(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685142
(24)【登録日】2020年4月2日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/26 20060101AFI20200413BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20200413BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20200413BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20200413BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20200413BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20200413BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20200413BHJP
H05B 33/24 20060101ALI20200413BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
H05B33/26 Z
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/00 338
H05B33/24
H01L27/32
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-18153(P2016-18153)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-139092(P2017-139092A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】觀田 康克
【審査官】
辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−355918(JP,A)
【文献】
特開2005−038642(JP,A)
【文献】
特開2005−316399(JP,A)
【文献】
特開2011−119238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/32
H05B 33/26
G09F 9/00
G09F 9/30
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/12
H05B 33/22
H05B 33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層と、
前記下地層に積層する複数の画素電極と、
前記複数の画素電極に積層する発光素子層と、
前記発光素子層に積層する共通電極と、
無機絶縁層と、
を有し、
前記複数の画素電極のそれぞれは、前記下地層に直接接触する第1酸化物導電層と、前記第1酸化物導電層に直接接触する金属導電層と、前記金属導電層に直接接触する第2酸化物導電層と、を含み、
前記下地層は、前記金属導電層よりも、前記第1酸化物導電層に対して密着性が高く、
前記第1酸化物導電層は、隣同士の前記画素電極の相互に対向する方向に、前記金属導電層及び前記第2酸化物導電層からはみ出す突出部を有し、
前記無機絶縁層は、前記第1酸化物導電層の前記突出部の少なくとも先端及び前記下地層に載り、前記金属導電層の先端及び前記第2酸化物導電層の先端から間隔をあけて形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
前記第1酸化物導電層は、前記複数の画素電極のそれぞれの周縁部の全体に、前記突出部を有することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された表示装置において、
前記第1酸化物導電層及び前記第2酸化物導電層は、それぞれ、酸化インジウムスズ及び酸化インジウム亜鉛からなる群より選ばれる材料を含み、
前記金属導電層は、金、アルミニウム、及び銀からなる群より選ばれる材料を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
複数の画素電極を形成する工程と、
前記複数の画素電極に発光素子層を積層する工程と、
前記発光素子層に共通電極を積層する工程と、
を含み、
前記複数の画素電極を形成する工程は、
前記複数の画素電極に対応する形状で、隣同士の前記画素電極に対応する部分が無機絶縁層で隔離されるように、第1酸化物導電層のパターンを形成する工程と、
前記第1酸化物導電層よりも前記無機絶縁層に対して密着性が低い金属導電層を、前記無機絶縁層及び前記第1酸化物導電層の前記パターンに直接接触するように形成する工程と、
