薬用担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準的な製薬上の実務に鑑みて選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤または希釈剤として、またはそれに加えて、いずれかの好適な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤または可溶化剤を含むことができる。
【0159】
製薬上許容される担体の例としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ワックス、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン(viscous paraffin)、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、石油(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]ヒト低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)の細胞外ドメインの少なくとも一部分またはその誘導体を含む細胞外スペーサーを含むキメラ抗原受容体(CAR)。
[実施形態2]LNGFRの少なくとも一部分が、該CARが形質導入された細胞の免疫選択および同定を促進するために好適である、実施形態1に記載のCAR。
[実施形態3]スペーサーが、LNGFRの細胞内ドメインを欠失している、実施形態1または2に記載のCAR。
[実施形態4]細胞外スペーサーが、LNGFRの最初の3個のTNFR-Cysドメインまたはその断片もしくは誘導体を含む、実施形態1〜3のいずれかに記載のCAR。
[実施形態5]スペーサーが、LNGFRの4個すべてのTNFR-Cysドメインまたはその断片もしくは誘導体を含む、実施形態4に記載のCAR。
[実施形態6]スペーサーが、4番目のTNFR-Cysドメイン(TNFR-Cys 4)を含むが、このとき、以下のアミノ酸配列:NHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWが、該ドメインから除去されており、以下のアミノ酸配列:ARAにより置き換えられている、実施形態1〜5のいずれかに記載のCAR。
[実施形態7]スペーサーがLNGFRのセリン/トレオニンリッチストークを含む、実施形態1〜6のいずれかに記載のCAR。
[実施形態8]スペーサーがLNGFRのセリン/トレオニンリッチストークを欠失している、実施形態1〜6のいずれかに記載のCAR。
[実施形態9]スペーサーがLNGFRの細胞外ドメイン全体を含む、実施形態1〜3のいずれかに記載のCAR。
[実施形態10]スペーサーが、LNGFRの細胞外ドメインのセリン/トレオニンリッチストークを除く該細胞外ドメインを含む、実施形態1〜3のいずれかに記載のCAR。
[実施形態11]スペーサーが、配列番号1、配列番号3、配列番号5もしくは配列番号7、またはそれらに対して少なくとも90%同一な配列からなる群より選択される配列を含む、実施形態1〜3のいずれかに記載のCAR。
[実施形態12]スペーサーが、配列番号1、配列番号3、配列番号5もしくは配列番号7、またはそれらに対して少なくとも90%同一な配列からなる群より選択される配列からなる、実施形態1〜3のいずれかに記載のCAR。
[実施形態13]以下のドメイン:
(i)抗原特異的標的化ドメイン;
(ii)実施形態1〜12のいずれかに規定される細胞外スペーサードメイン;
(iii)膜貫通ドメイン;
(iv)任意により少なくとも1つの共刺激ドメイン;および
(v)細胞内シグナル伝達ドメイン
を含むキメラ抗原受容体(CAR)。
[実施形態14]抗原特異的標的化ドメインが抗体またはその断片を含む、実施形態13に記載のCAR。
[実施形態15]抗原特異的標的化ドメインが単鎖可変断片を含む、実施形態14に記載のCAR。
[実施形態16]抗原特異的標的化ドメインが腫瘍抗原を標的とする、実施形態13〜15のいずれかに記載のCAR。
[実施形態17]腫瘍抗原が、CD44、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、メソテリン、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、CEA、MAGE A3 TCR、およびそれらの組合せからなる群より選択される、実施形態16に記載のCAR。
[実施形態18]腫瘍抗原がCD44のアイソフォーム6(CD44v6)である、実施形態16に記載のCAR。
[実施形態19]膜貫通ドメインが、T細胞受容体複合体のゼータ鎖の膜貫通ドメイン、CD28およびCD8a、およびそれらの組合せのいずれか1以上を含む、実施形態13〜18のいずれかに記載のCAR。
