特許第6684964号(P6684964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000003
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000004
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000005
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000006
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000007
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000008
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000009
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000010
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000011
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000012
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000013
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000014
  • 特許6684964-LDHセパレータ及び亜鉛二次電池 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684964
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】LDHセパレータ及び亜鉛二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 M
   H01M2/16 P
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-512839(P2019-512839)
(86)(22)【出願日】2018年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2018047686
(87)【国際公開番号】WO2019131688
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-251005(P2017-251005)
(32)【優先日】2017年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】大河内 聡太
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌平
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/076047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料製の多孔質基材と、前記多孔質基材の孔を塞ぐ層状複水酸化物(LDH)とを含む、亜鉛二次電池用のLDHセパレータであって、
前記LDHセパレータがその内部にデンドライト緩衝層を有し、該デンドライト緩衝層が、
(i)前記LDHが無いか又は欠乏している前記多孔質基材の孔に富んだ内部多孔層、
(ii)前記LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が剥離可能に接触している剥離性界面層、及び
(iii)前記LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が離間して形成される、前記LDH及び前記多孔質基材が存在しない内部空間層
からなる群から選択される少なくとも1種である、LDHセパレータ。
【請求項2】
前記LDHが、前記デンドライト緩衝層以外の前記多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている、請求項1に記載のLDHセパレータ。
【請求項3】
前記デンドライト緩衝層が、(i)前記LDHが無いか又は欠乏している前記多孔質基材の孔に富んだ内部多孔層である、請求項1又は2に記載のLDHセパレータ。
【請求項4】
前記デンドライト緩衝層が、(ii)前記LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が剥離可能に接触している剥離性界面層である、請求項1又は2に記載のLDHセパレータ。
【請求項5】
前記デンドライト緩衝層が、(iii)前記LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が離間して形成される、前記LDH及び前記多孔質基材が存在しない内部空間層である、請求項1又は2に記載のLDHセパレータ。
【請求項6】
前記LDHセパレータの単位面積あたりのHe透過度が3.0cm/atm・min以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のLDHセパレータ。
【請求項7】
前記高分子材料が、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂、セルロース、ナイロン、ポリエチレンからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のLDHセパレータ。
【請求項8】
前記多孔質基材及び前記LDHからなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のLDHセパレータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のLDHセパレータを備えた、亜鉛二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LDHセパレータ及び亜鉛二次電池に関するものである。
【0002】
ニッケル亜鉛二次電池、空気亜鉛二次電池等の亜鉛二次電池では、充電時に負極から金属亜鉛がデンドライト状に析出し、不織布等のセパレータの空隙を貫通して正極に到達し、その結果、短絡を引き起こすことが知られている。このような亜鉛デンドライトに起因する短絡は繰り返し充放電寿命の短縮を招く。
【0003】
