(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先端部に円形の開口部を有し、前記開口部より板金を切断するためのレーザビームを射出するノズルが取り付けられている加工ヘッドを備えるレーザ加工機を制御する制御装置が、前記板金を、第1の加工位置から第2の加工位置を経て第3の加工位置まで第1の方向に切断し、前記第3の加工位置で切断進行方向を所定の角度曲げて、前記第3の加工位置から第4の加工位置を経て第5の加工位置へと第2の方向に切断して、前記第3の加工位置を角部とする製品の外形線を切断するよう制御するとき、
前記ノズルの中心の軌跡であるノズル軌跡及び前記レーザビームが前記板金に照射されたときの照射位置におけるビームスポットの中心の軌跡であるビーム軌跡を含む軌跡情報として、
前記板金を、前記第1の加工位置から前記第2の加工位置まで、及び、前記第4の加工位置から前記第5の加工位置まで切断するときには、前記ノズルの中心であるノズル中心と前記ビームスポットの中心であるビーム中心との距離を0とし、前記第2の加工位置から前記第3の加工位置まで切断するときには、前記ノズル中心と前記ビーム中心との距離を0から第1の距離まで順に増加させ、前記第3の加工位置から前記第4の加工位置まで切断するときには、前記ノズル中心と前記ビーム中心との距離を前記第1の距離から0まで順に減少させる第1の軌跡情報と、
前記板金を、前記第1の加工位置から前記第2の加工位置まで、及び、前記第4の加工位置から前記第5の加工位置まで切断するときには、前記ノズル中心と前記ビーム中心との距離を第2の距離とし、前記第2の加工位置から前記第3の加工位置まで切断するときには、前記ノズル中心と前記ビーム中心との距離を前記第2の距離から0まで順に減少させ、前記第3の加工位置から前記第4の加工位置まで切断するときには、前記ノズル中心と前記ビーム中心との距離を0から前記第2の距離まで順に増加させる第2の軌跡情報と、
のうちの選択された軌跡情報に基づいて、前記板金を切断する加工方向を制御するための移動指令信号を生成し、
前記移動指令信号に基づいて、前記加工ヘッドの移動方向を制御するための主移動指令信号を生成し、
前記移動指令信号に基づいて、前記ビームスポットの移動方向を制御するための副移動指令信号を生成し、
前記主移動指令信号に基づいて前記加工ヘッドを相対的に移動させ、かつ、前記副移動指令信号に基づいて前記ビームスポットの中心であるビーム中心を前記ノズルの中心であるノズル中心に対して変位させて前記板金を切断するよう前記レーザ加工機を制御する
レーザ加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態のレーザ加工機及びレーザ加工方法について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、レーザ加工機100は、レーザビームを生成して射出するレーザ発振器10と、レーザ加工ユニット20と、レーザ発振器10より射出されたレーザビームをレーザ加工ユニット20へと伝送するプロセスファイバ12とを備える。
【0013】
また、レーザ加工機100は、操作部40と、NC装置50と、加工プログラムデータベース60と、加工条件データベース70と、アシストガス供給装置80とを備える。NC装置50は、レーザ加工機100の各部(具体的にはレーザ発振器10、レーザ加工ユニット20、及び、アシストガス供給装置80)を制御する制御装置の一例である。
【0014】
操作部40は、オペレータが操作部40を操作することにより、操作内容に応じた指示情報SFをNC装置50へ出力する。NC装置50は、指示情報SFに基づいて、加工プログラムデータベース60から加工プログラム(NCデータ)PPを読み出し、加工条件データベース70から加工条件CPを読み出す。
【0015】
具体的には、NC装置50は、指示情報SFに基づく製品の設計モデルに対応する加工プログラムPPを加工プログラムデータベース60から読み出す。加工プログラムPPは、レーザ加工機100が板金Wの加工を実行するためのプログラムである。加工条件CPには、板金Wの材質及び厚さ等の材料パラメータが指定された加工対象情報が含まれている。また、加工条件CPには、レーザビームの出力、加工速度、後述するノズル36の開口部36aの直径(ノズル径)等の加工パラメータ、及び、アシストガス条件等の切削加工情報が含まれている。NC装置50は、製品の設計モデルに適した加工条件CPを加工条件データベース70から読み出す。
【0016】
NC装置50は、加工プログラムPP及び加工条件CPに基づいて、レーザ発振器10、レーザ加工ユニット20、及び、アシストガス供給装置80を制御する。
【0017】
レーザ発振器10としては、レーザダイオードより発せられる励起光を増幅して所定の波長のレーザビームを射出するレーザ発振器、または、レーザダイオードより発せられるレーザビームを直接利用するレーザ発振器が好適である。レーザ発振器10は、例えば、固体レーザ発振器、ファイバレーザ発振器、ディスクレーザ発振器、ダイレクトダイオードレーザ発振器(DDL発振器)である。
【0018】
