特許第6684855号(P6684855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684855
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/00 20060101AFI20200413BHJP
   A01F 12/24 20060101ALI20200413BHJP
   A01F 12/52 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   A01F12/00 F
   A01F12/24
   A01F12/52 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-105194(P2018-105194)
(22)【出願日】2018年5月31日
(65)【公開番号】特開2019-208391(P2019-208391A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年5月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 宜泰
(72)【発明者】
【氏名】青山 祐也
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−000204(JP,A)
【文献】 実公平03−047479(JP,Y2)
【文献】 特開2015−008638(JP,A)
【文献】 特開平03−089950(JP,A)
【文献】 特開2015−128414(JP,A)
【文献】 特開昭56−055118(JP,A)
【文献】 実開昭53−115870(JP,U)
【文献】 実開昭56−125039(JP,U)
【文献】 実公平03−040115(JP,Y2)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0014512(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/00
A01F 12/18 − 12/28
A01F 12/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部から供給された収穫物を脱穀処理すると共に、穀粒を選別処理する脱穀装置と、
前記脱穀装置と機体左右方向に並列する状態で設けられ、前記脱穀装置によって得られた穀粒を貯留する貯留部と、が備えられ、
前記脱穀装置に、駆動軸芯を中心に駆動回転する扱胴と、前記扱胴の下方で収穫物から分離した処理物を漏下する受網と、前記受網を漏下した処理物から穀粒を取り出す選別部と、前記選別部で選別された一番物を回収する一番物回収部とが備えられ、
前記脱穀装置と前記貯留部との間に立設され、前記一番物回収部からの一番物を上方に搬送して前記貯留部に供給する揚送機構が備えられ、
前記扱胴に、前記扱胴の前端部に設けられ、供給された収穫物を後方へ掻き込む掻込部と、前記掻込部の後方に設けられ、掻き込まれた収穫物の扱き処理を行う扱処理部とが備えられ、
前記脱穀装置における前記貯留部の側の側壁のうち、前記扱処理部に対向する位置に、点検用開口が形成され、
前記点検用開口を開閉可能な蓋体が備えられ、
前記点検用開口に、前記揚送機構よりも後側に配置される第一点検用開口と、前記揚送機構よりも前側に配置される第二点検用開口とが含まれ、
前記第二点検用開口の開口面積は、前記第一点検用開口の開口面積よりも小さく、
前記蓋体の上部及び下部は、固定ボルトによって前記側壁に固定され、
前記蓋体の下部に対応する前記固定ボルトと、前記側壁における上半部と下半部との連結部との間の上下距離は、前記蓋体の上部に対応する前記固定ボルトと、前記側壁の上端部に設けられたフレームの下面との間の上下距離よりも長いコンバイン。
【請求項2】
記点検用開口の上端は、前記側壁の上部に位置し、かつ、前記点検用開口の下端は、前記受網の下端よりも上側の高さ位置に位置し、
前記蓋体の上部及び下部は、前記側壁に左右外方に向けて突設された前記固定ボルトによって、前記側壁に固定され、
前記固定ボルトは、前記固定ボルトの先端が前記側壁の左右外側端よりも左右外側に突出しない状態で設けられ、
