特許第6684791号(P6684791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

特許6684791改良された摩耗特性を有するポリエチレンホモ−又はコポリマー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684791
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】改良された摩耗特性を有するポリエチレンホモ−又はコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20200413BHJP
   C08F 4/658 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C08F10/02
   C08F4/658
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-526537(P2017-526537)
(86)(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公表番号】特表2017-538001(P2017-538001A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015074860
(87)【国際公開番号】WO2016078878
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年10月4日
(31)【優先権主張番号】14193669.0
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ゲリッツ,ニクラシナ シベルタ ヨハンナ アルベルディナ
(72)【発明者】
【氏名】フリードリックス,ニコラース ヘンドリカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ケッセル,マティス
【審査官】 山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−006170(JP,A)
【文献】 特表2012−511109(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/087185(WO,A1)
【文献】 特表2011−513560(JP,A)
【文献】 特表2011−522060(JP,A)
【文献】 特表2013−501830(JP,A)
【文献】 特表2013−501115(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/144431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C08G 59/00 − 59/72
C09D 1/00 − 10/00
101/00 − 201/10
A61L 15/00 − 33/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンホモ−又はコポリマーであって、該ポリエチレンの摩耗指数が、以下の式に従って延伸応力と関係付けられ:
【数1】
ここで、ESは、ISO 11542−2:1998に従って測定される延伸応力であり、AIは、ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定される摩耗指数であり、β<1.であり、α=−0.0165であり、
前記延伸応力は0.5MPa未満である、ポリエチレンホモ−又はコポリマー。
【請求項2】
前記ポリエチレンが、チーグラー触媒の存在下で、エチレンを随意的な1つ以上の他のα−オレフィンモノマーと反応させることにより製造される、請求項1に記載のポリエチレン。
【請求項3】
ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定される前記摩耗指数が80未満である、請求項1又は2に記載のポリエチレン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された摩耗特性を有するポリエチレンホモ−又はコポリマーに関する。詳細には、本発明は、不均一系チーグラー触媒系を使用して調製される、改良された摩耗特性を有する超高分子量ポリエチレンに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー部品が摩擦を受ける用途において、予定された使用及び予定された寿命の間その質を保証するために、ポリマー部品は摩耗に十分に耐性であることが重要である。特定の用途において、ポリマー部品はポリエチレンから作製される。そのような場合、ポリエチレンは、摩擦に十分に耐えられるように、十分な摩耗耐性を有する必要がある。
【0003】
そのような用途に使用し得るある特定の種類のポリエチレンは、超高分子量ポリエチレンである。超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、特有の材料特性を有するある種の材料を形成する。UHMWPEは、約500,000g/molより大きい、好ましくは約1,000,000g/molより大きい分子量を有するポリエチレンとして定義される。一般に、分子量は、3,000,000g/molより大きく、好ましくは5,000,000g/molより大きく、10,000,000g/mol超にも及び得る。UHMWPEを得るためのポリマー合成が、非特許文献1に開示される。
【0004】
