【文献】
Blood,2011年,Vol.118, Abstract 974,URL: http://www.bloodjournal.org/content/118/21/974.abstract
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】NSCLC細胞株PC9、PC9GRおよびPC9WZRにおけるダイナミックBH3プロファイリング。(A)プライミングを測定するためのBimペプチド(0.3μM)反応に対するミトコンドリアの反応を使用する、薬に16h曝露された細胞におけるBH3プロファイリング結果。(B)細胞死は、アネキシンV/PI染色を使用するFACSによって、72hで測定された。
【0012】
【
図2】突然変異のBIMであるAVペプチドは、本来のBIMペプチドのように働く。プライミングを測定するために、BIMのBH3ペプチドAc−MRPEIWIAQELRRIGDEFNA−NH
2(配列番号1)(0.3μMもしくは1μM)または点突然変異されたBIMであるAVのBH3ペプチドAc−MRPEIWIAQELRRIGDEFNV−NH
2(配列番号2)(0.3μMもしくは1μM)の反応を使用する、1μMのゲフィチニブまたは100nMのWZ4002に16h曝露された、細胞株(A)PC9、(B)PC9GRおよび(C)PC9WZRにおけるダイナミックBH3プロファイリング。
【0013】
【
図3】NSCLC細胞株におけるダイナミックBH3プロファイリング。(A)プライミングを測定するためにBimペプチド(1μM)反応を使用する、薬に16h曝露させた細胞におけるBH3プロファイリングの結果。(B)細胞死は、アネキシンV/PI染色を使用するFACSによって72hで測定された。(C)1μMのBimを用いたΔ%脱分極と72hでの細胞死との間の相関関係、p=0.0014;両側。
【0014】
【
図4】左に、数種のBH3ペプチドを使用して、1μMのイマチニブを用いて16hおよび8h処置されたヒトCML細胞株(A)K562および(B)Ku812におけるBH3プロファイリングの結果。右に、(C)0.1μMのBimを用いたΔ%脱分極と(D)アネキシンV/PI染色を使用するFACSによる48hでの細胞死との間の相関関係。
【0015】
【
図5】ダイナミックBH3プロファイリングは、CMLの初代のサンプルにおけるイマチニブ反応を予測する。慢性骨髄性白血病患者のサンプルにおけるDBPの予測能力が試験された。(A)凍結フィコールで精製された骨髄の初代の慢性骨髄性白血病のサンプルが、1および5μMのイマチニブを用いて16時間処置され、それからDBPが行われた。結果は、Δ%プライミングとして表現される。診療所においてイマチニブ処置に反応した患者から得られたそれらのサンプルは、再発した患者から得られたそれらのサンプルとは対照的に、我々のDBP分析において、より有意に高いΔ%プライミングを表した。(B)このサンプル一式に対して受診者動作特性曲線分析が行われた。ROC曲線下の面積は0.94であり、DBPはCML患者に対して、彼らがイマチニブ処置から利益を得られるかどうかを予測するためのバイナリの予測因子(binary predictor)として使用され得ることを示している。
【0016】
【
図6】ダイナミックBH3プロファイリングは、標的療法に対する白血病細胞死の反応を的確に予測する。(A)K562骨髄性白血病細胞が、広範なキナーゼのインヒビターの一団に16時間曝露され、ダイナミックBH3プロファイリングが行われた。BIMのBH3ペプチドに続いて薬による処置によって引き起こされた脱分極における変化が表わされる。有意な変化は、イマチニブ(BCR−Ab1インヒビター)、TAE−684(ALK)およびBEZ235(PI3K/mTOR)に対してしか見出されなかったことに留意する。(B)K562細胞は、同じ一団の薬に72時間曝露され、細胞死反応が、アネキシンV/PIによって評価された。ダイナミックBH3プロファイリングは、イマチニブによる予想された死滅だけでなく、TAE−684およびBEZ235による予想外の死滅もまた的確に予測したことに留意する。(C)p210の有無によるBaF3マウス白血病細胞のダイナミックBH3プロファイリングは、種々の薬によって16時間曝露された後に誘導された、異なるプライミングの変化を明らかにする。(D)48時間曝露後の細胞毒性(アネキシンV/PI)がダイナミックBH3プロファイリングの予測を裏付ける。(E)エピジェネティックな改変剤に曝露されたAML細胞Ku812のダイナミックBH3プロファイリング(プロジェクト4から)。イマチニブは陽性対照である。BETインヒビターであるJQ1は、プライミングを増大させ、細胞死を引き起こすことが予測されるが、化合物A(DOTILインヒビター)およびB(EZH2インヒビター)は、そうではない。(F)イマチニブおよびJQ1は、ダイナミックBH3プロファイリングによって予測されるように、細胞死を誘導するが、化合物Aおよび化合物Bは、そうではない。
【0017】
【
図7】DBPを使用して血液系悪性腫瘍における最適処置を同定すること。肝要な膜受容体のいずれかを標的とする数種の薬:ゲフィチニブ(EGFRインヒビター)、イマチニブ(Ab1インヒビター)、ラパチニブ(HER2インヒビター)、PD173074(FGFRインヒビター)およびTAE−684(Alkインヒビター);または重要な細胞内のキナーゼ:MK−2206(Aktインヒビター)、PLX−4032(BRaf
V600Eインヒビター)、AZD−6244(MEKインヒビター)およびBEZ−235(PI3K/mTORインヒビター)が選択され、それらは数種のヒト血液がん細胞株:K562(慢性骨髄性白血病)、DHL6(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)、LP1(多発性骨髄腫)、DHL4(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)およびAML3(急性骨髄性白血病)において試験された。(A)Δ%プライミングとして表現されるDBP(16時間インキュベーション)の結果および(B)Δ%細胞死として表現されるアネキシンV/PI染色を使用する72時間での細胞死の測定値が、(C)有意な相関関係を表した。したがって、DBPは血液系悪性腫瘍の細胞株に対して最適処置を予測し得る。
【0018】
【
図8】DBPを使用して固形腫瘍における最適処置を同定すること。
図7において使用された同じ一団のキナーゼインヒビターが、数種のヒト固形腫瘍細胞株:MCF7(乳がん)、PC9(非小細胞肺がん)、Sk5mel(メラノーマ)、HCT116(大腸がん)およびMDA−MB−231(乳がん)に対して試験された。(A)Δ%プライミングとして表現されるDBP(16時間インキュベーション)の結果および(B)Δ%細胞死として表現されるアネキシンV/PI染色を使用する72〜96時間での細胞死の測定値が、(C)有意な相関関係を表した。したがって、DBPはまた固形腫瘍の細胞株に対しても、最適処置を予測できる。
【0019】
【
図9】ダイナミックBH3プロファイリングは、優れたバイナリの予測因子である。(A)
図7および
図8を編集した結果であり、全ての細胞株に対してΔ%プライミングとΔ%細胞死との間に有意な相関関係を表している。(B)受診者動作特性曲線分析が行われた。ROC曲線下の面積は0.87であり、細胞株における化学療法反応に対する優れたバイナリの予測因子であることを示している。
【0020】
【0021】
【
図11】
図11は、iBH3が、混合集団とともに個々の亜集団のプロファイルを再現できることを実証する一連の棒グラフである。個々に(
図11Aに表されるように非混合の)または複雑な混合物として(