前記蓋体の上部に対応する前記固定ボルトは、前記フレームに隣接する状態で、前記フレームに沿って複数配置されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第一点検用開口及び前記第二点検用開口は、側面視において、前記揚送機構と重複しない位置に形成されている請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記受網が、前記扱胴の下方位置から、前記扱胴の側方で前記駆動軸芯より高い位置に亘る円弧状に構成され、
前記第一点検用開口が、前記扱胴の側面視において、前記受網と重複する位置に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記第一点検用開口が、前記駆動軸芯に沿った方向において、前記受網の中央部から後端に亘る領域中に配置されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記脱穀装置に、二番物を回収する二番物回収部が備えられ、
前記脱穀装置と前記貯留部との間に立設され、前記二番物回収部からの二番物を前記選別部に戻す還元搬送機構が備えられ、
前記第二点検用開口は、前記還元搬送機構の吐出部の上方に配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記揚送機構は、前記脱穀装置と前記貯留部との間に、前記還元搬送機構と交差する状態で立設されている請求項6に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置の扱室の一部が開放可能に構成されているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成のコンバインとして特許文献1には、脱穀装置の側壁でグレンシーブとグレンパンとを交互に出し入れすることが可能で、側壁には蓋により開閉自在となる点検用の開口を備えた技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、脱穀装置の天板がヒンジを介して開閉自在に備えられ、天板を開放することにより扱室の上部を大きく開放できる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−103149号公報
【特許文献2】特開2015−42188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に形成される開口は、脱穀装置の内部の揺動選別ケースのグレンシーブと、グレンパンとを個別に取り出させるように脱穀装置の側壁に形成されている。つまり、この脱穀装置は、蓋体を取り外し、開口を介してグレンシーブとグレンパンとを順次取り出すことによりワラ屑の除去を容易に行えるように構成されている。
【0006】
特許文献2には、脱穀装置の扱室の天板の左右方向での一方をヒンジにより開閉自在に支持し、この天板の左右方向での他方をボルトにより固定しており、ボルトを取り外すことにより天板の開放を可能にするように構成されている。
【0007】
特許文献1,2にも記載されるように脱穀装置が、扱胴と、この扱胴の下側に受網(特許文献1ではコーンケーブ)を備えている構成では、脱穀処理時に受網に処理物の一部が入り込み目詰まりを招き処理能力が低下することがあった。
【0008】
このような目詰まりは、処理物に多くの水分を含む状況で多く発生するものであり、迅速な対処が必要とされる。このような課題に対し、特許文献1に記載される開口は、受網から離間した位置にあるため、目詰まりを解消するための作業を行い難いものである。また、特許文献2に記載される構成では、天板を開放できるものであるが、天板を開放しても受網の上方に扱胴が配置されているため目詰まりの解消を行い難いものであった。
【0009】
また、特許文献1に記載されるように脱穀装置とグレンタンクとが左右に並列して配置され、脱穀装置の外側(グレンタンクと反対側の外面)に開口が形成されるものでは、受網のうちグレンタンクに隣接する側の目詰まりの解消が困難であり、この点にも改善の余地があった。
【0010】
