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特許6684789液化ガスを冷却するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684789
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】液化ガスを冷却するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20200413BHJP
   F25B 19/00 20060101ALI20200413BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20200413BHJP
   F25D 7/00 20060101ALI20200413BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20200413BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20200413BHJP
   B63B 27/34 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   F17C9/02
   F25B19/00 A
   F25D3/10 Z
   F25D7/00 A
   B63B25/08 Z
   B63B27/24 A
   B63B27/34
【請求項の数】30
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-524369(P2017-524369)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公表番号】特表2018-501439(P2018-501439A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】FR2015053020
(87)【国際公開番号】WO2016075399
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】1460857
(32)【優先日】2014年11月10日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1554430
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】デルトレ ブルーノ
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01353112(EP,A1)
【文献】 英国特許出願公告第01188826(GB,A)
【文献】 国際公開第2007/032220(WO,A1)
【文献】 米国特許第01750434(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0174106(US,A1)
【文献】 特表2008−519210(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0166170(US,A1)
【文献】 特公昭51−047812(JP,B1)
【文献】 特開2003−185289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/02
B63B25/08
B63B27/24
B63B27/34
F25B19/00
F25D 3/10
F25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガス、エタン、および、液化石油ガスから選択される液化ガスを冷却する気化装置(4)において、
液化ガス(3)で充填されるコンテナ(2、19)の内部スペースに設けられる気化チャンバー(14)と、
前記コンテナ(2、19)の内部スペースに設けられ、当該コンテナ(2、19)から液相の液化ガスのフローを回収する吸入口、および、前記気化チャンバー(14)の内部スペースに設けられ、前記回収されたガスフローを膨張させるヘッドロスメンバー(1)を備えた、注入回路(5)と、
気相で前記気化チャンバー(14)から気相ガス利用回路(8)に前記回収されたガスフローを排出するために設けられた排出回路(7)と、を有し、
前記気化チャンバー(14)は、前記気化チャンバー(14)の内部スペースと前記コンテナ(2、19)の内部スペースに存在する液化ガス(3)との間で熱交換を可能にする熱交換壁(6)を備え、
前記排出回路(7)は、前記ガスフローを前記気化チャンバー(14)に吸入し、前記ガスフローを前記気相ガス利用回路(8)に排出して、前記気化チャンバー(14)内部において大気圧よりも低い絶対圧力を維持することが可能な真空ポンプ(9)を備えている
ことを特徴とする気化装置。
【請求項2】
前記真空ポンプ(9)は、120〜950hPaの絶対圧力下で前記気化チャンバー(14)内を循環する前記ガスフローを配置することができる
ことを特徴とする請求項1に記載の気化装置。
【請求項3】
前記注入回路(5)は、前記ヘッドロスメンバー(13)の上流に、圧力調整器17を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の気化装置。
【請求項4】
前記注入回路(5)は、前記ヘッドロスメンバー(13)の上流に、追加ポンプ(33)を有し、
前記追加ポンプ(33)は、液相の液化ガスのフローを吸入し、前記コンテナ(2、19)の内部スペース内でし得流体静力学的よりも大きな排出圧力を前記注入回路(5)の吸入口で発生させることができる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の気化装置。
【請求項5】
前記注入回路(5)は、前記追加ポンプ(33)の下流に設けられる圧力調整器(17)をさらに有し、
前記圧力調整器(17)は、前記注入回路(5)で前記追加ポンプ(33)によって排出される前記液化ガスの圧力を前記追加ポンプ(33)の排出圧力よりも低い閾値圧力に制限することができる
ことを特徴とする請求項4に記載の気化装置。
【請求項6】
前記注入回路(5)は、スプレーノズルで構成された複数のヘッドロスメンバー(13)を有し、
前記スプレーノズルは、前記液化ガスを前記気化チャンバー(14)内に吹き付けることができる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の気化装置。
【請求項7】
前記熱交換壁(6)は、前記気化チャンバー(14)の交換面を増加させることを目的とするフィン(15)を有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の気化装置。
【請求項8】
前記気化装置は、前記気化チャンバー(14)に関連して、回収された液化ガスの重質留分を回収および排出する装置(24)を有する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の気化装置。
【請求項9】
前記気化チャンバー(14)は、斜面を有し、
前記液化ガスの重質留分を回収および排出する装置(24)は、重力で前記重質留分を集めるために、前記気化チャンバー(14)の低位置に連結された容器(25)を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の気化装置。
【請求項10】
前記容器(25)は、弁、ダクト、逆止弁(31)、または、トラップ(29)によって、前記気化チャンバー(14)に連結されている
ことを特徴とする請求項9に記載の気化装置。
【請求項11】
前記液化ガスの重質留分回収および排出する装置(24)は、前記容器(25)に連結された排出ダクト(26)をさらに有し、
前記排出ダクト(26)は、前記容器(25)から前記コンテナ(2、19)または重質留分調整装置まで延びている
ことを特徴とする請求項9または10に記載の気化装置。
【請求項12】
前記排出ダクト(26)は、前記排出ダクト(26)を通って、液相の前記重質留分を排出するポンプ(27)を備えている
ことを特徴とする請求項11に記載の気化装置。
【請求項13】
前記液化ガスの重質留分を回収および排出する装置(24)は、前記重質留分を気化させるために、前記容器(25)の内部スペースを加熱することが可能な加熱装置をさらに有し、
前記排出ダクト(26)は、気相の前記重質留分を排出することができる
ことを特徴とする請求項11に記載の気化装置。
【請求項14】
前記排出ダクト(26)は、弁または逆止弁(30)を介して前記容器(25)に連結され、
前記容器(25)の内部スペースは、前記気化装置の前記排出回路(7)に接続され、
前記排出回路(7)は、Yカップリングを介して流体供給装置に連結され、前記排出回路(7)を通って流体を前記容器(25)に排出して、前記容器(25)に収容されている前記重質留分を前記排出ダクト(26)に排出することができる
ことを特徴とする請求項11に記載の気化装置。
【請求項15】
前記気化装置(4)は、上流で前記気化チャンバー(14)に、下流で前記排出回路(7)に連結される追加熱交換器(34)をさらに有し、
