(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る眼科装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
[構成]
図1に、実施形態に係る眼科装置の外観構成の概略を模式的に示す。実施形態に係る眼科装置1は、自覚検査と他覚測定とが可能な装置である。自覚検査は、被検者の眼(被検眼)に視標を呈示し、その見え方に関する被検者からの応答に基づいて被検眼に関する情報を取得するための検査である。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主として物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得するための測定である。
【0012】
眼科装置1は、有線又は無線の通信路を介して図示しない検者用コントローラ(例えば、タブレット端末)や被検者用コントローラ(例えば、コントロールレバーユニット)などと通信接続が可能である。眼科装置1は、検者用コントローラや被検者用コントローラに対する操作に基づいて制御される。以下では、被検者から見て左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、被検者から見て測定ヘッド100の奥行き方向をZ方向として説明する場合がある。また、以下では、鉛直方向を略鉛直方向と同一視して説明する場合がある。
【0013】
眼科装置1は、測定ヘッド(レフラクタ、フォロプタ)100と、制御装置200とを含む。測定ヘッド100には、上記の自覚検査や他覚測定等を行うための光学系や光学素子を移動する移動機構が設けられている。制御装置200は、測定ヘッド100に対する制御や、検者用コントローラや被検者用コントローラに対する制御を行う。
【0014】
眼科装置1は、検眼用テーブル3を備える。検眼用テーブル3は、測定ヘッド100の支持や検者用コントローラ又は被検者用コントローラの載置などのための机である。検眼用テーブル3は、支持部4によって床の上に支持された状態で設置される。検眼用テーブル3は、高さを上下に調節可能である。
【0015】
検眼用テーブル3には、支柱5が立設される。支柱5の先端部には、横アーム6の基端部が保持される。横アーム6の先端部には、測定ヘッド100が吊り下げられている。例えば、支柱5は、アーム移動機構7により軸回り方向(矢印方向j、矢印方向k)に回動可能である。それにより、横アーム6は、軸回り方向に回動される。すなわち、測定ヘッド100は、軸回り方向に回動される。それにより、検眼用テーブル3の上方の検査空間から測定ヘッド100を退避させることが可能になり、検眼用テーブル3上の空きスペースを利用して効率的に検査を進めることができるようになる。
【0016】
アーム移動機構7は、アーム上下動機構として、支柱5の先端部を上下方向(矢印方向h)に移動するようにしてもよい。それにより、横アーム6は、上下方向に移動される。すなわち、測定ヘッド100は、上下方向に移動される。アーム移動機構7は、アーム伸縮機構として、検眼用テーブル3から上方に突出する支柱5を伸縮させることにより横アーム6を上下方向に移動してもよい。この場合でも、検眼用テーブル3の上方の検査空間から測定ヘッド100を退避させることが可能になる。
【0017】
測定ヘッド100を保管するための台などを別途に設け、前述の回動や上下方向の移動により測定ヘッド100を安定した位置に配置するようにしてもよい。この場合、測定ヘッド100の重さに起因した横アーム6への継続的な負荷の低減が可能になる。
【0018】
アーム移動機構7は、操作者による操作を受け、手動により軸回り方向や上下方向に横アーム6を移動することが可能である。アーム移動機構7は、電気的な機構で横アーム6を移動してもよい。この場合、アーム移動機構7を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。
【0019】
支持部4の側面には格納部9が設けられ、制御装置200などが格納される。なお、検眼用テーブル3の構成は、
図1に示す構成に限定されるものではない。
【0020】
〔測定ヘッド〕
測定ヘッド100は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを含む。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rには、それぞれ検眼窓130L、130Rが形成されている。被検者の左眼(左被検眼)は、検眼窓130Lを通じて検査が行われる。被検者の右眼(右被検眼)は、検眼窓130Rを通じて検査が行われる。
【0021】
図2に、実施形態に係る測定ヘッド100の構成例のブロック図を示す。測定ヘッド100は、移動機構110と、左眼用検査ユニット120Lと、右眼用検査ユニット120Rとを含む。移動機構110は、横アーム6により上方から吊り下げられる。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、移動機構110により独立に又は連動して3次元的に移動される。左眼用検査ユニット120Lは、左被検眼の検査用の光学系を収容する。右眼用検査ユニット120Rは、右被検眼の検査用の光学系を収容する。
【0022】
(移動機構)
移動機構110は、水平動機構111L、111Rと、回動機構112L、112Rと、上下動機構113L、113Rとを含む。移動機構110は、アーム移動機構7をさらに含んでもよい。
【0023】
水平動機構111Lは、回動機構112L、上下動機構113L及び左眼用検査ユニット120Lを水平方向(横方向(X方向)、前後方向(Z方向))に移動する。それにより、左被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Lの水平方向の位置を調整することができる。水平動機構111Lは、例えば、駆動手段や駆動手段により発生された駆動力を伝達する駆動力伝達手段などを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて回動機構112L等を水平方向に移動する。水平動機構111Lは、操作者による操作を受け、前述の回動機構112L等を水平方向に手動で移動することも可能である。
【0024】
