特許第6684878号(P6684878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684878
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】紙製品入りカートン
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/44 20060101AFI20200413BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20200413BHJP
   B65D 5/72 20060101ALI20200413BHJP
   B65D 5/42 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B65D5/44 H
   B65D83/08 A
   B65D5/72 A
   B65D5/42 Z
   B65D5/42 F
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-187082(P2018-187082)
(22)【出願日】2018年10月2日
(62)【分割の表示】特願2014-241582(P2014-241582)の分割
【原出願日】2014年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-199533(P2018-199533A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2018年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/048833(WO,A1)
【文献】 特開平11−278561(JP,A)
【文献】 特表2013−511441(JP,A)
【文献】 特開2007−138318(JP,A)
【文献】 特開2010−089821(JP,A)
【文献】 特開2010−116183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/44
B65D 5/42
B65D 5/72
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製品の積層体を収容した紙製直方体状のカートンにおいて、
前記カートンの坪量が250〜370g/m、紙厚tが0.28〜0.43mm/枚であり、
前記カートンの長辺Lcが200〜250mm、幅Wcが100〜130mm、高さHcが40〜65mm
JIS−P8126に規定する前記カートンの前記長辺方向のリングクラッシュ値RLが500〜800N、かつ、(RL/t)が1.7〜2.5N/μmであり、
前記カートンは、矩形状の頂面部及び底面部と、前記頂面部及び前記底面部のそれぞれの一方の長辺にそれぞれ第1罫線を介して接続された第1側面部と、前記頂面部又は前記底面部の他の長辺に第2罫線を介して接続された第2側面部と、前記頂面部又は前記底面部の他の長辺に第3罫線を介して接続されて前記第2側面部の内面に重ねて接続されるカートン糊付け部と、前記頂面部の両短辺にそれぞれ第4罫線を介して接続された一対の上面側外フラップと、前記底面部の両短辺にそれぞれ第5罫線を介して接続された一対の下面側外フラップと、前記第1側面部の両短辺にそれぞれ第6罫線を介して接続された一対の第1内フラップと、前記第2側面部の両短辺にそれぞれ第7罫線を介して接続された一対の第2内フラップとを有するシートを、前記第1罫線〜前記第7罫線を折り曲げ、前記上面側外フラップ及び前記下面側外フラップが前記第1内フラップ及び第2内フラップの外側に重なるように起函して形成され、
前記第4罫線及び前記第5罫線の幅W45が1.1〜2.2mm、前記カートンの内面から内側へ向かう前記第4罫線及び前記第5罫線の高さH45が0.23〜0.55mmであり、
前記第4罫線及び前記第5罫線に隣接する前記カートンの厚さをt45としたとき、(H45(mm)/t45(mm))=0.50〜1.90
である紙製品入りカートン。
【請求項2】
(H45(mm)/W45(mm))=0.10〜0.60である請求項1記載の紙製品入りカートン。
【請求項3】
一対の前記第1罫線のうち、前記第3罫線からの距離が遠い方の第1罫線の幅W12が1.0〜2.5mm、当該第1罫線の前記カートンの内面から内側へ向かう高さH12が0.12〜0.42mm、かつ、前記第1罫線に隣接する前記カートンの厚さをt12としたとき、(H12(mm)/t12(mm))=0.45〜1.60である請求項1又は2に記載の紙製品入りカートン。
【請求項4】
前記第1罫線のうち、前記第3罫線からの距離が近い方の第1罫線及び前記第2罫線の幅W2が1.0〜2.5mm、前記カートンの内面から内側へ向かう前記第1罫線及び前記第2罫線の高さH2が0.28〜0.62mm、である請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙製品入りカートン。
【請求項5】
前記第6罫線及び前記第7罫線の幅W67が1.0〜2.5mm、前記カートンの内面から内側へ向かう前記第6罫線及び前記第7罫線の高さH67が0.22〜0.53mmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の紙製品入りカートン。
【請求項6】
H45(mm)>H67(mm)である請求項に記載の紙製品入りカートン。
【請求項7】
前記カートンは多層からなり、かつそのうち針葉樹由来のパルプを40〜100質量%含む硬質層の占める割合が15〜75質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の紙製品入りカートン。
【請求項8】
前記硬質層は、段ボール由来の古紙を含有する請求項7記載の紙製品入りカートン。
【請求項9】
前記カートンの前記長辺方向における曲げこわさが3.7〜7.5mN・mである請求項1〜8のいずれか一項に記載の紙製品入りカートン。
但し、前記曲げこわさは、ISO−2493に記載された方法に準じ、L&W Bending Tester(Lorentzen & Wettre社製)を用い、カートン20の長辺方向に自身の長手方向を合わせた幅38mm、長さ100mmの試験片の一端側を試料台のチャックに片持ち梁式で固定し、試験片の一端側より外側の片面を前記試料台上の検出部の突状係合部に接触させ、前記試験片の他端が拘束されないフリーの状態で、曲げ長(前記試料台のチャックと前記係合部との間隔、つまり、試験片のスパン(梁間))を10mmとし、曲げ角度(前記試験片の一端を保持したチャックの回転角、この回転の際に前記試験片は前記係合部に押し付けられ、試験片が撓む)を15度としたときの曲げ抵抗(荷重)を測定し、次の算出式:曲げこわさ(mN・m)=60×曲げ抵抗(mN)×曲げ長10(mm)÷{π×曲げ角度15(°)×サンプル幅38(mm)×1000}で求める。
