(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
治療上有効量のトラメチニブを含む医薬組成物と組み合わせて使用される、治療上有効用量のダブラフェニブを含む、黒色腫の従前の診断を有し、該黒色腫が切除されている患者にアジュバント治療を提供するための医薬組成物。
治療上有効量のダブラフェニブを含む医薬組成物と組み合わせて使用される、治療上有効用量のトラメチニブを含む、黒色腫の従前の診断を有し、該黒色腫が切除されている患者にアジュバント治療を提供するための医薬組成物。
患者がBRAF V600変異陽性黒色腫の従前の診断を有し、該BRAF V600変異陽性黒色腫が切除されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、a)ダブラフェニブおよびb)トラメチニブの投与を含んでなる、黒色腫の切除後に無再発生存期間(RFS)を増加させる方法が提供される。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、黒色腫の切除後の無再発生存期間(RFS)の増加において使用するための、ダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせが提供される。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、患者はステージIII黒色腫の従前の診断を有し、その原発腫瘍が切除されている。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、患者はBRAF V600変異陽性黒色腫の従前の診断を有し、前記BRAF V600変異陽性黒色腫が切除されている。
【0013】
別の実施形態によれば、患者はステージIII BRAF V600変異陽性黒色腫を有し、前記ステージIII BRAF V600変異陽性黒色腫が切除されている。
【0014】
発明の詳細な説明
RAS/RAF/MEK/ERK経路(すなわちMAPキナーゼ経路)は、黒色腫を含む多くのヒト癌において重要な増殖経路である。MEK1およびMEK2によるBRAFシグナルにおける発癌性突然変異およびこの発癌性突然変異の発生は初期事象である。この研究は、2種類の小分子経口剤、ダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせを評価する。ダブラフェニブは、ヒト野生型BRAF酵素およびCRAF酵素ならびにBRAFV600E変異型、BRAFV600K変異型およびBRAFV600D変異型の強力かつ選択的なRAFキナーゼ阻害剤である。ダブラフェニブの作用機序は、アデノシン三リン酸(ATP)結合の拮抗阻害と一致する。対照的に、トラメチニブは、可逆性の、高度に選択的な、MEK1およびMEK2のアロステリック阻害剤である。トラメチニブはATPに対して非拮抗的であり、MEK活性化とキナーゼ活性の両方を阻害する。BRAFとMEKは同一経路内にあり、またMEKは活性化BRAFおよびBRAF阻害の存在下で活性化され得る他のキナーゼの基質であるため、両タンパク質を個別にではなく同時に阻害することによって、より効果的な経路阻害を提供することが可能となり、さらにまた耐性を生じる可能性を低下させることもできた。
【0015】
BRAF阻害剤とMEK阻害剤の組み合わせを用いた予備的臨床経験は、細胞株モデル、マウス異種移植モデル、およびラットの安全性モデルにおいて作成されたデータと共に、BRAF阻害剤のみを用いた治療と比較して、効力の亢進効果および毒性の低下(例えば増殖性皮膚病変の低下またはRAS変異を含む細胞の増殖刺激の低下)を示唆する。
【0016】
本明細書中で使用される用語「ダブラフェニブ」は、式(II)の構造式:
【0017】
【化1】
によって表されるB-Raf阻害剤またはその製薬上許容される塩を意味する。
【0018】
ダブラフェニブは、好ましくはそのメシラート塩(N-{3-[5-(2-アミノ-4-ピリミジニル)-2-(1,1-ジメチルエチル)-1,3-チアゾール-4-イル]-2-フルオロフェニル}-2,6-ジフルオロベンゼンスルホンアミドメタンスルホネートなど)として投与される。
【0019】
ダブラフェニブは、その製薬上許容される塩と共に、PCT特許公開公報WO2009/137391中で、特に癌の治療においてBRaf活性の阻害剤として有用であると開示されかつ請求されている。ダブラフェニブは、上記出願の実施例58a〜実施例58eによって具体化されている。
【0020】
ダブラフェニブは、強力かつ選択的な、ヒト野生型BRAF酵素およびCRAF酵素ならびにBRAFV600E変異型、BRAFV600K変異型およびBRAFV600D変異型のRAFキナーゼ阻害剤である。従って、本発明の一実施形態は、BRAFV600E、BRAFV600K、および/またはBRAFV600D変異陽性黒色腫を有する患者のアジュバント治療を含む。
