特許第6684978号(P6684978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684978
(24)【登録日】2020年4月2日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】リニアセンサの端線接地構造
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/22 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   G01D5/22 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-34142(P2016-34142)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-150971(P2017-150971A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】濱島 徹
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−077135(JP,A)
【文献】 実開昭60−083961(JP,U)
【文献】 実開平05−008407(JP,U)
【文献】 特開平09−311057(JP,A)
【文献】 特開平10−239101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39ー5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケーシング(14)の内壁(14a)に設けられた筒状ステータ巻線(27)と、前記筒状ステータ巻線(27)の内側に設けられ軸方向(A)に沿って移動自在なプローブ(12)と、前記筒状ステータ巻線(27)の端線(27a)に接続され前記筒状ケーシング(14)の外部へ導出された複数のリード線(30)を内包する筒状ケーブル(32)と、前記筒状ケーブル(32)の内側で前記各リード線(30)を内包するためのシールド線(41)と、一端(42a)が前記シールド線(41)に接続され他端(42b)が前記筒状ケーシング(14)に直接又は間接に導通されるように構成した接地線(42)とを備えた構成よりなるリニアセンサの端線接地構造において、
前記筒状ケーシング(14)に接続され一部に切欠部(40A)を有する筒状導通部材(40)の貫通孔(40a)を前記筒状ケーブル(32)が貫通し、前記接地線(42)の前記他端(42b)が、前記筒状導通部材(40)の固定用孔(50)内に固定された固定部材(51)によって前記筒状導通部材(40)に接続され
前記筒状ケーシング(14)内には樹脂充填剤(20)が充填され、前記筒状導通部材(40)の内面(40b)と前記筒状ケーブル(32)の外面(32a)との間には、前記樹脂充填剤(20)とは異なる種類の樹脂からなる輪状樹脂部分(44)が形成され、
前記固定部材(51)は、ねじ(51b)よりなり、前記ねじ(51b)のねじ頭(51a)は前記切欠部(40A)に位置している構成よりなることを特徴とするリニアセンサの端線接地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアセンサの端線接地構造に関し、特に、複数のリード線を内包するシールド線に接続された接地線を筒状ケーシング側に固定部材を介して固定するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のリニアセンサとしては、例えば、特許文献1のアクチュエータ用位置検出器を図3図5として挙げることができる。
すなわち、図3において符号1で示されるものは、リニアセンサ(周知のLVDT)からなる位置検出器であり、この位置検出器1の筒状ケース14の内壁14aには、インナーケース25とアウターケース26に保持された筒状ステータ巻線27が内設されている。
【0003】
前記筒状ステータ巻線27の内側の空洞28内には、コア13を有するプローブ12が軸方向Aに沿って往復移動自在に構成されている。
前記筒状ステータ巻線27は、前記軸方向Aに沿って、中央に1次コイル22が設けられ、この1次コイル22の両側には、一対の2次コイル23a,23bが設けられ、前述の1次コイル22、一対の2次コイル23a,23bによって位置検出信号出力部15が構成されている。
【0004】
前記1次コイル22には、図4及び図5にて示されるように、励磁電源24が供給されており、前記各2次コイル23a、23bは、位置検出信号出力部15を構成している。