図11Bに表されるように混合の)プロファイルされたサンプルは、同じプロファイルを導出する。
【0022】
【
図12】
図12は、iBH3がどのように細胞集団を定義し、プロファイリングに対する細胞の反応を測定するのかを表す一連のパネルである。代表的なFACSデータは、
図11の混合サンプル内の亜集団の単離を実証する。
【0023】
【
図13】
図13は、顕微鏡観察によって測定された、ペプチド処置に反応したことによるシトクロムcの消失を表す一連の蛍光顕微鏡画像である。細胞は、それらの核のDAPI染色によって位置付けられ、ミトコンドリアは、ミトコンドリアマーカー(MnSOD)の染色によって、核のすぐ近傍に位置付けられ、シトクロムc染色は、ミトコンドリアマーカー染色の領域と相関している。不活性な対照ペプチドは、MnSOD染色の領域内にシトクロムc染色を表す一方、BIMペプチドは、MnSOD染色の全ての領域内から、シトクロムcのほぼ完全な消失を引き起こす。
【0024】
【
図14】
図14は、miBH3のプロファイルと知られているプロファイルとの相関関係を表す一連の棒グラフである。SuDHL4細胞株のmiBH3のプロファイル(
図14A)は、BH3ペプチドに反応したことにより、シトクロムcとMnSODチャンネルとの間の相関関係の消失を表す。シトクロムcの放出ならびにBIM、BID、PUMAおよびBMFのペプチドに対する相関関係の消失は、
図14Bに表される他のBH3プロファイリング方法によって測定されたシトクロムcの消失と整合する。
【0025】
【
図15】
図15は、予め作製された凍結プレートが、新たに調製されたプレートと同じように機能を果たすことを表すグラフである。反応性の細胞(MDA−MB−231)は、凍結のプレートおよび新たに調製されたプレートの両方において、ペプチド処置(BAD)に対して、同程度の反応を表す。無反応性の細胞(SuDHLl0)は、非特異的なノイズの試験を行うために使用され、凍結プレートは、新たに調製されたプレートと同等の反応を導出する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の詳細な説明
本発明は、がん細胞が死に対してどの程度「準備されている」のかを測定するものとしてもまた知られている、がん細胞がプログラム細胞死(すなわち、アポトーシス)の閾にどの程度近いのかを測定する技術、の発見に一部基づく。本発明の方法は、プログラム細胞死の閾にがん細胞をより近づける(プライミングを最も増大させる)薬物の同定を可能にする。本発明は、個々の臨床がんサンプルに適用され得ることによって、プログラム細胞死の閾にそのサンプル中の細胞を最も近づける、その個々のサンプル用のそれらの薬物を容易に同定することができる。そのように同定された薬物は、サンプルが由来した患者に臨床的利益を提供する可能性が最も高い。したがって、本発明は、個々のがん患者に対する個別化治療の方法を提供する。
【0027】
本技術は、本発明の方法が、個々のがんサンプルのミトコンドリアのプライミングに対する、あらゆる個々の薬物またはそれらの組み合わせのダイナミックな効果の観察を可能にする点で、US2008/0199890に記載された先の技術とは異なる。先の方法は、がんサンプルのプライミングをベースライン時に単に測定しただけであり、一群の化学薬品のいずれにも撹乱されなかった。したがって、アポトーシスの閾に最も近いそれらの細胞は、死に向けて最も準備されており、化学療法に対して最も反応性があることがおおよそ予測されたが、細胞が、どの薬剤に対して最も感受性がある可能性が高いかを識別する能力はなかった。対照的に、本発明の方法は、評価される特定の薬物に起因するプライミングの変化を可能にして、よって化合物が、細胞をアポトーシスの閾により近づけさせるかどうかを、決定する。さらに、本発明の方法は、特定の細胞が特定の治療剤に対して耐性になったかどうかを決定する能力があるため、先の方法よりも優れている。本発明の方法は、本明細書中でダイナミックBH3プロファイリングと呼ぶ。
【0029】
様々な方法において、薬剤に対する細胞の感受性が決定される。方法は、試験細胞を試験薬に接触させることを含む。試験薬に対する細胞の感受性は、試験薬に曝露された試験細胞または試験細胞成分(例えば、ミトコンドリア等)を、アポトーシス促進性のBCL−2ファミリーからの標準濃度のBH3ドメインペプチドの一群に接触させることによって決定される。アポトーシス促進性のBCL−2のBH3タンパク質およびペプチドは、以下:Bcl-2 interacting mediator of cell death(BIM);その突然変異体(BIM AV);BH3 interacting domain death agonist(BID);Bcl-2-associated death promoter(BAD);NOXA;p53 up-regulated modulator of apoptosis(PUMA);Bcl-2-modifying factor(BMF)およびharakiri(HRK)を含む(表1を参照)。ミトコンドリア外膜の透過化を誘導するBH3ペプチドの能力は、試験集団(すなわち、細胞または細胞成分(例えばミトコンドリア等))および試験薬に曝露されていない対照集団(すなわち、細胞または細胞成分(例えばミトコンドリア等))において測定される。対照集団と比較された、試験集団におけるBH3ペプチドにより誘導されたミトコンドリア外膜の透過化の増大は、細胞が、試験薬に対して反応性があるであろう(すなわち、細胞死が誘導されるであろう)ことを示す。あるいは、対照集団と比較された、試験集団におけるBH3ペプチドにより誘導されたミトコンドリア外膜の透過化の無変化(または減少)は、細胞が、試験薬に対して耐性があるであろう(すなわち、細胞死が誘導されないであろう)ことを示す。
【0030】
細胞または細胞成分は、がん細胞もしくはがん性であると疑われる細胞である。細胞は透過化されることによって、BH3ペプチドがミトコンドリアに接近することが可能になる。細胞は、当該技術分野において知られている方法によって透過化される。例えば、細胞は、ジギトニン、または技術分野において承認されている他の界面活性剤および細胞透過化剤に細胞を接触させること等によって透過化される。
【0031】
細胞が透過化された後に、細胞は、BH3ペプチドまたは試験薬で処置される。細胞が処置された後に、ミトコンドリア外膜の透過化が測定される。外膜の透過化は、多数の方法によって測定される。例えば、ミトコンドリアの膜電位の消失による外膜の透過化等。ミトコンドリアの膜電位の消失は、例えば、電位差測定用または放射測定用の色素で細胞を処置すること等により測定される。
【0032】
あるいは、外膜の透過化は、ミトコンドリア膜間腔からの分子の放出を測定することによって決定される。測定され得る分子の例は、シトクロムc、SMAC/Diablo、Omi、アデニル酸キナーゼ−2またはアポトーシス誘導因子(AIF)を含む。任意に、細胞は、外膜の透過性を測定する前に固定される。細胞は、ホルムアルデヒド等のアルデヒドを使用すること等の当該技術分野において知られている方法によって固定される。
【0033】
ミトコンドリア外膜の透過化は、単一細胞レベルまたは多細胞レベルで測定され得る。加えて、本明細書中に開示される方法のいくつかは、細胞の亜集団のアッセイを可能にする。
【0034】
電位差測定用の色素の例は、蛍光JC−1プローブ(5,5',6,6'−テトラクロロ−1,1',3,3'−テトラエチルベンズイミダゾリルカルボシアニンヨージド)もしくはジヒドロローダミン123、またはテトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)もしくはテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)を含む。
