(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可撓性スリーブの前記バリア部分は、前記可撓性スリーブの端部に、開口部を横切って配置される膜からなる請求項1乃至請求項10のうちのいずれかに記載の医療装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、添付の図面に例示されている本発明の実施例について詳述するが、図中、同一の参照符号は、同一の要素を指す。説明される実施例は、図面を参照することにより本発明を例示するが、本発明を限定しない。
【0017】
本開示は、以下の説明で記載された、または、図面に例示された構成要素における構造詳細および配置詳細に、その適用が限定されるものではないということを当業者により了解される。本明細書の実施例は、他の実施例が可能であり、様々な方法で実行または実施され得る。また、言葉遣い、および術語は、説明のために使用され、限定するものとしてみなされるべきではないということである。本明細書中、「含む」、「包含する」、または、「有する」などのような用語、および、それらのバリエーションにおける使用は、以下に列挙される要素およびそれらの均等物、ならびに、付加的な要素を包含することを意味する。特に限定されない限り、用語「連結される」、「結合される」、および「取り付けられる」、ならびに、それらのバリエーションは、広範囲に使用され、直接的および間接的な連結、結合、および、取り付けを包含する。加えて、用語「連結される」、および「結合される」、ならびに、それらのバリエーションは、物理的もしくは機械的連結または結合に限定されるものではない。さらに、上、下、下部および上部などの用語は、相対的なものであり、限定するものではないが、例示を補助するために用いられる。
【0018】
本発明の実施例における方法および装置は、人体または動物被験体に対する薬物および他の物質の大量注射(bolus injection)、即ち、「注射」と、および、注入、即ち、「注入器」の送出との両方を含む。本発明を使用し、医薬化合物が、大量注射として、または、注入により投与され得る。本明細書で用いられる場合、用語「大量注射」は、10分未満の時間内で送出される量を意味することが意図される。「注入」は、10分よりも長い時間にわたる物質の送出を意味することが意図される。大量投与または送出は、速度制御手段により実行されることができ、または、特定の速度制御手段を有さないということである。そのような速度制御手段は、例えば、パルス方法による物質のプログラムされた送出を含み、例として、物質は、大量投与に続けて短期または長期注入を含む。大量投与とは、典型的には約10分未満、比較的短い時間にわたり、単一容量単位で送出される単一回の投与である。注入投与は、一定または可変であり得る選択された速度で、典型的には約10分より長い時間、比較的より長い時間にわたり液体を投与することからなる。
【0019】
以下の実施例は、注入装置について述べられるが、本発明の実施例は、注入装置に限定されず、代わりに、注射器、即ち、保管装置(薬剤保管装置など)との無菌接続するための何れかの形式の装置を含み得ることを当業者により了解される。しかしながら、簡略に、例示された実施例は、全体を通じて、注入装置と呼ばれる。
【0020】
図1は、患者に薬剤を注入する注入装置、即ち、注入器100の上面の斜視図である。薬剤の受容者(medicament recipient)以外の使用者(例えば、医療専門家)も装置100を使用することができるが、略して、「使用者」という用語は、患者、および/または、他の使用者を指すために用いられる。装置100は、上部カバー102と、下部カバー104と、薬剤バレル106と、上部ボタン部分108と、下部ボタン部分110とを含む。より詳細に以下に説明されるように、上部カバー102は、使用者が長手方向に(基端方向に、即ち、
図1の左方向へ)ボタンを摺動させるまで、上部ボタン部分108が押し下げられることを防止する。装置100は、使用者が投与の完了を判断する助けになる進捗インジケータ114を目視できるインジケータウィンドウ112も含む。
【0021】
図2および
図3は、それぞれ、見やすくするために省略されたいくつかの要素を有する。
図2および
図3を参照すると、装置100は、ポート118を有するニードルアーム116と、ニードルアームの自由端部に配置されたニードル(図示せず)のような患者用カニューレと、を含む。ポート118は、管類(図示せず)により、より詳細に以下に説明されるニードルに接続されるプランジャポート120に接続される。装置100は、ニードルアクチュエータ、即ち、スライダ122も含む。進捗インジケータ114は、スライダ122に連結され、スライダ122と共に末端方向に移動する。
【0022】
スプリングシャフト(spring shaft)124は、スライダ122を末端方向に付勢するスプリング126を案内する。スプリング126は、スライダ122に固定状態に連結されたスプリングプッシャ(spring pusher)128に当たっている。
【0023】