水平動機構111Rは、回動機構112R、上下動機構113R及び右眼用検査ユニット120Rを水平方向に移動する。それにより、右被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Rの水平方向の位置を調整することができる。水平動機構111Rは、水平動機構111Lと同様の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて回動機構112R等を水平方向に移動する。水平動機構111Rは、操作者による操作を受け、前述の回動機構112R等を水平方向に手動で移動することも可能である。
【0025】
回動機構112Lは、鉛直方向(略鉛直方向)に延びる左眼用の回動軸(左回動軸)を中心に上下動機構113L及び左眼用検査ユニット120Lを回動する。この回動軸と水平面とのなす角は、変更可能である。回動機構112Lは、例えば、駆動手段や駆動手段により発生された駆動力を伝達する駆動力伝達手段などを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて当該回動軸を中心に左眼用検査ユニット120L等を回動する。回動機構112Lは、操作者による操作を受け、当該回動軸を中心に左眼用検査ユニット120L等を手動で回動することも可能である。
【0026】
回動機構112Rは、鉛直方向に延びる右眼用の回動軸(右回動軸)を中心に上下動機構113R及び右眼用検査ユニット120Rを回動する。この回動軸と水平面とのなす角は、変更可能である。右眼用の回動軸は、左眼用の回動軸から所定の距離だけ離間した位置に配置された軸である。左眼用の回動軸と右眼用の回動軸との間の距離は、調整可能である。回動機構112Rは、回動機構112Lと同様の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて当該回動軸を中心に右眼用検査ユニット120R等を回動する。回動機構112Rは、操作者による操作を受け、当該回動軸を中心に右眼用検査ユニット120R等を手動で回動することも可能である。
【0027】
回動機構112L、112Rにより左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを回動することにより、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rとの向きを相対的に変更することが可能である。例えば、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rとが、被検者の左右眼の眼球回旋点を中心にそれぞれ逆方向に回転される。それにより、被検眼を輻輳させることができる。
【0028】
上下動機構113Lは、左眼用検査ユニット120Lを上下方向(鉛直方向、Y方向)に移動する。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Lの高さ方向の位置を調整することができる。上下動機構113Lは、例えば、駆動手段や駆動手段により発生された駆動力を伝達する駆動力伝達手段などを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて左眼用検査ユニット120Lを上下方向に移動する。上下動機構113Lは、操作者による操作を受け、左眼用検査ユニット120Lを上下方向に手動で移動することも可能である。
【0029】
上下動機構113Rは、右眼用検査ユニット120Rを上下方向に移動する。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Rの高さ方向の位置を調整することができる。上下動機構113Rは、上下動機構113Lによる移動に連動して右眼用検査ユニット120Rを移動してもよいし、上下動機構113Lによる移動とは独立に右眼用検査ユニット120Rを移動してもよい。上下動機構113Rは、上下動機構113Lと同様の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて右眼用検査ユニット120Rを上下方向に移動する。上下動機構113Rは、操作者による操作を受け、右眼用検査ユニット120Rを上下方向に手動で移動することも可能である。
【0030】
図3及び
図4に、実施形態に係る移動機構110の構成例を模式的に示す。
図3は、実施形態に係る測定ヘッド100の概略構成を示す斜視図を模式的に表している。
図4は、回動機構112L、上下動機構113L及び左眼用検査ユニット120L等を横方向から見たとき側面図を模式的に表している。
【0031】
横アーム6は、少なくともX方向に延びる保持部材140を支持部材として上方から支持する。保持部材140のX方向の両端部の近傍には、水平動機構111L、111Rが設けられている。水平動機構111Lは、Z方向移動機構111ZLと、X方向移動機構111XLとを含む。水平動機構111Rは、Z方向移動機構111ZRと、X方向移動機構111XRとを含む。移動機構110について、左眼用検査ユニット120Lを移動するための機構と右眼用検査ユニット120Rを移動するための機構とは左右対称に構成されている。以下、特に指摘しない限り、左眼用検査ユニット120Lを移動するための機構について説明する。
【0032】
Z方向移動機構111ZLは、保持部材140の両端部の一方の近傍に固設され、Z方向移動部材をZ方向に移動する。Z方向移動部材にはX方向移動機構111XLが固設される。それにより、Z方向移動機構111ZLはX方向移動機構111XLをZ方向に移動することができる。例えば、保持部材140にはリニアベアリングが固定されており、このリニアベアリングによりZ方向移動部材がZ方向に移動可能に保持部材140に保持されている。Z方向移動機構111ZLは、Z方向移動部材を移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられてもよい。この場合、Z方向移動機構111ZLは、制御装置200からの制御信号に基づいてアクチュエータにより発生された駆動力によりZ方向移動部材をZ方向に移動する。また、Z方向移動機構111ZLは、手動によりZ方向移動部材をZ方向に移動することも可能である。
【0033】
