特許第6684962号(P6684962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684962
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】工具経路生成方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/00 20060101AFI20200413BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B23Q15/00 301J
   G05B19/4093 H
   G05B19/4093 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-508473(P2019-508473)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2017013772
(87)【国際公開番号】WO2018179401
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】安河内 二郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】浅見 聡一郎
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−352876(JP,A)
【文献】 特開2011−183528(JP,A)
【文献】 特許第6000496(JP,B1)
【文献】 特開2008−090734(JP,A)
【文献】 特開2016−101644(JP,A)
【文献】 特開2015−015006(JP,A)
【文献】 特開2010−260120(JP,A)
【文献】 特開平09−047939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00 −15/28
G05B 19/18 −19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドミルのワークに対する工具姿勢を変化させながら、少なくとも1つの回転送り軸を有する工作機械でワークの表面加工を行うときの工具経路生成方法において、
複数の加工点を順次直線で連結して得られる複数列の工具経路上の1つの加工点を対象加工点として設定し、該対象加工点を中心として所定範囲内にある加工点を関心加工点として選択する手順と、
選択された関心加工点における工具姿勢を平均することによって、対象加工点の工具姿勢を算出する手順と、
前記算出された平均工具姿勢によって、前記対象加工点の工具姿勢に関するデータを修正する手順と、
加工すべきワークの形状データおよび使用するエンドミルの形状データを取得する手順と、
前記修正した工具姿勢データに基づき、前記ワークと前記エンドミルとの干渉チェックを行う手順と、
ワークとエンドミルとの干渉が生じない場合、前記修正した工具姿勢に関するデータに基づき、新たな工具経路を生成する手順と、
を含むことを特徴とした工具経路生成方法。
【請求項2】
前記複数の加工点は、各工具経路上の隣接する加工点間を分割して得られ、補間演算でその座標値を算出した分割加工点を含む請求項1に記載の工具経路生成方法。
【請求項3】
前記工具姿勢を算出する手順は、対象加工点と関心加工点との間の距離に応じて重みを付けて関心加工点の工具姿勢を平均するようにした請求項1に記載の工具経路生成方法。
【請求項4】
干渉チェックの結果、ワークとエンドミルとが干渉する場合、修正した工具姿勢を修正前の工具姿勢に戻すようにした請求項1に記載の工具経路生成方法。
【請求項5】
干渉チェックの結果、ワークとエンドミルとが干渉する場合、修正前の工具の軸方向と修正後の工具の軸方向との中間に工具の中心軸線が一致するように、工具姿勢を修正するようにした請求項1に記載の工具経路生成方法。
【請求項6】
前記干渉チェックは、修正前の工具姿勢と修正後の工具姿勢に基づいて干渉判別モデル形状を生成し、該干渉判別モデル形状とワークとが干渉するか否かを工具経路に沿って対象加工点毎に順次行うようにした請求項1に記載の工具経路生成方法。
【請求項7】
エンドミルのワークに対する工具姿勢を変化させながら少なくとも1つの回転送り軸を有する工作機械でワークの表面加工を行うときの工具経路を生成する工具経路生成装置において、