前記追加熱交換器(34)は、少なくとも部分的に前記液化ガス(3)で充填されることを目的とする前記コンテナ(2)の内部スペースの上部に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の気化装置。
【請求項16】
前記気化装置(4)は、第1バイパスライン(36)と、前記気化チャンバー(14)を前記追加熱交換器(34)および前記第1バイパスライン(36)に連結する第1の三方向カップリングと、前記気化チャンバー(14)から回収されたガスフローを前記第1バイパスライン(36)に流すことを選択的に許可または阻止することが可能な弁(37、39)と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項15に記載の気化装置。
【請求項17】
前記気化装置(4)は、一方が前記ヘッドロスメンバー(13)の上流で前記注入回路(5)に連結され、他方が前記追加熱交換器(34)に連結される第2バイパスライン(40)、をさらに有し、
回収された液化ガスフローの少なくとも一部を前記注入回路から前記第2バイパスライン(40)に案内し、
前記気化装置(4)は、前記気化チャンバー(14)および前記第2バイパスライン(40)をそれぞれ通って循環するガスフローの流動率を制御することが可能な制御手段(40、42、43、44)、をさらに有する
ことを特徴とする請求項15または16に記載の気化装置。
【請求項18】
液化ガス貯蔵および冷却設備において、
内部スペースを備えたコンテナ(2、19)と、
請求項1〜17のいずれか一項に記載の気化装置と、を有し、
前記気化装置の前記気化チャンバー(14)が、前記コンテナ(2、19)の内部スペースに設けられている
ことを特徴とする液化ガス貯蔵および冷却設備。
【請求項19】
前記コンテナ(2、19)は、密閉断熱タンクである
ことを特徴とする請求項18に記載の液化ガス貯蔵および冷却設備。
【請求項20】
前記コンテナは、密閉断熱補助タンク(19)であり、
前記液化ガス貯蔵および冷却設備(1)は、密閉断熱メインタンク(20)と、前記メインタンク(20)および前記補助タンク(19)に連結される送出ダクト(21)および戻りダクト(22)と、前記送出ダクト(21)および前記戻りダクト(22)を通って、前記メインタンク(20)と前記補助タンク(19)との間で液化ガスを循環させることが可能なポンプ(23)と、をさらに有する
ことを特徴とする請求項18または19に記載の液化ガス貯蔵および冷却設備。
【請求項21】
前記コンテナ(2、19)は、液化天然ガス、エタン、および、液化石油ガスから選択される液化可燃性ガスで充填される
ことを特徴とする請求項18〜20のいずれか一項に記載の液化ガス貯蔵および冷却設備。
【請求項22】
コンテナ(2、19)の内部スペースに収容された液化天然ガス、エタン、および、液化石油ガスから選択される液化ガスを冷却する方法において、
冷却すべき液化ガスを含む前記コンテナ(2、19)内の液化ガスを回収し、回収された液化ガスを前記コンテナ(2、19)の内部スペースに設けられた化チャンバー(14)に案内する工程と、
前記気化チャンバー(14)内部において大気圧よりも低い絶対圧力を発生させる工程と、
回収されて前記気化チャンバー(14)で膨張されたガスフローと前記コンテナ(2、19)内に収容された液化ガス(3)との間で前記気化チャンバー(14)の壁(6)を介して熱交換を行い、前記コンテナ(2、19)内に収容された前記液化ガス(3)からカロリーを吸収することにより前記回収されたガスフローを気化させる工程と、
気相の前記回収されたガスフローを気相ガス利用回路(8)に案内する工程と、を有する
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
120〜950hPaの絶対圧力が、前記気化チャンバー(14)内で維持されている
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記気化チャンバー(14)内で650〜850hPaの絶対圧力が維持されている
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記液化ガスが、二相平衡状態で前記コンテナ(2)の内部スペースに貯蔵され、下流液相および上流気相(35)を有し、
前記気化チャンバー(14)から回収された前記ガスフローが、上流気相と少なくとも部分的に接している追加熱交換器(34)に案内されて、回収されたガスフローを前記気相ガス利用回路(8)に案内する前に、回収されたガスフローと上流気相(35)との間で熱交換を行う
ことを特徴とする請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記気化チャンバー(14)は、第1の三方向カップリングまたは弁(37、39)を介して、前記追加熱交換器(34)およびバイパスライン(36)に連結され、
前記パイパスライン(36)は、前記追加熱交換器(34)を迂回することができ、
前記弁(37、39)は、前記回収されたガスフローを前記バイパスライン(36)に流すことを選択的に許可または阻止することができ、
前記弁(37、39)は、上流気相(35)の圧力を表す変数に応じて、前記回収されたガスフローを前記バイパスライン(36)に流すことを許可または阻止するように、制御される
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記液化ガスは、二相平衡の状態で前記コンテナ(2)の内部スペースに貯蔵され、下流液相および上流気相(35)を有し、
前記液化ガスのフローは、前記コンテナから回収され、少なくとも部分的に前記上流気相(35)に接する追加熱交換器(34)に案内されて、前記回収されたガスフローと前記上流気相(35)との間で熱交換を行う
ことを特徴とする請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
請求項18〜21のいずれか一項に記載の設備(1)を有し、
前記気相ガス利用回路(8)は、エネルギー生成ユニットである
ことを特徴とする船(70)。
【請求項29】
請求項28に記載の船(70)で積み下ろしをする方法において、
液体は、浮遊貯蔵施設または陸上貯蔵施設(77)から前記船のタンク(71)まで、または、前記船(71)のタンクから前記浮遊貯蔵施設または陸上貯蔵施設(77)まで、絶縁ライン(73、79、76、81)を通って送られる
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
液体用輸送システムにおいて、
請求項28に記載の船(70)と、
前記船の船体に取り付けられるタンクを浮遊貯蔵施設または陸上貯蔵施設(77)につなぐ絶縁ライン(73、79、76、81)と、
前記浮遊貯蔵施設または陸上貯蔵施設(77)から前記船のタンクまで、または、前記船のタンクから前記浮遊貯蔵施設または陸上貯蔵施設まで、前記絶縁ラインを介して液体を運ぶポンプと、を有する
ことを特徴とする輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化形態で貯蔵される気体の冷却分野に関し、特に、液化天然ガス(LNG)のような燃料ガスの冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスは、極低温度で密閉断熱タンクに貯蔵される。このようなタンクは、陸上貯蔵施設の一部を形成することができ、または、例えばメタンタンカーのような浮遊構造に取り付けることができる。
【0003】
液化天然ガス貯蔵タンクの断熱バリアは、必然的にタンクの内容物を再加熱する傾向にある熱流束(thermal flux)のシートである。この再加熱は、タンクの内容物のエンタルピー(enthalpy)の増加をもたらし、その結果、準大気圧(quasi-atmospheric pressure)で平衡のその状態から貨物の全てまたは一部を遠ざけることになる。したがって、エンタルピーの増加は、液化天然ガスの蒸発や液体形態で貯蔵されている天然ガスの損失をもたらすことになる。
【0004】
液化天然ガスのエンタルピーの増加を制限するために、タンクの断熱が定期的に改良されている。しかしながら、タンクの断熱能力が増加する傾向にあるものの、液化天然ガスの再加熱の割合は、相当な割合のままである。
【0005】
また、液化天然ガスの蒸発を制限するために、圧力をかけてタンクに液化天然ガスを貯蔵し、考慮される液化天然ガスの気液平衡の曲線上の変化を得ることも知られている。これにより、その気化温度を上昇させることが可能である。このため、液化天然ガスを天然ガスの蒸発を制限する効果を有するより高い温度で貯蔵することができる。しかしながら、このような加圧下での貯蔵は、全てのタイプのタンク、特に、液化天然ガスタンカーが主に設置されている角柱形状のタンクで提供されていない機械的強度を必要とする。
【0006】