【0035】
JC−1は、親油性で、カチオン性の色素であることによって、電位差に比例してミトコンドリア内膜を横切ってミトコンドリアに入る。JC−1は、低い膜濃度でモノマーとして存在する。しかしながら、JC−1は、より高いミトコンドリア電位の条件下でミトコンドリアマトリックス内に蓄積した。これらのより高い濃度で、JC−1は、赤色蛍光の「J凝集体」を形成する。モノマーとして、色素は527nmの吸収/発光極大を有する一方、高い膜電位では、発光極大は590nmである。このように、このシアニン色素の発光比率の測定は、ミトコンドリアの膜電位の高感度の測定として使用され得る。色素は、核または細胞質の基準値の測定を必要としない色素濃度の二重測定を可能にする。単離されたミトコンドリアを使用する研究は、モノマーのJC−1からの527nmの発光は46〜182mVの範囲の膜(M)電位に合わせてほぼ直線的に増大するが、590nmのJ凝集体の発光は140mVよりも負のM値に対して感受性がなく、140〜182mVの範囲内の電位の値に対して強い感受性があることを表した(Di Lisa et al.,1995)。フルオレセインおよびテトラメチルローダミンのために設計された光学フィルターは、モノマーおよびJ凝集体の形態をそれぞれ別々に可視化するために使用され得る。あるいは、両形態は、標準フルオレセインロングパス光学フィルターセットを使用して同時に観察され得る。
【0036】
ジヒドロローダミン123は、酸化によって、蛍光性のレーザー色素であるローダミン123(R123)に変換され得る無電荷の非蛍光性の薬剤である。
【0037】
ミトコンドリア膜間腔からの分子の放出は、当該技術分野において知られている方法によって測定され得る。例えば、測定される分子に対する抗体、すなわちシトクロムc、SMAC/Diablo、Omi、アデニル酸キナーゼ−2またはアポトーシス誘導因子(AIF)に対する抗体を使用すること等による。検出は、例えば、ELISA、FACS、免疫ブロット、免疫蛍光法または免疫組織化学的検査等によって行われ得る。
【0038】
ミトコンドリア腔から放出される分子の測定に加えて、細胞内および細胞外の他のマーカーも測定され得る。これは、細胞の亜集団間の差異を識別する能力を考慮に入れたものである。
【0039】
ダイナミックBH3プロファイリングは、固体表面上に細胞を固定化することによって単一細胞レベルで達成され得る。任意に、固体表面は、ポリアミンまたはポリリシンでコートされる。固定化された細胞は、上述の通り透過化される。その後、細胞は、BH3ペプチドおよび/または試験薬に接触させられる。細胞が、例えば45〜90分間等の所定の期間処置された後、細胞は、当該技術分野において知られている方法によって、固定され、透過化される。例えば、細胞はホルムアルデヒドを用いて固定され、さらに、メタノールまたはtriton x-100を用いて透過化される。外膜の透過化は、ミトコンドリア膜間腔からの分子およびミトコンドリアマーカーの細胞内染色によって決定される。測定され得る分子の例は、シトクロムc、SMAC/Diablo、Omi、アデニル酸キナーゼ−2またはアポトーシス誘導因子(AIF)を含む。ミトコンドリアマーカーはMnSODを含む。染色された細胞は、例えばDAPI等の核染色剤を用いて対比染色され得る。任意に、細胞内および細胞外の他のマーカーも測定され得る。細胞の分析は、核を位置付けるために、顕微鏡を使用して手作業で達成され得るか、または例えばCellprofiler等のソフトウェアを使用すること等により自動化され得る。
【0040】
細胞は、がんを患っているか、またはがんを患っていると疑われることが知られている対象由来である。対象は、好ましくは、哺乳動物である。哺乳動物は、例えばヒト、非ヒトの霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシ等である。対象は、がんを患っていると以前に診断されており、おそらく既にがんに対する処置を受けている。あるいは、対象は、がんを患っていると以前に診断されていない。
【0041】
薬剤は、例えば化学療法剤等の治療剤である。例えば、薬剤は、キナーゼインヒビター等の標的化学療法剤である。当業者は、その薬剤が、本発明の方法によって、毒性に対しスクリーニングされ得ることを充分に理解するであろう。
【0042】
アポトーシス、すなわち細胞死は、知られている方法によって同定される。例えば、細胞が、収縮し、それらの上に泡様のブレブを発達させ、それら核内のクロマチン(DNAおよびタンパク質)を分解させ、ならびに、シトクロムcの放出、ミトコンドリアの膜電位の消失、膜に包まれた小フラグメントへの断片化を伴い、それらミトコンドリアを崩壊させるか、または、普段は細胞膜内に隠れているホスファチジルセリンが、表面上に曝露される。
【0043】
試験薬に接触させていない細胞と比較した、試験薬に接触させた細胞の、BH3ペプチドによって誘導された膜透過化レベルの差は、統計学的に有意である。統計学的に有意とは、変更が、偶然によってのみ起こると予想され得るものよりも大きいことを意味する。統計学的な有意差は、当該技術分野において知られている方法によって決定される。例えば、統計学的な有意差は、P値等によって決定される。P値は、実験中の群間の差が偶然に起きた可能性の度合いである(P(z≧z
observed))。例えば、0.01のP値は、結果が偶然に生じた確率が100分の1であることを意味する。P値が低いほど、群間の差が処置によって引き起こされたという可能性はより高くなる。変更は、P値が0.05以下である場合、統計学的に有意である。好ましくは、P値は、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001またはそれ未満である。
【0044】
アポトーシス促進性のBCL−2のBH3ドメインペプチド
アポトーシス促進性のBCL−2のBH3ドメインペプチドは、長さ195アミノ酸未満、例えば、長さ150、100、75、50、35、25または15アミノ酸以下等である。アポトーシス促進性のBCL−2のBH3ドメインペプチドは、Bcl-2 interacting mediator of cell death(BIM);BH3 interacting domain death agonist(BID);Bcl-2-associated death promoter(BAD);NOXA;p53 up-regulated modulator of apoptosis(PUMA);Bcl-2-modifying factor(BMF)およびharakiri(HRK)を含む。BH3ドメインペプチドは、配列NH
2−XXXXXXXXXXLXXXXDXXXX−COOH(配列番号16)を(完全または部分的に)含むペプチドを含む。本明細書中において使用されるXは、いずれのアミノ酸であってもよい。あるいは、BH3ドメインペプチドは、配列番号16の、少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、15個またはそれより多いアミノ酸を含む。
例えば、アポトーシス促進性のBCL−2のBH3ドメインペプチドは、表1に表した配列番号1〜14の配列を含む。PUMA2A(配列番号15)は陰性対照である。
【0046】
