【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、発明に従い、請求項1に記載の特徴を有する装置、請求項13に記載の特徴を有する方法、及び請求項12に記載の特徴を有する真空ポンプ、特にターボ分子ポンプによって解決される。発明に係る装置の好ましい実施形、及び発明に係る方法の好ましい態様は、下位の請求項、明細書、及び図面から生じる。
【0006】
発明に係る装置は、ローターの磁石支承部の領域に配置された非接触式のセンサー装置と、これに付設された制御及び/又は評価ユニットを有する。その際、センサー装置は、各計測軸に沿ったローター移動の検出の為、少なくとも二つのセンサーコイルを有する各一つのセンサーコイルユニットを有する。センサーコイルは、制御及び/又は評価ユニットを介して、其々、周期的、電気的な励起信号を付勢可能である。更に、各計測軸に沿った各ローター移動の際に、両方のセンサーコイル内において、逆方向のインダクタンス変化が生じるか、又はインダクタンスが両方のセンサーコイルの一方のみにおいて変化し、そして他方のセンサーコイルにおいては少なくとも基本的に変化しないままであるよう、センサーコイルは、互いに相対的に、及び磁石支承部に対して相対的に配置されている。
【0007】
センサーコイルとして、特に空芯コイル(独語:Luftspulen)が設けられていることが可能である。センサー装置は、特に、半径方向のローター移動、及び/又は、軸方向のローター移動の検出の為に設けられていることが可能である。その際、センサー装置は、少なくとも部分的に磁気的に支承されたローターの半径方向の位置の検出のため、特に複数の計測軸、例えば、互いに垂直な、ローター軸に対して垂直な平面内に位置する二つのx軸及びy軸のようなものに沿ったローターのずれの計測のため、そのような各計測軸に付設された複数のセンサーコイルユニット(それぞれ少なくとも二つのセンサーコイルを有する)を有することが可能である。
【0008】
ローターの軸方向の位置の検出のため、センサー装置は、特に、少なくとも二つのセンサーコイルを有するセンサーコイルユニットを有することが可能である。センサーコイルは、ローター軸に対して平行なz軸に沿ったローターのずれの計測のために設けられている。
【0009】
周期的、電気的な励起信号(例えば周期的な励起電圧であることが可能である)により、隣接する磁石支承部の各磁場にさらされるセンサーコイル内では、電流が誘導される。その値は、センサーコイルのインダクタンスに依存する。更に、各センサーコイルユニットの少なくとも一つのセンサーコイルのインダクタンスが、各計測軸の方向で計測したセンサーコイルの磁石支承部に対する間隔に依存しているので、コイル内に誘導される電流を介して、関連する計測軸に沿ったローターの各ずれが計測可能である。
【0010】
その際、各センサーコイルは、好ましくは静的に配置されている(設けられている)。
【0011】
発明に係る形成に基づいて、例えば真空ポンプ、好ましくはターボ分子ポンプの、高速で回転する、少なくとも部分的に磁気的に支承されたローターの位置は、正確、迅速、かつ高信頼性の方法で非接触式に検出されることが可能である。
【0012】
両方のセンサーコイルのディファレンシャル式の配置において、各ローター移動の際に、両方のセンサーコイル内に反対方向のインダクタンス変化が生じる間、インダクタンスが両方のセンサーコイルの一方のみにおいて変化する絶対的コイル配置において、一つのセンサーコイルのみが計測コイルとして使用され、他方で、インダクタンスが変化しないままである他のセンサーコイルは、参照コイルとして使用される。
【0013】
ディファレンシャル式のコイル配置においては、両方のセンサーコイルのインダクタンスは、其々、各計測軸の方向で測定した、各センサーコイルと隣接する磁石支承部の間の間隔に依存する。これと反対に、絶対的なセンサー配置においては、計測コイルとして使用されるセンサーコイルのインダクタンスのみが、各計測軸の方向で測定される、計測コイルと磁石支承部の間の間隔に依存する。
【0014】
好ましくは、作動電流から誘導されるセンサー電圧を形成する為の手段が設けられている。作動電流は、各計測軸に付設される両方のセンサーコイル内に誘導される電流から生じる。その際、誘導されるセンサー電圧は、制御及び/又は評価ユニットを介して、関連するセンサー軸に沿った各ローター移動の検出のため、特に励起信号の周期ごとに少なくとも其々二回走査されている。各走査の為に、制御及び/又は評価ユニットは、特にアナログ/デジタル変換器を有することが可能である。
