(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684819
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ラミネートをドリル加工するためのドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20200413BHJP
B26F 1/16 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
B23B51/00 S
B23B51/00 W
B23B51/00 K
B26F1/16
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-549419(P2017-549419)
(86)(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公表番号】特表2018-510072(P2018-510072A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】EP2015081038
(87)【国際公開番号】WO2016150534
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2018年10月18日
(31)【優先権主張番号】15160342.0
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506297474
【氏名又は名称】ヴァルター アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロート, エトヴィン
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−170106(JP,A)
【文献】
特表2010−517799(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0193234(US,A1)
【文献】
特開平11−058117(JP,A)
【文献】
米国特許第1418485(US,A)
【文献】
特開2005−052939(JP,A)
【文献】
米国特許第1000067(US,A)
【文献】
独国実用新案第20211589(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
B26F 1/16
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランド部(1)の自由端面側が逃げ面(3)を形成している対応する前記ランド部(1)によって互いから分離された少なくとも2つの主切屑溝(2)と、前記ランド部(1)の各々のランド面(5)に形成されており、かつ前記ランド部(1)を主ランド部(1a)と第二ランド部(1b)に分割している少なくとも1つずつの第二切屑溝(4)とを備えた、ラミネートをドリル加工するためのドリルであって、この場合、主切屑溝(2)と、前記主ランド部(1a)の逃げ面(3a)との交線により、それぞれ主切刃(6)が形成されており、かつ前記第二切屑溝(4)と、前記第二ランド部(1b)の逃げ面(3b)との交線により、それぞれ第二切刃(7)が形成されており、前記第二切刃(7)が、作動方向に見て前記主切刃(6)の後方にあり、前記主切刃(6)が呼び半径(R)まで延びているドリルにおいて、前記第二切刃(7)が、呼び半径の前で間隔(d)をあけて終端し、かつ少なくとも前記第二切刃(7)の径方向外側の区域では、前記主切刃に対する軸方向の突出(X)を有し、前記第二ランド部(1b)の第三切刃(8)が、前記主切刃(6)に対しておよび前記第二切刃(7)に対して軸方向に後ろにずれており、かつ径方向面への射影では前記ドリルの呼び半径(R)から前記第二切刃(7)の径方向外側のコーナまでの径方向の前記間隔(d)を橋絡していることを特徴とするドリル。
【請求項2】
前記間隔(d)が、ドリル直径の0.2%〜5%の間であり、または絶対数では0.01mm〜0.2mmの間であることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
前記主切刃が、少なくとも径方向外側の全域では60°〜170°の間の範囲内の先端角を規定していることを特徴とする請求項1または2に記載のドリル。
【請求項4】
前記軸方向の突出(X)が、0.1mm〜0.8mmの間の数値を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項5】