[実施形態20]共刺激ドメインが、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DaplO、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40およびそれらの組合せのいずれか1以上に由来する共刺激性ドメインを含む、実施形態13または19に記載のCAR。
[実施形態21]細胞内シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テイル、細胞質受容体を担う免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、およびそれらの組合せのいずれか1以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、実施形態13〜20のいずれかに記載のCAR。
[実施形態22]抗原特異的標的化ドメインがCD44v6を標的とし、膜貫通ドメインがCD28の膜貫通ドメインを含み、細胞内シグナル伝達ドメインがヒトCD3ゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、かつ共刺激ドメインがCD28内因性共刺激性ドメインを含む、実施形態13〜21のいずれかに記載のCAR。
[実施形態23]実施形態1〜22のいずれかに記載のCARをコードするポリヌクレオチド。
[実施形態24]実施形態23に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[実施形態25]ベクターがウイルスベクターである、実施形態24に記載のベクター。
[実施形態26]実施形態1〜22のいずれかに記載のCAR、実施形態23に記載のポリヌクレオチド、または実施形態24もしくは25に記載のベクターを含む細胞。
[実施形態27]細胞がT細胞である、実施形態26に記載の細胞。
[実施形態28]実施形態26または27に記載の細胞を含む医薬組成物。
[実施形態29]癌の治療での使用のための、実施形態13〜22のいずれかに記載のCAR、実施形態23に記載のポリヌクレオチド、実施形態24もしくは25に記載のベクター、または実施形態26もしくは27に記載の細胞。
[実施形態30]CD44を発現する腫瘍の治療での使用のための、実施形態22に記載のCAR、該CARをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、または該CAR、ポリヌクレオチドもしくはベクターを含む宿主細胞。
【実施例】
【0160】
実施例1:方法
LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z構築物の作製
LNGFRに基づくスペーサーの配列を、シグナルペプチドを除いた、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)の細胞外部分から誘導した(P08138、TNR16_HUMAN)。野生型長型(NWL)設計は、4個のTNFRシステインリッチドメインとセリン/トレオニンリッチストークの両方を含む。野生型短型(NWS)設計は、4個のTNFRシステインリッチドメインのみを含む。突然変異型長型(NML)設計は、4個のTNFRシステインリッチドメイン、セリン/トレオニンリッチストークを含み、かつNGFに対する結合を回避するための4番目のドメイン中の特定の改変を含む(Yan et al, J Biol Chem, 1991, Jun 25;266(18):12099-104)。突然変異型短型(NMS)設計は、4番目のドメイン中の特定の改変を含む4個のTNFRシステインリッチドメインのみを含む。スペーサーはGENEART社により合成され、特異的制限部位(BamH1およびPflMI)が隣接し、それにより、IgG1 CH2CH3スペーサーの代わりに、本発明者らの独自のCD44v6特異的第二世代CAR構築物(
図9;配列番号15)へとクローニングすることが可能になった。すべての構築物が、ヒトでの発現に対してコドン最適化されている。すべての構築物を、SFG-RV骨格(一般的に用いられるスプライシングMoMLVベースのレトロウイルスベクター(Riviere et al, PNAS, 1995, Jul 18;92(15):6733-7))中で発現させた。
【0161】
スペーサーLNGFR野生型長型(NWL):
タンパク質配列(配列番号1)
【0162】
ヌクレオチド配列(配列番号2)
【0163】
スペーサーLNGFR野生型短型(NWS):
タンパク質配列(配列番号3)
【0164】
ヌクレオチド配列(配列番号4)
【0165】
スペーサーLNGFR突然変異型長型(NML):
タンパク質配列(配列番号5)
【0166】
ヌクレオチド配列(配列番号6)
【0167】
スペーサーLNGFR突然変異型短型(NMS):
タンパク質配列(配列番号7)
【0168】
ヌクレオチド配列(配列番号8)
【0169】
凡例:
下線:TNFRシステインリッチドメイン1番目
