特許第6684914号(P6684914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6684914複数の電池セルを備えた電池モジュール、その製造方法、及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684914
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】複数の電池セルを備えた電池モジュール、その製造方法、及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20200413BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20200413BHJP
【FI】
   H01M2/10 S
   H01M10/647
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-540424(P2018-540424)
(86)(22)【出願日】2017年1月4日
(65)【公表番号】特表2019-508845(P2019-508845A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2017050119
(87)【国際公開番号】WO2017133856
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】102016201605.9
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】リードマン、マティウス
(72)【発明者】
【氏名】コーン、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ハーフェンブラーク、ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】グライナー、ダニエル ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー、クリスティアン
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−045578(JP,A)
【文献】 特表2013−545219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/647
H01M 10/6554
H01M 10/6557
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを含む電池モジュールであって、複数の隔壁(4)を有し、2つの隔壁(4)の間には電池セル(2)が配置されており、電池セル(2)と近接する2つの隔壁(4)の間には、バネ要素(6)がさらに配置されており、前記バネ要素(6)は、当該バネ要素(6)の歪み定数(12)の値が、2つの隔壁(4)から前記電池セル(2)へと伝達される力を決定するように、前記2つの隔壁(4)と結合して配置され、
前記電池モジュール(1)は複数のバネ要素(6)を有し、さらに長手方向(10)に、第1の範囲(13)及び第2の範囲(14)を有する、前記電池モジュールにおいて、
前記バネ要素(6)の前記歪み定数(12)の前記値は、前記第1の範囲(13)では前記電池モジュール(1)の前記長手方向(10)に増加し、及び/又は、前記第2の範囲(14)では前記電池モジュール(1)の前記長手方向(10)に減少することを特徴とする、電池モジュール。
【請求項2】
第1の電池セル(2)と近接する2つの隔壁(4)の間には、第1のバネ要素(6)が配置されており、
第2の電池セル(2)と近接する2つの隔壁(4)の間には、第2のバネ要素(6)が配置されている、前記電池モジュールにおいて、
前記第1のバネ要素(6)と前記第2のバネ要素(6)とは、異なる値の歪み定数(12)を有することを特徴とする、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記電池モジュール(1)は2つのエンドプレート(5)を有し、前記複数の電池セル(2)は、前記2つのエンドプレート(5)の間に配置される、前記電池モジュールにおいて、
前記2つのエンドプレート(5)は、前記複数の電池セル(2)を押圧するための力(8)を当該2つのエンドプレート(5)が伝達するように、少なくとも1つの締付要素(7)によって互いに連結されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記電池セル(2)は各々1つの電池セルハウジング(3)を形成する、前記電池モジュールにおいて、