前記軸方向の突出(X)が、前記第二切刃に沿って、半径が増していくにつれて大きくなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項6】
前記第二切刃(7)の径方向長さが、ドリル半径(R)の半分未満であり、とりわけドリル半径の3分の1未満であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項7】
前記第二切刃(7)の長さ全体が180°〜200°の間の先端角で走っていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項8】
前記主切刃が、ドリル軸(50)に沿って上から見た図では、少なくとも前記主切刃の径方向外側の半分の領域で凹状に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項9】
前記主切刃(6)に接続している第一副切刃(9)が正の径方向すくい角(α)を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項10】
前記第二切刃(7)に接続している第二副切刃(11)が負の径方向すくい角(β)を、好ましくは0〜−10°の間で有することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項11】
第一副切刃(9)と、前記第一副切刃(9)の作動方向のすぐ後方にある第二副切刃(11)との間の外周角度(γ1)が、第二副切刃と、前記第二副切刃のすぐ後方にある前記第一副切刃との間の外周角度(γ2)より小さいことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項12】
外周角度の差(γ2−γ1)が、2つの主切刃を有するドリルの場合、少なくとも40度であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項13】
外周角度の差(γ2−γ1)が、2つの主切刃を有するドリルの場合、最大で70度であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項14】
前記主切屑溝の断面積が、前記第二切屑溝の断面積の少なくとも2倍であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項15】
前記ドリルがツイストドリルとして形成されていることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項16】
前記副切刃のねじれ角(δ)が、少なくとも20°であり、最大で60°であることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のドリル。
【請求項17】
前記ドリルの先端がドリルウェブのシンニング加工部(12)を有しており、前記シンニング加工部(12)がチゼルエッジ(13)を短くすることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランド部の自由端面側が逃げ面を形成している対応するランド部によって互いから分離された少なくとも2つの主切屑溝と、ランド部の各々のランド面(Schneidruecken)に形成されており、かつランド部を主ランド部と第二ランド部に分割している少なくとも1つずつの第二切屑溝とを備えた、とりわけラミネートをドリル加工するためのドリルに関し、この場合、主切屑溝と、主ランド部の端面側の逃げ面との交線により、それぞれ主切刃が形成されており、かつ第二切屑溝と、第二ランド部の端面側の逃げ面との交線により、それぞれ第二切刃が形成されており、第二切刃は、作動方向に見て主切刃の後方にあり、主切刃は呼び半径まで延びている。
【背景技術】
【0002】
対応するドリルは、DE20211589U1から知られている。
【0003】
これに関し本発明の出発点である上記の現況技術では、第二ランド部の外周寸法に対応する丸研磨マージン部の幅が、ドリル先端から軸方向へと次第に増していく。この既知のドリルの一実施形態によれば、さらに第二切刃の外周コーナが、作動方向の前方にある対応する主切刃の外周コーナと比較して、軸方向に後ろにずれている。
【0004】