太字:TNFRシステインリッチドメイン2番目
太字かつ下線:TNFRシステインリッチドメイン3番目
斜体:TNFRシステインリッチドメイン4番目
斜体かつ下線:セリン/トレオニンリッチストーク
【0170】
形質導入および培養条件
T細胞を、細胞サイズのCD3/CD28ビーズ(ClinExVivo、Invitrogen社)およびIL-7/IL-15(5ng/mL、Peprotech社)を用いて活性化し、刺激後2日目および3日目での2ラウンドの遠心接種(spinoculation)によりRVを形質導入した。6日目に、ビーズを除去し、T細胞をRPMI1640(Gibco-Brl社)10%FBS(BioWhittaker社)中にてIL-7およびIL-15の存在下で培養した。CH2CH3スペーサー介在CD44v6特異的CAR構築物(CHWおよびCHM)の表面発現はIgG1 CH2CH3スペーサーに対して特異的なmAb(Jackson Laboratories社)を用いて検出し、LNGFRスペーサー介在CD44v6特異的CAR構築物(NWL、NWS、NMLおよびNMS)の表面発現はLNGFR特異的mAb(BD Bioscience社から(Clone: C40-14579)またはMiltenyi社から(Clone: ME20.4))を用いて分析した。活性化後9日目から15日目の間、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞はポリクローナルIgG1 CH2CH3特異的mAbを用いてFACSソーティングし、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞はPEコンジュゲート化LNGFR特異的mAbであるC40-14579を用いて染色し、かつ抗PE常磁性ビーズ(Miltenyi社)を用いたカラムによりソーティングした。ソーティング後のT細胞増殖を、増加倍率として表わしている:x日目のT細胞数/ソーティング後のT細胞数。
【0171】
特異的認識を分析するためのin vitroアッセイ
共培養アッセイでは、CARソーティングされたT細胞を、標的細胞と共に、様々なE:T比で培養した。4日後、生存細胞を、FACSによりカウントおよび分析した。無関係なCAR(CD19)を形質導入されたT細胞を、対照として常に用いた。排除指数を以下のように算出した:1−(CD44v6.CAR28z+ T細胞の存在下での残留標的細胞数)/(CTR.CAR28z+ T細胞の存在下での残留標的細胞数)。CFSE希釈アッセイでは、CARソーティングされたT細胞にCFSEをロードし、照射済み(10,000rad)腫瘍細胞を用いてE:S比=1:5にて、または生物学的に活性な濃度のNGFを用いて刺激した。6日後、T細胞増殖を、CFSE色素を希釈した細胞の割合(%)を分析することにより、FACSによって測定した。
【0172】
抗腫瘍有効性の異種移植モデル
実験プロトコールは、米国動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee;IACUC)により承認された。最小残存病変モデル(minimal-residual disease model)に関して、NSGマウス(Jackson社)に1.5×10
6個のTHP1白血病細胞/マウスをi.v.注入した。3日後、マウスを、5×10
6個のソーティングされたLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞または無関係なCAR(CD19)を担持するT細胞を用いてi.v.処置した。T細胞の生着を、採血およびFACS分析により週に1回モニタリングした。7週間後、マウスを屠殺し、その肝臓を、THP-1細胞の存在について組織病理学およびFACSにより分析した。十分に確立された疾患モデルに関して、NSGマウスに2×10
6個のMM1.S骨髄腫細胞/マウスをi.v.注入した。5週間後、マウスを、5×10
6個のソーティングされたLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞または無関係なCAR(CD19)を担持するT細胞を用いてi.v.処置した。T細胞生着および骨髄腫進行を、採血およびFACS分析により週に1回モニタリングした(骨髄腫細胞は、異なるヒトCD45/CD3表現型に従って、T細胞とは区別されるであろう)。循環MM1.S細胞が30細胞/μLを超え、かつ/またはマウスが腫瘍に関連する苦痛の明らかな徴候を示した場合(麻痺状態または10%超の体重減少)、マウスを安楽死させた。
【0173】
フローサイトメトリー
FACS分析のために、本発明者らは、ヒトCD44v6、CD4(e-Bioscience社)、CD123、CD19、CD14、CD3、CD8、CD45RA、CD62L、CXCR4、CD127、CD33、CD38、CD45、LNGFR、マウスCD45、7AAD(BD Biosciences社)およびIgG1 CH2CH3(Jackson laboratories社)に対するFITC、PE、PerCP、PE-Cy7、APC、APC-Cy7およびパシフィックブルーコンジュゲート化抗体を用いた。細胞(2×10
