(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部は、前記下部ストッパの閉弁方向側の側面に対向されて前記下部ストッパを周方向で支持するようにされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動弁。
前記ステータは、前記弁本体に接合された筒状のキャンの外側に配置され、前記ロータは、前記キャンの内側に配置されて前記弁軸ホルダに一体回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電動弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した如くの従来の電動弁では、前記弁体と弁座との間に所定の大きさの間隙を形成するため、ストッパ機構を構成する固定ストッパ体を持つ下部ストッパに係合して当該下部ストッパのガイドブッシュに対する相対回転を防止するストッパ押さえ(押さえ部材)を用いて、当該下部ストッパをガイドブッシュに対して回転不能に連結して位置決めする場合がある。
【0006】
しかし、前記ストッパ押さえ(押さえ部材)は、通常、剛性の高い金属部材(金属製の剛板)で構成されている。そのため、例えばイニシャライズ(電動弁の基点出し)を行うに当たって、弁軸ホルダに設けられた可動ストッパ体が下部ストッパに設けられた固定ストッパ体に衝突したとき、前記ストッパ押さえはほとんど撓まず(変形せず)、可動ストッパ体や固定ストッパ体、ストッパ押さえに加わる力(衝撃力)が大きくなり、その衝突音(イニシャライズ音)が大きくなるとともに、ストッパ体同士の摩耗が多くなるおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、イニシャライズ(電動弁の基点出し)を行う際の衝突音(イニシャライズ音)やストッパ体同士の摩耗を軽減することのできる電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記する課題を解決するために、本発明に係る電動弁は、基本的に、弁体が設けられた弁軸と、該弁軸が軸線方向に相対移動可能及び相対回転可能に内挿されるガイドブッシュと、弁座付きの弁口を有するとともに前記ガイドブッシュが取付固定された弁本体と、前記弁軸に連結される弁軸ホルダと、前記弁軸ホルダを前記ガイドブッシュに対して回転させるためのロータ及びステータを有するモータと、前記ロータの回転駆動に応じて前記弁体を前記弁座に対して昇降させるための、前記ガイドブッシュと前記弁軸ホルダとの間に設けられたねじ送り機構と、前記弁軸ホルダの回転下動規制を行うための、前記弁軸ホルダに設けられた可動ストッパ体及び前記ガイドブッシュに取り付けられた下部ストッパに設けられた固定ストッパ体を有する下部ストッパ機構と、前記下部ストッパの前記ガイドブッシュに対する相対移動を防止する押さえ部材と、を備え、前記押さえ部材に、前記下部ストッパを周方向で支持するとともに、周方向に弾性変形可能とされた支持部が立設され
、前記押さえ部材によって、前記下部ストッパが前記ガイドブッシュに対して上方又は下方に付勢されていることを特徴としている。
【0009】
好ましい態様では、前記支持部に、径方向で視たときに所定半径を持つように形成された湾曲部が設けられる。
【0010】
他の好ましい態様では、前記支持部は、前記下部ストッパの閉弁方向側の側面に対向されて前記下部ストッパを周方向で支持するようにされる。
【0011】
他の好ましい態様では、前記支持部は、前記下部ストッパに埋設されて前記下部ストッパを周方向で支持するようにされる。
【0013】
別の好ましい態様では、前記押さえ部材と前記下部ストッパとが一部品として構成される。
【0016】
更に好ましい態様では、前記押さえ部材に、前記下部ストッパの下面に当接して該下部ストッパを押し上げる上方付勢部が設けられる。
【0018】
更に好ましい態様では、前記押さえ部材に、前記下部ストッパの上面に当接して該下部ストッパを押し下げる下方付勢部が設けられる。
【0019】