高分子量の結果、UHMWPE材料は、非常に高い融解粘度を有する。この高い融解粘度のために、UHMWPE材料は、従来の熱可塑性物質用の成形方法を使用して処理できない。したがって、圧縮成形及びラム押出しのような特殊な処理方法が適用される。これらの成形方法のいずれにおいても行われる成形処理が、例えば非特許文献2に記載される。いずれも粉末粒子の焼結を伴うラム押出し及び圧縮成形のような典型的な処理手段について、特定の粒子サイズ及び分布が必要とされる。この焼結は、好ましくは、型中におけるポリマー粉末の密充填を使用して行われる。このために、高い粉末かさ密度が必要とされる。ISO 60:1977に従って測定されるUHMWPEのかさ密度は、好ましくは0.3g/cm超、より好ましくは0.35g/cm超、さらに好ましくは0.4g/cm超である。ISO−13320:2009に従って測定される平均粒子サイズD50は、好ましくは250μmより低く、より好ましくは200μmより低く、さらに好ましくは175μmより低い。
【0005】
非常に重要な特性が、摩耗耐性である。UHMWPEの対象とする用途の多くが、特に、非常に高い摩耗耐性を必要とする。概して、より高い分子量はより高い摩耗耐性を生じる。しかしながら、これによって、より高い分子量材料は材料の処理特性が低下するという難点が生じる。この理由のために、従来のUHMWPE材料は、高い摩耗耐性又は良好な処理特性のいずれかを有する。そのような材料は、例えば非特許文献3に開示される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Macromolecular Scienece C: Polymer Reviews,vol.C42,3,p.355−371,2002
【非特許文献2】H.L.Stein,Engineered Materials Handobook, Vol 2: Engineering Plastics, ASM International, 1999, p.167−171
【非特許文献3】‘Verschleissverhalten von ultrahochmolecularem Polyethylene bei Gleitbeanspruchung’, Hohn at al, Kunststoffe 82(5), p.391−394, 1992, Carl Hanser Verlag
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高い摩耗耐性及び良好な処理特性の両方を必要とする特定の用途が存在する。両方を組み込む超高分子量材料の開発が必要であることが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明との関連で、摩耗は、固体の素地に対して押されそれに沿って移動する硬い粒子又は硬い隆起による材料の減少として定義される。したがって、摩耗耐性は、固体の素地に沿った硬い粒子又は硬い隆起の押圧及び移動に耐える能力である。
【0009】
本発明との関連で、摩擦は、固体表面が互いに接触する際の相対運動に抵抗する力として定義される。
【0010】
超高分子量ポリエチレンの融解粘度は、その処理特性を示す。融解粘度は、延伸応力に関する。延伸応力は、150°Cにおいて10分間で、試験片の測定長さが600%増加するのに必要な引張応力である。より高い延伸応力は、より高い分子量を示す。延伸応力は、ISO 11542:1998に従って測定される。処理要件を満たすために、延伸応力は、好ましくは0.5MPaより低く、より好ましくは0.4MPaより低く、より好ましくは0.3MPaより低く、さらにより好ましくは0.2MPaより低い。
【0011】
良好な処理可能性を有するUHMWPE材料が知られている。例えば、国際公開第2011/089017号には、ハフニウム及びクロムの両方を含む触媒系を使用して製造され、融解処理可能なUHMWPE材料が記載されている。良好な処理可能特性を提供するが、これらの材料は、ISO 15527:2010に従って測定される1より高い摩耗指数によって示されるように、摩耗耐性が十分でないという欠点がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、良好な処理特性を有しながら高い摩耗耐性特性を与えるポリエチレンを提供することを目的とする。
【0013】
これは、ポリエチレンの摩耗指数が以下の式に従って延伸応力と関係付けられる、ポリエチレンホモ−又はコポリマーにより達成される:
【数1】
ここで、ESは、ISO 11542−2:1998に従って測定される延伸応力であり、AIは、ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定される摩耗指数であり、β<1.8であり、−0.015<α<−0.017である。
【0014】
好ましくは、β<1.7であり、より好ましくはβ<1.6であり、さらに好ましくはβ<1.5であり、さらに好ましくはβ<1.4であり、さらに好ましくはβ<1.3であり、さらに好ましくはβ<1.2である。
【0015】
好ましくは、−0.016>α>−0.017であり、より好ましくは−0.0165>α>−0.017である。例えば、α=−0.0165である。
【0016】
延伸応力と摩耗との間のこの関係を満たすポリエチレンは、成形性のような処理可能性及び摩耗耐性の改良されたバランスを有する。
【0017】
好ましい実施の形態において、ポリエチレンは、チーグラー触媒の存在下で、エチレンを随意的な1つ以上の他のα−オレフィンモノマーと反応させることにより製造できる。
【0018】
摩耗指数の特定に使用される基準材料は、例えばTicona GUR 4120でもよい。
【0019】
他のα−オレフィンモノマーは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及びこれらの混合物から選択される。
【0020】