上記問題に対処すべく、水酸化物イオンを選択的に透過させながら、亜鉛デンドライトの貫通を阻止する、層状複水酸化物(LDH)セパレータを備えた電池が提案されている。例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)には、ニッケル亜鉛二次電池においてLDHセパレータを正極及び負極間に設けることが開示されている。また、特許文献2(国際公開第2016/076047号)には、樹脂製外枠に嵌合又は接合されたLDHセパレータを備えたセパレータ構造体が開示されており、LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有する程の高い緻密性を有することが開示されている。また、この文献にはLDHセパレータが多孔質基材と複合化されうることも開示されている。さらに、特許文献3(国際公開第2016/067884号)には多孔質基材の表面にLDH緻密膜を形成して複合材料(LDHセパレータ)を得るための様々な方法が開示されている。この方法は、多孔質基材にLDHの結晶成長の起点を与えうる起点物質を均一に付着させ、原料水溶液中で多孔質基材に水熱処理を施してLDH緻密膜を多孔質基材の表面に形成させる工程を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/118561号
【特許文献2】国際公開第2016/076047号
【特許文献3】国際公開第2016/067884号
【発明の概要】
【0005】
上述したようなLDHセパレータを用いてニッケル亜鉛電池等の亜鉛二次電池を構成した場合、亜鉛デンドライトによる短絡等を通常防止できるが、何らかの欠陥等によりLDHセパレータ内への亜鉛デンドライト浸入を許すような万が一の事態を想定した場合、終局的には亜鉛デンドライトの貫通及びそれによる正負極間の短絡が起こりうるといえる。したがって、デンドライト短絡防止効果の更なる改善が望まれる。
【0006】
本発明者らは、今般、LDHセパレータの内部に所定の構成のデンドライト緩衝層を設けることにより、亜鉛デンドライトに起因する短絡をより一層効果的に抑制可能なLDHセパレータを提供できるとの知見を得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、亜鉛デンドライトに起因する短絡をより一層効果的に抑制可能なLDHセパレータを提供することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、高分子材料製の多孔質基材と、前記多孔質基材の孔を塞ぐ層状複水酸化物(LDH)とを含む、亜鉛二次電池用のLDHセパレータであって、
前記LDHセパレータがその内部にデンドライト緩衝層を有し、該デンドライト緩衝層が、
(i)前記LDHが無いか又は欠乏している前記多孔質基材の孔に富んだ内部多孔層、
(ii)前記LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が剥離可能に接触している剥離性界面層、及び
(iii)前記LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が離間して形成される、前記LDH及び前記多孔質基材が存在しない内部空間層
からなる群から選択される少なくとも1種である、LDHセパレータが提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、前記LDHセパレータを備えた、亜鉛二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】デンドライト緩衝層として内部多孔層を有する形態のLDHセパレータを示す模式断面図である。
図2】デンドライト緩衝層として剥離性界面層を有する形態のLDHセパレータを示す模式断面図である。
図3】デンドライト緩衝層として内部空間層を有する形態のLDHセパレータを示す模式断面図である。
図4A】例1〜4の緻密性判定試験で使用された測定用密閉容器の分解斜視図である。
図4B】例1〜4の緻密性判定試験で使用された測定系の模式断面図である。
図5】例1〜4のデンドライト短絡確認試験で使用された測定装置の模式断面図である。
図6A】例1〜4で使用されたHe透過度測定系の一例を示す概念図である。
図6B図6Aに示される測定系に用いられる試料ホルダ及びその周辺構成の模式断面図である。
図7A】例1で作製されたLDHセパレータの断面SEM画像である。
図7B】例1で作製されたLDHセパレータの断面SEM画像である。
図8】例2で作製されたLDHセパレータの断面SEM画像である。
図9】例3で作製されたLDHセパレータの断面SEM画像である。
図10】例2で作製されたLDHセパレータのデンドライト短絡確認試験後の状態を撮影した断面SEM画像である。図中、Dはデンドライトを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
LDHセパレータ
本発明のLDHセパレータは、亜鉛二次電池用のLDHセパレータであって、多孔質基材と、層状複水酸化物(LDH)とを含む。なお、本明細書において「LDHセパレータ」は、LDHを含むセパレータであって、専らLDHの水酸化物イオン伝導性を利用して水酸化物イオンを選択的に通すものとして定義される。多孔質基材は高分子材料製であり、多孔質基材の孔をLDHが塞いでいる。そして、LDHセパレータがその内部にデンドライト緩衝層を有している。デンドライト緩衝層は、図1に示されるように(i)LDHが無いか又は欠乏している多孔質基材の孔に富んだ内部多孔層10bであってもよいし、図2に示されるように(ii)LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が剥離可能に接触している剥離性界面層10b’であってもよいし、図3に示されるように(iii)LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が離間して形成される(LDH及び多孔質基材が存在しない)内部空間層10b’’であってもよい。このように、LDHセパレータの内部に、上記(i)、(ii)及び(iii)からなる群から選択される少なくとも1種であるデンドライト緩衝層を設けることにより、亜鉛デンドライトに起因する短絡をより一層効果的に抑制可能なLDHセパレータを提供することができる。
【0012】
すなわち、前述したように、従来のLDHセパレータを用いてニッケル亜鉛電池等の亜鉛二次電池を構成した場合、亜鉛デンドライトによる短絡等を通常防止できるが、何らかの欠陥等によりLDHセパレータ内への亜鉛デンドライト浸入を許すような万が一の事態を想定した場合、終局的には亜鉛デンドライトの貫通及びそれによる正負極間の短絡が起こりうるといえる。この点、従来のセパレータにおける亜鉛デンドライトの貫通は、(a)セパレータに含まれる空隙又は欠陥に亜鉛デンドライトが侵入し、(b)セパレータを押し広げながらデンドライトが成長及び進展し、(c)最後にデンドライトがセパレータを貫通する、というメカニズムで起こるのではないかと推定される。これに対し、本発明のLDHセパレータは、その内部に、上記(i)〜(iii)のような亜鉛デンドライトの成長を許容する構成のデンドライト緩衝層を敢えて設けることで、例えば図10に示されるように亜鉛デンドライトDの析出及び成長をデンドライト緩衝層内のみに留め、結果として、デンドライトによるセパレータの貫通を阻止又は有意に遅延させることができ、それ故、亜鉛デンドライトに起因する短絡をより一層効果的に抑制することができる。
【0013】