【請求項10】
前記カートンの前記長辺方向の圧縮強度が130〜220N/箱である請求項1〜9のいずれか一項に記載の紙製品入りカートン。
但し、前記圧縮強度は、前記カートンの長辺を縦(軸方向)になるように圧縮試験機に置き、面積177cm2(直径15cmの円形)の圧縮板を前記カートン上に配置したとき、前記圧縮板の内側に前記カートンの前記各外フラップの面が完全に入るようにし、前記圧縮板に加圧速度10mm/minの条件で一軸荷重を掛けて圧縮し、軸方向の変位と荷重のグラフにて、最初に現れる、上に凸となる第一変曲点とし、23℃、50%RHの恒温恒湿条件で5回行った値を平均する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ティッシュペーパー等の紙製品を収容したカートンに関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパー等の紙製品は紙製のカートンに箱詰めされ、このカートンを複数個段ボール箱に収容して梱包され、保管される。この際、段ボール箱を複数積み上げた状態で保管されるため、下段側の段ボール箱が重みで潰れ、内部のカートンも潰れることがある。カートンが潰れると、見栄えが劣って不良品となる。そこで、段ボール箱の内フラップを厚さ方向に潰し、内フラップがカートンに片当たりするのを防止してカートンの潰れを抑制する技術が開発されている(特許文献1)。
又、カートンの潰れを抑制する方法として、カートンのサイズ(長さ、幅、高さ)を小さくすることも従来から行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-87423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、段ボール箱の製造工程を変更する必要があり、一般的な段ボール箱に適用できるとは限らない点で、汎用性に欠けることがある。
又、カートンを小型化すると、カートンに収容されたティシュペーパー等の紙製品のサイズが小さくなったり、紙製品の組数を減らす必要が生じ、カートン内の紙製品をすぐに使い切ってしまい、その交換頻度が高くなるという問題がある。
そこで、カートンのサイズを小さくせずにカートンの強度を高める方法として、カートンの坪量や紙厚を高くすることが挙げられるがコストアップになる。また、カートンの坪量や紙厚が高くなると、紙製品を使い切ったカートンを廃棄する際、カートンを小さく折り曲げ難くなる。一方、カートンの坪量や紙厚を低くすると強度が低下し、カートンの潰れを抑制することが困難になると共に、製造時にカートンが破れて生産性が低下する。
【0005】
さらに、カートンの坪量や紙厚を低くすると、カートンのシートを折り返して箱状に起函するための罫線が折り曲げにくくなり、カートン製造時の加工性が劣るという問題がある。ここで、紙製品入りカートン2000は、図11に示すようにして製造される。まず、カートンを構成するシートの頂面部2010と底面部2020、及び一対の側面部2030,2040を折り込み、ホットメルトや糊付け等により四角柱状に起函して箱体とする。そして、この箱体に、紙製品2500の積層体を挿入した後、箱体の開口の一側面となる第1内フラップ2080,第2内フラップ2090を対向的に折込み、この外側に上面側外フラップ2060,下面側外フラップ2070を折り重ねて、ホットメルトや糊付け等により開口を封緘する。同様に、箱体の開口の他の側面となる第1内フラップ2080B,第2内フラップ2090Bを対向的に折込み、この外側に上面側外フラップ2060B,下面側外フラップ2070Bを折り重ねて、開口の閉鎖が完了し、紙製品入りカートン2000が組立てられる。
ところが、カートンの紙厚が薄くなると、カートンの開口を閉鎖する上面側外フラップ2060,下面側外フラップ2070を折り曲げる第4罫線R40及び第5罫線R50が折り曲げ難くなってカートン製造時の加工性が劣る。又、図12に示すように第4罫線R40及び第5罫線R50がきれいに直線で曲がらず、上面側外フラップ2060,下面側外フラップ2070がずれて対向し、外観だけでなく箱が歪むため、カートンの品質不良が生じることもある。これは、カートンの紙厚が薄くなると、罫線を入れにくくなり、第4罫線及び第5罫線に繋がる頂面部2010や底面部2020が折り曲げ時に撓むためと考えられる。一方、頂面部2010と底面部2020、及び一対の側面部2030,2040を折り曲げる際は、平面(シート)から一方向に折り込めば済むので、上記した問題はより少ないと考えられる。このように、カートンの紙厚を薄くすると、第4罫線及び第5罫線の折り曲げ性がとりわけ重要となる。
【0006】
すなわち、本発明は、カートンの坪量や紙厚を顕著に高くせずに、カートンの強度を向上させてカートンの潰れを抑制し、さらに罫線の折り曲げ性を向上させてカートン製造時の加工性を向上させ、カートン不良を低減させた紙製品入りカートンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討したところ、カートンの坪量や紙厚を薄くした際に、第4罫線及び第5罫線の折り曲げ性を改善するためには、第4罫線及び第5罫線の幅、高さを所定範囲に規定することが必要なことを見出した。又、カートンの紙厚を薄くするに伴って、罫線で曲がりにくくなるため、紙厚当たりの罫線高さをある程度大きくして、第4罫線及び第5罫線を曲げやすくすることが必要なことを見出した。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明の紙製品入りカートンは、紙製品の積層体を収容した紙製直方体状のカートンにおいて、前記カートンの坪量が250〜370g/m、紙厚tが0.28〜0.43mm/枚であり、前記カートンの長辺Lcが200〜250mm、幅Wcが100〜130mm、高さHcが40〜65mm、JIS−P8126に規定する前記カートンの前記長辺方向のリングクラッシュ値RLが500〜800N、かつ、(RL/t)が1.7〜2.5N/μmであり、前記カートンは、矩形状の頂面部及び底面部と、前記頂面部及び前記底面部のそれぞれの一方の長辺にそれぞれ第1罫線を介して接続された第1側面部と、前記頂面部又は前記底面部の他の長辺に第2罫線を介して接続された第2側面部と、前記頂面部又は前記底面部の他の長辺に第3罫線を介して接続されて前記第2側面部の内面に重ねて接続されるカートン糊付け部と、前記頂面部の両短辺にそれぞれ第4罫線を介して接続された一対の上面側外フラップと、前記底面部の両短辺にそれぞれ第5罫線を介して接続された一対の下面側外フラップと、前記第1側面部の両短辺にそれぞれ第6罫線を介して接続された一対の第1内フラップと、前記第2側面部の両短辺にそれぞれ第7罫線を介して接続された一対の第2内フラップとを有するシートを、前記第1罫線〜前記第7罫線を折り曲げ、前記上面側外フラップ及び前記下面側外フラップが前記第1内フラップ及び第2内フラップの外側に重なるように起函して形成され、前記第4罫線及び前記第5罫線の幅W45が1.1〜2.2mm、前記カートンの内面から内側へ向かう前記第4罫線及び前記第5罫線の高さH45が0.23〜0.55mmであり、前記第4罫線及び前記第5罫線に隣接する前記カートンの厚さをt45としたとき、(H45(mm)/t45(mm))=0.50〜1.90である。