第2酸化物導電層を、前記金属導電層の上に形成する工程と、
前記金属導電層及び前記第2酸化物導電層を、前記第1酸化物導電層の前記パターンの内側に載った部分が残るように、ウエットエッチングによりパターニングする工程と、
を含み、
前記第1酸化物導電層を形成する工程で、前記第1酸化物導電層を下地層の上でパターニングした後に、前記下地層の上に前記無機絶縁層を形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された表示装置の製造方法において、
前記第1酸化物導電層を形成する工程で、前記無機絶縁層を、前記第1酸化物導電層の前記パターンの先端に載るように、前記パターンから露出した前記下地層の上に形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された表示装置の製造方法において、
前記第1酸化物導電層及び前記第2酸化物導電層は、それぞれ、酸化インジウムスズ及び酸化インジウム亜鉛からなる群より選ばれる材料を含み、
前記金属導電層は、金、アルミニウム、及び銀からなる群より選ばれる材料を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載された表示装置の製造方法において、
前記ウエットエッチングは、混酸及びシュウ酸の少なくとも一方を使用して行うことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
下地層と、
前記下地層に積層する複数の画素電極と、
前記複数の画素電極に積層する発光素子層と、
前記発光素子層に積層する共通電極と、
無機絶縁層と、
を有し、
前記複数の画素電極のそれぞれは、前記下地層に直接接触する第1酸化物導電層と、前記第1酸化物導電層に直接接触する金属導電層と、前記金属導電層に直接接触する第2酸化物導電層と、を含み、
前記下地層は、シリコン窒化膜またはシリコン酸化膜であり、
前記金属導電層は、金、アルミニウム、及び銀からなる群より選ばれる材料を含み、
前記第1酸化物導電層は、隣同士の前記画素電極の相互に対向する方向に、前記金属導電層及び前記第2酸化物導電層からはみ出す突出部を有し、
前記無機絶縁層は、前記第1酸化物導電層の前記突出部の少なくとも先端及び前記下地層に載り、前記金属導電層の先端及び前記第2酸化物導電層の先端から間隔をあけて形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載された表示装置において、
前記第1酸化物導電層は、前記複数の画素電極のそれぞれの周縁部の全体に、前記突出部を有することを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子などの発光素子を画素ごとに設けた表示装置が次世代ディスプレイとして期待されている。発光素子は、画素電極(アノード)及び共通電極(カソード)に挟まれた発光層で光を発生するようになっており、発生した光は画素電極で反射する構造が多い。トップエミッション型の表示装置の場合、発光素子からの出射光は共通電極側から取り出すことになるため、画素電極を反射電極、共通電極を透過電極として形成する。画素電極は、光取り出し効率を高めるために、反射率の高い材料からなる反射膜であることが好ましい。
【0003】
ただし、発光層へのホール注入の仕事関数を最適化するため、反射膜の上面(発光層との接触面)は、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)の酸化物導電膜で覆われる場合がある。一方、画素電極の下地層である無機絶縁膜との密着性を保持するため、反射膜の下面(無機絶縁膜との接触面)にも、酸化物導電膜が設けられる場合がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−317606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画素電極を形成するときに、例えば、ITO膜、Ag膜及びITO膜からなる積層膜を混酸でパターニングする場合、Agのエッチング残りや残渣が発生する場合がある。これは、混酸とAgが反応して発生した一酸化窒素ガスが、Ag膜の表面に付着することで、エッチング液中で、Ag膜の表面が不動態化するからであると考えられる。
【0006】
このため、混酸ではパターニングが十分ではなく、隣同士の画素電極がショートする問題がある。高精細化により、画素電極の間隔が狭くなるほど、Agのエッチング残りや残渣が発生しやすくなる。また、Ag膜は無機絶縁膜との密着性が低いので、Ag膜がITO膜から露出すると、画素電極は、下地層との密着性が低くなる。
【0007】
なお、特許文献1は、Ag膜の上下及び周囲をITO膜で封止することで、Agを有機材料から遮断して、Agと有機材料の反応によるガスの発生を防止することが開示されている。したがって、Ag膜が露出しないので、画素電極は下地層との密着性が高くなっており、本発明が解決しようとする課題がそもそも存在しない。