別の好ましい態様では、前記ステータは、前記弁本体に接合された筒状のキャンの外側に配置され、前記ロータは、前記キャンの内側に配置されて前記弁軸ホルダに一体回転可能に連結される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、押さえ部材において下部ストッパを周方向で支持する支持部が、周方向に弾性変形可能とされるので、例えばイニシャライズ(電動弁の基点出し)を行うに当たって、弁軸ホルダに設けられた可動ストッパ体が下部ストッパに設けられた固定ストッパ体に衝突したとき、当該支持部が周方向に弾性的に変形する(撓む)ことによって、その(周方向の)衝撃が緩和されるため、イニシャライズ(電動弁の基点出し)を行う際の衝突音(イニシャライズ音)やストッパ体同士の摩耗を効果的に軽減することができる。
【0021】
また、その衝突の後に、前記支持部の弾性力(反発力)によって、当該支持部により支持される下部ストッパを元の位置もしくは姿勢に戻すことができるため、通過流量の制御性を確保することができる。
【0022】
また、前記押さえ部材と前記下部ストッパとが一部品として構成されるので、部品点数や組立工数が少なくて済むとともに、組立工程を簡素化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0025】
なお、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、誇張して描かれている場合がある。また、本明細書において、上下、左右等の位置、方向を表わす記述は、
図1の方向矢印表示を基準としており、実際の使用状態での位置、方向を指すものではない。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る電動弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
【0027】
図示実施形態の電動弁1は、空気調和機、冷凍機等の冷凍サイクルに流量制御弁等として組み込まれて使用されるもので、主に、弁体14が設けられた弁軸10と、ガイドブッシュ20と、弁軸ホルダ30と、弁本体40と、キャン55と、ロータ51とステータ52とからなるステッピングモータ50と、圧縮コイルばね(付勢部材)60と、ストッパとしての固定部材70と、ねじ送り機構28と、下部ストッパ機構29とを備える。
【0028】
前記弁軸10は、上側から、上部小径部11と、中間大径部12と、下部小径部13とを有し、その下部小径部13の下端部に、弁口46を流れる流体(冷媒)の通過流量を制御するための段付き逆円錐状の弁体14が一体的に形成されている。
【0029】
前記ガイドブッシュ20は、前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で内挿される円筒部21と、該円筒部21の上端部から上方に延びており、該円筒部21よりも内径が大きく、前記弁軸10の中間大径部12の上端側と上部小径部11の下端側とが内挿される延設部22とを有している。前記ガイドブッシュ20の円筒部21の外周には、ロータ51の回転駆動に応じて前記弁軸10の弁体14を弁本体40の弁座46aに対して昇降させるねじ送り機構28の一方を構成する固定ねじ部(雄ねじ部)23が形成されている。また、前記円筒部21の下部(固定ねじ部23より下側の部分)は、大径とされ、弁本体40の嵌合穴44への嵌合部27とされる。前記固定ねじ部23(における弁軸ホルダ30より下側)には、下部ストッパ25が螺着されており、その下部ストッパ25の外周には、弁軸ホルダ30の回転下動規制を行う下部ストッパ機構29の一方を構成する固定ストッパ体24が一体的に突設されている。なお、本例では、嵌合部27の上面27aは、下部ストッパ25の下動規制を行う(言い換えれば、後述する着座状態における下部ストッパ25の位置を規定する)ストッパ部とされる。
【0030】
また、本例では、前記ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に取着された下部ストッパ25に、ストッパ押さえ(押さえ部材)48が装着(外装)されており、当該ストッパ押さえ48によって下部ストッパ25がガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に対して回転不能に連結されている(後で詳述)。
【0031】