このような理由から、脱穀装置と穀粒の貯留部とが左右方向に並列して配置されたものであっても、脱穀装置の受網の点検保守を貯留部に近い側から容易に行えるコンバインが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、刈取部から供給された収穫物を脱穀処理すると共に、穀粒を選別処理する脱穀装置と、前記脱穀装置と機体左右方向に並列する状態で設けられ、前記脱穀装置によって得られた穀粒を貯留する貯留部と、が備えられ、前記脱穀装置に、駆動軸芯を中心に駆動回転する扱胴と、前記扱胴の下方で収穫物から分離した処理物を漏下する受網と、前記受網を漏下した処理物から穀粒を取り出す選別部と、前記選別部で選別された一番物を回収する一番物回収部とが備えられ、前記脱穀装置と前記貯留部との間に立設され、前記一番物回収部からの一番物を上方に搬送して前記貯留部に供給する揚送機構が備えられ、前記扱胴に、前記扱胴の前端部に設けられ、供給された収穫物を後方へ掻き込む掻込部と、前記掻込部の後方に設けられ、掻き込まれた収穫物の扱き処理を行う扱処理部とが備えられ、前記脱穀装置における前記貯留部の側の側壁のうち、前記扱処理部に対向する位置に、点検用開口が形成され、前記点検用開口を開閉可能な蓋体が備えられ、前記点検用開口に、前記揚送機構よりも後側に配置される第一点検用開口と、前記揚送機構よりも前側に配置される第二点検用開口とが含まれ、前記第二点検用開口の開口面積は、前記第一点検用開口の開口面積よりも小さく、前記蓋体の上部及び下部は、固定ボルトによって前記側壁に固定され、前記蓋体の下部に対応する前記固定ボルトと、前記側壁における上半部と下半部との連結部との間の上下距離は、前記蓋体の上部に対応する前記固定ボルトと、前記側壁の上端部に設けられたフレームの下面との間の上下距離よりも長い点にある。
【0012】
受網の目詰まりは、水分を多く含む収穫物が、扱室内で扱胴の回転に伴い強い力で受網に圧接する際に処理物の一部が受網の目に押し込まれることにより多く発生すると考えられる。また、扱胴が、扱室に供給された収穫物を掻き込んで駆動軸芯に沿って送る掻込部と、掻込部で掻き込まれた収穫物の扱き処理を行う扱処理部とを一体形成した構成では、特許文献2にも示されるように扱処理部に沿う領域に受網が配置されるため、この扱処理部において目詰まりが発生しやすいものである。
【0013】
このような課題を考えると、本発明に係る特徴構成によると、脱穀装置のうち貯留部の側の側壁で、扱処理部に対向する位置に開口が形成され、この開口を閉じる蓋体が着脱自在に備えられる。このため、蓋体を取り外して開口を開放することにより受網の側方を開放し、受網の目詰まりの解消も容易に行える。
従って、脱穀装置と穀粒の貯留部とが左右方向に並列して配置されたものであっても脱穀装置の受網の点検保守を貯留部に近い側から容易に行えるコンバインが構成された。
【0014】
【0015】
この構成のコンバインでは、扱室において収穫物を機体の後方に向けて搬送する工程中に扱処理を行い、扱処理後の処理物を扱室から排出するため、搬送の工程において処理物から分離した穀粒を受網の終端に達するまでに受網から確実に漏下させることが穀粒ロスを低減する観点で肝要となる。この点を考えると、揚送機構より後側に点検用開口として第一点検用開口を形成することにより、受網のうち処理室での処理物の搬送方向の下流側の目詰まりを容易に解消することが可能となり、扱室で搬送される処理物から穀粒が分離した場合には、その穀粒を受網で漏下させて回収することも可能となる。
これによると、第二点検用開口により扱室での処理物の搬送方向での上流側の点検保守と受網の広い範囲の目詰まりの解消を行い、第一点検用開口により扱室での処理物の搬送方向での下流側に対応する領域の扱室内の点検保守を行え、受網の目詰まりの解消も行える。
他の構成として、前記点検用開口の上端は、前記側壁の上部に位置し、かつ、前記点検用開口の下端は、前記受網の下端よりも上側の高さ位置に位置し、前記蓋体の上部及び下部は、前記側壁に左右外方に向けて突設された前記固定ボルトによって、前記側壁に固定され、前記固定ボルトは、前記固定ボルトの先端が前記側壁の左右外側端よりも左右外側に突出しない状態で設けられ、前記蓋体の上部に対応する前記固定ボルトは、前記フレームに隣接する状態で、前記フレームに沿って複数配置されていても良い。
他の構成として、前記第一点検用開口及び前記第二点検用開口は、側面視において、前記揚送機構と重複しない位置に形成されていても良い。
【0016】
他の構成として、前記受網が、前記扱胴の下方位置から、前記扱胴の側方で前記駆動軸芯より高い位置に亘る円弧状に構成され、前記第一点検用開口が、前記扱胴の側面視において、前記受網と重複する位置に形成されていても良い。