【0008】
本発明は、剥離しにくい画素電極の形成や高い精度でのパターニングを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表示装置は、下地層と、前記下地層に積層する複数の画素電極と、前記複数の画素電極に積層する発光素子層と、前記発光素子層に積層する共通電極と、を有し、前記複数の画素電極のそれぞれは、前記下地層に直接接触する第1酸化物導電層と、前記第1酸化物導電層に直接接触する金属導電層と、前記金属導電層に直接接触する第2酸化物導電層と、を含み、前記下地層は、前記金属導電層よりも、前記第1酸化物導電層に対して密着性が高く、前記第1酸化物導電層は、隣同士の前記画素電極の相互に対向する方向に、前記金属導電層及び前記第2酸化物導電層からはみ出す突出部を有することを特徴とする。本発明によれば、下地層に対する密着性の高い第1酸化物導電層が、金属導電層及び第2酸化物導電層からはみ出す突出部を有するので、画素電極が剥離しにくくなっている。
【0010】
本発明に係る表示装置の製造方法は、複数の画素電極を形成する工程と、前記複数の画素電極に発光素子層を積層する工程と、前記発光素子層に共通電極を積層する工程と、を含み、前記複数の画素電極を形成する工程は、前記複数の画素電極に対応する形状で、隣同士の前記画素電極に対応する部分が無機絶縁層で隔離されるように、第1酸化物導電層のパターンを形成する工程と、前記第1酸化物導電層よりも前記無機絶縁層に対して密着性が低い金属導電層を、前記無機絶縁層及び前記第1酸化物導電層の前記パターンに直接接触するように形成する工程と、第2酸化物導電層を、前記金属導電層の上に形成する工程と、前記金属導電層及び前記第2酸化物導電層を、前記第1酸化物導電層の前記パターンの内側に載った部分が残るように、ウエットエッチングによりパターニングする工程と、を含むことを特徴とする。本発明によれば、金属導電層は無機絶縁層に対して密着性が低く、無機絶縁層の上でエッチング残りや残渣が発生しても剥がれやすい。そのため、第1酸化物導電層のパターンのショートを防止することができるので、高い精度で画素電極を形成することが可能になる。
【0011】
本発明に係る表示装置は、下地層と、前記下地層に積層する複数の画素電極と、前記複数の画素電極に積層する発光素子層と、前記発光素子層に積層する共通電極と、を有し、前記複数の画素電極のそれぞれは、前記下地層に直接接触する第1酸化物導電層と、前記第1酸化物導電層に直接接触する金属導電層と、前記金属導電層に直接接触する第2酸化物導電層と、を含み、前記下地層は、シリコン窒化膜またはシリコン酸化膜であり、前記金属導電層は、金、アルミニウム、及び銀からなる群より選ばれる材料を含み、前記第1酸化物導電層は、隣同士の前記画素電極の相互に対向する方向に、前記金属導電層及び前記第2酸化物導電層からはみ出す突出部を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。
【
図2】
図1の一点鎖線で囲んだ部分IIを拡大した図である。
【
図3】
図3(A)〜
図3(C)は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。
【
図4】
図4(A)〜
図4(C)は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の一部の拡大断面図である。
【
図6】
図6(A)〜
図6(C)は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7(A)〜
図7(B)は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0014】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0015】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置を示す断面図である。表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を例に挙げる。表示装置は、例えば、赤(R)、緑(G)及び青(B)からなる複数色の単位画素(サブピクセル)を組み合わせて、フルカラーの画素(ピクセル)を形成し、フルカラーの画像を表示するようになっている。
【0017】
表示装置は、ガラスや樹脂からなる第1基板10を有する。第1基板10には、それ自体が含有する不純物が上層へ拡散することを防ぐためのバリアとなるアンダーコート12が形成され、その上に半導体層14が形成されている。半導体層14にソース電極16及びドレイン電極18が設けられ、半導体層14を覆ってゲート絶縁膜20が形成されている。ゲート絶縁膜20の上にはゲート電極22が形成され、ゲート電極22を覆って層間絶縁膜24が形成されている。ソース電極16及びドレイン電極18は、ゲート絶縁膜20及び層間絶縁膜24を貫通している。半導体層14、ソース電極16、ドレイン電極18及びゲート電極22によって薄膜トランジスタ26が構成される。薄膜トランジスタ26を覆うようにパッシベーション膜28が設けられている。