また、本発明のLDHセパレータは、LDHの有する水酸化物イオン伝導性に基づき、セパレータとして要求される所望のイオン伝導性を備えることは勿論のこと、可撓性及び強度にも優れている。これは、LDHセパレータに含まれる高分子多孔質基材自体の可撓性及び強度に起因するものである。すなわち、高分子多孔質基材の孔がLDHで塞がれた形でLDHセパレータが緻密化されているため、セラミックス材料であるLDHに起因する剛性や脆さが高分子多孔質基材の可撓性や強度によって相殺又は軽減されるといえる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、図1に示されるLDHセパレータ10のように、デンドライト緩衝層が、(i)LDHが無いか又は欠乏している多孔質基材の孔に富んだ内部多孔層10bである。すなわち、本態様のLDHセパレータ10は、多孔質基材及びLDHを含む1対のLDHセパレータ本体部10aと、1対のLDHセパレータ本体部10a間に介在される内部多孔層10bとを含み、内部多孔層10bが多孔質基材のみからなるか、又は多孔質基材及び低減された量ないし密度のLDHを含むものである。LDHセパレータ本体部10a自体は、特許文献1〜3に開示されるような従来のLDHセパレータと同様の構成であってよく、それ故従来のLDHセパレータと同様、デンドライト短絡防止効果を呈することができるが、更なる改善が望まれることは前述のとおりである。この点、本態様においては、1対のLDHセパレータ本体部10aで挟まれた内層として、LDHが無いか又は欠乏している多孔質基材の孔に富んだ部分が内部多孔層10bとして存在することで、LDHで埋まっていない多孔質基材の気孔に亜鉛デンドライトを優先的に析出及び成長させ、亜鉛デンドライトの析出及び成長を内部多孔層10b内のみに留め、結果として、デンドライトによるセパレータの貫通を阻止又は有意に遅延させることができる。本態様のLDHセパレータ10は1枚の多孔質基材を用いて、その両側が密となり且つ厚さ方向の中央が疎となるようにLDHを析出させる操作を行うことにより作製することができる。この操作は、例えば、多孔質基材をアルミナ・チタニア混合ゾルにディップコートする直前に、多孔質基材をエタノール等の溶媒に浸しておき、多孔質基材の厚み方向の中央部分に混合ゾルが含浸され難くなるようにすることにより行うことができる。内部多孔層10bの好ましい厚さは、0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、特に好ましくは0.05mm以下、最も好ましいのは0.01mm以下である。デンドライト耐性においては内部多孔層10bは厚い方が好ましいといえるが、内部多孔層10bが厚くなるにつれて抵抗が高くなるため、電池への組み込みを想定すると薄い方が好ましい。
【0015】
本発明の別の好ましい態様によれば、図2に示されるLDHセパレータ10’のように、デンドライト緩衝層が、(ii)LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が剥離可能に接触している剥離性界面層10b’である。すなわち、本態様のLDHセパレータ10’は、多孔質基材及びLDHを含む1対のLDHセパレータ本体部10aと、1対のLDHセパレータ本体部10aが剥離可能に接触している剥離性界面層10b’とを含む。本明細書において「2つの層が剥離可能に接触している」とは、2つの層が全面的又は部分的に互いに接触しており、両層間の界面における亜鉛デンドライトの析出及び成長に伴って2つの層の接触面積が減少することが可能な状態(例えば一方の層が他方の層から少なくとも部分的に離れていくことが可能な状態)を意味する。LDHセパレータ本体部10a自体は、特許文献1〜3に開示されるような従来のLDHセパレータと同様の構成であってよく、それ故従来のLDHセパレータと同様、デンドライト短絡防止効果を呈することができるが、更なる改善が望まれることは前述のとおりである。この点、本態様においては、1対のLDHセパレータ本体部10aが剥離可能に接触している剥離性界面層10b’が存在することで、剥離性界面層10b’に亜鉛デンドライトを優先的に析出及び成長させ、剥離性界面層10b’を押し広げながら亜鉛デンドライトの析出及び成長を剥離性界面層10b’内のみに留め、結果として、デンドライトによるセパレータの貫通を阻止又は有意に遅延させることができる。本態様のLDHセパレータ10’は、1対のLDHセパレータ本体部10aを積層することにより作製することができる。また、積層の際又は積層後、1対のLDHセパレータ本体部10aの積層体をプレスして緻密化するのが好ましい。プレス手法は、例えばロールプレス、一軸加圧プレス、CIP(冷間等方圧加圧)等であってよく、特に限定されないが、好ましくはロールプレスである。このプレスは加熱しながら行うのが高分子多孔質基材を軟化させることで、多孔質基材の孔をLDHで十分に塞ぐことができる点で好ましい。十分に軟化する温度として、例えば、ポリプロピレンの場合は、60℃以上で加熱するのが好ましい。
【0016】
本発明の更に別の好ましい態様によれば、図3に示されるLDHセパレータ10''のように、デンドライト緩衝層が、(iii)LDHセパレータの一部を構成する隣り合う2つの層が離間して形成される(LDH及び多孔質基材が存在しない)内部空間層10b’’である。すなわち、本態様のLDHセパレータ10’’は、多孔質基材及びLDHを含む1対のLDHセパレータ本体部10aと、1対のLDHセパレータ本体部10a間に介在される(多孔質基材及びLDHの存在しない)内部空間層10b’’とを含む。LDHセパレータ本体部10a自体は、特許文献1〜3に開示されるような従来のLDHセパレータと同様の構成であってよく、それ故従来のLDHセパレータと同様、デンドライト短絡防止効果を呈することができるが、更なる改善が望まれることは前述のとおりである。この点、本態様においては、1対のLDHセパレータ本体部10aの間に、多孔質基材及びLDHの存在しない内部空間層10b’’が存在することで、内部空間層10b’’に亜鉛デンドライトを優先的に析出及び成長させ、亜鉛デンドライトの析出及び成長を内部多孔層10b’’内のみに留め、結果として、デンドライトによるセパレータの貫通を阻止又は有意に遅延させることができる。本態様のLDHセパレータ10’’は1対のLDHセパレータ本体部10aを互いに離間させて配置することにより作製することができる。1対のLDHセパレータ本体部10aの間にはスペーサを介在させてもよい。スペーサは抵抗になりうるため、低抵抗であることが望まれる。低抵抗のスペーサの例としては、伝導性材料や、アルカリ水溶液を通すような(すなわち厚み方向に対して連通パスのある)多孔質基材が挙げられる。また、同様の理由から、スペーサは薄い方が好ましい。各々のLDHセパレータ本体部10aは上記配置に先立ち、プレスして緻密化するのが好ましい。プレス手法は、例えばロールプレス、一軸加圧プレス、CIP(冷間等方圧加圧)等であってよく、特に限定されないが、好ましくはロールプレスである。このプレスは加熱しながら行うのが高分子多孔質基材を軟化させることで、多孔質基材の孔をLDHで十分に塞ぐことができる点で好ましい。十分に軟化する温度として、例えば、ポリプロピレンの場合は、60℃以上で加熱するのが好ましい。内部空間層10b’’の好ましい厚さは、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、特に好ましくは0.05mm以下、最も好ましいのは0.01mm以下である。なお、内部空間層10b’’の厚さの下限値は限定されない。これは、内部空間層10b’’として僅かでも空間が存在していさえすればよく、電池(とりわけ小型電池)への組み込みを想定すると、そのような空間はできるだけ狭い方が好ましいためである。