前記弁軸ホルダ30は、例えば樹脂製(好ましくは、固定部材70との接触を考慮して、耐摩耗性の高いSUSや炭素繊維等で強化された樹脂製)とされ、前記ガイドブッシュ20が内挿される円筒部31と前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部が(軸線O方向に相対移動可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で)挿通される挿通穴32aが貫設された天井部32とを有している。前記弁軸ホルダ30の円筒部31の内周下部には、前記ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と螺合して前記ねじ送り機構28を構成する可動ねじ部(雌ねじ部)33が形成されるとともに、その円筒部31の内周上部は、前記ガイドブッシュ20の円筒状の延設部22の外周に当接(摺接)せしめられている。また、その円筒部31の外周下端には、前記下部ストッパ機構29の他方を構成する可動ストッパ体34が一体的に突設されている。
【0032】
また、前記弁軸ホルダ30の天井部32の上面(後述する固定部材70のフランジ部72との対向面)には、
図1とともに
図2を参照すればよくわかるように、平面視で(軸線O方向で視て)略扇形状(ここでは、中心角が約90度の扇形状)の2つの凸部35が一体に形成されている。詳しくは、前記2つの凸部35は、天井部32の上面における挿通穴32a周り(言い換えれば、弁軸ホルダ30の回転軸線O周り)で軸線Oに対して反対側に(言い換えれば、弁軸ホルダ30の回転軸線Oに対して対称となる位置に)上向きに突設されるとともに、その間(本例では、前記可動ストッパ体34の周方向の一端面34aの上方部分、つまり、軸線O方向で視たときに前記可動ストッパ体34の周方向の一端面34aと同じ位置を含む部分)が切り欠かれた形状を有している(平面視で略扇形状(ここでは、中心角が約90度の扇形状)の切欠き36)。
【0033】
前記の凸部35によって、固定部材70に対する弁軸ホルダ30の接触面積が減少するため、例えば、弁軸ホルダ30が固定部材70に当接するときの接触抵抗(回転摺動抵抗)が小さくなる。
【0034】
また、例えば、前記弁軸ホルダ30が樹脂等の成形品で作製されている場合、成形時に形成されるウェルドラインやパーティングラインの位置と切欠き36の位置とを合わせる、すなわち、成形時にウェルドラインやパーティングラインが形成される箇所に切欠き36を設けることにより、前記接触抵抗(回転摺動抵抗)をさらに小さくできるとともに、前記弁軸ホルダ30の摺動面の平坦度が高くなり、弁軸10の軸ずれをさらに抑えることができる。
【0035】
例えば、弁軸ホルダ30における可動ストッパ体34の逆側に成形用の樹脂を注入するためのゲートが設けられる場合、前述のように、可動ストッパ体34の上方(より具体的には、可動ストッパ体34の周方向の一端面34aの上方部分)に切欠き36を設けることにより、前記弁軸ホルダ30の凸部35には、成形時に形成されるウェルドラインやパーティングラインが存在しなくなるため、前記接触抵抗(回転摺動抵抗)をさらに小さくできるとともに、前記弁軸ホルダ30の摺動面の平坦度が高くなり、弁軸10の軸ずれをさらに抑えることができる。
【0036】
また、弁軸ホルダ30の天井部32の上面において前記凸部35を弁軸ホルダ30の回転軸線Oに対して対称に配置することで、弁軸10の軸ずれをより効果的に抑えられるとともに、前記凸部35を弁軸ホルダ30の回転軸線O周りの複数の箇所に分散して配置することで、固定部材70に対する弁軸ホルダ30(の凸部35)の接触面積をさらに減少させることが可能となる。
【0037】
なお、前記弁軸ホルダ30の天井部32の上面に設けられる凸部35の形状、数、位置等は、図示例に限られないことは当然であるし、前記凸部35は省略してもよい。
【0038】
また、前記弁軸10の上部小径部11と中間大径部12との間に形成された段丘面(段差部)15と前記弁軸ホルダ30の天井部32の下面との間には、前記弁軸ホルダ30の天井部32の下面側に配置された円板状の押さえ板(ワッシャ)61を挟んで、弁軸10の上部小径部11に外挿されるように、前記弁軸10と前記弁軸ホルダ30とが昇降方向(軸線O方向)で離れる方向に付勢する、言い換えれば前記弁軸10(弁体14)を常時下方(閉弁方向)に付勢する円筒状の圧縮コイルばね(付勢部材)60が縮装されている。
【0039】