好ましくは、ポリエチレンは、500,000g/molより大きい分子量を有する。より好ましくは、ポリエチレンは、1,000,000g/molより大きい、さらに好ましくは2,000,000g/molより大きい、さらに好ましくは3,000,000g/molより大きい、さらに好ましくは4,000,000g/molより大きい、さらに好ましくは5,000,000g/molより大きい、さらに好ましくは7,000,000g/molより大きい、さらに好ましくは10,000,000g/molより大きい、分子量を有する。例えば、ポリエチレンは、2,000,000g/mol未満、あるいは15,000,000g/mol未満の分子量を有してもよい。例えば、ポリエチレンは、1,000,000g/molより大きく15,000,000g/mol未満の分子量を有してもよい。
【0021】
好ましくは、ポリエチレンは、150°Cにおいて10分間に亘り測定されて0.50MPa未満の延伸応力を有する。より好ましくは、ポリエチレンは、0.40MPa未満、さらに好ましくは0.35MPa未満、さらに好ましくは0.30MPa未満、さらに好ましくは0.25MPa未満の延伸応力を有する。
【0022】
ある好ましい実施の形態において、ポリエチレンは、ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定されて、80未満の摩耗指数を有する。より好ましくは、ポリエチレンは、75未満、さらに好ましくは70未満、さらに好ましくは65未満、さらに好ましくは60未満、さらに好ましくは55未満、さらに好ましくは50未満の摩耗指数を有する。
【0023】
本明細書において使用される不均一系チーグラー触媒は、必要に応じて金属又はメタロイド化合物(例えば塩化マグネシウム又はシリカ)上に担持される、ハロゲン化チタン、ハロゲン化クロム、ハロゲン化ハフニウム、ハロゲン化ジルコニウム、及びハロゲン化バナジウムから選択される遷移金属ハロゲン化物を含む、遷移金属含有固体触媒化合物として定義される。これにより、不均一系チーグラー触媒は、メタロセンやポスト−メタロセン(post−metallocenes)のようないわゆるシングルサイト触媒と区別される。
【0024】
本発明のある実施の形態において、ポリエチレンは、以下を含む触媒組成物の存在下でエチレンを重合させることにより製造されるポリエチレン粉末である:
I)以下を混合することによって得られる生成物:
a)以下を含む炭化水素溶液:
i)有機酸素含有マグネシウム化合物及びハロゲン含有マグネシウム化合物から選択されるマグネシウム含有化合物;及び
ii)有機酸素含有チタン化合物;
b)以下を含む溶液:
i)式(I)を有する金属含有化合物:
MeR3−n (I)
ここで、Xはハロゲンであり、Meはメンデレーエフの元素周期表のIII族の金属であり、Rは1−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、nは0<n<3である、又は式(I)の化合物の二量体;及び
ii)式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物であり、ここで、0≦m≦2であり、R’は少なくとも1つの炭素原子を含む炭化水素成分であり;
溶液a)及びb)の混合物が固体粒子の懸濁液を生じ;
II)式AIR’を有する有機アルミニウム化合物であり、ここで、R’は、1−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、
III)1,2−ジアルコキシ炭化水素化合物の群から選択される1つ以上の外部電子供与体であり、
I)に存在するチタンに対する外部電子供与体III)のモル比が、0.5から5.5の間であり、
この方法から得られるポリエチレン粉末のスパン(span)が、0.9から1.3の間である。
【0025】
そのようなスパンを有するポリエチレン粉末は、成形性のような改良された処理特性を示す。そのようなスパンを有するポリエチレン粉末は、色素などの着色料で着色されると、所望の色均一性を示す。スパンがそのような値を超えると、色が不均一になり得る。
【0026】
好ましい実施の形態によれば、マグネシウム含有化合物は、有機酸素含有マグネシウム化合物及びハロゲン含有マグネシウム化合物から選択される。好ましくは、マグネシウム含有化合物は、有機酸素含有マグネシウム化合物から選択される。適切な有機酸素含有化合物には、マグネシウムメチラート、マグネシウムエチラート及びマグネシウムイソプロピレートのようなアルコキシド、及びマグネシウムエチルエチラートのようなアルカリアルコキシドが含まれる。好ましくは、有機酸素含有マグネシウム化合物は、マグネシウムエチラートである。適切なハロゲン含有マグネシウム化合物には、マグネシウムジハロゲン化物及びマグネシウムジハロゲン化物錯体が含まれ、ハロゲン化物は塩化物が好ましい。最も好ましくは、ハロゲン含有マグネシウム錯体は、塩化マグネシウムである。
【0027】
ハロゲンは、塩素、臭素又はヨウ素から選択される。好ましくは、ハロゲンは塩素である。
【0028】
有機酸素含有マグネシウム化合物及び有機酸素含有チタン化合物の炭化水素溶液は、溶媒として脂肪族又は芳香族炭化水素を使用して調製できる。好ましくは、有機酸素含有マグネシウム化合物及び有機酸素含有チタン化合物の炭化水素溶液は、溶媒として脂肪族炭化水素を使用して調製できる。好ましくは、炭化水素は、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、オクタン又はそれらの混合物及びそれらの異性体から選択される。
【0029】
別の好ましい実施の形態において、触媒組成物は、式(I)を有する金属含有化合物又は式(I)の化合物の二量体を使用して製造される:
MeR3−n (I)