【0017】
LDHセパレータは層状複水酸化物(LDH)を含むセパレータであり、亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、正極板と負極板とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するものである。すなわち、LDHセパレータは水酸化物イオン伝導セパレータとしての機能を呈する。好ましいLDHセパレータはガス不透過性及び/又は水不透過性を有する。換言すれば、LDHセパレータはガス不透過性及び/又は水不透過性を有するほどに緻密化されているのが好ましい。なお、本明細書において「ガス不透過性を有する」とは、特許文献2及び3に記載されるように、水中で測定対象物の一面側にヘリウムガスを0.5atmの差圧で接触させても他面側からヘリウムガスに起因する泡の発生がみられないことを意味する。また、本明細書において「水不透過性を有する」とは、特許文献2及び3に記載されるように、測定対象物の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。すなわち、LDHセパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有するということは、LDHセパレータが気体又は水を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性又はガス透過性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。こうすることで、LDHセパレータは、その水酸化物イオン伝導性に起因して水酸化物イオンのみを選択的に通すものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。このため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成となっている。LDHセパレータは水酸化物イオン伝導性を有するため、正極板と負極板との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極板及び負極板における充放電反応を実現することができる。
【0018】
LDHセパレータは、単位面積あたりのHe透過度が3.0cm/min・atm以下であるのが好ましく、より好ましくは2.0cm/min・atm以下、さらに好ましくは1.0cm/min・atm以下である。He透過度が3.0cm/min・atm以下であるセパレータは、電解液中においてZnの透過(典型的には亜鉛イオン又は亜鉛酸イオンの透過)を極めて効果的に抑制することができる。このように本態様のセパレータは、Zn透過が顕著に抑制されることで、亜鉛二次電池に用いた場合に亜鉛デンドライトの成長を効果的に抑制できるものと原理的に考えられる。He透過度は、セパレータの一方の面にHeガスを供給してセパレータにHeガスを透過させる工程と、He透過度を算出して水酸化物イオン伝導セパレータの緻密性を評価する工程とを経て測定される。He透過度は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時にセパレータに加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。このようにHeガスを用いてガス透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛デンドライト成長を引き起こすZn)を極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を効果的に評価することができる。これは、Heガスが、ガスを構成しうる多種多様な原子ないし分子の中でも最も小さい構成単位を有しており、しかも反応性が極めて低いためである。すなわち、Heは、分子を形成することなく、He原子単体でHeガスを構成する。この点、水素ガスはH分子により構成されるため、ガス構成単位としてはHe原子単体の方がより小さい。そもそもHガスは可燃性ガスのため危険である。そして、上述した式により定義されるHeガス透過度という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。こうして、セパレータが亜鉛二次電池用セパレータに適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価することができる。He透過度の測定は、後述する実施例の評価5に示される手順に従って好ましく行うことができる。
【0019】
本発明のLDHセパレータにおいては、LDHが多孔質基材の孔を塞いでおり、好ましくは多孔質基材の孔(但し、デンドライト緩衝層を除く)がLDHで完全に塞がれている。一般的に知られているように、LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は主として金属元素(典型的には金属イオン)とOH基で構成される。LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO2−を含む。また、LDHはその固有の性質に起因して優れたイオン伝導性を有する。
【0020】
一般的に、LDHは、M2+1−x3+(OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)の基本組成式で代表されるものとして知られている。上記基本組成式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO2−が挙げられる。したがって、上記基本組成式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である。もっとも、上記基本組成式は、一般にLDHに関して代表的に例示される「基本組成」の式にすぎず、構成イオンを適宜置き換え可能なものである。例えば、上記基本組成式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn−の係数x/nは適宜変更されてよい。
【0021】
例えば、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Ti、OH基、及び場合により不可避不純物で構成されてもよい。LDHの中間層は、上述のとおり、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層を主としてNi、Ti及びOH基で構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHにはアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられる元素(例えばAl)が意図的又は積極的に添加されていないためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+1−xTi4+(OH)n−2x/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+やTi4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0022】