X方向移動機構111XLは、少なくともZ方向に延びるアーム部材141LをX方向に移動する。それにより、X方向移動機構111XLはアーム部材141LをX方向に移動することができる。例えば、アーム部材141Lにはリニアベアリングが固定されており、このリニアベアリングによりアーム部材141LがX方向に移動可能にZ方向移動部材に保持されている。X方向移動機構111XLは、アーム部材141Lを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられてもよい。この場合、X方向移動機構111XLは、制御装置200からの制御信号に基づいてアクチュエータにより発生された駆動力によりアーム部材141LをX方向に移動する。また、X方向移動機構111XLは、手動によりアーム部材141LをX方向に移動してもよい。
【0034】
アーム部材141Lの先端部には回動機構112Lが設けられている。回動機構112Lには、少なくともZ方向に延びるアーム部材142Lの基端部が接続されている。回動機構112Lは、Y方向に延びる回動軸CLを中心にアーム部材142Lを回動する。例えば、回動機構112Lは、ウォームギアを含み、ウォームギアによりアーム部材142Lを回動軸CLを中心に回動する。回動機構112Lは、アーム部材141Lを回動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられてもよい。この場合、回動機構112Lは、制御装置200からの制御信号に基づいてアクチュエータにより発生された駆動力によりアーム部材141Lを回動する。また、回動機構112Lは、手動によりアーム部材141Lを回動してもよい。
【0035】
回動機構112Lの先端部の下方には、上下動機構113Lの基端部が取り付けられている。上下動機構113Lの先端部には左眼用検査ユニット120Lが取り付けられている。上下動機構113Lは左眼用検査ユニット120LをY方向に移動する。例えば、上下動機構113Lは、ギアと昇降ネジとを含み、ギアを回動することにより昇降ネジを回動することで、上下動機構113Lの先端部に設けられた左眼用検査ユニット120LがY方向に移動する。上下動機構113Lは、左眼用検査ユニット120Lを移動するための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられてもよい。この場合、上下動機構113Lは、制御装置200からの制御信号に基づいてアクチュエータにより発生された駆動力により左眼用検査ユニット120LをY方向に移動する。また、上下動機構113Lは、手動により左眼用検査ユニット120LをY方向に移動してもよい。
【0036】
回動軸CLは、左眼用検査ユニット120Lが収容する光学系の作動距離WDに所定の距離VLを加算した距離だけ光学系の光軸OLに沿って光学系から離れた位置にて光軸OLに直交する鉛直線上に配置される(
図4)。この実施形態では、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のアライメントが合致した状態で、回動軸CLが当該鉛直線上に配置される。所定の距離は、角膜頂点と眼球回旋点との間の標準距離であってよい。標準距離は、模型眼により規定された距離であってよい。模型眼には、Gullstrandの模型眼などがある。それにより、回動軸CLを左被検眼ELの眼球回旋点EpLを通る直線(鉛直線)上に配置することができ、眼球回旋点EpLを中心にアーム部材142Lを回動することが可能になる。
【0037】
以上のように、水平動機構111Lは、回動機構112Lと上下動機構113Lと左眼用検査ユニット120Lとを水平方向に移動することが可能である。回動機構112Lは、上下動機構113Lと左眼用検査ユニット120Lとを回動軸CLを中心に回動することが可能である。上下動機構113Lは、左眼用検査ユニット120LをY方向に移動することが可能である。
【0038】
このような構成によれば、保持部材140から上方に水平動機構111L、111Rが設けられ、水平動機構111L、111Rにより水平方向に移動されるアーム部材141L、141Rの下方に上下動機構113L、113Rが設けられる。それにより、移動機構110の上下方向のサイズを小さくすることができる。また、アーム部材141L、141Rの下方に左眼用検査ユニット120L、右眼用検査ユニット120Rが配置されるため、被検者と測定ヘッド100との間に空間を設け、被検者が圧迫感を持つことなく検査を受けることが可能になる。
【0039】
(各検査ユニットの構成)
左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、個別に動作可能である。
【0040】
図2に示すように、左眼用検査ユニット120Lは、第1視標呈示部122Lと、第1他覚測定部123Lとを含む。第1視標呈示部122Lは、複数の視標を選択的に左被検眼に呈示する。第1他覚測定部123Lは、左被検眼の他覚屈折測定を行うために用いられる。左眼用検査ユニット120Lには、左被検眼と後述の偏向部材Pとの間に配置可能な複数の光学素子を選択的に左被検眼に適用する光学素子適用部が設けられていてもよい。
【0041】
右眼用検査ユニット120Rは、第2視標呈示部122Rと、第2他覚測定部123Rとを含む。第2視標呈示部122Rは、複数の視標を選択的に右被検眼に呈示する。第2他覚測定部123Rは、右被検眼の他覚屈折測定を行うために用いられる。右眼用検査ユニット120Rには、右被検眼と後述の偏向部材Pとの間に配置可能な複数の光学素子を選択的に右被検眼に適用する光学素子適用部が設けられていてもよい。
【0042】
左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rには、
図5に示すような光学系が収容されている。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、その光学系を動作させることで、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれに対して、視標呈示部を用いた自覚検査と他覚測定部を用いた他覚屈折測定とを実行するように構成されている。検者や被検者は、コントローラ等を適宜操作することにより検査を行う。
【0043】