【0017】
これによると、第一点検用開口を開放することにより受網の側方を大きく露出させ、受網の広い領域の目詰まりの解消や、扱室内の点検保守を容易に行える。
【0018】
他の構成として、前記第一点検用開口が、前記駆動軸芯に沿った方向において、前記受網の中央部から後端に亘る領域中に配置されても良い。
【0019】
これによると、第一点検用開口を開放することにより受網の側方で、前後方向に広い領域を大きく露出させ、受網の広い領域の目詰まりの解消や、扱室内の点検保守を容易に行える。
【0020】
他の構成として、前記脱穀装置に、二番物を回収する二番物回収部が備えられ、前記脱穀装置と前記貯留部との間に立設され、前記二番物回収部からの二番物を前記選別部に戻す還元搬送機構が備えられ、前記第二点検用開口は、前記還元搬送機構の吐出部の上方に配置されていても良い。
【0021】
これによると、還元搬送機構の吐出部より上方に第二点検用開口を形成することにより、還元搬送機構の上方の空間を有効に利用して開口を形成し、扱室の内部の点検保守を容易に行え、受網の広い範囲の目詰まりの解消も容易に行える。
【0022】
他の構成として、前記揚送機構は、前記脱穀装置と前記貯留部との間に、前記還元搬送機構と交差する状態で立設されていても良い。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】コンバインの全体を示す左側面図である。
図2】コンバインの全体を示す右側面図である。
図3】コンバインの全体を示す平面図である。
図4】脱穀装置の縦断側面図である。
図5】脱穀装置の右側面図である。
図6】脱穀装置の縦断後面図である。
図7図5のVII−VII線断面図である。
図8図5のVIII−VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。〔コンバインの基本構成〕
図1,2,3に本実施形態のコンバインの全体を示している。つまり、図1に左側面図、図2に右側面図、図3に平面図を示しており、これらの図において[F]の方向が走行機体1の前方向、[B]の方向が走行機体1の後方向、図3に示す[L]の方向が走行機体1の左方向、[R]の方向が走行機体1の右方向と定義する。
【0026】
図1,2,3に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置2で走行自在な走行機体1の右前部に運転部3を配置し、この運転部3に運転座席4が備えられている。運転部3には、運転座席4の上方にキャノピー5が設けられ、運転座席4の下側にエンジン6が設けられている。
【0027】
走行機体1には、脱穀装置7と袋詰部8(穀粒の貯留部の一例)とが左右に並列する位置関係で設けられている。走行機体1の前側に刈取部15が配置され、この刈取部15からの収穫物を脱穀装置7に供給する刈取搬送装置14が備えられている。つまり、図3に示すように、脱穀装置7と袋詰部8とが左右に並列し、刈取搬送装置14が運転部3の左側部に配置され、運転部3の後側に袋詰部8が配置されている。
【0028】
このコンバインでは、刈取搬送装置14の前端に刈取部15が連結しており、刈取搬送装置14の基端部が横向き姿勢の揺動軸芯Yを中心に揺動自在に支持され、刈取搬送装置14と走行機体1の機体フレーム1aとの間に昇降シリンダ16が配置されている。この構成から昇降シリンダ16の伸縮作動により刈取部15と刈取搬送装置14とを、揺動軸芯Yを中心に一体揺動させ、刈取部15の刈取高さの調節を実現している。
【0029】
このコンバインで収穫作業を行う場合には、刈取部15と刈取搬送装置14と脱穀装置7とを予め作動させておき、刈取部15を、収穫物を収穫するに最適な高さに設定して走行機体1を前進させることなる。この収穫作業では、稲、麦、大豆などの収穫物が刈取部15で刈り取られ、刈取搬送装置14によって脱穀装置7に供給される。そして、脱穀装置7では、供給された収穫物を処理することで穀粒が回収され、回収された穀粒が袋詰部8の穀粒タンク18に貯留される。
【0030】
尚、刈取搬送装置14には排塵装置17を備えており、刈取搬送装置14で収穫物を搬送する際に発生する切れワラや、塵埃が運転部3と反対側に排出される。
【0031】
〔袋詰部の構成〕