【0008】
(H45(mm)/W45(mm))=0.10〜0.60であることが好ましい。
一対の前記第1罫線のうち、前記第3罫線からの距離が遠い方の第1罫線の幅W12が1.0〜2.5mm、当該第1罫線の前記カートンの内面から内側へ向かう高さH12が0.12〜0.42mm、かつ、前記第1罫線に隣接する前記カートンの厚さをt12としたとき、(H12(mm)/t12(mm))=0.45〜1.60であることが好ましい。
前記第1罫線のうち、前記第3罫線からの距離が近い方の第1罫線及び前記第2罫線の幅W2が1.0〜2.5mm、前記カートンの内面から内側へ向かう前記第1罫線及び前記第2罫線の高さH2が0.28〜0.62mm、であることが好ましい。
前記第6罫線及び前記第7罫線の幅W67が1.0〜2.5mm、前記カートンの内面から内側へ向かう前記第6罫線及び前記第7罫線の高さH67が0.22〜0.53mmであることが好ましい。
H45(mm)>H67(mm)であることが好ましい。
【0009】
前記カートンは多層からなり、かつそのうち針葉樹由来のパルプを40〜100質量%含む硬質層の占める割合が15〜75質量%であることが好ましい。
前記硬質層は、段ボール由来の古紙を含有することが好ましい。
記カートンの前記長辺方向における曲げこわさが3.7〜7.5mN・mであることが好ましい。但し、前記曲げこわさは、ISO−2493に記載された方法に準じ、L&W Bending Tester(Lorentzen & Wettre社製)を用い、カートン20の長辺方向に自身の長手方向を合わせた幅38mm、長さ100mmの試験片の一端側を試料台のチャックに片持ち梁式で固定し、試験片の一端側より外側の片面を前記試料台上の検出部の突状係合部に接触させ、前記試験片の他端が拘束されないフリーの状態で、曲げ長(前記試料台のチャックと前記係合部との間隔、つまり、試験片のスパン(梁間))を10mmとし、曲げ角度(前記試験片の一端を保持したチャックの回転角、この回転の際に前記試験片は前記係合部に押し付けられ、試験片が撓む)を15度としたときの曲げ抵抗(荷重)を測定し、次の算出式:曲げこわさ(mN・m)=60×曲げ抵抗(mN)×曲げ長10(mm)÷{π×曲げ角度15(°)×サンプル幅38(mm)×1000}で求める。
前記カートンの前記長辺方向の圧縮強度が130〜220N/箱であることが好ましい。但し、前記圧縮強度は、前記カートンの長辺を縦(軸方向)になるように圧縮試験機に置き、面積177cm2(直径15cmの円形)の圧縮板を前記カートン上に配置したとき、前記圧縮板の内側に前記カートンの前記各外フラップの面が完全に入るようにし、前記圧縮板に加圧速度10mm/minの条件で一軸荷重を掛けて圧縮し、軸方向の変位と荷重のグラフにて、最初に現れる、上に凸となる第一変曲点とし、23℃、50%RHの恒温恒湿条件で5回行った値を平均する。


【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、カートンの坪量や紙厚を顕著に高くせずに、カートンの強度を向上させてカートンの潰れを抑制し、さらに罫線の折り曲げ性を向上させてカートン製造時の加工性を向上させ、カートン不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る紙製品入りカートンの斜視図である。
図2】紙製品入りカートンの各構成部分を示す透視斜視図である。
図3】カートンの展開図である。
図4】罫線の幅、高さ、及びカートンの厚さを示す断面図である。
図5】圧縮強度の測定で得られた、軸方向の変位と荷重の関係を示す図である。
図6】廃棄時のカートンの折り曲げ性の評価方法を示す図である。
図7】実際のカートン表面の罫線割れを示す図である。
図8】フォルダ(折り機)にセットするために折り畳まれた状態のカートンを示す断面図である。
図9】カートンの層構造を示す模式断面図である。
図10】リングクラッシュ値の測定方法を示す図である。
図11】カートンの製造方法を示す図である。
図12】罫線が直線で曲がらず、品質不良となったカートンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る紙製品入りカートン20の斜視図、図2は紙製品入りカートン20の各構成部分を示す透視斜視図、図3はカートン20の展開図である。紙製品入りカートン20(以下、適宜「カートン」とも称する)は、シート状の紙製品25の積層体を収容した紙製の直方体状の箱体からなり、紙製品入りカートン20の高さHは、内部の紙製品25の積層方向に沿った高さである。紙製品25としては、ティシュペーパー、ハンドタオル等が例示され、個々の紙製品25は、例えばポップアップ式にZ折りやV折り等されて積層されてもよく、ポップアップしないように重ねられてもよい。又、カートン20は板紙等から形成することができる。
【0013】
そして、図2図3に示すように、紙製品入りカートン20は、矩形状の頂面部201及びそれに対向する底面部202と、頂面部201及び底面部202のそれぞれの一方の(図2の右側の)長辺にそれぞれ第1罫線R11、R12を介して接続された第1側面部203と、頂面部201の他の(図2の左側の)長辺に第2罫線R2を介して接続された第2側面部204と、底面部202の他の(図2の左側の)長辺に第3罫線R3を介して接続されて第2側面部204の内面に重ねて接続されるカートン糊付け部205と、頂面部201の両短辺にそれぞれ第4罫線R4を介して接続された一対の上面側外フラップ206,206Bと、底面部202の両短辺にそれぞれ第5罫線R5を介して接続された一対の下面側外フラップ207,207Bと、第1側面部203の両短辺にそれぞれ第6罫線R6を介して接続された一対の第1内フラップ208,208Bと、第2側面部204の両短辺にそれぞれ第7罫線R7を介して接続された一対の第2内フラップ209,209Bとを有する1枚のシート(図3参照)を、第1罫線R11〜第7罫線R7を折り曲げて起函して形成されている。各罫線は、シートを立体的な形状に起函して組み立てる際、綺麗に折り曲がるようにシートを潰した折線である。
なお、頂面部201には収容する紙製品25を取り出すためのミシン目212が設けられている。
【0014】
ここで、カートン20の製造の際には、まず、カートン糊付け部205を第2側面部204の長辺方向の側縁に接着等することで、頂面部201と底面部202、及び一対の側面部203,204が四角柱状に起函する。