ここで、Rは4−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、金属Meはアルミニウム、ガリウム又はホウ素から選択され、ハロゲンXは塩素、臭素又はヨウ素である。
【0030】
好ましい実施の形態において、金属含有化合物は、n−ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ジイソブチルアルミニウムジクロライド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロライド、セスキイソブチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、又はそれらの混合物から選択される。
【0031】
有機酸素含有チタン化合物は、チタンアルコキシド、チタンフェノキシド、チタンオキシアルコキシド、濃縮チタンアルコキシド、チタンカルボキシレート及びチタンエノラートから選択される。好ましくは、有機酸素含有チタン化合物は、チタンアルコキシドである。好ましくは、チタンアルコキシドは、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OC、及びTi(OC17から選択される。最も好ましくは、チタン化合物は、Ti(OCである。
有機酸素含有チタン化合物に対する式(I):
MeR3−n (I)
を有する金属含有化合物中の金属のモル比は、好ましくは0.01から0.5の間、より好ましくは0.1から0.4の間、及びさらにより好ましくは0.1から0.35の間である。
【0032】
マグネシウム対チタンのモル比は、好ましくは3:1より低く、及びより好ましくは0.2:1から3:1の間である。
【0033】
マグネシウムに対するケイ素含有化合物R’SiCl4−mからの塩素のモル比は、好ましくは2より高く、より好ましくは3より高く、さらに好ましくは4より高い。
【0034】
式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物は、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、イソブチルメチルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン、ジイソブチルジクロロシラン、イソプロピルイソブチルジクロロシラン、ジシクロペンチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n−ペンチルトリクロロシラン、n−ヘキシルトリクロロシラン、n−オクチルトリクロロシラン、イソオクチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、又はテトラクロロシランから選択される。好ましくは、式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物は、テトラクロロシランである。
【0035】
好ましい実施の形態において、本発明による触媒を使用してポリオレフィンを製造するための方法において、共触媒を使用する。共触媒は、式AIR”を有する有機アルミニウム化合物である。好ましくは、R”は、1−10炭素原子を含有する炭化水素成分である。式AIR”の適切な有機アルミニウム化合物には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム及びトリ−オクチルアルミニウムが含まれる。
【0036】
本発明の触媒は、例えば、マグネシウムアルコキシドとチタンアルコキシドとの間の第1反応、それに続く炭化水素溶媒による希釈、マグネシウムアルコキシド及びチタンアルコキシドから成る可溶性錯体の生成、及びその後の錯体の炭化水素溶液と、式(I)を有する金属含有化合物:
MeR3−n (I)
ここで、Xはハロゲンであり、Meはメンデレーエフの元素周期表のIII族の金属であり、Rは1−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、nは0<n<3である、又は式(I)の化合物の二量体;及び
0≦m≦2であり、R’は少なくとも1つの炭素原子を含む炭化水素成分である、式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物、
の混合物との反応により得られてもよい。
【0037】
好ましくは、金属含有化合物は、式(III)を有するアルミニウム化合物である:
AIR3−n (III)
ここで、Xはハロゲンであり、Rは1−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、nは0<n<3である、又は式(III)の化合物の二量体;好ましくは、このアルミニウム化合物は、炭化水素中の溶液として使用される。アルミニウム化合物と反応しない任意の炭化水素は、溶媒として使用されるのに適切である。
【0038】
アルミニウム化合物は、式(III)を有するアルミニウム化合物の二量体の形態で存在してもよい。
【0039】
追加の手順は、有機酸素含有マグネシウム化合物及び有機酸素含有チタン化合物を含む炭化水素溶液を、式(III)のアルミニウム化合物及び式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物の混合物に加えるか、あるいは反対でもよい。
【0040】
この反応のための温度は、使用される炭化水素の沸点より低い任意の温度でよい。
【0041】
室温は、本発明においては20°Cと理解される。
【0042】