5個)を、4℃にて15分間、抗体と共にインキュベートし、PBS 1%FBSを用いて洗浄した。サンプルをFACS Canto IIフローサイトメーター(BD Biosciences社)にかけ、Flow Joソフトウェア(Tree star Inc)を用いてデータを分析した。相対的蛍光強度(RFI)を、以下の通りに算出した:サンプルの平均蛍光強度/対応するアイソタイプ対照の平均蛍光強度。
【0174】
実施例2:LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z構築物の作製
本発明者らは、近年、CD28の内因性共刺激ドメイン(endo-costimulatory domain)と組み合わせたCD3ζ鎖に基づくCD44v6特異的CARを構築した(Casucci et al, Blood 2013, Nov 14;122(20):3461-72)。このCARの細胞外スペーサー領域には、IgG1 CH2CH3スペーサーが、CD44v6抗原のよりよい標的化のために、そして形質導入されたT細胞の選択およびin vivo追跡を可能にするために、挿入された。しかしながら、CH2CH3スペーサー介在CARの重大な欠点は、それらがFcγ受容体(FcγR)と相互作用することであり(Hombach et al, Gene Ther 2000, Jun;7(12):1067-75)、これは、潜在的に、これらの受容体を発現する細胞(例えば、単球/マクロファージ)の非特異的な標的化および/または形質導入されたT細胞のin vivoクリアランスをもたらす(
図1A)。この問題を回避するために、本発明者らは、元のCH2CH3スペーサーを、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)由来の種々の細胞外ドメインと置き換えた。細胞内シグナル伝達構成要素を欠損したLNGFRの切断型は、T細胞の遺伝子マーキングのために既に臨床的に用いられている(Bonini et al, Nat Med, 2003, Apr;9(4):367-9;Ciceri et al, Lancet Oncol, 2009, May;10(5):489-500)。LNGFRの細胞外部分は、4個のTNFRシステインリッチ領域および1個のセリン/トレオニンリッチストークから構成される(
図1B)。まず初めに、本発明者らは、2種類のCD44v6-CAR.28z構築物を作製した:一方はLNGFRの細胞外部分全体によりスペーサー介在されており(LNGFR野生型長型またはNWL)、他方は4個のTNFRシステインリッチ領域のみによりスペーサー介在されている(LNGFR野生型短型またはNWS)。天然リガンドNGFを介するLNGFRスペーサー介在構築物の抗原非依存的活性化の可能性を除外するために、本発明者らは、NGFシグナル伝達を取り消すことが知られている4番目のTNFRシステインリッチドメインの特定の欠失を担持する2種類の追加のCD44v6-CAR.28z構築物を作製し(Yan et al, J Biol Chem, 1991, Jun 25;266(18):12099-104)、それによりLNGFR突然変異型長型アイソフォームまたはNMLおよびLNGFR突然変異型短型アイソフォームまたはNMSをそれぞれ生成した。対照として、本発明者らは、FcγRIを認識することができない突然変異型の元のCH2CH3スペーサー(CHM)を含むCD44v6-CAR.28z構築物も作製した(Hombach et al, Gene Ther 2000, Jun;7(12):1067-75)。意外なことに、FcγRIIおよびFcγRIIIの両方が、この共通セット以外の残基を用いることができ、このことは、この突然変異が結合性を完全に無効にするわけではないことを示唆する(Shields et al, J Biol Chem, 2001, Mar 2;276(9):6591-604;Armour et al, Mol Immunol, 2003, Dec;40(9):585-93)。
【0175】
実施例3:LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z構築物は、形質導入されたT細胞を選択および追跡するために用いることができる
種々のLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z構築物を、初代T細胞に形質導入するためにレトロウイルスベクター(RV)へとクローニングした。形質導入のために、T細胞を、それらの機能的表現型をよりよく保存するプロトコールに従って、CD3/CD28ビーズおよびIL-7/IL-15を用いて活性化した(Kaneko et al, Blood, 2009, Jan 29;113(5):1006-15;Bondanza et al, Blood 2011, Jun 16;117(24):6469-78;Cieri et al, Blood, 2013, Jan 24;121(4):573-84)。形質導入後、すべての構築物は、抗LNGFR mAb C40-1457を用いてT細胞表面上で特定することができ(