複数の加工点を順次直線で連結して得られる複数列の工具経路上の1つの加工点を対象加工点として設定し、該対象加工点を中心として所定範囲内にある加工点を関心加工点として選択する加工点選択部と、
選択された関心加工点における工具姿勢を平均することによって、対象加工点の工具姿勢を算出し、算出された平均工具姿勢によって、前記対象加工点の工具姿勢に関するデータを修正する工具姿勢平均化部と、
加工すべきワークの形状データおよび使用するエンドミルの形状データを取得して、前記修正した工具姿勢データに基づき、前記ワークと前記エンドミルとの干渉チェックを行い、ワークとエンドミルとの干渉が生じない場合、前記修正した工具姿勢に関するデータに基づき、新たな工具経路を生成する干渉回避処理部と、
を具備することを特徴とした工具経路生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドミルのワークに対する工具姿勢を変化させながら、少なくとも1つの回転送り軸を有する工作機械でワークの表面加工を行うときの工具経路生成方法および装置に関する。本発明のエンドミルは、工具姿勢を変えてワーク表面を加工するボールエンドミル、側面視樽形をしたバレルシェイプエンドミル、側面視楕円形をしたオーバルフォームエンドミル、底面が凸曲面をしたレンズ形エンドミル等、いわゆるサークルセグメントエンドミルである。以下、代表してボールエンドミルについて述べるが、本発明は他のサークルセグメントエンドミルにも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
2つの回転送り軸を有する5軸の加工機でワークを加工する加工プログラムが指定する工具経路沿いに工具を移動させる場合、工具姿勢が変化すると、工具の撓み量の変化、工作機械の設計上の回転送り軸の回転中心位置と実際の回転送り軸の回転中心位置とのずれに起因する回転送り軸の回転中心の変化、ボールエンドミルのような工具先端部において現に切削している切れ刃の曲率の変化、各回転送り軸の加減速の変化等によって、加工面の品質が低下することがある。特許文献1には、そうした工具姿勢の変化に伴う加工面の品質低下を防止した数値制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−015006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際のワークの加工では、1つの工具経路に沿って工具が移動する間に工具の姿勢が変化するのみならず、図11、12に示すように、隣接する工具経路間でも工具の姿勢は変化する。図11、12は、断面が略L字形のワークWの側面をボールエンドミルを用いて2つの回転送り軸を有する5軸の工作機械で、ピックフィード量の間隔を持った等高線状の工具経路TPに沿って加工する場合を示している。特に、ワークWの水平な上面202を加工する場合と、垂直面204の上方部分を加工する場合、ワークWの垂直面の中央部分から下側を加工する場合では、工具Tの姿勢、つまり中心軸線Oに沿ったベクトルの向きが変化している。
【0005】
特許文献1の数値制御装置では、所定の数だけのブロックを補正対象プログラム指令として先読みし、先読みされた補正対象プログラム指令における各ブロックに対して、直線軸の移動量と工具方向ベクトル変化量との比が一定となるように工具方向指令を補正している。特許文献1の数値制御装置では、複数のブロックを先読みしている、つまり、1つの工具経路に沿って各ブロックに対して、直線軸の移動量と工具方向ベクトル変化量との比が一定となるように工具方向指令を補正しているので、図11、12に示すように、複数の工具経路に亘って工具姿勢が変化するような場合には、特許文献1の数値制御装置は、有効に工具の姿勢を修正できない。
【0006】
図12を参照すると、点E、F、Gで工具とワークとが接触している例を記載しており、点E、Fでは工具姿勢は鉛直であり、点Gから下方を加工するときは、工具ホルダがワークの上部と干渉するので、工具姿勢を変えていることが分かる。点E、FまたはGでは工具が切削抵抗を受ける方向が変わり、工具の撓み量が変わる。すると、ワークの加工面には僅かな段差が生じ、加工面品位は低下する。加工プログラムにおける工具姿勢の指令は、工作機械の設計上の回転送り軸の中心位置を基準にして作成するので、実際の製作誤差のある回転送り軸の中心ずれの影響で、加工面に僅かな段差が生じる。また、工具であるボールエンドミルは、先端球部は真球であるとして、この球部の中心を基準にして加工プログラムの位置指令を行っている。従って、真球でない場合、ワークへの接触位置が変わることによって、ワーク加工面に僅かな段差が生じる。更に、直線送り軸の移動中に回転送り軸の移動方向が反転するような場合、回転送り軸の加減速の変化や同期遅れによって、ワークの加工面に僅かな段差が生じることがある。従って、点E、F、Gへと加工が進行する過程で、徐々に工具姿勢を変えると、これらの問題の影響が軽減されることが予想される。