図2に示すように、袋詰部8は、穀粒タンク18の下部に3つのホッパー部19が前後方向に並んで形成され、各々のホッパー部19の下端に吐出筒19aを備えている。袋詰部8の下側の機体フレーム1aには、図3に示すように外方に張り出す使用姿勢と、図2に二点鎖線で示すように縦向きの格納姿勢とに切換え自在な作業用デッキ12が支持されている。更に、袋詰部8の上方にサンバイザー9が設けられている。
【0032】
袋詰部8には、穀粒タンク18の側面に沿って手摺バー10が設けられ、これより外側に袋詰め作業者が背当てに利用する補助バー11が設けられている。この構成から袋詰部8で作業を行う場合には、作業者が補助バー11を背にして作業用デッキ12に立ち、ホッパー部19に穀粒袋を装着し、穀粒タンク18からの穀粒を穀粒袋に供給する容易な作業が可能となる。
【0033】
〔刈取部の構成〕
図1,2,3に示すように、刈取部15は刈取部フレーム20を備えている。この刈取部フレーム20は、刈取搬送装置14の延出端部に連結された後壁フレーム部21と、後壁フレーム部21の両横端部から前方向き延出する横側壁フレーム部22と、後壁フレーム部21の下端部から前方向きに延出するデッキフレーム部23とで構成されている。
【0034】
デッキフレーム部23の前部にバリカン型の刈取装置24が備えられ、このデッキフレーム部23の上方には、横向き姿勢の駆動軸を中心に回転可能にオーガ25が備えられている。
【0035】
刈取装置24の上方の前側に回転リール27が設けられている。回転リール27は、刈取部フレーム20から前向きに延出されたリール支持アーム26の前端側に横向き姿勢の軸芯を中心に回転可能に支持されている。また、左右の横側壁フレーム部22の前端部にデバイダ28が備えられている。
【0036】
この構成から、収穫作業には、刈取部15の各部を駆動した状態で走行機体1を前進させることにより、植立穀稈がデバイダ28によって刈取り対象の植立穀稈と、刈取り対象外の植立穀稈とに分草され、かつ、刈取り対象の植立穀稈がデバイダ28によってすくい上げられる。
【0037】
刈取り対象の植立穀稈の穂先側が回転リール27のタイン27aによって後方に引き寄せられつつ、株元が刈取装置24によって切断される。このように刈り取られた刈取穀稈(収穫物)は、株元から穂先までの全稈であり、この刈取穀稈は、オーガ25が横方向に搬送することで刈取搬送装置14の前方箇所に集められる。そして、この刈取穀稈は、後壁フレーム部21の開口(図示せず)から刈取搬送装置14に供給され、刈取搬送装置14によって脱穀装置7に供給される。
【0038】
〔脱穀装置の構成〕
図1〜4に示すように、脱穀装置7は、脱穀機体30を備えている。図4,6に示すように、脱穀機体30の上部に脱穀部31が配置され、脱穀機体30の下部に選別部32が配置され、選別部32の下側に一番物を回収して横方向に搬送する一番搬送機構47(一番物回収部の一例)と、二番物を回収して横方向に搬送する二番搬送機構48(二番物回収部の一例)とが配置されている。
【0039】
この脱穀装置7では扱室33に供給される刈取穀稈を収穫物と称し、この扱室33で扱処理された収穫物を処理物と称している。処理物には穀粒と切れワラ等とが含まれる。また、一番物とは、主として穀粒を含む処理物であり、二番物とは、単粒化が不充分な穀粒と、切れワラ等とを多く含む処理物である。
【0040】
脱穀部31は、扱室33の内部に扱胴34を収容し、扱胴34の下部に受網39を備えている。この受網39は、前端が掻込部42と扱処理部43との境界に対応する位置にあり、後端が掻込部42の後端近くにある。扱室33は、脱穀機体30の前側の前壁35と、後側の後壁36、左側壁37aと、右側壁37bと、上部を覆う天板38とを備えている。扱室33のうち前壁35の下部位置には収穫物が供給される供給口33aが形成され、この供給口33aの下側に案内底板44が配置されている。また、扱室33のうち後壁36の下側に排塵口33bが設けられている。
【0041】
天板38の内面(下面)には、プレート状の複数の送塵弁38aが、前後方向で設定間隔で設けられている。複数の送塵弁38aは、扱室33において扱胴34とともに回転する処理物に後側に移動させる力を作用させるように平面視において駆動軸芯Xに対して傾斜する姿勢で設けられている。
【0042】