各検査ユニットに上記の光学素子適用部が設けられる場合、光学素子適用部は、複数の光学素子と駆動機構とを含む。複数の光学素子は、被検眼の視機能を検査するための各種レンズからなる集合であり、例えば、球面レンズ、円柱レンズ、累進レンズ及びプリズムレンズのうち少なくとも1つを含む。複数の光学素子は、検眼パラメータの種別ごとに組分けされる。例えば、検眼パラメータの種別は、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数及びプリズム方向のうち少なくとも1つを含む。検眼パラメータの種別ごとの組分けとして、球面度数の組は、複数の球面レンズを含み、それぞれ異なる球面度数の球面レンズにより構成される。乱視度数の組は、複数の円柱レンズを含み、それぞれ異なる乱視度数の円柱レンズにより構成される。なお、乱視度数の組は、さらに乱視軸角度ごとに組分けされてもよい。加入度数の組は、複数の累進レンズを含み、それぞれ異なる加入度数の累進レンズにより構成される。プリズム度数の組は、複数のプリズムレンズを含み、それぞれ異なるプリズム度数のプリズムレンズにより構成される。なお、プリズム度数の組は、さらにプリズム方向ごとに組分けされてもよい。瞳孔間距離は、被検眼の瞳孔間距離に合わせて設定される検査条件である。瞳孔間距離は、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rの一方又は双方が、水平方向(
図1の矢印方向m)にスライドすることにより設定される。
【0044】
各検査ユニットに含まれる駆動機構は、複数の光学素子のそれぞれを検眼窓に配置させ、且つ、検眼窓から退避させることが可能に構成される。各検査ユニットに含まれる駆動機構は、制御装置200から制御信号を受けて光学素子を切り替える。それにより、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数及びプリズム方向のうち少なくとも1つを切り替えて被検眼に適用することが可能である。
【0045】
〔光学系の構成〕
図5に、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rに収容された光学系の構成例のブロック図を示す。左眼用検査ユニット120Lは、偏向部材Pと、視標呈示光学系10Lと、撮影光学系20Lと、アライメント光学系30Lと、レフ測定光学系40Lと、ケラト測定光学系50Lとを含む。左眼用検査ユニット120Lには、対物レンズ60と、移動レンズ70と、反射ミラーMと、ビームスプリッタBS1〜BS3とが設けられている。左眼用検査ユニット120Lに含まれる偏向部材Pを、例えば、上下動機構113Lの下方に配置することが可能である。右眼用検査ユニット120Rは、偏向部材Pと、視標呈示光学系10Rと、撮影光学系20Rと、アライメント光学系30Rと、レフ測定光学系40Rと、ケラト測定光学系50Rとを含む。右眼用検査ユニット120Rには、対物レンズ60と、移動レンズ70と、ビームスプリッタBS1〜BS3とが設けられている。右眼用検査ユニット120Rに含まれる偏向部材Pを、例えば、上下動機構113Rの下方に配置することが可能である。左眼用検査ユニット120Lの光学系と右眼用検査ユニット120Rの光学系とは左右対称に構成されている。以下、特に指摘しない限り、左眼用検査ユニット120Lの光学系について説明することとする。
【0046】
視標呈示光学系10Lは、左被検眼ELの眼底Efに視標を投影するための光学系である。視標呈示光学系10Lは、LCD(Liquid Crystal Display)11を含む。LCD11は、検眼用や眼位検査用の各種の視標(チャート)を表示する。LCD11には、風景チャートからなる固視標、視力検査用のランドルト環等の視力チャート、クロスシリンダテストチャート、乱視検査用の放射チャート、斜位検査用の十字チャート、レッドグリーンテストチャートなどの視標が選択的に表示される。
【0047】
移動レンズ70は、視標呈示光学系10Lの光軸方向に移動可能である。移動レンズ70は、駆動機構70Lにより移動される。駆動機構70Lは、制御装置200からの制御信号を受けて移動レンズ70を移動させる。それにより、左被検眼ELに付加される球面度を変更することが可能である。例えば、左被検眼ELの屈折力に応じた移動量だけ移動レンズ70を光軸方向に移動させることにより、左被検眼ELに対する固視雲霧を行うことができる。
【0048】
LCD11からの光は移動レンズ70を通過し、反射ミラーMにより反射される。反射ミラーMにより反射された光は、ビームスプリッタBS2を透過し、ビームスプリッタBS1により反射される。ビームスプリッタBS1により反射された光は、対物レンズ60を通過し、偏向部材Pにより左被検眼ELの眼底Efに向けて偏向される。
【0049】
視標呈示光学系10Lには、左被検眼ELの乱視度数及び乱視軸角度を調整するためのVCCレンズやプリズム度数及びプリズム基底方向を調整するためのロータリープリズムが設けられていてもよい。
【0050】
撮影光学系20Lは、左被検眼ELの前眼部を撮影するための光学系である。撮影光学系20Lは、CCD(Charged−Coupled Device)21を含む。例えば図示しない前眼部照明系により左被検眼ELの前眼部が照明されると、偏向部材Pには、左被検眼ELの前眼部からの反射光が入射する。偏向部材Pは、反射光を対物レンズ60に向けて偏向する。偏向部材Pにより偏向された反射光は、対物レンズ60を通過し、ビームスプリッタBS1、BS3を透過し、図示しないCCDレンズ等によりCCD21の受光面に結像される。また、撮影光学系20Lは、レフ測定やケラト測定において左被検眼ELに投影された測定光束の反射光を受光する受光系として機能する。
【0051】
アライメント光学系30Lは、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のXY方向のアライメントを行うための光学系である。アライメント光学系30Lは、アライメント用の光束(スポット光)を左被検眼ELに投影する。アライメント用の光束は、ビームスプリッタBS3により反射され、ビームスプリッタBS1を透過し、対物レンズ60を通過し、偏向部材Pにより左被検眼ELの眼底Efに向けて偏向される。左被検眼ELに投射されたアライメント用の光束の反射光は、入射経路と同じ経路で戻り、ビームスプリッタBS3を通過し、撮影光学系20LのCCD21により受光される。
【0052】
レフ測定光学系40Lは、左被検眼ELのレフ測定(他覚屈折測定)を行うための光学系である。レフ測定光学系40Lにより出射されたレフ測定用の光束は、ビームスプリッタBS2により反射され、ビームスプリッタBS1により反射され、対物レンズ60を通過し、偏向部材Pにより左被検眼ELの眼底Efに向けて偏向される。左被検眼ELに投射されたレフ測定用の光束の反射光は、入射経路と同じ経路で戻り、ビームスプリッタBS1、BS3を通過し、撮影光学系20LのCCD21により受光される。