図2A)、このことは、これらが適正にプロセシングされ、細胞膜上に埋め込まれ、かつ、最も重要なことに、抗NGFR mAbにより認識されたことを示す。結果として、種々のLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞を、免疫磁性ビーズを用いてソーティングすることができた(
図2B)。より詳しく調べたところ、本発明者らは、NWLスペーサー介在アイソフォームのみが、別の抗LNGFR mAbであるME20.4に結合することを見出し、これにより、種々の長さのLNGFRスペーサーにより決定づけられるコンホメーション変化が、ME20.4エピトープのアクセス可能性を制御し得ることが示唆された。重要なことに、種々のLNGFRスペーサー介在細胞の増殖動態は、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞のものと似通っており(
図2B)、このことは、CAR上に搭載された細胞外LNGFR配列により引き起こされる潜在的な増殖上の有利さを除外する。培養終了時に、結果として生じた集団は、早期分化型T細胞に富んでおり(
図2C)、これはIL-7/IL-15の存在下でのビーズ活性化T細胞の機能的分化経路に関する干渉がないことを示す。
【0176】
実施例4:LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞はCD44v6特異的認識を保持し、一方でFcγRとの相互作用により媒介される非特異的認識を欠損する
元のCH2CH3スペーサーをLNGFRスペーサーと置換した後にCD44v6特異的認識が保存されていることを確認するために、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞を、CD44v6発現腫瘍細胞との共培養実験で調べた。CH2CH3スペーサー介在細胞と同様に、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞は、CD44v6陽性腫瘍細胞(MM1S細胞株およびTHP-1細胞株)を効率的に排除したが、CD44v6陰性腫瘍細胞(BV173細胞株)は排除しなかった(
図3A)。さらに、CD44v6特異的認識は、活発なT細胞増殖を伴い(
図3B)、このことは、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞の治療可能性の完全な保存を示唆する。したがって、本発明に従うLNGFRスペーサー介在CARは、それらが標的とする特異的抗原を発現する腫瘍モデルに対して、結果として有効となる。
【0177】
FcRγとの相互作用により媒介される非特異的認識の欠如を実証するために、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞を、CD44v6陽性/FcγR陽性THP1白血病細胞またはCD44v6陰性/FcγR陽性HL-60白血病細胞と共培養した。この系では、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞はCD44v6陽性THP1細胞およびCD44v6陰性HL-60細胞の両方を排除したが、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z CAR T細胞はCD44v6陽性THP-1細胞を特異的に排除し、CD44v6陰性HL-60細胞を排除しなかった(
図4A)。対応して、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z CAR T細胞は、CD44v6陽性THP-1細胞に応答して増殖したが、CD44v6陰性HL-60細胞には応答しなかった(
図4B)。両方の系で、LNGFRスペーサー介在細胞の挙動は、突然変異型CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z CAR T細胞のものと重ね合わせることができ、このことは、FcγR媒介作用の解消を実証した。
【0178】
したがって、スペーサーとして定常免疫グロブリンIgG1ヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインを用いなかったことにより、本発明のLNGFR由来スペーサーを含むCARは、IgG Fcガンマ受容体に結合せず、つまり、望ましくなくかつ潜在的に毒性であるオフターゲットの免疫応答を防ぐ。それにより、LNGFRスペーサー介在CARは、IgGヒンジ-CH2-CH3を含むものよりも安全である。