【0015】
誘導されるセンサー電圧は、制御及び/又は評価ユニットを介して、励起信号の周期ごとに、例えば少なくとも其々二回、各最高点において、及び/又は各零交差点において走査される。
【0016】
発明に係る装置の好ましい実施形に従い、制御及び/又は評価ユニットを介して、励起信号の周期ごとに、差動電圧の形成の為、特にセンサー電圧の反対方向の最高点値において得られる二つの走査値の間の差が発生可能である。その際、差動電圧の振幅に基づいて、関連する計測軸に沿ったローター移動の値、及び/又は、差動電圧の符号に基づいて、関連する計測軸に沿ったローター移動の方向が決定されることが可能である。
【0017】
このようにして、誘導されるセンサー電圧から、特に、その値、及び/又は位相から、各ローター移動の為の必要な情報が導かれることが可能である。
【0018】
周期的、電気的な励起信号は、例えば、少なくとも基本的にサイン形状、又はコサイン形状n信号による形成されていることが可能である。しかしまた、基本的に、周期的、電気的な励起信号は、サイン形状、又はコサイン形状と異なる形状を有することも可能である。特に、それによって隣接する磁石支承部の磁場にさらされるセンサーコイルにおいて、信頼できる程度に計測可能な電流が誘導されるよう、それが周期的であるのみならず、各周期内で十分可変でもあるということのみが保証されるべきであろう。
【0019】
特に、誘導されるセンサー電圧の形成の為の手段が、変圧器を有すると有利である。この変圧器は、各センサーコイルユニットの少なくとも二つのセンサーコイルと入口側で得接続されており、そして出口側で、出口コイルを設けられている。出口コイルには、誘導されたセンサー電圧が印加可能である(独語:abgreifbar)。
【0020】
変圧器は、両方のセンサーコイル内に誘導される電流から誘導されるセンサー電圧を形成するのに使用されるのみならず、これは、センサー信号の電気的な増幅の為にも使用されることが可能である。
【0021】
発明に係る装置の目的にかなった別の実施形に従い、変圧器と、各計測軸に付設された少なくとも二つのセンサーコイルとの間に、制御及び/又は評価ユニットを介して駆動可能な、特にアナログ式のスイッチが設けられている。これを介して、変圧器は、変圧器の現在の各増幅ファクターの決定の為の検出運転の間、両方のセンサーコイルにより繰り返して、特に二つの固定された抵抗を有する抵抗装置(この抵抗装置は好ましくは一定のインピーダンスを有する)へと切替え可能である。
【0022】
その際、制御及び/又は評価ユニットは、好ましくは、変圧器の現在の各増幅ファクターを、特に保存されているリファレンス値と比較することによって、変圧器の増幅ファクターの現在の各バリエーションを決定可能である。
【0023】
好ましくは、制御及び/又は評価ユニットを介して、変圧器の増幅ファクターの決定された現在の各バリエーションに基づいて、検出運転の間に開始電圧として発生される誘導されたセンサー電圧が補正可能である。特に、変圧器の温度による誘導されたセンサー電圧への影響を補償するためである。同時に、これによって例えばシステムのトレランスも補償されることが可能である。
【0024】
抵抗装置の固定された抵抗として、特に精密抵抗が設けられていることが可能である。
【0025】
センサー装置、特に、各センサーコイルユニット、及び/又は制御及び/又は評価ユニットは、目的に適って、プリント基板上に設けられている。これは、これによって例えば予め組み立てられたユニットとして提供されることが可能である。
【0026】
複数の計測軸に沿った、少なくとも部分的に磁気的に支承されたローターの位置の、非接触式の検出の為に、センサー装置は、相応して複数のセンサーコイルユニットを有することが可能である。これらセンサーコイルユニットは、其々少なくとも二つのセンサーコイルを有している。
【0027】