そして、カートン糊付け部205をホットメルトや糊等で接着等して四角柱状に形成された箱体に紙製品25の積層体を挿入した後、箱体の開口の一側面となる第1内フラップ208,第2内フラップ209を対向的に折込み、この外側にホットメルトや糊等の接着剤を塗布した上面側外フラップ206,下面側外フラップ207を折り重ねて、開口を封緘する。同様に、箱体の開口の他の側面となる第1内フラップ208B,第2内フラップ209Bを対向的に折込み、この外側に上面側外フラップ206B,下面側外フラップ207Bを折り重ねて、開口の閉鎖が完了する。このようにして、紙製品入りカートン20が組立てられる。
なお、上面側外フラップ206,206Bの下端は、それぞれ下面側外フラップ207、207Bの上端の上に被さるようにして接着され、第1側面部203及び第2側面部204にそれぞれ直角に接続される側面部を形成している。
【0015】
カートン20の坪量が250〜370g/m、紙厚が0.28〜0.43mm/枚である。
【0016】
カートン20の坪量が250g/m未満であると、カートン20の強度が低下してカートン20が潰れ易くなる。カートン20の坪量が370g/mを超えると、カートン20の強度は高くなるがコストアップになる。カートンの坪量は、250〜340g/mであることが好ましく、250〜300g/mであることがより好ましい。カートン20の坪量は、JIS P8124に基づいてシート1枚当たりについて測定する。
カートン20の紙厚が0.28mm/枚未満であると、カートン20の強度が低下してカートン20が潰れ易くなる。カートン20の紙厚が0.43mm/枚を超えると、カートン20の強度は高くなるがコストアップになる。カートンの紙厚が0.28〜0.38mm/枚であることが好ましく、0.28〜0.34mm/枚であることがより好ましい。
【0017】
本発明においては、第4罫線R4及び第5罫線R5の幅W45が1.0〜2.5mm、カートン20の内面から内側へ向かう第4罫線R4及び第5罫線R5の高さH45が0.23〜0.55mmであることが特徴となっている。
上述のように、カートンの坪量や紙厚を薄くした際に、第4罫線R4及び第5罫線R5の折り曲げ性を改善することが必要であり、そのため第4罫線R4及び第5罫線R5の幅W45、高さH45を規定したのである。
ここで、幅W45、高さH45、及び後述するカートン厚さt45を図4に示す。幅W45は、罫線(第4罫線R4及び第5罫線R5)の延びる方向に垂直な方向(幅方向)における当該罫線の最大幅である。高さH45は、罫線(第4罫線R4及び第5罫線R5)に隣接するカートン20の内面(紙製品25と接する面)から罫線(第4罫線R4及び第5罫線R5)の最大突部までの距離である。カートン厚さt45は、罫線(第4罫線R4及び第5罫線R5)に隣接するカートン20の厚さである。
なお、「隣接する」とは、第4罫線R4及び第5罫線R5の幅W45の外側におけるカートンの位置をいう。
【0018】
罫線の高さH45はシックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK G」)を用いて測定する。測定条件は、測定力1.8N以下、測定子直径10mmで、測定子の間に罫線をセットし、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取り、その値をBとする。また、罫線を含まないように、罫線の幅W45よりも両外側の紙厚t45を2カ所測定し(t45の測定条件は、H45と同一)、平均値をAとする。そして、高さH45=B−Aを計算する。なお、A,Bの測定を10回繰り返し、H45の平均値を採用する。
値Bを測定する際に、箱型になったカートンを分解してから測定することがあるが、罫線の折り癖が残りやすく、折り癖があると、値Bが変わる可能性がある。そこで、図4に示すように、罫線を挟んだ両外側のカートンの表面が面一になるように平らにして測定する。
なお、後述する他の罫線の高さについても、同様に測定する。
【0019】
幅W45が1.0mm未満であると、罫線(第4罫線R4及び第5罫線R5)を折曲げにくく、第4罫線R4及び第5罫線R5に繋がる上面側外フラップ206(206B),下面側外フラップ207(207B)の曲がりやすさが劣り、カートン製造時の加工性が低下する。幅W45が2.5mmを超えると、罫線が幅広過ぎてきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、上記図12に示したようなカートン不良となる。幅W45が1.1〜2.2mmであることが好ましく、1.2〜2.0mmであることがより好ましい。
高さH45が0.23mm未満であると、罫線(第4罫線R4及び第5罫線R5)を折曲げにくく、第4罫線R4及び第5罫線R5に繋がる上面側外フラップ206(206B),下面側外フラップ207(207B)の曲がりやすさが劣り、カートン製造時の加工性が低下する。高さH45が0.55mmを超えると、罫線割れが発生する。罫線割れとは、図7に示すように、罫線を深く入れすぎて(罫線高さを高くしすぎて)罫線の反対面となるカートン表面角部紙が破れてしまう現象であり、カートン不良となる。
高さH45が0.23〜0.45mmであることが好ましく、0.26〜0.39mmであることがより好ましい。
【0020】
又、上述のように、カートンの坪量や紙厚を薄くするに伴って、罫線で曲がりにくくなるため、紙厚当たりの罫線高さをある程度大きくして、第4罫線R4及び第5罫線R5を曲げやすくすることが必要である。このようなことから、(H45(mm)/t45(mm))を規定した。
(H45(mm)/t45(mm))=0.50〜1.90である。(H45/t45)=0.50未満であると、カートン厚さに対して罫線の突出する高さが小さ過ぎ、罫線(第4罫線R4及び第5罫線R5)を折曲げにくく、第4罫線R4及び第5罫線R5に繋がる上面側外フラップ206(206B),下面側外フラップ207(207B)の曲がりやすさが劣り、カートン製造時の加工性が低下する。(H45/t45)=1.90を超えると、罫線割れが発生する。
(H45/t45)=0.65〜1.50であることが好ましく、0.75〜1.30であることがさらに好ましい。
【0021】
(H45(mm)/W45(mm))=0.10〜0.60であることが好ましい。(H45/W45)=0.10未満であると、罫線の幅に対する罫線の高さが相対的に著しく低くなり、シートに罫線を入れる時の罫線の品質が安定しない(生産性が劣る)ことがある。(H45/W45)=0.60を超えると、罫線の幅に対する罫線の高さが相対的に著しく高くなり、シートに罫線を入れる時の罫線の品質が安定しない(生産性が劣る)ことがある。
(H45/W45)=0.10〜0.40であることがより好ましく、0.15〜0.30であることがさらに好ましい。
【0022】