扱胴34は、前後向き姿勢の駆動軸芯Xと同軸芯で、前壁35と後壁36とに対して前後方向に貫通する回転支軸40と一体回転する。つまり、回転支軸40の前端が軸受を介して前壁35に回転自在に支持され、これと同様に回転支軸40の後端が軸受を介して後壁36に回転自在に支持されている。この脱穀部31では、回転支軸40の前端部に対して回転駆動機構41から駆動回転力が伝えられる。
【0043】
この脱穀装置7では図6に示すように、天板38のうち、左側部が複数のヒンジ38cを介して、前後向き姿勢の開閉軸芯を中心に揺動開閉自在に支持されると共に、右側部がクランプ38dにより閉じ姿勢に維持できるように構成されている。また、脱穀装置7の左側壁37aは開閉支軸37cを中心に外方に揺動開閉自在に備えられている。
【0044】
これにより、クランプ38dの操作により天板38を開放することにより、上方から扱室33の点検保守を行えると共に、左側壁37aを外方に揺動させることにより左外方から、扱室33の内部の点検保守を可能にしている。また、天板38を開放することにより、受網39を上方に抜き出すことも可能に構成されている。更に、左側壁37aを、開閉支軸37cを中心に揺動させて開放した場合には、図3に示すように略水平となる姿勢に達する。尚、開閉自在に構成される左側壁37aの前端を受網39の前端位置に対応させ、この左側壁37aの後端を受網39の後端位置に対応させている。
【0045】
特に、右側壁37bには点検用開口Wが形成され、この点検用開口Wを開放することにより、扱室33の内部の点検保守が可能となるが、この構成は後述する。
【0046】
図4に示すように、扱胴34は、前端部の掻込部42と、掻込部42の後方位置の扱処理部43とを一体形成して構成されている。掻込部42は、扱胴34の前端側ほど小径となる先細り状の基台部42aの外周部に2重螺旋の螺旋羽根42bを備えている。扱処理部43は、図8に示すように、扱胴34の周方向に所定間隔で備えた6本の棒状の扱歯支持部材43aに対して、複数の扱歯43bを駆動軸芯Xに沿って所定間隔で扱胴34の外周側に向けて突設している。
【0047】
脱穀部31では、刈取搬送装置14からの収穫物が供給口33aを介して扱室33に供給される。供給された収穫物は、掻込部42の螺旋羽根42bによって案内底板44に沿って扱胴34の後方に掻き込まれ扱処理部43に供給される。扱処理部43では、扱胴34の回転に伴い収穫物が扱歯43b及び受網39によって扱き処理される結果、脱穀が行われる。
【0048】
このように脱穀が行われる際には、扱胴34と共に処理物が回転することにより、処理物が送塵弁38aに接触して扱室33の後部に搬送されつつ脱穀処理される。脱穀処理によって得られた穀粒と短い切れワラ等が受網39を漏下して選別部32に落下するが、受網39を漏下できない処理物(穀稈や、長寸の切れワラ等)は、排塵口33bから扱室外に排出される。
【0049】
〔受網の構成〕
図4図6に示すように、受網39は、円弧状となる複数の縦フレーム39tと、これら複数の縦フレーム39tに直交する姿勢で固定されたパイプ状横フレーム39pと板状横フレーム39yとを扱胴34の周方向に所定間隔で備えて構成されている。このような構成から縦フレーム39tと、パイプ状横フレーム39pと、板状横フレーム39yとの間に多数の漏下孔が形成される。
【0050】
つまり、受網39は、駆動軸芯Xに沿う方向視において、扱胴34の下側から駆動軸芯Xより高い位置に亘る円弧状の領域に配置されている。
【0051】
具体的な構成として、複数の縦フレーム39tに対し複数のパイプ状横フレーム39pと板状横フレーム39yとを備えたものを1つの分割受網39Aとして構成され、これら6つの分割受網39Aを組み合わせて受網39が形成されている。また、脱穀機体30には、前部支持部材60と、後部支持部材61と、中間支持部材62とが備えられ、これらに6つの分割受網39Aが分離可能に支持されている。
【0052】
後部支持部材61が左側壁37aと右側壁37bとに亘る位置に配置され、その端部61aが対応する側壁(左側壁37aと右側壁37b)に連結され、この後部支持部材61の下方に排塵口33bが配置されている。そして、この構成では、脱穀部31では、6つの分割受網39Aを個別に取り出すことが可能となる。
【0053】
〔選別部の構成〕
図4に示すように、選別部32は、揺動選別装置45と、唐箕46とを備えており、揺動選別装置45の下側に、一番搬送機構47と、二番搬送機構48とを配置している。