【0053】
ケラト測定光学系50Lは、左被検眼ELのケラト測定を行うための光学系である。ケラト測定光学系50Lにより出射されたケラトリング光源からのリング状光束は、左被検眼ELの角膜により反射されると、偏向部材Pには、左被検眼ELの前眼部からのリング状光束の反射光が入射する。偏向部材Pにより偏向された反射光は、対物レンズ60を通過し、ビームスプリッタBS1、BS3を透過し、図示しないCCDレンズ等によりCCD21の受光面に結像される。
【0054】
左眼用検査ユニット120Lは、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のZ方向のアライメントを行うための光学系(図示せず)を含む。このような光学系は、光軸方向(Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を左被検眼ELに照射する光源を含む。右眼用検査ユニット120Rは、左眼用検査ユニット120Lと同様に、右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のZ方向のアライメントを行うための光学系(図示せず)を含む。このような光学系は、光軸方向(Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を右被検眼ERに照射する光源を含む。
【0055】
測定ヘッド100は、後述の制御系の制御により、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれの光学系のアライメント、他覚式検眼測定、自覚式検眼測定などを自動的に実行するようになっている。測定ヘッド100は、さらに、両眼バランステストを自動的に実行するようにしてもよい。自覚検査においては、他覚測定にて得られた値(他覚値)が利用される。特に、自覚検査のうちのクロスシリンダテストにおいては、他覚検査にて得られた乱視度数及び乱視軸角度が利用される。
【0056】
〔制御系〕
次に、
図6を参照しながら、実施形態の眼科装置1の制御系について説明する。
図6に示すブロック図は、眼科装置1の制御系の主要部分の概略構成を表している。
図6において、
図1〜
図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0057】
眼科装置1の制御系は、
図6に示すように、装置各部を制御する制御装置200を中心に構成されている。制御装置200は、例えば、格納部9に格納されている。制御装置200は、制御部201と、記憶部202とを含む。
【0058】
記憶部202には、後述するような処理を実行するための制御プログラムを含む眼科検査用のコンピュータプログラムや、LCD11に表示される視標パターンの画像データなどが記憶されている。また、記憶部202には、撮影光学系20L、20Rを用いて取得された左被検眼ELの前眼部の画像、右被検眼ERの前眼部の画像、レフ測定結果、ケラト測定結果などが保存される。制御部201は、記憶部202に記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、記憶部202に記憶された画像データなどを参照しつつコンピュータプログラムを順次に実行する。このような制御部201は、CPU(Central Processing Unit)等の演算制御用プロセッサを含む。
【0059】
眼科装置1にはコンピュータ装置(図示せず)が接続されていてもよい。この場合、コンピュータ装置は、眼科装置1のコンソールとして用いられるとともに、眼科装置1による検査結果を蓄積して管理するために用いられる。なお、このコンピュータ装置のCPUや記憶装置を制御装置200として構成することも可能である。
【0060】
制御装置200(制御部201)は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rの動作制御を行う。具体的には、制御装置200は、水平動機構111Lと水平動機構111Rとをそれぞれ制御する。制御装置200は、回動機構112Lと上下動させる上下動機構113Lとをそれぞれ制御する。同様に、制御装置200は、回動機構112Rと上下動機構113Rとをそれぞれ制御する。制御装置200は、横アーム6を上下動させたり回動させたりするアーム移動機構7を制御するようにしてもよい。
【0061】
制御装置200(制御部201)は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rに格納された光学系の動作を制御する。制御装置200は、例えば、LCD11の表示制御、移動レンズ70を光軸方向に移動させる駆動機構70L、70Rの動作制御などを実行する。LCD11の表示制御には、視標の切り替え制御、視標の点灯制御、視標の消灯制御等がある。
【0062】
制御装置200は、CCD21による受光制御、アライメント光学系30L、30R、レフ測定光学系40L、40R、ケラト測定光学系50L、50Rなどの動作制御などを実行する。アライメント光学系30Lにより左被検眼ELに投影されたスポット光の像の位置と左被検眼ELの瞳孔中心の位置とのずれがキャンセルされるように、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のXY方向のアライメントを行うことが可能である。アライメント光学系30Rも同様に、右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のXY方向のアライメントを行うことが可能である。レフ測定光学系40L、40Rの動作制御には、レフ測定用の光束を出射する測定用光源の制御などがある。ケラト測定光学系50L、50Rの動作制御には、ケラトリング光源の制御などがある。
【0063】
制御装置200は、Z方向のアライメントを実行することが可能である。光軸方向(Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)が左被検眼ELに照射されると、撮影光学系20Lは、左被検眼ELの角膜により反射された光をCCD21で受光する。角膜頂点の位置が前後方向に変化すると、CCD21に対する光の投影位置が変化する。演算部210は、CCD21に対する光の投影位置に基づいて左被検眼ELの角膜頂点の位置を求める。制御装置200は、演算部210により求められた角膜頂点の位置に基づき水平動機構111L等を制御し、Z方向に光学系を移動させる。右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のZ方向のアライメントも同様に行われる。