ところで、図8に示すように、カートン20は、予めカートン糊付け部205を第2側面部204の長辺方向の側縁に接着し、頂面部201と底面部202、及び一対の側面部203,204が接するように折り畳まれた状態でフォルダ(折り機)にセットされ、図8の矢印方向にカートン20を開いた(起函した)後、紙製品25の積層体を挿入するようになっている。なお、図8では理解を助けるために、カートン20がわずかに開いたように図示されているが、実際は頂面部201と底面部202がほとんど密着するようにセットされる。
このため、折り畳まれた状態のカートン20では、第1罫線R12が折り曲げられていない初期の状態となっており(場合によっては、カートン糊付け部205を第2側面部204の長辺方向の側縁に接着する前に、第1罫線R12を予備的に折っても良い)、カートン20を開く際に第1罫線R12が折り曲げ易くなっていないと、起函しにくくなってカートン製造時の加工性が低下する場合がある。そこで、第1罫線R12を以下のように規定すると好ましい。
すなわち、一対の第1罫線R11,R12のうち、第3罫線R3からの距離が遠い方の第1罫線R12の幅W12が1.0〜2.5mm、カートン20の内面から内側へ向かう第1罫線R12の高さH12が0.12〜0.42mmであることが好ましい。
幅W12が1.0mm未満であると、罫線(第1罫線R12)を折曲げにくく、カートン製造時の加工性(起函性)が劣ることがある。幅W12が2.5mmを超えると、罫線が幅広過ぎてきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、上記図12に示したようなカートン不良となることがある。
高さH12が0.12mm未満であると、罫線(第1罫線R12)を折曲げにくく、カートン製造時の加工性(起函性)が劣ることがある。高さH12が0.42mmを超えると、罫線割れが発生することがある。
【0023】
なお、幅W12、高さH12、及び後述するカートン厚さt12は、図4に示した幅W45、高さH45、及びカートン厚さt45と同様にして規定される。
幅W12が1.1〜2.2mmであることがより好ましく、1.2〜2.0mmであることがさらに好ましい。又、高さH12が0.12〜0.32mmであることがより好ましく、0.14〜0.29mmであることがさらに好ましい。
【0024】
第1罫線R12に隣接するカートンの厚さをt12としたとき、(H12(mm)/t12(mm))=0.45〜1.60であることが好ましい。(H12/t12)=0.45未満であると、罫線の突出する高さが小さ過ぎ、罫線(第1罫線R12)を折曲げにくく、カートン製造時の加工性が劣ることがある。(H12/t12)=1.60を超えると、罫線割れが発生することがある。
(H12/t12)=0.45〜1.30であることがより好ましく、0.55〜1.00であることがさらに好ましい。
【0025】
(H12(mm)/W12(mm))=0.10〜0.40であることが好ましい。(H12/W12)=0.10未満であると、罫線の幅に対する罫線の高さが相対的に著しく低くなり、シートに罫線を入れる時の罫線の品質が安定しない(生産性が劣る)ことがある。(H12/W12)=0.40を超えると、罫線の幅に対する罫線の高さが相対的に著しく高くなり、シートに罫線を入れる時の罫線の品質が安定しない(生産性が劣る)ことがある。(H12/W12)=0.10〜0.30であることがより好ましく、0.10〜0.20であることがさらに好ましい。
【0026】
H45(mm)>H12(mm)であると好ましい。これは、カートン20の長辺方向がCD、短辺方向がMDとなっていて、長辺方向の罫線H12の方が、短辺方向の罫線H45よりも罫線割れが発生しやすく、H12を小さくする方が罫線割れを有効に防止できるためである。
【0027】
又、図8に示したように、カートン20は、頂面部201と底面部202、及び一対の側面部203,204が接するように折り畳まれた状態でフォルダ(折り機)にセットされるが、このとき、罫線R2とR11が折り曲げられた状態となっている。このため、罫線R11、R2の幅及び高さを規定することで、折り畳まれた状態でカートンの厚さが一定となり、フォルダへのカートンの供給が安定し、生産性が向上する。
つまり、第1罫線のうち、第3罫線R3からの距離が近い方の第1罫線R11,及び第2罫線R2の幅W2が1.0〜2.5mm、カートン20の内面から内側へ向かう第1罫線R11及び第2罫線R2の高さH2が0.28〜0.62mmであることが好ましい。
なお、「W2」、「H2」は、第1罫線R11及び第2罫線R2の両方の幅や高さを表す。又、後述する表1、表2における「W2」、「H2」は、第1罫線R11及び第2罫線R2の値の平均値である。
【0028】
幅W2が1.0mm未満であると、罫線R11、R2でカートンを折り曲げにくくなり、折り畳まれた状態でのカートンの厚さのばらつきが大きくなり、フォルダへのカートンの供給が安定せず、生産性が低下することがある。幅W2が2.5mmを超えると、罫線が幅広過ぎてきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、上記図12に示したようなカートン不良となる。
高さH2が0.28mm未満であるか、0.62mmを超えるといずれの場合も、罫線R11、R2でカートンを折り曲げにくくなり、折り畳まれた状態でのカートンの厚さのばらつきが大きくなり、フォルダへのカートンの供給が安定せず、生産性が低下することがある。
【0029】
なお、幅W2、高さH2は、図4に示した幅W45、高さH45と同様にして規定される。
幅W2が1.1〜2.2mmであることがより好ましく、1.2〜2.0mmであることがさらに好ましい。又、高さH2が0.28〜0.56mmであることがより好ましく、0.32〜0.53mmであることがさらに好ましい。
なお、罫線を入れた直後の罫線R2、R12の高さは等しい。但し、その後、罫線R3は折られず、罫線R2とR11はしっかりと折り曲げられるため、罫線R2とR11の構造が大きく変化して(罫線が高くなって)、罫線の高さはR2(=R11)>R12となる。
【0030】
なお、第6罫線R6及び第7罫線R7はそれぞれ第1内フラップ208(208B)及び第2内フラップ209(209B)に繋がっており、カートンを四角柱状に起函した後の第1内フラップ208(208B)及び第2内フラップ209(209B)の開き具合に影響を与える。
そこで、第6罫線R6及び第7罫線R7の幅W67が1.0〜2.5mm、カートン20の内面から内側へ向かう第6罫線R6及び第7罫線R7の高さH67が0.22〜0.53mmであることが好ましい。
幅W67が1.0mm未満であると、第1内フラップ208(208B)及び第2内フラップ209(209B)の曲がりやすさが劣り、カートン製造時の加工性が低下することがある。幅W67が2.5mmを超えると、罫線が幅広過ぎてきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、上記図12に示したようなカートン不良となることがある。