【0054】
揺動選別装置45は、受網39の下側に配置されている。この揺動選別装置45は、偏心軸等を用いた揺動駆動機構49により揺動作動するシーブケース65を備えると共に、このシーブケース65に対し、上部グレンパン66と、チャフシーブ67と、ストローラック68と、下部グレンパン70と、グレンシーブ71とを備えて構成されている。
【0055】
つまり、上部グレンパン66より少し低い位置で、この上部グレンパン66より後側にチャフシーブ67が配置され、このチャフシーブ67より後側にストローラック68が配置されている。下部グレンパン70は、チャフシーブ67の前端部の下側に配置され、この後側にグレンシーブ71が配置されている。
【0056】
唐箕46は、ファンケース46aの内部に複数の回転羽根46bを有する唐箕本体を収容し、横向き姿勢の駆動軸により回転自在に構成されている。ファンケース46aの上部には、選別風を下部グレンパン70の上面に沿って送り出すための上部吐出口46cと、選別風を後方に送り出すための後吐出口46dとが形成されている。
【0057】
シーブケース65には、唐箕46の上部吐出口46cから供給される選別風を上部グレンパン66の下面に沿って供給する風路と、唐箕46の後吐出口46dから供給される選別風を下部グレンパン70の上面に沿って供給する風路とが形成されている。更に、揺動選別装置45の後端位置(図4では右端)には塵埃排出口50が形成されている。この塵埃排出口50の両側部には排出口カバー51が配置されている。
【0058】
一番搬送機構47は、一番物案内部75で案内される一番物(穀粒)を横方向に搬送する一番スクリューとして構成されている。二番搬送機構48は、二番物案内部76で案内される二番物を横方向に搬送する二番スクリューとして構成されている。
【0059】
図4,5に示すように、脱穀機体30の袋詰め部側の横外側に揚送機構52及び還元搬送機構53が設けられている。つまり、一番搬送機構47で横方向に搬送された一番物(穀粒)を穀粒タンク18に揚送する位置にスクリュー式の揚送機構52が立設されている。二番搬送機構48で横方向に搬送された二番物を揺動選別装置45の前部に戻すスクリュー式の還元搬送機構53が備えられている。図5に示すように、側面視において揚送機構52と還元搬送機構53とは互いに交差するように配置されている。
【0060】
還元搬送機構53の基端位置には、再処理ケース54が備えられている。この再処理ケース54は、一番搬送機構47のスクリューと一体回転する再処理プレートを備えており、二番搬送機構48から還元搬送機構53に処理物を受け渡す際に、再処理プレートを二番物に接触させることで単粒化を促進するように構成されている。更に、この還元搬送機構53の上端には、二番物を揺動選別装置45の前部に向けて送り出す吐出部が形成されている。
【0061】
このような構成から、選別部32では、受網39から漏下した処理物がシーブケース65に供給されると共に、揺動駆動機構49の駆動力で揺動作動するに伴い、処理物を後方に搬送し、この搬送時に唐箕46からの選別風を受けて選別処理が行われる。
【0062】
この選別処理によって得られた一番物は、一番物案内部75から一番搬送機構47に流下して回収され、揚送機構52によって袋詰部8の穀粒タンク18に貯留される。また、選別処理によって得られた二番物は、二番物案内部76から二番搬送機構48に流下して回収され、再処理ケース54で単粒化が図られた後に、還元搬送機構53によって揺動選別装置45の前部に戻され単粒化が図られる。そして、選別処理によって発生した3番処理物としてのワラ屑などの塵埃が揺動選別装置45の後端から後方へ送られ、塵埃排出口50から外部に排出される。
【0063】
〔点検用開口〕
コンバインによる収穫作業では、例えば、穀稈に水滴が付着している場合や、穀稈に多くの水分を含む場合には、脱穀装置7の受網39に目詰まりが発生し、受網39での処理物の漏下が適正に行われないこともあった。
【0064】
このように受網39に目詰まりが発生した場合には、前述したように、クランプ38dによる閉じ状態を解除し、ヒンジ38cでの揺動により脱穀装置7の天板38を開放することや、左側壁37aを取り外し、この左側壁を開放し、目詰まりを解消する作業を行うことも考えられる。
【0065】