好ましくは、各センサーコイルユニットは、ディファレンシャル式のコイル配置(この配置においては、半径方向の各移動の際に両方のセンサーコイル内に逆のインダクタンス変化が生じる)の形成の為に、隣接する磁石支承部の互いに向かい合った側に配置された二つのセンサーコイルを有する。これと反対に、各センサーコイルユニットは、絶対的なコイル配置(この配置においては軸方向の各ローター移動の際にインダクタンスが、両方のセンサーコイルの一方のみにおいて変化し、そしてリファレンスとして使用される他方のセンサーコイルは変化しないままである)の形成の為、異なる直径を有し、互いに同心円の複数のセンサーコイルにより形成されていることが可能である。
【0028】
例えば、複数の計測軸に沿ったローター移動の検出のための拡張された絶対的なコイル配置も考え得る。この配置においては、異なる計測軸に付設された複数のコイルユニットが、其々、計測コイルとして使用される一つのセンサーコイルを有し、そして異なるコイルユニットのための共通の一つの参照コイルが設けられている。
【0029】
センサーコイルは、特に、プラスチックの空芯コイルとして形成されていることが可能である。
【0030】
発明に係る装置によって、高速回転し、少なくとも部分的に磁気的に支承された真空ポンプのローター位置は、正確、迅速、かつ信頼性を有する方法で非接触式に検出されることが可能である。
【0031】
各計測軸に沿ったローター位置の計測のため、例えば二つの空芯コイルが設けられていることが可能である。これらは、ディファレンシャル式の配置として、又は絶対的な配置として設けられていることが可能である。ディファレンシャル式の配置においては、両方のセンサーコイルは互いに向かい合っている。これらは、特に静的に設けられていることが可能であり、そしてローターほ半径方向のずれの計測のため、特に、隣接する磁石支承部に対して平行に、又はローター軸に対して平行に向けられていることが可能である。各ローター移動は、同時に、一方のセンサーコイル内でのインダクタンス上昇と、他方のセンサーコイル内でのインダクタンス降下を引き起こす。絶対的な各コイル配置においては、コイル(そのインダクタンスが変化しないままのコイル)は、参照コイルとしてのみ使用される。計測コイルとして使用される他方のセンサーコイルのインダクタンスは、各計測軸の方向で計測した間隔(センサーコイルと、隣接する磁石支承部又はローターの間の間隔)に依存する。そのような絶対的なコイル配置においても、センサーコイルは特にここでもまた、静的に設けられていることが可能である。絶対的なコイル配置を有するローターの軸方向のずれの計測の為、各センサーコイルユニットの両方のセンサーコイルは、例えば、異なる直径を有し得、そして特に、隣接する磁石支承部に対して同軸方向に、又はローター軸に対して同軸方向に向けられていることが可能である。
【0032】
両方のバリエーションにおいて、各センサーコイルユニットの両方のセンサーコイル内に誘導される電流から、差動電流が生じる。その振幅及び位相はローターの位置に応じる。差動電流は、変圧器を介してセンサー電圧に変換されることが可能である。これは、例えば、少なくとも周期ごとに、例えば最高点において、又は零交差点において、例えばアナログ/デジタル変換器によって走査されることが可能である。制御及び/又は評価ユニットの相応するソフトウェア、又はポログラムングによって、両方の電圧から、差動電圧が形成されることが可能である。これは、ローターの物理的な位置の直接の写像(独語:Abbildung)を表す。
【0033】
システムのトレランスと熱ドリフトを補償するため、特にアナログ式のスイッチを介して、センサーコイルの代わりに精密抵抗からなる独立した分岐が繰り返し、増幅回路、又は変圧器へと切り替えられる。この切り替えは、短時間で増幅・補正値を探出するために行われる。計測値評価は、周期的に行われることができる。その際、振動するアナログスイッチによって、補正の為の計測値とローターの実際の位置値が交互に検出されることが可能である。計測順序及びセンサー励起電圧の相応する選択によって、補正値検出と計測値検出の理想的かつ迅速な相互作用が可能となる。その際、計測サイクル中の励起信号は、位相においても振幅においても、何度もシステマチックに変化されることができる。可能な限り最高の計測安全性を獲得するためである。
【0034】