また、装置100は、起動用フリッパ(activation flipper)130と、解放用ゲート132と、バルブプランジャ(valve plunger)134と、解放用フリッパ136とを含む。起動用フリッパ130および解放用フリッパは、実質的に平行な軸線の回りに回転する。これらの軸線は、下部カバー104に対して実質的に垂直である。
【0024】
図1乃至
図4を参照すると、装置100を起動するために、使用者は、上部ボタン部分108を、それが上部カバー102の開口部と同心とするまで基端方向に摺動させる。言い換えれば、使用者は、カンチレバー部分109が開口部の端部を通過するまで、上部ボタン部分108をスライドさせる。それから、使用者は、ボタン突出部138(
図4参照)が第1のスライダ突出部140(
図3参照)から離れ、スライダ122を解放し、スプリング126の影響下で末端方向に移すように、上部ボタン部分108を押し下げる(これにより下部ボタン部分110も押し下げる)。
【0025】
スライダ122が末端方向に移動するとき、スライダ122における傾斜部144は、起動用フリッパ130をその軸線回りに回転させる。そのスライダは、第2のスライダ突出部142(
図3参照)が解放用フリッパ136に接触するまで、スプリング126の影響下で末端方向に移動し続け、より詳細に続いて説明されるように、その投与量が送出されるまでこの位置を維持する。起動用フリッパ130の回転により、解放用ゲート132が、側方に摺動し、バルブプランジャ134から離れる。より詳細に続いて説明されるように、これにより、バルブプランジャ134が解放され、プランジャスプリング146(
図5参照)の影響を受けて末端方向に移動する。
【0026】
総じて、装置100における説明された実施例では、薬剤バレル106との無菌接続を作るための2つの注射針がある。例えば、大きな外側の注射針、即ち、第1の貫通体148は、それぞれが無菌でない外面を有し得る2つの膜に穴を作る。これらの膜により、たとえ、それぞれの膜の外側が無菌でない場合でさえも、それぞれの膜の内側の面が、無菌状態のままであることを可能にする。外針148は、(潜在的に)「汚染された」カバー、即ち、膜のそれぞれに穴を作り、その結果、それから、第2の貫通体、即ち、内針150は、内針150が無菌でない表面と接触することを防止することにより、無菌を維持することを可能にする。
【0027】
より詳細には、
図5および
図6に示される実施例では、バルブプランジャ134が、プランジャスプリング146の影響下で末端方向に移動するとき、可撓性カバー152は、ストッパ158内に配置された比較的硬質のインサート156に配置されたバリア、即ち、膜154と接触する。バルブプランジャ134の継続した末端方向の動きにより、可撓性カバー152の前方部分、即ち、末端部153が、圧縮し、または、型崩れする、即ち、潰れる。これにより、外針148は、内針150を汚染することなく、可撓性カバー152のバリア部分および膜154の両方を、穿刺、即ち、穿孔可能となる。可撓性カバー152および膜154の内面は、装置100における組立以前に製造中に滅菌され、そのそれぞれの外面が汚染された場合であっても、無菌のままである。可撓性カバー152、第1の貫通体または外針148、および、第2の貫通体または内針150は、ひとまとめにして、バルブスリーブアセンブリを形成する。
【0028】
バルブプランジャ134の末端方向の移動が継続するとき、インナーフランジ162が、インサート156の基端部の直径よりも大きい直径を有するので外針148の末端方向の前進が停止されるまで、外針148のアウタフランジ160は、可撓性カバー152の末端部153を型崩れし続ける。この時点で、バルブプランジャ134は、末端方向に移動し続け、可撓性カバーの基端部164(より厚い壁を有する)が、圧縮し始め、または、型崩れし始める。基端部164のこの型崩れにより、内針150が、外針148の孔を介して末端方向に前進し、製造中に前もって滅菌されたストッパ158の内面159に接触可能となる。
【0029】
ストッパ158の内面159は、チャンバを形成し、インサート156および膜154により覆われている。1つの実施例によれば、内面159は、インサート156および膜154の取り付けに先立って無菌にされる。他の実施例によれば、ストッパ158、インサート156、および膜154は、略同時に滅菌される。ストッパの滅菌後、その基端部の無菌が、膜154により維持される。バルブプランジャ134の継続した末端方向の動きにより、内針150は、ストッパ158を貫通し、液体薬剤の流れを開始する。バルブプランジャの継続した末端方向の移動は、ストッパ158の末端方向の移動を開始し、そのストッパがキャップ付き薬剤バレル106の内部の末端部に到達するまで、薬剤の流れは、継続する(バルブプランジャ134の末端方向の動きと共に)。
【0030】