【0018】
薄膜トランジスタ26は、画素電極30(例えば陽極)に電気的に接続される。パッシベーション膜28の表面が凸凹になっているので、平坦な表面を形成するように、画素電極30の下地層32が設けられている。下地層32は、窒化ケイ素または二酸化ケイ素などからなる無機絶縁層である。下地層32(無機絶縁層)は、金属に対して密着性が低い一方で、酸化物に対して密着性が高い。下地膜32は平坦化性能が高い有機絶縁膜と、その上の無機絶縁膜の2層で構成されていてもよい。
【0019】
下地層32に画素電極30が積層する。詳しくは、下地層32の上に、複数の単位画素それぞれに対応するように構成された複数の画素電極30が設けられている。画素電極30は、下地層32及びパッシベーション膜28を貫通するコンタクトホール34を介して、半導体層14上のソース電極16及びドレイン電極18の一方に電気的に接続している。画素電極30は、上面が平坦になった部分と、上面がコンタクトホール34に入り込んで窪む部分と、を有する。
【0020】
図2は、
図1の一点鎖線で囲んだ部分IIを拡大した図である。画素電極30は、下地層32に直接接触する第1酸化物導電層36を含む。第1酸化物導電層36は、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)から形成されている。第1酸化物導電層36の外周縁が、画素電極30の外形になっている。
【0021】
画素電極30は、第1酸化物導電層36に直接接触する金属導電層38を含む。金属導電層38は、金、アルミニウム、銀、または少なくともこれらの1つを含む合金から形成されている。下地層32は、金属導電層38よりも、第1酸化物導電層36に対して密着性が高い。金属導電層38は、下地層32には接触しないように、第1酸化物導電層36の上面からはみ出さない形状になっている。
【0022】
画素電極30は、金属導電層38に直接接触する第2酸化物導電層40を含む。第2酸化物導電層40は、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)から形成されている。第2酸化物導電層40は、金属導電層38の上面からはみ出さないことが好ましい。第2酸化物導電層40は、第1酸化物導電層36又は下地層32のいずれにも接触しない。
【0023】
第1酸化物導電層36は、隣同士の画素電極30の相互に対向する方向に、金属導電層38及び第2酸化物導電層40からはみ出す突出部36aを有する。第1酸化物導電層36は、画素電極30の周縁全体に突出部36aを有する。本実施形態によれば、下地層32に対する密着性の高い第1酸化物導電層36が、金属導電層38及び第2酸化物導電層40からはみ出す突出部36aを有するので、金属導電層38及び第2酸化物導電層40がいずれも下地層32に接触しなくなり、画素電極30が剥離しにくくなっている。
【0024】
図1に示すように、下地層32及び画素電極30上に、樹脂などの有機材料からなる絶縁層42が形成されている。絶縁層42は、画素電極30の周縁部に載り、画素電極30の一部(例えば中央部)を開口させるように形成されている。絶縁層42の開口が発光領域となる。絶縁層42によって、画素電極30の一部を囲むバンクが形成される。
【0025】
画素電極30に発光素子層44が積層する。発光素子層44は、絶縁層42の上にも載る。発光素子層44は、少なくとも発光層を含み、さらに、電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層及び正孔注入層のうち少なくとも一層を含んでもよい。発光素子層44の少なくとも発光層が、画素電極30ごとに別々に載るようになっている。これにより、それぞれの発光素子層44の発光層が複数色のいずれかの色の光を発するようになり、フルカラーの画像表示が可能になる。なお、発光層以外の層は、複数の画素電極30に連続的に設けてあっても、複数色の光を発するように構成することは可能である。変形例として、発光層を含めて発光素子層44の全体を複数の画素電極30に連続的に載るように形成してもよいが、その場合は、単色の発光であるため、カラーフィルタを通すことでフルカラーの画像表示が可能になる。
【0026】
発光素子層44の上には、複数の画素電極30の上方で発光素子層44に接触するように、共通電極46(例えば陰極)が設けられている。共通電極46は、バンクとなる絶縁層42の上方に載るように形成する。共通電極46は、隣同士の発光素子層44の間では、絶縁層42に接触する。発光素子層44は、画素電極30及び共通電極46に挟まれ、両者間を流れる電流によって輝度が制御されて発光する。
【0027】