つまりこのようなドリルでは、最初に主切刃によって穿孔が生成され、この穿孔の壁または縁が、後に続く第二切刃によってさらに後加工される。こうすることで、前方にある主切刃によって生成された穴縁または穴壁のバリおよびほつれが、後方にある切刃によって取り除かれるという。加工されるラミネートまたはラミネートを組成する材料の種類に応じて、とりわけ、硬い繊維要素をかなり含有しているラミネートを使用する場合には、主切刃が非常に速く摩耗し、したがって、滑らかに規定された穴直径および平滑な穴縁を、残った繊維の突出またはバリなしで生成し続けるこの従来ドリルの耐用期間は、比較的短い。
【0005】
つまり既知のドリルの欠点は、特に、新しい状態ではドリルがまだラミネート材料に比較的滑らかな穴および貫通孔を生成できるが、しかし主切刃は、特に外周コーナの領域でも、比較的速く摩耗し、これにより貫通すべき材料を滑らかに分断しなくなり、したがってその後に同じ直径で作動する第二切刃も、非常に起伏のある穿孔縁を切り取らなければならず、これではもはや十分にはうまくいかないということにある。
【発明の概要】
【0006】
これを踏まえて本発明の課題は、ラミネートを貫通する際に、穿孔の直径公差がより良好に保たれ、とりわけドリルが出る側の穴縁を、平滑に、ほとんどバリが突出することまたは残った繊維が飛び出ることなく生成できる耐用期間をより長くするという趣旨で、冒頭に挙げた種類のドリルをさらに改善することである。
【0007】
冒頭に挙げた種類のドリルに関してこの課題は、第二切刃が、呼び半径に対して間隔をあけて終端し、かつ少なくとも第二切刃の径方向外側の区域では、主切刃に対する軸方向の突出を有することによって解決される。
【0008】
これは、少なくともドリル先端の領域では、第二切刃を備えた第二ランド部または第二ランド部によって形成される逃げ面が、ドリルの直径または半径いっぱいにまでは延びていないことを意味する。つまり、呼び半径にまで達する主切刃より軸方向に飛び出ている第二切刃の最外側の外周コーナは、主切刃の外周コーナより少し小さい半径上にある。
【0009】
この場合の主切刃は、主切刃の径方向外側の、最大で第二切屑溝の径方向深さに対応する区域で、好ましくは中断なく呼び半径まで延びている。この中断とは、とりわけ主切刃の階段状のずれのことである。ただし主切刃のこのような中断は、第二切刃の軸方向の突出のゆえにどのみち実効的には被加工材と接触しない径方向領域内にある場合は、重要ではない。
【0010】
一実施形態によれば、主切刃は少なくとも前述の径方向外側の区域では60°〜170°の間の範囲内の先端角を規定している。
【0011】
これに関し主切刃がいずれにせよ60°〜170°の間の範囲内の先端角を規定している径方向外側の区域とは、主切刃のうち、第二切刃が軸方向に突出している径方向位置の直前で始まって呼び半径まで達している径方向区域のことであり、ここでもまた、主切刃の永続的に非実効的な区域は考慮しなくてよい。このような永続的に非実効的な区域とは、とりわけ、主切刃のうち、第二切刃がそれぞれ最も軸方向に突出している径方向区域である。
【0012】
呼び半径から第二切刃の外周コーナまでの間隔は、例えばドリル直径の0.2%〜5%の間、絶対数では0.01mm〜0.2mmの間であることが望ましい。具体的には0.05mmの間隔が良く適していることが分かった。
【0013】
これは具体的には、第二切刃が、軸方向の突出により、当該の材料の後の穴壁の付近または後の穴縁の付近に既に、一周している凹部、溝を、または貫通孔の場合は既にリング形の突破口を生成することを意味し、したがって、作動方向では前方にあるが軸方向では第二切刃より後ろにずれている主切刃は、いずれにせよ穿孔の径方向外側の領域では、もはや穴壁および穴縁から薄い材料層を切り取るだけでよく、これは結果的に、第二切刃がある程度摩耗してもなお、精密に、かつ滑らかに規定されたエッジを備えて製造された穿孔、とりわけ貫通孔を生じさせる。
【0014】
これに関し、1つまたは各々の第二ランド部にさらに第三切刃が追加的に設けられており、この第三切刃が、主切刃に対しても第二切刃に対しても軸方向に後ろにずれており、かつ径方向面への射影ではドリルの呼び半径から第二切刃の径方向外側のコーナまでの径方向の間隔を橋絡している場合が、たいていのラミネート材料には有用であることが分かった。つまり具体的には、第二ランド部が、段付きドリルの場合に倣って形成されており、かつ第二切刃が形成されている先端への接続部では少し小さい半径を有しており、この半径はこの場合、先端からの軸方向の間隔をあけて階段状に呼び半径へと拡張しており、この軸方向の間隔は、主切刃に対する第二切刃の突出より大きい例えば0.5mm〜1.5mmの間であることができ、これに関してはこの階段状の移行部のところで、およびこの階段状の移行部により、第三切刃が形成されている。