【0021】
本明細書中で使用される用語「トラメチニブ」は、式(I)の構造式:
【0022】
【化2】
によって表されるMEK阻害剤、またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物を意味する。トラメチニブは、好ましくはN-{3-[3-シクロプロピル-5-(2-フルオロ-4-ヨード-フェニルアミノ)-6,8-ジメチル-2,4,7-トリオキソ-3,4,6,7-テトラヒドロ-2H-ピリド[4,3-d]ピリミジン-1-イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド(溶媒和物)の形態の溶媒和物として投与される。命名法により、式(I)の化合物は、正式にN-{3-[3-シクロプロピル-5-[(2-フルオロ-4-ヨードフェニル)アミノ]-6,8-ジメチル-2,4,7-トリオキソ-3,4,6,7-テトラヒドロピリド[4,3-d]ピリミジン-1(2H)-イル]フェニル}アセトアミドと称してもよい。
【0023】
トラメチニブは、その製薬上許容される塩と共に、またその溶媒和物として、特に癌の治療において、MEK活性の阻害剤として有用であるとWO 2005/121142中に開示されかつ請求される。トラメチニブは、WO 2005/121142中に記載されるとおりに調製することができる。
【0024】
好適には、トラメチニブは、ジメチルスルホキシド溶媒和物の形態である。好適には、トラメチニブはナトリウム塩の形態である。好適には、トラメチニブは、以下のものから選択される溶媒和物の形態である:水和物、酢酸、エタノール、ニトロメタン、クロロベンゼン、1-ペンタンコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールおよび3-メチル-1-ブタノール。これらの溶媒和物および塩形態は、WO 2005/121142中の記載から、当業者により調製され得る。
【0025】
本明細書で使用される「切除」は、ヒト患者からの、黒色腫に特徴的な悪性組織の外科的除去を意味すると理解されたい。一実施形態によれば、切除は、前記患者中に残存する悪性組織の存在が利用可能な方法では検出できないような悪性組織の除去を意味すると理解されるものとする。本発明の別の実施形態によれば、切除は、前記患者中に残存する黒色腫の存在が検出できないような黒色腫の除去を意味すると理解されるものとする。
【0026】
本明細書で使用される「治療」または「アジュバント治療」は、再発の可能性または疾患の重症度を減少させるための、または疾患の再発の生物学的症状の発症を遅らせるための、1つ以上の癌性腫瘍の外科切除(全ての検出可能かつ切除可能な疾患(例えば癌)が患者から除去されるが、潜在的疾患による再発の統計的リスクが残る)後の、前記患者への薬(1種または複数種)の投与を指すと理解されたい。
【0027】
本明細書で使用される用語「有効量」は、例えば治験責任医師または臨床医によって探究される、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する薬または医薬品の量を意味する。さらに、用語「治療上有効量」は、かかる量を投与されていない対応する被験者と比較して、疾患、障害もしくは副作用の治療、治癒、予防、もしくは寛解の改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらす任意の量を意味する。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理的機能を亢進するために有効な量も包含する。
【0028】
治療における使用のため、ダブラフェニブとトラメチニブを未加工の化学物質として投与することができるが、他方、本活性成分を医薬組成物として提供することができる。従って、本発明はさらに、ダブラフェニブおよび/またはトラメチニブと、1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。担体(1種もしくは複数種)、希釈剤(1種もしくは複数種)または賦形剤(1種もしくは複数種)は、製剤の他の成分と適合し、医薬製剤となることが可能であり、さらにその受容者に対して有害ではないという意味で許容可能でなければならない。本発明の別の態様に従って、ダブラフェニブおよび/またはトラメチニブを1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合するステップを含む、医薬組成物の調製方法も提供される。使用される医薬組成物のこのような成分は、別々の医薬組み合わせとして提供されてもよいし、一緒に1つの医薬組成物に製剤化することもできる。従って、本発明はさらに医薬組成物の組み合わせを提供し、その医薬組成物の1つはトラメチニブと1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含み、また1つの医薬組成物はダブラフェニブと1種以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含有する。
