(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、惣菜容器や弁当容器などの食品用トレーは、ポリスチレンフィルムに意匠性の絵柄などを印刷し、該印刷フィルムを発泡したポリスチレンシートや耐衝撃性に優れたポリスチレンシートとを熱圧着でラミネート(以下、「熱ラミネート」ともいう。)して作られる。このときの印刷インキ組成物としては、アクリル樹脂やスチレン−アクリル共重合樹脂を主成分とするものが知られている。
【0003】
特許文献1には、アクリル樹脂と、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)樹脂および/またはセルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)樹脂を含むバインダー樹脂と、顔料と、溶剤とを含有する熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物であって、前記アクリル樹脂が、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルを含むアクリルモノマーより合成されてなり、アルコール系およびエステル系の有機溶剤に溶解あるいは分散され、かつ、CAB樹脂が、数平均分子量6万以下であり、さらに、CAP樹脂が、数平均分子量6万以下である熱ラミネート用スチレンフィルム用印刷インキ組成物が提案され、インキの保存安定性を維持しつつも、耐ブロッキング性の良好なインキを提供するものである。
【0004】
しかし、特許文献1は、インキの保存性についての評価では、実施例および比較例共に、アクリル樹脂とCABやCAPを含めば、良好の結果となっていることから、使用するアクリル樹脂がどのようなものでもインキ保存性に影響ないと考えられるが、より低い温度での熱ラミネートを行なう際に、使用するアクリル樹脂が、低温でも十分なラミネート強度を有することについて、まったく検討されていない。
【0005】
唯一、インキの保存性が劣る評価のものは、アクリル樹脂とニトロセルロース樹脂との併用(比較例6)であるが、該ニトロセルロース樹脂は、セルロースの水酸基を硝酸でニトロ化することにより、得られる。平均重合度は35〜480程度であり、ニトロ基への置換度により、バイオマス度が変化するが約50質量%がバイオマス由来の樹脂である。
【0006】
上記セルロース系の樹脂は、バイオマス材料として有効であることから、環境面で優れた樹脂と言えるので、使用量として増やした方が、より環境に有利であるといえる。前記した通り、特許文献1は、使用するアクリル樹脂とニトロセルロース樹脂を併用すると、インキ保存性が劣ることが明らかであり、当該樹脂を併用することについて、検討されていないこともさることながら、低温でも十分なラミネート強度を有することについても、まったく検討されていない。
【0007】
また、飲料、惣菜や弁当などの食品、化粧品などの包装容器として、紙容器、金属容器、アルミニウム容器、プラスチック容器などが利用され、これらの表面には、商品の内容物の表示、意匠性や美粧性などの付与、機能性などを付与した熱可塑性樹脂からなる積層体やフィルムが装着されている。これらの積層体やフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート製ボトル(以下、「PETボトル」ともいう。)などの胴巻きラベルとして、ポリスチレン系樹脂から成形されたポリスチレンフィルム(以下、「PSフィルム」ともいう。)やポリエチレンテレフタレートから形成されたフィルム(以下、「PETフィルム」ともいう。)が基材層として利用されている。特に、PETボトルにはその形状に追従する収縮性PETフィルム、ストレッチPETフィルムおよび収縮性PSフィルムが利用される。
【0008】
しかし、PSフィルムは耐溶剤性が劣ることが知られており、インキ組成物中の溶剤によってPSフィルムが劣化し、白くなってしまう(フィルム白化性が劣る)。そのために、PSフィルムを劣化させない溶剤組成とする必要があるが、PETフィルムに適する樹脂を適用しようとすると、上記PSフィルムの溶剤組成では、樹脂の溶解性が劣るため、インキ組成物の流動性、転移性や泳ぎなどの印刷適性が低下、また収縮成形したときの成形適性が低下してしまうという問題がある。一方、PETフィルムに適する樹脂に適用する溶剤組成とするには、エステル系の溶剤を使用する必要があるが、PSフィルムを劣化させるため、直ぐには適用できないものであった。
【0009】
特許文献2には、顔料、樹脂成分および溶剤成分から主として構成されるシュリンク包装用印刷インキ組成物において、前記樹脂成分として、以下の条件Aを満足するアクリル樹脂70〜90質量%およびニトロセルロース10〜30質量%(共に固形分換算)を含み、溶剤成分として、炭素数1〜4の低級アルコールを全溶剤成分に対して50〜70質量%含むシュリンク包装用印刷インキ組成物(条件A:(メタ)アクリル酸の炭素数3〜8の直鎖アルキルエステル化合物50〜70質量%、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル5〜15質量%およびその他の共重合可能なビニルモノマー15〜45質量%からなるモノマー成分を共重合して得られ、分子量30,000〜100,000、水酸基価20〜110mgKOH/gのアクリル樹脂である)が提案され、収縮性PSフィルムおよび収縮性PETフィルムに適用した場合、フィルムを何ら劣化させることなく、十分な印刷適性を有し、両方のフィルムにおいて、インキのフィルムに対する接着性およびフィルムの収縮に対するインキ皮膜の耐白化性が良好なインキ組成物を提供するものである。
【0010】
特許文献3には、容器に装着されるプラスチックラベルの容器に対して接触する側の面に塗布される顔料及び樹脂成分を含むコーティング剤組成物であって、前記樹脂成分が主として重量平均分子量8000〜25000のアクリル系樹脂(A)と硝化綿(B)とからなり、その割合が前者(A)/後者(B)(重量比)=70/30〜95/5であるプラスチックラベル用コーティング剤組成物が提案され、PETフィルム及びOPSフィルムに対して、高速印刷適性、密着性、インキ割れ防止性、耐アルカリ性及び耐熱水性のすべての面で優れた特性を示すプラスチックラベル用コーティング剤組成物を提供するものである。
【0011】
特許文献4には、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、および、比蒸発速度が20〜100である低揮発性溶剤を全溶剤に対して0.1〜30重量%含有する溶剤を含む印刷インキが提案され、レベリング性に優れるため印刷適性が良好で、また長時間のインキ安定性にも優れ、さらにはプラスチックフィルムへの密着性、耐熱性、耐ブロッキング性などにも優れた特性を示す印刷インキを提供するものである。