前記弁本体40は、例えば真鍮やSUS等の金属製円筒体から構成されている。この弁本体40は、内部に流体が導入導出される弁室40aを有し、該弁室40aの側部に設けられた横向きの第1開口41に第1導管41aがろう付け等により連結固定され、該弁室40aの天井部に前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で挿通される挿通穴43及び前記ガイドブッシュ20の下部(嵌合部27)が嵌合されて取付固定される嵌合穴44が形成され、該弁室40aの下部に設けられた縦向きの第2開口42に第2導管42aがろう付け等により連結固定されている。また、前記弁室40aと前記第2開口42との間の底部壁45に、前記弁体14が接離(接近・乖離)する弁座46aを有する段付きの弁口46が形成されている。
【0040】
前記弁本体40の上端部外周(弁本体40におけるガイドブッシュ20の外側)には円環状の鍔状板47がかしめ、ろう付け等により固着されるとともに、該鍔状板47の外周に設けられた段差部に、天井付き円筒状のキャン55の下端部が突き合わせ溶接等により密封接合されている。
【0041】
また、本例では、前記鍔状板47の上面(キャン55側の表面)に、前記下部ストッパ25に係合して当該下部ストッパ25のガイドブッシュ20に対する相対回転を防止する段付きの概略円板状部材からなるストッパ押さえ(押さえ部材)48が配置固定されている。
【0042】
前記ストッパ押さえ48は、例えば真鍮やSUS等の金属部材からプレス加工等にて作製され、基本的に前記弁本体40(の上面)及び当該弁本体40に設けられた鍔状板47(の上面)から離間した(浮かされた)状態で前記下部ストッパ25に係合せしめられるとともに、その外周部分(環状の段差部48cより外側の部分)が、鍔状板47(の上面)に当接せしめられて溶接・溶着・接着等により接合固定されている。
【0043】
詳しくは、
図1とともに
図3〜
図6を参照すればよくわかるように、前記ストッパ押さえ48は、前記下部ストッパ25に装着(外装)されるとともに、前記弁本体40(の上面)から離間して配置された円板状の装着支持部48aと、段差部48cを介して装着支持部48aの外周に設けられ、前記弁本体40の外周に設けられた鍔状板47に取付固定される円環状の取付固定部48bとを有する。
【0044】
前記装着支持部48aには、前記下部ストッパ25が挿通される大きさの嵌挿穴48dが形成され、その嵌挿穴48dに隣接して(言い換えれば、嵌挿穴48dの外周部分に)、前記下部ストッパ25(の外面)を挟持する側面視矩形状の3つの支持爪49a、49b、49cが立設されている。この3つの支持爪49a、49b、49cは、前記下部ストッパ25の外表面に対向するように立ち上げられるとともに、そのうちの相対的に小さい(周方向の幅及び高さが相対的に小さい)支持爪49cは、嵌挿穴48dにおける平面視扇形状の固定ストッパ体24が嵌挿される扇状部48eに隣接して(詳細には、扇状部48eに嵌挿される固定ストッパ体24の開弁方向側の側面に隣接して)配置されている。また、前記扇状部48eの外周部分(詳細には、扇状部48eに嵌挿される固定ストッパ体24の開弁方向側の側面とは反対側の閉弁方向側の側面に隣接する部分)には、固定ストッパ体24の外表面(閉弁方向側の側面)に対向するように周方向で視て矩形状の支持爪(支持部)49dが立設されており、この支持爪49dは、前記支持爪49cとともに固定ストッパ体24の周方向における両側面を挟持する。
【0045】
また、本例では、前記支持爪49dの下端部(根元部分)に、径方向(横方向)で視たときに所定半径を持つように形成された湾曲部(R形状部ともいう)49eが設けられており、当該支持爪49dは、周方向に弾性変形可能とされている。
【0046】
例えばイニシャライズ(電動弁1の基点出し)を行うに当たって、弁軸ホルダ30に設けられた可動ストッパ体34が下部ストッパ25に設けられた固定ストッパ体24に衝突したとき、前記支持爪49dが周方向に弾性的に変形する(撓む)ことによって、その(周方向の)衝撃が緩和されるとともに、その衝突の後に、前記支持爪49dの弾性力(反発力)によって、当該支持爪49dにより支持される下部ストッパ25(の固定ストッパ体24)が元の位置もしくは姿勢に押し戻される。
【0047】
さらに、可動ストッパ体34および固定ストッパ体24は、例えばSUSや炭素繊維等で強化した樹脂製とすることで、衝撃による摩耗を抑制することができ、イニシャライズ時の基点のずれを防ぐことができる。
【0048】
なお、ここでは、下部ストッパ25とストッパ押さえ48とは別部品として構成されているが、例えば、支持爪49a、49b、49c、49dを下部ストッパ25に溶接、溶着、接着、かしめ等により接合(固着)する等して、下部ストッパ25とストッパ押さえ48とを一体として(一部品として)構成してもよい。
【0049】
