(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684906
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】加熱硬化により色が変化する構造用接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20200413BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20200413BHJP
B62D 65/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
B62D65/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-526455(P2018-526455)
(86)(22)【出願日】2017年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2017024960
(87)【国際公開番号】WO2018008742
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2018年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-135992(P2016-135992)
(32)【優先日】2016年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108111
【氏名又は名称】セメダイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】村地 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】安藤 克利
【審査官】
澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−024380(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/123403(WO,A1)
【文献】
米国特許第04164492(US,A)
【文献】
特表2002−501955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱硬化により色が変化する構造用接着剤組成物であって、
(A)エポキシ樹脂、
(B)エポキシ樹脂潜在性硬化剤、及び
(C)モノアゾ顔料
を含み、
前記構造用接着剤組成物中のモノアゾ顔料の配合割合が0.01〜10質量%であり、
前記(C)モノアゾ顔料が、C.I.Pigment Red5である、構造用接着剤組成物。
【請求項2】
(D)硬化促進剤をさらに含む、請求項1に記載の構造用接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の構造用接着剤組成物を被着体に塗布し、加熱硬化する工程を含む、自動車構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法により製造されてなる自動車構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体やパーツなどを構造接着して自動車構造体を製造するのに用いられる、加熱硬化により色が変化する構造用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体パネルや車体パーツなどを接合して自動車構造体を製造するのに用いられる構造用接着剤組成物が知られている。
【0003】
構造用接着剤組成物は一般的に着色されているが、化学的安定性の観点からカーボンブラックや導電性カーボンなどのカーボン類、酸化チタン、酸化鉄などが一般的に用いられる(特許文献1)。これらは化学的に安定であるため硬化によって色が変化することはない。
【0004】
自動車の構造体を構成する被接着部を接着した接着剤が硬化したかどうかの判定は、通常、その接着剤のサンプルを別個に用意して行っていた。即ち、製造ラインを模した条件でサンプルを加熱して硬化したかを判定していた。
【0005】
例えば自動車製造ラインの不具合などで加熱が不十分であった場合、焼き付け炉の温度記録などからその温度条件でサンプルを硬化し試験することで充分硬化しているか判断する他なく、また、接着部位によって接着剤の加熱具合が異なるため判断が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-253131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、加熱硬化することによって変色する構造用接着剤組成物並びにそれを用いた自動車構造体の製造方法及び自動車構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の構造用接着剤組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂潜在性硬化剤、及び(C)モノアゾ顔料を含み、前記構造用接着剤組成物中のモノアゾ顔料の配合割合が0.01〜10質量%である、加熱硬化により色が変化する構造用接着剤組成物である。
【0009】
本発明の自動車構造体の製造方法は、前記構造用接着剤組成物を被着体に塗布し、加熱硬化する工程を含むものである。本発明の構造用接着剤組成物は、ウェルドボンド工法(接着剤とスポット溶接を併用した工法)に好適に使用できる。
【0010】
本発明の自動車構造体は、前記製造方法により製造されてなる自動車構造体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱硬化することによって変色するため、硬化状態を目視で判断できる構造用接着剤組成物並びにそれを用いた自動車構造体の製造方法及び自動車構造体を提供することができるという著大な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0013】
本発明の加熱硬化により色が変化する構造用接着剤組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂潜在性硬化剤、及び(C)モノアゾ顔料を含み、前記構造用接着剤組成物中のモノアゾ顔料の配合割合が0.01〜10質量%であるものである。
【0014】
前記成分(A)に用いられるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が100〜10000のものが使用でき、エポキシ当量が100〜5000の高分子量のエポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
前記エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂が適用可能である。例えば、ビスフェノール化合物、水素添加ビスフェノール化合物、フェノールまたはo−クレゾールノボラック、芳香族アミン、多環脂肪族或いは芳香族化合物等の既知の基本骨格の化合物のグリシジルエーテル置換体、シクロヘキセンオキシド骨格を有する化合物等が挙げられ、代表的なものとしては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及びその縮合物、即ち、いわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂が例示される。
【0016】