この実施例では、可撓性カバー152の圧縮、または、型崩れ、即ち、潰れは、2段階で行われ、すなわち、可撓性カバーの末端部153(外針148のアウタフランジ160の前方の領域)が、先ず、つぶれ、基端部164がつぶれる前に、外針148が、可撓性カバー152の末端部および膜154の両方を穿孔することを可能にする。この2つに分けられたつぶれにより、内針150が、二番目に前方へ移動し、ストッパ158を穿孔することが可能となる。装置がその特定の方法で作動する場合、内針150は、汚染されることなく無菌のままとなる。
【0031】
内針150の無菌を維持しながら、2つの潜在的に汚染された面が外針148で穿刺されることを可能にすることにより、薬物用容器(例えば、薬剤用バレル106)が注入装置に取り付けられるまで無菌状態(aseptic conditions)を維持する必要なく、予め充填された薬物容器は、前もって組み立てられ無菌とされた注入装置に取り付け可能とされる。これにより、組立環境が無菌状態(aseptic)であることを必要とされることなく、予め充填された薬物容器が、製薬会社または最終使用者により、組み立てられることが可能となる。加えて、これにより、予め充填された薬剤バレル106が、業界標準の器具および方法を用いて充填され、検査されることが可能となる。
【0032】
図7は、装置100の部分の底面の斜視図であり、図中、スライダ122が、明確にするために透けて見えるように示される。当業者は、スライダ122の透けてない部分は、本発明の範囲から逸脱することなく変更し得ることを理解するであろう。
図2および
図7を参照すると、バルブプランジャ134は、その下側に垂直部分と、水平部分とを有するカンチレバーアーム166を有する。これらの垂直および水平部分は、解放用フリッパ136のロアアーム168のための案内を形成する。その案内とロアアーム168との間の接触が、解放用フリッパ136の回転を妨げる。
【0033】
バルブプランジャ134がその末端方向移動を完了し、薬剤の流れを終わらせると、カンチレバーアーム166の基端部は、ロアアーム168を避けて通り、それにより、第2のスライダ突出部142(
図3参照)と解放用フリッパ136のアッパアーム170(
図3参照)との接触、および、スプリング126の継続した付勢のために解放用フリッパ136を解放し回転させる。第2のスライダ突出部142が解放用フリッパ136のアッパアーム170を避けて通るように、解放用フリッパ136が十分回転したならば、スライダ122は、その末端方向の移動を継続する。ニードルアーム116の基端部にあるウィング119とスライダ122の内部のトラックの傾斜部125との接触の理由によって、スライダの継続した末端方向の移動が、ニードルアーム116の基端部を上昇させ、患者用カニューレ(図示せず)を引き抜く。また、スライダ122の継続した末端方向の移動が、進捗インジケータ114も末端方向に移動させ、その結果、使用者は、インジケータウィンドウ112を介し、1回分の投与量が完了したことを認識することができる。
【0034】
図8における代替的な二段式の穿刺の実施例では、可撓性カバー173の壁の厚さは、ほぼ一定である。この実施例では、ツウーショット(two-shot)成形部172が、外針148の後方に成形されたエラストマーの「ばね」として作用する。
図5および
図6の実施例のように、内針がセプタム158の無菌の壁159内に前進する前に、外針148が2つの無菌のバリアを穿孔する。可撓性カバー173の潰れとともに、エラストマーの「ばね」172は、
図5および
図6の実施例における2つに分けられたつぶれの効果をもたらし、すなわち、外針148による穿孔、および、外針148に対する内針150の移動をもたらす。
【0035】
図9における他の代替的な実施例では、可撓性カバー174は、ツウーショット成形部であり、潰れ部分176と、末端部178とを有する。末端部178は、末端部の端部に封止された膜180を有する。
図9に示されるように、膜180および膜154は、両方の膜が外針148により穿孔される前に、互いに当接する。しかしながら、2つの膜180、154の間の間隔は、本発明の範囲から逸脱することなく、変更可能である。例えば、2つの膜180、154は、離間され、または、完全に接触することができる。外針148は、両方の膜180、154を穿孔するので2つの膜の間隔は、外針148の長さ、および/または、移動量に影響を及ぼす。好ましくは、2つの膜180、154の相互間の間隔は、最小限である、または、膜は、接触している。
【0036】
この実施例では、可撓性カバー174の残部(remainder)が作られる物質(例えば、ゴム、または、メディカルグレードプラスチック(medical-grade plastic)などのようなエラストマー)を穿孔する必要はなく、外針148は、膜180、膜154を穿孔することのみ必要とされる。したがって、スプリング146により作られ必要とされる力が、低減される。
【0037】
図8および
図9の実施例のように、
図10の実施例においても、外針182は、エラストマーの「ばね」183に連結されている。しかしながら、一方、外針182における基端方向フランジ184は、
図8および