レーザ発振器10は、波長900nm〜1100nmの1μm帯のレーザビームを射出する。ファイバレーザ発振器及びDDL発振器を例とすると、ファイバレーザ発振器は、波長1060nm〜1080nmのレーザビームを射出し、DDL発振器は、波長910nm〜950nmのレーザビームを射出する。
【0019】
レーザ加工ユニット20は、加工対象物である板金Wを載せる加工テーブル21と、門型のX軸キャリッジ22と、Y軸キャリッジ23と、Y軸キャリッジ23に固定されたコリメータユニット30と、加工ヘッド35とを有する。板金Wは例えばステンレス鋼よりなる。板金Wの材料及び板厚は特に限定されない。
【0020】
X軸キャリッジ22は、加工テーブル21上でX軸方向に移動自在に構成されている。Y軸キャリッジ23は、X軸キャリッジ22上でX軸に垂直なY軸方向に移動自在に構成されている。X軸キャリッジ22及びY軸キャリッジ23は、加工ヘッド35を板金Wの面に沿って、X軸方向、Y軸方向、または、X軸とY軸との任意の合成方向に移動させる移動機構として機能する。
【0021】
レーザ加工機100は、加工ヘッド35を板金Wの面に沿って移動させる代わりに、加工ヘッド35は位置が固定されていて、板金Wが移動するように構成されていてもよい。レーザ加工機100は、板金Wの面に対して加工ヘッド35を相対的に移動させる移動機構を備えていればよい。
【0022】
加工ヘッド35には、先端部に円形の開口部36aを有し、開口部36aよりレーザビームLBを射出するノズル36が取り付けられている。ノズル36の開口部36aより射出されたレーザビームLBは板金Wに照射される。
【0023】
アシストガス供給装置80は、アシストガスAGを加工ヘッド35に供給する。アシストガス供給装置80は、板金Wがステンレス鋼であれば窒素を、板金Wが軟鋼であれば酸素をアシストガスAGとして加工ヘッド35に供給する。アシストガスAGは、混合ガスでもよく、その目的が酸化抑制なのか、酸化反応熱を利用するのかによって、混合比を任意に設定できるものである。板金Wの加工時に、アシストガスAGは開口部36aより板金Wへと吹き付けられる。アシストガスAGは、板金Wが溶融したカーフ内の溶融金属を排出する。
【0024】
図2に示すように、コリメータユニット30は、プロセスファイバ12より射出された発散光のレーザビームLBを平行光(コリメート光)に変換するコリメーションレンズ31を備える。また、コリメータユニット30は、ガルバノスキャナユニット32と、ガルバノスキャナユニット32より射出されたレーザビームLBをX軸及びY軸に対して垂直なZ軸方向下方に向けて反射させるベンドミラー33とを備える。加工ヘッド35は、ベンドミラー33で反射したレーザビームLBを集束して、板金Wに照射する集束レンズ34を備える。
【0025】
ガルバノスキャナユニット32は、コリメーションレンズ31より射出されたレーザビームLBを反射するスキャンミラー321と、スキャンミラー321を所定の角度となるように回転させる駆動部322とを有する。また、ガルバノスキャナユニット32は、スキャンミラー321より射出されたレーザビームLBを反射するスキャンミラー323と、スキャンミラー323を所定の角度となるように回転させる駆動部324とを有する。
【0026】
図3は、基準の状態におけるレーザビームLBとノズル36の開口部36aとの位置関係を示している。符号BSは、レーザビームLBが板金Wに照射されたときの照射位置におけるビームスポットを示す。符号BCは、ビームスポットBSの中心を示す。以下、ビームスポットBSの中心BCをビーム中心BCとする。
【0027】
レーザ加工機100は、ノズル36の開口部36aより射出されるレーザビームLBが開口部36aの中心に位置するように芯出しされている。開口部36aの中心とノズル36の中心とは一致している。以下、開口部36aの中心とノズル36の中心とを総称して、ノズル中心NCとする。基準の状態では、ビーム中心BCはノズル中心NCと一致している。従って、基準の状態では、レーザビームLBは、ノズル中心NCより射出する。ガルバノスキャナユニット32は、加工ヘッド35内を進行して開口部36aより射出されるレーザビームLBの開口部36a内での位置を変位させるビーム変位機構として機能する。
【0028】
駆動部322及び324は、NC装置50による制御に基づき、それぞれ、スキャンミラー321及び323を所定の角度範囲で往復振動させることもできる。スキャンミラー321とスキャンミラー323とのいずれか一方または双方を往復振動させることによって、ガルバノスキャナユニット32は、板金Wに照射されるレーザビームLBを振動させることができる。即ち、NC装置50は、ガルバノスキャナユニット32を、加工ヘッド35内を進行して開口部36aより射出されるレーザビームLBを、開口部36a内で振動させるビーム振動機構として機能させることもできる。
【0029】
ガルバノスキャナユニット32はビーム変位機構及びビーム振動機構の一例であり、ビーム変位機構及びビーム振動機構はガルバノスキャナユニット32に限定されない。
【0030】
図4は、スキャンミラー321とスキャンミラー323とのいずれか一方または双方が傾けられて、板金Wに照射されるレーザビームLBの位置が変位した状態を示している。
図4において、ベンドミラー33で折り曲げられて集束レンズ34を通過する細実線は、レーザ加工機100が基準の状態であるときのレーザビームLBの光軸を示している。