従来技術では、自然蒸発から生じるガスを利用して、燃料としての天然ガスを使用するユニットを提供することは、実際には周知のことである。このため、メタンタンカーにおいて、例えば、蒸発したガスは、海上設備の運転に必要な電力を供給する船や発電機セットを駆動するために用いられるパワートレインを提供するために使用される。しかしながら、このような方法は、タンクにおいて蒸発したガスを蒸発させることができる一方で、自然蒸発を十分に減らすことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎となる考えは、液化ガスの自然蒸発を制限することができる一方で、持続的に貯蔵することが可能な熱力学的状態で液化ガスを保つことができる液化ガスを冷却する装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、本発明は、液化ガスを冷却する気化装置を提供する。その気化装置は、液化ガスで充填されるコンテナの内部スペースに設けられる気化チャンバーと、前記コンテナの内部スペースに設けられ、液相の液化ガスのフローを回収する吸入口、および、前記気化チャンバーの内部スペースに設けられ、前記回収されたガスフローを膨張させるヘッドロスメンバーを備えた、注入回路と、気相で前記気化チャンバーから気相ガス利用回路に前記回収されたガスフローを排出するために設けられた排出回路と、を有する。前記気化チャンバーは、前記気化チャンバーの内部スペースと前記コンテナの内部スペースに存在する液化ガスとの間で熱交換を可能にする熱交換壁を備える。前記排出回路は、前記ガスフローを前記気化チャンバーに吸入し、前記ガスフローを前記気相ガス利用回路に排出して、前記気化チャンバーの大気圧よりも低い絶対圧力を維持することが可能な真空ポンプを備える。
【0009】
このため、このような装置は、気相で機器消費ガスを供給することを目的とするガスの気化を十分に活用することができ、潜在的な気化熱を後から取り去ることにより、タンク内に貯蔵された液化ガスを冷却することができる。
【0010】
また、このような装置のおかげで、気相で機器消費ガスを供給することを目的とする液化ガスの気化が、海水、動力化や特定のバーナーから得られる中間液体または燃焼ガスと熱交換する強制気化装置とは異なり、外部熱源を用いることなく行うことができる。その後、コンテナの内部スペースに存在する液化ガスは、気相で機器消費ガスを対象とした留分の熱源として機能する。その一方で、他の実施形態では、そのような外部熱源を追加的に設けることもできる。
【0011】
また、大気圧よりも低い絶対圧力で気化チャンバー内を循環するガスフローを維持するために、タンク内に貯蔵された液化ガスは、大気圧で、その気化平衡温度よりも低い温度で冷却されることができる。ゆえに、液化ガスは、大気圧または準大気圧でタンク内に貯蔵または移送することが可能な一方で、液化ガスの気化率を低く、ほぼゼロに維持するサブクール熱力学的状態(sub-cooled thermodynamic state)に維持することができる。
【0012】
また、このような装置は、タンク内に貯蔵された液化ガスおよび利用回路に案内される気相ガスの組成の変化を制限するという利点を提供する。実際には、液化ガスが、複数の成分からなる気体混合物である場合、自然蒸発から生じる気相は、当然、液相、特に窒素よりも、最も揮発性の成分がリッチな成分を示す。また、気相の組成は、徐々に変化する傾向がある。このため、これらの組成の変化では、自然蒸発が広がると、徐々に変化するタンク内に残っている液化ガスのような自然蒸発から生じるガスの発熱量を生じさせる。現在、熱容量が発熱量の著しい変化を受ける燃料ガスを備えた供給機器では、ガスの不完全燃焼、機器の作動不良、および、機器効率の変動が起こりやすい。したがって、ガス消費機器を供給することを目的としたガスを液化形態で抽出することにより、ガスの組成の変動が制限される。
【0013】
他の有利な実施形態によれば、そのような装置は、以下の特徴を少なくとも1つ有することができる。
【0014】
真空ポンプは、120〜950hPa、好ましくは500〜950hPaの絶対圧力下で、前記気化チャンバー内を循環する前記ガスフローを配置することができる。
【0015】
注入回路は、ヘッドロスメンバーの上流に、圧力調整器を有する。
【0016】
注入回路は、ヘッドロスメンバーの上流に、追加ポンプを有する。追加ポンプは、液相の液化ガスのフローを吸入し、注入回路の吸入口でコンテナの内部スペース内でし得る最大流体力学的よりも大きな排出圧力を発生させることができる。
【0017】
注入回路は、追加ポンプの下流に設けられる圧力調整器をさらに有する。圧力調整器は、注入回路で追加ポンプにより排出される液化ガスの圧力を追加ポンプの排出圧力よりも低い閾値圧力に制限することができる。
【0018】
一実施形態によれば、注入回路は、スプレーノズルで構成された複数のヘッドロスメンバーを有する。スプレーノズルは、液化ガスを気化チャンバー内に吹き付けることができる。
【0019】
注入回路は、1つ以上のヘッドロスメンバーを有する。
【0020】
一実施形態によれば、各ヘッドロスメンバーは、例えば、注入ダクトと気化チャンバーとの間に配置された横断壁に形成された開口部のような注入回路のフローセクションの変化から選択され、注入ダクト、多孔物質、または等エントロピー膨張機の直径よりも小さい直径を有する。
【0021】
熱交換壁は、気化チャンバーの交換面を増加させることを目的とするフィンを有する。
【0022】
気化装置は、気化チャンバーに関連して、回収された液化ガスの重質留分を回収および排出する装置を有する。
【0023】
気化チャンバーは、斜面を有する。液化ガスの重質留分を回収および排出する装置は、重力で前記重質留分を集めるために、気化チャンバーの低位置に連結された容器を有する。
【0024】
容器は、バルブ、逆止弁、ダクト、または、防臭弁によって、気化チャンバーに連結されている。
【0025】
液化ガスの重質留分の回収および排出する装置は、容器に連結された排出ダクトをさらに有する。
【0026】
排出ダクトは、排出ダクトを通って、液相の重質留分を排出するポンプを備えている。
【0027】
液化ガスの重質留分を回収および排出する装置は、重質留分を気化させるために、容器の内部スペースを加熱することができる加熱装置をさらに有する。排出ダクトは、気相の重質留分を排出することができる。
【0028】
排出ダクトは、バルブまたは逆止弁を介して容器に連結されている。
【0029】
容器の内部スペースは、気化装置の排出回路に接続され、排出回路は、Yカップリングを介して液体供給装置に連結されている。このため、排出回路を通じて流体を容器に排出し、容器内に収容されている重質留分を排出ダクトに排出することができる。
【0030】
排出ダクトは、気相ガス利用回路に連結されている。
【0031】
排出ダクトは、容器からコンテナまたは重質留分調整装置まで延びている。
【0032】
一実施形態によれば、気化装置は、上流で気化チャンバーに、下流で排出回路に連結される追加熱交換器をさらに有する。追加熱交換器は、液化ガスで満たされるコンテナの内部スペースの上部に配置されている。このような追加熱交換器は、タンク内部の自然蒸発から生じた気相の再凝縮を可能にする点で、特に有利であり、これにより、コンテナ内の過剰圧力を制限することができる。
【0033】
追加熱交換器が、コンテナの充填最大位置より上に少なくとも部分的に配置されている。このため、回収されたガスフローとコンテナ内に貯蔵される液化ガスの気相との間で熱交換が可能となる。すなわち、追加熱交換器は、コンテナ内に貯蔵される液化ガスの気相に少なくとも部分的に接している。
【0034】
一実施形態によれば、気化装置は、第1バイパスラインと、第1の三方向カップリングと、弁と、をさらに有する。第1の三方向カップリングは、気化チャンバーを追加熱交換器およびバイパスラインに連結させる。弁は、気化チャンバーから回収されたガスフローを第1バイパスラインに流すことを選択的に許可または阻止することができる。一実施形態によれば、弁は、気化チャンバーを追加熱交換器または第1バイパスラインに選択的に連結することが可能な三方弁である。つまり、三方弁は、回収されたガスフローが気化チャンバーから追加熱交換器に案内される第1位置と、追加熱交換器を避けるために、回収されたガスフローが気化チャンバーから第1バイパスダクトに案内される第2位置と、を選択的に取る。他の実施形態によれば、弁は、第1バイパスラインを備えた二方弁である。
【0035】
一実施形態によれば、気化装置は、追加熱交換器を排出回路に連結し、かつ、第1バイパスラインを排出回路に連結することができる第2の三方向カップリングを有する。変形例によれば、第2の三方向カップリングは、切り替え可能なカップリングであり、追加熱交換器または第1バイパスラインを排出回路に選択的に連結することができる。他の実施形態によれば、第2の三方向カップリングは、その三方向が永遠に連結されるように、切り替え能力を有していない。
【0036】
一実施形態によれば、気化チャンバーおよび追加熱交換器は、交互に連続して、すなわち、中断することなく、配置されている。つまり、追加熱交換器の交換面は、気化チャンバーの交換面の延長部に延びている。
【0037】
気化装置は、第2バイパスラインをさらに有する。第2バイパスラインの一方は、ヘッドロスメンバーの上流で注入回路に連結されており、他方は、追加熱交換器に連結されて、回収された液化ガスフローの少なくとも一部を注入回路からバイパスラインまで案内する。また、気化装置は、気化チャンバーおよび第2バイパスラインをそれぞれ通って循環するガスフローの流動率を制御することが可能な制御手段をさらに有する。このため、回収された液化ガスフローの少なくとも一部は、気化チャンバーを通過することなく、第2バイパスラインを通過する。そして、回収された液化ガスフローの一部の気化が、追加熱交換器で行われる。制御手段は、コンテナの内部スペースで気相の圧力を表す変数の関数として、気化チャンバーおよび第2バイパスラインそれぞれを通って循環するガスフローの流動率を制御することができる。