【0064】
各検査ユニットに光学素子適用部が設けられる場合、制御装置200(制御部201)は、複数の光学素子を選択的に左被検眼EL及び右被検眼ERの少なくとも一方に適用するための駆動機構の制御などを実行する。
【0065】
制御装置200(制御部201)は、演算部210を制御する。演算部210は、左眼用検査ユニット120L又は右眼用検査ユニット120Rを用いた他覚屈折測定による測定結果に基づいて他覚値を求める。演算部210は、例えば、レフ測定光学系40L、40Rにより眼底Efに投影されたリング状の測定光束をCCD21により受光することにより取得されたリング視標像の形状を公知の手法で解析することにより他覚値を求める。演算部210は、例えば、ケラト測定光学系50L、50Rにより被検眼の角膜に投影されたリング状光束の角膜による反射光束をCCD21により受光することにより取得された像に対して所定の演算処理を施す。それにより、角膜の形状を表すパラメータを他覚値として算出することが可能である。制御装置200は、演算部210を含んでもよい。
【0066】
制御装置200は、以上のような制御の他に、眼科装置1のあらゆる動作制御やデータ処理を実行する。
【0067】
制御装置200は、検者用コントローラ300と被検者用コントローラ310とそれぞれ有線又は無線の通信路を介して接続可能である。制御装置200は、検者用コントローラ300や被検者用コントローラ310に対する操作内容に対応した操作信号を受けて、眼科装置1の各部を制御する。制御装置200は、操作画面や測定を行うための各種情報などを検者用コントローラ300や被検者用コントローラ310の表示部に表示させることが可能である。
【0068】
なお、前述の光学系を用いたアライメントの動作原理、自覚検査の測定原理、他覚測定の測定原理、角膜形状の測定原理などは既に公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0069】
第1視標呈示部122Lの機能は、左眼用検査ユニット120Lに含まれる視標呈示光学系10Lにより実現される。第2視標呈示部122Rの機能は、右眼用検査ユニット120Rに含まれる視標呈示光学系10Rにより実現される。
【0070】
第1他覚測定部123Lの機能は、左眼用検査ユニット120Lに含まれるレフ測定光学系40Lやケラト測定光学系50Lにより実現される。第2他覚測定部123Rの機能は、右眼用検査ユニット120Rに含まれるレフ測定光学系40Rやケラト測定光学系50Rにより実現される。
【0071】
以上のような構成を備える眼科装置1において、制御装置200は、アライメント光学系30L、30RやZ方向のアライメントを行うための光学系により左被検眼EL及び右被検眼ERに対する光学系のアライメントを実行する。それにより、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のアライメントが合致した状態で、回動軸CLは、左眼用検査ユニット120Lが収容する光学系の作動距離WDLに所定の距離VLを加算した距離だけ光学系の光軸OLに沿って光学系から離れた位置にて光軸OLに直交する鉛直線上に配置される。また、右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のアライメントが合致した状態で、回動軸CRは、右眼用検査ユニット120Rが収容する光学系の作動距離WDRに所定の距離VRを加算した距離だけ光学系の光軸ORに沿って光学系から離れた位置にて光軸ORに直交する鉛直線上に配置される。WDLはWDRと異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。VLはVRと異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。なお、上記のアライメント光学系30L等を用いることなく、検者又は被検者が手動で測定ヘッド100を移動又は回動することにより左被検眼EL及び右被検眼ERに対する光学系のアライメントを行うようにしてもよい。
【0072】
従って、回動軸CLを左被検眼ELの眼球回旋点EpLを通る鉛直線上に配置することができ、眼球回旋点EpLを中心に左眼用検査ユニット120Lを回動することが可能になる。それにより、左被検眼ELの光軸を左眼用検査ユニット120Lの光学系の光軸に合わせた状態で検査を行うことができる。また、回動軸CRを右被検眼ERの眼球回旋点EpRを通る鉛直線上に配置することができ、眼球回旋点EpRを中心に右眼用検査ユニット120Rを回動することが可能になる。それにより、右被検眼ERの光軸を右眼用検査ユニット120Rの光学系の光軸に合わせた状態で検査を行うことができる。
【0073】
また、近用検査や開散・輻輳テストを行う場合でも、回動機構112L、112Rだけを制御することが可能になる。それにより、従来では、X方向の移動、Z方向の移動、回動軸CL、CRを中心とする回動などを順次に実行する必要があったが、実施形態では、回動軸CL、CRを中心とする回動だけを制御すれば済む。従って、眼科装置1が備える移動機構110の簡素化を図り、かつ、移動機構110をスムーズに動作させることが可能になる。
【0074】
左眼用検査ユニット120L、右眼用検査ユニット120Rは、実施形態に係る「ヘッド部」の一例である。横アーム6は、実施形態に係る「支持部材」の一例である。回動軸CL、CRは、実施形態に係る「第1回動軸」の一例である。左眼用検査ユニット120Lは、実施形態に係る「左ヘッド部」の一例である。右眼用検査ユニット120Rは、実施形態に係る「右ヘッド部」の一例である。水平動機構111L、回動機構112L及び上下動機構113Lは、実施形態に係る「第1移動機構」の一例である。水平動機構111R、回動機構112R及び上下動機構113Rは、実施形態に係る「第2移動機構」の一例である。左眼用検査ユニット120Lに収容された光学系(
図5参照)は、実施形態に係る「左光学系」の一例である。右眼用検査ユニット120Rに収容された光学系(