【0029】
ダブラフェニブおよび/またはトラメチニブは、任意の適切な経路によって投与することができる。好適な経路として、経口、直腸、経鼻、局所(例えば口腔および舌下など)、膣内、ならびに非経口(例えば皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内、および硬膜外など)が挙げられる。当然のことながら、好ましい経路は、例えば、本組み合わせの受容者の症状および治療対象の癌によって異なり得る。また当然のことながら、投与される薬剤の各々は、同一経路または異なる経路によって投与されてよく、複数の化合物を1つの医薬組成物に一緒に組み合わせることができる。
【0030】
ダブラフェニブとトラメチニブは、両化合物を含む単一の医薬組成物として同時に投与することにより、本発明に従って組み合わせて用いることができる。別法として、上記の組み合わせは、別個の医薬組成物(各々がダブラフェニブとトラメチニブのうちの1つを含む)として、逐次的方法で(例えば、トラメチニブまたはダブラフェニブが最初に投与され、他方が2番目に投与される)別々に投与することができる。このような逐次的投与は、時間的に近くてもよいし(例えば同時に)、時間的に離れていてもよい。さらに、両化合物が同一剤形で投与されているか否かは問題ではなく、例えば、1つの化合物が局所投与され、他方の化合物が経口投与されてもよい。好適には、両化合物は経口的に投与される。従って、一実施形態において、1種以上の用量のトラメチニブが1種以上の用量のダブラフェニブと同時にまたは別々に投与される。
【0031】
好適には、本発明による組み合わせの一部として投与されるトラメチニブの量(非塩/非溶媒和物量の重量に基づく)は、約0.125mg〜約10mgから選択される量であり;好適には、上記の量は、約0.25mg〜約9mgから選択され;好適には、上記の量は、約0.25mg〜約8mgから選択され;好適には、上記の量は、約0.5mg〜約8mgから選択され;好適には、上記の量は、約0.5mg〜約7mgから選択され;好適には、上記の量は、約1mg〜約7mgから選択され;好適には、上記の量は約5mgである。従って、本発明による組み合わせの一部として投与されるトラメチニブの量は、約0.125mg〜約10mgから選択される量である。例えば、本発明による組み合わせの一部として投与されるトラメチニブの量は、0.125mg、0.25mg、0.5mg、0.75mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mgであり得る。
【0032】
好適には、本発明による組み合わせの一部として投与されるダブラフェニブの量(非塩/非溶媒和物量の重量に基づく)は、約10mg〜約600mgから選択される量である。好適には、上記の量は、約30mg〜約300mgから選択され;好適には、上記の量は、約30mg〜約280mgから選択され;好適には、上記の量は、約40mg〜約260mgから選択され;好適には、上記の量は、約60mg〜約240mgから選択され;好適には、上記の量は、約80mg〜約220mgから選択され;好適には、上記の量は、約90mg〜約210mgから選択され;好適には、上記の量は、約100mg〜約200mgから選択され、好適には、上記の量は、約110mg〜約190mgから選択され、好適には、上記の量は、約120mg〜約180mgから選択され、好適には、上記の量は、約130mg〜約170mgから選択され、好適には、上記の量は、約140mg〜約160mgから選択され、好適には、上記の量は150mgである。従って、本発明による組み合わせの一部として投与されるダブラフェニブの量は、約10mg〜約300mgから選択される量である。例えば、本発明による組み合わせの一部として投与されるダブラフェニブの量は、好適には、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、205mg、210mg、215mg、220mg、225mg、230mg、235mg、240mg、245mg、250mg、255mg、260mg、265mg、270mg、275mg、280mg、285mg、290mg、295mgおよび300mgから選択される。好適には、選択された量のダブラフェニブが1日1〜4回投与される。好適には、選択された量のダブラフェニブが1日2回投与される。好適には、ダブラフェニブが1日2回150mgの量で投与される。好適には、選択された量のダブラフェニブが1日1回投与される。