少なくとも1つの電池セル(2)の前記電池セルハウジング(3)は、少なくとも1つの隔壁(4)を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
隣り合う2つの隔壁(4)は、それぞれの最も大きな側面が前記電池モジュール(1)の長手方向(1)に互いに隣り合った状態で、かつ互いに間隔(9)を置いて配置されており、前記電池セル(2)は各々角柱形状に形成され、前記電池モジュール(1)の前記長手方向(10)に、その最も大きな側面が互いに隣り合った状態で並置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記歪み定数(12)は、ばね定数、弾性係数、圧縮弾性率、又は粘性であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記第1の範囲(13)と前記第2の範囲(14)とは、稼働中に前記電池セル(2)の温度(11)が前記第1の範囲(13)では前記長手方向(10)に上昇し及び/又は前記第2の範囲(14)では前記長手方向(10)に低下するように、調整されることを特徴とする、請求項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記電池セルはリチウムイオン電池セルであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記バネ要素(6)は、引張バネ要素及び/又は圧力バネ要素であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の電池モジュールを備えた電池。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の電池モジュールを製造する方法であって、
第1の工程では、前記電池モジュール(1)が稼働する間の電池セル(2)の温度(11)が決定され、
第2の工程では、バネ要素(6)が前記電池モジュール(1)内に以下のように配置され、即ち、
バネ要素(6)は、当該バネ要素(6)と同じ2つの隔壁(4)の間に配置された電池セル(2)の決定された前記温度が、前記電池モジュールの長手方向(10)に先行するバネ要素(6)と同じ2つの隔壁(4)の間に配置された電池セル(2)の前記温度(11)よりも高い場合には、前記先行するバネ要素(6)と比較してより大きな値の歪み定数(12)を有するように、配置され、及び/又は、
バネ要素(6)は、当該バネ要素(6)と同じ2つの隔壁(4)の間に配置された電池セル(2)の決定された前記温度が、前記電池モジュールの長手方向(10)に先行するバネ要素(6)と同じ2つの隔壁(4)の間に配置された電池セル(2)の前記温度(11)よりも低い場合には、前記先行するバネ要素(6)と比較してより小さな値の歪み定数(12)を有するように、配置される、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、独立請求項の導入部に記載の、複数の電池セルを備えた電池モジュール及びその製造方法に関する。さらに、本発明の主題は、このような電池モジュールを備えた電池である。
【0002】
従来技術では、特にリチウムイオン電池等の電池が少なくとも電池モジュールから成り、又は有利に複数の電池モジュールから成ることが公知である。さらに、電池モジュールは、好適に複数の個別電池セルを有し、この複数の個別電池セルが互いに接続されて電池モジュールとなる。その際に、上記個別電池セルは互いに直列又は並列に接続されうる。
【0003】
個別電池セルでの充電及び放電過程による劣化プロセスによって、以下のような内部の力が引き起こされ、即ち、個別電池セルがライフサイクルの間一定の形状に留まらずに膨張と呼ばれるこのプロセスによって電池セルのハウジングが変形するようにする上記内部の力が引き起こされる。従って、これらのプロセスによって、劣化プロセスにより生じた内部の力を吸収し個別電池セルのハウジングの変形を制限することが可能な電池モジュールの形成が必要となる。変形を制限するための力を個別電池セル又はそのハウジングに印加することは、一般に押圧(Verpressung)と呼ばれる。個別電池セルの劣化速度は、特に、個別セルへの押圧とは反対方向の力によって決定され、その際に、劣化速度は、押圧力が増大するにつれて、技術的に関連する駆動領域において増大する。