BH3ドメインペプチドは、標準的な改変を使用することによって改変され得る。改変は、アミノ(N)末端で、カルボキシ(C)末端で、内部で、または前述のいずれの組み合わせで生じていてもよい。本明細書中に記載のある側面において、ポリペプチド上に1以上のタイプの改変があってもよい。改変は、これらに限定されないが、以下:アセチル化、アミド化、ビオチン化、シンナモイル化、ファルネシル化、ホルミル化、ミリストイル化、パルミトイル化、リン酸化(Ser、TyrまたはThr)、ステアロイル化、スクシニル化、スルフリル化および環化(ジスルフィド架橋またはアミド環化を経て)、ならびにCys3またはCys5による修飾を含む。本明細書中に記載のGCRAペプチドはまた、2,4−ジニトロフェニル(DNP)、DNP−リシンによっても、7−アミノ−4−メチル−クマリン(AMC)、フルオレセイン、NBD(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール)、p−ニトロ−アニリド、ローダミンB、EDANS(5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸)、dabcyl、dabsyl、ダンシル、テキサスレッド、FMOCおよびTamra(テトラメチルローダミン)による改変によっても、改変されてよい。
【0047】
任意に、BH3ドメインペプチドは、形質導入ドメインに付着される。形質導入ドメインは、それが存在するペプチドを、所望の細胞目的地へ方向付ける。このように、形質導入ドメインは、例えば細胞外から細胞膜を通り、細胞質内へ等、細胞膜を横切ってペプチドを方向付け得る。それの代わりに、またはそれに加えて、形質導入ドメインは、細胞内の所望の場所、例えば核、リボソーム、ER、ミトコンドリア、リソソームまたはペルオキシソーム等にペプチドを方向付け得る。
【0048】
いくつかの態様において、形質導入ドメインは、知られている膜輸送配列に由来する。あるいは、形質導入ドメインは、例えばポリエチレングリコール、コレステロール部分、オクタン酸およびデカン酸等の、膜への取り込みを容易にすることが知られている化合物である。
【0049】
例えば、輸送ペプチドは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1のTATタンパク質からの配列を含んでもよい。このタンパク質は、例えば、U.S.Patent No.5,804,604および5,674,980等に記載されており、それぞれが、参照により本明細書中に組み込まれる。BH3ドメインペプチドは、TATタンパク質を構成する全86アミノ酸のうちのいくつかまたは全てと繋がられる。例えば、86アミノ酸より少ないTATタンパク質の細胞内への取り込みを現すために機能上有効なフラグメントまたは一部等が使用され得る。例えば、“Vives et al, J.Biol.Chem., 272(25):16010-17(1997)”等を参照し、その全体は参照により本明細書中に組み込まれる。細胞内への移行および取り込みを媒介する領域を含むTATペプチドは、知られている技術を使用してさらに定義され得る。例えば、Franked et al, Proc.Natl.Acad.Sci,USA 86:7397-7401(1989)等を参照。輸送配列の他の供給源は、例えば、VP22(例えば、WO 97/05265;Elliott and O’Hare, Cell 88:223-233(1997)等に記載されている)、ショウジョウバエのアンテナペディア(Antp)のホメオティックの転写因子、HSV、ポリアルギニン、ポリリシン、または非ウイルスタンパク質(Jackson et al, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10691-10695(1992))等を含む。
【0050】
形質導入ドメインは、BH3ドメインペプチドのN末端またはC末端のいずれと繋がられてもよい。2個のプロリン残基のヒンジは、完全な融合ペプチドを創出するために、形質導入ドメインとBH3ドメインペプチドとの間に加えられてもよい。任意に、形質導入ドメインは、形質導入ドメインが細胞内または細胞成分への侵入時にBH3ドメインペプチドから放出されるように、BH3ドメインペプチドと繋がられる。
【0051】
形質導入ドメインは、輸送タンパク質中に存在する単一の(すなわち連続する)アミノ酸配列とすることができる。あるいは、それは、2種または3種以上のアミノ酸配列とすることができ、それらは、タンパク質中に存在するが、天然起源のタンパク質中の他のアミノ酸配列によって分離されている。
【0052】
天然起源の輸送タンパク質のアミノ酸配列は、改変タンパク質を作製するために、例えば、天然起源のタンパク質中に存在する少なくとも1個のアミノ酸の付加、欠失および/または置換によって改変され得る。増大または低減された安定性を有する改変された輸送タンパク質は、知られている技術を使用することによって製造され得る。いくつかの態様において、輸送タンパク質またはペプチドは、天然起源のタンパク質またはその一部のアミノ酸配列と実質的に似ているが同一ではないアミノ酸配列を含む。加えて、コレステロールまたは他の脂質の誘導体は、膜への溶解性を増大させた改変タンパク質を製造するために、輸送タンパク質に加えられ得る。
【0053】
BH3ドメインペプチドおよび形質導入ドメインは、当該技術分野において知られているいずれの好適な方法における化学的なカップリングによって繋がられ得る。多くの知られている化学的な架橋の方法は非特異的であり、すなわちそれらは、輸送ポリペプチドまたはカーゴ高分子上の特定の部位のいずれにもカップリングの位置を方向付けていない。結果として、非特異的な架橋剤の使用は、機能的な部位を攻撃もし、活性部位を立体的にブロックもし得、複合型のタンパク質を生物学的に不活性にし得る。
【0054】
カップリングの特異性を増大させるための1つの手段は、架橋されるべき一方または両方のポリペプチド中、たった1個または数個見出される官能基と直接化学的にカップリングさせることである。例えば、多くのタンパク質において、チオール基を含有する唯一のタンパク質アミノ酸であるシステインは、たった数個だが存在する。また、例えば、ポリペプチドがリシン残基を含有していない場合、第一級アミンに対して特異的な架橋試薬は、そのポリペプチドのアミノ末端に選択的であろう。カップリングの特異性を増大させるこのアプローチを首尾よく利用するには、ポリペプチドが、分子の生物学的活性の消失を伴わずに変更されてもよい分子領域において、好適に数が少なく反応性の高い残基を有すること、を必要とする。
【0055】
システイン残基は、それらがポリペプチド配列の一部に存在するときに置換されてもよく、そうでなければ、架橋反応へのそれらの関与によって、生物学的活性を妨げる可能性が高くなるであろう。システイン残基が置換されるとき、その結果生じるポリペプチドのフォールディングの変化を最小限にすることが、典型的には望ましい。ポリペプチドのフォールディングの変化は、置換物が化学的および立体的にシステインと類似しているとき、最小になる。これらの理由から、セリンが、システインに対する置換物として好ましい。後述の例で実証されるように、システイン残基は、架橋させる目的でポリペプチドのアミノ酸配列中に導入されてもよい。システイン残基が導入されるとき、アミノ末端もしくはカルボキシ末端で、またはその近くへの導入が好ましい。従来の方法は、着目するポリペプチドの製造が化学合成であろうとも組み換えDNAの発現であろうとも、かかるアミノ酸配列の改変に利用可能である。
【0056】