有機酸素含有マグネシウム化合物及び有機酸素含有チタン化合物の炭化水素溶液と、式(III)のアルミニウム化合物及び式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物の混合物との反応において、固体が沈殿し、沈殿反応の後、生じた混合物を所定の時間加熱して反応を終了させる。反応後、沈殿をろ過し、炭化水素で洗浄する。例えば複数のデカンテーション(decantaion)工程のように、固体を希釈剤から分離しその後洗浄する別の手段を用いてもよい。全ての工程は、窒素又は他の適切な不活性ガスの不活性雰囲気中で行われなければならない。
【0043】
式MeR3−nの金属化合物及び式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物が混合物として使用される方法においてのみ所望の結果が得られるので、式MeR3−nの金属化合物及び式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物を、別々に又は順次に導入するのではなく、炭化水素溶液との反応において混合物として使用することが重要である。
【0044】
好ましくは、I)中に存在するチタンに対する外部電子供与体III)のモル比は、1.0より高く、より好ましくは1.5より高く、さらに好ましくは2.0より高く、さらに好ましくは2.5より高く、さらに好ましくは3.0より高く、さらに好ましくは3.5より高く、さらに好ましくは4.0より高く、さらに好ましくは4.4より高い。
【0045】
I)中に存在するチタンに対する外部電子供与体III)のモル比は、10.0より低い、あるいは8.0より低い、あるいは6.0より低い。
【0046】
好ましくは、I)中に存在するチタンに対する外部電子供与体III)のモル比は、5.5より低く、より好ましくは5.0より低く、さらに好ましくは4.5より低い。
【0047】
ポリマー粉末の平均粒子サイズ(D50)及びスパンは、ISO−13320:2009に従って特定される。
【0048】
好ましくは、ポリマー粉末の平均粒子サイズD50は、250μmより低く、より好ましくは225μmより低く、さらに好ましくは200μmより低く、さらに好ましくは175μmより低く、さらに好ましくは150μmより低い。
【0049】
好ましくは、この方法により得られるポリエチレン粉末のスパンは、0.95より大きく、より好ましくは1.00より大きく、さらに好ましくは1.05より大きく、さらに好ましくは1.10より大きく、さらに好ましくは1.15より大きく、さらに好ましくは1.20より大きい。
【0050】
好ましくは、この方法により得られるポリエチレン粉末のスパンは、1.3未満であり、より好ましくは1.25未満である。
【0051】
例えば、ポリエチレン粉末のスパンは、≧1.00及び≦1.30であるか、あるいは≧1.10及び≦1.25でもよい。
【0052】
本発明はまた、ポリエチレンを製造するための方法に関し、該方法は、ポリエチレン粉末を得るために、以下を含む触媒組成物の存在下でエチレンを重合する工程を含む:
I)以下を混合することにより得られる生成物:
a)以下を含む炭化水素溶液:
i)有機酸素含有マグネシウム化合物及びハロゲン含有マグネシウム化合物から選択されるマグネシウム含有化合物;及び
ii)有機酸素含有チタン化合物;
b)以下を含む溶液:
i)式(I)を有する金属含有化合物:
MeR3−n (I)
ここで、Xはハロゲンであり、Meはメンデレーエフの元素周期表のIII族の金属であり、Rは1−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、nは1≦n<3である、又は式(I)の化合物の二量体;及び
ii)式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物であって、ここで、0≦m≦2であり、R’は少なくとも1つの炭素原子を含む炭化水素成分である;
ここで、溶液a)及びb)の混合物が固体粒子の懸濁液を生じ;
II)R’が1−10炭素原子を含む炭化水素成分である、式AIR’を有する有機アルミニウム化合物、及び
III)1,2−ジアルコキシ炭化水素化合物の群から選択される1つ以上の外部電子供与体。
【0053】
本発明の方法の好ましい実施の形態において、I)に存在するチタンに対する外部電子供与体III)のモル比が、0.5から5.5の間である。
【0054】
さらなる実施の形態において、本発明の方法から得られるポリエチレン粉末のスパンは、0.9から1.3の間である。
【0055】
好ましくは、式(I)に従う金属含有化合物は、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、n−ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドから選択される。
【0056】
ケイ素含有化合物は、好ましくはSiClである。
【0057】
触媒は、平均粒子サイズD50≦4.5μm、あるいは≦4.0μmを有してもよい。好ましくは、触媒は平均粒子サイズD50≦4.0μmを有する。より好ましくは、触媒は平均粒子サイズD50≦3.8μmを有する。
【0058】
平均粒子サイズD50は、ISO−13320:2009に従って測定される触媒粒子の平均粒子サイズである。
【0059】
上記のようなI)中に存在するチタンに対する外部供与体III)対のモル比を有し、上記のような触媒の平均粒子サイズを有する触媒組成物を使用して製造される、上記のようなスパンの組合せを有するポリエチレンによって、成形性のような処理可能性、摩耗耐性及び着色における均一性の所望の改良されたバランスが提供される。
【0060】