【0004】
さらに、個々の電池セルは、稼働中に、電流が流れる際の自身の内部抵抗により加熱される。その際に、電池モジュールの電池セルでは温度分布が不均質であり、電池モジュールの中央にある電池セルは、電池モジュールの端に存在する電池セルほど良好な熱放出が可能ではないため、温度がより高い。個々の電池セルの劣化速度は、特に、個々の電池セルの温度によっても決定され、温度が上がるほど劣化速度が増大する。電池セルは温度が上がるほど早く劣化するため、温度分布が不均質な電池セルでは、劣化速度の分布も不均質であり、このことによって、電池モジュール全体の寿命が短くなることになりうる。なぜならば、電池モジュールの寿命は、最も早く劣化する電池セルによって決定されるからである。
【0005】
従来技術では、特に米国特許出願公開第2014/0023893号明細書において、電池セルが2つの隔壁の間に配置されており、個々の隔壁が当該個々の隔壁の弾性を決定する弾性要素を有することが開示されている。
【0006】
さらに、特開2008/124033号明細書には、2つの電池セルの間に弾性要素を配置することが開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数の電池セルを備える電池モジュール及びその製造方法には、バネ要素の歪み定数を介して個々の電池セルを押圧する力が調整可能であるという利点がある。特に、電池モジュールの個々の電池セルごとに、所望の押圧力が調整されうる。これにより、個々の電池セルの劣化速度に対して、当該電池セルを押圧する力とは反対方向の力を介して影響を与えることが可能である。
【0008】
本発明に基づいて、複数の電池セルを含む電池モジュールが提供され、電池セルは、特にリチウムイオン電池セルである。電池モジュールは複数の隔壁を有し、2つの隔壁の間には電池セルが配置されている。電池セルと近接する2つの隔壁の間には、バネ要素がさらに配置されている。特に、バネ要素は、引張バネ要素及び/又は圧力バネ要素として構成される。バネ要素は、当該バネ要素の歪み定数の値が、2つの隔壁により電池セルへと伝達される力を決定するように、2つの隔壁と接触及び/又は結合して配置されている。
【0009】
従属請求項に記載される措置によって、独立請求項に示される装置又は独立請求項に示される方法の有利な発展形態及び改良が可能である。
【0010】
電池セルがその間に配置される2つの隔壁は、間隔を互いにとって配置されている。その際に、特に上記間隔が狭まるにつれて、2つの隔壁の間に配置された電池セルを2つの隔壁により押圧する押圧力が増大する。バネ要素は、2つの隔壁と接触及び/又は結合して、当該2つの隔壁の間に配置されており、その際に、2つの隔壁の間隔を狭めるためには、歪み係数に依存した、バネ要素を変形させる力が必要である。換言すれば、このことは、2つの隔壁の間に配置された電池セルを押圧するために、2つの隔壁の間隔を狭めるために寄与する電池セルの方向を指す力が、2つの隔壁に対して印加されることを意味している。その際に、押圧のために印加される力に対して、電池セルの膨張に起因する力とバネ要素の復元力との双方が抗する。バネ要素の復元力は、バネ要素の歪み定数に依存するため、歪み定数の値を増加させることによって復元力を増大させることが可能であり、これにより、2つの隔壁に印加される力は不変の状態で、当該2つの隔壁の間の間隔が広げられ、これにより押圧力が低減される。これにより、特に、2つの隔壁に印加される力は一定のままで、歪み定数の値のみを用いて2つの隔壁の間隔が決定され、これにより、最終的に電池セルに作用する押圧力も決定されうる。
【0011】
第1の電池セルと近接する2つの隔壁の間には、第1のバネ要素が配置されており、第2の電池セルと近接する2つの隔壁の間には、第2のバネ要素が配置されている場合には有利である。その際に、第1のバネ要素と第2のバネ要素とは、好適に、異なる値の歪み定数を有する。これにより、第1の電池セルと第2の電池セルとが、異なる押圧力によって押圧されるということが可能である。これにより、第1の電池セル及び第2の電池セルの劣化速度は、例えば、以下のように調整することが可能であり、即ち、特に、第1の電池セルの温度と第2の電池セルの温度とが異なるため、温度に基づいて異なる速さで劣化する場合に、第1の電池セルと第2の電池セルとがライフサイクルに亘って類似した劣化状態を有するように、調整することが可能である。これにより、電池セルの異なる温度に起因する異なる劣化速度を、異なる押圧力によって均一になるよう調整することが可能である。その際に、温度がより高い電池セルが、当該電池セルと比べて温度がより低い電池セルよりも小さな押圧力によって押圧される。さらに、これにより、例えば製造に起因する既存の不均質な押圧状態、又は、電池モジュールの、弾性が異なるエンドプレート又は仕切り板により生じる既存の不均質な押圧状態を、均一になるよう調整することも可能である。