2種の成分のカップリングは、カップリング剤または複合化剤を介して達成され得る。利用され得る数種の分子内架橋試薬があり、例えばMeans and Feeney, Chemical Modification of Proteins, Holden-Day, 1974, pp.39-43等を参照。これらの薬剤には、例えば、J−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)またはN,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド(両方ともスルフヒドリル基に対して非常に特異的で、不可逆的な連結を形成する);N、N’−エチレン−ビス−(ヨードアセトアミド)または6〜11個の炭素のメチレン橋を有する他のかかる試薬(スルフヒドリル基に対して相対的に特異的である);および、l,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(アミノ基およびチロシン基と不可逆的な連結を形成する)等がある。この目的において有用な他の架橋試薬は、以下:p,p’−ジフルオロ−m,m’−ジニトロジフェニルスルホン(アミノ基およびフェノール基と不可逆的な架橋を形成する);アジプイミド酸ジメチル(アミノ基に対して特異的である);フェノール−1,4−ジスルホニルクロリド(主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアナートもしくはジイソチオシアナート、またはアゾフェニル−p−ジイソシアナート(主にアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(数種の異なる側鎖と反応する)およびジスジアゾベンジジン(主にチロシンおよびヒスチジンと反応する)を含む。
【0057】
架橋試薬は、ホモ二官能性(homobifunctional)であってもよく、すなわち同じ反応を起こす2つの官能基を有していてもよい。好ましいホモ二官能性の架橋試薬は、ビスマレイミドヘキサン(「BMH」)である。BMHは、穏やかな条件(pH6.5〜7.7)下で、スルフヒドリル含有化合物と特異的に反応する2つのマレイミド官能基を含有する。2つのマレイミド基は、炭化水素鎖によって接続されている。したがって、BMHは、システイン残基を含有するポリペプチドの不可逆的な架橋にとって有用である。
【0058】
架橋試薬はまた、ヘテロ二官能性(heterobifunctional)であってもよい。ヘテロ二官能性の架橋剤は、遊離のアミンおよびチオールをそれぞれ有する2種のタンパク質を架橋するであろう2種の異なる官能基、例えばアミン反応基およびチオール反応基等、を有する。ヘテロ二官能性の架橋剤の例は、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(「SMCC」)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(「MBS」)、およびスクシンイミド4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート(「SMPB」)、鎖が延長されたMBSのアナログである。これらの架橋剤のスクシンイミジル基は、第一級アミンと反応し、チオールに反応性の高いマレイミドは、システイン残基のチオールと共有結合を形成する。
【0059】
架橋試薬はしばしば水への溶解度が低い。例えばスルホン酸基等の親水性部分は、架橋試薬に加えられて、その水溶性を改善してもよい。スルホ−MBSおよびスルホ−SMCCは、水溶性のために改変された架橋試薬の例である。
【0060】
多くの架橋試薬は、細胞条件下で本質的に開裂不可能な複合体を生み出す。しかしながら、いくつかの架橋試薬は、細胞条件下で開裂可能な、例えばジスルフィド等の共有結合を含有する。例えば、トラウト試薬であるジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)(「DSP」)およびN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピナート(「SPDP」)は、周知の開裂可能な架橋剤である。開裂可能な架橋試薬の使用によって、カーゴ部分が、標的細胞の中への送達後に輸送ペプチドから分離することが可能になる。直接的なジスルフィド連結もまた有用であり得る。
【0061】
前述のものを含む数多くの架橋試薬は、商業的に入手可能である。それらの使用のための詳細な使用説明書は、商業的な供給元から容易に入手可能である。タンパク質の架橋および複合体の調製の一般的な参考文献は、以下:Wong, Chemistry Of Protein Conjugation And Cross-Linking, CRC Press(1991)である。
【0062】
化学的な架橋は、スペーサーアームの使用を含んでもよい。スペーサーアームは、分子内の可動性を提供するか、または複合された部分同士間の分子内距離を調節し、それによって、生物学的活性を保存するために役立ち得る。スペーサーアームは、例えばプロリン等のスペーサーアミノ酸を含むポリペプチド部分の形態であってもよい。あるいは、スペーサーアームは、架橋試薬の一部、例えば「長鎖のSPDP」(Pierce Chem.Co., Rockford, IL., cat.No.21651 H)等の中にあってもよい。
【0063】
BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸のポリマー、または両方の組み合わせであり得る。例えば、様々な態様において、ペプチドは、Dレトロインベルソ型の(retro-inverso)ペプチドである。「レトロインベルソ型の異性体」という用語は、配列方向が逆で、各アミノ酸残基のキラル性が反転された直鎖状ペプチドの異性体を指す。例えば、Jameson et al., Nature, 368, 744-746(1994);Brady et al., Nature, 368, 692-693(1994)等を参照。D−エナンチオマーおよび逆方向の合成の最終結果は、各アルファ炭素での側鎖基の配置は保存されるが、各アミド結合におけるカルボニル基およびアミノ基の配置は交換されることになる。明示的に別段の定めをした場合を除き、本発明のいかなるL−アミノ酸配列も、ネイティブのL−アミノ酸配列に対応する逆配列を合成することによって、Dレトロインベルソ型のペプチドになるものと推定される。
【0064】
あるいは、BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドは環状ペプチドである。環状ペプチドは、当該技術分野において知られている方法によって調製される。例えば、大環状化は、ペプチドのN末端とC末端との間、側鎖とN末端もしくはC末端との間[例えば、pH8.5でK
3Fe(CN)
6を用いて等](Samson et al., Endocrinology, 137: 5182-5185 (1996))、または、2つのアミノ酸側鎖の間に、アミド結合を形成することによって、しばしば達成される。例えば、DeGrado, Adv Protein Chem, 39: 51-124 (1988)等を参照。
【0065】
BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドは、最新のクローニング技術を使用して容易に調製されるか、または固相法もしくは部位特異的変異誘発によって合成されてもよい。BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドは、ドミナントネガティブ型のポリペプチドを含んでもよい。ある態様において、ネイティブのBH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用する適切な精製スキームによって、細胞または組織の供給源から単離され得る。別の態様において、BH3ドメインポリペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドは、組み換えDNA技術によって製造される。組み換え発現に代わって、BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して、化学的に合成され得る。