【0012】
しかし、特許文献2や特許文献3は、主な溶剤として炭素数1〜4の低級アルコールを使用しているが、樹脂成分のニトロセルロースが析出しやすいため、密着性が劣るという問題がある。
【0013】
特許文献4は、低揮発性溶剤を特定量使用することで、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂の析出を抑制し、レベリング性を改善したものであるが、主な溶剤として使用されているものは、エステル系溶剤であって、該溶剤の含有量が多いため、耐溶剤性が劣るPSフィルムを劣化(白化)させたり、印刷時に穴が開いたり、裂けてしまうおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。
【0020】
以下の説明において、(メタ)アクリルないし(メタ)アクリレートはそれぞれアクリルおよびメタクリル、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。
【0021】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物(以下、単に「インキ組成物」または「インキ」ともいう。)は、疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーと、炭素数1〜9の脂肪族炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーより合成することによりなるアクリル樹脂を含有することが好ましい。
【0022】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物に使用されるアクリル樹脂は、アクリルモノマー成分として、疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、炭素数1〜9の脂肪族炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルより常法により合成することによりなるものであることが好ましい。疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマー成分とするアクリル樹脂を使用することで、インキ組成物のインキ安定性が良好で、インキ組成物をスチレン基材に印刷した際に、耐ブロッキング性が良好で、低温での熱ラミネート強度または密着性ならびに成形適性が良好となる。
【0023】
前記アクリル樹脂100%中に、疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを3〜50質量%含むことが好ましく、5〜40質量%含むことがより好ましく、10〜30質量%含むことがさらに好ましい。3質量%より少ないと、低温でのラミネート適性が出ないおそれがある。50質量%を超えると、アルコール溶解性が低下し、スチレン基材に対する耐劣化性が劣る(基材の裂け、破れがおこる)おそれがある。
【0024】
前記アクリル樹脂100%中に、前記炭素数1〜9の脂肪族炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルを50〜97質量%含むことが好ましく、60〜95質量%含むことがより好ましく、70〜90質量%含むことがさらに好ましい。97質量%を超えると、低温でのラミネート適性が出ないおそれがある。
【0025】
前記疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルの疎水性残基としては、炭素数10以上の脂肪族炭化水素基、炭素数10以上の脂環族炭化水素基、炭素数6以上の芳香族単環炭化水素基、炭素数10以上の縮合多環芳香族炭化水素基、複素単環基、縮合複素環基、スピロ炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
炭素数10以上の脂肪族炭化水素基として、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基、アルキニル基などが挙げられ、炭素数が10以上40以下であることが好ましく、炭素数が10以上20以下であることがより好ましく、炭素数が12以上18以下であることがさらに好ましい。
【0027】
炭素数10以上のアルキル基としては、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基などが挙げられ、なかでもラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基などがより好ましい。
【0028】
炭素数10以上のアルケニル基としては、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オレイル基、リノレイル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、トリアコンテニル基、2,4,6−トリメチルヘプテニル基、2,4,6,8−テトラメチルノネニル基、2−n−ブチルテトラデセニル基などが挙げられ、なかでもペンタデセニル基、オレイル基、リノレイル基などがより好ましい。
【0029】
炭素数10以上のアルキニル基としては、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基、トリデシニル基、テトラデシニル基、ペンタデシニル基、ヘキサデシニル基、ヘプタデシニル基、オクタデシニル基、ノナデシニル基、エイコシニル基などが挙げられ、なかでもペンタデシニル基などがより好ましい。
【0030】
炭素数10以上の脂環族炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基などが挙げられ、炭素数が10以上20以下であることが好ましく、10以上16以下であることがより好ましく、10以上12以下であることがさらに好ましい。なかでもイソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基などがより好ましい。
【0031】
炭素数6以上の芳香族単環炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、メチルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クミル基、フェノキシ基などが挙げられ、炭素数が6以上30以下であることが好ましく、6以上20以下であることがより好ましく、6以上18以下であることがさらに好ましい。なかでも、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ブチルフェニル基、フェノキシ基などがより好ましい。