【0038】
一実施形態によれば、本発明は、また、内部スペースを備えたコンテナと、上述の気化装置と、を有する液化ガス貯蔵および冷却設備を提供する。気化装置の気化チャンバーは、コンテナの内部スペースに設けられている。
【0039】
他の有利な実施形態によれば、このような設備は、以下の特徴を1つ以上有することができる。
【0040】
コンテナは、密閉断熱タンクである。
【0041】
コンテナは、密閉断熱補助タンクである。液化ガス貯蔵および冷却設備は、密閉断熱メインタンクと、送出ダクトおよび戻りダクトと、ポンプと、をさらに有する。送出ダクトおよび戻りダクトは、メインタンクおよび補助タンクに連結している。ポンプは、送出ダクトおよび戻りダクトを通ってメインタンクと補助タンクとの間で液化ガスを循環させることができる。
【0042】
コンテナは、液化天然ガス、エタン、および、液化石油ガスから選択される液化燃料ガスで充填される。
【0043】
一実施形態では、密閉断熱タンクは、薄膜タンクである。他の実施形態では、タンクは、タイプBまたはC型構造タンクである。
【0044】
一実施形態によれば、本発明は、また、コンテナの内部スペースに収容された液化ガスを冷却する方法を提供する。その冷却方法は、冷却すべき液化ガスを含むコンテナ内の液化ガスを回収し、回収された液化ガスをコンテナの内部スペースに設けられた気化チャンバーに案内する工程と、気化チャンバー内部の大気圧よりも低い絶対圧力を発生させる工程と、回収されて気化チャンバーで膨張されたガスフローとコンテナに収容された液化ガスとの間で気化チャンバーの壁を介して熱交換を行い、コンテナに収容された液化ガスからカロリーを吸収することにより回収されたガスフローを気化させる工程と、気相の回収されたガスフローを気相ガス利用回路に案内する工程と、を有する。
【0045】
一実施形態によれば、120〜950hPa、好ましくは、650〜850hPaの絶対圧力が、気化チャンバー内で維持される。
【0046】
一実施形態によれば、液化ガスは、二相平衡状態でコンテナの内部スペースに貯蔵され、下流液相および上流気相を有する。気化チャンバーから回収されたガスフローは、上流気相と少なくとも部分的に、さらには完全に接している追加熱交換器に案内されて、回収されたガスフローを気相ガス利用回路に案内する前に、回収されたガスフローと上流気相との間で熱交換を行う。
【0047】
有利には、気化チャンバーは、第1の三方向カップリングまたは弁を介して、追加熱交換器およびバイパスラインに連結される。バイパスラインは、追加熱交換器を迂回することができる。弁は、回収されたガスフローをバイパスラインに流すことを選択的に許可または阻止することができる。また、弁は、上流気相の圧力を表す変数に応じて、回収されたガスフローをバイパスラインに流すことを許可または阻止するように、制御される。
【0048】
一実施形態によれば、弁は、切り替え可能な三方弁であり、その三方弁は、上流気相の圧力を表す変数の関数として、気化チャンバーから回収されたガスフローを追加熱交換器またはバイパスラインに案内するために、切り替えられる。
【0049】
変形実施形態によれば、気相の圧力は、コンテナ内部で測定され、弁は、圧力閾値および気相の測定された圧力に応じて制御される。具体的には、気相の測定された圧力が、その圧力閾値以上の場合には、回収されたガスフローが気化チャンバーから追加熱交換器に案内される。同様に、気相の測定された圧力が、圧力閾値以下の場合には、回収されたガスフローが、追加熱交換器を避けるために、気化チャンバーからバイパスラインに案内される。
【0050】
一実施形態によれば、液化ガスのフローは、コンテナから回収され、上流気相に少なくとも部分的に接する追加熱交換器に案内されて、回収されたガスフローと上流気相との間で熱交換が行われる。この動作モードは、追加熱交換器の位置で行われる熱交換を増加させることができ、結果的に、気相の圧力が閾値を超えたときに実施される。
【0051】
一実施形態によれば、本発明は、上述の液化ガスの貯蔵および冷却設備を有する船に関する。
【0052】
一実施形態によれば、気相ガス利用回路は、例えば、船を推進するためのユニットのような、エネルギー生成ユニットである。
【0053】
また、一実施形態によれば、本発明は、船で積み下ろしをする方法を提供する。流体は、浮遊貯蔵施設または陸上貯蔵施設から船のタンクまで、または、船のタンクから浮遊貯蔵施設または陸上貯蔵施設まで、絶縁ラインを通って送られる。
【0054】
本発明の特定の態様は、実際の圧力下で液化天然ガスの貯蔵が、液相蒸気平衡曲線上におけるガスの二相平衡点のシフトの原因となるという観察から始まっている。このため、圧力下で貯蔵された液化天然ガスが、より低い圧力、例えば、大気圧で、液化天然ガスを貯蔵している装置に送られる際に、天然ガスが複雑で費用がかかる事前冷却処理を受けていない限り、輸送が液化天然ガスの強力な気化を伴う。
【0055】
以下の本発明の実施形態の記載によって、本発明はより一層理解されやすく、また、本発明の他の目的、詳細、特徴および利点はより一層明確に理解される。本発明の実施形態の記載は、添付の図面を参照して説明を意図してなされたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】第1実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備を概略的に示す。
図2】第2実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備を概略的に示す。
図3】メタンの気液平衡図である。
図4】一実施形態における気化装置を概略的に示す。
図5】部分的に切り取られた図4の気化装置の斜視図である。
図6】他の実施形態における気化装置の斜視図である。
図7】メタンタンクおよびそのタンクに沈められた気化装置の斜視図である。
図8】第1実施形態における液化ガスの重質留分を回収して排出するための装置を備えた気化装置を概略的に示す。
図9】第2実施形態における液化ガスの重質留分を回収して排出するための装置を備えた気化装置を概略的に示す。
図10】第3実施形態における液化ガスの重質留分を回収して排出するための装置を備えた気化装置を概略的に示す。
図11】メタンタンカーおよびこのタンク用積み下ろしターミナルの概略断面図である。
図12】液化ガス貯蔵および冷却設備の他の概略断面図である。
図13】第3実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備を示す。
図14】第4実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備を示す。
図15】第5実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備を示す。
図16】第6実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備を示す。
図17】第7実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
明細書およびクレームにおいて、「ガス(gas)」という用語は、包括的性質を有し、優先することなく単一の純粋物質または複数の成分で構成される気体混合物からなるガスを対象とする。このため、液化ガスは、低温で液相に置かれ、かつ、通常の温度および圧力条件下で、気相で存在する化学物質または化学物質の混合物を記載する。
【0058】
図1には、第1実施形態における液化ガス貯蔵および冷却設備1が示されている。このような設備1は、陸上構造や浮遊構造に取り付けることができる。陸上構造の場合には、その設備は、蒸気状態でガスを消費するユニットを備えた液化天然ガスの貯蔵を目的とすることができる。ガスを消費するユニットは、貯蔵所に隣接していても、その貯蔵所で供給される蒸気ガス分配ネットワーク(vapor gas distribution network)においても、発電機セット、蒸気発生器、バーナー、または、蒸気状態のガスを消費する任意のユニットにすることができる。
【0059】
浮遊構造の場合には、その設備は、メタンタンカーなどの液化天然ガスタンカーを対象とすることができるだけでなく、パワートレイン、発動機セット、蒸気発生器、または、他の任意の消費ユニットにガスを供給する任意の船も対象とすることができる。一例として、その装置は、商品輸送船、旅客輸送船、漁船、浮遊発電ユニットなどであってもよい。
【0060】
設備1は、その内部に液化ガス3が貯蔵される内部スペースを備えたコンテナ、を有する。ここでは、そのコンテナは、密閉断熱タンク2である。
【0061】
一実施形態によれば、タンク2は、大気圧または準大気圧で液化ガスを貯蔵することが可能な薄膜タンクである。このようなタンク内の圧力は、大気圧に対して最大300hPaまで変化する可能性がある。
【0062】