【0012】
電池モジュールが2つのエンドプレートを有し、複数の電池セルが2つのエンドプレートの間に配置され、かつ、特に複数の隔壁も2つのエンドプレートの間に配置されることは有利である。その際に、2つのエンドプレートは、複数の電池セルを押圧するための力を当該2つのエンドプレートが伝達するように、少なくとも1つの締付要素によって互いに連結される。これにより、電池モジュールの個々の電池セルを押圧するための力が、簡単なやり方で、2つのエンドプレートを介して印加され、その際に、電池セルと近接する2つの隔壁の間に配置された各バネ要素の歪み定数によって、バネ要素と同じ2つの隔壁の間に配置された電池セルを押圧する力が決定される。
【0013】
本発明の一観点によれば、電池セルは各々1つの電池セルハウジングを形成する。その際に、少なくとも1つの電池セルの電池セルハウジングは、少なくとも1つの隔壁を備える。特に、複数の電池セルの各電池セルが隔壁を備えることが可能である。これにより、電池セルの簡素な構造が可能である。
【0014】
隣り合う2つの隔壁は、それぞれの最も大きな側面が電池モジュールの長手方向に互いに隣り合った状態で、かつ互いに間隔を置いて配置されている。その際に、2つの隔壁の間にそれぞれ配置された電池セルは、好適に角柱形状に形成され、さらに、電池モジュールの長手方向に、その最も大きな側面が互いに隣り合った状態で並置されている場合には有利である。これにより、電池セルへの信頼性の高い押圧が可能である。なぜならば、隔壁は、その最も大きな側面が、電池セルの最も大きな側面と接触しており、これにより、押圧するための押圧力の確実な伝達を保証するからである。
【0015】
歪み定数が、ばね定数、弾性係数、圧縮弾性率、又は粘性であるには有利である。これにより、歪み定数が、物質に固有の変数として選択され、又は、バネ要素の構成により決定されうる。その際に、バネ要素は、純粋に弾性を帯びて構成されてもよく、又は、可塑的に変形可能な成分を含んでいてもよい。
【0016】
好適に、電池モジュールは、2つの隔壁の間に各々が配置された複数のバネ要素を有する。その際に、2つの隔壁の間には、例えば2つのバネ要素等の複数のバネ要素も存在する。電池モジュールはさらに、長手方向に、第1の範囲及び第2の範囲を有する。その際に、電池モジュールは、バネ要素の歪み定数の値が、第1の範囲では電池モジュールの長手方向に増加し、及び/又は、第2の範囲では電池モジュールの長手方向に減少するように、配置される。これにより、第1の範囲では電池モジュールの長手方向に、電池モジュールの長手方向に並置される個々の電池セルを押圧する力が低下する。さらに、第2の範囲では電池モジュールの長手方向に、電池モジュールの長手方向に並置される個々の電池セルを押圧する力が増大する。電池セルの劣化速度は押圧力に依存するため、これにより、押圧力に基づく劣化速度の不均一な分散が発生させられる。さらに、特に製造の起因し、又は電池モジュールの仕切り板若しくはエンドプレートの異なる弾性に起因し、又は個々の電池セルの製造公差によっても生じうる既存の不均質な押圧も、均質になるよう調整されうる。電池モジュールは、長手方向に第1の末端と第2の末端を有しており、ここでは、第1の末端又は第2の末端によって、電池モジュールの最端部に存在する電池セルが表される。さらに、電池モジュールは長手方向に中央の位置を有し、この中央の位置は、第1の末端と第2の末端との間の特に厳密に中央に存在する。好適に、第1の範囲は、電池モジュールの第1の末端と中央の位置との間の範囲を含み、第2の範囲は、電池モジュールの中央の位置と第2の末端との間の範囲を含む。
【0017】
好都合なことに、第1の範囲と第2の範囲とは、稼働中に電池セルの温度が第1の範囲では長手方向に上昇し及び/又は第2の範囲では長手方向に低下するように、調整される。これにより、個々の電池セルの劣化状態を均一に分散させることが可能となる。なぜならば、温度がより高い電池セルが、これと比べて温度がより低い電池セルよりも小さな力によって押圧されるからである。これにより、不均質な温度分布に起因する不均質な劣化であって、特に熱放出が様々な度合いで可能であることで生じる上記不均質な劣化が、2つの隔壁の間に配置されたバネ要素の様々な歪み係数に基づく不均質な押圧によって、均質になるよう調整されうる。