あるいは、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含むものであってもよい。中間層は、上述のとおり、陰イオン及びHOで構成される。水酸化物基本層と中間層の交互積層構造自体は一般的に知られるLDHの交互積層構造と基本的に同じであるが、本態様のLDHは、LDHの水酸化物基本層をNi、Al、Ti及びOH基を含む所定の元素ないしイオンで構成することで、優れた耐アルカリ性を呈することができる。その理由は必ずしも定かではないが、本態様のLDHは、従来はアルカリ溶液に溶出しやすいと考えられていたAlが、Ni及びTiとの何らかの相互作用によりアルカリ溶液に溶出しにくくなるためと考えられる。そうでありながらも、本態様のLDHは、アルカリ二次電池用セパレータとしての使用に適した高いイオン伝導性も呈することができる。LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてNi、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。不可避不純物は製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合には、対応するLDHは、一般式:Ni2+1−x−yAl3+Ti4+(OH)n−(x+2y)/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。もっとも、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素がLDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能なものとして解されるべきである。
【0023】
前述したとおり、LDHセパレータはLDHと多孔質基材とを含み(典型的には多孔質基材及びLDHからなり)、LDHセパレータは水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するLDHセパレータとして機能するように)LDHが多孔質基材の孔を塞いでいる。LDHは、デンドライト緩衝層以外の多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている(例えばデンドライト緩衝層以外の多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔がLDHで埋まっている)のが特に好ましい。LDHセパレータの全体としての厚さ(デンドライト緩衝層を含む厚さ)は、好ましくは5μm〜5mmであり、より好ましくは5μm〜1mm、さらに好ましくは5μm〜0.5mm、特に好ましくは5μm〜0.3mmである。
【0024】
多孔質基材は高分子材料製である。高分子多孔質基材には、1)可撓性を有する(それ故薄くしても割れにくい)、2)気孔率を高くしやすい、3)伝導率を高くしやすい(気孔率を高めながら厚さを薄くできるため)、4)製造及びハンドリングしやすいといった利点がある。また、上記1)の可撓性に由来する利点を活かして、5)高分子材料製の多孔質基材を含むLDHセパレータを簡単に折り曲げる又は封止接合することができるとの利点もある。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。より好ましくは、加熱プレスに適した熱可塑性樹脂という観点から、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せ等が挙げられる。上述した各種の好ましい材料はいずれも電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものである。特に好ましい高分子材料は、耐熱水性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、しかも低コストである点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンであり、最も好ましくはポリプロピレン又はポリエチレンである。このような高分子多孔質基材として、市販の高分子微多孔膜を好ましく用いることができる。
【0025】
デンドライト緩衝層の形成方法は上述したとおりであるが、LDHセパレータのデンドライト緩衝層以外の部分、すなわちLDHセパレータ本体部20aの製造方法は特に限定されず、既に知られるLDH含有機能層及び複合材料(すなわちLDHセパレータ)の製造方法(例えば特許文献1〜3を参照)の諸条件を適宜変更することにより作製することができる。例えば、(1)多孔質基材を用意し、(2)多孔質基材に酸化チタンゾル或いはアルミナ及びチタニアの混合ゾルを塗布して熱処理することで酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を形成させ、(3)ニッケルイオン(Ni2+)又はマグネシウムイオン(Mg2+)と尿素とを含む原料水溶液に多孔質基材を浸漬させ、(4)原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、LDH含有機能層を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させることにより、LDH含有機能層及び複合材料(すなわちLDHセパレータ)を製造することができる。特に、上記工程(2)において酸化チタン層或いはアルミナ・チタニア層を多孔質基材に形成することで、LDHの原料を与えるのみならず、LDH結晶成長の起点として機能させて多孔質基材の表面に高度に緻密化されたLDH含有機能層をムラなく均一に形成することができる。また、上記工程(3)において尿素が存在することで、尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。
【0026】
特に、多孔質基材が高分子材料で構成され、機能層が多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている複合材料(すなわちLDHセパレータ)を作製する場合、上記(2)におけるアルミナ及びチタニアの混合ゾルの基材への塗布を、混合ゾルを基材内部の全体又は大部分に浸透させるような手法で行うのが好ましい。こうすることで最終的に多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔をLDHで埋めることができる。好ましい塗布手法の例としては、ディップコート、ろ過コート等が挙げられ、特に好ましくはディップコートである。ディップコート等の塗布回数を調整することで、混合ゾルの付着量を調整することができる。ディップコート等により混合ゾルが塗布された基材は、乾燥させた後、上記(3)及び(4)の工程を実施すればよい。
【0027】
亜鉛二次電池