このような薄膜タンクは、通常、多層構造を有する。その多層構造は、タンク2の外側から内側へ、支持構造に支えられている断熱要素を備えた二次断熱バリアと、二次密封膜と、二次密封膜に支えられている断熱要素を備えた一次断熱バリアと、タンク内に収容された液化ガスと接する一次密封膜と、を有する。一例として、そのような薄膜タンクは、国際特許出願第14057221号、フランス国特許出願第2691520号、フランス国特許出願第2877638号に記載されている。
【0063】
他の実施形態によれば、タンク1は、タイプBやCのタンクである。そのようなタンクは、自立型であり、特に、平行六面体、角柱形状、球形状、円筒形状またはマルチローブ形状を有することができる。タイプCのタンクは、大気圧よりも実質的に高い圧力で液化天然ガスの貯蔵が可能な特定の特徴を有する。
【0064】
液化ガス3は、燃料ガスである。液化ガス3は、特に、液化天然ガス(LNG)すなわち、メタンと、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンおよび窒素のような1つ以上の他の炭化水素とを含む大部分が気体混合物である。液化天然ガスは、大気圧で約−162℃の温度で貯蔵される。
【0065】
また、燃料ガスは、エタンや液化石油ガス(LPG)、すなわち、本質的にプロパンとブタンとを含む油の精製から生じる炭化水素の混合物である。
【0066】
設備1は、コンテナから液相のガスを抜き出してそのガスを膨張させる気化装置4を有する。気化装置4は、ガスの潜在的な気化熱を用いてガスを蒸発させて、コンテナ内に残っている液化ガス3を冷却する。
【0067】
このような気化装置4の動作原理は、メタンの気液平衡の図を表す図3に関連して示される。この図では、Lで示される領域は、液相で存在するメタンであり、Vで示される領域は、気相で存在するメタンである。また、X軸は圧力であり、Y軸は温度である。
【0068】
ポイントP1は、大気圧で約−162℃の温度でタンク2に貯蔵されたメタンの状態に対応する二相平衡状態を表す。このような平衡状態におけるメタンをタンク2から抜き出して気化装置4で膨張させると、例えば、約500hPaの絶対圧力では、膨張したメタンの平衡がポイントP2まで左に移動する。このため、十分に膨張したメタンは、約7℃の温度低下を受ける。したがって、回収されたメタンは、気化装置4を介してタンク2内に残ったメタンと熱接触して配置され、少なくとも部分的に気化される。気化されることにより、タンク2内に貯蔵された液体メタンからその気化に必要なカロリーが差し引かれて、タンク2内に残った液体メタンを冷やすことができる。
【0069】
図1を参照すると、気化装置4は、注入回路5と、1つ以上の気化チャンバー14と、排出回路7と、を有する。注入回路5は、タンク2に貯蔵される液化ガス3に沈められた吸入口を備えている。気化チャンバー14は、タンク2に貯蔵される液化ガス3に沈められており、タンク2に貯蔵される液化ガス3に沈められた熱交換壁6を備え、タンク2に残っている液化ガス3と熱接触で引き出されたガスフローを収納する。排出回路7は、気相のガスを気相ガス利用回路8に排出する。
【0070】
注入回路5は、図1に示されていない1つ以上のヘッドロスメンバーを備えている。ヘッドロスメンバーは、回収された液化ガスフローを膨張させるために、ヘッドロスを生じさせることができ、気化チャンバー14内に現れる。
【0071】
また、気化装置4は、タンクの外側に設けられ、排出回路7と関連付けられる真空ポンプ9を備えている。真空ポンプ9は、タンク2に貯蔵される液体ガスのフローを気化チャンバー14に吸入させることができ、それを気相で気相ガス利用回路8に排出することができる。
【0072】
また、真空ポンプ9は、気化チャンバー14を大気圧よりも低い絶対圧力下で保つように寸法設定される。
【0073】
液化天然ガスに対して、気化チャンバー14の内部に存在する絶対作動圧力(absolute working pressure)は、120〜950hPaにあり、有利には500〜950hPa、より詳細には650〜850hPa、好ましくは750hPa程度である。
【0074】
実際には、気化チャンバー14内部の天然ガスの固化を避けるために、気化チャンバー14内部の作動圧力が、メタン位相図の3つのポイントに対応する圧力よりも大きくなることが不可欠である。また、作動圧力の増加は、気化チャンバー14内のガスの温度とタンク2に残っている液化ガスの温度との温度差を減らす効果を有する。この場合、同じ冷却能力を得るために必要な気化チャンバー14の交換面を大きくしなければならない。それに対して、作動圧力の低下は、上述の温度差を増やす効果を有し、その結果、同じ冷却能力を得るために必要な交換面を減らすことになる。その一方で、作動圧力の低下は、熱交換効率を低下させる欠点を有する。このため、上述の作動圧力の範囲は、気化装置4のコンパクト性とその性能レベルとの間で良好な譲歩を提供することが可能である。
【0075】
真空ポンプ9は、気相ガス利用回路8の気相ガス要求に応じて寸法設定される。一実施形態では、真空ポンプ9は、気相ガス利用回路8への供給に必要な気相におけるガス供給の全てを確実に行うために、十分な蒸気流量を送ることができる。したがって、真空ポンプ9は、気相ガス利用回路8の必要性に適した流量/圧力特性を有しなければならない。一例として、VentMeca(登録商標)社の参照番号Ventmeca126で販売されている遠心ファンは、特定の用途に適していることがわかる。そのような遠心ファンは、250hPaの真空を生成することにより、3.3m3/sの流量を確保することができる。
【0076】
真空ポンプ9は、低温ポンプ、すなわち、−150℃よりも低い極低温をサポートすることができる。また、真空ポンプ9は、ATEX規則に従わなければならない、すなわち、爆発の危険性を排除するように設計されていなければならない。
【0077】
図1の実施形態では、単一の真空ポンプ9が、気化チャンバー14を通るガスフローの循環を確実に行うことができ、タンク2に貯蔵される液化ガス3の冷却およびエネルギー生成ユニット用の気相のガス供給を確実に行う。また、図1に示されているように、排出回路7のみがタンク2の構造を通過して、熱損失を制限し、密閉ロスのリスクを減らし、全ての密閉断熱バリアを備えた構造の設計を単純化する。
【0078】
船上に設置された設備1の場合には、気相ガス利用回路8は、特に、図示されていない船を推進させるために用いられるパワートレインのエネルギー生成ユニットに連結させることができる。そのようなエネルギー生成ユニットは、特に、熱エンジン、燃料電池、および、ガスタービンから選択される。エネルギー生成ユニットが熱エンジンの場合には、エンジンは、混合ディーゼル天然ガス供給源を有することができる。そのようなエンジンは、エンジンがディーゼルで完全に駆動するディーゼルモード、または、少量のパイロットディーゼルが燃焼を開始するために噴射される一方で、エンジンの燃料が主に天然ガスからなる天然ガスモード、のいずれかで動作することができる。
【0079】
また、一実施形態によれば、気相ガス利用回路8は、図示されていない補助熱交換器をさらに有する。補助熱交換器は、気相のガスフローをガス消費ユニットの動作に適合する温度までさらに加熱することができる。特に、補助熱交換器は、気相のガスフローと海水との間、または、気相のガスフローとエネルギー生成ユニットによって生成された燃料ガスとの間、で熱接触を確実に行うことができる。
【0080】
一実施形態によれば、気相ガス利用回路8は、コンプレッサーをさらに有する。コンプレッサーは、気相のガスフローを加熱することができ、燃料ガスが供給されるエネルギー生成ユニットの使用に適した圧力、例えば、あるエネルギー生成ユニットに対して5〜6bar絶対値で気相のガスフローを圧縮することが可能である。
【0081】
注入回路5は、気化装置4の入口で液化ガスの供給を遮断することが可能な弁32を備えている。
【0082】
一実施形態による気化装置4の構成は、図4図5に示されている。
【0083】
気化装置4は、注入回路5の上流端部に、図5に示されているフィルター10を有する。フィルター10は、タンク2に含まれる不純物が気化装置4の注入回路5に入ることを防ぐことができる。
【0084】
また、注入回路5は、いくつかのスプレーブーム(spray boom)11を有する。図4に示されているように、各スプレーブーム11は、噴霧器および/または霧吹きとも呼ばれる複数のスプレーノズル13を備えたチューブ12、を有する。各スプレーノズル13は、微細な液滴の形態で液相のガスを散布することが可能な1つ以上の開口部を有する。各スプレーブーム11は、チューブ状の気化チャンバー14内に延びている。各スプレーノズル13で生成されるフローセクションの変化を考慮すると、回収されたガスフローを膨張させることが可能なヘッドロスが生じる。また、微細な液滴内の分裂(fragmentation)は、液相交換面(liquid phase exchange surface)を増やすことにより気化を促進する。
【0085】