【0018】
ここで、電池セルを押圧する押圧力が、最小押圧力を下回ってはならないことに注意されたい。そうでなければ、アノード、セパレータ、及びカソードが互いにばらばらになる可能性があり、このことは、一般にデラミレーションとして知られている。デラミレーションに繋がる最小押圧力の未達によって、望まれることなく劣化が促進される可能性もある。
【0019】
さらに、本発明は、上記の電池セルを備えた電池に関する。
【0020】
本発明に基づいて、上記の電池モジュールを製造する方法も提供される。本方法では、第1の工程では、電池セルごとに、電池モジュールが稼働する間に電池セルが有する温度が決定される。この決定は、実験に基づく試験によっても、数値上のシミュレーションによっても行われうる。特に、上記決定は、電池モジュールの稼働中にも行われうる。特に、その際には、電池モジュールの中央にある電池セルの温度が電池モジュールの端にある電池セルよりも高いことが、第1次近似として土台に置かれ、その際に、図2は、電池モジュールの長手方向に亘る電池セルの温度推移を例示している。
第2の工程では、バネ要素が、電池モジュール内に以下のように配置され、即ち、バネ要素は、当該バネ要素と同じ2つの隔壁の間に配置された電池セルの決定された温度が、電池モジュールの長手方向に先行するバネ要素と同じ2つの隔壁の間に配置された電池セルの温度よりも高い場合には、上記先行するバネ要素と比較してより大きな値の歪み定数を有するように、配置される。
さらに、第2の工程では、バネ要素が、電池モジュール内に以下のように配置され、即ち、バネ要素は、当該バネ要素と同じ2つの隔壁の間に配置された電池セルの決定された温度が、電池モジュールの長手方向に先行するバネ要素と同じ2つの隔壁の間に配置された電池セルの温度よりも低い場合には、上記先行するバネ要素と比較してより小さな値の歪み定数を有するように、配置される。
これにより、不均質な温度分布に起因する電池セルの不均質な劣化を、押圧力を不均一に分散させることにより、少なくとも部分的に均質になるよう調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る電池モジュールの一実施形態の側面図を概略的に示す。
図2】電池モジュールの長手方向に亘る、稼働中の電池セルの温度推移及びバネ要素の歪み係数の値の推移を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明に係る電池モジュール1の一実施形態の側面図を概略的に示している。図1に示される電池モジュール1は、好適に、複数のバネ要素6を有する。
【0023】
電池モジュール1は、複数の電池セル2を有し、ここで、図1に示される電池モジュール1は、例えば7つの電池セル2を有する。好適に、電池セル2は、電池セルハウジング3を有し、この電池セルハウジング3の内部に、電池セル2のここでは図示されない電子部品が収容されている。
【0024】
さらに、電池モジュール1は複数の隔壁4をさらに有しており、ここでは、図1に示される電池モジュール1が例えば6つの隔壁4を有することが図1から分かる。特に図1から、電池セル2の数が、隔壁4の数よりも1つだけ多いことが分かる。
【0025】
さらに、電池モジュール1は、2つのエンドプレート5を有し、その際に、電池セル2及び隔壁4は、この2つのエンドプレート5の間に配置されている。特に、2つのエンドプレート5の間に配置された電池セル2と隔壁4とは交互に配置されており、図1から分かるように、符号10で示される電池モジュール1の長手方向に、電池セル2の後に隔壁4が来る。
【0026】
図1からさらに分かるように、電池セル2は2つの隔壁4の間に配置されており、又は、1つの隔壁4と、2つのエンドプレート5の一方と、の間に配置されている。電池セル2がその間に配置される2つの隔壁4は、間隔9によって互いに間隔が置かれおり、かつ、電池セル2がその間に配置される2つのエンドプレート5の一方と1つの隔壁4とは、間隔9によって互いに間隔が置かれている。2つの隔壁4、又は、2つのエンドプレート5の一方及び1つの隔壁4は、電池セル2を押圧するために必要な力を伝達する。即ち、間隔9が狭くなるほど、押圧力も増大する。
【0027】