図9の実施例よりも半径方向外方に、さらに延びる。1つの実施例によれば、基端方向フランジ184は、可撓性カバー186の内側に接触している。加えて、外針の末端部は、外針182の穿孔能力を最適にするように1以上の面(facets)188を含む。
【0038】
さらに、前述の実施例とは対照的に、バルブプランジャ134の末端方向の移動の前に可撓性カバー186の末端部と、ストッパ194の基端部に配置された膜192との間には、より大きな空間190がある。1つの実施例によれば、防腐性材料が、空間190に配置される。
【0039】
図9の実施例と多くの点において同様に、
図11に示される実施例は、ツウーショット成形法を用いて作製される可撓性カバー200を含む。基端方向カバー部分202は、前述のように潰れることができ、末端方向カバー部分204は、基端方向カバー部分202に接合される。膜206は、末端方向カバー部分204の末端方向の開口部を横切って配置される。加えて、膜208は、ストッパインサート(stopper insert)210の基端部を横切って配置される。膜206および膜208(および他の前述の膜)用の物質の選択は、薄箔またはプラスチックフィルムを含む。
【0040】
簡潔に言うと、作動の際には、外針、即ち、貫通体またはインサータ(inserter)209が、内針214用の滅菌経路を開口し、それから、内針214は滅菌経路を通って移動し、ストッパ216を穿刺する。より詳細には、
図12の左側に示されるように、バルブプランジャ212の末端方向の移動中に、ゴム製ばね211の末端部に配置された外針、即ち、貫通体209は、最初に、膜206および膜208の両方を穿孔する。それから、
図12の右側に示されるように、無菌の内針214が、ストッパ216を穿孔し、薬剤バレル106内に収容された薬剤と無菌接続を形成する。
【0041】
図11および
図12の実施例のように、続いて説明される
図13乃至
図16の実施例は、可撓性カバーを含み、可撓性カバーは、その末端方向の開口部を覆う膜を有する。
【0042】
図13に示される実施例では、バルブプランジャ218は、内針228が固定連結された末端方向の突出部220を有する。末端方向の突出部220は、外針222の基端部と接触する。外針222の基端部は、バルブプランジャの末端方向の突出部220における末端部226に対応する形状を備える移動止め224を有する。移動止め224と末端部226との相互作用が、潰れる力を制御する。例えば、形状、硬度、および/または、移動止め224と末端部226との間の嵌合は、移動止め224に対して末端部226が移動するのに必要な力の量に影響を及ぼすことができる。1つの実施例によれば、移動止め224および末端部226は、傾斜が付けられている。
【0043】
作動の際には、バルブプランジャ218および外針222は、最初、互いに対して移動することなく、両方とも末端方向に移動する。この同時に起こる、しかし、相対的でない移動は、外針222が膜230および膜232を穿孔するまで継続し、外針の基端方向のフランジ234は、ストッパ236に対する外針222のさらなる移動を妨げる。バルブプランジャ218が継続して末端方向に移動したとき、末端部226は、移動止め224から外れ、バルブプランジャ218および内針228が、外針222(およびストッパ236)に対して末端方向に移動する。この継続した末端方向の移動中に、末端部226は、外針222の内部のキャビティ238内に移動し、内針228はストッパ236を穿孔し、薬剤バレル106内に配置された薬剤と無菌接続を形成する。
【0044】
図14の実施例では、外針、即ち、貫通体240は、穿孔の一連の工程中に、その潰れを制御するように設計された幾可学的形状を有する。より具体的には、外針240は、末端方向の穿孔部分242と、その末端部に第1のフランジ246を有する中央部分244と、その末端部に第2のフランジ250を有する基端部248とを有する。中央部分244は、中央空洞部252を含み、基端部248は、基端方向の空洞部254を含む。中央部分244および基端部248の長さ、外径、および壁厚の組み合わせは、中央空洞部252および基端方向の空洞部254の体積と共に、外針240に対する内針256の末端方向の移動のタイミングを規定する、外針240の制御された潰れをもたらす。
【0045】
同様に、
図15に示される実施例では、外針、即ち、貫通体260は、末端方向の穿孔部分262と、その末端部にフランジ266を有する中央部分264と、基端部268とを含む。
図14の実施例における略円筒形の基端部248とは対照的に、基端部268はテーパが付き、その基端部に拡径を有する。中央部分264は、中央空洞部270を有し、基端部268は、基端方向の空洞部272を有する。中央部分264および基端部268の長さおよび壁厚の組み合わせは、基端部268のテーパ角度および中央空洞部270および基端方向の空洞部272の体積と共に、外針260に対する内針274の末端方向の移動のタイミングを規定する、外針260の制御された潰れをもたらす。
【0046】
図16に示される実施例では、