図示されていない他の実施形態では、回収されたガスフローを膨張させることが可能なヘッドロスは、スプレーノズルにより生じないことに留意されたい。その一方で、例えば、電子的または温度自動調節案内を有する毛細管または拡張針の形状で、注入ダクトと気化チャンバーとの間に設けられた横壁に形成され、注入ダクトの直径よりもはるかに小さい直径を有する1つ以上の開口部のようなフローセクションの単純な変化によって、ヘッドロスが生じる。または、気化チャンバー14の上流の注入回路に収容されるセラミック発泡体、金属発泡体、または、オープンセルポリマー発泡体(open-cell polymer foam)のような多孔質材料によって、ヘッドロスが生じる。あるいは、膨張タービンまたは受動的拡張ホイールのような等エントロピー膨張機械(an isentropic expansion machine)によって、ヘッドロスが生じる。
【0086】
図示されている実施形態において、気化チャンバー14は、気化チャンバー14の熱交換壁6に関連し、タンク2に含まれる液化ガス3との交換面を増強させることが可能なフィン15を備えている。フィン15は、気化チャンバー14の外側に設けられ、気化チャンバー14の長手方向に対して直角に互いに平行に延びている。また、気化チャンバー14とフィン15は、共に平行六面体形状の交換器、すなわち、特にコンパクトな交換器を構成する。
【0087】
スプレーノズル13は、気化チャンバー14の壁6の最大面に液化ガスの液滴が到達することができるように、気化チャンバー14に沿って均一に分布している。
【0088】
スプレーノズル13を通じてそれらの膨張により、タンク2に貯蔵された液化ガス3から、気化チャンバー14のフィン15および壁6を介して、液化ガスの潜在的な気化熱をとることにより、液化ガスの液滴を気化させる。
【0089】
また、気化チャンバー14は、真空ポンプ9を介して気相ガス利用回路8に連結される排出回路7の一部を形成するガス蒸気収集マニホールド(gas vapor collection manifold)16に出現する。
【0090】
一例として、標準的なメタンタンカーの4つのタンク上の熱流束に相当する300KW程度の冷却能力を伝達するために、回収されたガスフローの蒸発温度とタンクに貯蔵された液化ガスの温度との温度差が3℃程度で、気化チャンバー14の熱交換壁6は、90m2/タンク程度の交換面を有する必要がある。そのような交換面を達成するために、200mmのチューブ状の気化チャンバー14と、一辺が1mの正方形で50mm互いに離れて配置されたフィンと、を有する上述のフィン交換器は、約4.7mの長さを有しなければならない。
【0091】
上述のフィン交換器を備えた気化装置は、限られた設置面積で十分な熱性能レベルを得ることができる一方で、また、例えば、コイル、プレート、またはマイクロチャネル交換器のような他の熱交換技術の使用も想定される。
【0092】
図5に示されている実施形態では、注入回路5は、スプレーブーム11の上流に、気化装置4の入口で液化ガスの圧力を閾値圧力に制限することが可能な圧力調整器17を有する。そのような圧力調整器17は、タンク2内の液化ガス3による流体力学的、および、タンク2の充填レベルにかかわらず、注入回路5への吸入口で液化ガスの圧力、を一定に保つことができる。一例として、圧力調整器17に適用される圧力閾値は、大気圧程度である。
【0093】
図6に示されている他の実施形態では、注入回路5は、スプレーブーム11の上流に、注入回路5への吸入口でタンク1内の液化ガス3によってもたらされる流体力学的よりも大きな排出圧力を生成することが可能な追加ポンプ33を有する。また、注入回路5は、追加ポンプ33の下流に配置される圧力調整器17を有する。その閾値圧力は、大気圧よりも高く、追加ポンプ33の排出圧力よりも低い値に設定される。また、このような構成は、タンク2に貯蔵される液化ガス3による流体力学的にかかわらず、気化装置4に取り込まれる液化ガスフローの圧力を一定に保つことができる。さらに、この実施形態では、スプレーノズル13の駆動圧力が、前述の実施形態よりも大きい利点を有し、必要とされるスプレーノズル13の数を制限する一方で、より大きな流量安定性を確保することもできる。一例として、追加ポンプ33は、6〜8bar程度の圧力で液化ガスを排出するように制御することができる。その一方で、圧力調整器17の閾値圧力は、約5barに設定される。真空ポンプ9が、気化チャンバー14に0.25bar程度の相対真空、すなわち、0.76bar程度の絶対圧力を生成すると仮定すれば、スプレーノズル13の駆動圧力は、5.25bar程度になるだろう。
【0094】
図7に示されている実施形態によれば、気化装置4の気化チャンバー14、すなわち、熱交換器は、タンク2の底部に設けられており、タンク2の充填レベルにかかわらず、その浸水を保証する。ターゲットのタンク2のタイプに応じて、気化装置4の熱変換器の固定および支持は、異なる方法で行うことができる。
【0095】
内面に直接的な固定を許容するBタイプやCタイプの構造的なタンクに対して、熱交換器は、タンク2の底壁に支持して直接固定することができる。そのような実施形態では、排出回路7は、膨張/圧縮を補うことが可能なベローズ(bellows)や補償ピグテール(compensation pigtails)のような補助手段を有する。
【0096】
気化装置4の熱交換器を支持することができない内面を有するタンク、例えば薄膜タンクに対しては、気化装置4の熱交換器を、タンクの支持構造に支持されている支持脚に固定して支持することができ、断熱バリアを介してタンク2の支持構造に負荷を送る。一例として、支持脚を備えた密閉断熱メタンタンク2が、国際出願第2011/157915号に開示されている。
【0097】
あるいは、気化装置4の熱交換器を、図6に示されている積み下ろしマストやタワー18に固定することもできる。このような積み下ろしマストは、船の上部デッキからつるされて船の底部に案内されて、デッキに対してマストの固定ポイントに作用されるモーメントを制限する。そのような積み下ろしマスト18は、例えば、フランス国出願番号2785034号に記載されている。
【0098】
図2は、第2実施形態に係る液化ガス貯蔵および冷却設備1を示す。
【0099】
この第2実施形態では、その設備1が、密閉断熱のメインタンク20と、密閉断熱の補助タンク19と、を有する。補助タンク19は、特に、気化装置4の気化チャンバー1を収容し、気化装置7を通って回収されたガスフローとメインタンク20に貯蔵された液化ガス3との間における熱交換の生成物用チャンバーを提供することを意図している。
【0100】
このため、補助タンク19は、送出ダクト21および戻りダクト22を介してメインタンク20に連結されている。また、設備1は、送出ダクト21および戻りダクト22を介してメインタンク20と補助タンク19との間における液化ガスを循環させることが可能なポンプ23を有している。送出ダクト21は、メインタンク20の底部に近接して設けられており、充填レベルが低かったとしても、メインタンク20に貯蔵される液化ガスの送り出しができる。
【0101】
このような実施形態では、液化ガスの温度をより標準化させることができると共に、メインタンク20内の熱層形成の生成を制限することができるという利点がある。また、補助タンク19は、メインタンク20よりも小さい寸法を有しているので、この実施形態では、メインタンク20が空になるまで、気化装置4の気化チャンバーをほぼ浸水状態で保つことを確保することができる。最終的に、このような補助タンク19は、補助タンク19がいくつかのメインタンク20に連結されるだろう異なる実施形態を可能にし、気化装置4を沈ませることができる。
【0102】
概して、本発明は、気化装置が密閉断熱タンクの内部スペースに設けられているその設備、および、気化装置が液化ガス貨物から液化ガスフローを回収する全ての装置を対象とする設備、に限定されない。その一方で、この同じ貨物の残りの部分からカロリーを抜き出して、回収したフローを気化させる。したがって、明細書および請求項において、気化装置4の気化チャンバー14の内部に設けられる物体を対象とする「コンテナ」という用語は、一般的な性質を有し、例えば、タンクやパイプラインのような液化天然ガスを収容または輸送したりすることが可能な任意の物体を対象とする。
【0103】
図8図10は、第3実施形態に係る液化ガスの重質留分を回収および排出するための装置24を備えた気化装置4、を概略的に示す。そのような重質留分回収排出装置24は、特に、液化天然ガスのようなガス状混合物の貯蔵用設備1を対象とする。
【0104】
ガスの重質留分は、ガスの最小揮発性成分、すなわち、液化天然ガスに対して最も長い炭素鎖を有する炭化水素からなる。より低い揮発性が得られると、ガスの重質留分は、少なくとも部分的に液相のままであるか、または、気化装置4の気化チャンバー14内で液化している可能性がある。したがって、気化チャンバー14が重質留分で満されることを避けるために、気化装置4に重質留分回収排出装置24を設けることが適切である。
【0105】
液相における重質留分のこの回収を可能にするために、気化チャンバー14は、重力により液体を流してその液体を容器25に導くことができる傾斜を有する。浮遊構造の用途では、気化チャンバーは、理想的には、その最も安定な軸に沿って配置される。例えば、船の場合には、船の軸に沿って気化チャンバーが配置される。
【0106】
図8の実施形態では、重量留分回収容器25は、ポンプ27を備えた排出ダクト26と関連している。排出ダクト26は、重質留分を図示されていない重質留分調整装置に案内することができる。重質留分調整装置は、気化させて、エネルギー生成ユニットへ送る前にこの重質留分の温度を設定する。