【0179】
最後に、可溶性NGFを介した抗原非依存性刺激を除外するために、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR28.z T細胞を、NGFと共にin vitroで培養した。LNGFR発現神経細胞株PC12の分化を強制することが知られている(
図5A)生理的濃度を超えるNGF濃度であってさえ、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z CAR T細胞は増殖を誘導されず(
図5B)、このことは、可溶性NGFを介したシグナル伝達が存在しないことを示した。
【0180】
実施例5:LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞はin vivoでより良好に持続し、優れた抗腫瘍作用を媒介する
in vitroでの効率的かつ特異的な認識が実証された後、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞を、最初は最小残存病変モデルで、次いで十分に確立された疾患(WED)モデルで、in vivoでの抗腫瘍活性に関して調べた。最初のモデルでは、NSGマウスにTHP-1白血病細胞を注入し、3日後にCH2CH3スペーサー介在細胞または種々のLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞を用いて処置した。種々のLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞は、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞よりもよく増殖し(
図6A)、かつ持続した(
図6B)。したがって、LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞は、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞を注入されたマウスと比較して、THP1浸潤肝臓重量のより良好な標準化により実証される通り、優れた抗腫瘍作用を媒介するようである(
図6C)。2番目の十分に確立された疾患モデルでは、NSGマウスにCD44v6発現MM1.S骨髄腫細胞を注入し、5週間後に、腫瘍が骨髄に定着してから、CH2CH3スペーサー介在細胞または様々なLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞を用いて処置した。NMLアイソフォームを担持するCD44v6-CAR.28z T細胞もまた含められた。このより厳格なモデルでは、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞がほとんど生着せず、かついかなる顕著な抗腫瘍作用も媒介しなかった一方で、様々なLNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞は増殖し(
図7A)、持続して著しい抗腫瘍活性を生じた(
図7B)。
【0181】
LNGFRスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞が優れた抗腫瘍活性を媒介する能力は、分泌型ルシフェラーゼを発現するCD44v6+ MM1.S細胞を用いた十分に確立された骨髄腫モデルを使用してさらに確認された。このルシフェラーゼの存在は、CH2CH3スペーサー介在(v6 CHW)またはNMS LNGFRスペーサー介在(v6 NMS)CD44v6-CAR.28z T細胞を用いて処置したマウスでの循環MM1.S腫瘍細胞の量を毎日モニタリングすることを可能にする。このチャレンジモデルでは、CH2CH3スペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞が無関連のCAR T細胞(CTR)のものと同じ抗腫瘍活性を示した一方で、NMSスペーサー介在CD44v6-CAR.28z T細胞は21日間まで循環腫瘍細胞の数を抑制することができ(
図7-2のA)、かつ全体的な生存を著しく延長することができる(
図7-2のB)。
【0182】
実施例6:方法
LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z構築物およびCEA-CAR.28z構築物の作製
実施例1に記載されたものと類似の戦略を用いて、CD19特異的CAR構築物およびCEA特異的CAR構築物を作製した(
図22)。以下の構築物が作製された:
CD19-CAR.28z:CD19特異的標的化ドメイン、CD3ζ鎖とこれに組み合わせられたCD28内因性共刺激ドメインおよび野生型IgG1 CH2CH3スペーサー(CH2CH3)を担持する
NWL:LNGFR野生型長型スペーサー(4個のTNFR-Cysドメインおよびストークを含む)を担持するCD19-CAR.28z