【0033】
別の実施形態において、本発明の組み合わせは、癌治療の他の治療法と一緒に用いてよい。特に、抗腫瘍治療において、他の化学治療剤、ホルモン剤、抗体剤ならびに上記に挙げたもの以外の外科的治療および/または放射線治療との組み合わせ治療が想定される。従って、本発明による組み合わせ治療は、トラメチニブとダブラフェニブの投与ならびに他の治療剤(他の抗腫瘍剤を含む)の選択的使用を含む。薬剤のこのような組み合わせは、一緒にまたは別々に投与することが可能であり、また別々に投与する場合、投与は同時に、または任意の順序で(時間的に近くにおよび時間的に遠くに)連続的に行うことができる。一実施形態において、上記の医薬組み合わせは、トラメチニブとダブラフェニブ、さらに場合により少なくとも1種のさらなる抗腫瘍剤を含む。
【0034】
背景
皮膚黒色腫は、あらゆる皮膚癌の中で最も侵攻型である。皮膚黒色腫は全ての癌のわずか4%にすぎないが、その発生率は、世界中で他の全ての癌を上回る速度で上昇し続けている(Jemal、2007)。世界的に、毎年約132,000人の人々が黒色腫と診断されると予想され、さらに毎年約37,000人の人々がこの疾患で死亡すると予想される(WHO、2012)。
【0035】
外科切除は、限局性黒色腫に対する最適な治療法であり、初期ステージ(IおよびII)疾患については治癒する場合が多く、ステージI疾患については長期(10年)生存率が90%である(Balch、2009)。しかし、≧1mmのリンパ節転移(センチネルリンパ節生検によってのみ検出されるリンパ節転移を含む)を有する患者は、診察時に遠隔微小転移疾患が頻繁に存在するため、根治手術後の局所再発および遠隔再発の両方の危険性が高い(Kirkwood, 2001;Van Akkooi、2009)。
【0036】
これらの患者の約半数は、最終的には転移性疾患で死亡し(Markovic、2007)、また制御不能な再発に由来する罹患率も相当高い。従って、高リスク患者に対して原発腫瘍の外科切除後の疾患の再発を予防するための効果的なアジュバント治療を行う必要性がある。
【0037】
近年、転移性黒色腫の新たな治療法は著しく進歩したが、アジュバント設定における治療選択肢は依然として限定されている。多数の薬剤が黒色腫のアジュバント治療の潜在的な治療法として評価されたが、そのほぼ全てがわずかな利益しか示さなかったかまたは利益を示さなかった(Schuchter、2004)。米国国立総合癌ネットワーク(NCCN)の黒色腫の治療ガイドラインは、黒色腫のアジュバント治療の3つの治療選択肢として臨床試験、観察およびインターフェロンを推奨し、臨床試験を好ましいと推奨する(NCCN、2012)。現在、高用量インターフェロンは、黒色腫のアジュバント治療について唯一認可された治療法であるが、この治療は標準治療として広く受け入れられてはいない。疑問の余地がある生存率を取り巻く証拠の増加、重篤な毒性の高発生率、および比較的巨大な病変を有する患者に対する利益がごくわずかであることが、高用量インターフェロン治療を大部分の患者と臨床医にとって魅力的でない治療法としている(Schuchter、2004)。従って、より効果的な、アジュバント設定における許容可能な安全性プロファイルを有する治療法に対する必要性がある。
【0038】
研究デザイン
この研究は、外科切除後の黒色腫のアジュバント治療における、2種類のプラセボに対する、トラメチニブと組み合わせたダブラフェニブの二群、無作為化、二重盲検フェーズIII研究である。完全に切除され、組織学的に確認されたBRAF V600E/K変異陽性の高リスクの[ステージIIIa(>1mmのリンパ節転移)、IIIbまたはIIIc]皮膚黒色腫を有する患者を、適格性についてスクリーニングする。約852人の被験者は、1:1の比で無作為化され、ダブラフェニブ(1日2回(BID)150mg)とトラメチニブ(1日1回2mg)の組み合わせ治療または2種類のプラセボのいずれかの投与を各々12ヶ月間受ける。
【0039】
研究治療の用量は、研究治療に伴う毒性の管理のために修正しおよび/または分割することができる。
【0040】
プラセボと比較したダブラフェニブ/トラメチニブ組み合わせの利益は、治験責任医師により評価される無再発生存期間(RFS)の主要評価項目により評価される。交差は認められない。
【0041】
両群の被験者は、12ヶ月間、または疾患再発、死亡、許容不能な毒性、もしくは同意の撤回まで治療を受ける。被験者は、治療期間中および治療期間後の疾患再発および生存について追跡される。