図5参照)は、実施形態に係る「右光学系」の一例である。視標呈示光学系10L、10Rは、実施形態に係る「視標呈示部」の一例である。レフ測定光学系40L、40R、ケラト測定光学系50L、50Rは、実施形態に係る「他覚測定部」の一例である。
【0075】
〔変形例〕
実施形態では、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれが、眼球回旋点EpL、EpRを通り略鉛直方向に延びる回動軸を中心に回動する場合について説明したが、実施形態に係る眼科装置の構成はこれに限定されるものではない。実施形態に係る左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれは、眼球回旋点EpL、EpRを通り略水平方向に延びる回動軸を中心に回動してもよい。それにより、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれが収容する光学系の光軸を水平面に対して傾斜させることが可能になる。
【0076】
(第1変形例)
図7に、実施形態の第1変形例に係る眼科装置の外観構成の概略を模式的に示す。第1変形例では、支柱5に対して移動可能な可動支持部材5Aが設けられている。可動支持部材5Aの基端部の近傍には、緊締ねじ5Bと回転中心部5Cとが設けられている。検者等の操作により緊締ねじ5Bの緊締を行うことにより支柱5に対して可動支持部材5Aが固定される。検者等の操作により緊締ねじ5Bの緊締を解除することにより、支柱5に対して可動支持部材5Aは回転中心部5Cを通る回動軸Oxを中心に回動される。回転中心部5Cを通る回動軸Oxは、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれが収容する光学系の作動距離に角膜頂点と眼球回旋点との間の標準距離を加算した距離だけ光学系の光軸に沿って光学系から離れた位置にて光軸に直交する直線上に配置可能である。すなわち、回動軸Oxは、左被検眼ELの眼球回旋点EpL及び右被検眼ERの眼球回旋点EpRを通る直線上に配置可能である。この直線は、回動機構112Lの回動軸CL及び回動機構112Lの回動軸CRが配置された直線のそれぞれに直交する。被検眼に対する測定ヘッド100の光学系のアライメントが合致された状態において回動軸Oxが当該直線上に配置されてもよい。可動支持部材5Aの先端部には、横アーム6の基端部が保持される(
図3参照)。
【0077】
以上のような構成によれば、測定ヘッド100を回動軸CL、CRに直交する回動軸Oxを中心に回動することができる。それにより、測定ヘッド100の俯仰角を変更することができる。従って、左被検眼ELの光軸を左眼用検査ユニット120Lの光学系の光軸に合わせた状態で検査を行うことができる。また、右被検眼ERの光軸を右眼用検査ユニット120Rの光学系の光軸に合わせた状態で検査を行うことができる。
【0078】
(第2変形例)
図8に、実施形態の第2変形例に係る眼科装置の外観構成に概略を模式的に示す。
図8において、
図7と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。第2変形例に係る眼科装置の構成が第1変形例に係る眼科装置の構成と異なる点は、緊締ねじ5B及び回転中心部5Cが配置される位置である。第2変形例では、緊締ねじ5B及び回転中心部5Cが可動支持部材5Aの上方に設けられ、回転中心部5Cを通る回動軸Ox´は、回動軸Oxと所定の距離だけ離れた位置に配置されている。回動軸Ox´は、回動軸Oxに平行な軸であってよい。例えば、横アーム6の側面に把手部を設け、検者等が把手部を用いて横アーム6を回動軸Ox´を中心に回動させることにより、測定ヘッド100を回動軸Ox´を中心に回動し、測定ヘッド100の俯仰角も変更される。
【0079】
(第3変形例)
第1変形例及び第2変形例では、
図1に示すように、検眼用テーブル3に立設された支柱5の先端部に設けられた横アーム6の先端部において上方から測定ヘッド10が吊り下げられている場合に測定ヘッド100の俯仰角を変更する場合について説明した。第3変形例では、検眼用テーブル3等の机上に載置可能な装置において、上方から測定ヘッド10が吊り下げられている場合に測定ヘッド100の俯仰角を変更する場合の構成例について説明する。
【0080】
図9A及び
図9Bに、実施形態の第3変形例に係る眼科装置の外観構成に概略を模式的に示す。
図9Aは、測定ヘッド100の俯仰角を変更する前の眼科装置の側面図を模式的に表している。
図9Bは、測定ヘッド100の俯仰角を変更したときの眼科装置の側面図を模式的に表している。
【0081】
第3変形例では、台座部400に支柱401が立設される。支柱5(例えば、その先端部)には、被検眼が配置される側に曲率中心が位置するように湾曲した円弧状のガイド部材402が固設されている。ガイド部材402の外周側には、ガイド部材402の外周に沿って移動可能な円弧状の可動部材405が設けられている。可動部材405は、緊締部403に設けられた緊締ねじ404の緊締によりガイド部材402に対して固定される。緊締ねじ404の緊締の解除により、可動部材405は、ガイド部材402の外周に沿って、左被検眼ELの眼球回旋点EpL及び右被検眼ERの眼球回旋点EpRを通る直線上に配置された回動軸Oxを中心に回動可能である(
図9Aの矢印方向r)。被検眼に対する測定ヘッド100の光学系のアライメントが合致された状態において、回動軸Oxが左被検眼ELの眼球回旋点EpL及び右被検眼ERの眼球回旋点EpRを通る直線上に配置可能であってもよい。可動部材405は、
図3等に示す保持部材140を上方から支持する支持部材(
図3の横アーム6に相当する部材)に固設されている。
【0082】
例えば、緊締ねじ404の緊締を解除することにより可動部材405をガイド部材402の外周に沿って移動させ、緊締ねじ404の緊締により所望の位置に固定させる。可動部材405の移動にともなって測定ヘッド100が回動軸Oxを中心に回動される。それにより、測定ヘッド100の向きが変更され、測定ヘッド100の俯仰角が変更される。
【0083】
第1変形例〜第3変形例において、回動軸Oxは、実施形態に係る「第2回動軸」の一例である。
【0084】
[効果]
実施形態に係る眼科装置の効果について説明する。
【0085】