【0007】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、ワークに対する工具姿勢を変化させながらエンドミルによりワークの表面加工を行う際に、工具姿勢の急激な変化によって加工面の品質が低下することを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、エンドミルのワークに対する工具姿勢を変化させながら、少なくとも1つの回転送り軸を有する工作機械でワークの表面加工を行うときの工具経路生成方法において、複数の加工点を順次直線で連結して得られる複数列の工具経路上の1つの加工点を対象加工点として設定し、該対象加工点を中心として所定範囲内にある加工点を関心加工点として選択する手順と、選択された関心加工点における工具姿勢を平均することによって、対象加工点の工具姿勢を算出する手順と、前記算出された平均工具姿勢によって、前記対象加工点の工具姿勢に関するデータを修正する手順と、加工すべきワークの形状データおよび使用するエンドミルの形状データを取得する手順と、前記修正した工具姿勢データに基づき、前記ワークと前記エンドミルとの干渉チェックを行う手順と、ワークとエンドミルとの干渉が生じない場合、前記修正した工具姿勢に関するデータに基づき、新たな工具経路を生成する手順とを含む工具経路生成方法が提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、エンドミルのワークに対する工具姿勢を変化させながら少なくとも1つの回転送り軸を有する工作機械でワークの表面加工を行うときの工具経路を生成する工具経路生成装置において、複数の加工点を順次直線で連結して得られる複数列の工具経路上の1つの加工点を対象加工点として設定し、該対象加工点を中心として所定範囲内にある加工点を関心加工点として選択する加工点選択部と、選択された関心加工点における工具姿勢を平均することによって、対象加工点の工具姿勢を算出し、算出された平均工具姿勢によって、前記対象加工点の工具姿勢に関するデータを修正する工具姿勢平均化部と、加工すべきワークの形状データおよび使用するエンドミルの形状データを取得して、前記修正した工具姿勢データに基づき、前記ワークと前記エンドミルとの干渉チェックを行い、ワークとエンドミルとの干渉が生じない場合、前記修正した工具姿勢に関するデータに基づき、新たな工具経路を生成する干渉回避処理部とを具備する工具経路生成装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピックフィード量ずつ離れた複数列の工具経路にある加工点における工具姿勢を平均して対象加工点における工具姿勢を決定するようにしたので、複数の工具経路に亘って工具姿勢が変化するような場合でも有効に工具の姿勢を修正することができる。また、修正した工具姿勢に基づいて、ワークと工具との間の干渉をチェックするようにしたので、工具姿勢を修正したことによって、ワークと工具とが干渉してしまうことがない。これによって、ワーク表面に工具姿勢の変化による小さな段差が生じにくくなり、加工面の品位が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の好ましい実施の形態による工具経路生成方法を適用する工作機械の略示側面図である。
図2】工具経路生成装置を組み込んだ図1の工作機械のNC装置を示す略示ブロック図である。
図3】工具経路生成装置を示す略示ブロック図である。
図4】工具経路、加工点および分割加工点を説明するための略図である。
図5】関心加工点の選択方法を説明するための略図である。
図6】工具姿勢を修正する方法を説明するための略図である。
図7】対象加工点と関心加工点における工具姿勢であるベクトルを示す略図である。
図8】重み曲線を示す略図である。
図9】工具のモデル形状を示す図である。
図10】干渉チェック方法を説明するための略図である。