【0015】
主切刃に対する第二切刃の軸方向の突出は、例えば0.1mm〜0.8mmの間の数値を有しており、これに関し本発明の一実施形態では、この軸方向の突出は、第二切刃に沿って、半径が増していくにつれて大きくなる。これに関してはとりわけ、第二切刃の径方向長さも、比較的小さい半径領域、詳しくは対応する軸方向の突出が存在する半径領域に制限することができる。第二切刃のこの径方向長さは、とりわけドリル半径の半分未満であり、好ましくはドリル半径の3分の1未満である。
【0016】
主切刃に対して規定されるドリル先端角は、通常通り、ドリル先端で向かい合っている主切刃の間を内側で測定した角度である。より一般的に言えば、先端角は、ドリルの軸を含む平面への主切刃の射影と、この軸との間をドリルの内側で測定した角度の2倍として規定される。この先端角は、切刃の長さ全体で可変であるが、主切刃のうち、少なくとも第二切刃が軸方向に突出している半径領域の直前から始まって呼び半径まで延びている径方向外側の領域では、常に、(その時々で、それぞれの主切刃区域と軸の間に挟まれた角度の2倍に関して)上で規定した60°〜170°の角度範囲内にあることが有用である。
【0017】
主切刃とは異なり、本発明の一実施形態によれば第二切刃に関してはその長さ全体が180°〜200°の間の先端角で走っている。これは、いわゆる中空先端に相当し、つまり第二切刃のより径方向外側にある区域が、第二切刃のより径方向内側にある区域より軸方向前側にあり、したがってドリル軸と第二切刃の一区域との間をドリルの内側で測定した角度は90°以上になり、よって先端角は180°超であり、ただし200°の値を上回らないのが好ましい。
【0018】
これはさらに、第二切刃の軸方向の突出が、第二切刃の径方向最外側のコーナで最も大きく、第二切刃のより径方向内側にある区域に関してはだんだん小さくなり、最後にはなくなることを意味する。なぜなら、先端角は最大170°なので、主切刃の外側から内側への軌道では、主切刃の径方向内側にある区域はより軸方向前側にあるからである。
【0019】
したがって主切刃と第二切刃の先端角のこのような組合せの場合、切刃の外側から内側への軌道では、第二切刃の軸方向の突出が次第に小さくなり、最後には完全になくなり、よってそれだけでなくまださらに径方向内側に延びている第二切刃はもう何ら機能を有しておらず、ドリル軸の方向への第二切刃のさらなる軌道は重要でない。先端をできるだけ良好に安定化させるため、ランド部、とりわけ第二ランド部の逃げ面は、ドリル軸の方向に、できるだけ軸方向前側へとドリル先端に向かって勾配をつけることが有用である。これにより、典型的には呼び半径の半分から呼び半径いっぱいの少し手前までの間であり、かつたいていは呼び半径の3/4から呼び半径いっぱいの付近までの領域である小さな径方向外側の区域に、第二切刃を限定することができる。
【0020】
第二切刃の先端角が例えば180°超のこの形態では、第二切刃の径方向外側の外周コーナが、軸方向最前側にある切刃部分を形成しており、かつ第二切刃は、主切刃を超えて軸方向に突出した領域内で、ドリル加工の際にドリル加工すべき材料にリング形の溝を生成し、この溝の最深底部が呼び半径の付近にある。主切刃はより径方向内側で作動し、中心の穴を生成する。したがって貫通孔を製造する際には、穿孔の中心では一般的にドリル先端が最初に材料を突き通り、穿孔半径いっぱいに達する前に第二切刃が呼び半径の付近でリング形の溝を切り、そして貫通孔の最終的な周面の付近で突破口を生成し、これにより材料を突き通る際には、ほぼ穿孔の呼び直径のリング形またはディスク形の材料区域が取れ、その一方で続いて主切刃の径方向外側の外周コーナが、穿孔縁の薄層をさらに切り取る。
【0021】
リング形の溝の生成により、例えば繊維材料を含むラミネートを貫通する際に、第二切刃の外周コーナの領域で繊維が良好に分断される。これはとりわけ、穿孔の横断面を越えて走っている繊維が、第二切刃によって生成された溝の両側でまだ固定されていることによって、したがって材料から引き抜かれるのではなく平滑に分断されることによってうまく成功する。これに対し中心の穿孔が徐々に拡張する場合には、最初に中心で繊維がほぐされ、続いて穿孔が拡張する際に、穿孔縁から簡単には切り取ることができない。
【0022】
その後、穿孔縁にまだ残っている薄い材料層が、後に続く主切刃の外周コーナによって切り取られる。続いて第三切刃が、突出している残留物またはバリの平滑化および切取りにさらに寄与することができる。
【0023】