実施形態に係る眼科装置(眼科装置1)は、ヘッド部(左眼用検査ユニット120L、右眼用検査ユニット120R)と、移動機構(移動機構110)とを含む。ヘッド部には、被検眼(左被検眼EL、右被検眼ER)の検査を行うための光学系が格納されている。移動機構は、支持部材(横アーム6)により上方から支持され、ヘッド部を移動する。移動機構は、水平方向にヘッド部を移動可能な水平動機構(水平動機構111L、111R)と、ヘッド部を第1回動軸(回動軸CL、CR)を中心に回動する回動機構(回動機構112L、112R)と、鉛直方向にヘッド部を移動可能な上下動機構(上下動機構113L、113R)とを含む。水平動機構は、回動機構と上下動機構とヘッド部とを移動し、回動機構は、上下動機構とヘッド部とを回動し、上下動機構は、ヘッド部を移動する。
【0086】
このような構成では、支持部材により上方から支持された移動機構において、水平動機構が回動機構と上下動機構とヘッド部とを移動し、回動機構が上下動機構とヘッド部とを移動し、上下動機構がヘッド部を移動する。それにより、被検眼の上方に回動機構を配置させ、回動機構の下方に上下動機構を配置させることができるので、移動機構の上下方向のサイズを小さくすることができる。また、被検者とヘッド部との間に空間を設け、被検者が圧迫感を持つことなく検査を受けることが可能になる。
【0087】
また、実施形態に係る眼科装置では、ヘッド部は第1回動軸に直交する第2回動軸(回動軸Ox)を中心に回動可能であってよい。
【0088】
このような構成によれば、ヘッド部の俯仰角の変更が可能な眼科装置を提供することが可能になる。それにより、被検者は負担のかからない姿勢で検査を受けることが可能になる。
【0089】
また、実施形態に係る眼科装置では、第2回動軸は、光学系の作動距離に角膜頂点と眼球回旋点との間の標準距離を加算した距離だけ光学系の光軸(光軸OL、OR)に沿って光学系から離れた位置にて光軸に直交する直線上に配置可能であってよい。
【0090】
このような構成では、ヘッド部は、その光学系の作動距離に上記の標準距離を加算した距離だけ光学系の光軸に沿った所定の位置にて光軸に直交する直線上に配置された第2回動軸を中心に回動される。それにより、第2回動軸を被検眼の眼球回旋点を通る直線上に配置することができ、ヘッド部の俯仰角を変更する場合でも眼球回旋点を中心にヘッド部を回動することが可能になり、被検眼の光軸をヘッド部に格納された光学系の光軸に合わせた状態で検査を行うことができる。
【0091】
また、実施形態に係る眼科装置では、被検眼に対する光学系のアライメントが合致された状態において第2回動軸が上記の直線上に配置されてよい。
【0092】
このような構成によれば、アライメントを行うことで被検者の負担を軽減することが可能な眼科装置を提供することができる。
【0093】
また、実施形態に係る眼科装置では、光学系は、被検眼に視標を呈示する視標呈示部(視標呈示光学系10L、10R)と、被検眼の他覚屈折測定を行うための他覚測定部(レフ測定光学系40L、40R、ケラト測定光学系50L、50R)とを含むことができる。
【0094】
このような構成によれば、コンパクトな構成で、自覚検査及び他覚測定を行うことが可能な眼科装置を提供することができる。
【0095】
また、実施形態に係る眼科装置では、ヘッド部は、左被検眼(左被検眼EL)の検査を行うための左光学系が格納された左ヘッド部(左眼用検査ユニット120L)と、右被検眼(右被検眼ER)の検査を行うための右光学系が格納された右ヘッド部(右眼用検査ユニット120R)とを含む。移動機構は、左ヘッド部を移動する第1移動機構(水平動機構111L、回動機構112L、上下動機構113L)と、右ヘッド部を移動する第2移動機構(水平動機構111R、回動機構112R、上下動機構113R)とを含む。第1移動機構は、水平方向に左ヘッド部を移動可能な水平動機構(水平動機構111L)と、左ヘッド部を回動する回動機構(回動機構112L)と、鉛直方向に左ヘッド部を移動可能な上下動機構(上下動機構113L)とを含む。第2移動機構は、水平方向に右ヘッド部を移動可能な水平動機構(水平動機構111R)と、右ヘッド部を回動する回動機構(回動機構112R)と、鉛直方向に右ヘッド部を移動可能な上下動機構(上下動機構113R)とを含んでもよい。
【0096】
このような構成によれば、コンパクトな構成で、両眼検査を行うことが可能な眼科装置を提供することができる。
【0097】
[その他]
なお、前述の実施形態又はその変形例は、
図5で説明した光学系の構成や
図6で説明した制御系の構成や制御内容に限定されるものではない。例えば、他覚測定には、被検眼に関する値を測定するための他覚測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれてよい。このような他覚測定には、例えば、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼圧測定、眼底撮影、OCTの手法を用いたOCT(Optical Coherence Tomography)計測などがある。また、自覚検査には、例えば、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレアー検査などの自覚屈折測定や、視野検査などがある。
【0098】
また、実施形態に係る眼科装置は、自覚検査として、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレアー検査などを実行可能であり、且つ、他覚測定として、他覚屈折測定、角膜形状測定、OCT計測などを実行可能な装置であってよい。OCT計測では、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚などの被検眼の構造を表す眼球情報の取得が行われてもよい。
【0099】
前述の実施形態又はその変形例に係る水平動機構111L(111R)は、保持部材140がZ方向移動機構111ZL(111ZR)を保持し、Z方向移動機構111ZL(111ZR)がX方向移動機構111XL(111XR)を移動させる構成を例に説明したが、実施形態に係る水平動機構の構成はこれに限定されるものではない。例えば、保持部材140がX方向移動機構111XL(111XR)を保持し、X方向移動機構111XL(111XR)がZ方向移動機構111ZL(111ZR)を移動させる構成であってもよい。
【0100】
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を適宜に施すことが可能である。