【0032】
炭素数10以上の縮合多環芳香族炭化水素基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基、アントラセニルエチル基などが挙げられ、炭素数が10以上30以下であることが好ましく、10以上20以下であることがより好ましく、10以上14以下であることがさらに好ましい。なかでも、ナフチル基などがより好ましい。
【0033】
複素単環基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、インドリル基、モルホリニル基、チアゾリル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。縮合複素環基としては、ベンゾチエニル基、ベンゾオキサチイニル基などが挙げられる。
【0034】
前記炭素数1〜9の脂肪族炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基、アルキニル基などが挙げられ、なかでもメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基などが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基などがより好ましい。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。イソブチル基などの分岐型のアルキル基を有すると低温での接着性が劣るおそれがあるため、含まないことが望ましい。
【0035】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、2万〜20万が好ましく、3万〜11万がより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量が、2万未満になると、熱ラミネートの際にスチレン基材との凝集力が低下傾向を示し、成形加工時にブリスターが発生しやすくなるため好ましくなく、一方、重量平均分子量が、20万を超えると樹脂粘度が高くなってしまう。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量として評価できる。
【0036】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物に使用される繊維系樹脂は、セルロースアセテートブチレート(以下、「CAB」ともいう。)、セルロースアセテートプロピオネート(以下、「CAP」ともいう)、およびニトロセルロース樹脂のなかから選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0037】
前記セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートは、セルロースと適当な有機酸および/または酸無水物との反応により得られる。前記CABは、セルロースを酢酸および酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般にはアセチル化は2〜29.5質量%、ブチリル化は17〜53質量%、水酸基は0.8〜4.8質量%であり、バイオマス度は約50質量%である。前記CAPは、セルロースを酢酸およびプロピオン酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般にはアセチル化は0.6〜2.5質量%、プロピオニル化は42.5〜46質量%、水酸基は1.8〜5質量%であり、バイオマス度は約50質量%である。
前記ニトロセルロース樹脂は、セルロースの水酸基を硝酸でニトロ化することにより、得られる。平均重合度は35〜480程度であり、ニトロ基への置換度により、バイオマス度が変化するが約50質量%がバイオマス由来である。
【0038】
前記アクリル樹脂の固形分重量(A)と、前記繊維系樹脂の固形分重量(B)の割合が、A/B=100/0〜50/50であることが好ましく、95/5〜65/35であることがより好ましく、90/10〜70/30であることがさらに好ましい。低温でのラミネート強度が向上するため、繊維系樹脂の固形分重量を増加させても、熱ラミネート強度が低下しにくくなる。前記CAB、CAPの数平均分子量は、6万以下であるものが好ましく、1万〜3万のものがより好ましい。数平均分子量が低いほど樹脂粘度は低下するが、所望の耐ブロッキング性が低下することはない。数平均分子量が6万を超えると樹脂粘度が高くなり、印刷時にインキの転移が阻害され、意匠性の悪い印刷物となってしまう。特に、繊維系樹脂中に、ニトロセルロース樹脂を含有することにより、顔料分散性、耐ブロッキング性を向上させることができる。
【0039】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物には、前記アクリル樹脂、繊維系樹脂の他に、必要に応じて適宜、他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、ポリウレタンウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化オレフィン樹脂、アルキッド樹脂、酢酸ビニル樹脂、ロジン系樹脂(ロジン、硬化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂など)、ケトン樹脂、ポリブチラール樹脂、環化ゴム系樹脂、塩化ゴム系樹脂、石油樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂などが挙げられる。
【0040】
前記アクリル樹脂と、前記繊維系樹脂と、他の樹脂の合計の樹脂含有量は、固形分換算でインキ組成物中に、3〜50質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることがさらに好ましい。樹脂の含有量が、3質量%よりも少ないとインキ組成物の製膜性に劣り、50質量%より大きいと、インキ組成物の流動性が悪く、インキ組成物の製造適性が劣る。他の樹脂を併用する場合、インキ組成物中の樹脂固形分全体のうち、30質量%以下であることが好ましい。特に、ニトロセルロース樹脂を併用する場合、インキ組成物中の樹脂固形分全体のうち、10質量%以下であることが好ましい。10質量%より大きいとスチレン基材への接着性やラミネート強度が低下する。