本発明のLDHセパレータは亜鉛二次電池に適用されるのが好ましい。したがって、本発明の好ましい態様によれば、LDHセパレータを備えた、亜鉛二次電池が提供される。典型的な亜鉛二次電池は、正極と、負極と、電解液とを備え、LDHセパレータを介して正極と負極が互いに隔離されるものである。本発明の亜鉛二次電池は、亜鉛を負極として用い、かつ、電解液(典型的にはアルカリ金属水酸化物水溶液)をとして用いた二次電池であれば特に限定されない。したがって、ニッケル亜鉛二次電池、酸化銀亜鉛二次電池、酸化マンガン亜鉛二次電池、亜鉛空気二次電池、その他各種のアルカリ亜鉛二次電池であることができる。例えば、正極が水酸化ニッケル及び/又はオキシ水酸化ニッケルを含み、それにより亜鉛二次電池がニッケル亜鉛二次電池をなすのが好ましい。あるいは、正極が空気極であり、それにより亜鉛二次電池が亜鉛空気二次電池をなしてもよい。
【0028】
その他の電池
本発明のLDHセパレータはニッケル亜鉛電池等の亜鉛二次電池の他、例えばニッケル水素電池にも使用することができる。この場合、LDHセパレータは当該電池の自己放電の要因であるナイトライドシャトル(nitride shuttle)(硝酸基の電極間移動)をブロックする機能を果たす。また、本発明のLDHセパレータは、リチウム電池(リチウム金属が負極の電池)、リチウムイオン電池(負極がカーボン等の電池)あるいはリチウム空気電池等にも使用可能である。
【実施例】
【0029】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。なお、以下の例で作製されるLDHセパレータの評価方法は以下のとおりとした。
【0030】
評価1:LDHセパレータの同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、LDHセパレータの結晶相を測定してXRDプロファイルを得た。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載されるLDH(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。
【0031】
評価2:緻密性判定試験
LDHセパレータがガス不透過性を呈する程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図4A及び4Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器130と、このアクリル容器130の蓋として機能しうる形状及びサイズのアルミナ治具132とを用意した。アクリル容器130にはその中にガスを供給するためのガス供給口130aが形成されている。また、アルミナ治具132には直径5mmの開口部132aが形成されており、この開口部132aの外周に沿って試料載置用の窪み132bが形成されてなる。アルミナ治具132の窪み132bにエポキシ接着剤134を塗布し、この窪み132bにLDHセパレータを載置してアルミナ治具132に気密かつ液密に接着させた。そして、LDHセパレータ136が接合されたアルミナ治具132を、アクリル容器130の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤138を用いて気密かつ液密にアクリル容器130の上端に接着させて、測定用密閉容器140を得た。この測定用密閉容器140を水槽142に入れ、アクリル容器130のガス供給口130aを圧力計144及び流量計146に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器130内に供給可能に構成した。水槽142に水143を入れて測定用密閉容器140を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器140の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、LDHセパレータ136の一方の側が測定用密閉容器140の内部空間に露出する一方、LDHセパレータ136の他方の側が水槽142内の水に接触している。この状態で、アクリル容器130内にガス供給口130aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器140内に導入した。圧力計144及び流量計146を制御してLDHセパレータ136内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、LDHセパレータ136から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった場合に、LDHセパレータ136はガス不透過性を呈する程に高い緻密性を有するものと判定した。
【0032】
評価3:断面微構造の観察
イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、IM4000によって、LDHセパレータの断面研磨面を得た後に、この断面研磨面の微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10kVの加速電圧で500倍、1000倍、2500倍、5000倍、10000倍の倍率で各1視野ずつ取得し、観察した。
【0033】
評価4:デンドライト短絡確認試験
図5に示されるような測定装置210を構築して亜鉛デンドライトを連続的に成長させる加速試験を行った。具体的には、ABS樹脂の直方体型の容器212を用意して、その中に亜鉛極214a及び銅極214bを互いに0.5cm離間し且つ対向するように配置した。亜鉛極214aは金属亜鉛板であり、銅極214bは金属銅板である。一方、LDHセパレータについてはその外周に沿ってエポキシ樹脂系接着剤を塗布して、中央に開口部を有するABS樹脂製の治具に取り付けて、LDHセパレータ216を含むLDHセパレータ構造体とした。このとき、治具とLDHセパレータの接合箇所で液密性が確保されるように上記接着剤で十分に封止した。そして、容器212内にLDHセパレータ構造体として配置して、亜鉛極214aを含む第一区画215aと銅極214bを含む第二区画215bとを互いにLDHセパレータ216以外の箇所で液体連通を許容しないように隔離した。このとき、エポキシ樹脂系接着剤を用いてLDHセパレータ構造体の外縁3辺(すなわちABS樹脂製の治具の外縁3辺)を容器212の内壁に液密性を確保できるように接着させた。すなわち、LDHセパレータ216を含むセパレータ構造体と容器212の接合部分は液体連通を許容しないように封止された。第一区画215aと第二区画215bにアルカリ水溶液218として5.4mol/LのKOH水溶液を飽和溶解度相当のZnO粉末とともに入れた。亜鉛極214a及び銅極214bを定電流電源の負極と正極にそれぞれ接続するとともに、定電流電源と並列に電圧計を接続した。第一区画215a及び第二区画215bのいずれにおいてもアルカリ水溶液218の水位はLDHセパレータ216の全領域がアルカリ水溶液218に浸漬されるようにし、かつ、LDHセパレータ構造体(治具を含む)の高さを超えない程度とした。こうして構築された測定装置210において、亜鉛極214a及び銅極214bの間に20mA/cmの定電流を最大200時間にわたって継続的に流した。その間、亜鉛極214a及び銅極214b間に流れる電圧の値を電圧計でモニタリングし、亜鉛極214a及び銅極214b間における亜鉛デンドライト短絡(急激な電圧低下)の有無を確認した。このとき、100時間以上にわたって短絡が生じなかった場合は「短絡なし」と判定し、100時間未満で短絡が生じた場合は「短絡あり」と判定した。
【0034】