本発明によるドリルの場合、穿孔の最大の中心部分は主切刃によって生成され、第二切刃は、貫通すべき材料の比較的幅の狭いリング区域または中空円筒区域だけを切り取るので、主切刃の中心部分の摩耗は、最初に生じる穿孔縁に効果的に影響を及ぼすことがない。なぜなら第二切刃の外周コーナが、穿孔壁にもはや、主切刃の外周コーナによって切り取られ得る薄い材料層しか後に残していないからである。
【0024】
さらなる利点は、第二切刃の先端角が180°から僅かにしか相違していないことにあり、これは、第二切刃の外周コーナの比較的小さな負荷に寄与する。
【0025】
主切刃は、ドリル軸に沿った視点では、少なくとも主切刃の径方向外側の半分の領域で凹状に走っており、これは切屑溝の対応する形成と関連があり、かつこれは、主切刃に隣接してドリル周面に延びている第一副切刃が正のすくい角を有することを可能にする。
【0026】
これに対し第二切刃に接続している第二副切刃は負の径方向すくい角を、好ましくは0〜−10°の間の範囲内で有している。これは特に、さもなければ非常に幅の狭い第二ランド部の安定性獲得に役立ち、かつ第二副切刃のどちらかというと削いで平滑にする切断も可能にし、この第二副切刃は、第二ランド部での既に言及した第三切刃に接続している。
【0027】
本発明の一実施形態では、第一副切刃と、この第一副切刃の作動方向の後方にある第二副切刃との間の外周角度が例えば約65°であり、つまり、第二副切刃と、この第二副切刃のその後に続く主切屑溝の向こう側のすぐ後方にある第一副切刃との間の約115°の外周角度より明らかに小さい。これらの外周角度の差は、2つの主切刃を有するドリルの場合、少なくとも30°であり、最大で約70°である。対応するドリルが、それぞれ3つの主切刃および3つの主切屑溝および対応する数の第二切刃および第二切屑溝を有していてもよいことは自明であり、その際には、2つの相次ぐ主切刃の間の外周角度が180から120°へと小さくなるであろう。これに対応してこの場合、上記の外周角度も、主切刃と第二切刃の間またはより正確に言えば第一副切刃と第二副切刃の間の外周角度の差も、前述の角度差の約3分の2の値に小さくなるであろう。
【0028】
さらに、本発明によるドリルの一実施形態によれば、ドリル軸に垂直な断面で測定される主切屑溝の断面積は、第二切屑溝の断面積の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍である。
【0029】
これはとりわけ、切削加工された材料の大部分は主切刃によって生成され、かつ主切屑溝を通って運び出すことができ、その一方で第二切刃は穿孔外縁付近の材料を比較的少し切り取るだけであり、この穿孔外縁付近の材料は、相応に横断面が比較的小さい切屑溝を通ってもうまく運び出し得るという事実も顧慮している。
【0030】
切屑の効果的な搬送は、ドリルをツイストドリルとして形成することによっても促進できる。たとえこれが、とりわけ比較的薄い板を形成しているラミネートをドリル加工する際には比較的小さな重要性しかないとしてもである。
【0031】
ツイストドリルの場合、副切刃のねじれ角が、つまり第一副切刃のねじれ角も第二副切刃のねじれ角も、少なくとも20°であり、最大で60°であることが望ましい。第一副切刃も第二副切刃も、同じドリルランド部に沿って走っており、実質的には第二切屑溝と第一副切刃のランド面(Spanruecken)とによって隔てられているだけなので、どのみち第一副切刃と第二副切刃のねじれ角の相違は非常に小さくしか生じ得ないであろう。この副切刃のねじれ角はさらに、貫通すべき素材に応じ、生成される穿孔壁の平滑さに完全に影響を及ぼすことができる。
【0032】
しかしその代わりに、ドリルのねじれ角が比較的小さいか、または真っ直ぐに溝をつけたねじれ角ゼロのドリルであってもよい。
【0033】
そのうえ一実施形態では、ドリルの先端がドリルウェブのシンニング加工部を有している。これは、ドリル中心のチゼルエッジを効果的に短くし、こうして、貫通すべき材料へのドリル先端の、穴あけ時のセンタリングの改善および侵入の改善に寄与している。
【0034】
本発明のさらなる利点、特徴、および利用可能性は、好ましい一実施形態およびそれに属する図の、以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】異なる視角からのドリル先端の拡大側面図である。
【
図3】異なる視角からのドリル先端の拡大側面図である。
【
図4】
図4は、本発明によるドリルの一実施形態の先端の端面側を上から見た図である。
図4aおよび
図4bは、