発光素子層44は、共通電極46に積層する封止層48によって覆われることで封止されて、水分から遮断されている。封止層48の上方には、充填層50を介して、第2基板52が設けられている。本実施形態では、複数色の光を発するように発光素子層44を設けるのでカラーフィルタは不要であるが、単色の光のみを発するように発光素子層44を設けるのであれば、カラーフィルタを第2基板52に積層する。また、必要に応じて、図示しないブラックマトリクスを設けてもよい。第2基板52は、タッチパネルであってもよいし、偏光板や位相差板を備えてもよい。
【0028】
なお、表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置には限定されず、量子ドット発光素子(QLED:Quantum‐Dot Light Emitting Diode)のような発光素子を各画素に備えた表示装置であってもよいし、液晶表示装置であってもよい。
【0029】
図3(A)〜
図4(C)は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。表示装置の製造方法は、複数の画素電極30(
図1参照)を形成する工程を含む。下地層32を形成するまでの工程は、
図1を参照して上述した内容から自明であるため説明を省略する。
【0030】
図3(A)に示すように、第1酸化物導電層36を下地層32の上に例えば全面にわたって成膜する。下地層32は、窒化ケイ素または二酸化ケイ素などからなる無機絶縁層である。第1酸化物導電層36は、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化インジウム亜鉛(IZO)から、例えば蒸着によって形成する。
【0031】
図3(B)に示すように、第1酸化物導電層36をパターニングする。詳しくは、
図1に示す複数の画素電極30に対応する形状で、隣同士の画素電極30に対応する部分が、下地層32(無機絶縁層)で隔離されるように、第1酸化物導電層36のパターンを形成する。言い換えると、第1酸化物導電層36は、隣同士の画素電極30に対応する部分が、下地層32(無機絶縁層)の露出面で囲まれるようにパターニングする。パターニングは周知の方法を適用することができる。
【0032】
図3(C)に示すように、金属導電層38及び第2酸化物導電層40を、第1酸化物導電層36のパターンに積層する。詳しくは、第1酸化物導電層36よりも無機絶縁層に対して密着性が低い金属導電層38を、下地層32及び第1酸化物導電層36のパターンに直接接触するように形成する。金属導電層38は、金、アルミニウム、銀、または少なくともこれらの1つを含む合金から形成する。そして、第2酸化物導電層40を、金属導電層38の上に形成する。第2酸化物導電層40は、酸化インジウムスズ又は酸化インジウム亜鉛から形成する。金属導電層38及び第2酸化物導電層40は、例えば、スパッタリング法等によって形成する。
【0033】
さらに、エッチングマスク54を第2酸化物導電層40の上に形成する。エッチングマスク54は、
図1に示す複数の画素電極30の外形(第1酸化物導電層36のパターン)よりもわずかに小さくなるように、感光性樹脂(フォトレジスト)から、フォトリソグラフィを適用して形成する。エッチングマスク54は、第1酸化物導電層36のパターンの周縁部(突出部36a)との重畳を避ける形状である。
【0034】
図4(A)に示すように、第2酸化物導電層40及び金属導電層38を、エッチングマスク54が載った部分が残るように、ウエットエッチングによりパターニングする。エッチングマスク54が載った部分とは、第1酸化物導電層36のパターン(周縁部を除いた領域)と重畳する部分である。エッチング液56は、混酸及びシュウ酸の少なくとも一方である。例えば、混酸で第2酸化物導電層40及び金属導電層38を一括してエッチングしてもよいし、シュウ酸で第2酸化物導電層40をエッチングした後に、混酸で金属導電層38をエッチングしてもよい。
【0035】
第2酸化物導電層40の一部がエッチングで除去されて金属導電層38が露出する。そして、混酸による金属導電層38のエッチングでは、両者の化学反応によって、一酸化窒素(NO)ガス58が発生する。一酸化窒素ガス58は、金属導電層38の表面に付着し、金属導電層38の表面の一部を不動態化する場合がある。
【0036】
図4(B)に示すように、金属導電層38は、エッチングが進行しても、一酸化窒素ガス58で不動態化した部分が残るようになる。例えば、隣同士の画素電極30の間に、金属導電層38の残渣60(膜残り)が発生する。金属導電層38の残渣60は、下地層32(無機絶縁層)の上から残渣60がリフトオフする。これは、金属導電層38は無機絶縁層に対して密着性が低いため、両者の界面にエッチング液56(混酸)が入り込むからである。第1酸化物導電層36から露出した無機絶縁層の表面から、金属導電層38の残渣60がなくなることで、第1酸化物導電層36のパターンのショートを防止することができる。
【0037】
図4(C)に示すように、高い精度で画素電極30を形成することが可能になる。その後、絶縁層42を形成した後、複数の画素電極30に発光素子層44を積層し、発光素子層44に共通電極46を積層する。これらの工程は、