評価5:He透過測定
He透過性の観点からLDHセパレータの緻密性を評価すべく、He透過試験を以下のとおり行った。まず、図6A及び図6Bに示されるHe透過度測定系310を構築した。He透過度測定系310は、Heガスを充填したガスボンベからのHeガスが圧力計312及び流量計314(デジタルフローメーター)を介して試料ホルダ316に供給され、この試料ホルダ316に保持されたLDHセパレータ318の一方の面から他方の面に透過させて排出させるように構成した。
【0035】
試料ホルダ316は、ガス供給口316a、密閉空間316b及びガス排出口316cを備えた構造を有するものであり、次のようにして組み立てた。まず、LDHセパレータ318の外周に沿って接着剤322を塗布して、中央に開口部を有する治具324(ABS樹脂製)に取り付けた。この治具324の上端及び下端に密封部材326a,326bとしてブチルゴム製のパッキンを配設し、さらに密封部材326a,326bの外側から、フランジからなる開口部を備えた支持部材328a,328b(PTFE製)で挟持した。こうして、LDHセパレータ318、治具324、密封部材326a及び支持部材328aにより密閉空間316bを区画した。支持部材328a,328bを、ガス排出口316c以外の部分からHeガスの漏れが生じないように、ネジを用いた締結手段330で互いに堅く締め付けた。こうして組み立てられた試料ホルダ316のガス供給口316aに、継手332を介してガス供給管334を接続した。
【0036】
次いで、He透過度測定系310にガス供給管334を経てHeガスを供給し、試料ホルダ316内に保持されたLDHセパレータ318に透過させた。このとき、圧力計312及び流量計314によりガス供給圧と流量をモニタリングした。Heガスの透過を1〜30分間行った後、He透過度を算出した。He透過度の算出は、単位時間あたりのHeガスの透過量F(cm/min)、Heガス透過時にLDHセパレータに加わる差圧P(atm)、及びHeガスが透過する膜面積S(cm)を用いて、F/(P×S)の式により算出した。Heガスの透過量F(cm/min)は流量計314から直接読み取った。また、差圧Pは圧力計312から読み取ったゲージ圧を用いた。なお、Heガスは差圧Pが0.05〜0.90atmの範囲内となるように供給された。
【0037】
例1
(1)高分子多孔質基材の準備
気孔率60%、平均気孔径0.05μm及び厚さ20μmの市販のポリプロピレン製多孔質基材を、2.0cm×2.0cmの大きさになるように切り出した。
【0038】
(2)高分子多孔質基材へのアルミナ・チタニアゾルコート
無定形アルミナ溶液(Al−ML15、多木化学株式会社製)と酸化チタンゾル溶液(M6、多木化学株式会社製)をTi/Al(モル比)=2となるように混合して混合ゾルを作製した。上記(1)で用意された基材をエタノール中へ1分間含浸させた後、基材が乾燥しないように素早く混合ゾル中へ移し、基材に混合ゾルをディップコートにより塗布した。ディップコートは、混合ゾル100mlに基材を浸漬させてから垂直に引き上げ、90℃の乾燥機中で5分間乾燥させることにより行った。
【0039】
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO、関東化学株式会社製、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。0.015mol/Lとなるように、硝酸ニッケル六水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO(モル比)=16の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
【0040】
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(オートクレーブ容器、内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に原料水溶液とディップコートされた基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度120℃で24時間水熱処理を施すことにより基材表面と内部にLDHの形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、多孔質基材の孔内にLDHを形成させた。こうして、LDHセパレータを得た。
【0041】
(5)評価結果
得られたLDHセパレータに対して以下の評価1〜5を行った。評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、図7A及び7Bに示されるように、本例のLDHセパレータは、1対のLDHセパレータ本体部の間にLDHが無いか又は欠乏している内部多孔層が存在することが確認された。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。
【0042】
例2
上記(2)においてエタノールへの含浸を経ることなく、基材への混合ゾルのディップコートを行ったこと以外は、例1と同様にして、内部多孔層の無いLDHセパレータ層を作製した。こうして作製された2枚のLDHセパレータ層を積層して1対のPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)、厚さ40μm)で挟み、ロール回転速度3mm/s、ローラ加熱温度100℃、ロールギャップ150μmにてロールプレスを行って、剥離性界面層を含むLDHセパレータを得た後、例1と同様にしてLDHセパレータの評価を行った。評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、図8に示されるように、本例のLDHセパレータは、1対のLDHセパレータ本体部の間に2つのLDHセパレータ本体部が剥離可能に接触する剥離性界面層が存在することが確認された。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。また、図10に評価4におけるデンドライト短絡確認試験後のLDHセパレータの状態を撮影した断面SEM画像を示す。図中、Dなる符号はデンドライトを意味する。
【0043】
例3
上記(2)においてエタノールへの含浸を経ることなく、基材への混合ゾルのディップコートを行ったこと以外は、例1と同様にして、内部多孔層の無いLDHセパレータ層を作製した。こうして作製された2枚のLDHセパレータ層を互いに約5μm程度離間させて隣り合うように配置させて、内部空間層を含む全体として1つのLDHセパレータを得た後、例1と同様にしてLDHセパレータの評価を行った。評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、図9に示されるように、本例のLDHセパレータは、1対のLDHセパレータ本体部の間にLDH及び多孔質基材が存在しない内部空間層が存在することが確認された。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。
【0044】
例4(比較)
