【実施例1】
【0026】
本実施例は、ローラ機構の基本的な構成を示すものである。
【0027】
図1は、ローラ機構用の支持体及びローラ機構の構成を示す側面図であり、ワーク20の搬送方向が図面左右方向である。ローラ機構10は、対向する2つのローラによりワーク20を挟んで搬送する機構であり、支持体11、下段ローラ12、及び上段ローラ13を備える。ここで、ワーク20として、例えば半導体基板を搬送することができる。
【0028】
(支持体の構成)
支持体11は、下段ローラ12及び上段ローラ13を回転可能に受けるローラ機構用の支持体である。下段ローラ12及び上段ローラ13のそれぞれの両端を支持するよう、一対の支持体11が互いに対向して床面14上に配置される。支持体11は、ワーク20の搬送方向を長手とする矩形状の板状部材であり、上辺に向かって開口する溝11aが長手方向に複数並んで形成されている。なお、支持体11は、一軸方向に並設された1又は複数の溝11aが形成されていれば、板状の一体物に限らず任意の形状及び構造を採用することができる。
【0029】
図2は、溝の形状を示す図である。溝11aは、下段溝11a
1及び上段溝11a
2を含む。
【0030】
下段溝11a
1は、第1の半円11a
11及び第1の半円11a
11にその半円の弦に底辺を重ねて接続する第1の矩形11a
12を含む形状に形成されている。第1の矩形11a
12の底辺の全体が第1の半円11a
11の弦の全体に重なっている。なお、第1の矩形11a
12に代えて上辺に対して底辺が短い台形を含むこととしてもよい。第1の半円11a
11の周縁部11cが、下段ローラ12を支持する。
【0031】
上段溝11a
2は、第1の半円11a
11よりも大きな直径を有し、第1の矩形11a
12とその上辺側に一部を重ねて接続する第2の半円11a
21(第1の矩形11a
12の内部を除く:図において第2の半円11a
21が第1の矩形11a
12によって切り取られている。)及び第2の半円11a
21にその半円の弦に底辺を重ねて接続する第2の矩形11a
22を含む形状に形成され、第2の矩形11a
22の上辺側を支持体11の上辺に開口している。第2の矩形11a
22の底辺の全体が第2の半円11a
21の弦の全体に重なっている。なお、第2の矩形11a
22に代えて上辺に対して底辺が短い台形を含むこととしてもよい。第2の半円11a
21の周縁部11bが、上段ローラ13を支持する。
【0032】
第2の半円11a
21は、その半円の弦を第1の矩形11a
12の上辺と平行に向け、第2の矩形11a
22は、側辺を第1の矩形11a
12の側辺と平行に向けて、上段溝11a
2を形成している。それにより、下段及び上段溝11a
1,11a
2が同一方向を向き、下段ローラ12及び上段ローラ13を溝11aの開口を介してそれぞれの溝に容易に入れることができる。なお、第2の半円11a
21は、その半円の弦を第1の矩形11a
12の上辺に対して傾斜して支持体11の上辺側に向け、第2の矩形11a
22は、側辺を第1の矩形11a
12の側辺と交差する方向に向けて、上段溝11a
2を形成してもよい。つまり、上段溝11a
2を下段溝11a
1に対して傾けてもよい。また、下段溝11a
1を、上段溝11a
2と同じ角度で又は異なる角度で傾けてもよい。これによっても、下段ローラ12及び上段ローラ13を溝11aの開口を介してそれぞれの溝11aに容易に入れることができる。
【0033】
上述の構成の支持体11により、下段ローラ12を上段溝11a
2(すなわち、溝11a)の開口から挿入し、第2の矩形11a
22及び第2の半円11a
21を介して下段溝11a
1に受け、上段ローラ13を上段溝11a
2(すなわち、溝11a)の開口から挿入して上段溝11a
2に受けることで、下段ローラ12及び上段ローラ13の軸受け位置を安定して定めることができる。
【0034】
(ローラ機構の構成)
図3は、ローラ機構用の支持体及びローラ機構の構成を示す正面図である。下段ローラ12は、複数の溝11aのそれぞれに挿入されて、ワーク20をその下側から支持しつつ回転して搬送する部材であり、ローラ軸12a、軸受け12b及び搬送用円盤12cを有する。
【0035】
ローラ軸12aは、下段ローラ12の回転軸となる軸体である。
【0036】
軸受け12bは、第1の半円11a
11と等しい直径を有するリング状の部材であり、ローラ軸12aの両端に固定されて下段溝11a
1の中で摺動回転する。軸受け12bが第1の半円11a
11に位置決めされ、ローラ軸12aの中心が第1の半円11a
11の中心に位置決めされる。
【0037】
搬送用円盤12cは、ローラ軸12aと中心を合わせて設けられた円盤状の部材である。ワーク20を下側から支持する。なお、複数の搬送用円盤12cは等経であり、ワーク20は平面状に支持される。
【0038】
上段ローラ13は、複数の溝11aのそれぞれに挿入されて、ワーク20をその上側から支持しつつ回転して搬送する部材であり、ローラ軸13a、軸受け13b及び搬送用円盤13cを有する。