好ましくは、外部電子供与体は、1,2−ジエーテルの群から選択される1つ以上である。より好ましくは、外部電子供与体は、1,2−ジメトキシベンゼン、1,2,4−トリメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシベンゼン、2,3−ジメトキシトルエン、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシシクロヘキサン、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジメトキシブタン、2,3−ジメトキシブタン及び/又はそれらの混合物から選択される1つ以上である。さらにより好ましくは、外部電子供与体は、1,2−ジメトキシベンゼン、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン及び/又はそれらの混合物から選択される。
【0061】
ポリマーの分子量は、例えば重合温度を調整することにより、又は水素又はアルキル亜鉛のような分子量調節剤を添加することにより、当該技術において知られる任意の手段により調節できる。
【0062】
エチレンの重合反応は、有機溶媒の不存在下で気相又はバルクで行われてもよく、有機希釈剤の存在下で液体スラリー中で行われてもよい。重合は、バッチ法で又は連続工程で行ってもよい。本発明の好ましい実施の形態において、重合は、連続工程で行われる。重合はまた、複数の相互に連結されたリアクタ中で行われてもよく、例えば、ポリエチレンの分子量及び組成分布を広げるために、連続した2つのリアクタにおいて各リアクタ中で異なる条件を使用して行われてもよい。これらの反応は、酸素、水、又は触媒毒として作用しうる任意の他の化合物の不存在下で行われる。適切な溶媒には、例えば以下が含まれる:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソ−オクタン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンのようなアルカン及びシクロアルカン;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルトルエン、n−プロピルベンゼン及びジエチルベンゼンのようなアルキル芳香族。重合温度は、20°Cから200°Cまでの間の範囲でもよく、好ましくは20°Cから120°Cまでの範囲である。重合中のモノマーの部分圧は、大気圧でもよく、より好ましくは2から40バール(0.2から4MPa)の部分圧でもよい。
【0063】
重合は、リアクタの全容量に関して1から500ppmの範囲の量で、いわゆる帯電防止剤又は防汚剤の存在下で行ってもよい。
【0064】
本発明による触媒は、例えば高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超高分子量ポリエチレンを製造するためのエチレン重合方法において用いてもよい。ポリエチレン及び製造方法は、「Handbook of polyethylene」by Peacock at pages 1−66(ISBN 0−8247−9546−6)に開示される。
【0065】
UHMWPEの非常に高い分子量のため、例えばゲル透過クロマトグラフィ(GPC)又はサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)により分子量を分析することが困難である。代わりに、いわゆる延伸応力をISO−11542−2:1998に従って測定できる。「流動値(Flow Value)」とも称されることがあるこの延伸応力は、例えばThe British Polymer Journal, Vol.10,December 1978,pp 281−287においてJ.Berzen et al.により開示されるように後で分子量に変換できる。
【0066】
本発明はさらに、本発明により調製されるUHMWPE粉末から作製される物品に関する。このような物品は、例えば、ロッド、管、棒、プロファイル(profiles)及びシートのような成形品である。このような物品は、押出成形、圧縮成形、ラム押出し、射出成形及び/又は溶液経路を介した処理により調製されてもよい。溶液経路を介して調製された物品は、例えば、繊維、テープ、シート、フィルム及び膜である。このような物品は、医療用途において、バッテリーのセパレータ、フィルタ、人工装具、ギア、ベアリング、弾道(ballistic)用途、糸、又はロープとして使用してもよい。
【0067】
あるいは、本発明によるUHMWPE粉末は、例えばポリマー組成物の摩耗特性を改良するために、ポリマー組成物中の成分として使用してもよい。
【0068】
本発明は、以下の非限定的な実施例により説明される。
【実施例】
【0069】
実験I:マグネシウム含有化合物及び有機酸素含有チタン化合物の炭化水素溶液の調製
撹拌器、滴下漏斗及び水冷装置を備えた3lの丸底フラスコに、いずれも室温(20°C)で、固体として185gのMg(OC(1.62mol)及び液体として275mlのTi(OC(0.799mol)を加えた。滴下漏斗に2792mlのヘキサンを満たした。丸底フラスコ中のMg(OC及びTi(OCの混合物を、180°Cの温度まで加熱し、1.5時間300rpmで撹拌した。透明な液体が得られた。次に、混合物を120°Cまで冷却した。溶液を120°Cの温度に維持しながら、ヘキサンをゆっくりと加えた。ヘキサンを溶液に完全に加えた後、溶液を室温まで冷却した。生じた溶液を窒素下で保存した。溶液の分析により、0.25mol/lのチタン濃度が示された。
【0070】
実験IIA:触媒の調製
撹拌器及びコンデンサを備えた10lのバッフルリアクタにおいて、4000mlのヘキサンを導入した。このために、ヘキサン中35mlの50%エチルアルミニウムジクロライド(120mmol Al)溶液、及びその後173mlのテトラクロロシランを加えた。撹拌器を800rpmで開始した。蠕動ポンプを介して、2000mlの実験Iの溶液を4時間に亘って徐々に加え、その間リアクタを室温(20°C)に維持した。次いで生じた懸濁液をヘキサンの沸点(69°C)において2時間還流し、その後室温まで冷却し、ろ過し8lのヘキサンで洗浄した。得られた触媒をヘキサンと混合し、窒素下で保存した。生じた触媒は、4.72μmの平均粒子サイズD50及び0.87のスパンを有した。