2つの隔壁4の間、又は、1つの隔壁4と1つのエンドプレート5との間には、バネ要素6がさらに配置されている。特に、2つの隔壁4の間又は1つの隔壁4と1つのエンドプレート5との間にはそれぞれ、特に図1から分かるように、2つのバネ要素6が配置されうる。その際に、バネ要素6は、ひずみと印加される力との間の相関関係を記述する歪み定数を有する。ここで、バネ要素6は、当該バネ要素6がその間に配置される2つの隔壁4と接触及び/又は連結して、又は当該バネ要素6がその間に配置される1つの隔壁4及び2つのエンドプレート5の一方と接触及び/又は連結して、配置されている。図1に概略的に示す本発明に係る電池モジュール1の実施例において、バネ要素6のひずみとは、電池モジュール1の長手方向10における全長の変化量として理解されたい。
【0028】
バネ要素6の復元力は、バネ要素6の変形、特に電池モジュール1の長手方向10における全長の変化を妨げようとする。さらに、電池セル2の劣化過程に起因する膨張過程によって、間隔9を広げる力が生じる。バネ要素6の復元力と、膨張過程に起因する力とが並行して作用する。従って、電池セル2を押圧するためには、バネ要素6の復元力と電池セル2の膨張過程に起因する力との双方を抑制する必要がある。バネ要素6の歪み定数の値を上げることによって、押圧に抗する力を増大させることが可能であり、これにより間隔9も広げられ、従って電池セル2への押圧力が低下する。
【0029】
2つのエンドプレート5は、締付要素7によって互いに連結されている。これにより、2つのエンドプレート5の連結に基づいて、電池モジュール1の稼働中に個々の電池セル2が膨張した際には、2つのエンドプレート5の各々によって、符号8で示す上記膨張を抑制する力が印加される。さらに本発明の思想に基づいて、2つのエンドプレート5が互いに連結されておらず、膨張を抑制する力が他のやり方で印加されることも可能である。従って、個々の電池セル2を押圧するために必要な力8は、2つのエンドプレートによって印加される。2つの隔壁4の間に配置されたバネ要素6であって、様々な電池セル2に対して平行に接続された上記バネ要素6は各々、好適に異なる歪み定数を有するため、最終的には、2つの隔壁4の間の間隔9も互いに異なっている。間隔9によって、個々の電池セル2を押圧する力が決定されるため、個々の電池セル2は、バネ要素6の様々な歪み定数に基づいて、さらに異なる押圧力によって押圧される。歪み定数の値がより大きいバネ要素6は、歪み定数の値がより低いバネ要素6よりも低い程度に変形させられ、これにより、バネ要素6がその間に配置される2つの隔壁4は、様々な間隔9を有する。
【0030】
図1に示す実施例によれば、2つのエンドプレート5は締付要素7によって互いに締め付けられているため、2つのエンドプレート5の間の間隔は好適に一定である。当然のことながら、上記間隔が少なくとも部分的に可変的であるようにエンドプレート5を互いに締め付けることも可能である。2つのエンドプレート5の間の特に一定の間隔に基づいて、図1に示す実施例では、個々の間隔9は互いに独立してはいない。基本的には、歪み定数の値がより大きいバネ要素6がその間に配置されている2つの隔壁4が、歪み定数の値がより小さいバネ要素6がその間に配置されている2つの隔壁4よりも大きな間隔9を有すると言える。2つの歪み定数同士の比は、各バネ要素6により決定される間隔9同士の比に対応するとほぼ見做されうる。
【0031】
図2は、電池モジュール1の長手方向10に亘る、稼働中の電池セル2の温度推移及びバネ要素6の歪み係数の値の推移を例示する。
【0032】
これについて、図2には、符号10で示す電池モジュール1の長手方向に亘って、温度11の推移と、歪み定数12の値が示されている。
【0033】
ここでは、電池モジュール1の稼働中の個々の電池セル2の温度11が、第1の範囲13では長手方向10に上昇し、第2の範囲14では長手方向10に低下していることが分かる。
【0034】
さらに、歪み定数12の値が、第1の範囲13では長手方向10に増加し第2の範囲では長手方向10に減少するように、調整されていることが図2から分かる。
【0035】
特に、温度11の推移及び/又は歪み定数12l値の推移は、ほぼ放物線状の性質を有し、放物線の頂点は、電池モジュール1の長手方向10の中央の位置15に存在する。
【0036】
本発明によれば、温度11の推移が電池モジュール1の稼働前に決定され、及び、歪み定数12の値の推移が以下のように調整され、即ち、温度11に起因する不均質な劣化速度が、歪み定数12の値を不均一に分散させることに基づく押圧力の不均一な分散によって均一になるように、調整されることが構想される。これは全く、複数の第1の範囲13及び複数の第2の範囲14を含む推移であって、複数の最大値及び最小値を有する上記推移であってもよい。
図1
図2