前記成分(B)のエポキシ樹脂潜在性硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂潜在性硬化剤が適用可能である。例えば、加熱により活性化されるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を、グアナミン類、グアニジン類、アミノグアニジン類、ウレア類、イミダゾール類、変性ポリアミン及びこれらの誘導体、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯体、有機酸ヒドラジッド、メラミンなどの群から選択して用いることができる。中でも広く用いられているジシアンジアミドが好ましい。なお前記成分(B)のエポキシ樹脂潜在性硬化剤の添加量は、マトリクスのエポキシ当量に応じて決定される。
【0017】
前記(B)エポキシ樹脂潜在性硬化剤の配合割合は特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して3〜12質量部が好ましく、8〜12質量部がより好ましい。
【0018】
前記成分(C)のモノアゾ顔料としては、公知のモノアゾ顔料が適用可能である。例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー49、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントレッド185、同213、同269、同146、同170及び同5が挙げられる。
【0019】
前記(C)モノアゾ顔料の配合割合は、前記構造用接着剤組成物中に0.01〜10質量%であり、0.05〜1質量%がより好ましい。
【0020】
本発明の構造用接着剤組成物は、(D)硬化促進剤を含有することが好適である。構造用接着剤組成物が(D)硬化促進剤を含有すると、構造用接着剤組成物中に含まれる潜在性硬化剤の硬化活性が向上する。そのような硬化促進剤としては、例えば、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(ジウロン)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体やイミダゾール誘導体、リン系化合物、第3級アミン、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。
【0021】
上記のような硬化促進剤を用いると、本発明の構造用接着剤組成物は、通常の硬化温度よりも低い温度で硬化するようになる。例えば、本発明の構造用接着剤組成物がエポキシ樹脂硬化剤としてジシアンジアミドを含有する場合、上記構造用接着剤組成物が硬化するには、通常170℃〜180℃程度の熱をかける必要があるのに対し、上記のような硬化促進剤を用いた場合には、80〜150℃程度の熱をかけるだけで硬化可能となる。なお、エポキシ樹脂潜在性硬化剤としてジシアンジアミドを用いた場合、硬化促進剤としては、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(ジウロン)が好適に用いられる。
【0022】
前記(D)硬化促進剤の配合割合は特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
【0023】
本発明の構造用接着剤組成物には、上記した成分に加えて、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、ウレタン樹脂、フィラー、希釈剤、シランカップリング剤などを添加してもよい。また、上記した成分に加えて、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルクなどの体質顔料(充填材)を添加することができる。またシリカ、微粒炭酸カルシウム、セピオライト等のチキソ材を添加してもよい。さらに剥離強度など接着性を改良する接着性改良剤として、アクリル樹脂を添加することもできる。
【0024】
本発明の構造用接着剤組成物は、加熱硬化により脱色し、白に変色する。例えば、モノアゾ顔料としてピグメントレッド5を用いた場合、加熱前は赤色である構造用接着剤組成物が、加熱硬化により脱色して白色に変化する。加熱処理を行っても未硬化の状態では変色しないため、硬化状態を目視で判断することができる。
【0025】
本発明の構造用接着剤組成物は、特に一液型として好適に使用できる。
【0026】
本発明の構造用接着剤組成物は、自動車の車体や自動車部品などのパーツなどを構造接着して自動車構造体を製造するのに用いられ、特に、スポット溶接と接着剤を併用した工法(ウェルドボンド工法)での接着に好適に用いられる。即ち、本発明の構造用接着剤組成物は、自動車の車体を接着するのにも好適に用いられる。
【0027】
本発明の自動車構造体の製造方法は、本発明の構造用接着剤組成物を被着体に塗布し、加熱硬化する工程を含む、自動車構造体の製造方法であって、好ましくは自動車製造ラインにおける製造方法である。本発明の構造用接着剤組成物を用いることにより、接着剤の硬化状態を接着剤の色の変化で知ることができるため、ラインの不具合で通常と異なる条件で焼き付けられた場合でも簡便に接着剤の硬化が判断できる。
【0028】
加熱硬化する工程における加熱温度としては、本発明の構造用接着剤組成物が硬化可能となる温度以上であれば特に制限はないが、140〜220℃が好ましく、160〜190℃がより好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0030】
(実施例1及び比較例1)
下記表1に示す質量部数の各成分を用いて、下記の手順で構造用接着剤組成物を製造した。5L万能混合攪拌機(株式会社ダルトン製)に各材料を配合し、30分間攪拌したあと、10分間減圧脱泡し、構造用接着剤組成物を調製した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1における材料は以下の通りである。
*1)「ダイハード100SH」AlzChem社製のジシアンジアミド
*2)「エピクロン B605-IM」DIC(株)製のジウロン
*3)「CCR」白石工業(株)製の表面処理炭酸カルシウム
*4)「NN500」日東粉化工業(株)製の炭酸カルシウム
*5)「TS-720」キャボットジャパン(株)製のシリカ
*6)「DER331」ダウ・ケミカル日本(株)製のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂
*7)「ET5R108レッド」大日精化工業(株)製のC.I.Pigment Red5のマスターバッチ
*8)「SD2944 ブラウン」日弘ビックス(株) 製の酸化第二鉄のマスターバッチ
【0033】
上記製造した実施例1及び比較例1の各構造用接着剤組成物を以下に示す性能試験に供し、結果を下記の表2に示す。
【0034】
(1)せん断強度
得られた構造用接着剤組成物に塗布厚さ0.1mmにて100mm×25mm×1.6mmの冷間圧延鋼板に塗布し、2枚の鋼板の重ね合わせを12.5mmとし、はみ出た構造用接着剤組成物を除去して剪断試験片を作成した。試験片を170℃20分保持、150℃10分保持および100℃20分保持の条件で加熱硬化した後、24時間放冷し、その後、万能引張り試験機を用いて50mm/分の引張り速度で試験を行った。せん断強度が20MPa以上のものを○、20MPa未満のものを×を判定した。
【0035】
(2)色の変化
焼き付け前後の接着剤組成物の色を目視で比較した。接着剤組成物が焼付けにより赤色から脱色して白色に変化しているものを○、変化していないものを×と判定した。
【0036】
【表2】
【0037】
実施例1では、せん断強度が良い結果の時には色が変化し、焼付けが不十分の時には色が変化しない結果となったが、比較例1では、焼付けによる変色は起こらない結果となった。