【0031】
なお、詳細には、ベンドミラー33の手前に位置しているガルバノスキャナユニット32の作動により、ベンドミラー33に入射するレーザビームLBの光軸の角度が変化し、光軸がベンドミラー33の中心から外れる。
図3では、簡略化のため、ガルバノスキャナユニット32の作動前後でベンドミラー33へのレーザビームLBの入射位置を同じ位置としている。
【0032】
ガルバノスキャナユニット32による作用によって、レーザビームLBの光軸が細実線で示す位置から太実線で示す位置へと変位したとする。ベンドミラー33で反射するレーザビームLBが角度θで傾斜したとすると、板金WへのレーザビームLBの照射位置は距離Δsだけ変位する。集束レンズ34の焦点距離をEFL(Effective Focal Length)とすると、距離Δsは、関係式Δs=EFL×sinθにより算出することができる。
【0033】
ガルバノスキャナユニット32がレーザビームLBを
図4に示す方向とは逆方向に角度θだけ傾ければ、板金WへのレーザビームLBの照射位置を
図4に示す方向とは逆方向に距離Δsだけ変位させることができる。
【0034】
図5は、レーザビームLBの光軸を変位させた状態におけるレーザビームLBとノズル36の開口部36aとの位置関係を示している。即ち、距離Δsは、板金WにレーザビームLBが照射される位置(以下、照射位置とする)におけるノズル中心NCとビーム中心BCとの距離であり、ノズル中心NCに対するビーム中心BCの変位量に相当する。以下、ノズル中心NCに対するビーム中心BCの変位量を、単に、ビーム中心BCの変位量とする。
【0035】
ノズル36の開口部36aにおけるビーム中心BCの変位量と、板金WへのレーザビームLBの照射位置におけるビーム中心BCの変位量とは等しいものとする。即ち、ノズル36の開口部36aにおけるビーム中心BCがノズル中心NCに対して距離Δsだけ変位する場合に、板金WへのレーザビームLBの照射位置におけるビーム中心BCもノズル中心NCに対して距離Δsだけ変位するものとする。
【0036】
図5に示すように、ビーム中心BCの変位量(レーザビームLBの変位量)は、距離Δsが開口部36aの半径未満となるように設定されている。詳しくは、開口部36aの半径をraとし、ビームスポットBSの半径をrbとすると、距離Δsは、関係式Δs+rb<raを満たすように加工条件CPとして設定されている。
【0037】
板金Wの加工時に、アシストガスは開口部36aより板金Wへと吹き付けられる。アシストガスは、開口部36aの中心部に対して内周付近ではガス圧及び流量が弱くなる。そのため、開口部36aの半径raから所定の距離Laだけ減算した距離を最大距離としたとき、距離Δsは最大距離以下の値に設定することが好ましい。詳しくは、距離Δsは、関係式Δs+rb<ra−Laを満たすように加工条件CPとして設定することが好ましい。
【0038】
NC装置50は、ガルバノスキャナユニット32の駆動部322及び324を制御することによって、レーザビームLBが板金Wの面上に照射されることにより形成されるビームスポットBSを変位させることができる。また、NC装置50は、レーザビームLBを板金Wの面内の所定の方向に振動させて、板金Wの面上に形成されるビームスポットを振動させることができる。
【0039】
図6に示すように、NC装置50は、移動制御部501、移動指令分割部503、移動機構制御部505、及び、変位制御部506を備える。移動指令分割部503は、遅延器5031、ローパスフィルタ(以下、LPF)5032、及び、減算器5033を有する。
【0040】
オペレータは、操作部40を操作することにより、複数の軌跡情報TFから任意の軌跡情報TFを選択することができる。軌跡情報TFは、板金Wを加工するときの加工ヘッド35(ノズル中心NC)の軌跡であるノズル軌跡、ビームスポットBS(ビーム中心BC)の軌跡であるビーム軌跡、ノズル軌跡上を移動する加工ヘッド35(ノズル中心NC)の速度(移動速度)、及び、ビーム軌跡上を移動するビームスポットBS(ビーム中心BC)の速度(移動速度)の情報を含んでいる。複数の軌跡情報TFは、ノズル軌跡、ビーム軌跡、加工ヘッド35の移動速度、及び、ビームスポットBSの移動速度の情報のうち、少なくともいずれかの情報が互いに異なる。
【0041】
例えば、複数の軌跡情報TFとして3つの軌跡情報TFa、TFb、及び、TFcからいずれかの軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合、操作部40は、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択されたことを示す情報を指示情報SFとしてNC装置50へ出力する。移動制御部501は、指示情報SFに基づいて、加工プログラムデータベース60から、選択された軌跡情報TFa、TFb、または、TFcを含む加工プログラムPPを読み出し、加工条件データベース70から加工条件CPを読み出す。
【0042】
図7は、軌跡情報TFaに基づいて板金Wを加工する場合のノズル軌跡とビーム軌跡との関係を示している。
図8は、軌跡情報TFbに基づいて板金Wを加工する場合のノズル軌跡とビーム軌跡との関係を示している。
図9は、軌跡情報TFcに基づいて板金Wを加工する場合のノズル軌跡とビーム軌跡との関係を示している。なお、