図4からの部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1では、シャフト20および切屑溝区域10を有する本発明によるドリル100が側面図で認識される。切屑溝区域10は、螺旋状に周囲を走っている主切屑溝2および第二切屑溝4を特徴とし、主切屑溝2および第二切屑溝4はそれぞれ第一副切刃9および第二副切刃11によって画定されている。ねじれ角、つまりドリル周面の側面図または平坦な展開図において副切刃9または11と軸50の間に挟まれた角度は、30°の大きさである。
【0037】
ドリル100の先端角、つまり側面図においてここでは直線的に走っている主切刃6の間の角度は、ここでは約130°である。
【0038】
ドリル先端のさらなる詳細は
図1には示されておらず、以降の
図2〜
図5の詳細図でより良く認識できる。
【0039】
図2は、ドリル先端の拡大側面図を示している。主切屑溝2と、ランド部を主ランド部1aと第二ランド部1bに分割している第二切屑溝4とが、切屑溝2または4とドリルランド面の周面との交線に沿った第一副切刃9および第二副切刃11と共に認識される。主ランド部は、一方では穴内での精密な案内を保証するため、しかし他方ではさらに穴壁での摩擦を軽減するため、ドリルの包絡面を規定している丸マージン部を有することもでき、かつその他のところでは径方向内側にずれていることができる。
【0040】
図2の側面図は、外周コーナ15の領域での主切屑溝の径方向外側の逃げ面への接線軌道に対応する視線方向に対応している。
【0041】
図3は、外周コーナ14の領域での第二切屑溝4の逃げ面への接線に沿った類似の図を示している。
【0042】
ここからは、
図4に基づく、本発明によるドリルの軸に沿った視線方向で端面側を上から見た図を参照しながら、このドリルの本質的な細部を説明する。
【0043】
ドリルは、直径上で向かい合っており、かつ
図1によれば螺旋状に周囲を走っている2つの主切屑溝2を有しており、これらの主切屑溝2は、対応するランド部1によって分離されており、ランド部1も相互に直径上で向かい合っており、かつ主切屑溝2の螺旋状の軌道に追従している。これらのランド部1もまた、第二切屑溝4により主ランド部1aと第二ランド部1bに分離されている。
【0044】
ランド部1の端面側の面3は、ここではハッチングをつけて示した主逃げ面3aおよび第二逃げ面3bを規定しており、これに関し主切刃6は、主逃げ面3aと主切屑溝2の交線によって形成されており、第二切刃7は、第二逃げ面3bと第二切屑溝4の交線によって形成されている。逃げ面3aおよび3bは、小さいが必要な逃げ角は別として、相応の一周する主切刃6および第二切刃7の回転面として生成されるような、ほぼ円錐面の区域である。ランド部1の端面側の面3の残りの区域は、軸方向に、シャフト20の方向に、比較的はっきりと斜めに切り落とされているか、または平たくされているか、または後ろにずらされており、かつ逃げ面3aおよび3bより、ならびに主切刃6および第二切刃7によって規定される回転面より、軸方向のいずれにせよ内側にまたはドリルの先端から見て軸方向後ろ側にある。
【0045】
第一副切刃9と、作動方向においてこの第一副切刃9のすぐ後方にある第二副切刃11との間の外周角度γ1は、第二副切刃11と、この第二副切刃11のすぐ後方にある第一副切刃9との間の外周角度γ2より小さい。
【0046】
ドリル中心ではさらにシンニング加工部12が認識され、シンニング加工部12は、ドリル先端のチゼルエッジ13を、シンニング加工部のない対応するドリルに比べて短くし、こうしてドリルのセンタリングの改善に寄与している。このシンニング加工部とは、ドリル先端に設けられたドリルウェブのくぼみのことであり、このドリルウェブは、さもなければドリル内に書き込まれた中心の円筒体によって規定され、この円筒体は、(シンニング加工部12なしでの)主切屑溝2の底によって画定されている。シンニング加工部12は、例えばドリル端面でドリルウェブを研ぎくぼめることで製造できる。ドリルは、超硬ソリッドから成るのが好ましく、1つまたは複数のコーティングを有することもでき、このコーティングは、摩耗強度を上昇させ、場合によっては切屑溝内での切屑搬送も改善し、かつ穿孔の表面品質の改善にも寄与し得る。
【0047】
主切刃6は、径方向外側へと連続的に、半径Rによって規定されたドリル外周での外周コーナ15まで延びている。これに対し第二切刃7は、ドリルの中心に対してより大きな間隔をあけてから始まっており(
図4でハッチングをつけて示した逃げ面3bの径方向内側の端で始まっている)、かつ径方向外側へと、半径Rによって規定されたドリル周面の近くへ、間隔dをあけて外周コーナ14までしか延びておらず、この間隔dは百分の数ミリメートル〜十分の数ミリメートルの大きさであるのが望ましい。第二切刃7の細部は、