NMS:LNGFR突然変異型短型スペーサー(4番目のドメインに欠失を有する4個のTNFR-Cysドメインを含む)を担持するCD19-CAR.28z
CEA-CAR.28z:CEA特異的標的化ドメイン、CD3ζ鎖とこれに組み合わせられたCD28内因性共刺激ドメインおよび野生型IgG1 CH2CH3スペーサー(CH2CH3)を担持する
NWL:LNGFR野生型長型スペーサー(4個のTNFR-Cysドメインおよびストークを含む)を担持するCEA-CAR.28z
NMS:LNGFR突然変異型短型スペーサー(4番目のドメインに欠失を有する4個のTNFR-Cysドメインを含む)を担持するCEA-CAR.28z。
【0183】
形質導入および培養条件
T細胞を、細胞サイズのCD3/CD28ビーズ(ClinExVivo、Invitrogen社)およびIL-7/IL-15(5ng/mL、Peprotech社)を用いて活性化し、刺激後2日目および3日目での2ラウンドの遠心接種(spinoculation)によりRVを形質導入した。6日目に、ビーズを除去し、T細胞をRPMI1640(Gibco-Brl社)10%FBS(BioWhittaker社)中にてIL-7およびIL-15の存在下で培養した。CH2CH3スペーサー介在CD19およびCEA特異的CAR構築物(CHW)の表面発現はIgG1 CH2CH3スペーサーに対して特異的なmAb(Jackson Laboratories社)を用いて検出し、LNGFRスペーサー介在CAR構築物(NWLおよびNMS)の表面発現はLNGFR特異的mAb(BD Bioscience社から(Clone: C40-14579))を用いて分析した。活性化後9日目から15日目の間、CH2CH3スペーサー介在CAR.28z T細胞はポリクローナルIgG1 CH2CH3特異的mAbを用いてFACSソーティングし、LNGFRスペーサー介在CAR.28z T細胞はPEコンジュゲート化LNGFR特異的mAbであるC40-14579を用いて染色し、かつ抗PE常磁性ビーズ(Miltenyi社)を用いたカラムによりソーティングした。
【0184】
特異的認識を分析するためのin vitroアッセイ
共培養アッセイでは、CARソーティングされたT細胞を、標的細胞と共に、1:10のE:T比で培養した。4日後、生存細胞を、FACSによりカウントおよび分析した。排除指数を以下のように算出した:1−(CD44v6-4GS2.CAR28z+ T細胞、CD19.CAR28z+T細胞およびCEA.CAR28z+ T細胞の存在下での残留標的細胞数)/(CTR.CAR28z+ T細胞の存在下での残留標的細胞数)。24時間のインキュベーション後に共培養物の上清を回収し、サイトカイン産生(IFNy、IL-2およびTNFα)に関して、CBAアッセイ(BD Biolegend社)を用いて分析した。
【0185】
抗腫瘍有効性の異種移植モデル
最小残存病変モデルに関して、NSGマウス(Jackson社)に1.5×10
6個のALL-CM白血病細胞/マウスをi.v.注入した。3日後、マウスを、5×10
6個のソーティングされたLNGFRスペーサー介在(NWL、NMS)CD19-CAR.28zまたはCD44v6-4GS2.CAR.28z T細胞を用いてi.v.処置した。T細胞の生着を、採血およびFACS分析により週に1回モニタリングした。7週間後、マウスを屠殺し、その骨髄(BM)を、抗hCD45 mAbおよび抗hCD19 mAbを用いて、ALL-CM細胞の存在についてFACSにより分析した。
【0186】
実施例7:LNGFRスペーサー介在CAR.28z構築物は、形質導入されたT細胞を選択および追跡するために用いることができる
種々のLNGFRスペーサー介在CAR.28z構築物を、初代T細胞に形質導入するためにレトロウイルスベクター(RV)へとクローニングした。形質導入のために、T細胞を、それらの機能的表現型をよりよく保存するプロトコールに従って、CD3/CD28ビーズおよびIL-7/IL-15を用いて活性化した(Kaneko et al, Blood, 2009, Jan 29;113(5):1006-15;Bondanza et al, Blood 2011, Jun 16;117(24):6469-78;Cieri et al, Blood, 2013, Jan 24;121(4):573-84)。形質導入後、免疫磁性ビーズを用いてT細胞をソーティングすることができ(
図23)、このことは、CD44v6抗原を標的とするCARを用いて示された通り、LNGFR由来スペーサーが、CD19抗原およびCEA抗原に特異的な2種類の別のCARの場合でも、適正にプロセシングされ、かつ細胞膜上に埋め込まれたことを示している。
【0187】
実施例8:LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞、CEA-CAR.28z T細胞およびCD44v6-4GS2.CAR.28z T細胞は抗原特異的認識を保持し、一方でFcγRとの相互作用により媒介される非特異的認識を欠損する