【0107】
図9に示されている実施形態では、重質留分回収容器25は、液相のガスの重質留分と海水との間、または、液相ガスの重質留分とエネルギー生成ユニットにより生成される燃料ガスとの間、の熱を交換する電気抵抗器や熱交換器のような加熱装置28を備えている。このため、加熱装置は、排出ダクト26を通ってエネルギー生成ユニットに案内するために、回収容器25に貯蔵されている重質留分を気化させることができる。容器25および排出ダクト26は、この実施形態において、断熱されており、重質留分の気相からタンク2に貯蔵される液化ガス3への移動を制限し、これにより、重質留分の再凝縮を回避する。また、このような実施形態において、重質留分回収容器25は、トラップ29または逆止弁を介して、気化チャンバー14に連結される。トラップ29または逆止弁は、気化した重質留分を気化装置4の気化チャンバー14に再度案内することを防止することができる。
【0108】
図10に示されている実施形態では、容器25は、排出回路7に連結されている。排出回路7は、この場合、Yカップリング(Y-coupling)を介して図示されていない流体供給回路に連結されている。このため、流体を排出回路7に流して、重質留分を重質留分排出ライン26へ排出することができる。一実施形態において、気相のガスを用いて重質留分を排出するために、流体供給回路をタンク2のガス状最上部に連結させることができる。また、重質留分排出ライン26は、重質留分調整装置に連結される。他の実施形態では、流体供給回路は、液化形態のガスを供給する回路とすることができる。また、重質留分排出ライン26は、タンク2に連結させることもできる。重質留分は、その後、タンク2に戻される。
【0109】
また、容器25は、逆止弁30を介して排出ダクト26に連結される。さらに、容器25は、弁または逆止弁31を介してチューブ状のチャンバー14に連結される。
【0110】
したがって、重質留分を排出する際には、弁または逆止弁31は閉状態であるのに対して、弁または逆止弁30は開状態である。その後、気化チャンバー14を通るガスの循環は、遮断される。その一方で、気化チャンバー14を通るガスの循環が再度設定される際には、弁または逆止弁31は開状態であるのに対して、弁または逆止弁30は閉状態である。このため、弁または逆止弁31は、重質留分が排出される際に気化チャンバー14における気相中のガスをタンク2に導かないことを保証することができる。また、弁または逆止弁30は、特に、真空ポンプ9が排出回路7を減圧する際に、タンク2内に貯蔵される液化ガスを容器25に注入することを防ぐことができる。
【0111】
上述の液化ガス貯蔵および冷却設備1は、液化ガスの蒸発率を大幅に減らすことができる。このような貯蔵および冷却設備1の性能は、気相の蒸発したガス供給の必要性とタンク2の容量との割合によって決まる。このため、天然ガスの必要性が0.1〜1.5kg/s程度で、150000m3より大きい貯蔵容量を有するメタンタンカーの場合、液化天然ガスの自然蒸発は、完全には排除されないものの、半分までに減らすことができ、常に0.04〜0.06%の蒸発率を達成することができる。その設備の目的が船の推進を確保するのみとする船の場合では、タンクの容量がより制限され、例えば、数百〜数千m3程度に制限され、その一方で、メタンタンカーと同様の天然ガスの必要性、すなわち、0.1〜1.5kg/s程度の天然ガスの必要性を有する。このような設備の性能は、天然ガスの消費量が大きい駆動システム、および、より制限された容量のタンクを有する船で、自然蒸発率をほぼゼロにすることができる。
【0112】
図12は、設備1を概略的に示し、気化装置4が、タンク2に収容される液化ガスへの冷却能力Pと利用回路8への気相のガス流量Qとの両方を供給することが可能なことを示す。気化装置4およびその構成要素、特に真空ポンプ9および気化チャンバー14の寸法を設定するために、以下のことが考慮される。
【0113】
寸法設定は、不変の動作条件で、液化ガスを収容するコンテナ内で所望される冷却能力、および/または、利用回路で所望される気相のガス流量により決定される。
【0114】
あるアプリケーションでは、利用回路8における気相のガス流量は、気化装置4の主要な寸法基準であってもよい。例として、外航船におけるメインエンジンの平均電力は、通常、数MWから数十MW程度である。気化装置4からの気相のガス流量は、貯蔵タンク内の全ての必要量に対応する冷却能力を生成することができない場合には、補助冷却能力Pauxを貯蔵タンクに収容される液化ガスに加える補助冷却設備(図示せず)を設けることが可能である。
【0115】
他のアプリケーションでは、大気圧における気化温度よりも低い温度でコンテナに収容されるガスを保つために必要とされる冷却能力は、気化装置4の主要な寸法基準であってもよい。ただ、利用回路8の気相においてガスの必要性が高く、コンテナに収容された液相のガスを過度に冷却すること、および/または、気化装置4を大きな寸法にすることは望ましくない。このため、気化装置4からの冷却能力Pが、利用回路8で全ての必要性に対応する気相のガス流量を生成することができない場合には、補助気化流量Qauxを利用回路8に加える補助気化装置(図示せず)を設けることができる。対応する実施形態では、気化装置4は、LNG再ガス化ターミナルで用いられ、液相の貨物を冷却し、かつ、生成されるべき気相のガスのフローの一部を供給する。
【0116】
気化チャンバーでは、気化チャンバー14を最大限活用するために、回収された液化ガスのフローの全ての軽質留分を気化させることが望ましい。すなわち、液化天然ガスの場合には、メタンを気化させることが好ましい。
【0117】
得られる冷却能力Pは、真空ポンプ9の質量流量(mass flow rate)や液化ガスの潜在的な気化熱などのいくつかのパラメータの組み合わせで決まる。
【0118】
熱交換器は、この冷却能力Pをコンテナの内容物に送ることができるような寸法にしなければならない。
【0119】
図13図17に示されている液化ガス貯蔵および冷却設備は、気化装置4が追加熱交換器34をさらに有する点で、図1に示されている装置とは異なる。
【0120】
図13を参照すると、追加熱交換器34が、気化チャンバー14の上流および排出回路7の下流で連結されていることがわかる。つまり、ガスのフローが、気化キャンバー14から追加熱交換器34に案内され、その後、追加熱交換器34から排出回路7に案内されるように、追加熱交換器34は、気化チャンバー14の出口と排出回路7の入口との間に設けられている。
【0121】
追加熱交換器34は、タンク2に貯蔵された流体の気相35に接して配置されており、回収されたガスフローとタンク2に貯蔵された流体の気相との間における熱交換を目的としている。タンク2に貯蔵された流体の気相35との交換を可能にするために、追加熱交換器34は、タンク2の上部に設けられており、具体的には、少なくとも部分的に、さらには完全に、タンク2の充填最大限度よりも上側に設けられている。一例として、メタンタンクの場合、この充填最大限度は、タンク2の内部スペースの容積の98%程度の充填に相当する。
【0122】
したがって、追加熱交換器34は、タンク2での自然蒸発から生じる気相35の一部を液化し、および/または、冷却することを可能にする液化装置として機能する。ゆえに、追加熱交換器34は、タンク2から回収されたガスフローとタンクに残っているガスとの間の熱交換を増加させることができる。実際には、気化チャンバー6は、交換される可能性のある全てのカロリーを送ることはできない。また、その出口において、気化したガスフローの温度とタンク2に残っている液相の温度との間で、数程度〜数十程度の差が必然的にある。すなわち、気化したガスフローは、タンクに貯蔵された液相の温度よりも低い温度で、気化チャンバー14から出る。このため、追加熱交換器34は、これらの利用可能なカロリーを活用して、タンク2における自然蒸発から生じる液相35の一部を液化することができる。
【0123】
一例として、気化チャンバー6の出口における気化したガスフローの温度とタンク2に残っている液相の温度との温度差2℃、および、1kg/sの流量を考慮すると、蒸発の一部を液化させるために、4kWの冷却能力が利用可能である。
【0124】
また、タンク2がその充填最大レベルまで満たされない限り、タンクの上部における気相の温度が、タンクに貯蔵されたガスの液相の平衡温度よりもはるかに高くなるように、気相はタンク内で層状になる傾向がある。
【0125】
一例として、−161℃程度の温度で貯蔵される液化天然ガスの場合、気相の温度は、タンク2の上部において−80℃に達する可能性が高い。この場合、流量が1kg/sであることを考慮すると、気相の一部を冷却して気化させるために、はるかに大きな冷却能力、165kW程度が利用可能である。
【0126】
追加熱交換器34は、特に、気化チャンバー14の熱交換壁6と同様の構造を有することができる。追加熱交換器34は、特にフィン交換器であることができる。また、例えば、コイルやプレート熱交換器などの他の熱交換技術を用いることもできる。また、追加熱交換器34は、図7に関連して説明して示されているように、オフロードマストやタワーに固定することができる。図示されていない実施形態によれば、気化チャンバー14および追加熱交換器34では、水中部分(submerged portion)がタンク2に貯蔵されたガスの気相3との交換を確実にする一方で、出現部分(submerged portion)が気相35との交換を確実にする同じ熱交換構造でそれぞれ形成されている。