【0066】
様々な態様において、BH3ペプチドは、例えばα−へリックス構造等の、その二次構造を維持する。へリックスの安定化の方法は、当該技術分野において知られている。
【0067】
好ましくは、BH3ペプチドは、安定性のあるペプチドである。「安定性のある」とは、ペプチドが、生産を可能にするのに充分な安定性を保有し、本明細書中に詳述された目的において有用であるのに充分な期間、化合物の完全性を維持することを意味する。例えば、ペプチドは、極性のおよび/または不安定な架橋を使用して共有結合的に安定化される(Phelan et al. 1997 J.Am.Chem.Soc.119:455;Leuc et al. 2003 Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 100:11273;Bracken et al., 1994 J.Am.Chem.Soc. 116:6432;Yan et al. 2004 Bioorg.Med.Chem.14:1403)。あるいは、ペプチドは、アルキルテザーを含有するアルファ,アルファ−二置換された非天然のアミノ酸を利用したメタセシスをベースとしたアプローチを使用して安定化される(Schafmeister et al., 2000 J.Am.Chem.Soc. 122:5891;Blackwell et al. 1994 Angew Chem.Int.Ed.37:3281)。好ましくは、ペプチドは、炭化水素ステープリング(stapling)を使用して安定化される。ステープルされたペプチドは、それらの形状、したがってそれらの活性が回復および/または維持されるように、化学的に補強されるか、または「ステープルされた」ペプチドである。少なくとも2種の改変されたアミノ酸を有するポリペプチドを安定に架橋させること(「炭化水素ステープリング」と呼ばれるプロセス)は、そのペプチドのネイティブの二次構造を、立体構造的に授けるために役立てることができる。例えば、アルファ−へリックスの二次構造を有する性質のあるポリペプチドを架橋させることは、ポリペプチドにそのネイティブのアルファ−へリックスの立体構造を束縛することができる。束縛された二次構造は、タンパク質分解的切断に対するポリペプチドの耐性を増大させ得、疎水性もまた増大させ得る。ステープルされたBH3ペプチドは、例えばWO05044839A2等に記載されたとおりに製造され、その内容は全体として参照により本明細書中に組み込まれる。あるいは、BH3ペプチドは環状ペプチドである。環状のペプチドは、当該技術分野において知られている方法によって調製される。例えば、大環状化は、ペプチドのN末端とC末端との間、側鎖とN末端もしくはC末端との間[例えば、pH8.5でK
3Fe(CN)
6を用いて等](Samson et al., Endocrinology, 137: 5182-5185 (1996))、または、2つのアミノ酸側鎖の間に、アミド結合を形成することによって、しばしば達成される。例えばDeGrado, Adv Protein Chem, 39:51-124 (1988)等を参照。
【0068】
「単離された」もしくは「精製された」タンパク質または生物学的に活性なその一部には、BH3ドメインペプチドが由来する細胞または組織の供給源からの細胞の材料または混入した他のタンパク質が実質的に入っていないか、あるいは、化学的に合成されたときの原料となる化学物質もしくは他の化学薬品が実質的に入っていない。「細胞の材料が実質的に入っていない」という言葉は、BH3ペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドの調製物を含み、該調製物において、タンパク質は、細胞の細胞成分から分離されており、該タンパク質は、該細胞成分から単離されるか、または組み換えて製造される。ある態様において、「細胞の材料が実質的に入っていない」という言葉は、約30%未満(乾燥重量で)の非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチド(本明細書中「混入したタンパク質」とも呼ばれる)、より好ましくは約20%未満の非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチド、さらに好ましくは約10%未満の非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチド、ならびに最も好ましくは約5%未満の非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチドを有する、BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドの調製物を含む。BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドあるいは生物学的に活性なその一部が組み換えて製造されるとき、それはまた、好ましくは培地も実質的に入っていない、すなわち培地が調製物のうち約20%未満、より好ましくは約10%未満、ならびに最も好ましくは約5%未満の体積である。
【0069】
「原料となる化学物質または他の化学薬品が実質的に入っていない」という言葉は、タンパク質が、タンパク質の合成に関わる、原料となる化学物質または他の薬品から、分離される、BH3ペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドの調製物を含む。ある態様において、「原料となる化学物質または他の化学薬品が実質的に入っていない」という言葉は、約30%未満(乾燥重量で)の、原料となる化学物質あるいは非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチドの化学薬品、より好ましくは約20%未満の、原料となる化学物質あるいは非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチドの化学薬品、さらに好ましくは約10%未満の、原料となる化学物質あるいは非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチドの化学薬品、ならびに最も好ましくは約5%未満の、原料となる化学物質あるいは非BH3ドメインペプチドおよび/または非形質導入ドメインペプチドの化学薬品を有する、BH3ドメインペプチドおよび/または形質導入ドメインペプチドの調製物を含む。
【0070】
「生物学的に同等の」という用語は、本発明の組成物が、ヒト、ラットまたはマウス起源のcDNAライブラリーから同定された、または組み換え発現の兆候から製造された配列から推定されるBH3ドメインポリペプチドと同程度である必要はないが、いくつかのまたは全ての同じアポトーシスの調節作用、すなわちシトクロムCの放出またはBAKのオリゴマー形成を実証することが可能であることを意図している。
【0071】
保存パーセントは、同一残基のパーセンテージを、2残基が保存的置換となる配置のパーセンテージ(PAM250 residue weight tableにおいて0.3以上の対数オッズ値を有すると定義される)に加えることによって、上記のアライメントから計算される。保存は、同一性比較のために上に示された配列に対して参照される。この必要条件を満たす保存的アミノ酸は、以下:R−K;E−D、Y−F、L−M;V−I、Q−Hである。
【0072】