【0041】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、顔料を含んでもよい。前記顔料としては、無機顔料および/または有機顔料であることが好ましい。
前記無機顔料としては、二酸化チタン、酸化鉄、硫酸バリウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、アルミニウムペースト、パール顔料、カーボンブラック、真鍮、マイカなどが挙げられる。カーボンブラックは、無機顔料に区分されることもあるが、本発明では除く。なかでも、二酸化チタン、酸化鉄、アルミニウムペーストのなかから選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
前記有機顔料としては、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン系顔料、ピロロピロール系顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。また、カーボンブラックも好ましい。なかでも、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、カーボンブラックのなかから選ばれる少なくとも1つであること好ましい。これら顔料は、インキ組成物の濃度、着色力、隠蔽力に応じ、適宜添加量が決められるが、インキ組成物中に0.1〜50質量%含有することが好ましく、5〜45質量%含有することがより好ましく、10〜40質量%含有することがさらに好ましい。特に、無機顔料は、20〜40質量%含有することが好ましく、有機顔料は、10〜30質量%含有することが好ましい。
【0042】
本発明のスチレン基材用印刷インキ組成物に使用される溶剤成分として炭素数1〜4のアルコール系溶剤が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどが挙げられ、なかでも、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、ブタノール、イソブタノールがより好ましい。
【0043】
前記炭素数1〜4のアルコール系溶剤は、熱ラミネート用途とする場合、溶剤成分100質量%中、40〜70質量%の範囲内であることが好ましい。40質量%より少ないと、密着性が劣ることに加え、スチレン基材にダメージを与え(劣化させ)、白化したり、フィルムであれば印刷時に穴が開いたり、フィルムが裂けるおそれがあり、シートであれば成形時に穴が開いたり、割れたりするおそれがある。70質量%より多いとアクリル樹脂や繊維系樹脂の溶解性が低下し、樹脂溶液の白濁やこれら樹脂が析出するおそれがある。また、シュリンク成形用途とする場合、溶剤成分100質量%中、60〜80質量%の範囲内であることが好ましい。60質量%より少ないと、密着性が劣ることに加え、スチレン基材にダメージを与え(劣化させ)、白化したり、フィルムであれば印刷時に穴が開いたり、フィルムが裂けるおそれがあり、シートであれば成形時に穴が開いたり、割れたりするおそれがある。80質量%より多いとアクリル樹脂や繊維系樹脂の溶解性が低下し、樹脂溶液の白濁やこれら樹脂が析出するおそれがある。
【0044】
また、溶剤成分として、前記炭素数1〜4のアルコール系溶剤以外に、通常グラビアインキに使用される溶剤を使用することができ、前記アクリル樹脂を該溶媒中に溶解または分散させるものが好ましい。グラビアインキに使用される溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチルなどのエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコール系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。なかでも、エステル系溶剤が、溶剤成分100質量%に対して30質量%以上含むことがより好ましい。
インキ組成物中に前記炭素数1〜4のアルコール系溶剤を含めて、溶剤成分としては、30〜95質量%の範囲内であることが好ましい。30質量%より少ないと固形分が多くなり、流動性がなくなる。95質量%より多いと粘度が低くなり、顔料が沈降しやすくなる。なかでも印刷作業環境を考慮して、芳香族炭化水素系溶剤を含まないことが好ましい。
【0045】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物には、必要に応じて、耐摩擦強化剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、静電防止剤、滑剤、架橋剤、消泡剤、乾燥調整剤、可塑剤、粘着付与剤、密着向上剤、レベリング剤、酸化防止剤などを添加することができる。
【0046】
顔料分散剤としては、通常グラビアインキに使用されるポリエステル系顔料分散剤が使用できる。市販品としては、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881(味の素ファインテクノ(株)製)、ソルスパース24000、ソルスパース56000(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。なかでも、塩基性基含有ポリエステル系高分子分散剤が好ましく使用できる。顔料分散剤の含有量は、インキ組成物中の全顔料100質量部に対して、通常1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、1〜60質量部であることがより好ましい。顔料分散剤の含有量が、1質量部より少ないと、インク組成物が沈降したり、著しい増粘がみられたりする(顔料分散性が低下する)おそれがある。200質量部を超えて含有させることもできるが、さらなる顔料分散向上に効果が出ないおそれがある。
【0047】
滑剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスや、PTFE系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、シェラックワックス、アマイドワックス、有機ポリマー、蜜蝋、これらの混合ワックスなどが好ましく、なかでも、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスがより好ましい。
【0048】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、アクリル樹脂と、繊維系樹脂と、顔料と、必要に応じて他の樹脂や各種添加剤を、溶剤の存在下で、均一に混合、分散する公知の方法で製造できる。顔料を分散させる際は、凝集している顔料を0.01〜1μm程度の平均粒径になるまで微粒子化して、分散体を得ることによって製造できる。