図11】L字形のワークをボールエンドミルで等高線加工するときの工具経路を説明するための略図である。
図12図11の加工するワークの部位と工具の姿勢との関係を説明するための略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1を参照すると、本発明の好ましい実施の形態による工具経路生成方法を適用する工作機械10は、工場の床面に設置された基台としてのベッド12、ベッド12の前方部分(図1では左側)の上面で水平前後方向またはZ軸方向に移動可能に設けられたテーブル16、ベッド12の後端側(図1では右側)で同ベッド12の上面に立設、固定されたコラム14、上下方向へ移動する移動体としてコラム14の前面において上下方向またはY軸方向に移動可能に設けられたY軸スライダ18、Y軸スライダ18の前面で水平左右方向またはX軸方向(図1の紙面に垂直な方向)に移動可能に設けられたX軸スライダ20、該X軸スライダ20に取り付けられ主軸24を回転可能に支持する主軸頭22を具備している。
【0013】
テーブル16は、ベッド12の上面において水平なZ軸方向(図1では左右方向)に延設された一対のZ軸案内レール26に沿って往復動可能に設けられており、テーブル16の上面にはワーク(図示せず)を固定するためのパレット36が取り付けられる。本実施形態では、テーブル16には、B軸サーボモータ40が組み込まれており、鉛直方向に延びる軸線Obを中心としてB軸方向の回転送りが可能にパレット36を支持している。
【0014】
ベッド12には、テーブル16をZ軸案内レール26に沿って往復駆動するZ軸送り装置として、Z軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたZ軸サーボモータ38が設けられており、テーブル16には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。
【0015】
Y軸スライダ18は、コラム14の前面おいてY軸方向(鉛直方向)に延設された一対のY軸案内レール30に沿って往復動可能に設けられている。コラム14には、Y軸スライダ18をY軸案内レール30に沿って往復駆動するY軸送り装置として、Y軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該一対のボールねじの一端、本例では上端に連結されたY軸サーボモータ32が設けられており、Y軸スライダ18には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。
【0016】
X軸スライダ20は、Y軸スライダ18の前面においてX軸方向(図1では紙面に垂直な方向)に延設された一対のX軸案内レール(図示せず)に沿って往復動可能に設けられている。Y軸スライダ18には、X軸スライダ20を前記X軸案内レールに沿って往復駆動するX軸送り装置として、X軸方向に延設されたボールねじ(図示せず)と、該ボールねじの一端に連結されたX軸サーボモータ34が設けられており、X軸スライダ20には、前記ボールねじに係合するナット(図示せず)が取り付けられている。
【0017】
X軸スライダ20はZ軸方向前方に突出した一対のA軸アームを有しており、該A軸アームの間に主軸頭22がX軸と平行な傾動軸線Oa回りのA軸方向に回転送り可能に支持されいる。A軸アームの一方には、主軸頭22を傾動軸線Oa回りのA軸方向に回転送りするためのA軸サーボモータ42が組み込まれている。主軸頭22は、中心軸線Os回りに回転可能に主軸24を支持している。主軸頭22は主軸24を回転駆動するサーボモータ(図示せず)を内蔵している。
【0018】
こうして、工作機械10は、X軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸を夫々NC装置100によって制御することによって、主軸24の先端部に装着した工具Tと、パレット34に固定されテーブル16にパレット34と共に装着されるワークとを相対移動させ、前記工具Tによってワークを加工する。
【0019】
