(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、旋盤加工機でワークを加工する場合、チャックの奥方に設けられた内装管にロッドを挿入してチャックで保持させるようにしたものが用いられることがある。
【0003】
図9にこのような構造について説明する。符号6はローディング装置であり、ロッド61の先端にワーク3を保持させるようにしたものである。このロッド61はスライド機構によって軸方向にスライドできるようになっており、先端に保持されたワーク3を前方の旋盤加工機7の挿入口72に挿入させるようにしている。このローディング装置6には、チャック73の奥方に内装管71を設け、その内装管71にロッド61で保持されたワーク3を通すとともに、そのロッド61によって通されたワーク3をチャック73で保持させるようにしたものである。
【0004】
ところで、このような構造において、ロッド61を内装管71に挿入させる場合、ロッド61の軸と内装管71を軸合わせする必要がある。
【0005】
このような軸合わせ方法として、下記の特許文献1に示される構造が提案されている。この特許文献1に示される構造は、旋盤加工機側に起立した基準ピンを有する平面部材を設けるとともに、ローディング装置側に、この基準ピンに係合可能な凹部を有する平面状の位置決め部材を設けるようにしたものであって、チャックの軸芯上に設けた基準ピンに位置決め部材の凹部を係合させることで、それぞれを軸合わせできるようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような構造で軸合わせを行う場合、水平面における左右方向の軸合わせを行うことができるものの、上下方向における軸合わせを行うことができない。このような上下方向の位置を調整する場合、通常は、ローディング装置の四隅に設けられた脚部の調整ネジを調整して床面からの高さ位置を調整するようにしているが、ローディング装置自体非常に重いものであり、また、一方の脚部に設けられた調整ネジを調整した後、反対側に回って他方の脚部の調整ネジを調整しなければならず、何度も装置の前後を行き来しなければならない。また、ロッドの位置と脚部下端部分の高さ調整ネジの位置が離れているため、ロッドの高さ位置を確認しながら脚部の高さ調整ネジを調整することが難しくなり、作業に時間がかかるといった問題もあった。
【0008】
さらには、凹部を基準ピンに係合させたとしても、ローディング装置に人間などが強く当たってしまった場合は、凹部と基準ピンの係合状態が外れてしまい、軸がずれてしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、ローディング装置のロッドと旋盤加工機の内装管の左右方向および上下方向の軸合わせを簡単に行えるようにした軸合わせ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、旋盤加工
機の内装管の軸と、当該内装管に挿入される
ローディング装置のロッドの軸との軸合わせを行う軸合わせ構造において、
前記旋盤加工機における前記ローディング装置側に設けられる平面状の平面部材と、
前記ローディング装置における前記旋盤加工機側に設けられ、前記平面部材上に載置される上側部材と、
前記平面部材に対する当該上側部材の上下方向の位置を調整する
左右の高さ調整ネジを備えた上下調整部と、
前記平面部材に対する当該上側部材の左右方向の位置を調整する左右調整部と、
当該ローディング装置における前記旋盤加工機側と反対側のロッドの後端部の真下に設けられ、床面に対する高さを調整する調整ネジと、を設け、当該床面に対する高さを調整する調整ネジと、前記上下調整部における左右の高さ調整ネジによって三点支持で前記内装管とロッドの軸合わせを行うようにしたものである。
【0011】
このように構成すれば、平面部材に載置された上側部材の左右方向の位置や上下方向の位置を一カ所で集中的に調整することができ、脚部の高さ調整ネジを調整することなくロッドの高さ位置や左右方向の位置を見ながら調整することができるようになる。
【0012】
また、このような発明において、前記左右調整部を構成する場合、上側部材の
左右の両側面に凹部を形成するとともに、
前記旋盤加工機における平面部材の左右に設けられた側壁プレートを介して挿通されたボルトの先端を前記左右の凹部に位置させるようにする。
【0013】
このように構成すれば、凹部にボルトを入り込ませることによって、ローディング装置と旋盤加工機との連結状態を固定することができるようになる。
【0014】
さらに、前記ローディング装置における前記旋盤加工機側と反対側のロッドの後端部における構造体の真下に、床面に接地する高さ調整ネジを設けるようにする。
【0015】
このように構成すれば、旋盤加工機側では上下調整部で上下方向を調整するとともに、旋盤加工機と離れた側では、三点支持される頂点側の一カ所の高さ調整ネジで高さ調整を行うことができるようになる。そして、他の高さ調整ネジを調整して床面に設置させることで、ローディング装置を軸合わせした状態で安定させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、旋盤加工