一方、前記ストッパ押さえ48における取付固定部48bは、前記鍔状板47(の上面)の略中央部に溶接・溶着・接着等により接合固定されており(接合部K)、これにより、下部ストッパ25は、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に対して相対回転不能に連結される。
【0050】
ストッパ押さえ48を鍔状板47に溶接により接合固定する場合は、これらの部材を同質材(もしくは融点が同等の材質)にすることが望ましく、本例では、例えば真鍮もしくはSUSを用いるとよい。
【0051】
また、前記鍔状板47の上面(詳しくは、前記取付固定部48bと当接する部分より内側)には、弁本体40に鍔状板47をろう付けする際のろう材の流れを防止するための環状凹溝47aが付設されている。
【0052】
前記キャン55の内側かつ前記ガイドブッシュ20及び前記弁軸ホルダ30の外側には、ロータ51が回転自在に配在され、前記キャン55の外側に、前記ロータ51を回転駆動すべく、ヨーク52a、ボビン52b、ステータコイル52c、及び樹脂モールドカバー52d等からなるステータ52が配置されている。ステータコイル52cには、複数のリード端子52eが接続され、これらのリード端子52eには、基板52fを介して複数のリード線52gが接続され、ステータコイル52cへの通電励磁によってキャン55内に配在されたロータ51が軸線O回りで回転するようになっている。
【0053】
キャン55内に配在された前記ロータ51は、前記弁軸ホルダ30に係合支持されており、当該弁軸ホルダ30は前記ロータ51とともに(一体に)回転するようになっている。
【0054】
詳細には、前記ロータ51は、内筒51a、外筒51b、及び内筒51aと外筒51bとを軸線O回りの所定の角度位置で接続する接続部51cからなる二重管構成とされ、内筒51aの内周に、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)軸線O方向(上下方向)に延びる縦溝51dが形成されている。
【0055】
一方、前記弁軸ホルダ30の外周(の上半部分)には、
図2を参照すればよくわかるように、その上端に円錐台面からなるテーパ面部30cが設けられ、そのテーパ面部30cの下側に、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)上下方向に延びる突条30aが突設され、その突条30aの下部両側には、前記ロータ51を支持する上向きの係止面30bが形成されている。
【0056】
このように、ロータ51の内筒51aの縦溝51dと弁軸ホルダ30の突条30aとが係合し、かつロータ51の内筒51aの下面と弁軸ホルダ30の係止面30bとが当接することにより、ロータ51が弁軸ホルダ30に対して位置合わせされた状態でその外周に支持固定され、前記弁軸ホルダ30は、前記ロータ51を前記キャン55内で支持しながら当該ロータ51とともに回転される。
【0057】
なお、本例では、弁軸ホルダ30の上面がロータ51の内筒51aの上面と面一あるいはそれより若干上側に位置するように、前記ロータ51が前記弁軸ホルダ30に係合支持されている。
【0058】
前記ロータ51及び弁軸ホルダ30の上側には、弁軸ホルダ30とロータ51との昇降方向における相対移動を防止する(言い換えれば、弁軸ホルダ30に対してロータ51を下方に押し付けて抜け止め係止する)とともに弁軸10と弁軸ホルダ30とを連結すべく、前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部に外嵌固定された固定部材70が配在されている。
【0059】
前記固定部材70は、例えば真鍮やSUS等の金属部材からプレス加工、切削加工等にて作製され、前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部に外嵌されて圧入、溶接、溶着、接着等により接合固定された小径上部71aと大径下部71bとからなる段付き円筒状の固定部71と、該固定部71(の大径下部71b)の下端部からロータ51の内筒51a付近まで外向きに延びる円板状のフランジ部72とを有する。
【0060】
前記フランジ部72の下面は、前記弁軸ホルダ30の上面及びロータ51(の内筒51a)の上面に対向せしめられるとともに、その弁軸ホルダ30の上面に設けられた凸部35(の上面)及びロータ51(の内筒51aの上面)に対接せしめられるようになっている。