図7〜
図9に計3つの軌跡情報TFa〜TFcを示しているが、軌跡情報TFは2つ以上であればよく、例えば4つ以上であってもよい。
【0043】
図7、
図8、及び、
図9は、板金Wを、少なくとも加工位置P1から加工位置P2までの区間ではX軸方向に切断し、加工位置P2にて切断進行方向を90度曲げ、さらに加工位置P2から少なくとも加工位置P3までの区間ではY軸方向に切断するように加工プログラムPPが設定されている場合を一例として示している。即ち、
図7〜
図9は、加工位置P2が製品の角部Wcの先端に位置するように、板金Wを角部Wcを有して切断する加工方法の一例を示している。
【0044】
図7〜
図9において、符号NPはノズル軌跡、符号LPはビーム軌跡を示している。
図7〜
図9では、ノズル軌跡NPを破線、ビーム軌跡LPを一点鎖線、製品の外形線を実線、ノズル36及び開口部36aを二点鎖線で示している。
【0045】
図7に示すように、軌跡情報TFaは、ノズル軌跡NPが角部Wcの先端に相当する加工位置P2よりも角部Wcの内側を通過し、かつ、ビーム軌跡LPが加工位置P1から加工位置P2までの区間ではX軸方向の軌跡となり、加工位置P2から加工位置P3までの区間ではY軸方向の軌跡となるように設定されている。
【0046】
図8に示すように、軌跡情報TFbは、ノズル軌跡NPが加工位置P2(詳しくは加工位置P2からビームスポットBSの半径分だけ外側)を通過し、かつ、ビーム軌跡LPが加工位置P1から加工位置P2までの区間ではX軸方向の軌跡となり、加工位置P2から加工位置P3までの区間ではY軸方向の軌跡となるように設定されている。
【0047】
図9に示すように、軌跡情報TFcは、ノズル軌跡NPが、
図7に示すノズル軌跡NPと
図8に示すノズル軌跡NPとの間隙を通過し、かつ、ビーム軌跡LPが加工位置P1から加工位置P2までの区間ではX軸方向の軌跡となり、加工位置P2から加工位置P3までの区間ではY軸方向の軌跡となるように設定されている。即ち、軌跡情報TFa〜TFcは、ノズル軌跡NPが互いに異なる軌跡を有し、ビーム軌跡LPが共通の軌跡を有する。
【0048】
図10に示すフローチャート、
図11A、
図11B、
図11C、
図11D、
図12A、
図12B、
図12C、
図12D、
図13、
図14、及び、
図15を用いて、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合のレーザ加工方法の一例を説明する。具体的には、軌跡情報TFa、TFb、及び、TFcが、ノズル軌跡NPとビーム軌跡LPとの位置関係が互いに異なり、ノズル軌跡NP上を移動するノズル中心NCの速度とビーム軌跡LP上を移動するビーム中心BCの速度とが互いに共通する場合のレーザ加工方法について説明する。
【0049】
図11Aは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の移動指令信号CSにおける各時点のX軸方向の速度を示している。
図11Bは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の遅延移動指令信号DCSにおける各時点のX軸方向の速度を示している。
図11Cは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の主移動指令信号MCSにおける各時点のX軸方向の速度を示している。
図11Dは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の副移動指令信号SCSにおける各時点のX軸方向の速度を示している。
【0050】
図12Aは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の移動指令信号CSにおける各時点のY軸方向の速度を示している。
図12Bは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の遅延移動指令信号DCSにおける各時点のY軸方向の速度を示している。
図12Cは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の主移動指令信号MCSにおける各時点のY軸方向の速度を示している。
図12Dは、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択された場合の副移動指令信号SCSにおける各時点のY軸方向の速度を示している。なお、
図11D及び
図12Dでは、副移動指令信号SCSにおける各時点のX軸方向及びY軸方向の速度を、ノズル中心NCに対するビーム中心BCの相対速度として示している。
【0052】
図10において、オペレータは、ステップS1にて、操作部40を操作することにより、複数の軌跡情報TFから任意の軌跡情報TFa、TFb、または、TFcを選択する。操作部40は、軌跡情報TFa、TFb、または、TFcが選択されたことを示す情報を指示情報SFとしてNC装置50へ出力する。
【0053】
移動制御部501は、ステップS2にて、指示情報SFに基づいて、加工プログラムデータベース60から、選択された軌跡情報TFa、TFb、または、TFcに対応する加工プログラムPPを読み出し、加工条件データベース70から加工条件CPを読み出す。移動制御部501は、ステップS3にて、加工プログラムPP、及び、加工条件CPに基づいて、