【0127】
図13に示されている実施形態では、気化装置4は、追加熱交換器34を省くことを可能にするバイパスライン36をさらに有する。この場合、気化装置4は、第1の三方向カップリング(three-way coupling)、ここでは、三方弁37、を有する。三方弁37は、気化チャンバー14と、バイパスライン36と、追加熱交換器34と、に連結されている。また、三方弁37は、追加熱交換器34を省くために、気化チャンバー14から追加熱交換器34までのガスフローを導く第1位置、または、気化チャンバー14からバイパスライン36までのガスフローを導く第2位置のいずれかを選択的に取ることができる。
【0128】
この気化装置は、第2の三方向カップリングをさらに有する。その第2の三方向カップリングは、バイパスライン36を排出回路7に連結し、かつ、熱交換器34を排出回路7に連結する。図13では、第2の三方向カップリングに、三方弁38が設けられている。
【0129】
三方弁37および任意の三方弁38は、特に、気相35の圧力を圧力閾値以下で維持するために、タンクにおける気相の圧力を表す変数に応じて、制御することができる。このため、タンク内に貯蔵された液化天然ガスの自然蒸発で生成され、タンクの損傷する可能性がある過度の圧力の発生を回避することができる。
【0130】
この場合、一実施形態によれば、その気化装置は、気相35の圧力を表す信号を三方弁37のコントロールユニットに送ることが可能な図示されていない測定センサ、を有する。
【0131】
コントロールユニットは、測定した圧力と圧力閾値とを比較して、測定した圧力が圧力閾値よりも大きい場合、ガスのフローを気化チャンバー14から追加熱交換器34に導く第1位置に、三方弁37を作動させる。その一方で、コントロールユニットは、測定した圧力が第2圧力閾値以上の場合、ガスのフローを気化チャンバー14からバイパスライン36に導く第2位置に、三方弁37の移動を作動させる。この第2圧力閾値は、第1圧力閾値と同じであってもよく、または、第1圧力閾値よりも低くしてもよい。低くした場合には、三方弁37のタイミングの悪い切り替えを避けることが可能なヒステリシス現象を発生させることができる。
【0132】
一例として、第2位置から、気化チャンバー14から追加熱交換器34までのガスのフローを導く第1位置に、三方弁37の移動をもたらす第1圧力閾値は、1200hPa程度である。また、第1位置から、気化チャンバー14からバイパスライン36までのガスのフローを導く第2位置に、三方弁37の移動をもたらす第2圧力閾値は、1050程度である。したがって、このような動作は、気相の圧力が決定された圧力帯域内にとどまることを保証することができる。これは、タンクがメタンタンクである際に、その密閉膜がかなりの過剰圧力または減圧により損傷を受けやすい場合に特に有利である。
【0133】
図14は、図13の実施形態とは異なる気化装置4を示す。図14の気化装置4では、バイパスライン36を排出回路7に連結し、かつ、追加熱交換器34を排出回路7に連結する第2の三方向カップリングは、三方弁38を備えていないため、簡略化することができる。
【0134】
図15に示されている気化装置は、図14の実施形態とは異なる。図15の気化装置では、気化チャンバー14をバイパスライン36および追加熱交換器34に連結することが可能な第1の三方向カップリングが、三方弁37を備えていない。その一方で、バイパスライン36が、バイパスライン36を通るガスフローの通過を選択的に許容または阻止することを可能にする弁39、を備えている。このため、弁39が閉じている場合には、ガスのフローが追加熱交換器34に案内される一方で、開いている場合には、追加熱交換器34を通るよりもバイパスライン36を通るほうがより低いヘッドロスになるので、ガスのフローがバイパスライン36を通って優先的に案内される。
【0135】
図16の気化装置4は、図13図15の実施形態とは異なる。図16の気化装置では、気化チャンバーの上流で、回収されたフローの全てまたは一部を迂回させることが可能なバイパスライン40を備えており、気化チャンバー14を通ることなく、回収されたフローを追加熱交換器34に案内する。その後、回収されたガスのフローの全てまたは一部の気化は、追加熱交換器34を介して行われ、この場合、ヘッドロスメンバーを有する。バイパスライン40の一方は、気化チャンバーの上流で、注入回路5に連結されており、他方は、追加熱交換器34の入口に連結されている。
【0136】
バイパスライン36は、流量計42に関連する弁41を備えている。流量計42は、気化チャンバー14を通過することなく追加熱交換器34に向けられる液化ガスフローを調節することが可能である。
【0137】
同様に、気化チャンバー14の出口を追加熱交換器34の入口に連結するダクトは、また、流量計44に関連するバルブ43を備えている。流量計44は、気化チャンバー14から追加熱交換器34に向けられる液化ガスの流量を調節することが可能である。
【0138】
ゆえに、このような構成は、気化チャンバー14および追加熱交換器34を並行に動作させることができる。この並行モードの動作は、タンクの冷却の割合を増加させて、ある圧力閾値を超えた場合にタンクのガス状の上部の圧力を急速に減少させることができるという点で有利である。
【0139】
一実施形態によれば、気化チャンバー14を通過する回収されたガスフローの一部および気化チャンバー14を通過せずに追加熱交換器34を通過する回収されたガスフローの割合は、気相の圧力に応じて決定される。
【0140】
図17は、他の異なる実施形態を示す。図17の気化装置は、2つの真空ポンプ9、45を備える。一方の真空ポンプ9は、バイパスライン36に連結されており、気化チャンバー14を通って循環するガスフローを制御することが可能である。他方の真空ポンプ45は、追加熱交換器34を通って循環するガスフローを制御することが可能である。このような構成は、気化チャンバー14および追加熱交換器34を通って循環するガスフローを完全に独立して制御することにより動作のより大きな柔軟性を提供する。
【0141】
図11を参照すると、液化天然ガス貯蔵および冷却設備を備えたメタンタンカー70の断面図が、示されている。図11は、船の二重船体72に設置された概ね角柱体の密閉断熱タンク71が示されている。タンク71の壁は、タンク内に収容される液化天然ガスと接触する一次密封バリアと、一次密封バリアと船の二重船体72との間に配置される二次密封バリアと、2つの断熱バリアと、を有する。2つの断熱バリアは、一次密封バリアと二次密封バリアとの間、および、二次密封バリアと二重船体72との間にそれぞれ配置されている。
【0142】
それ自体が周知であるように、積み下ろしライン73は、船の上部デッキに設けられており、タンク71からまたはタンク71に液化天然ガスの貨物を運ぶために、適切な接続機を用いて、海上または港湾ターミナルに接続することができる。
【0143】
また、図11は、積み下ろしステーション75と、海底ダクト76と、陸上施設77と、を備えた海上ターミナルの一例を示す。積み下ろしステーション75は、固定海上施設であり、可動式アーム74と、その可動式アーム74を支持するタワー78と、を有する。可動式アーム74は、積み下ろしライン73に接続することができる絶縁された曲げやすいパイプ79の束を運ぶ。可動式アーム74は、メタンタンカーのあらゆるテンプレートに合わせて配向することができる。図示されていないリンクダクトは、タワー78の内部に延びている。積み下ろしステーション75は、陸上施設77からまたは陸上施設77までメタンタンカー70の積み下ろしを可能にする。陸上施設は、液化ガス貯蔵タンク80と、海底ダクト76によって積み下ろしステーション75にリンクされるリンクダクト81と、を有する。海底ダクト76は、例えば、5kmといった長距離にわたって積み降ろしステーション75と陸上施設77との間で液化ガスの輸送を可能にする。このため、積み下ろし作業中、メタンタンカー70を海底から遠くに離しておくことができる。
【0144】
液化ガスの輸送に必要な圧力を生成するために、船70に搭載されるポンプ、陸上施設77に搭載されるポンプ、積み下ろしステーション75に搭載されるポンプが、用いられる。
【0145】
本発明は、特定の実施形態との関連において説明したが、本発明がかかる特定の実施形態に限定されるものではないことは明らかであり、また、本発明の範囲を逸脱しないかぎり、記載された態様に対応する技術的等価物およびそれらの組み合せもまた含まれることは明らかである。
【0146】
動詞の使用は、「有する(comprise)」または「含む(include)」及びその共役の形態は、請求項に記載されたもの以外の要素またはステップの存在を排除するものではない。また、ステップの要素における不定冠詞「a」、「an」の使用は、特に特定しない限り、そのような要素またはステップの複数の存在を排除するものではない。
【0147】
また、特許請求の範囲において、括弧内の任意の参照符号は、請求項を限定するものとして解釈すべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17