【0039】
ローラ軸13aは、上段ローラ13の回転軸となる軸体である。
【0040】
軸受け13bは、第2の半円11a
21と等しい直径を有するリング状の部材であり、ローラ軸13aの両端に固定されて上段溝11a
2の中で摺動回転する。軸受け13bが第2の半円11a
21に位置決めされ、ローラ軸13aの中心が第2の半円11a
21の中心に位置決めされる。
【0041】
搬送用円盤13cは、ローラ軸13aと中心を合わせて設けられた円盤状の部材である。ワーク20を上側から支持する。なお、複数の搬送用円盤13cは等経であり、ワーク20は平面状に支持される。
【0042】
上述の下段ローラ12及び上段ローラ13の構成により、下段ローラ12及び上段ローラ13を溝11aの開口から挿入して、下段ローラ12を下段溝11a
1に受け、上段ローラ13を上段溝11a
2に受けることで、下段ローラ12及び上段ローラ13のそれぞれの位置を独立に定めることができる。それにより、上段ローラ13の位置を調整するための追加の位置合わせ部材(コロ等)を要さず、ローラ機構10を簡便に構成することが可能となる。
【0043】
なお、ローラ機構10は、下段ローラ12及び上段ローラ13に接続するギア(不図示)をさらに備えてもよい。下段ローラ12と上段ローラ13の回転を連動することができ、それによりワークを安定して搬送することが可能となる。
【0044】
以上詳細に説明したように、支持体11は、第1の半円11a
11、第1の半円11a
11にその半円の弦に一辺の少なくとも一部を重ねて接続する第1の矩形11a
12を含む形状に形成された下段溝11a
1、第1の半円11a
11よりも大きな直径を有し、第1の矩形11a
12とその矩形の一辺に対向する他辺側に少なくとも一部を重ねて接続する第2の半円11a
21、第2の半円11a
21にその半円の弦に一辺の少なくとも一部を重ねて接続する第2の矩形11a
22、を含む形状で、第2の矩形11a
22の一辺に対向する他辺側を開口して形成された上段溝11a
2と、を備える。下段ローラ12を上段溝11a
2の開口から挿入し、第2の矩形11a
22及び第2の半円11a
21を介して下段溝11a
1に受け、上段ローラ13を上段溝11a
2の開口から挿入して上段溝11a
2に受けることで、2つのローラの軸受け位置を独立に定めることができる。
【0045】
また、ローラ機構10は、支持体11、第1の半円11a
11と等しい直径を有する下段ローラ12、及び第2の半円11a
21と等しい直径を有する上段ローラ13を備える。下段ローラ12及び上段ローラ13を開口から挿入して、下段ローラ12を下段溝11a
1に受け、上段ローラ13を上段溝11a
2に受けることで、下段ローラ12及び上段ローラ13のそれぞれの軸受け位置を独立に定めることができる。
【実施例2】
【0046】
本実施例は、ローラ機構を使用したエッチング装置を示すものである。ローラ機構は実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0047】
図4は、エッチング装置の構成を示す正面図である。エッチング装置1は、ワーク20にエッチング液を噴射する装置であり、ローラ機構10、ギアモータ(不図示)、及び噴射装置14を備える。
【0048】
ローラ機構10は、先述のとおりの構成を有し、下段ローラ12及び上段ローラ13の離間距離(すなわち、ローラ軸12a,13aの間隙のサイズ)はワーク20の厚さに略等しくなるように、下段ローラ12及び上段ローラ13をそれぞれ受ける下段及び上段溝11a
1,11a
2の高さ(すなわち、軸受け位置)が定められている。それにより、ワーク20を下段ローラ12及び上段ローラ13により適当な力で挟圧して、それらの間を介して安定に搬送することができる。
【0049】
ギアモータは、ワーク20を搬送するための動力を発生するモータであり、チェーン、ギア等を介して下段ローラ12及び上段ローラ13に動力を伝達する。例えば、ギアモータの駆動軸をヘリカルギアを介して下段ローラ12に接続し、下段ローラ12をスパーギアを介して上段ローラ13に接続する。下段ローラ12及び上段ローラ13の回転速度、すなわちワーク20の搬送速度は、ギア比及びインバータ制御により調整される。
【0050】
噴射装置14は、一対の軸受け13の間で床面14上に設置されている。噴射装置14は、下段ローラ12の下方から下段ローラ12の間隙を介してエッチング液を噴射して、ローラ機構10により搬送されるワーク20の下面にエッチング液を噴射する。
【0051】
なお、噴射装置14は、ローラ機構10の上方に設けてもよい。噴射装置14は、上段ローラ13の上方から上段ローラ13の間隙を介してエッチング液を噴射して、ローラ機構10により搬送されるワーク20の上面にエッチング液を噴射する。
【0052】