ローターの半径方向の移動の検出の為に、例えば二つのディファレンシャル式のセンサーコイルユニットが設けられていることが可能である。これらを介して、ローター軸に対して垂直な面内で、互いに垂直な二つの計測軸に沿った各ローター移動が計測されることが可能である。ディファレンシャル式のセンサーコイルユニットにおいては、センサーコイルのインダクタンスは、其々、計測軸に沿ったローター位置に依存している。ローターの軸方向の移動の検出の為に、例えば、絶対的なセンサーコイルユニットが設けられていることが可能である。これを介して、ローター軸に平行な軸に沿った各ローター移動が計測されることが可能である。この場合、計測コイルのインダクタンスのみが、計測軸に沿ったローター位置に依存し、他方で、参照コイルのインダクタンスは、ローターの位置に依存せず同じままである。その際、例えばセンサーコイルユニットが設けられていることが可能である。そのセンサーコイルは、プリント基板コイルとして形成されていることが可能である。両方の場合において、センサーコイルは、特に空芯コイル、例えばプラスチック空芯コイルとして形成されていることが可能である。
【0035】
計測生信号の従来の電気的な増幅器と反対に、発明に従い、変圧器を介して電磁的な増幅が行われることが可能である。これによって、高い増幅(程度)のみならず、極めて低いノイズレベルも達成される。変圧器の磁気的コアの温度による増幅ファクターの影響は、特にアナログ式のスイッチによりスイッチを入れることが可能である抵抗装置を介して補償されることが可能である。このため、スイッチは制御及び/又は評価ユニットの制御信号に基づいて、測定運転の間、各計測軸に付設される、変化するインピーダンスの両方のコイルと、例えば、二つの固定的な抵抗を有する、一定のインピーダンスの抵抗装置の間を切り替えられることが可能である。
【0036】
測定システムのスイッチを入れる際に、開始電圧は一定のインピーダンスのもとリファレンスとして保存されることが可能である。測定運転の間、周期的に、一定のインピーダンスへと切り替えられることが可能である。一定のインピーダンスにおける現在の開始電圧と、保存されたリファレンスから、増幅ファクターの現在のバリエーションが決定されることが可能である。これによってセンサー運転からの開始電圧が、測定結果が変圧器の温度に依存しないように補正されることが可能である。
【0037】
発明に係る真空ポンプ、特にターボ分子ポンプは、ステーター、ローターに対して回転軸を中心として回転可能に支承されたローター、及び発明に係るローター位置検出装置を有する。ローターの支承は、一又は複数の領域で磁石支承部によって行われることが可能である。特に、磁石支承部による支承部箇所と、ローラー支承部による別の支承部箇所が形成される、いわゆるハイブリッド支承が行われることが可能である。しかしまた、ローターの純粋な磁石支承も行われ得る。
【0038】
特に発明に従い、ローターは、
図1から5のターボ分子真空ポンプの為に他の箇所に説明されているように支承されていることが可能である。
【0039】
本発明に係る、少なくとも部分的に磁気的に支承されたローターの位置の検出、特に真空ポンプ、好ましくはターボ分子真空ポンプの少なくとも部分的に磁気的に支承されたローターの位置の検出の為の方法は、各計測軸に沿ったローター移動の検出の為、ローターの磁石支承部の領域に設けられる非接触式のセンサー装置の各センサーコイルユニットの少なくとも二つのセンサーコイルが、其々、周期的、電気的な励起信号によって付勢され、そして互いに相対的に、及び磁石支承部に対して相対的に、各計測軸に沿ったローター移動の際に、両方のセンサーコイル内において、反対方向のインダクタンス変化が生ずるか、又はインダクタンスが、両方のセンサーコイルの一方内のみにおいて変化し、そして他方のセンサーコイル内においては少なくとも基本的に変化しないままである点において際立っている。
【0040】
好ましくは、各計測軸に付設された両方のセンサーコイル内で誘導される電流から生ずる作動電流から、誘導されるセンサー電圧が形成される。誘導されるセンサー電圧は、関連するセンサー軸に沿った各ローター移動の検出のため、特に励起信号の周期ごとに、其々、少なくとも二度走査される。
【0041】
発明に係る方法の目的に適った実践的な態様に従い、励起信号の周期ごとに、差動電圧の形成の為、特に誘導されるセンサー電圧の反対方向の最高点において得られる二つの走査値の間の差が発生させられ、そして差動電圧の振幅に基づいて、関連する計測軸に沿ったローター移動の値、及び/又は差動電圧の符号に基づいて、関連する計測軸に沿ったローター移動の方向が決定される。
【0042】
本発明を、以下に実施例に基づき、図面を参照しつつ詳細に説明する。