図4のように、前記プローブ12のコア13が前記筒状ケース14の内部迄挿入され、前記コア13が前記2次コイル23aと対応した状態では、1次コイル22及び2次コイル23aの磁気的結合度が、1次コイル22及び2次コイル23bの磁気的結合度よりも強くなり、2次コイル23aに誘起される交流電圧と、2次コイル23bに誘起される交流電圧とに、差が生じることになる。このため、その差に比例した交流電圧が、点A1で示す2次コイル23aの他端と点A2で示す2次コイル23bの他端との間において生じ、2次コイル23から出力される。
【0005】
また、図5のように、前記プローブ12のコア13が前記筒状ケース14の外部に引き出され、前記コア13が前記2次コイル23bと対応した状態では、1次コイル22及び2次コイル23bの磁気的結合度が、1次コイル22及び2次コイル23aの磁気的結合度よりも強くなり、2次コイル23bに誘起される交流電圧と、2次コイル23aに誘起される交流電圧とに、差が生じることになる。このため、その差に比例した交流電圧が、点A1で示す2次コイル23aの他端と点A2で示す2次コイル23bの他端との間において生じ、2次コイル23から出力される。
【0006】
また、前述の図3から図5で示されるリニアセンサの端線接地構造においては、実際には、図6で示される端線接地構造が採用されていた。
尚、図3から図5の構成と同一部分には同一符号を用いて説明する。
すなわち、図6において符号14で示されるものは筒状ケーシングであり、この筒状ケーシング14の内壁14aには、図6では示していないが、図2と同様に筒状ステータ巻線27を有するアウターケース26及びインナーケース25が設けられている。
【0007】
図3で示す前記筒状ステータ巻線27の内側には、軸方向Aに沿って往復移動自在に設けられたプローブ12が配設されており、前記プローブ12の外側には図2のインナーケース25に相当する部分が樹脂充填剤20によって形成されている。
前記筒状ステータ巻線27の端線27aは、各々リード線30に接続された後に、各リード線30がチューブ31内に内包されることによって構成される筒状ケーブル32に接続されている。
【0008】
前記筒状ケーシング14の端部14Aの前記内壁14aには、一部に貫通孔40aを有する筒状導通部材40が接続され、前記筒状導通部材40の内面40bと前記筒状ケーブル32の外面32aとの間には、前記樹脂充填剤20が配設されている。
前記筒状ケーブル32内には、前記各リード線30を内包するための筒状シールド線41が設けられ、このシールド線41には接地線42の一端42aが半田又は溶接によって接続され、この接地線42の他端42bは、溶接、半田及び接着の何れかからなる接続部43を介して筒状導通部材40の内面40bに直接接続されている。
【0009】
前記筒状導通部材40の内面40b上における軸方向Aに沿う前記樹脂充填剤20の外側位置には、前記樹脂充填剤20とは異なる硬質の樹脂材料で形成された輪状樹脂部分44が形成されており、この輪状樹脂部分44によって前記樹脂充填剤20が外部に漏れ出すことのないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−73135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のリニアセンサの端線接地構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図3及び図6のリニアセンサの図面上の左側に設けられる筒状ステータ巻線27の端線27aの接地構造においては、接地線42の他端42bの接続部43が熱や衝撃に弱く、高熱や強い衝撃が発生した場合には、接続部43が筒状導通部材40の内面40bから離脱することもある。
また、前記筒状導通部材40の内面40bの材質は半田との相性と関係があるため、筒状導通部材40の材質選択に制限が加わることになり、不具合等が発生する要因となっていた。