図15に示される実施例と同様に、外針、即ち、貫通体280は、末端方向の穿孔部分282と、その末端部にフランジ286を有する中央部分284と、テーパが付きその基端部に拡径を有する基端部288とを含む。テーパが付けられた基端部288は、基端方向の空洞部290を含む。しかしながら、
図15の実施例とは対照的に、内針294用の中央通路292を除き、中央部分284は、略中実である。加えて、
図14および
図15の実施例と比較すると、中央部分284の長さが減少し、基端部288の長さが、増大している。基端部288の長さ、壁厚、およびテーパ角度の組み合わせは、基端方向の空洞部290の体積と共に、外針280に対する内針294の末端方向の移動のタイミングを規定する、外針280の基端部288の制御された潰れをもたらす。
【0047】
図示されていないが、
図14乃至
図16の実施例は、外針240、外針260、および外針280のそれぞれの基端部に配置された、インモールドばね(in-molded spring)を任意選択で含むことができる。図示されていないが、
図14乃至
図16の実施例は、外針240、外針260、および外針280のそれぞれの基端部に配置されたレバーアームを任意選択で含むことができる。
【0048】
本発明の実施例の外針用、即ち、貫通体用の材料選択には、サージカルステンレス鋼などの金属、ポリプロピレンなどの硬質プラスチックが含まれる。
【0049】
図17は、装置100の本体298内に薬剤バレル106を挿入する方法を例示する。
図17の左側に示されるように、先ず、使用者は、ホルダ296内に薬剤バレル106を挿入する。好ましくは、バレル106は、挿入前に薬剤で無菌充填されている。続いて、
図17の中間に示されるように、使用者は、それから、組み合わされた薬剤バレル106とホルダ196とを本体298内に挿入し、それにより、装置100を使用する準備を整える。随意に、ホルダが省略され、バレル106は、装置100の本体298内に直接的に挿入される。
【0050】
図18および
図19は、本発明の他の実施例に従った注入装置300における上面の斜視図、および、下面の斜視図であり、
図20は、薬剤バレルを装置300の本体内に挿入する方法を例示する。多くの点で、装置300は、前述された装置100に類似する。例えば、装置300は、上部カバー302と、下部カバー304(これらは連携して装置本体305を形成する)と、薬剤バレル306と、上部ボタン部分308と、下部ボタン部分310と、使用者は、インジケータウィンドウ312を通して進捗インジケータ314を確認し、投与の完了を判定する助けとすることができるインジケータウィンドウ312とを含む。簡潔にするために、装置100の一面に実質的に類似した装置300の一面は、詳細には説明されない。
【0051】
しかし、実質的に固定された薬剤バレルに対してバルブスリーブアセンブリが移動する装置100に対して、装置300では、より詳細に続いて記載されるように、実質的に固定されたバルブスリーブアセンブリに対して薬剤バレルが移動する。バルブスリーブアセンブリは、薬剤バレルの対向する端部に移されるが、外針が無菌トンネルを作り、内針がそこを通って移動し、穿刺を行い、薬剤が流れることを可能にする機能は、依然として同じである。
【0052】
上記のフィーチャに加えて、装置300は、装置本体内に移動可能に配置されたトロリー324と、装置カバー、即ち、フード326とを含む。
図20を参照すると、装置本体305内に薬剤バレル306を装填するために、製薬会社、末端使用者、または他の実在者(entity)(簡潔にするために、使用者と呼ぶ)は、トロリー324内に薬剤バレル306を挿入し、それから、装置本体305にフード326をロックする。より詳細に続いて記載されるように、装置300の設計により、無菌状態ではない条件下での薬剤バレル306が装填可能となり、さらに無菌接続を実現する。
【0053】
図18および
図19に戻って参照すると、装置300は、また、安全ピン316と、針遮蔽体、即ち、カバー318と、針遮蔽体用リムーバ320とを含む。安全構成時は、安全ピン316は、底部から装置300を通って、上部ボタン部分30および下部ボタン部分310を通って上方に延在し、安全ピン316が取り外されるまで、上部ボタン部分308が移動することを防止する(そして、それにより、装置の起動を防止する)。
【0054】
1つの実施例によれば、安全ピン316および針遮蔽体318は、両方とも、握るための把手部分322を有する針遮蔽体用リムーバに連結されている。作動の際には、使用者は、把手部分322を持ち上げて引っぱり、針遮蔽体318および針遮蔽体318を取り外し、それにより、患者用注射針の覆いを外し、上部ボタン部分308および下部ボタン部分310から安全ピン316を係合解除し、装置300を起動する準備を整える。
【0055】
図21に示されるように、装置300は、ニードルアクチュエータ、スライダ328と、起動用フリッパ330と、装置100の対応する要素に形状および機能が類似する解放用ゲート332とを含む。装置300は、付加的に、プランジャ334と、解放用フリッパ336とを含む。
図22に示されるように、プランジャ334は、解放用ゲート332と係合する基端方向のフック339と、シェルフ340を有するカンチレバーアーム338とを含む。