図11A、及び、
図12Aに示すような速度制御情報を含む移動指令信号CSを生成する。
【0054】
図7〜
図9、
図11A、及び、
図12Aに示すように、移動指令信号CSは、時点t1までの期間において、Y軸方向の加工速度を0とし、X軸方向の加工速度を加工条件CPに基づく所定の速度Vxaとして、加工位置PをX軸方向に移動させる等速移動指令を含む。また、移動指令信号CSは、時点t1から少なくとも時点t3までの期間において、X軸方向の加工速度を0とし、Y軸方向の加工速度を加工条件CPに基づく所定の速度Vyaとして、加工位置PをY軸方向に移動させる等速移動指令を含む。
【0055】
即ち、移動制御部501は、選択された軌跡情報TFに基づいて移動指令信号CSを生成する。移動指令信号CSは、加工方向及び加工速度を制御するための移動指令信号である。さらに、移動制御部501は、移動指令信号CSを移動指令分割部503へ出力する。移動指令分割部503に入力された移動指令信号CSは、遅延器5031とLPF5032とに入力される。
【0056】
図11B及び
図12Bに示すように、遅延器5031は、ステップS4にて、移動指令信号CSを時点t1から時点t2まで遅延時間Tdlyだけ遅延させて遅延移動指令信号DCSを生成し、減算器5033へ出力する。
【0057】
図11C及び
図12Cに示すように、LPF5032は、ステップS5にて、移動指令信号CSにおける低域周波数成分のみを通過させるフィルタリング処理(ベッセルフィルタ処理)を実行することにより、主移動指令信号MCSを生成する。主移動指令信号MCSは、加工ヘッド35(ノズル中心NC)の移動方向及び移動速度を制御するための移動指令信号である。
【0058】
図7〜
図9、
図11C、及び、
図12Cに示すように、主移動指令信号MCSは、時点t1までの期間において、Y軸方向の移動速度を0とし、X軸方向の移動速度を加工条件CPに基づく所定の速度Vxaとして、加工ヘッド35(ノズル中心NC)をX軸方向に移動させる等速移動指令を含む。
【0059】
主移動指令信号MCSは、
図7〜
図9に示すように、加工位置P1から加工位置P3までの区間において、加工ヘッド35を円弧上に移動させる移動指令を含む。主移動指令信号MCSは、
図11Cに示すように、加工ヘッド35をX軸方向に対しては移動速度が、加工条件CPに基づく所定の速度Vxaから0となるように減速させる減速指令を含む。主移動指令信号MCSは、
図12Cに示すように、加工ヘッド35をY軸方向に対しては移動速度が0から加工条件CPに基づく所定の速度Vyaとなるように加速させる加速指令を含む。
【0060】
図7〜
図9、
図11C、及び、
図12Cに示すように、主移動指令信号MCSは、時点t3以降の期間において、X軸方向の移動速度を0とし、X軸方向の移動速度を加工条件CPに基づく所定の速度Vyaとして、加工ヘッド35をY軸方向に移動させる等速移動指令を含む。
【0061】
即ち、主移動指令信号MCSは、加工ヘッド35をX軸方向、Y軸方向、または、X軸とY軸との任意の合成方向に移動させ、かつ、加工位置P1〜P3における各区間の加工ヘッド35の移動速度を制御するための移動指令信号である。
【0062】
さらに、LPF5032は、主移動指令信号MCSを減算器5033、及び、移動機構制御部505へ出力する。従って、減算器5033には、遅延器5031から遅延移動指令信号DCSが入力され、LPF5032から主移動指令信号MCSが入力される。
【0063】
図11D及び
図12Dに示すように、減算器5033は、ステップS6にて、遅延移動指令信号DCSから主移動指令信号MCSを減算することにより、副移動指令信号SCSを生成する。副移動指令信号SCSは、ビームスポットBS(ビーム中心BC)の移動方向及び移動速度を制御するための移動指令信号であり、ノズル中心NC(加工ヘッド35)に対するビーム中心BC(ビームスポットBS)の変位方向及び変位速度を制御するための移動指令信号である。
【0064】
図7〜
図9、
図11D、及び、
図12Dに示すように、副移動指令信号SCSは、時点t1までの期間において、ビーム中心BCをノズル中心NCと一致させ、かつ、ビーム中心BCの移動速度がノズル中心NCの移動速度と同じになるようにビームスポットBSをX軸方向に移動させる等速移動指令を含む。
【0065】
副移動指令信号SCSは、時点t1から時点t2までの期間において、ビームスポットBSが時点t1までの期間における移動速度と同じ移動速度でX軸方向に移動するように、ノズル中心NCに対してビーム中心BCを変位させる変位指令を含む。
図11D及び
図12Dに示すように、時点t1から時点t2までの期間(加工位置P1から加工位置P2までの区間)では、ビーム中心BCの移動速度は、ノズル中心NCの移動速度に対して、X軸方向では相対的に速くなり、Y軸方向では相対的に遅くなる。
図11C、
図11D、
図12C、及び、
図12Dに示す時点t2は、
図7〜
図9に示す加工位置P2を加工する時点に対応する。
【0066】
副移動指令信号SCSは、時点t2から時点t3までの期間において、ビームスポットBSが所定の速度でY軸方向に移動するように、ノズル中心NCに対してビーム中心BCを変位させる変位指令を含む。