機の内装管の軸と、当該内装管に挿入される
ローディング装置のロッドの軸との軸合わせを行う軸合わせ構造において、
前記旋盤加工機における前記ローディング装置側に設けられる平面状の平面部材と、
前記ローディング装置における前記旋盤加工機側に設けられ、前記平面部材上に載置される上側部材と、
前記平面部材に対する当該上側部材の上下方向の位置を調整する
左右の高さ調整ネジを備えた上下調整部と、
前記平面部材に対する当該上側部材の左右方向の位置を調整する左右調整部と、
当該ローディング装置における前記旋盤加工機側と反対側のロッドの後端部の真下に設けられ、床面に対する高さを調整する調整ネジと、を設け、当該床面に対する高さを調整する調整ネジと、前記上下調整部における左右の高さ調整ネジによって三点支持で前記内装管とロッドの軸合わせを行うようにしたので、平面部材に載置された上側部材の左右方向の位置や上下方向の位置を一カ所で集中的に調整することができ、脚部の高さ調整ネジを調整することなくロッドの高さ位置や左右方向の位置を見ながら調整することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1に示すように、この実施の形態における軸合わせ構造4は、ワーク3を加工する旋盤加工機2と、この旋盤加工機2にワーク3を挿入するローディング装置1を備えるものであって、ローディング装置1と旋盤加工機2との連結部分の一カ所で、ローディング装置1を上下方向および左右方向に調整してロッド13と内装管21との軸合わせを行えるようにしたものである。なお、本実施の形態においては、旋盤加工機2にロッド13を挿入する方向を前方とし、その逆方向を後方として説明する。
【0020】
まず、ローディング装置1は、ワーク3を旋盤加工機2に供給できるようにしたものであって、シューター17の上部に設けられた図示しない収容部から短尺状のワーク3を一つずつ取り出し、
図3に示すように、これを移送部11でロッド13の前方まで移動させてロッド13の先端で保持させるように構成されている。このローディング装置1は、床面に接地する四隅部分に高さ調整ネジ10cを設けた構造体10の上に設けられており、ワーク3をロッド13の前方まで移動させる移送部11と、この移送部11によって移送されてきたワーク3を保持させるロッド13と、このようにワーク3を保持したロッド13を軸方向にスライドさせるスライド機構16などを有するように構成されている。
【0021】
このうち移送部11は、
図1や
図3に示すように、収容部からのシューター17に沿って斜め下方に落下してきたワーク3を、その傾斜方向に受け取り、角度変更機構12を介して水平状態にした後(
図4(a)の状態)、紙面手前側のロッド13の前方まで移動させるようにしている(
図3の状態)。なお、このとき方向性を有するワーク3(例えば、
図3に示すような小径部31と大径部32を有するようなワーク3)を供給する場合、その方向を揃えた状態でシューター17を介して落下させるか、あるいは、移送部11で180度方向転換させてワーク3の方向を揃えておくようにしている。
【0022】
ロッド13は、旋盤加工機2のチャック23の奥方に設けられた内装管21に挿入される長尺状の部材で構成されるものであって、
図3に示すように、その先端部分にワーク3を保持する保持部13を設けている。この保持部13は、ワーク3の大径部32の内側に設けられた穴32aを内側から押圧できるような内側押圧部13aを設けており、内側からワーク3を保持できるようにしている。また、この内側押圧部13aは、漸次先端側へ向かって小径となるようなテーパー形状をなしており、しかも、ワーク3の穴32aに挿入された際には、弾性によって内側から押圧できるような溝14bを設けて内側からワーク3を内側から強く押圧できるようにしている。
【0023】
このロッド13は、軸方向にスライド機構16を介してスライドされる。このスライド機構16は、ロッド13を取り付けたホルダー15を軸方向にスライドさせるようにしたものであって、タイミングベルトやサーボモーターなどを用いて、ホルダー15をスライドレールに沿ってスライドさせるように構成されている。
【0024】
一方、旋盤加工機2は、短尺状のワーク3を加工するもので、
図1や
図4に示すように、中空の内装管21の端部に設けられたチャック23と、そのチャック23に保持されたワーク3を切削するバイトなどを備えて構成されている。そして、そのチャック23で保持されたワーク3を回転させることで、その前方に設けられたバイトでワーク3を加工させるようにしている。このチャック23の奥方は、ローディング装置1側に貫通する内装管21が設けられており、そのローディング装置1側の挿入口22からロッド13を挿入できるようになっている。
【0025】