図23に示される解放用フリッパ336は、装置300の作動中にシェルフ340に係合し事象のタイミングを制御する、対応するシェルフ342と、プランジャフック344とを含む。
【0056】
より詳細には、使用者が、上部ボタン部分308を基端方向(
図21で示される方向A)に摺動させ、それから、ボタン部分308およびボタン部分310の両方を押し下げることにより装置300を起動するとき、下部ボタン部分310上の突出部346が、ニードルアクチュエータ、即ち、スライダ328上の突出部348から外れ、ばね346が、ニードルアクチュエータ328を、ニードルアクチュエータ止め具(needle actuator catch)350が解放用フリッパ336上のニードルアクチュエータフック352と係合する中間位置まで、予め設定された距離だけ末端方向に(方向Aとは逆に)移動させることが可能となる(
図24で最も良く示される)。プランジャのカンチレバーアーム338と、解放用フリッパのシェルフ342およびプランジャフック344との間の係合は、解放用フリッパが回転することを妨げ、それにより、フック352と止め具350との間の係合を維持し、それにより、ニードルアクチュエータの位置を維持する。
【0057】
加えて、ニードルアクチュエータ328が中間位置まで移動するとき、ニードルアクチュエータ328の末端部329が、起動用フリッパ330を反時計方向回りに回転させ、それにより、解放用ゲート332を、摺動させ、プランジャの基端方向フック339との係合から外し、プランジャが、プランジャスプリング354の力の下で末端方向に移動し、ストッパスペーサ356およびストッパ358を移動させることが可能となる。
【0058】
薬剤バレル306の早すぎる動きは、膜(より詳細に続いて記載されるように、394および406)を穿刺し、無菌決壊を引き起こす恐れがあるのでトロリー324の動きを制御することは重要である。トロリー324の動きを制御し、それが所望の時間まで移動しないことを確実にするために、トロリー324は、選択的に、トロリーラッチアセンブリ361により定位置に保持される。
図25に示されるように、ニードルアクチュエータ328の末端部は、起動前にトロリーラッチ360に隣接している。
図25に示される実施例によれば、ニードルアクチュエータ328は、起動前にトロリーラッチ360に接触している。しかしながら、他の実施例によれば、ニードルアクチュエータ328およびトロリーラッチ360は、起動前に離間されている。
図21および
図26には示されているが、トロリーラッチ360の上部ポスト364を回転可能に支持するトロリーラッチスナップブリッジ(trolley latch snap bridge)362は、見やすくするために
図25からは省略されている。
図26のトロリーラッチアセンブリ361の下部の斜視図に示されるように、上部ポスト364は、トロリー停止具368の環状のカム部分366を通って延在する。
【0059】
カム部分366に加えて、トロリー停止具368は、装置起動前にトロリー324の凹部または開口部372に係合し、トロリーが移動することを防止する停止部分370を含む。トロリーラッチ360は、停止部分370を凹部372から脱落させるのに十分な量をトロリーラッチが自由に回転することを防止し、したがって、起動前のトロリーの動きを防止する2次的な安全装置の役割を果たす下部突出部374も含む。
【0060】
起動後に、ばね346の力の下でニードルアクチュエータ328が中間位置に移動するとき、ニードルアクチュエータ328の末端部が、トロリーラッチ360と接触し、好ましくは、下部突出部374を、それが下部カバー304内のポストに接触したときに破壊し、折るのに十分な力で反時計方向回りに回転させる。トロリーラッチ360が回転するとき、上部ポスト364はカム部分366と相互に作用し、停止部分370を凹部372から外し、それにより、プランジャスプリング354の力の下でトロリー324が末端方向に移動することが可能となる。
【0061】
より詳細には、トロリー324は、薬剤バレル306の基端方向リム、即ち、フランジ378に係合する基端方向のフック376を有する。薬剤バレル306は封止され、実質的に非圧縮性流体で充填されているので、トロリー停止具368がトロリー324から外れたならば、(プランジャ334およびストッパスペーサ356を介して)ストッパ358に作用するプランジャスプリング354の力が、基端方向フック376と基端方向リム378との間の係合により、トロリー324を末端方向に移動させる。
【0062】
図27は、無菌バリアの穿孔直前の状態を例示する。より具体的には、
図27に示されるように、バルブスリーブアセンブリ380は、2つの部分からなる可撓性スリーブ382(バリア部分384と、可撓性部分386とを含む)と、中空の第1の貫通体、即ち、外針388と、中空の第2の貫通体、即ち、内針390とを含む。好ましくは、可撓性スリーブ382の内側のすべてのものが無菌である。バリア部分384は、可撓性部分386の基端部に配置されたキャップ