図11D及び
図12Dに示すように、時点t2から時点t3までの期間(加工位置P2から加工位置P3までの区間)では、ビーム中心BCの移動速度は、ノズル中心NCの移動速度に対して、X軸方向では相対的に遅くなり、Y軸方向では相対的に速くなる。
【0067】
副移動指令信号SCSは、時点t3以降の期間において、ビーム中心BCをノズル中心NCと一致させ、かつ、ビーム中心BCの移動速度がノズル中心NCの移動速度と同じになるようにビームスポットBSをY軸方向に移動させる等速移動指令を含む。
【0068】
即ち、副移動指令信号SCSは、時点t1から時点t3までの期間(加工位置P1から加工位置P3までの区間)において、ガルバノスキャナユニット32により、ビーム中心BCを、ノズル中心NCに対してX軸方向、Y軸方向、または、X軸とY軸との任意の合成方向に変位させるための移動指令信号である。
【0069】
なお、ガルバノスキャナユニット32によるビームスポットBS(ビーム中心BC)の加速度(減速度)は、加工ヘッド35(ノズル中心NC)の加速度(減速度)と比較して桁違いに大きいため、
図11D及び
図12Dの時点t2では、速度が瞬間的に変化するように示している。さらに、減算器5033は、副移動指令信号SCSを変位制御部506へ出力する。
【0070】
図6に示すように、X軸キャリッジ22とY軸キャリッジ23とより構成される移動機構は、X軸キャリッジ22及びY軸キャリッジ23をそれぞれ駆動する駆動部220及び230を有する。移動機構制御部505は、ステップS7にて、主移動指令信号MCSに基づいて駆動部220及び230を制御することにより、加工ヘッド35を移動させる。
【0071】
変位制御部506は、ステップS8にて、副移動指令信号SCSに基づいてガルバノスキャナユニット32の駆動部322及び324を駆動して、ビームスポットBSを移動させたり変位させたりする。
【0072】
図13は、軌跡情報TFaが選択された場合の各時点におけるノズル中心NCとビーム中心BCとの距離(ビーム中心BCの変位量)を示している。軌跡情報TFaに基づく加工方法では、加工位置P1まで区間、及び、加工位置P3以降の区間では、ノズル中心NCとビーム中心BCとが一致(Δs=0)し、加工位置P2ではノズル中心NCとビーム中心BCとの距離Δsが最大となる。軌跡情報TFaでは、関係式Δs+rb<ra−Laを満たすようにノズル中心NCとビーム中心BCとの最大距離(Δs=MAX)が設定されている。
【0073】
軌跡情報TFaが選択された場合、NC装置50は、加工プログラムPP、加工条件CP、及び、軌跡情報TFaに基づいて、時点t1までの期間では、ノズル中心NCとビーム中心BCとが一致(Δs=0)し、かつ、加工ヘッド35とビームスポットBSとが互いに同じ速度で同じ軌跡上をX軸方向に移動するように、移動機構22及び23、及び、ガルバノスキャナユニット32を制御する。
【0074】
レーザ加工機100は、軌跡情報TFaに基づいてノズル軌跡NPを制御する。
図7に示すように、加工ヘッド35(ノズル中心NC)は、主移動指令信号MCSに基づいて、ノズル軌跡NP上を設定された速度で移動する。主移動指令信号MCSが、
図11C、及び、
図12Cに示すような速度プロファイルを有する場合、加工ヘッド35は、加工位置P1から加工位置P3までの区間では、X軸方向に減速し、かつ、Y軸方向に加速するように、ノズル軌跡NP上を移動する。
【0075】
レーザ加工機100は、軌跡情報TFaに基づいてビーム軌跡LPを制御する。
図7に示すように、ビームスポットBS(ビーム中心BC)は、副移動指令信号SCSに基づいて、ビーム軌跡LP上を設定された速度で移動する。副移動指令信号SCSが、
図11D、及び、
図12Dに示すような速度プロファイルを有する場合、ビームスポットBSは、時点t1までの期間(加工位置P1までの区間)では、ビーム中心BCがノズル中心NCと一致し、かつ、加工ヘッド35と同じ速度でX軸方向に移動する。
【0076】
ビームスポットBSは、時点t1から時点t2までの期間(加工位置P1から加工位置P2までの区間)では、加工ヘッド35に対して、移動速度がX軸方向では相対的に速く、かつ、Y軸方向では相対的に遅くなるように、ビーム軌跡LP上を移動する。ビーム中心BCは、各時点tにおけるビーム軌跡LPとノズル軌跡NPとの距離に応じて、ノズル中心NCに対して変位する。
【0077】
ビームスポットBSは、時点t2から時点t3までの期間(加工位置P2から加工位置P3までの区間)では、加工ヘッド35に対して、移動速度がX軸方向では相対的に遅く、かつ、Y軸方向では相対的に速くなるように、ビーム軌跡LP上を移動する。ビーム中心BCは、各時点tにおけるビーム軌跡LPとノズル軌跡NPとの距離に応じて、ノズル中心NCに対して変位する。
【0078】
ビームスポットBSは、時点t3以降の期間(加工位置P3以降の区間)では、ビーム中心BCがノズル中心NCと一致し、かつ、加工ヘッド35と同じ速度でY軸方向に移動する。
【0079】
従って、軌跡情報TFaが選択された場合、レーザ加工機100は、
図7に示すノズル軌跡NPに沿って
図11C及び
図12Cに示す速度プロファイルで加工ヘッド35(ノズル中心NC)を移動させ、かつ、