【0042】
この研究の主要目標は、完全に切除され、組織学的に確認されたBRAF V600E/K高リスクのステージIII皮膚黒色腫を有する患者における無再発生存期間(RFS)に関して、2種類のプラセボと比較したダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせ治療の有効性を評価することである。第2の有効性目標として以下のものが挙げられる:
・ ダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせ治療の全生存期間(OS)をプラセボと比較して評価すること
・ 無遠隔転移生存期間(DMFS)を評価すること
・ 無再発生存(FFR)を評価すること。
【0043】
デザインの考察
アジュバント治療の最終目標は、潜在的な微小転移疾患の根絶により手術後の治癒率を高めることである。腫瘍学において、進行期疾患(例えば、乳癌、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、胚芽腫、骨肉腫)に対して極めて効果的な治療が利用可能であった場合に注目に値する成功が達成された。高リスクの、切除されたBRAF V600E/K変異陽性黒色腫は、1) 患者集団はさらなる治療を行わない場合に再発および死亡の危険性が高い;2) BRAF/MEKの組み合わせは極めて効果的でありかつこの組み合わせから利益を受ける可能性が高い患者集団をターゲットとすることができる、さらに3) ダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせは少なくとも細胞傷害性化学治療または高用量インターフェロンと同程度に耐容性良好であり、これにより研究目標を満たす場合に許容可能なリスク:利益比を有するものでなければならないことから、このパラダイムを試験するためのもう1つの興味深い設定を示す。
【0044】
この研究は、抗腫瘍効果の直接測度であるRFSに関して、2種類のプラセボに対してダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせを比較するためにデザインされる。RFSは、歴史的先例に基づいて主要評価項目として選択され(ペグインターフェロンアルファ-2b、シラトロン(Sylatron))、またRFSは後続の治療に由来する交絡を受けないため、OSも同様に後続の治療に由来する交絡を受けないだろう。再発は、相当に高い疾患関連罹患率および治療関連罹患率を伴うため、RFSは患者の利益の真の尺度である。
【実施例】
【0045】
被験者選択および中止/完了基準
約852人の被験者は、組み合わせ治療群(n=426)とプラセボ群(n=426)に1:1に無作為化される。
【0046】
包含基準
研究への登録に適格な被験者は、以下の基準を満たさなければならない:
【0047】
1. ≧18歳である。
【0048】
2. 書面によるインフォームドコンセントにサインした。
【0049】
3. bioMerieux(bMX)調査専用(IUO)THxID BRAFアッセイ(IDE:G120011)を使用して、完全に切除され、組織学的に確認された高リスク[ステージIIIa(LN転移>1mm)、IIIbまたはIIIc]皮膚黒色腫がV600E/K変異陽性であると決定された。試験は、中央参照検査室により実施される。ステージIまたはII黒色腫の診断後に、初期の切除可能なリンパ節の再発を示す患者が適格である。
【0050】
4. 無作為化前12週間以降に外科的に疾患を有さない状態にされていなければならない。
【0051】
5. 根治手術から回復した(例えば、制御不能な創傷感染症または留置ドレーンを有さない)。
【0052】
6. 嚥下が可能でかつ経口投薬を維持することが可能であり、吸収を変化させ得る任意の臨床的に有意な胃腸の異常(例えば吸収不良症候群または胃もしくは腸の広範な切除)を有していてはならない。
【0053】
7. Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG) Performance Statusが0-1である。
【0054】
8. 表1に定義される十分な臓器機能を有していなければならない:
【0055】
【表1】
【0056】
9. 妊娠の可能性がある女性は、研究治療の初回投与前7日間以内に血清妊娠検査が陰性であり、無作為化の14日前から治療期間を通してさらに研究治療の最終投与後4ヶ月間、効果的な避妊法の使用に同意していなければならない。
【0057】
10. フランス人被験者:フランスでは、被験者は、社会保障カテゴリーに加入しているかまたは社会保障カテゴリーの受益者である場合にのみ本研究への包含に適格である。
【0058】
除外基準
【0059】