BH3ドメインペプチドはまた、BH3ドメインペプチドの誘導体も含むことができ、該誘導体は、BH3ドメインペプチドのハイブリッドおよび改変型を含むことを意図しており、該BH3ドメインペプチドは、融合タンパク質およびBH3ドメインペプチドのフラグメントならびにハイブリッドおよび改変型を含み、該ハイブリッドおよび改変型においては、あるアミノ酸が欠失または置換および改変され、該改変は、ハイブリッドまたは改変型がBH3ドメインペプチドの生物学的活性を保持する限りにおいて、1個以上のアミノ酸が、改変されたアミノ酸または異常アミノ酸およびグリコシル化等の改変に変化等したものである。生物学的活性を保持することによって、細胞死は、BH3ポリペプチドによって誘導されることが意図され、ヒトまたはマウスから同定された天然起源のBH3ドメインポリペプチドの能力と同じレベルである必要はないが、BH3ドメインポリペプチドは、例えば組み換え等により製造され得る。誘導される、および促されるという用語は、本明細書を通して互換的に使用される。
【0073】
好ましい異型は、1個または2個以上の予測される非必須アミノ酸残基においてなされた保存的アミノ酸置換を有するものである。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン等)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等)、無電荷極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン等)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等)、ベータ分枝状側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン等)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン等)を有するアミノ酸を含む。このように、BH3ドメインポリペプチドにおいて予測された非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸に置換される。あるいは、別の態様において、突然変異は、例えば飽和突然変異誘発等によって、BH3をコードする配列の全部または一部にランダムに導入され得、結果として得られる突然変異体は、活性を保持する突然変異体を同定するためにスクリーニングされ得る。
【0074】
「実質的に相同である」の意味にはまた、本明細書中に記載されるBH3ドメインペプチドに対する抗体との交差反応によって単離されてもよく、またはゲノムDNA、mRNAもしくはcDNAを含むBH3ドメインペプチドをコードするヌクレオチド配列が、ゲノムもしくはサブゲノムのヌクレオチド配列と相補的な配列または本明細書中のBH3ドメインペプチドのcDNAもしくはそのフラグメントとのハイブリダイゼーションにより単離されてもよい、BH3ドメインペプチドのいずれも含まれる。
【0076】
本発明にはまた、完全な細胞を使用して、BH3プロファイリングを行うためのキットも含まれる。キットは、ミトコンドリア緩衝液中に染色成分を含有するマルチウェルプレート、ならびに分析のためにプレートの中に細胞を懸濁および分配するためのミトコンドリア緩衝液のチューブからなる。マルチウェルプレートの各ウェルは、JC−1色素、オリゴマイシン、2−メルカプトエタノール、ジギトニンおよびペプチドまたは小分子の混合物を、それらの最終濃度の2倍で含有する。任意に、プレートおよび懸濁用緩衝液のチューブは、懸濁用緩衝液チューブとともに、後の使用のために凍結され得る。使用のために、プレートおよび緩衝液のチューブは解凍されて、室温にされる。細胞は、緩衝液中で懸濁され、プレートのウェルの中に分配され、545nmでの励起により590nmでのJC−1の赤色蛍光を使用して、蛍光プレートリーダーにおいて分析される。
【0077】
本発明は、以下の非限定的な例において、さらに説明されるであろう。
【0078】
例1:ダイナミックBH3プロファイリングはゲフィチニブおよびWZ4002に対する感受性を予測する
【0079】
我々は、ダイナミックBH3プロファイリングが、TKIであるゲフィチニブ(イレッサ)および非可逆性のピリミジンEGFRキナーゼインヒビターであるWZ4002(T790M突然変異が存在するときでさえも、EGFRを阻害する)に対する感受性を、NSCLC細胞株PC9の親と獲得耐性を持つものと(Zhou et al., Nature 2009)において予測するのに有効であることを、in vitroで見出した。
【0080】
3種の異なる細胞株を使用した:PC9、PC9ゲフィチニブ耐性(PC9GR、突然変異T790Mを含む)およびWZ4002に耐性があるPC9GR(PC9WZR)。我々の仮説の試験として、我々は、72時間の遅い時点での細胞毒性を、明らかな細胞毒性を観察し得る充分前の時間である、16時間の早い時点でのミトコンドリアのプライミングにおけるシフトによって、予測し得るかどうか問うた。我々は、2種のEGFRキナーゼインヒビターであるゲフィチニブ(1μM)およびWZ4002(100nM)により細胞株を16時間処置して、ダイナミックBH3プロファイリング分析を行った。我々は、低濃度でのBH3ペプチドBimが、このモデルにおけるプライミングの変化を観察するのに最適であることを観察した。
【0081】
親PC9は、ゲフィチニブおよびWZ4002の両方に対して感受性があり、プライミングの増大を表した。PC9GRは、ゲフィチニブに対して非感受性であったが、WZ4002に対しては感受性があり、プライミングの増大を伴った反応もした。そして最後にPC9WZRは、両方の薬物に対して非感受性であったが、キナーゼインヒビターの組み合わせ(MEKインヒビターであるCI−1040と組み合わせたWZ4002)に対して反応した。プライミングのこの増大は、72時間で観察される細胞死と極めて密接に調和し(
図1)、かつ有意であった(p=0.0052;両側)。
【0082】
我々は、配列Ac−MRPEIWIAQELRRIGDEFNA−NH
2(配列番号1)を有する、0.3または1μMの濃度でのBH3ペプチドBimが化学療法に対する細胞死反応を予測するために最適であることを観察した。配列Ac−MRPEIWIAQELRRIGDEFNV−NH
2(配列番号2)を有する、点突然変異させたBimであるAVのBH3ペプチドは、これらの同じ細胞株において同等の反応を誘導した(
図2)。
【0083】
我々は、ダイナミックBH3プロファイリングと細胞死との間の同等の有意な相関関係を、数種の療法および数種のNSCLC株を使用して見出した(
図3)。このように、本技術を、NSCLCにおいて化学療法の反応を予測するために、in vitroで使用し得る。
【0084】
例2:ダイナミックBH3プロファイリングはイマチニブに対する感受性を予測する
【0085】
種々のタイプのがんにおいて化学療法の反応を予測するその可能性を証明するために、我々はまた、細胞株モデルの慢性骨髄性白血病(CML)においても我々の仮説を試験した。まず我々は、マウスBa/F3細胞株の親株と、CMLを患う95%の患者に存在し、TKIであるグリベック(イマチニブ)により有効に処置され得るBCR−ABL融合タンパク質(p210)を発現する該株とを使用した。我々は、1μMのイマチニブを用いて両方の細胞株を処置し、我々は、ダイナミックBH3プロファイリング分析を行った(
図6Cおよび6D)。
【0086】
例1と同じこのアプローチを使用して、我々は、BCR−ABLを恒常的に発現する2種のヒトCML細胞株、K562およびKu812を分析し、それらをイマチニブに曝露し、ダイナミックBH3プロファイリング分析を行った(
図4)。
【0087】