なお、噴射装置14は、床面14上及びローラ機構10の上方にそれぞれ設置してもよい。2つの噴射装置14により、ローラ機構10により下段ローラ12及び上段ローラ13との間を介してワーク20を搬送しつつ、噴射装置14によりワーク20の下面及び上面にエッチング液を噴射することができる。
【0053】
以上詳細に説明したように、エッチング装置1は、ローラ機構10及び下段ローラ12の下方又は上段ローラ13の上方からエッチング液を噴射する噴射装置14を備える。ローラ機構10により下段ローラ12及び上段ローラ13との間を介してワーク20を搬送しつつ、噴射装置14によりワーク20の下面又は上面にエッチング液を噴射することができる。
【実施例3】
【0054】
本実施例は、上段ローラと下段ローラの離間距離を可変とするローラ機構を示すものである。本実施例において相違を示した点を除き実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。また、本実施例のローラ機構は、実施例2に示したエッチング装置にも適用可能である。
【0055】
図5は、ローラ機構用の支持体の構成を示す図である。ここで、
図5(A)及び(B)は、それぞれ、正面図及び
図5(A)における中心線についての断面を示す図である。支持体11は、第2の半円11a
21の周縁部11bが、低い第1段部11b
1及び高い第2段部11b
2を有する。第1及び第2段部11b
1,11b
2は、それぞれが正面視において第2の半円11a
21に沿った底面を有する。
【0056】
図6は、上段ローラの軸受けの構成を示す図である。ここで、
図6(A)及び(B)は、それぞれ、正面図及び
図6(A)における中心線についての断面を示す図である。軸受け13bは、長手方向(すなわち、ローラ軸13aの長手方向)に、低い第1端部13b
1及び高い第2端部13b
2を有する。第1及び第2端部13b
1,13b
2は、それぞれが正面視において第2の半円11a
21に等しい底面を有する。ここで、第1及び第2端部13b
1,13b
2の高低差は、軸受け13bの第1及び第2段部11b
1,11b
2の高低差に等しいものとする。
【0057】
図7は、ローラ機構の構成を示す図である。なお、簡単のため、下段ローラ12等は省略する。ローラ機構10は、上述の支持体11及び上段ローラ13を備える。
図7(A)に示すように、上段ローラ13の軸受け13bを一向きに、すなわち第1及び第2端部13b
1,13b
2をそれぞれ支持体11の第1及び第2段部11b
1,11b
2に向けて上段溝11a
2に入れて、軸受け13bの第1及び第2端部13b
1,13b
2をそれぞれ上段溝11a
2の第1及び第2段部11b
1,11b
2上に受けることができる。他方、
図7(B)に示すように、上段ローラ13の軸受け13bを逆向きに、すなわち第1及び第2端部13b
1,13b
2をそれぞれ支持体11の第2及び第1段部11b
2,11b
1に向けて上段溝11a
2に入れて、軸受け13bの第1及び第2端部13b
1,13b
2のうちの低いほう(この例では第1端部13b
1)を上段溝11a
2の第1及び第2段部11b
1,11b
2のうちの高いほう(この例では第2段部11b
2)の上に支持することもできる。
図7(A)に示す状態と
図7(B)に示す状態とで、ローラ軸13aの高さがDだけ相違する。Dの値は、第1段部11b
1と第2段部11b
2との高さの差に等しい。これによって、上段ローラ13と下段ローラ12との離間距離もDだけ相違し、ワーク20の厚さの相違等に対応することができる。
【0058】
Dの値は、0.5mm程度とすることが好ましい。
【実施例4】
【0059】
本実施例は、上段ローラと下段ローラの離間距離を可変とするローラ機構の別途の構成を示すものである。
【0060】
図8は、上段ローラの軸受けの構成を示す図である。軸受け13bは、第2の半円11a
21と等しい直径を有する2つの円弧13b
3,13b
4とこれら2つの円弧の端部を接続する2つの直線とを含む角丸長方形状の外縁形状を有し、中心から下方に偏心したローラ軸13aを通す軸受孔を有する。
【0061】
図9は、ローラ機構の構成を示す図である。なお、簡単のため、下段ローラ12等は省略する。ローラ機構10は、
図1に示した支持体11及び上述の上段ローラ13を備える。
図9(A)に示すように、上段ローラ13の軸受け13bを一向き、すなわちローラ軸13aを下方に偏心して上段溝11a
2に入れて軸受け13bを受けることができる。他方、
図9(B)に示すように、上段ローラ13の軸受け13bを逆向きに、すなわちローラ軸13aを上方に偏心して上段溝11a
2に入れて軸受け13bを受けることもできる。
図9(A)に示す状態と
図9(B)に示す状態とで、ローラ軸13aの高さがDだけ相違する。Dの値は、軸受け13bの軸受孔の偏心距離(
図8にdで示す。)の2倍に等しい。これによって、上段ローラ13と下段ローラ12との離間距離もDだけ相違し、ワーク20の厚さの相違等に対応することができる。