図2を参照すると、NC装置100は工具経路生成装置120と、数値制御部140とを具備している。工具経路生成装置120は、後述するようにように、CAM装置104が生成した加工プログラム106の工具の姿勢の変化を平滑化し、新たな加工プログラム112を生成し数値制御部140へ送出する。数値制御部140は、通常のNC装置と同様に、読取解釈部142、補間部144およびサーボ制御部146とを備えている。NC装置100は、工具経路生成装置120が生成した加工プログラム112に基づいて、工作機械10の各軸のサーボモータ150を駆動する。なお、図2において、サーボモータ150は、X軸、Y軸、Z軸の各直線送り軸のサーボモータ34、32、38およびA軸、B軸の各回転送り軸のサーボモータ42、40を代表するものであって、X軸、Y軸、Z軸のサーボモータ34、32、38およびA軸、B軸のサーボモータ42、40は、NC装置100によって独立して制御される。
【0020】
図3を参照すると、工具経路生成装置120は、読取解釈部122、工具姿勢平滑処理部124および干渉回避処理部132を含み、工具姿勢平滑処理部124は、加工点記憶部126、加工点選択部128および工具姿勢平均化部130を含んでいる。
【0021】
加工プログラム106は、周知のCAD/CAMシステムによって、生成される。すなわち、CAD装置102がワークの加工形状に対応したCADデータを作成する。CAM装置104は、CADデータに基づき、微小な直線指令の集合であるCAMデータを作成する。このCAMデータは膨大な量の点群データからなるため、加工プログラムに適したデータ量となるように、CAMデータから所定のルールに従ってデータを間引き、複数の加工点および送り速度を含む加工プログラムが作成される。
【0022】
加工プログラム106には、加工点の座標データがX軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸の座標値によってブロック形式で記載されている。加工開始点から加工終了点までの加工点の総数をNとすると、各加工点には1〜Nまでの加工点番号が付されており、この番号順に加工点P(ブロック端点)を順次結ぶことにより、ワーク加工時の工具軌跡の指令値である工具経路が得られる。
【0023】
読取解釈部122は、加工プログラム106を読み取り解釈して、加工点および工具経路生成に関するデータを生成する。工具姿勢平滑処理部124の加工点記憶部126は、各加工点を該加工点が含まれる工具経路に関連付けて記憶する。図4(a)は、読取り解釈した加工プログラム106の1本の工具経路TPの初めの部分を加工点P1、P2、…とともに示している。加工点間の距離の長短はCAM装置104が加工すべきワーク表面に沿った曲線を直線近似するときに予め与えるトレランスの大きさに応じて決定される。加工点の位置と個数は、CAM装置104から出力された加工プログラム106に記載されている位置と個数で工具姿勢の平滑処置を行ってもよいが、一層高精度の平滑処理を行うためには予め加工点間の距離にしきい値を設定しておき、加工点間距離が、このしきい値を超える場合は、2分割、3分割、…して、工具姿勢の平滑処理の精度を高めることができる。そのため、図4(b)では、P1とP2間およびP3とP4間には1つの分割加工点P1-1、P3-1を、P4とP5間には2つの分割加工点P4-1、P4-2を追加して工具経路TP′が示されている。加工点記憶部126は、分割加工点を追加した場合は、追加した分割加工点をも含めた全加工点のX軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸の座標値を算出して記憶する。なお、分割加工点の座標値は、その両端側の加工点の座標値を補完して算出する。以下の説明では、加工点も分割加工点も区別せず加工点と記載する。
【0024】
加工点選択部128は、図5に示すように、加工点記憶部126が記憶した加工点から1つの対象加工点POMを選択する。次いで、対象加工点POMを中心として所定半径rの球SIで規定される検査領域内に含まれる加工点を関心加工点PI(i)として選択する。ここで、i=1〜Nであり、Nは、対象加工点POMを除く検査領域SI内の加工点の個数である。
【0025】