高さH67が0.22mm未満であると、第1内フラップ208(208B)及び第2内フラップ209(209B)の曲がりやすさが劣り、カートン製造時の加工性が低下することがある。高さH67が0.53mmを超えると、罫線割れが発生することがある。
【0031】
なお、幅W67、高さH67は、図4に示した幅W45、高さH45と同様にして規定される。
幅W67が1.1〜2.2mmであることがより好ましく、1.2〜2.0mmであることがさらに好ましい。又、高さH67が0.22〜0.44mmであることがより好ましく、0.25〜0.37mmであることがさらに好ましい。
【0032】
さらに、H45(mm)>H67(mm)であると好ましい。これは、H67(mm)を小さくすると、第6罫線R6及び第7罫線R7でそれぞれ第1内フラップ208(208B)及び第2内フラップ209(209B)を折り曲げた際に、若干折り曲げ難くなり、ある程度の反発力(第2内フラップが元に戻る)が生じて第2内フラップが開き、上面側外フラップ206(206B),下面側外フラップ207(207B)と接着しやすくなるからである。
【0033】
ところで、一般にカートンの坪量や紙厚を低くすると、カートン20の強度が低下してカートンの潰れが発生する。カートン20の強度は、圧縮強度であるリングクラッシュ値で評価でき、特に、後述するカートン収容段ボール箱100の保管時に、内部のカートン20が潰れやすくなる長辺方向のリングクラッシュ値RLを高くすることが必要となる。そして、例えば、図9に示すように、カートン20を多層20U〜20Zから構成し、かつそのうち針葉樹由来のパルプを40〜100質量%含む硬質層20X,20Y,20Zの占める割合が15〜75質量%となるように構成することで、カートンの坪量や紙厚が低くても、コストアップを伴わずにカートンの強度を高くできることが判明した。
ここで、カートン20を構成するすべての層の強度を高くするのでなく、強度が高くて固い硬質層をカートン20の層の一部に積層すると、カートンの坪量や紙厚が低くても、カートンの潰れを低減させることができる。
なお、硬質層20X,20Y,20Zは、針葉樹由来のパルプを好ましくは40〜80質量%含み、より好ましくは40〜60質量%含む。又、カートン20を構成する層のうち、硬質層20X,20Y,20Z以外の層20U,20V,20Wは針葉樹由来のパルプを40質量%未満含み、硬質層20X,20Y,20Zに比べて強度が低い。
又、硬質層20X,20Y,20Zは、例えば段ボール由来の古紙を主体とする原料から抄造することができ、また、ダンボール由来の古紙の配合量を調整して針葉樹由来のパルプの総量を調整することで、バージンパルプのコストを抑制できる。その他の層20U,20V,20Wは、例えば雑誌古紙を主体とする原料から抄造することができる。
なお、カートン20の層における硬質層の位置に制限はないが、硬質層以外の層を表面に設けることが好ましい。硬質層以外の層を表面に設けることで、カートンの表面性が良くなり、触感や印刷品質が向上する。
【0034】
なお、硬質層20X,20Y,20Zにおける「針葉樹由来のパルプ」は、JIS P8120の繊維組成試験法に準じて定量できる。また、本試験法に準じる染色によって、針葉樹パルプの判別が難しい場合であっても、針葉樹パルプの繊維形態(繊維長2.0〜4.5mm程度、繊維幅20〜70μm程度)は、広葉樹パルプの繊維形態(繊維長0.8〜1.8mm程度、繊維幅10〜50μm程度)と異なるため、判別することができる。
又、カートンのうち硬質層の占める割合が15質量%未満であると、カートンの坪量や紙厚を低くしたときにカートンの強度が低下する場合がある。カートンのうち硬質層の占める割合が75質量%を超えると、カートンの製造時に罫線が入れ難くなって成形性に劣り、廃棄時にカートンを折り曲げ難くなる場合がある。カートンのうち硬質層の占める割合は、より好ましくは25〜70質量%、最も好ましくは40〜60質量%である。
なお、カートンを水又は湯に浸漬すると、各層が分離するので、分離した各層を離解して繊維を回収し、顕微鏡観察によって長繊維の量を測定することで、各層に含まれる針葉樹由来のパルプの割合を求めることができる。
【0035】
そして、カートン20のリングクラッシュ値RLが500〜800N、かつ、(RL/t)が1.7〜2.5N/μmであることが好ましい。
リングクラッシュ値RLが500N未満であるとカートン20が潰れ易くなり、800Nを超えると必要以上に強度が高くなってコストアップになる。
RLは、550〜740Nが好ましく、600〜720Nがより好ましい。
【0036】
リングクラッシュ値は、JIS−P8126(2005)に従い、カートン20のシートから幅12.7mm、長さ152.4mmの短冊状の試験片を採取して測定する。具体的には、図10に示すようにリング状に巻いた試験片S1の軸方向(試験片の短手方向)に荷重Fを加えたときの圧縮強さを測定する。
カートン20の長辺方向のリングクラッシュ値RLとは、試験片S1の長辺方向がカートン20の長辺方向と垂直な(つまり、荷重の加わる軸方向がカートン20の長辺方向に平行な)場合をいう。
ここで、図3に示すように、カートン20の幅方向の長さは130mm以下程度であるため、リングクラッシュ値RLを測定するための試験片S1は、カートン20の罫線を少なくとも1つ(図3では2つの罫線R11、R12)含んでしまう。しかしながら、罫線は試験片S1を圧縮する方向と同一であるため、試験片S1に含まれる罫線が2本以下であれば、測定に差し支えない。
【0037】
又、(RL/t)は、紙厚t当りのリングクラッシュ値RLを表し、(RL/t)が高いほど薄くても強度が高いことを示す。(RL/t)が1.7未満であると、RLが低くなってカートンが潰れやすくなる。一方、(RL/t)が2.5を超えると強度は高くなるが、カートンが固くなり過ぎて、罫線が入りにくくなり、カートンの成形性が劣る場合がある。又、上述のように、硬質層が段ボール由来の古紙を含有する場合、(RL/t)が2.5を超えるものはカートン中の段ボール由来の古紙の割合が多くなり過ぎ、カートンがもろくなり、箱状に成形した際に罫線割れが生じる場合がある。
(RL/t)は、1.9〜2.5N/μmが好ましく、2.0〜2.5N/μmがより好ましい。
【0038】
カートン20に段ボール由来の古紙を含有させた場合、カートン20中のパルプ原料中の段ボール由来の古紙の含有割合は20〜70質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、40〜60質量%が最も好ましい。
段ボール由来の古紙の含有割合が20質量%未満であると強度が上がりにくく、カートンが潰れ易くなる場合がある。一方、段ボール由来の古紙の含有割合が70質量%を超えると、カートンがもろくなり、箱状に成形した際に罫線割れが生じる場合がある。