【0049】
前記混合、分散には、各種撹拌機または分散機が使用でき、ディスパー、ボールミル、サンドミル、アトライター、ビーズミル、ロールミル、ペブルミル、ペイントシェーカー、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、パールミル、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ニーダー、ホモミキサーなどが挙げられる。ビーズミルを使用する際の製造方式は特に制限されないが、パス方式でも循環式でもよく、パス方式は複数回分散体を通す複数パス方式でもよい。
分散体における有機顔料の平均粒径は、ビーズミルのビーズ分離機構、ビーズ種、ビーズ粒径、ビーズ充填率、撹拌羽の形状および枚数、回転速度、分散体の粘度、吐出量、プレミックス時間などによって適宜調整できる。
インキ組成物中の粗大粒子や気泡は、公知のろ過機や遠心分離機などにより取り除くことができる。
【0050】
インキ組成物の粘度は、10〜1,000mPa・s/25℃の範囲内であることが好ましい。10mPa・sより小さいと、粘度が低すぎて、顔料が沈降しやすい傾向になり、1,000mPa・sより大きいと、流動性が悪く、インキ製造時に支障が出たり、容器への充填が困難となる。この場合、ブルックフィールド型粘度計やコーンプレート型粘度計などの市販の粘度計を用いて測定することができる。
インキ組成物中の固形分としては、2〜80質量%の範囲内であることが好ましい。2質量%より低いと、印刷時の塗布量が十分でなく、80質量%を超えると、流動性が悪く、インキ化が困難となる。
インキ組成物は、印刷条件に適した粘度や濃度にまで、希釈溶剤で適宜希釈して印刷に供される。
【0051】
前記希釈溶剤は、インキ組成物の粘度や濃度を調整でき、アルコール系が特に好ましい。市販品としては、AC301溶剤(含トルエン系)、AC372溶剤(ノントルエン系)、AC341溶剤(ノントルエン系)(以上、いずれも東京インキ(株)製)などが挙げられる。
なかでも、印刷作業環境を考慮すると、ノントルエン系の希釈溶剤が好ましい。
【0052】
前記インキ組成物が印刷に供される際の粘度は、ザーンカップNo.3((株)離合社製)にて、25℃において13〜25秒の範囲内であることが好ましい。13秒より小さいと、泳ぎやすく、25秒より大きいと印刷時の転移性が悪くなる。
【0053】
印刷時に、必要に応じて、インキ組成物に、硬化剤を添加することもできる。例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、ペンタン−1,5−ジイソシアネート(スタビオPDI)などの脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパン三量体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などの変性体などのポリイソシアネート系硬化剤が挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0054】
本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物を、スチレン基材の少なくとも一方に、塗工して印刷層を有する積層体であることが好ましい。スチレン基材として、熱ラミネートに適用できるものやシュリンクに適用できるものであることがより好ましい。熱ラミネートに適用できるものである場合、さらに、該印刷層上にラミネート層とを有する熱ラミネート積層体とすることができる。
【0055】
前記スチレン基材として、熱ラミネートに適用するものであれば、いずれでもよいが、延伸ポリスチレン(OPS)フィルム、無延伸ポリスチレン(CPS)フィルム、ポリスチレンシート(PSシート)がより好ましい。この場合のスチレン基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5〜500μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。また、未処理のものも選択できるが、印刷面に印刷層やラミネート層の密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。また、シュリンクに適用できるものであれば、いずれでもよいが、シュリンクPSフィルムがより好ましい。この場合のスチレン基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。また、スチレン基材は未処理のものも選択できるが、印刷面に印刷層やラミネート層の密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。
【0056】
前記印刷層は、品質および生産性の高さからグラビア印刷法により塗工されて形成されることが好ましい。特に多色グラビア印刷機を用いたグラビア印刷法により作成されることがより好ましい。前記印刷層は、レーザー版と呼ばれる腐食版またはダイヤモンドの針によって掘られる彫刻版を使用して、グラビア印刷機によって、印刷される。印刷速度は通常30〜350m/分の範囲内である。
【0057】
前記ラミネート層は、前記印刷層上に有することが好ましい。前記ラミネート層は、例えば、加熱ロールの熱圧着(ラミネータ)による熱ラミネート、樹脂を含む接着剤(接着フィルム)を介するドライラミネート、ノンソルベントラミネート、ウェットラミネート、または樹脂の溶融による押出ラミネート、あるいは接着剤などを介して貼り合せたりすることにより印刷層上に樹脂を塗布する。特に、熱ラミネート、押出ラミネートがより好ましい。また、樹脂を二層以上重ねて押出ラミネートしてもよい。この場合、用いる樹脂は同種であっても、別の樹脂であってもよい。
【0058】
前記熱ラミネートに用いる樹脂は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンあるいはポリエステル樹脂が好ましく、なかでも汎用性の観点から、汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、発泡スチレンペーパー(PSP)、耐熱PSPなどが好ましい。熱ラミネートで積層する具体例としては、HIPSシート、PSPや耐熱PSPを前記スチレンフィルムと積層する際に、スチレンフィルム側を加熱ロールで加熱し、この加熱ロールとHIPSシート、PSPや耐熱PSP側に配置したニップロールとでHIPSシート、PSPや耐熱PSPとスチレンフィルムとを加圧して両者を熱接着する。本発明では、熱ラミネートで積層する際に低温とされる温度としては、一般的な熱ラミネート温度より低い温度、概ね130℃以下で熱ラミネートをしても、十分なラミネート強度を有する温度とする。