工具姿勢平均化部130は、X軸、Y軸、Z軸、A軸、B軸の座標値から、対象加工点POMにおける工具の中心軸線Oのベクトル∨0を演算する。次いで、対象加工点POMと関心加工点PI(i)との間の距離L(i)、および、関心加工点PI(i)における工具の中心軸線のベクトル∨(i)を全ての関心加工点PI(i)について演算する(図7参照)。次いで、各関心加工点PI(i)と対象加工点POMとの間の距離L(i)をパラメータとして、関心加工点PI(i)における重みW(i)を求める。重みW(i)は、例えば、図8に示すような重み曲線CWによって与えることができる。次いで、工具姿勢平均化部130は、∨=ΣW(i)×∨(i)によって、ベクトル∨を対象加工点POMにおける工具の修正された工具姿勢として演算する。工具姿勢平滑処理部124は、全ての加工点につきベクトル∨を演算し、それに基づいて加工プログラム106を修正する。図6は、検査領域S1内の複数の工具経路と各関心加工点PI(i)における工具姿勢を二点鎖線の矢印で示しており、対象加工点POMにおいては、工具姿勢平滑処理部124で算出した修正された工具姿勢を実線矢印で示している。図6では、工具姿勢は、工具経路毎に大きく変化しているが、全加工点を対象加工点にして1つずつ工具姿勢の平滑処理を行えば、全加工領域で工具姿勢は滑らかに変化する図6に相当する工具姿勢表示画面を描くことができる。
【0026】
次に、干渉回避処理部132は、修正された工具姿勢であるベクトルVに基づいて、工具とワークまたは工作機械の静止部との干渉をチェックする。干渉回避処理部132は、CAD装置102からワークの加工形状108と、CAM装置104から工具情報110を受取る。工具情報110は、使用する工具の工具長(中心軸線Oに沿った長さ)および工具径に加えて、使用する工具ホルダの形状に関連したデータを含む。例えば、干渉回避処理部132は、工具情報110に基づいて、図9に示すような工具のモデル形状300を生成する。モデル形状300は、使用する工具、工具ホルダに対応した工具部分302、ホルダ部分304および主軸部分306を含んでいる。
【0027】
図10を参照すると、干渉回避処理部132は、破線で示す修正前の工具のモデル形状320の外形と、細線で示す修正後の工具のモデル形状330の外形が、修正前の工具のモデル形状300の中心軸線O1と、修正後の中心軸線O2の間の二等分線O3を中心として描く複数の円錐面から成る領域を干渉判別モデル形状310として生成する。干渉回避処理部132は、干渉判別モデル形状310を工具経路TPに沿って移動させたときに、ワークと干渉するか否かを判定する。干渉判別モデル形状310がワークと干渉しない場合には、干渉回避処理部132は、工具経路生成装置120によって修正された加工プログラムを新たな加工プログラム112として数値制御部140に出力する。干渉判別モデル形状310がワークと干渉する場合には、干渉回避処理部132は、工具経路生成装置120が修正した加工プログラムを修正前の加工プログラムに戻して、新たな加工プログラム112として数値制御部140に出力する。
【0028】
数値制御部140では、読取解釈部142が、新たな加工プログラム112を読取り解釈して移動指令を出力する。この移動指令は、X軸、Y軸、Z軸の直線送り方向およびA軸、B軸の回転送り方向の送り量と送り速度とを含んでいる。読取解釈部142が出力した移動指令は補間部144へ送出される。補間部144は、受け取ったX軸、Y軸、Z軸の直線送り方向およびA軸、B軸の回転送り方向の移動指令を補間関数に基づいて補間演算し、送り速度に合ったX軸、Y軸、Z軸の直線送り方向およびA軸、B軸の回転送り方向の位置指令をサーボ制御部146に出力する。サーボ制御部146は、受け取ったX軸、Y軸、Z軸の直線送り方向およびA軸、B軸の回転送り方向の各位置指令から、工作機械10のX軸、Y軸、Z軸の直線送り方向およびA軸、B軸の回転送り方向の各送り軸のサーボモータを駆動するための電流値を、工作機械10のX軸、Y軸、Z軸およびA軸、B軸のサーボモータ150に出力する。
【0029】
図2の例では、工具経路生成装置はNC装置に組み込まれ、加工プログラムを先読みして、本発明の工具姿勢平滑処理と干渉回避処理の演算を行うとともに、その後のワーク加工の工作機械の動作制御をリアルタイムで実行している。本発明はこれに限定されず、図3に示した工具経路生成装置をCAM装置に組む、または独立したパソコンに組み込んで、工具姿勢平滑処理と干渉回避処理を行った加工プログラムを予め作成、その加工プログラムをNC装置に送ってワークの加工を行ってもよい。
【符号の説明】
【0030】
100 NC装置
102 CAD装置
104 CAM装置
106 加工プログラム
108 加工形状
110 工具情報
112 加工プログラム
120 工具経路生成装置
126 加工点記憶部
128 加工点選択部
130 工具姿勢平均化部
132 干渉回避処理部
140 数値制御部
150 サーボモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12