392と、キャップ
392の基端部に開口部を横切って配置された膜394とを含む。可撓性部分386の末端部は、下部カバー304に固定的に留められた針遮蔽用ホルダ396に連結される。内針390は、遮蔽用ホルダ396に固定的に留められ、チューブ398を介して患者用注射針と連結される。
【0063】
薬剤バレル306は、その末端部に配置された封止部材、即ち、セプタム400を有し、保護キャップ402およびキャップ404は、バレル306の末端部にセプタム400を維持する。バリア、即ち、膜406は、保護キャップ402の末端部に、開口部を横切って配置される。セプタム400、保護キャップ402、および膜406は共に、セプタムと流体連通するチャンバ408を形成する。好ましくは、チャンバ408に露出された少なくともセプタム400の表面は無菌であり、より好ましくは、チャンバ408は、無菌である。
【0064】
図27に例示された状態では、膜406および膜394が互いに隣接して配置されている。1つの実施例によれば、これは、起動前のバルブスリーブアセンブリ380および薬剤バレル306の相対的な位置である。しかしながら、好ましくは、膜406および膜394は、起動前は離間されており、
図27に例示された状態は、予め設定されたトロリー324の移動に続いて発生する。
【0065】
図27に例示された状態の後に、トロリー324が薬剤バレル306を末端方向に移動させるとき、可撓性部分386が潰れ、外針388が膜394および膜406の両方を穿孔する。
図28に示されるように、この実施例では、第1の貫通体、即ち、外針388は、硬質の、先の尖った穿孔部分410と、潰れ部分412とを含む。潰れ部分は、基部414であって、そこを通る、第2の貫通体、即ち、内側貫通体390用の穴を有する基部414と、基部414と穿孔部分410とを連結する少なくとも1つの、しかし、好ましくは1対の潰れ可能な脚416とを含む。図示されていないが、1つの実施例によれば、穿孔部分は、内針390に対する穿孔部分の移動を案内する穿孔部分内に配置された案内を含む。
【0066】
1つの実施例によれば、脚416を曲げるのに必要な圧潰力は、可撓性スリーブ382の可撓性部分386を潰すのに必要な力よりも大きくなるように選択される。この相対的なフォースプロファイル(force profile)により、脚416が曲がる前に可撓性部分386が潰れるように事象のタイミングが確保される。言い換えれば、この相対的なフォースプロファイルにより、脚が曲がり、穿孔部分410が内針390に対して移動し、内針の基端部を露出する前に、穿孔部分410が膜394および膜406を穿孔し、それにより、内針390の無菌を維持することが確保される。
【0067】
脚416が曲がり、穿孔部分410を内針390に対して移動させ、内針390の基端部を露出させた後に、トロリー324が薬剤バレル306を末端方向に移動させ続けるとき、内針390の基端部が、膜394および膜406のいずれにも接触することなくチャンバ408を通過し、プランジャスプリング354からの力が、セプタム400を内針390に突き刺し、その結果、内針390の基端部がセプタム400を穿孔する。これにより、薬剤バレル306の内部の薬剤と、内針390と流体連結された患者用注射針との間に無菌接続を作る。
【0068】
図29は、本発明の実施例に従った他の二段式の穿刺機構の部分断面図である。
図29の実施例は、第1の貫通体、即ち、外針418を除き、
図27の実施例にほぼ類似している。第1の貫通体418は、硬質の、先の尖った穿孔部分を含むが、潰れ部分ではなく、その代わり、例えば、インサート成形され得る1以上の内部接触リブ419を含む。接触リブ419は、外針418と内針390との間に摩擦抵抗をもたらし、内針390が外針418に対して移動する前に、外針418が膜394および膜406を穿孔することを確保する。言い換えれば、可撓性部分386を潰す力は、内針390に対して外針418を移動させる力よりも小さくなるように選択される。
【0069】
図21乃至
図25に戻って参照すると、患者用注射針と薬剤バレル306の内部との間に流体連結が確立されると、プランジャは、プランジャスプリング354の影響下でさらに末端方向に移動し、ストッパスペーサ356およびストッパ358(
図25で最も良く示される)を薬剤バレル306に対して移動させ、薬剤を分注する。予め設定された距離だけ末端方向に移動すると(予め設定された薬剤量が分注されると)、カンチレバーアーム338が解放用フリッパ336から外れ、それにより、
図21および
図25に示されるように、ニードルアクチュエータ328を押すばね346の影響下で、解放用フリッパが反時計方向回りに回転することが可能となる。解放用フリッパが十分に回転するとき、フック352は止め具350から外れ、ニードルアクチュエータ328を解放し、ばね346の影響下で末端方向に移動させ、患者用注射針を後退させ、インジケータウィンドウ312に対して進捗インジケータ314を移動させ、1回分の投与量が完了したことを示す。
【0070】