元のCH2CH3スペーサーをLNGFRスペーサーと置換した後にCD19およびCEA特異的認識が保存されていることを確認するために、LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞およびCEA-CAR.28z T細胞を、抗原発現腫瘍細胞との共培養実験で調べた。CH2CH3スペーサー介在細胞と同様に、LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞、CEA-CAR.28z T細胞およびCD44v6-4GS2.CAR.28z T細胞は、CD19+、CEA+およびCD44v6+腫瘍細胞をそれぞれ効率的に排除し、抗原陰性腫瘍細胞は容認(spare)した(
図24A)。特に、LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z CAR T細胞はCD19+のALL-CM細胞およびBV-173細胞を特異的に排除したが、CD19-のHL-60細胞およびBXPC3細胞は排除しなかった(
図24A)。同様に、LNGFRスペーサー介在CEA-CAR.28z T細胞はCEA+のBXPC3細胞を特異的に排除したが、CEA-のHL-60細胞、ALL-CM細胞およびBV-173細胞は排除せず(
図24A)、またCD44v6-4GS2.CAR.28z T細胞はCD44v6+のBXPC3細胞を特異的に排除したが、CD44v6-のALL-CM細胞、BV173細胞およびHL-60細胞は排除しなかった(
図24A)。同等の結果が、抗原特異的サイトカイン放出(IFNy、IL2およびTNFα)を評価した場合に得られた(
図24B)。
【0188】
本発明に従うLNGFRをスペーサーとして含むCARは、種々の抗原特異的標的化ドメインについて特異性および抗腫瘍作用の保持をもたらす
FcRγとの相互作用により媒介される非特異的認識の欠如を実証するために、LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞、CEA-CAR.28z T細胞およびCD44v6-4GS2.CAR.28z T細胞を、FcγR+、CD19-、CEA-のHL-60細胞と共培養した。この系では、CH2CH3スペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞およびCEA-CAR.28z T細胞のみがHL-60標的細胞を排除することができ、つまり、LNGFRに基づくスペーサーの使用が、望ましくない生来型の免疫応答の活性化を回避することを確認する。
【0189】
実施例12:LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞はin vivoでの抗腫瘍活性を媒介する
in vitroでの効率的かつ特異的な認識が実証された後、LNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞を、最小残存病変モデルで、in vivoでの抗腫瘍活性に関して調べた(challenge)。NSGマウスにALL-CM白血病細胞を注入し、3日後に種々のLNGFRスペーサー介在(NWLおよびNMS)CD19-CAR.28z T細胞を用いて処置した。この場合、ALL-CM白血病細胞はCD44v6抗原を発現しないので、LNGFRスペーサー介在(NWLおよびNMS)CD44v6-4GS2.CAR.28z T細胞を陰性対照として用いた(
図25)。CD44v6-CAR.28z T細胞を注入されたマウスと比較して、より低い濃度のALL-CM細胞が骨髄に浸潤することにより実証される通り、両方のLNGFRスペーサー介在CD19-CAR.28z T細胞が抗腫瘍作用を媒介するようである(
図25)。
【0190】
上記の明細書で言及されるすべての刊行物は、参照により本明細書中に組み入れられる。記載された本発明のCAR、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞および組成物の種々の改変およびバリエーションが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態との関連で説明してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明は、そのような具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるはずである。実際に、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連する分野の当業者には明らかである、本発明を実施するための記載された様式の種々の改変が、以下の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。