【0071】
実験IIB:触媒の調製
撹拌器及びコンデンサを備えた10lのバッフルリアクタにおいて、4000mlのヘキサンを導入した。このために、ヘキサン中35mlの50%エチルアルミニウムジクロライド(120mmol Al)溶液、及びその後173mlのテトラクロロシランを加えた。撹拌器を1300rpmで開始した。蠕動ポンプを介して、2000mlの実験Iの溶液を4時間に亘って徐々に加え、その間リアクタを室温(20°C)に維持した。次いで生じた懸濁液をヘキサンの沸点(69°C)において2時間還流し、その後室温まで冷却し、ろ過し8lのヘキサンで洗浄した。得られた触媒をヘキサンと混合し、窒素下で保存した。生じた触媒は、3.67μmの平均粒子サイズD50及び1.01のスパンを有した。
【0072】
実験III:重合
容積の75%までヘキサンで満たした連続作動された20lのCSTRリアクタ中でエチレンを重合した。リアクタを75°Cまで加熱する。ヘキサン(2.947kg/h)、エチレン(1.053kg/h)及び水素を、75°Cの温度でリアクタに連続的に供給した。実験IIIAからIIIFまでにおける水素の供給が表1に示される。表1の実験IIIAからIIIFまでに示される数値でエチレン圧を維持することにより、エチレンの供給を制御した。CSTRリアクタの充填レベルを、容積の75%に維持した。トリイソブチルアルミニウムを、リアクタの出口流におけるアルミニウムの計算濃度が40ppmに維持される量でリアクタに連続的に加えた。防汚剤(Stat Safe 6633)を、防汚剤の計算濃度が40ppmに維持される量でリアクタに連続的に加えた。実施例IIID、IIIE及びIIIFにおいて、表1に示される供与体:Tiの比を満たす量で、1,2−ジメトキベンゼンをリアクタに連続的に加えた。実験IIA又はIIBから得られた触媒を、制御された様式でリアクタに加え、140から160μmの平均粒子サイズD50を有するポリエチレン粉末を得た。実施例IIIA、IIIB及びIIICにおいて、実験IIAから得られた触媒を使用した;実施例IIID、IIIE及びIIIFにおいて、実験IIBから得られた触媒を使用した。
【0073】
比較例
いくつかの市販のUHMWPEグレードを比較例として使用した。例C−1において、Stamylan UH610(DSMから入手可能)を使用した;例C−2において、GUR 4150(Celaneseから入手可能)を使用した;例C−3において、GUR4120(Celaneseから入手可能)を使用した。
【表1】
【0074】
収率は、リアクタに導入されたグラムでの触媒の量につき産生されたキログラムでのポリエチレンの量として定められる。
【0075】
供与体:Tiの比は、触媒のI)中に存在するチタンに対する外部供与体のモル比として定義される。
【0076】
かさ密度は、ISO 60:1977に従って測定された。
【0077】
平均粒子サイズD50は、ISO−13320:2009に従って測定されたポリマー粒子の平均粒子サイズである。スパンは、(D90−D10)/D50として計算される。D90及びD10は、ISO−13320:2009に従って測定された。
【0078】
延伸応力を、10分間に亘って150°CにおいてISO 11542−2:1998に従って測定した。延伸応力の測定のために、実験III、実施例IIIAからIIIF及び比較例C−1からC−3から得られたポリエチレン粉末を、圧縮成形により試験片に成形した。このようにして得られた試験片を、ISO 11542−2:1998のAnnex Aに従って試験した。
【0079】
摩耗耐性を、ISO 15527:2010に従って測定した。摩耗耐性の測定のために、実験III、実施例IIIAからIIIF及び比較例C−1からC−3から得られたポリエチレン粉末を、圧縮成形により試験片に成形した。このようにして得られた試験片を、ISO 15527:2010のAnnex Bに従って試験した。摩耗指数の特定に使用された基準材料はTicona GUR4120であった。
【0080】
上記の例は、本願発明によるポリエチレンが、処理可能性及び摩耗特性の優れたバランスを有することを明らかに示す。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
ポリエチレンホモ−又はコポリマーであって、該ポリエチレンの摩耗指数が、以下の式に従って延伸応力と関係付けられ:
【数2】
ここで、ESは、ISO 11542−2:1998に従って測定される延伸応力であり、AIは、ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定される摩耗指数であり、β<1.8であり、−0.015<α<−0.017である、
ことを特徴とするポリエチレンホモ−又はコポリマー。
[実施態様2]
前記ポリエチレンが、チーグラー触媒の存在下で、エチレンを随意的な1つ以上の他のα−オレフィンモノマーと反応させることにより製造されることを特徴とする、実施態様1に記載のポリエチレン。
[実施態様3]
前記ポリエチレンが、500,000g/molより大きい分子量を有することを特徴とする、実施態様1又は2に記載のポリエチレン。
[実施態様4]
前記延伸応力が、0.5MPa未満であることを特徴とする、実施態様1から3のいずれかに記載のポリエチレン。
[実施態様5]
ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定される前記摩耗指数が、80未満であることを特徴とする、実施態様1から4のいずれかに記載のポリエチレン。