先に述べたように、薬剤流路の無菌が、封止されたバルブスリーブアセンブリにより確保されるため、装置300の実施例は、カートリッジ(例えば、プランジャアダプタ356と、ストッパ358と、薬剤バレル306と、セプタム400と、保護キャップ402と、キャップ404とを含む)が、無菌状態でない条件下で、装置の残部内に挿入されることが可能となる。さらに、カートリッジは、エチレンオキシド(EtO)滅菌プロセスを介して滅菌され、バレルの黄変(yellowing)を回避することができ、装置300の残部は、ガンマ線照射を介して滅菌されることができる。
【0071】
無菌接続を作る前述の装置および方法は、人体使用のための注入および注射装置に関して説明されているが、例えば、動物用注入または注射装置、凍結乾燥薬剤を再水和する装置、流体医薬品などの流体を混合する装置、フリーズドライ食品を再水和する装置などの他の応用分野でも実現されることができる。
【0072】
図30乃至
図32は、シールアセンブリ420、および、シールアセンブリ420を使用し、薬剤容器または薬剤バレル306の端部を封止するプロセスを例示する部分断面図である。シールアセンブリ420は、
図30に示されるように、セプタム422と、保護キャップ424と、封止膜426と、外キャップ428とを含む。キャップ428は、可撓性スリーブアセンブリ380の端部を、膜426に隣接するように位置決めする助けとなるガイドフィーチャ429を含む。
【0073】
最初に、製造者は、保護キャップ424内の開口部を覆うように膜426を施し、セプタム422内の凹部内に保護キャップ424を挿入し、中間アセンブリを形成する。この時点で、セプタム422、保護キャップ424、および膜426により形成されたチャンバは閉鎖されているが、まだ無菌ではない。セプタム422、保護キャップ424、および膜426は、例えば、ガンマ線照射技法を用いて滅菌されることができる。それから、製造者は、保護キャップ424の端部上にキャップ428を載置し、シールアセンブリ420を形成する。
【0074】
それから、
図31に示されるように、製造者は、クリーンルームにおいて、シールアセンブリ420を薬剤バレル306の端部上に挿入し、その結果、セプタム422は、バレル306の端部で先端部の内側に着座し、保護キャップ424は、バレル先端部の外側の周りで部分組立品を固定する。1つの実施例によれば、1以上の保護キャップカンチレバーアーム430は、それぞれがフック432を有しており、フック432がバレル306における環状の止め具434を通過するまで、バレル先端部の外部の周りを摺動する。続いて、
図32に示されるように、製造者は、外キャップ428を、保護キャップ424の周りで下に摺動させ、これにより、フック432が環状のバレル止め具434から外れることが防止され、それにより、シールアセンブリ420をバレル306の端部に固定する。1つの実施例によれば、外キャップ428は、保護キャップ444を圧縮する。滅菌の代替方法として、シールアセンブリ420とバレル306の組合せ体は、例えば、EtO滅菌プロセスを介して、一緒に滅菌されることができる。
【0075】
図33は、セプタム442と、保護キャップ444と、封止膜446と、外キャップ448とを含むシールアセンブリ440の他の実施例を例示する。シールアセンブリ440は、ガイドフィーチャが、外キャップ448上ではなく、保護キャップ444上に配置されている点を除き、シールアセンブリ420にほぼ類似している。加えて、保護キャップ444は、外部面上に環状のフィーチャ450を含み、キャップ448は、内面上に一対の環状の凹部452および凹部454を含む。組立中、環状のフィーチャ450は、第1の凹部454に係合し、シールアセンブリ440がバレル306の端部上に挿入されるときに、中間アセンブリとキャップ448の相対的な位置を維持する。
【0076】
バレル先端部内およびバレル先端部の周りにシールアセンブリを固定した後に、製造者は、外キャップ448を保護キャップ444に対して摺動させ、その結果、環状のフィーチャ450が第2の凹部452に係合し(
図33に示されるように)、シールアセンブリ420をバレル先端部に固定する。他の実施例によれば、(図示せず)、保護キャップ444は、追加的な環状のフィーチャ450を有し、その結果、製造者が、外キャップ448を保護キャップ444に対して摺動させ、シールアセンブリ420をバレル先端部に固定するとき、環状のフィーチャ450は、凹部452および凹部454の両方にそれぞれ係合する。
【0077】
ごく少数の本発明の実施例が示され、説明されたが、本発明は、説明された実施例に限定されるものではない。それどころか、本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施例に変更がなされ得ることを当業者は理解するであろう。当業者は、上述された様々な例示的実施例の様々な要素の様々な技術的側面を、多くの他の方法で容易に組み合わせることができ、それらのすべては、添付の請求の範囲およびそれらの均等物により規定される、本発明の範囲内であると考えられることに特に留意されたい。