図7に示すビーム軌跡LPに沿って
図11D及び
図12Dに示す速度プロファイルでビームスポットBS(ビーム中心BC)を移動(変位)させて板金Wを加工することにより、角部Wcを形成する。
【0080】
図14は、軌跡情報TFbが選択された場合の各時点におけるノズル中心NCとビーム中心BCとの距離(ビーム中心BCの変位量)を示している。軌跡情報TFbに基づく加工方法では、加工位置P1まで区間、及び、加工位置P3以降の区間では、ノズル中心NCとビーム中心BCとの距離Δsが最大となり、加工位置P2ではノズル中心NCとビーム中心BCとが一致(Δs=0)する。軌跡情報TFbでは、関係式Δs+rb<ra−Laを満たすようにノズル中心NCとビーム中心BCとの最大距離(Δs=MAX)が設定されている。
【0081】
軌跡情報TFbが選択された場合、NC装置50は、加工プログラムPP、加工条件CP、及び、軌跡情報TFbに基づいて、時点t1までの期間では、距離Δsが関係式Δs+rb<ra−Laを満たす所定の距離となるようにビームスポットBSを変位させた状態で、かつ、加工ヘッド35とビームスポットBSとが互いに同じ速度で互いに異なる軌跡上をX軸方向にそれぞれ移動するように、移動機構22及び23、及び、ガルバノスキャナユニット32を制御する。
【0082】
レーザ加工機100は、軌跡情報TFbに基づいてノズル軌跡NPを制御する。
図8に示すように、加工ヘッド35(ノズル中心NC)は、主移動指令信号MCSに基づいて、ノズル軌跡NP上を設定された速度で移動する。主移動指令信号MCSが、
図11C、及び、
図12Cに示すような速度プロファイルを有する場合、加工ヘッド35は、加工位置P1から加工位置P3までの区間では、X軸方向に減速し、かつ、Y軸方向に加速するように、ノズル軌跡NP上を移動する。
【0083】
レーザ加工機100は、軌跡情報TFbに基づいてビーム軌跡LPを制御する。
図8に示すように、ビームスポットBS(ビーム中心BC)は、副移動指令信号SCSに基づいて、ビーム軌跡LP上を設定された速度で移動する。副移動指令信号SCSが、
図11D、及び、
図12Dに示すような速度プロファイルを有する場合、ビームスポットBSは、時点t1までの期間(加工位置P1までの区間)では、ビーム中心BCがノズル中心NCに対して所定の距離だけ変位し、かつ、加工ヘッド35と同じ速度でX軸方向に移動する。
【0084】
ビームスポットBSは、時点t1から時点t2までの期間(加工位置P1から加工位置P2までの区間)では、加工ヘッド35に対して、移動速度がX軸方向では相対的に速く、かつ、Y軸方向では相対的に遅くなるように、ビーム軌跡LP上を移動する。ビーム中心BCは、各時点tにおけるビーム軌跡LPとノズル軌跡NPとの距離に応じて、ノズル中心NCに対して変位する。ビーム中心BCは、時点t2では、加工位置P2においてノズル中心NCと一致する。
【0085】
ビームスポットBSは、時点t2から時点t3までの期間(加工位置P2から加工位置P3までの区間)では、加工ヘッド35に対して、移動速度がX軸方向では相対的に遅く、かつ、Y軸方向では相対的に速くなるように、ビーム軌跡LP上を移動する。ビーム中心BCは、各時点tにおけるビーム軌跡LPとノズル軌跡NPとの距離に応じて、ノズル中心NCに対して変位する。
【0086】
ビームスポットBSは、時点t3以降の期間(加工位置P3以降の区間)では、ビーム中心BCがノズル中心NCに対して所定の距離だけ変位し、かつ、加工ヘッド35と同じ速度でY軸方向に移動する。
【0087】
従って、軌跡情報TFbが選択された場合、レーザ加工機100は、
図8に示すノズル軌跡NPに沿って
図11C及び
図12Cに示す速度プロファイルで加工ヘッド35(ノズル中心NC)を移動させ、かつ、
図8に示すビーム軌跡LPに沿って
図11D及び
図12Dに示す速度プロファイルでビームスポットBS(ビーム中心BC)を移動(変位)させて板金Wを加工することにより、角部Wcを形成する。
【0088】
図15は、軌跡情報TFcが選択された場合の各時点におけるノズル中心NCとビーム中心BCとの距離(ビーム中心BCの変位量)を示している。軌跡情報TFcに基づく加工方法では、ノズル軌跡NPが、
図7に示すノズル軌跡NPと
図8に示すノズル軌跡NPとの間隙に相当する領域を通過するように設定されている。軌跡情報TFcでは、関係式Δs+rb<ra−Laを満たすようにノズル中心NCとビーム中心BCとの最大距離(Δs=MAX)が設定されている。
【0089】
軌跡情報TFcが選択された場合、NC装置50は、加工プログラムPP、加工条件CP、及び、軌跡情報TFcに基づいて、時点t1までの期間では、距離Δsが関係式Δs+rb<ra−Laを満たす所定の距離となるようにビームスポットBSを変位させた状態で、かつ、加工ヘッド35とビームスポットBSとが互いに同じ速度で互いに異なる軌跡上をX軸方向にそれぞれ移動するように、移動機構22及び23、及び、ガルバノスキャナユニット32を制御する。
【0090】
レーザ加工機100は、軌跡情報TFcに基づいてノズル軌跡NPを制御する。
図9に示すように、加工ヘッド35(ノズル中心NC)は、主移動指令信号MCSに基づいて、ノズル軌跡NP上を設定された速度で移動する。主移動指令信号MCSが、
図11C、及び、