【0061】
前記したように、前記ロータ51は、圧縮コイルばね60の付勢力により上方に付勢される弁軸ホルダ30と前記固定部材70(のフランジ部72の外周部分)の間で挟持されて抜け止め係止される。
【0062】
また、前記弁軸10の上端部に固定された前記固定部材70(における固定部71の大径下部71b)には、動作時にガイドブッシュ20に対して弁軸ホルダ30が上方に移動し過ぎて、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33との螺合が外れるのを防止すべく、弁軸ホルダ30をガイドブッシュ20側に付勢するコイルばねからなる復帰ばね75が外装されている。
【0063】
そして、当該電動弁1では、例えば弁座46aへの弁体14の喰いつきを防止するとともに、低流量域での制御性を確保すべく、弁体14が最下降位置(原点位置)にあるときに、弁体14と弁座46aとの間に所定の大きさの間隙が形成されるようになっている。
【0064】
この電動弁1の組立工程、特に、弁体14の原点位置(最下降位置)出し工程を詳説すると、まず、弁軸10、ガイドブッシュ20、下部ストッパ25、ストッパ押さえ48、圧縮コイルばね60、弁軸ホルダ30、ロータ51、弁本体40、鍔状板47等を組み付ける。例えば、弁本体40に鍔状板47をろう付けし、弁本体40にガイドブッシュ20を圧入固定した後に、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に下部ストッパ25を螺着し、ストッパ押さえ48を下部ストッパ25に装着しつつ弁本体40及び鍔状板47上に載置する等してそれらを組み付ける。このとき、ストッパ押さえ48(の取付固定部48b)は弁本体40の鍔状板47に固定せず、下部ストッパ25は、ガイドブッシュ20に対して相対回転可能に螺合させておく。なお、下部ストッパ25は、この段階で、ガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて配置してもよいし、そのストッパ部27aと間隔をあけて配置してもよい。次いで、弁軸10の下端部に設けられた弁体14が弁座46aに接当(着座)し、圧縮コイルばね60が若干圧縮され、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、かつ、下部ストッパ25(の下面)がガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接するまで、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28を利用して、前記弁軸ホルダ30、ロータ51、及び弁軸10を回転させながら下降させる。そして、このように弁軸ホルダ30が最下降位置に配置された状態で、弁軸10の上端部に固定部材70を圧入、溶接、溶着、接着等により外嵌固定する(着座状態)。
【0065】
次に、上記着座状態から、下部ストッパ25をストッパ押さえ48とともにガイドブッシュ20に対して開弁方向(例えば、平面視で反時計回り)に所定回転角度だけ回転させた後、ストッパ押さえ48(の取付固定部48b)を弁本体40の鍔状板47に溶接・溶着・接着等により接合固定して、下部ストッパ25を、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に相対回転不能に連結固定する(
図4〜
図6参照)。これにより、下部ストッパ25の固定ストッパ体24のガイドブッシュ20に対する位置が変わるので、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接して、弁軸ホルダ30が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁座46aとの間に所定の大きさの間隙が形成される。
【0066】
かかる構成の電動弁1では、ステータ52(のステータコイル52c)への通電励磁によってロータ51が回転せしめられると、それと一体に弁軸ホルダ30及び弁軸10が回転せしめられる。このとき、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28により、弁軸10が弁体14を伴って昇降せしめられ、これによって、弁体14と弁座46aとの間の間隙(リフト量、弁開度)が増減されて、冷媒等の流体の通過流量が調整される。また、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34とガイドブッシュ20に固定された下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、弁体14が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁座46aとの間に間隙が形成されるため、所定量の通過流量が確保される。