【0012】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、複数のリード線を内包するシールド線に接続された接地線を筒状ケーシング側に固定部材を介して固定するようにしたリニアセンサの端線接地構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるリニアセンサの端線接地構造は、筒状ケーシングの内壁に設けられた筒状ステータ巻線と、前記筒状ステータ巻線の内側に設けられ軸方向に沿って移動自在なプローブと、前記筒状ステータ巻線の端線に接続され前記筒状ケーシングの外部へ導出された複数のリード線を内包する筒状ケーブルと、前記筒状ケーブルの内側で前記各リード線を内包するためのシールド線と、一端が前記シールド線に接続され他端が前記筒状ケーシングに直接又は間接に導通されるように構成した接地線とを備えた構成よりなるリニアセンサの端線接地構造において、前記筒状ケーシングに接続され一部に切欠部を有する筒状導通部材の貫通孔を前記筒状ケーブルが貫通し、前記接地線の前記他端が、前記筒状導通部材の固定用孔内に固定された固定部材によって前記筒状導通部材に接続され、前記筒状ケーシング内には樹脂充填剤が充填され、前記筒状導通部材の内面と前記筒状ケーブルの外面との間には、前記樹脂充填剤とは異なる種類の樹脂からなる輪状樹脂部分が形成され、前記固定部材は、ねじよりなり、前記ねじのねじ頭は前記切欠部に位置している構成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるリニアセンサの端線接地構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、筒状ケーシングの内壁に設けられた筒状ステータ巻線と、前記筒状ステータ巻線の内側に設けられ軸方向に沿って移動自在なプローブと、前記筒状ステータ巻線の端線に接続され前記筒状ケーシングの外部へ導出された複数のリード線を内包する筒状ケーブルと、前記筒状ケーブルの内側で前記各リード線を内包するためのシールド線と、一端が前記シールド線に接続され他端が前記筒状ケーシングに直接又は間接に導通されるように構成した接地線とを備えた構成よりなるリニアセンサの端線接地構造において、前記筒状ケーシングに接続され一部に切欠部を有する筒状導通部材の貫通孔を前記筒状ケーブルが貫通し、前記接地線の前記他端が、前記筒状導通部材の固定用孔内に固定された固定部材によって前記筒状導通部材に接続されている構成よりなることにより、接地線は、機械的に筒状導通部材に対して固定部材によって接続されているため、熱や衝撃に対して強い接続強度を得ることができる。
また、半田との相性の悪い金属に対しても接地することができるため、筒状導通部材の材料を自由に選択することができる。
また、前記筒状ケーシング内には樹脂充填剤が充填され、前記筒状導通部材の内面と前記筒状ケーブルの外面との間には、前記樹脂充填剤とは異なる種類の樹脂からなる輪状樹脂部分が形成されていることにより、高温時において樹脂充填剤が膨張した場合でも、輪状樹脂部分により外部への漏れを防止することができる。また、前記固定部材は、ねじからなり、前記ねじのねじ頭は前記切欠部に位置していることにより、筒状導通部材に対する接地線の接続が極めて容易かつ確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるリニアセンサの端線接地構造を示す断面構造図である。
図2図1の要部の他の形態(A)〜(D)を示す構成図である。
図3】従来のリニアセンサを示す断面図である。
図4図3の筒状ステータ巻線の結線図である。
図5図4の筒状ステータ巻線のプローブを変化させた状態を示す結線図である。
図6図3の従来構成の端線接地構造の詳細を示す拡大詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明によるリニアセンサの端線接地構造は、複数のリード線を内包するシールド線に接続された接地線を筒状ケーシング側にねじを介して固定することである。
【実施例】
【0017】
以下、図面と共に本発明によるリニアセンサの端線接地構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を用いて説明する。また、図3から図5における従来のリニアセンサの断面模式図の構成については、本発明のリニアセンサと基本的に同一であるため、図3から図5の構成を本発明の構成に援用するものとする。
【0018】
図1において、符号14で示されるものは筒状ケーシングであり、この筒状ケーシング14の内壁14aには、前述の図3と同様に筒状ステータ巻線27を有するアウターケース26及びインナーケース25が設けられている(図1及び図6では図示せず)。
【0019】
図3における前記筒状ステータ巻線27の内側には、軸方向Aに沿って往復移動自在に設けられたプローブ12が配設されており、前記プローブ12の外側には図2のインナーケース25に相当する部分が樹脂充填剤20によって形成されている。
前記筒状ステータ巻線27の端線27aは、各々リード線30に接続された後に、各リード線30がチューブ31内に内包されることによって構成される筒状ケーブル32に接続されている。