【0059】
前記押出ラミネートに用いる樹脂は、ポリスチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエーテルアクリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン系樹脂のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。また、基材と同種の樹脂でもよいし、異種の樹脂でもよい。押出ラミネートで積層する具体例としては、スチレンフィルムの印刷層面に必要に応じてアンカーコート剤を塗布し、加熱溶融された樹脂膜(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)を、前記樹脂からなるフィルムとスチレンフィルムの印刷層面の間に薄膜状に押し出して圧着、積層する。
【0060】
ラミネート層の厚みとしては、100μm〜5mmであることが好ましく、剛直な容器や深絞り成形してなる容器やトレイに成形加工するためには、200μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることがさらに好ましい。また軽量性や断熱性の観点から5mm程度の発泡熱可塑性樹脂シートが好ましく、特に発泡ポリプロピレン(EPP)、発泡ポリエチレン(EPE)、発泡ポリスチレン(EPS)が好ましい。
【0061】
前記作成した積層体は、包装用、食品保存用、農業用、土木用、漁業用、自動車内外装用、船舶用、日用品用、建材内外装用、住設機器用、医療・医療機器用、医薬用、家電品用、家具類用、文具類・事務用品用、販売促進用、商業用、電機電子産業用などに使用できる。
【0062】
本発明の積層体を用いて作成する包装容器であることが好ましい。形態としては、ロケット、三角パック、ゲーブルトップ、ブリック、シボリ、カップ、トレイ、ボトル、ブリック、コンテナ、ボックス、ケース、番重、カバー、蓋材、キャップ、ラベル、インモールドカップなど包装用途に用いられる周知の形態のいずれでもよい。
【実施例】
【0063】
以下に実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は質量部を、%は質量%を表す。
【0064】
<実施例1>
フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue15:4)10部、顔料分散剤(アジスパーPB824、味の素ファインテクノ(株)製) 1部、アクリル樹脂溶液1 40部、CAPニス1 12部、酢酸エチル 9.2部、酢酸n−プロピル 9.2部、イソプロピルアルコール 18.6部を混合撹拌した後、ペイントシェーカーにて、分散させて、インキNo.1を100部得た。同様に、表1〜表14および表29〜表33の配合に従い、実施例2〜270、比較例1〜86のインキNo.2〜270、No.541〜626を作製した。
【0065】
<実施例271>
フタロシアニン系顔料(C.I.Pigment Blue15:4)10部、顔料分散剤(アジスパーPB824、味の素ファインテクノ(株)製) 1部、アクリル樹脂溶液1 40部、CAPニス1 12部、ワックス(ポリエチレンワックス、三井化学(株)製) 5部、酢酸エチル 2部、酢酸n−プロピル 2部、イソプロピルアルコール 28部を混合撹拌した後、ペイントシェーカーにて、分散させて、インキNo.271を100部得た。同様に、表15〜表28および表33〜37の配合に従い、実施例272〜540、比較例87〜174のインキNo.272〜540、No.627〜714作製した。
【0066】
使用した材料は以下のものとした。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量として評価した。
アクリル樹脂溶液1:樹脂100質量%中、20質量%含有するラウリルメタクリレートと30質量%含有するメチルメタクリレートと50質量%含有するブチルメタクリレートとの常法による合成によりなる樹脂、イソプロピルアルコール/酢酸エチル=1/1混合溶剤、固形分40%、重量平均分子量60,000
アクリル樹脂溶液2:樹脂100質量%中、20質量%含有するステアリルメタクリレートと30質量%含有するメチルメタクリレートと50質量%含有するブチルメタクリレートとの常法による合成によりなる樹脂、イソプロピルアルコール/酢酸エチル=1/1混合溶剤、固形分40%、重量平均分子量60,000
アクリル樹脂溶液3:樹脂100質量%中、5質量%含有するステアリルメタクリレートと35質量%含有するメチルメタクリレートと60質量%含有するブチルメタクリレートとの常法による合成によりなる樹脂、イソプロピルアルコール/酢酸エチル=1/1混合溶剤、固形分40%、重量平均分子量60,000
アクリル樹脂溶液4:樹脂100質量%中、95質量%含有するステアリルメタクリレートと5質量%含有するメチルメタクリレートとの常法による合成によりなる樹脂、イソプロピルアルコール/酢酸エチル=1/1混合溶剤、固形分40%、重量平均分子量60,000
アクリル樹脂溶液5:樹脂100質量%中、100質量%含有するラウリルメタクリレートの常法による合成によりなる樹脂、イソプロピルアルコール/酢酸エチル=1/1混合溶剤、固形分40%、重量平均分子量60,000
アクリル樹脂溶液6:樹脂100質量%中、35質量%含有するメチルメタクリレートと65質量%含有するブチルメタクリレートとの常法による合成によりなる樹脂、イソプロピルアルコール/酢酸エチル=1/1混合溶剤、固形分40%、重量平均分子量50,000
アクリル樹脂7:樹脂100質量%中、24質量%含有するメチルメタクリレートと66質量%含有するブチルメタクリレートと10質量%含有する2−ヒドロキシエチルメタクリレートの常法による合成によりなる樹脂、固形分100%、重量平均分子量60,000、水酸基価40mgKOH/gであった。
アクリル樹脂8:樹脂100質量%中、17質量%含有するメチルメタクリレートと60質量%含有するブチルメタクリレートと23質量%含有する2−ヒドロキシエチルメタクリレートの常法による合成によりなる樹脂、固形分100%、重量平均分子量12,000、水酸基価92mgKOH/gであった。
アクリル樹脂9:ARUFON UC−3000(三菱ケミカル(株)製)、固形分100%、重量平均分子量10,000、酸価74mgKOH/g、Tg65℃)であった。
CAPニス1:下記の配合にて作成
CAPニス2:下記の配合にて作成
CAB二ス1:下記の配合にて作成
CAB二ス2:下記の配合にて作成
フタロシアニン系顔料:Pigment Blue 15:4