【0067】
以上で説明したように、本実施形態の電動弁1では、ストッパ押さえ48において下部ストッパ25を周方向で支持する支持爪49dが、周方向に弾性変形可能とされるので、例えばイニシャライズ(電動弁の基点出し)を行うに当たって、弁軸ホルダ30に設けられた可動ストッパ体34が下部ストッパ25に設けられた固定ストッパ体24に衝突したとき、当該支持爪49dが周方向に弾性的に変形する(撓む)ことによって、その(周方向の)衝撃が緩和されるため、イニシャライズ(電動弁の基点出し)を行う際の衝突音(イニシャライズ音)やストッパ体同士の摩耗を効果的に軽減することができる。
【0068】
また、その衝突の後に、前記支持爪49dの弾性力(反発力)によって、当該支持爪49dにより支持される下部ストッパ25(の固定ストッパ体24)を元の位置もしくは姿勢に戻すことができるため、通過流量の制御性を確保することができる。
【0069】
[第2実施形態]
図7〜
図11は、本発明に係る電動弁の第2実施形態を示している。
【0070】
本第2実施形態の電動弁2は、上記第1実施形態の電動弁1に対し、主に、ストッパ押さえ48の構成が相違しており、その他の構成は略同じである。したがって、第1実施形態の各部に対応する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下では、相違点を重点的に説明する。
【0071】
本実施形態の電動弁2では、上記第1実施形態の構成に加えて、ストッパ押さえ48に、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して上方(昇降方向上向き)に付勢する上方付勢爪(上方付勢部)49uが突設されている。
【0072】
本例では、前記上方付勢爪49uは、ストッパ押さえ48の外装支持部48aに形成された嵌挿穴48dに隣接して(言い換えれば、嵌挿穴48dの外周部分に)、支持爪49aと支持爪49cとの間及び支持爪49bと支持爪49cとの間、かつ、軸線Oに対して対称となる位置(すなわち、周方向に等角度間隔)に、2個設けられている。各上方付勢爪49uは、その上端部が下部ストッパ25の下面に(弾性的に)当接せしめられ、各上方付勢爪49uの弾性力によって、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して押し上げるようになっている。
【0073】
このように、本実施形態の電動弁2では、上記第1実施形態の電動弁1と同様の作用効果が得られることに加えて、ストッパ押さえ48に設けられた上方付勢爪49uによって、下部ストッパ25がガイドブッシュ20に対して上方に付勢されるので、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部(雄ねじ部)23)と下部ストッパ25(の雌ねじ部)との間のねじガタを排除でき、通過流量の制御性を高めることができる。
【0074】
[第3実施形態]
図12〜
図16は、本発明に係る電動弁の第3実施形態を示している。
【0075】
本第3実施形態の電動弁3は、上記第1実施形態の電動弁1に対し、主に、ストッパ押さえ48の構成が相違しており、その他の構成は略同じである。したがって、第1実施形態の各部に対応する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下では、相違点を重点的に説明する。
【0076】
本実施形態の電動弁3では、上記第1実施形態の構成に加えて、ストッパ押さえ48に、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して下方(昇降方向下向き)に付勢する下方付勢爪(下方付勢部)49vが突設されている。
【0077】