また、段ボール古紙を配合すると、段ボール古紙に含まれるアルミ(アルミ蒸着紙パック、箔押し紙等が由来)が異物となって、カートンに含まれる場合がある。アルミ由来の異物がカートンに含まれるとクレームになるため、カートンに含まれるアルミ由来の異物の大きさを3.0mm以下とするよう、古紙パルプ工程におけるスクリーン等のリジェクト率を適宜調整することが好ましい。
【0039】
カートン20の長辺方向における曲げこわさSLが3.7〜7.5mN・mであると、低坪量でも強度が保たれ、カートンの潰れをさらに抑制することができるので好ましい。カートンの曲げこわさSLが3.7mN・m未満であるとカートンが潰れ易くなり、7.5mN・mを超えると必要以上に強度が高くなってコストアップになってしまう場合がある。曲げこわさSLは、3.7〜6.0mN・mが好ましく、3.7〜4.8mN・mがより好ましい。
曲げこわさは、ISO−2493に記載された方法に準じ、L&W Bending Tester(Lorentzen & Wettre社製)を用い、幅38mm、長さ100mmの試験片の一端側を試料台のチャックに片持ち梁式で固定し、試験片の一端側より外側の片面を試料台上の検出部の突状係合部に接触させる。このとき、試験片の他端は拘束されないフリーの状態となる。この状態で、曲げ長(試料台のチャックと係合部との間隔、つまり、試験片のスパン(梁間))を10mmとし、曲げ角度(試験片の一端を保持したチャックの回転角、この回転の際に試験片は係合部に押し付けられ、試験片が撓む)を15度としたときの曲げ抵抗(荷重)を測定し、次の算出式によって求めた。曲げこわさ(mN・m)=60×曲げ抵抗(mN)×曲げ長10(mm)÷{π×曲げ角度15(°)×サンプル幅38(mm)×1000}。
曲げこわさSLは、試験片の長辺方向(梁間)がカートン20の長辺方向に等しい場合をいう。曲げこわさSTは、試験片の長辺方向(梁間)がカートン20の幅方向に等しい場合をいう。
【0040】
曲げこわさSTは、7.5〜14.5mN・mが好ましく、7.5〜12.0mN・mがより好ましく、7.5〜9.5mN・mが最も好ましくい。曲げこわさSTが7.5mN・m未満であると、例えばカートン20を頂面部201が上になるように複数包装パックした製品を保管した際に、カートン20の側面部203,204が曲がってしまう場合がある。一方、曲げこわさSTが14.5mN・mを超えると、必要以上に強度が高くなってコストアップになってしまう場合がある。
【0041】
カートン20の長辺方向の圧縮強度が130〜220N/箱であると好ましい。上記圧縮強度が130N/箱未満であると、カートン20の強度が低下してカートン20が潰れ易くなる場合がある。上記圧縮強度が220N/箱を超えると、カートン20の強度は高くなるがコストアップになる場合がある。上記圧縮強度が130〜190N/箱であることがより好ましく、135〜160N/箱であることが最も好ましい。
上記圧縮強度は以下のように行う。まず、カートン20の長辺を縦(軸方向)になるように圧縮試験機(例えば、ティー・エス・イー社製の製品名:AUTOCOM)に置き、面積177cm2(直径15cmの円形)の圧縮板をカートン20上に配置する。このとき、圧縮板の内側にカートン20の外フラップ206、207の面が完全に入るようにする。そして、圧縮板に加圧速度10mm/minの条件で一軸荷重を掛けて圧縮し、図5に示す軸方向の変位と荷重のグラフにて、最初に現れる、上に凸となる第一変曲点(カートン20の長辺を縦(軸方向)に置いた時の下部が潰れたり、座屈することが多い)を圧縮強度(N)とした。測定は、23℃、50%RHの恒温恒湿条件で5回行った値を平均した。
なお、カートン20の長辺方向の圧縮強度を規定する理由は、カートン20の長辺を縦にした複数段を段ボール10に収容して保管する場合に、カートン収容段ボール箱100を複数個積み重ねて保管するが、その際に、カートン20の長辺方向に荷重が加わり、潰れる場合があるためである。
【0042】
カートンの長辺Lcが200〜250mm、幅Wcが100〜130mm、高さHcが40〜65mmであると好ましい。
カートン20の長辺Lcが200mm未満か、幅Wcが100mm未満か、又は高さHcが40mm未満になると、カートン20に入っているティシュペーパー等の紙製品のサイズが小さくなったり、紙製品の組数を減らす必要が生じて使用感が低下する場合がある。カートン20の長辺Lcが250mmを超えるか、幅Wcが130mmを超えるか、又は高さHcが65mmを超えると、カートン20が大きくなり過ぎて強度が低下し、カートン20が潰れ易くなる場合がある。カートン20の長辺Lcは220〜240mmが好ましく、220〜230mmがより好ましい。また、カートン20の幅Wcは、110〜125mmが好ましく、110〜120mmがより好ましい。カートン20の高さHcは、42〜55mmが好ましく、42〜48mmがより好ましい。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。例えば、カートン及びそれに収容される紙製品の種類、材質や、紙製品の積層態様は限定されない。
【実施例】
【0044】
ポップアップ式に積層したティシュペーパー(紙製品:所定の組数)を収容したティシュペーパーカートン(ティシュペーパーボックス)20を用意した。カートン20の各種寸法を表1、表2に示す。
なお、カートンは、層の総数を6層とし、そのうち、硬質層を3層とした。各層の坪量が同一であるため、硬質層の割合が50質量%となった。又、各硬質層において、針葉樹由来のパルプの割合を50質量%とした。又、各層のパルプ原料として、硬質層以外の層は雑誌古紙主体のパルプ、硬質層は段ボール由来の古紙パルプを使用した。
又、多層のカートンは、ヘッドボックスを多数有する公知の多層抄きマシンで抄造して得た。必要に応じて、層と層の間に、公知の紙力剤を塗布した。
カートンの坪量、紙厚t、各罫線の寸法、圧縮強度、長辺方向における曲げこわさは上述のようにして測定した。
【0045】
図3に示すシートから罫線を折曲げてカートンを製造する際の各種特性を以下のように評価した。
罫線割れ:カートン製造後のカートン表面の角部の罫線割れの有無を目視で評価した。
罫線の曲げ易さ:カートン製造時の加工速度を評価した。罫線が曲げにくくなると、加工速度が低下して、生産性が低下する。
【0046】
罫線の直線性:カートン製造後のカートン表面に現れた罫線の直線性を次のように評価した。
(1)罫線R4、R5の直線性:カートン製造後の上面側外フラップ206,下面側外フラップ207の幅方向のズレ量d(図12参照)が1mm以上のカートンの個数の割合を評価した。
(2)罫線R6、R7の直線性:カートンの幅Wcを、カートンの異なる高さ方向で3カ所測定し、所定個数のカートンのうち、Wcの最大値と最小値の差が1mm以上のカートンの個数の割合を評価した。
(3)罫線R11、R12の直線性:カートンの高さHcを、カートンの異なる長辺方向で5カ所測定し、所定個数のカートンのうち、Hcの最大値と最小値の差が1mm以上のカートンの個数の割合を評価した。
【0047】