このような構成において、ロッド13に保持されたワーク3を内装管21に挿入してチャック23に把持させる場合、あらかじめロッド13と内装管21の軸とを合わせしておく必要があるとともに、ローディング装置1に人間などが強く当たった場合であっても、その軸をズレないようにしておく必要がある。そこで、ここでは次に示すような軸合わせ構造4を用いて軸合わせするようにしている。
【0026】
この軸合わせ構造4は、
図5および
図6に示すように、旋盤加工機2側にブラケット41を介して取り付けられる平面部材42と、その平面部材42の上に載置されるローディング装置1側の上側部材46とを設け、この上側部材46を平面部材42に載置させた状態で上下調整部450や左右調整部480を用いて一カ所で上下方向および左右方向の位置を調整できるようにしている。
【0027】
この平面部材42は、旋盤加工機2の後面側に設けられた横長状のブラケット41の底面側に取り付けられており、ローディング装置1側に突出した載置面を形成できるようにしている。また、これに対応して、ローディング装置1の構造体10には、その平面部材42に載置されるような上側部材46を前面上部側に設けるようにしている。そして、上下調整部450として、その平面部材42に上下方向へ貫通したネジ孔48を設け、その下方からボルト49を挿入して上側部材46を上下方向に押し上げられるようにしている。この上側部材46を持ち上げるためのボルト49の位置としては、内装管21の軸に対して左右対称となるような位置としているが、内装管21の軸上にも設けるようにしてもよい。内装管21の軸に対して左右対称となる位置に設けるようにすれば、ローディング装置1が左右にガタつくことがなくなり、安定してローディング装置1を固定することができるようになる。一方、内装管21の軸上に設けた場合は、その軸上のボルトだけで高さ位置を調整することができるようになる。
【0028】
また、この旋盤加工機2側に設けられたブラケット41の左右側面には、側壁プレート43が設けられ、全体としてコの字形状をなすように上側部材46を囲めるようにしている。この側壁プレート43は、縦長方向の長孔44を介してブラケット41にボルト44で固定されており、また、コの字状の突出した部分には、左右方向に貫通したネジ孔45(
図6参照)を介してボルト45aが取り付けられるようになっている。そして、左右調整部450として、この側壁プレート43に取り付けられたボルト45を介して、上側部材46を側面方向から押圧し、これによって、ローディング装置1の左右方向の位置を調整できるようにしている。また、この実施の形態においては、上側部材46の側面にボルト45aの先端が入り込むような凹部47を両側に形成し、これらの凹部47にボルト45aを入り込ませることでローディング装置1と旋盤加工機2の連結状態が外れないようにしている。このようにして上下調整部480や左右調整部450を用いて上側部材46の上下方向の位置や左右方向の位置を調整し、また、連結された軸合わせ状態を固定できるようにしている。
【0029】
一方、この連結部分と反対側のロッド13の後端側では、
図2に示すように、そのロッド13の軸芯の真下部分であって構造体10の下端部分に高さ調整ネジ10mを設けるようにしており、この高さ調整ネジ10mの一カ所でロッド13の後端部分における高さ調整を行えるようにしている。
【0030】
そして、このように旋盤加工機2との連結部分で上下方向や左右方向の軸合わせをするとともに、後端部分での高さ調整を行い、その後、構造体10の四隅に設けられた高さ調整ネジ10cを地面に接地させてガタつきを抑えるようにしている。
【0031】
次に、このように構成された軸合わせ構造4における軸合わせの方法について説明する。
【0032】
まず、旋盤加工機2とローディング装置1を連結させる際、旋盤加工機2側の平面部材42の上にローディング装置1側の上側部材46を載せるようにする。このとき、旋盤加工機2側のブラケット41の左右両側面に設けられた側壁プレート43は、長孔44を介してある程度自由に上下に動くように固定しておく。
【0033】
そして、この状態でロッド13を前進させて旋盤加工機2の内装管21の位置とロッド13の軸を接近させ、それぞれの軸が合うように上下調整部480のボルト49を回転させる。このとき上下調整部480のボルト49を回転させると、そのボルト49によって上側部材46が持ち上げられ、高さ位置を調整することができる。なお、このように高さ位置を調整する場合、平面部材42や上側部材46がローディング装置1の構造体10の上側に設けられているため、ロッド13の先端位置を見ながら高さ調整を行うことができるようになる。
【0034】
次に、このように高さ調整を行った後、上側部材46の側面に設けられた凹部47にボルト45aが入り込むように左右調整部450のボルト45aを位置合わせし、その状態で側壁プレート43の長孔44に設けられたボルト44aを強く締め付ける。
【0035】