特に、左側壁37aを開放した場合には、受網39の側方を開放して良好な作業を行えるものの、この反対側の受網39の目詰まりの解消が困難であるため、図5〜7に示すように、右側壁37bに点検用開口Wが形成されている。この点検用開口Wは、蓋体Waを取り外すことにより開放できるように構成されている。
【0066】
つまり、右側壁37bのうち、扱胴34の扱処理部43の外側部に対応する位置(側面視で扱処理部43と重複する位置)に点検用開口Wとして、第一点検用開口81と、第二点検用開口82とが形成されている。
【0067】
第一点検用開口81(点検用開口W)は、右側壁37bのうち、側面視で受網39と重複し、前後方向で受網39が配置される領域の中央部から後端に亘る領域中で、揚送機構52より後側に形成されている。この第一点検用開口81には、着脱自在に主蓋体83(蓋体Wa)を備えている。図7に示すように、主蓋体83を閉じ状態に維持するように右側壁37bに複数の固定ボルト85を脱穀装置7の外方に向けて突設しており、これらの固定ボルト85を主蓋体83の貫通孔部に挿通し、各々の固定ボルト85にナット86を螺合させ、締め付けることで主蓋体83が閉じ状態に維持される。
【0068】
第二点検用開口82(点検用開口W)は、右側壁37bのうち、側面視で受網39と重複し、還元搬送機構53の上端の吐出部より上側に形成されている。この第二点検用開口82には、着脱自在に副蓋体84(蓋体Wa)を備えている。図8に示すように、副蓋体84を閉じ状態に維持するように右側壁37bに複数の固定ボルト85を脱穀装置7の外方に向けて突設しており、これらの固定ボルト85を副蓋体84の貫通孔部に挿通し、各々の固定ボルト85にナット86を螺合させ、締め付けることにより副蓋体84が閉じ状態に維持される。
【0069】
このような構成から、例えば、受網39に目詰まりが発生した場合には、主蓋体83を取り外して第一点検用開口81を開放すると共に、副蓋体84を取り外して第二点検用開口82とを開放することにより、これらの開口に受網39を露出させ目詰まりの解消を容易に行えることになる。
【0070】
特に、この構成では、脱穀装置7の天板38等に上面等に作業者が立ち、脱穀装置7と袋詰部8との間の空間から点検用開口Wに工具類を挿入して作業を行う作業形態も想像できるが、図2に示す如く袋詰部8は、ホッパー部19の下側が大きく開放する構成であるため、ホッパー部19の下側から主蓋体83と副蓋体84とを取り外し、第一点検用開口81と、第二点検用開口82とから工具類を挿入して作業を行うことも可能となる。
【0071】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0072】
(a)貯留部として、縦向き姿勢の軸芯を中心に旋回できるように構成されたグレンタンクを備えたコンバインに本発明の構成の点検用開口Wを備える。この構成のコンバインでは、グレンタンクを旋回させることで、右側壁37bの露出が可能となるため、主蓋体83と副蓋体84とを取り外しを容易に行え、しかも、第一点検用開口81と第二点検用開口82とから扱室33の保守点検を容易に行える。
【0073】
(b)例えば、第一点検用開口81を閉じる主蓋体83と、第二点検用開口82を閉じる副蓋体84とを、ワイヤ等により右側壁37bに支持するように構成しても良い。このように構成することにより、主蓋体83と副蓋体84とを右側壁37bから分離した状態であっても、これらを右側壁37bに吊り下げる状態で支持することも可能となり、主蓋体83と副蓋体84との取り扱いが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、脱穀部と貯留部とが機体に左右方向に並列して備えられたコンバインに利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 走行機体(機体)
7 脱穀装置(脱穀部)
8 袋詰部(貯留部)
15 刈取部
32 選別部
33 扱室
34 扱胴
37b 側壁(右側壁)
39 受網
42 掻込部
43 扱処理部
47 一番搬送機構(一番物回収部)
48 二番搬送機構(二番物回収部)
52 揚送機構
53 還元機構
81 第一点検用開口
82 第二点検用開口
85 固定ボルト
W 点検用開口
Wa 蓋体
X 駆動軸芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8