【0020】
前記筒状ケーシング14の端部14Aの内側には、一部に切欠部40Aを有する筒状導通部材40が接続され、前記筒状導通部材40の内面40bと前記筒状ケーブル32の外面32aとの間には、前記樹脂充填剤20が設けられている。
【0021】
前記筒状ケーブル32内には、前記各リード線30を内包するための筒状のシールド線41が設けられ、このシールド線41には接地線42の一端42aが半田又は溶接によって接続され、この接地線42の他端42bは、前記筒状導通部材40の固定用孔50内に設けられる図2のねじ等からなる固定部材51によって、前記筒状導通部材40に接続されている。すなわち、前記他端42bが固定部材51の前記切欠部40Aに位置するねじ頭51aによって機械式に締結されている。
【0022】
前述の固定部材51は、図1及び図2の(A)で示されるねじ51bだけではなく、図2の(B)のピン51c、図2の(C)の複数のカシメ片51dを有するカシメピン51e、図2の(D)で示されるコネクタ部51fとピン51gからなるピン型コネクタ51h、の何れか1個を用いることができ、前記コネクタ部51fには前記接地線42が接続されている。
尚、図2の(A)のねじ部60、(B)のピン部61、(C)のピン部62、(D)のピン51g、が前記筒状導通部材40の固定用孔50内に、螺入又は強嵌合によって挿入することができるように構成されている。
さらに、図2に図示していない棒体等を用いて前記接地線42を筒状導通部材40に接続することもできる。
前記筒状導通部材40の内面40bにおける軸方向Aに沿う前記樹脂充填剤20の外側位置には、前記樹脂充填剤20とは異なる材質で硬質の樹脂材料で形成された輪状樹脂部分44によって前記樹脂充填剤20が外部に漏れ出すことのないように構成されている。
【0023】
尚、本発明によるリニアセンサの端線接地構造の要旨とするところは、以下の通りである。
すなわち、筒状ケーシング14の内壁14aに設けられた筒状ステータ巻線27と、前記筒状ステータ巻線27の内側に設けられ軸方向Aに沿って移動自在なプローブ12と、前記筒状ステータ巻線27の端線27aに接続され前記筒状ケーシング14の外部へ導出された複数のリード線30を内包する筒状ケーブル32と、前記筒状ケーブル32の内側で前記各リード線30を内包するためのシールド線41と、一端42aが前記シールド線41に接続され他端42bが前記筒状ケーシング14に直接又は間接に導通されるように構成した接地線42とを備えた構成よりなるリニアセンサの端線接地構造において、前記筒状ケーシング14に接続され一部に切欠部40Aを有する筒状導通部材40の貫通孔40aを前記筒状ケーブル32が貫通し、前記接地線42の前記他端42bが、前記筒状導通部材40の固定用孔50内に固定された固定部材51によって前記筒状導通部材40に接続され、前記筒状ケーシング14内には樹脂充填剤20が充填され、前記筒状導通部材40の内面40bと前記筒状ケーブル32の外面32aとの間には、前記樹脂充填剤20とは異なる種類の樹脂からなる輪状樹脂部分44が形成され、前記固定部材51は、ねじ51bよりなり、前記ねじ51bのねじ頭51aは前記切欠部40Aに位置している構成である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によるリニアセンサの端線接地構造は、筒状ケーブル内の各リード線を束ねると共に、リード線と筒状ケーブルとの間に位置する筒状のシールド線に一端が接続された接地線の他端が、筒状導通部材の固定部材によって機械式に接続されているため、熱及び振動に対しても高い耐久性を有し、信頼性の高いリニアセンサを得ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 位置検出器
12 プローブ
13 コア
14 筒状ケーシング
15 位置検出信号出力部
20 樹脂充填剤
22 1次コイル
23a,23b 2次コイル
25 インナーケース
26 アウターケース
27 筒状ステータ巻線
27a 端線
30 リード線
31 チューブ
32 筒状ケーブル
40 筒状導通部材
40a 貫通孔
40b 内面
40A 切欠部
41 シールド線
42 接地線
42a 一端
42b 他端
50 固定用孔
51 固定部材
51a ねじ頭
51b ねじ
51c ピン
51d カシメ片
51e カシメピン
51f コネクタ部
51g ピン
51h ピン型コネクタ
A 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6