以下の基準のいずれかを満たす被験者は、本研究に登録されてはならない:
【0060】
1. 粘膜黒色腫もしくは眼内黒色腫または切除不能な移行中の転移の存在が既知である。
【0061】
2. スクリーニング評価における遠隔転移性疾患の証拠。
【0062】
3. 黒色腫のための、従前の全身性抗癌治療(化学治療、免疫治療、生物学的治療、ワクチン治療、または治験治療)および放射線治療。黒色腫のための従前の手術は許容される。
【0063】
4. 無作為化前の28日間以内または5半減期以内(どちらか長い方)に治験薬を服用した。
【0064】
5. 禁制薬の現在のまたは予想される使用。
【0065】
6. 研究治療、それらの賦形剤、および/またはジメチルスルホキシド(DMSO)に化学的に関連した、薬に対する即時型または遅延型の過敏性反応または特異体質を有していることが既知である。
【0066】
7. ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を有することが既知である。
【0067】
8. グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)欠損症の病歴を有することが既知である。
【0068】
9. 別の悪性腫瘍(黒色腫を含む)または同時悪性腫瘍の病歴(以下に言及されるものを除く):
例外:5年間無疾患の被験者、または完全に切除された非黒色腫皮膚癌もしくは成功裏に治療されたin situ上皮性悪性腫瘍の病歴を有する被験者(例えば、患者が>5年間、in situの子宮頸癌、in situの異型メラニン細胞過形成もしくはin situの黒色腫、多発性原発性黒色腫、または他の悪性腫瘍の疾患を有していない)が適格である。
【0069】
10. 以下のいずれかを含む心血管リスクの病歴または証拠:
a. Bazettの式を用いて心拍数について補正したQT間隔(QTcB)≧480ミリ秒;
b. 現在の臨床的に有意な制御不能な不整脈の病歴または証拠;
c. 無作為化前6ヶ月間以内の急性冠状動脈症候群(心筋梗塞もしくは不安定狭心症を含む)、冠状動脈血管形成、またはステント留置の病歴;
d. 現在の、ニューヨーク心臓協会(NYHA)ガイドラインにより定義される
3クラスIIの鬱血性心不全の病歴または証拠;
e. 心臓内除細動器または永久ペースメーカーを有する患者;
f. 心エコー図によって実証される異常な心臓弁形態(≧グレード2)(グレード1の異常[すなわち軽度の逆流/狭窄]を有する被験者は研究に入れることができる)。中程度の弁膜肥厚を有する被験者は、研究に入れるべきではない;
g. 抗高血圧治療によっては制御できない収縮期>140mmHgおよび/または拡張期>90mmHgの血圧として定義される治療難治性高血圧。
【0070】
11. 網膜静脈閉塞(RVO)または中心性漿液性網膜症(CSR)の病歴または現在の証拠/リスク、例えば以下のものが挙げられる:
a. RVOまたはCSR(例えば、制御不能な緑内障または高眼圧症、制御不能な高血圧、制御不能な糖尿病、または過粘稠もしくは過凝固症候群の病歴)の素因の存在;あるいは
b. 眼科検査によって評価される、RVOまたはCSRのリスク因子と考えられる目視可能な網膜病変、例えば:
i. 新たな視神経乳頭陥凹の証拠;
ii. 自動視野計測上の新たな視野欠損の証拠;
iii. トノグラフィーによって測定される>21mmHgの眼圧。
【0071】
12. 間質性肺疾患または肺臓炎。
【0072】
13. 任意の深刻なまたは不安定な既存の医学的状態(上記で特定した悪性腫瘍の例外を除く)、精神障害、または治験責任医師の考えでは被験者の安全を妨げる可能性がある他の状態(インフォームドコンセントを得るかまたは研究手順の順守を得る)。
【0073】
14. 妊婦または授乳婦。
【0074】
研究治療の恒久的中止および被験者完了の基準
被験者は、12ヶ月間または疾患再発まで研究治療を受ける。プロトコルに規定された治療期間中、研究治療(1つまたは複数)は以下の理由によって恒久的に中止することができる:
・ 死亡
・ 許容不能な有害事象(例えば、肝臓化学反応(liver chemistry)ならびに/または血液学的毒性および他の非血液学的毒性の停止基準への適合など)
・ プロトコルからの逸脱(1つまたは複数)
・ 被験者または代理人の請求
・ 治験責任医師の裁量
・ 被験者が追跡不能
・ 研究が閉鎖されるかまたは終了する。
【0075】
12ヶ月の治療期間が完了する前に疾患が再発する場合、研究治療を中止し、追跡評価を行わなければならない。疾患再発の証拠を有していない、研究治療を恒久的に中止する被験者も全て、プロトコルスケジュールに従って、疾患再発について以下の時点まで追跡される:
・ 同意の撤回
・ 死亡、または
・ 研究完了
【0076】