K562およびKu812の両細胞株は、NSCLCおいて以前観察された以外に、使用した数種のペプチドにおいてプライミングの増大を表し、良好な相関関係を、低濃度(0.1μM)でBimを使用したときのプライミングの増大と48hでの細胞死との間に観察した。このように、CMLに対してもまた、ダイナミックBH3プロファイリングは、化学療法の反応を予測するために、使用することができるものである。
【0088】
本発明の適用の重要な部分は、in vivoでの治療に対する反応の予測である。
図5において、我々は、3名の患者の慢性骨髄性白血病サンプルの処置前分析は、2つがイマチニブに対して反応し、1つがイマチニブに対して反応しないであろうことを、ダイナミックBH3プロファイリングを使用して、正確に同定することを表す。
【0089】
例3:ダイナミックBH3プロファイリングは白血病細胞において複数の薬剤に対する感受性を予測する
【0090】
モデルとして様々な白血病細胞を使用して、我々は、選択的に細胞死を引き起こす薬剤を同定するためのダイナミックBH3プロファイリングの能力を試験した(
図6)。我々は、ダイナミックBH3プロファイリングが、複数の薬物および細胞株にわたって、細胞死を引き起こすであろう薬物を正確に同定することを見出した。
【0091】
例4:BH3プロファイリングは慢性骨髄性白血病を患う患者においてイマチニブに対する臨床反応を予測する
【0092】
ダイナミックBH3プロファイリングの有用性に必須の実証は、それが、実際に初発の患者のがん細胞の試験において臨床反応を予測することである。
図5において、我々は、CMLを患う患者から得られた24個のサンプルに対しダイナミックBH3プロファイリングを行った。5Aにおいて、我々は、我々のダイナミックBH3プロファイリング結果を臨床反応と比較する。
図5Bにおいて、我々は、受診者動作特性曲線を使用することによって、ダイナミックBH3プロファイリングが、高い感受性および特異性を伴ってCML患者におけるイマチニブに対する反応を予測することを実証する。
【0093】
例5:BH3プロファイリングは複数のがん細胞株にわたり複数の薬剤に対する感受性を予測する
【0094】
図7において、我々は、9種の薬剤を使用することによって、16時間の薬物への曝露を使用して、血液の悪性腫瘍に由来する5種の細胞株に対しダイナミックBH3プロファイリングを行う。16時間でのダイナミックBH3プロファイリング(7A)は、大きな統計学的有意性(7C)を伴って、72時間での細胞毒性(7B)を予測した。
図8において、我々は、9種の薬剤を使用することによって、16時間の薬物への曝露を使用して、固形腫瘍に由来する5種の細胞株に対しダイナミックBH3プロファイリングを行う。16時間でのダイナミックBH3プロファイリング(8A)は、大きな統計学的有意性(8C)を伴って、72時間での細胞毒性(8B)を予測した。
【0095】
例6:iBH3:保持されたシトクロムcのFACSによる直接測定によるBH3プロファイリング
【0096】
iBH3は、肝要な固定化段階を、BH3プロファイリングのための事前のプロトコルに加えたものである。これによって、より良好なシグナルが導出され、サンプルの安定性が増大され、複雑な臨床サンプルにおけるサブセットを識別するための染色が改善された。初代組織または初代細胞の培養物を、単一細胞浮遊液へ分離し、任意に細胞表面マーカーに対して染色し、DTEBミトコンドリア緩衝液に懸濁する(BH3 Profiling in whole cells by fluorimeter or FACS. Method. 2013 Apr 20. Epub ahead of print)。その後、懸濁した細胞を、サンプル管またはプレート内で調製し凍結しても差し支えないジギトニン(透過化剤)とペプチドまたは小分子のいずれかとで補充したDTEBを含有するウェルへ加えることによって、該分子またはペプチドがミトコンドリアに接近できるようになり、透過化されたミトコンドリアからのおよび細胞からのシトクロムcの自由な拡散が可能になる。細胞を、一定時間ペプチド/小分子に曝露した後、短いアルデヒド固定を行い、続いてTris/グリシン緩衝液を用いて中和する。その後、抗シトクロムc抗体を、サポニン、ウシ胎仔血清およびウシ血清アルブミンとともに、濃縮物として各ウェルに加えることによって、細胞に保持されたシトクロムcを染色する。細胞内標的に対する他の抗体は、このときに加えることができる。細胞をFACSにより分析することによって、診断反応サインを提供するための、ペプチドまたは小分子による撹乱後のシトクロムcの単一細胞測定値が提供される。
図8において、iBH3は、混合集団内の個々の亜集団のプロファイルを忠実に再現する。個々にプロファイルされた(非混合の)サンプルまたは複雑な混合物としての(混合の)サンプルは、同じプロファイルを導出する。亜集団を識別するこの能力は、細胞の内外にかかわらず、いずれの抗原またはシグナルに対しても適用することができる。
【0097】
これは、それがサンプル内の亜集団を分析することができることから、ELISAベースのBH3プロファイリングに比べて改善されており、それは、細胞外マーカーおよび細胞内マーカーの両方を使用したときのプロファイリングを可能にする唯一の方法である。さらに、それは、ハイスループット形式において本分析を行うことを可能にするものであり、それを、電位差測定用の色素を使用する生ミトコンドリアの電位測定の時間的感度に関係なく、予め作製された凍結試験プレートとともに使用することができる。
【0098】
例7:ミクロBH3:免疫蛍光顕微鏡観察による単一細胞のBH3プロファイリング
【0099】
ミクロBH3(miBH3)は、BH3ペプチドのミトコンドリアへの影響の測定を、顕微鏡によって個々の細胞上で行う、BH3プロフィリング方法である。これを達成するため、細胞を、ポリアミンまたはポリリジンでコートした表面上に固定化し、ミトコンドリア緩衝液中のジギトニンを低濃度で処置することによって、細胞を破壊せずに、原形質膜を透過化させて、ミトコンドリアへ接近する機会を与える。一定濃度のBH3ペプチドまたは化合物を、一定時間、一般に45〜90分間、加えておいた後、シトクロムcおよびミトコンドリアマーカー(例えばMnSOD等)の細胞内染色のため、ホルムアルデヒドで固定し、メタノールおよび/またはトリトンX100により透過化させる。染色された細胞を、例えばDAPI等の核染色剤を用いて対比染色して、蛍光画像を、核の、ミトコンドリアの、およびシトクロムcのチャンネルにおいて、得る。自動分析を、核を位置付け、ミトコンドリアを有する核の近傍の領域を定義し、その後シトクロムcの存在をミトコンドリアの位置と相関させるために、例えばCellprofilter等のソフトウェアを使用して行う。局在の消失は、シトクロムcの消失とペプチドまたは化合物に対する反応を示す。本方法は、BH3ペプチドまたは化合物に対する細胞の反応を許容し、それらのアポトーシス傾向またはプライミングを単一細胞レベルで決定する。電位差測定用の蛍光色素を使用してミトコンドリアの完全性を分析する従来の方法は、無傷で透過化されていない細胞を使用するものであり、それらが細胞浸透性ではないため、BH3ペプチドとともに使用され得ない。電位感受性に処置された透過化された細胞は、変形し、必要な時間経過の間に焦点を維持することが難しく、タイミングに敏感である。本方法により固定された細胞は、固定段階で容易に中断することができ、取得後数週間して分析することも、必要に応じて容易に再分析することもできる。
【0100】
他の態様
本発明はその詳細な説明と併せて記載されているが、前記載は、説明を目的としているのであって、添付のクレームの範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを目的としていない。他の側面、利点および変更は、以下のクレームの範囲内である。