上記(2)においてエタノールへの含浸を経ることなく、基材への混合ゾルのディップコートを行ったこと以外は、例1と同様にして内部多孔層の無いLDHセパレータを作製し、例1と同様にしてLDHセパレータの評価を行った。評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、本例のLDHセパレータは、単層のLDHセパレータでのみからなり、デンドライト緩衝層と見受けられる層は存在しなかった。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。
【0045】
例5
下記a)〜c)以外は、例1と同様にしてLDHセパレータの作製及び評価を行った。
a)上記(1)の高分子多孔質基材として、気孔率40%、平均気孔径0.05μm及び厚さ20μmの市販のポリエチレン製多孔質基材にしたこと。
b)上記(3)の原料として、硝酸ニッケル六水和物の代わりに、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)を用い、0.03mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとし、得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO(モル比)=8の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得たこと。
c)上記(4)の水熱温度を90℃としたこと。
【0046】
評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、例1と同様にように、本例のLDHセパレータは、1対のLDHセパレータ本体部の間にLDHが無いか又は欠乏している内部多孔層が存在することが確認された。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。
【0047】
例6
下記a)〜d)以外は、例1と同様にして内部多孔層の無いLDHセパレータ層を作製した。
a)上記(1)の高分子多孔質基材として、気孔率40%、平均気孔径0.05μm及び厚さ20μmの市販のポリエチレン製多孔質基材にしたこと。
b)上記(2)においてエタノールへの含浸を経ることなく、基材への混合ゾルのディップコートを行ったこと。
c)上記(3)の原料として、硝酸ニッケル六水和物の代わりに、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)を用い、0.03mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとし、得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO(モル比)=8の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得たこと。
d)上記(4)の水熱温度を90℃としたこと。
【0048】
こうして作製された2枚のLDHセパレータ層を積層して1対のPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)、厚さ40μm)で挟み、ロール回転速度3mm/s、ローラ加熱温度100℃、ロールギャップ150μmにてロールプレスを行って、剥離性界面層を含むLDHセパレータを得た後、例1と同様にしてLDHセパレータの評価を行った。評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、例2と同様に、本例のLDHセパレータは、1対のLDHセパレータ本体部の間に2つのLDHセパレータ本体部が剥離可能に接触する剥離性界面層が存在することが確認された。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。
【0049】
例7
下記a)〜d)以外は、例1と同様にして内部多孔層の無いLDHセパレータ層を作製した。
a)上記(1)の高分子多孔質基材として、気孔率40%、平均気孔径0.05μm及び厚さ20μmの市販のポリエチレン製多孔質基材にしたこと。
b)上記(2)においてエタノールへの含浸を経ることなく、基材への混合ゾルのディップコートを行ったこと。
c)上記(3)の原料として、硝酸ニッケル六水和物の代わりに、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)を用い、0.03mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとし、得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO(モル比)=8の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得たこと。
d)上記(4)の水熱温度を90℃としたこと。
【0050】
こうして作製された2枚のLDHセパレータ層を互いに約5μm程度離間させて隣り合うように配置させて、内部空間層を含む全体として1つのLDHセパレータを得た後、例1と同様にしてLDHセパレータの評価を行った。評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、例3と同様に、本例のLDHセパレータは、1対のLDHセパレータ本体部の間にLDH及び多孔質基材が存在しない内部空間層が存在することが確認された。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。
【0051】
例8(比較)
下記a)〜c)以外は、例1と同様にして内部多孔層の無いLDHセパレータを作製しし、例1と同様にしてLDHセパレータの評価を行った。
a)上記(1)の高分子多孔質基材として、気孔率40%、平均気孔径0.05μm及び厚さ20μmの市販のポリエチレン製多孔質基材にしたこと。
b)上記(2)においてエタノールへの含浸を経ることなく、基材への混合ゾルのディップコートを行ったこと。
c)上記(3)の原料として、硝酸ニッケル六水和物の代わりに、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)を用い、0.03mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとし、得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO(モル比)=8の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得たこと。
d)上記(4)の水熱温度を90℃としたこと。
【0052】
評価1の結果、本例のLDHセパレータは、LDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。評価2の結果、本例のLDHセパレータは、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。評価3の結果、本例のLDHセパレータは、単層のLDHセパレータでのみからなり、デンドライト緩衝層と見受けられる層は存在しなかった。評価4及び5の結果は表1に示されるとおりであった。
【0053】
【表1】

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10