そして、その状態で左右調整部450のボルト45aを回転させ、左右方向に上側部材46を押圧して左右方向の位置を調整する。このときも同様に、ロッド13の先端位置を見ながらボルト45aを回転させて左右方向の位置の調整を行うことができるようになる。そして、左右方向の位置を調整した状態で左右に設けられたボルト45aを強く締めて固定する。このような作業により、ロッド13の先端側における軸合わせが行われるとともに、凹部47にボルト45aが入り込んでいるため、旋盤加工機2との連結状態を固定することができる。
【0036】
次に、このように先端側の軸合わせを行った後、ロッド13の後端側真下に設けられた構造体10の高さ調整ネジ10mを調整し、後端側における高さを調整する。この際、ローディング装置1の前方側では、平面部材42に上下調整部の二つのボルトで支持されており、後方側では構造体10の高さ調整ネジ10mで支持されることになるため、三点支持でローディング装置1を支えることができるようになる。
【0037】
そして、このように三点支持させた後、構造体10におけるガタつきを防止するために、四隅の脚部に設けられた高さ調整ネジ10cを調整して床面に接地させる。このとき、その高さ調整ネジ10は、床面に軽く接地させる程度としておく。そして、このように軸合わせとローディング装置1の連結状態を固定した後、ローディング装置1や旋盤加工機2を用いてワーク3を加工させるようにする。
【0038】
このように上記実施の形態によれば、旋盤加工
機2の内装管21の軸と、当該内装管21に挿入される
ローディング装置1のロッド13の軸との軸合わせを行う軸合わせ構造4において、
前記旋盤加工機2における前記ローディング装置1側に設けられる平面状の平面部材42と、
前記ローディング装置1における前記旋盤加工機2側に設けられ、前記平面部材42上に載置される上側部材46と、
前記平面部材42に対する当該上側部材46の上下方向の位置を調整する
左右の高さ調整ネジを備えた上下調整部480と、
前記平面部材42に対する当該上側部材46の左右方向の位置を調整する左右調整部450と、
当該ローディング装置1における前記旋盤加工機2側と反対側のロッドの後端部の真下に設けられ、床面に対する高さを調整する調整ネジ10mと、を設け、当該床面に対する高さを調整する調整ネジと、前記上下調整部における左右の高さ調整ネジによって三点支持で前記内装管とロッドの軸合わせを行うようにしたので、平面部材42に載置された上側部材46の左右方向の位置や上下方向の位置を一カ所で調整することができ、脚部4カ所の調整ネジ10cを調整することなくロッド13の高さ位置などを見ながら簡単に調整することができるようになる。
【0039】
また、左右調整部450を構成する場合、上側部材46の
左右の両側面に凹部47を形成するとともに、
前記旋盤加工機2における平面部材42の左右に設けられた側壁プレート43を介して挿通されたボルト44aの先端を前記左右の凹部47に位置させるようにしたので、凹部47にボルト
44aを入り込ませることによって、ローディング装置1と旋盤加工機2との連結状態を固定することができるようになる。
【0040】
さらに、
前記ローディング装置1における前記旋盤加工機2側と反対側のロッド13の後端部における構造体の真下に、床面に接地する高さ調整ネジ10cを設けるようにしたので、ローディング装置1を軸合わせした状態で安定させることができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、上下調整部480として平面部材42の上下方向に設けられたボルト49で高さ調整を行うようにしたが、下方からのボルト49の調整を行うことが困難な場合は、側面側から調整できるような機構を設けて高さ調整を行えるようにしてもよい。このような機構としては、例えば、
図7に示すように、左右方向に沿った長尺状のシャフトネジ49aを設けるとともに、そのシャフトネジ49aに楔状部材49bを設け、その楔状部材49bを進退させることで、その楔上部材49bの傾斜面に沿って鉛直方向に突出する鉛直部材49cを設けて、上下方向に突出させるようにしてもよい。
【0043】
また、このように平面部材42の下方や側面からの作業で高さ調整を行うようにするのではなく、上側からボルトを回転させることで上側部材46を持ち上げるようにして平面部材42からの高さ調整を行えるようにしてもよい。
【0044】
さらに、上記実施の形態では、左右調整部450として、上側部材46の側面を押圧させるようにしたが、
図8に示すように、左右の側壁プレート43と上側部材46に貫通するようなシャフトネジ45bを設け、そのシャフトネジ45bを上側部材46の内部に固定されたネジ孔45cに通すことで、上側部材46を左右方向に移動させるようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態では、上側部材46の側面に設けられた凹部47にボルト45aを押圧してローディング装置1と旋盤加工機2との連結状態を固定できるようにしたが、上下調整部480のボルト49が当たる上側部材46の底面側に凹部を形成して連結状態を固定できるようにしてもよい。