本例では、前記下方付勢爪49vは、ストッパ押さえ48の外装支持部48aに形成された嵌挿穴48dに隣接して(言い換えれば、嵌挿穴48dの外周部分に)、支持爪49aと支持爪49cとの間及び支持爪49bと支持爪49cとの間、かつ、軸線Oに対して対称となる位置(すなわち、周方向に等角度間隔)に、2個設けられている。各下方付勢爪49vは、側面(径方向)から視て矩形状かつ周方向で視て逆立L字状を有し、下部ストッパ25の外側を下方から上方まで直線状に(軸線Oに沿って)延び、その上端部が内側に折り曲げられて下部ストッパ25の上面に(弾性的に)当接せしめられ、各下方付勢爪49vの弾性力によって、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して押し下げるようになっている。
【0078】
このように、本実施形態の電動弁3では、上記第1実施形態の電動弁1と同様の作用効果が得られることに加えて、ストッパ押さえ48に設けられた下方付勢爪49vによって、下部ストッパ25がガイドブッシュ20に対して下方に付勢されるので、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部(雄ねじ部)23)と下部ストッパ25(の雌ねじ部)との間のねじガタを排除でき、通過流量の制御性を高めることができる。
【0079】
[第4実施形態]
図17〜
図23は、本発明に係る電動弁の第4実施形態を示している。
【0080】
本第4実施形態の電動弁4は、上記第1実施形態の電動弁1に対し、主に、ストッパ押さえ48及び下部ストッパ25の構成が相違しており、その他の構成は略同じである。したがって、第1実施形態の各部に対応する部分には共通の符号を付して重複説明を省略し、以下では、相違点を重点的に説明する。
【0081】
本実施形態の電動弁4では、前記した下部ストッパ25とストッパ押さえ48とは、例えばインサート成形によって一体成形されている。
【0082】
詳しくは、上記第1実施形態におけるストッパ押さえ48の装着支持部48aが省略されており、ストッパ押さえ48の取付固定部48b(の内周)から、下部ストッパ25の略法線方向に向けて段差部49h付きの支持脚49fが延設され、その支持脚49fの先端(内端)に、支持脚49fと略同幅の支持爪(支持部)49dが(湾曲部49eを介して)立設されており、その支持爪49dの上部が下部ストッパ25の下面に埋設されて、下部ストッパ25とストッパ押さえ48とが一体と(一部品として構成)されている。下部ストッパ25に埋設された支持爪49dの上端部には、若干幅広のフランジ部49gが形成されている。
【0083】
本例では、前記支持脚49f及び支持爪49d等は、軸線O周り(周方向)で等角度間隔に3個設けられている。
【0084】
言い換えれば、本実施形態では、下部ストッパ25に埋設されて下部ストッパ25を周方向で支持する湾曲部49e付きの支持爪49dは、当該支持爪49dの下端部から(下部ストッパ25の)略法線方向に向けて延びる(支持爪49dと略同幅の)支持脚49fを介して弁本体40の鍔状板47に固定される。
【0085】
このように、本実施形態の電動弁4では、上記第1実施形態の電動弁1と同様の作用効果が得られることに加えて、下部ストッパ25とストッパ押さえ48とが一部品として構成されるので、部品点数や組立工数が少なくて済むとともに、組立工程を簡素化することができる。
【0086】
また、本実施形態の電動弁4では、ストッパ押さえ48(の支持脚49f等)の弾性力(ばね力)や各構成部品の寸法等を適宜に設定することにより、ストッパ押さえ48によって、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して上方(昇降方向上向き)あるいは下方(昇降方向下向き)に付勢できるので、上記第2、3実施形態と同様、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部(雄ねじ部)23)と下部ストッパ25(の雌ねじ部)との間のねじガタを排除でき、通過流量の制御性を高めることができるといった利点もある。
【0087】
なお、上記実施形態では、弁体14が最下降位置(通常なら全閉状態となる)にあるときに、弁体14と弁座46aとの間に所定の大きさの間隙が形成される(すなわち、弁体14が弁座46aに着座しない)閉弁レスタイプの電動弁について説明したが、例えば、弁体が弁座に着座するタイプの電動弁(例えば、特開2011−208716号公報等参照)において、前記と同様のストッパ押さえ(押さえ部材)を用いて下部ストッパをガイドブッシュ(の固定ねじ部)に対して相対回転不能に連結する場合にも、前記と同様の作用効果が得られることは詳述するまでも無い。