[実施態様6]
ポリエチレンホモ−又はコポリマーであって、該ポリエチレンが、以下を含む触媒組成物の存在下でエチレンを重合することにより製造されるポリエチレン粉末:
I)以下を混合することによって得られる生成物:
a)以下を含む炭化水素溶液:
i)有機酸素含有マグネシウム化合物及びハロゲン含有マグネシウム化合物から選択されるマグネシウム含有化合物;及び
ii)有機酸素含有チタン化合物;
b)以下を含む溶液:
i)式(I)を有する金属含有化合物:
MeR3−n (I)
ここで、Xはハロゲンであり、Meはメンデレーエフの元素周期表のIII族の金属であり、Rは1−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、nは0<n<3である、又は式(I)の化合物の二量体;及び
ii)0≦m≦2であり、R’は少なくとも1つの炭素原子を含む炭化水素成分である、式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物;
ここで、溶液a)及びb)の混合物が固体粒子の懸濁液を生じる;
II)R’は1−10炭素原子を含む炭化水素成分である、式AlR’を有する有機アルミニウム化合物、及び
III)1,2−ジアルコキシ炭化水素化合物の群から選択される1つ以上の外部電子供与体、
であり、
前記I)に存在する前記チタンに対する前記外部電子供与体III)のモル比が、0.5から5.5の間であり、
ISO−13320:2009に従って測定される、前記方法から得られる前記ポリエチレン粉末のスパンが、0.9から1.3の間である、
ことを特徴とするポリエチレンホモ−又はコポリマー。
[実施態様7]
前記ポリエチレンの前記摩耗指数が、以下の式に従って延伸応力と関係付けられ:
【数3】
ここで、ESは、ISO 11542−2:1998に従って測定される延伸応力であり、AIは、ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定される摩耗指数であり、β<1.8であり、−0.015<α<−0.017である、
ことを特徴とする、実施態様6に記載のポリエチレン。
[実施態様8]
前記ポリエチレンが、500,000g/molより大きい分子量を有することを特徴とする、実施態様6又は7に記載のポリエチレン。
[実施態様9]
前記延伸応力が、0.5MPa未満であることを特徴とする、実施態様6から8のいずれかに記載のポリエチレン。
[実施態様10]
ISO 15527:2010に従う基準材料が100に設定されるISO 15527:2010に従って測定される前記摩耗指数が、80未満であることを特徴とする、実施態様6から9のいずれかに記載のポリエチレン。
[実施態様11]
実施態様1から5のいずれかに記載のポリエチレンを製造する方法であって、該方法が、ポリエチレン粉末を得るための、以下を含む触媒組成物の存在下でエチレンを重合する工程を含む:
I)以下を混合することにより得られる生成物:
a)以下を含む炭化水素溶液:
i)有機酸素含有マグネシウム化合物及びハロゲン含有マグネシウム化合物から選択されるマグネシウム含有化合物;及び
ii)有機酸素含有チタン化合物;
b)以下を含む溶液:
i)式(I)を有する金属含有化合物:
MeR3−n (I)
ここで、Xはハロゲンであり、Meはメンデレーエフの元素周期表のIII族の金属であり、Rは1−10炭素原子を含む炭化水素成分であり、nは1≦n<3である、又は式(I)の化合物の二量体;及び
ii)0≦m≦2であり、R’は少なくとも1つの炭素原子を含む炭化水素成分である、式R’SiCl4−mのケイ素含有化合物;
ここで、溶液a)及びb)の混合物が懸濁液を生じる;
II)R’は1−10炭素原子を含む炭化水素成分である、式AlR’を有する有機アルミニウム化合物、
III)1,2−ジアルコキシ炭化水素化合物の群から選択される1つ以上の外部電子供与体、
ことを特徴とする方法。
[実施態様12]
前記I)に存在する前記チタンに対する前記外部電子供与体III)のモル比が、0.5から5.5の間であり、ISO−13320:2009に従って測定される前記方法から得られた前記ポリエチレン粉末のスパンが0.9から1.3までであることを特徴とする、実施態様11に記載の方法。
[実施態様13]
前記金属含有化合物は、n−ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ジイソブチルアルミニウムジクロライド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロライド、セスキイソブチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、又はそれらの混合物から選択され、
前記ケイ素含有化合物は、SiClであり、
前記外部電子供与体は、1,2−ジメトキシベンゼン、1,2,4−トリメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシベンゼン、2,3−ジメトキシトルエン、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシシクロヘキサン、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジメトキシブタン、2,3−ジメトキシブタン及び/又はそれらの混合物から選択される1つ以上である、
ことを特徴とする、実施態様11又は12に記載の方法。
[実施態様14]
前記方法が連続工程であることを特徴とする、実施態様11から13のいずれかに記載の方法。
[実施態様15]
実施態様11から14のいずれかに記載の方法により得られるUHMWPEの物品。