モノアゾ系顔料:Pigment Red 48:3
ジスアゾ系顔料:Pigment Yellow 14
二酸化チタン:Pigment White 7
弁柄(酸化鉄):Pigment Red 101
アルミニウムペースト:Pigment Metal 1(固形分50%)
カーボンブラック:Pigment Black 7
顔料分散剤:アジスパーPB824(味の素ファインテクノ(株)製)
ワックス:ポリエチレンワックス、アルコール系溶媒、固形分25%(三井化学(株)製)
【0067】
CAPニス1
撹拌機のついた丸底フラスコに、イソプロピルアルコール42.5部、酢酸エチル21.25部、酢酸n−プロピル21.25部を仕込み、撹拌しながらセルロースアセテートプロピオネートCAP−504−0.2(数平均分子量15,000、プロピオニル含有率40〜45%、イーストマンケミカル社製)を15部添加して、CAPニス1を作成した。CAPニス1の樹脂固形分は15%であった。
【0068】
CAPニス2
撹拌機のついた丸底フラスコに、イソプロピルアルコール42.5部、酢酸エチル21.25部、酢酸n−プロピル21.25部を仕込み、撹拌しながらセルロースアセテートプロピオネートCAP−482−0.5(数平均分子量25,000、プロピオニル含有率43〜47%、イーストマンケミカル社製)を15部添加して、CAPニス2を作成した。CAPニス2の樹脂固形分は15%であった。
【0069】
CABニス1
撹拌機のついた丸底フラスコに、イソプロピルアルコール42.5部、酢酸エチル21.25部、酢酸n−プロピル21.25部を仕込み、撹拌しながらセルロースアセテートブチレートCAB−381−0.5(数平均分子量30,000、ブチリル含有率36〜40%、イーストマンケミカル社製)を15部添加して、CABニス1を作成した。CABニス1の樹脂固形分は15%であった。
【0070】
CABニス2
撹拌機のついた丸底フラスコに、イソプロピルアルコール42.5部、酢酸エチル21.25部、酢酸n−プロピル21.25部を仕込み、撹拌しながらセルロースアセテートブチレートCAB−553−0.4(数平均分子量20,000、ブチリル含有率44〜50%、イーストマンケミカル社製)を15部添加して、CABニス2を作成した。CABニス2の樹脂固形分は15%であった。
【0071】
ニトロセルロース樹脂ワニス
撹拌機のついた丸底フラスコに、イソプロピルアルコール36部、酢酸エチル21.3部、酢酸n−プロピル21.3部を仕込み、撹拌しながら硝化綿 RS1/16(TNC社製)を21.4部添加して、ニトロセルロース樹脂ワニスを作成した。ニトロセルロース樹脂ワニスの樹脂固形分は15%であった。
【0072】
各インキについて、インキ安定性、耐ブロッキング性、熱ラミネート強度、密着性、成形適性を評価し、表38〜表45にそれぞれ示した。
【0073】
<インキ安定性>
インキに、イソプロピルアルコールと酢酸エチルの混合溶剤(1/1重量比)を加えて希釈し、ザーンカップNo.3で粘度15秒に調整した。さらに、インキの初期重量の50重量%の上記混合溶剤を加え、2時間後のインキの状態を目視で観察し、評価した。インキが相分離せず、粘度変化がないものが、インキ安定性が良好と判断した。インキの状態について、○:調整直後と変化がない(相分離もなく、粘度変化もない)、△:わずかに相分離、粘度上昇がある(実用上問題ない)、×:相分離、粘度上昇があり実用上使用できない、××:インキ化できない、の4段階で評価した。なお、××:インキ化できない、の評価のものは、以下の評価はしなかった(表中では、「−」で表記)。
【0074】
[印刷物の作製]
4色グラビア印刷機(富士機械工業(株)製)の1〜4色印刷各ユニットに、セラミックドクター((株)東京製作所製)、クロム硬度1050Hv/スタイラス130度の彫刻ヘリオ版((株)東和プロセス製)、ファニッシャーロールを取り付け、インキを希釈溶剤AC372(東京インキ(株)製)にて、ザーンカップNo.3で粘度15秒に調整した後、第1ユニットのインキパンにインキを投入した。全てのユニットにおいて、ドクター圧2kgf/cm
2、乾燥温度50℃、印圧2kg/cm
2、印刷速度150m/分にて、厚み20μmのスチレン(OPS)フィルム(GM、旭化成(株)製)に印刷して、印刷物を8,000m得た。また、印刷中は粘度コントローラー((株)メイセイ製)にて、一定に保った。その後、耐ブロッキング性、熱ラミネート強度について評価した。
【0075】
<耐ブロッキング性>
印刷物を3cm×3cmの大きさに切り、印刷面と非印刷面とを重ね合わせて、50℃で24時間、500g/cm
2の荷重を掛けた後、印刷面と非印刷面の重ね合わせ部を剥離した時のインキ剥離状態を観察し、その際の剥離抵抗を評価した。インキ剥離がなく、剥離抵抗がないものが、耐ブロッキング性が良好と判断した。インキ剥離と剥離抵抗について、○:インキ剥離がなく、剥離抵抗もない、△:わずかにインキ剥離が認められ、剥離抵抗がある、×:全体にわたってインキ剥離が認められ、剥離抵抗がかなりある、の3段階で評価した。
【0076】
<熱ラミネート強度>
実施例1〜270、比較例1〜86のインキNo.1〜270、No.541〜626を用いて作製した印刷物の印刷層面と発泡ポリスチレンシート(高発泡PSシート)とを合わせ、該印刷物のフィルム面に厚さ12μmのポリエステルフィルムを置き、ラミネータを用いて、温度120℃、速度5m/minの条件で熱圧着でラミネートを行い、その後ポリエステルフィルムを取り去り、積層体を形成した。積層体のスチレンフィルム面に粘着テープを貼り付け、25mmの幅に切り、引張試験機(RTE−1210(株)オリエンテック製)により、剥離速度300mm/min、剥離角度90°の条件で熱ラミネート強度を測定した。当該剥離強度試験において、スチレンフィルムが切れるものが良好と判断した。剥離強度試験について、○:スチレンフィルムが切れる、×:それ以外、の2段階で評価した。
【0077】
剥離強度試験においては、最も接着強度の弱い箇所から剥離し、インキ/高発泡PSシート間での剥離の場合は、インキの高発泡PSシートに対する熱ラミネート強度が弱いという目安となる。また、スチレンフィルムへの密着と熱ラミネート強度がいずれも強い場合、剥離界面は「層」で剥離せず、スチレンフィルムと高発泡PSシートの両方にインキが引っ張られて、引きちぎられ、凝集破壊と呼ばれる現象が起こる。さらに、最も好ましい剥離は、上記と同様に両方にインキが引っ張られるが、凝集破壊ではなく、スチレンフィルムが切れる状態であると考えられる。
【0078】
成形適性は、次の試験により、評価した。
【0079】
<容器成形時の成形性>