図4からの部分拡大
図4aで認識される。そのうえさらに、第二切刃7に比べて軸方向に後ろにずれている第三切刃8が認識され、この第三切刃8は正確に、半径Rに対する第二切刃7の残りの間隔dを橋絡している。
【0048】
ただし、第二切刃7が、軸方向に見て少なくとも第二切刃7の径方向外側の区域では、送り方向に見て主切刃6の軸方向前側にある一方で、第二ランド部1bでの第三切刃8は、第三切刃8が軸方向において主切刃6の後ろ側にあるように、軸方向に後ろにずれている。
【0049】
共通の平面に射影した、ドリルの軸方向外側の領域内の主切刃6、第二切刃7、および第三切刃8の切刃形状を、
図5で認識することができる。
【0050】
図4aおよび
図4bの部分拡大図ではさらに、同時に副切刃9のすくい角である主切刃6の径方向すくい角αが正であることが認識され、副切刃9は、主切刃エッジ6の径方向最外側の外周コーナの領域で始まっており、つまり、径方向最外側の外周コーナの領域内の主切刃6への接線t
1は、中心軸50の左で、つまり作動方向の後ろ側でドリル直径を横断し、かつ外周コーナ15への半径ベクトルと角度αを挟んでいる(
図4bを参照)。(接線t
1は、主切刃エッジ6が均一に凹状に湾曲している場合、そもそも全体として切刃エッジ6の後ろにあるべきであろうから、
図4および
図4bでは外周コーナ15の領域内のすくい面への接線として精密には描かれていない。)
【0051】
これに対し、同時に第二副切刃11の径方向すくい角である第二切刃7および第三切刃8の径方向すくい角βは負であり、つまり第二切刃7の外側の外周コーナ14の領域内の第二切刃7への接線t
2(
図4、
図4aを参照)は、回転方向または作動方向に見て軸50の前でドリルを横断し、かつ外周コーナ14への半径ベクトルと角度βを挟んでいる(
図4aを参照)。
【0052】
第二切刃7と第三切刃8の間の軸方向の間隔は、典型的には十分の数ミリメートルの範囲内であり、しかし最大で1または2mmであってもよい。
【0053】
主切刃6および第二切刃7の軸方向すくい角は、それぞれ正である。
【0054】
図5でのドリル形状に基づき、ドリルは、例えば板状のラミネートを貫通する際、最初は中心で先端により、貫通すべき材料を通り抜けることが認識され(水平な実線を参照)、その際、出る側で形成される開口部は、最初は中心から次第に拡大していく。
【0055】
ただし、中心の開口部が穿孔の外側領域に達する前に、ドリルの外径付近の領域内で(水平な破線を参照)、最初は第二切刃7の最も飛び出ている外周コーナ14により突破口が生じ、第二切刃7はこれにより、穿孔の端で、幅Bのそれまでまだ残っているリング形の区域の材料を取り去る。ただし材料に応じて、ドリル先端が突き通る前の残っている穿孔中心の材料が軸方向に押しのけられる可能性もあり、これにより、幅Bが明らかに拡大するか、またはそれどころか中心から外周コーナ14まで達する完全な円盤として切り離される。この外周コーナ14に沿ったリングまたは円盤の切り離しは、ドリルの外半径Rの非常に近くに場合によっては有り得る繊維の良好な断裂または良好な分断に効果的であり、その後、残っている薄い材料層が主切刃6の外周コーナ15によって切り取られ、最後に第三切刃8が穿孔の壁面および縁面を平滑化および後加工する。
【0056】
これにより、第二切刃7が軸方向に、内側から外側へと次第に増していく数値X分だけ突出している領域では、ドリルの主切刃はほとんど損傷せず、この場合、第二切刃7に比べた主切刃の径方向の突出dが小さいことに基づき、主切刃6の外周コーナ15にも少ししか負荷がかからない。この効果は、第二切刃7が主切刃6に比べて十分に軸方向に突出している間は有効であり、第二切刃7の対応する摩耗、つまり第二切刃7が主切刃とほとんど同じレベルになるほど第二切刃7が軸方向に短くなる摩耗の際に初めて、ドリルを研ぎ直すおよび尖らせる必要がある。
【0057】
当初の開示の目的のため、本明細書、図面、従属請求項から当業者に推論されるすべての特徴は、たとえその特徴が具体的に特定のさらなる特徴との関連でしか記載されなかったとしても、単独でも任意の編成でも、ここで開示されたほかの特徴または特徴群と組み合わせることが、これが明示的に排除されておらず、または技術的な実情がそのような組合せを不可能もしくは無意味にしない限りは可能であることを指摘する。特徴の考え得るすべての組合せの包括的で明確な表現や、個々の特徴の互いからの独立性の強調は、ここでは説明の簡潔さおよび読みやすさのために断念しているにすぎない。