図1を参照して上述した内容から自明であるため、説明を省略する。
【0038】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置の一部の拡大断面図である。本実施形態では、下地層232の上に画素電極230が形成されており、第1酸化物導電層236の突出部236aの少なくとも先端及び下地層232に無機絶縁層262が載っている。無機絶縁層262は、金属導電層238の先端及び第2酸化物導電層240の先端から間隔をあけて形成されている。つまり、下地層232とは別に、無機絶縁層262が設けられている。
【0039】
図6(A)〜
図7(B)は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための図である。
【0040】
図6(A)に示すように、第1酸化物導電層236のパターンを下地層232の上に形成し、さらに窒化ケイ素または二酸化ケイ素などからなる無機絶縁層262を形成する。第1酸化物導電層236のパターンの形成方法は第1の実施形態で説明した通りである。無機絶縁層262は、下地層232が第1酸化物導電層236のパターンから露出する領域を含め、下地層232の上に例えば全面に形成する。
【0041】
図6(B)に示すように、無機絶縁層262をパターニングする。詳しくは、第1酸化物導電層236のパターンの先端に載るが、
図5に示す画素電極230の突出部236aの全体には載らないように、無機絶縁層262をパターニングする。無機絶縁層262は、第1酸化物導電層236のパターンから露出した下地層232の上に残す。こうすることで、隣同士の第1酸化物導電層236のパターンは、無機絶縁層262によって電気的に絶縁される。
【0042】
図6(C)に示すように、パターニングされた無機絶縁層262、第1酸化物導電層236のパターン及び下地層232の上に、金属導電層238及び第2酸化物導電層240を積層する。そして、第2酸化物導電層240の上に、エッチングマスク254を形成する。
図6(C)に示す工程は、下地層232とは別に無機絶縁層262を設ける点を除き、
図3(C)を参照して説明した内容が該当する。
【0043】
図7(A)に示すように、第2酸化物導電層240及び金属導電層238を、ウエットエッチングによりパターニングする。第2酸化物導電層240がエッチングで除去された領域に、金属導電層238が露出する。そして、エッチング液256として混酸を使用した金属導電層238のエッチングでは、両者の化学反応によって、一酸化窒素(NO)ガス258が発生する。一酸化窒素ガス258は、金属導電層238の表面に付着し、金属導電層238の表面の一部を不動態化する。
【0044】
図7(B)に示すように、金属導電層238は、エッチングが進行しても、一酸化窒素ガス258で不動態化した部分が残るようになり、無機絶縁層262の上に、金属導電層238の残渣260(膜残り)が発生する。しかし、金属導電層238の残渣260は、無機絶縁層262の上から残渣260がリフトオフする。これは、金属導電層238は無機絶縁層262に対して密着性が低いため、両者の界面にエッチング液256(混酸)が入り込むからである。無機絶縁層262の表面から、金属導電層238の残渣260がなくなることで、第1酸化物導電層236のパターンのショートを防止することができる。
【0045】
無機絶縁層262の側面が急峻に立ち上がる形状(例えば逆テーパ)であれば、側面に付着した金属導電層238の残渣260は元々薄い膜厚であるため剥離しやすいが、さらに剥離しやすくなる。無機絶縁層262の上面と側面とで形成される角部が、上面に直交する断面において、直角又は鋭角であることが好ましい。こうして、隣接する画素電極間が確実に分離されることにより、高い精度で画素電極230を形成することが可能になる。その後、
図5に示す画素電極230に、
図1に示すように、発光素子層44を積層し、発光素子層44に共通電極46を積層する。これらの工程は、
図1を参照して上述した内容から自明であるため、説明を省略する。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 第1基板、12 アンダーコート、14 半導体層、16 ソース電極、18 ドレイン電極、20 ゲート絶縁膜、22 ゲート電極、24 層間絶縁膜、26 薄膜トランジスタ、28 パッシベーション膜、30 画素電極、32 下地層、34 コンタクトホール、36 第1酸化物導電層、36a 突出部、38 金属導電層、40 第2酸化物導電層、42 絶縁層、44 発光素子層、46 共通電極、48 封止層、50 充填層、52 第2基板、54 エッチングマスク、56 エッチング液、58 一酸化窒素ガス、60 残渣、230 画素電極、232 下地層、236 第1酸化物導電層、236a 突出部、238 金属導電層、240 第2酸化物導電層、254 エッチングマスク、256 エッチング液、258 一酸化窒素ガス、260 残渣、262 無機絶縁層。