図12Cに示すような速度プロファイルを有する場合、加工ヘッド35は、加工位置P1から加工位置P3までの区間では、X軸方向に減速し、かつ、Y軸方向に加速するように、ノズル軌跡NP上を移動する。
【0091】
レーザ加工機100は、軌跡情報TFcに基づいてビーム軌跡LPを制御する。
図9に示すように、ビームスポットBS(ビーム中心BC)は、副移動指令信号SCSに基づいて、ビーム軌跡LP上を設定された速度で移動する。副移動指令信号SCSが、
図11D、及び、
図12Dに示すような速度プロファイルを有する場合、ビームスポットBSは、時点t1までの期間(加工位置P1までの区間)では、ビーム中心BCがノズル中心NCに対して所定の距離だけ変位し、かつ、加工ヘッド35と同じ速度でX軸方向に移動する。
【0092】
ビームスポットBSは、時点t1から時点t2までの期間(加工位置P1から加工位置P2までの区間)では、加工ヘッド35に対して、移動速度がX軸方向では相対的に速く、かつ、Y軸方向では相対的に遅くなるように、ビーム軌跡LP上を移動する。
【0093】
ビーム中心BCは、時点t1から時点t2までの期間では、ビーム軌跡LPとノズル軌跡NPとの距離に応じて、ノズル中心NCに対して変位する。ビーム中心BCは、距離Δsが上記の所定の距離から0になるまで連続的に変化し、さらに0から関係式Δs+rb<ra−Laを満たす所定の距離になるまで連続的に変化するように変位する。
【0094】
ビーム中心BCは、時点t2から時点t3までの期間では、ビーム軌跡LPとノズル軌跡NPとの距離に応じて、ノズル中心NCに対して変位する。ビーム中心BCは、距離Δsが上記の所定の距離から0になるまで連続的に変化し、さらに0から関係式Δs+rb<ra−Laを満たす所定の距離になるまで連続的に変化するように変位する。
【0095】
ビームスポットBSは、時点t3以降の期間(加工位置P3以降の区間)では、ビーム中心BCがノズル中心NCに対して所定の距離だけ変位し、かつ、加工ヘッド35と同じ速度でY軸方向に移動する。
【0096】
従って、軌跡情報TFcが選択された場合、レーザ加工機100は、
図9に示すノズル軌跡NPに沿って
図11C及び
図12Cに示す速度プロファイルで加工ヘッド35(ノズル中心NC)を移動させ、かつ、
図9に示すビーム軌跡LPに沿って
図11D及び
図12Dに示す速度プロファイルでビームスポットBS(ビーム中心BC)を移動(変位)させて板金Wを加工することにより、角部Wcを形成する。
【0097】
軌跡情報TFaまたはTFbが選択された場合、加工プログラムPPまたは加工条件CPによっては、距離Δsが関係式Δs+rb<ra−Laを満たさない場合がある。軌跡情報TFcが選択された場合の加工方法では、軌跡情報TFaまたはTFbが選択された場合の加工方法よりも距離Δsを小さくすることができる。
【0098】
従って、軌跡情報TFaまたはTFbが選択され、かつ、距離Δsが関係式Δs+rb<ra−Laを満たさなかった場合に、オペレータは、軌跡情報TFcを選択することにより、距離Δsが関係式Δs+rb<ra−Laを満たすことができる。これにより、レーザ加工機100は、設計モデルと同じ形状に板金Wを加工することができる。
【0099】
本実施形態のレーザ加工機及びレーザ加工方法では、切断進行方向を所定の角度以下の角部で曲げて板金を切断したり、切断進行方向を急激に変更して板金を曲線状に切断したりするときに、加工ヘッドの移動方向及び移動速度を制御し、かつ、ビームスポットBSの変位量を制御する。本実施形態のレーザ加工機及びレーザ加工方法によれば、切断進行方向を所定の角度以下の角度で曲げて板金Wを切断するときに、角部で加工ヘッドを一旦停止または大幅に減速させることなく、板金Wを切断することができる。
【0100】
従って、本実施形態のレーザ加工機及びレーザ加工方法によれば、切断進行方向を所定の角度以下の角部で曲げて板金を切断したり、切断進行方向を急激に変更して板金を曲線状に切断したりする場合でも、加工ヘッドに発生するイナーシャを従来よりも低減することができる。これにより、従来よりも板金Wを高速に切断することができ、加工時間を短くすることができる。
【0101】
本実施形態のレーザ加工機及びレーザ加工方法では、加工プログラムPP、加工条件CP、及び、軌跡情報TFに基づいて移動指令信号CSを生成し、移動指令信号CSに基づいて主移動指令信号MCSと副移動指令信号SCSとを生成する。主移動指令信号MCSに基づいて加工ヘッドを移動させ、副移動指令信号SCSに基づいてビームスポットBSを移動(変位)させることにより、加工ヘッドに発生するイナーシャを従来よりも低減させ、かつ、板金を設計モデルと同じ形状に加工することができる。
【0102】
本実施形態のレーザ加工機及びレーザ加工方法では、オペレータは、複数の軌跡情報TFから任意の軌跡情報TFa、TFb、または、TFcを選択することができる。本実施形態のレーザ加工機及びレーザ加工方法によれば、オペレータが複数の軌跡情報TFから加工に適した軌跡情報TFa、TFb、または、TFcを選択することにより、レーザ加工機100は、板金Wを設計モデルと同じ形状に精度よく加工することができる。
【0103】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。