追跡は、疾患再発を有する被験者を含む全ての被験者について、本研究が完了したとみなされるまで継続し、その後プロトコルが要求する評価および手順は全て中止される。
【0077】
研究治療中または追跡期間中に被験者が死亡する場合、その被験者は、研究を完了したとみなされる。被験者が死亡しておらず追跡不能となった場合、同意を撤回した場合、治験責任医師の裁量に従わない場合、または研究が閉鎖され/終了する場合には、被験者は研究から離脱したとみなされる。研究が閉鎖され/終了する時点で継続している被験者は、研究を完了したとみなされる。
【0078】
研究評価
【0079】
被験者は、スクリーニングにおいて、また治療中および治療後の追跡期間中に、コンピューター断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像像法(MRI)により評価される。臨床的評価(例えばバイタルサインおよび身体検査、12誘導心電図(ECG)、心エコー(ECHO)、目の検査、化学および血液検査値、ならびに有害事象(AE)など)がモニターされさらに評価される。また被験者は生存についても追跡される。
【0080】
研究治療
【0081】
被験者は、研究期間中一貫した独自の被験者番号によって識別される。
【0082】
全ての必要なスクリーニング評価の完了時に、適格な被験者は、治験責任医師または権限を与えられた現場スタッフによってGSK対話型音声応答システム(IVRS)に登録される。
【0083】
無作為化は、GSK生物統計部(Biostatistical Department)によって作成された無作為化スケジュールを中心的に使用して行われるが、これは被験者を
・ ダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせ治療;
・ ダブラフェニブと、トラメチニブのプラセボ
に1:1の比で割り当てるものである。
【0084】
盲検化
【0085】
研究治療は二重盲検される。
【0086】
用量修正ガイドライン
有害事象の重症度は、米国国立癌研究所(NCI)の有害事象共通用語基準(CTCAE)第4.0版を用いて格付けされる。有害事象または深刻な有害事象(1つもしくは複数)においては、支持的ガイドラインおよび用量修正ガイドライン(例えば薬終了および再開基準など)が治験責任医師に提供される。薬-薬相互作用および過量情報もまた治験責任医師に提供される。
【0087】
評価項目
【0088】
この研究の主要有効性評価項目は、無作為化から疾患再発または任意の原因による死亡までの時間として定義される無再発期間(RFS)である。同じ癌の再発または同じ癌による死亡および他の原因による全ての死亡は事象である。治療下で発現した悪性腫瘍(第2の黒色腫を除く)は事象としてはみなされず、追跡の喪失が検閲される。
【0089】
この研究の副次的有効性評価項目は以下のとおりである:
・ 無作為化から死亡日(死因に関わらず)までの間隔として定義される全生存期間(OS);生存している患者は最終接触日に検閲される。
・ 無作為化から最初の遠隔転移日または死亡日(どちらか先に起こる方)までの間隔として定義される無遠隔転移生存期間(DMFS)。生存しておりかつ遠隔転移を有していない患者は最終評価日に検閲される。
・ 無作為化から局所再発もしくは遠隔再発または新たな黒色腫の原発までの間隔として定義される無再発期間(FFR)、黒色腫以外の原因または治療関連毒性により死亡する患者の死亡日における検閲を伴う。新たな黒色腫の発生は、一事象として見なされない。再発せずに生存している患者または第2の原発癌を有する患者は、最終評価日に検閲される。
本発明は、以下の態様を含む。
[項1]
黒色腫の従前の診断を有し、該黒色腫が切除されている患者にアジュバント治療を提供するための、治療上有効用量のダブラフェニブおよびトラメチニブを含む、医薬組成物。
[項2]
ダブラフェニブが1日2回150mgの量で投与される、項1に記載の医薬組成物。
[項3]
トラメチニブが1日1回2mgの量で投与される、項1に記載の医薬組成物。
[項4]
患者がステージIII黒色腫の従前の診断を有し、該ステージIII黒色腫が切除されている、項1に記載の医薬組成物。
[項5]
患者がBRAF V600変異陽性黒色腫の従前の診断を有し、該BRAF V600変異陽性黒色腫が切除されている、項1に記載の医薬組成物。
[項6]
黒色腫の切除後の患者の無再発生存期間(RFS)を増加させるための、ダブラフェニブとトラメチニブを含んでなる、医薬組成物。
[項7]
前記黒色腫がBRAF V600変異陽性である、項6に記載の医薬組成物。
[項8]
黒色腫の切除後の患者における無再発生存期間(RFS)の増加において使用するための、ダブラフェニブとトラメチニブの組み合わせを含む組成物。