前記[印刷物の作製]と同様の方法にて、実施例1〜270、比較例1〜86の各インキを用いて、スチレン基材がPSシート(デンカスチレンシート、デンカ(株)製)の印刷物を形成した。真空成形機(小型真空成形機フォーミングシリーズ300X型、成光産業(株)製)を用いて1辺100mm幅の正方形状の容器を作成した。作成した容器の外観を目視にて観察した。印刷された基材層に穴が開いたり、割れたりしないものが良好と判断した。○:穴が開いたり、割れたりしない、×:穴が開いたり、割れたりする、の2段階で評価した。
【0080】
<密着性>
前記[印刷物の作製]と同様の方法にて、実施例271〜540、比較例87〜174のインキNo.271〜540、No.627〜714を用いて、スチレン基材がPSシュリンクフィルム(ファンシーラップGMGS、グンゼ(株)製)の印刷物を形成した。作製した印刷物の印刷層面に粘着テープ(18mm、ニチバン(株)製)を貼り付け、90度の角度で急速に剥離し、剥離した印刷層面の剥離状態について評価した。印刷層面が剥離しないものが密着性が良好と判断した。密着性について、○:まったく剥がれない、×:少しでも剥がれる、の2段階で評価した。
【0081】
成形適性は、次の試験により、評価した。
【0082】
<シュリンク時の成形性>
前記<密着性>で形成した印刷物を、PETボトルに巻き付けて、100℃の恒温乾燥炉で1分間加熱し、PSシュリンクフィルムを熱収縮させて、当該PETボトルに密着させた。密着したPSシュリンクフィルムの印刷面を顕微鏡にて観察した。印刷された基材層が熱収縮した際の当該PETボトル形状に基材層上の印刷面が追従しているもの(インキ皮膜が追従し、クラックが発生しないもの)が良好と判断した。○:クラックが発生しない、×:クラックが発生する、の2段階で評価した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
【表11】
【0094】
【表12】
【0095】
【表13】
【0096】
【表14】
【0097】
【表15】
【0098】
【表16】
【0099】
【表17】
【0100】
【表18】
【0101】
【表19】
【0102】
【表20】
【0103】
【表21】
【0104】
【表22】
【0105】
【表23】
【0106】
【表24】
【0107】
【表25】
【0108】
【表26】
【0109】
【表27】
【0110】
【表28】
【0111】
【表29】
【0112】
【表30】
【0113】
【表31】
【0114】
【表32】
【0115】
【表33】
【0116】
【表34】
【0117】
【表35】
【0118】
【表36】
【0119】
【表37】
【0120】
【表38】
【0121】
【表39】
【0122】
【表40】
【0123】
【表41】
【0124】
【表42】
【0125】
【表43】
【0126】
【表44】
【0127】
【表45】
【0128】
表38〜表40および表44の結果より、実施例1〜270の本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、インキ安定性が良好で、PSシートのような容器成形に適するスチレン基材層に印刷したスチレン基材での耐ブロッキング性、低温での熱ラミネート強度および成形適性(容器成形性)が良好であった。疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーのみより合成することによりなるアクリル樹脂を使用したスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、耐ブロッキング性、低温での熱ラミネート強度および成形適性が劣る。特許文献1の例である疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含まないアクリルモノマーより合成することによりなるアクリル樹脂を使用したスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、低温での熱ラミネート強度および成形適性が劣る。
また、表41〜表43および表45の結果より、実施例271〜540の本発明のスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、インキ安定性が良好で、PSシュリンクフィルムのようなシュリンク成形に適するスチレン基材層に印刷したスチレン基材での耐ブロッキング性、密着性および成形適性(シュリンク成形性)が良好であった。疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーのみより合成することによりなるアクリル樹脂を使用したスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、耐ブロッキング性、密着性および成形適性が劣る。特許文献1の例である疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含まないアクリルモノマーより合成することによりなるアクリル樹脂を使用したスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物は、密着性および成形適性が劣る。また、特許文献2の例である比較例173は、疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含まないアクリルモノマーより合成するアクリル樹脂を使用したインキ組成物であり、インキ化できなかった。特許文献3の例である比較例174は、インキ化はできるものの増粘がみられ、耐ブロッキング性、密着性および成形適性が劣る。
【課題】本発明は、インキ組成物のインキ安定性が良好で、インキ組成物をスチレン基材に印刷した際に、耐ブロッキング性が良好で、低温での熱ラミネート強度または密着性ならびに形適性が良好となるスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物を提供する。
【解決手段】疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーと、炭素数1〜9の脂肪族炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むアクリルモノマーより合成することによりなるアクリル樹脂を含有し、前記アクリル樹脂100%中に、前記疎水性残基を有する(メタ)アクリル酸エステルが、3〜50質量%であり、前記炭素数1〜9の脂肪族炭化水素鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルが、50〜97質量%であることを特徴とするスチレン基材用グラビア印刷インキ組成物。