罫線の品質安定性:カートン製造時の罫線を入れる際の加工速度を評価した。罫線品質が安定しないと、加工速度が低下して、生産性が低下する。
カートンの供給性:図8のように折り畳まれた状態のカートンをフォルダ(折り機)にセットして運転した際の、フォルダの操業性を評価した。
カートンの起函性:カートン製造時の加工速度を評価した。起函性が劣ると、加工速度が低下して、生産性が低下する。
曲がり性:MFでの操業時に、フラップ部の曲がりやすさを評価した。
内フラップと外フラップの接着性:内フラップの外側に外フラップ接着する際の接着しやすさを評価した。
各評価は、実用上問題ない通常レベルの潰れを「3」とし、これよりやや優れているを「4」、優れているを「5」とした。同様に、「3」より劣っているを「2」、著しく劣っているを「1」とした。評価が3〜5であれば問題ない。
【0048】
また、カートン20を高さ方向に5個重ねてフィルムでパックしたパック品を、カートン20の長辺を縦にした複数段を所定の段ボール箱10に収容し、カートン収容段ボール箱を10段積み重ねて1週間保管し、最下段のカートン収容段ボール箱を開封してカートンの潰れの有無を目視判定した。評価は、実用上問題ない通常レベルの潰れを「3」とし、これよりやや優れているを「4」、優れているを「5」とした。同様に、「3」より劣っているを「2」、著しく劣っているを「1」とした。評価が3〜5であれば問題ない。
【0049】
さらに、廃棄時にカートンの折り曲げ性を次のように評価した。まず、ティシュペーパーを使い切った空のカートン20について、外フラップ206、207を開封した四角柱状とし、さらに図6に示すように罫線に沿って潰し、頂面部201と側面部204が、底面部202と側面部203の上に重なる状態とした。次に、このカートンを、長辺方向の中央部Cで手で折り返し、折り曲げやすさを評価した。
評価は、従来品と同等なものを「3」とし、これを基準として上記と同様に5段階評価した。
【0050】
得られた結果を表1、表2に示す。
【0051】
【表1】


【0052】
【表2】
【0053】
表1、表2から明らかなように、カートンの坪量、紙厚、及び第4及び第5罫線の寸法を所定の範囲とした各実施例の場合、カートンの坪量や紙厚を顕著に高くせずにカートンの強度を向上させてカートンの潰れを抑制することができた。又、坪量や紙厚が高くないにも関わらず、罫線R4,R5が折り曲げ易く、カートン製造時の加工性が優れ、罫線R4,R5の直線性にも優れてカートン不良を抑制できた。
【0054】
一方、カートンの坪量、紙厚が規定範囲未満である比較例1の場合、カートンの強度が低下し、カートンが潰れた。
【0055】
カートンの坪量、紙厚が所定の範囲を超えた比較例2の場合、カートンの強度は高くなってカートンが潰れなかったが、廃棄時にカートンを折り曲げ難くなった。
【0056】
第4罫線及び第5罫線の幅W45が規定範囲未満で、かつ高さH45及び(H45/t45)が規定範囲を超えた比較例3、4の場合、罫線R4,R5を折曲げにくく、カートン製造時の加工性が劣ると共に罫線割れが発生した。
なお、比較例4の場合、W67が2.5mmを超えたため、罫線R6,R7がきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、カートン不良が生じた。
【0057】
幅W45が規定範囲未満である比較例5〜9、10、13、14の場合も罫線R4,R5を折曲げにくく、カートン製造時の加工性が劣った。
なお、第1罫線の幅W12が規定範囲未満である比較例7、8の場合、第1罫線R12を折曲げにくく、カートン製造時の加工性(起函性)がさらに劣った。又、比較例8の場合、高さH12及び(H12/t12)も規定範囲未満となったので、起函性が最も劣った。
比較例8に加え、(H12/W12)が規定範囲を超えた比較例9の場合、シートに罫線を入れる時の罫線の品質が安定せず、さらに生産性が劣った。さらに比較例9の場合、(H12/t12)が規定範囲を超え、罫線R12の罫線割れが発生した。
幅W12が規定範囲を超えた比較例10の場合、罫線R12がきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、さらにカートン不良が発生した。さらに比較例10の場合、(H12/W12)が規定範囲未満となり、シートに罫線を入れる時の罫線の品質が安定せず、さらに生産性が劣った。
高さH2及び幅W2が規定範囲未満である比較例13の場合、罫線R2でカートンを折り曲げにくくなり、折り畳まれた状態でのカートンの厚さのばらつきが大きくなり、さらにフォルダへのカートンの供給が安定せず、生産性が低下した。
高さH2が規定範囲を超えた比較例14の場合、罫線R2でカートンを折り曲げにくくなり、折り畳まれた状態でのカートンの厚さのばらつきが大きくなり、さらにフォルダへのカートンの供給が安定せず、生産性が低下した。又、比較例14の場合、幅W2も規定範囲を超えたため、罫線R2がきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、カートン不良も生じた。
【0058】
第4罫線及び第5罫線の幅W45が規定範囲を超えた比較例11の場合、罫線R4、R5がきれいに直線で曲がらず、カートンに加工はできるものの、カートン不良が生じた。
なお、比較例11の場合、(H45/W45)が規定範囲未満となり、シートに罫線を入れる時の罫線の品質が安定せず、さらに生産性が劣った。
第4罫線及び第5罫線の高さH45が規定範囲未満である比較例12の場合、罫線R4,R5を折曲げにくく、カートン製造時の加工性が劣った。なお、比較例12の場合、H45>H67となり、内フラップと外フラップの接着性がさらに劣った。
【0059】
なお、罫線R4、R5、R6、R7の幅が規定範囲を超えると、これら罫線に繋がるフラップとの折り曲げ性が劣って、これらフラップの角部の直線性が劣る。又、罫線R11、R12、R2、R3の幅が規定範囲を超えると、カートン20の長辺方向の罫線の直線性が劣る。いずれにせよ、罫線の直線性が劣ると、カートン不良が生じる。
【符号の説明】
【0060】
20 カートン
25 紙製品
201 頂面部
202 底面部
203 第1側面部
204 第2側面部
205 カートン糊付け部
206,206B 上面側外フラップ
207,207B 下面側外フラップ
208,208B 第1内フラップ
209,209B 第2内フラップ
R11,R12 第1罫線
R11 第3罫線からの距離が近い方の第1罫線
R12 第3罫線からの距離が遠い方の第1罫線
R2 第2罫線
R3 第3罫線
R4 第4罫線
R5 第5罫線
R6 第6罫線
R7 第7罫線
W45 第4罫線及び第5罫線の幅
H45 カートンの内面から内側へ向かう第4罫線及び第5罫線の高さ
t45 第4罫線及び第5罫線に隣接するカートンの厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12