特許第6685282号(P6685282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6685282多相バックコンバータ回路及び方法のための共用ブートストラップキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685282
(24)【登録日】2020年4月2日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】多相バックコンバータ回路及び方法のための共用ブートストラップキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20200413BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H02M3/155 W
   H02M1/08 C
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-507964(P2017-507964)
(86)(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公表番号】特表2017-530669(P2017-530669A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】US2015044707
(87)【国際公開番号】WO2016025514
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】14/456,745
(32)【優先日】2014年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】ジェレ アンドレアス ミカエル ジャルヴィネン
(72)【発明者】
【氏名】ジャルッコ アンテロ ロウタマ
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0193364(US,A1)
【文献】 特開2013−38865(JP,A)
【文献】 特開2013−162586(JP,A)
【文献】 特開2013−70263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC入力電圧からDC出力電圧を生成するための多相バックコンバータであって、
充電位相の間に正の供給電圧と接地電位との間に結合される共用ブートストラップキャパシタと、
対応するスイッチングノードに各々結合されるn個のスイッチング段であって、nが1より大きい整数であり、前記n個のスイッチング段の各々が、
正の入力電圧のための入力端子と前記対応するスイッチングノードとの間に結合されるハイサイドMOSスイッチと、
前記対応するスイッチングノードと出力端子との間に結合され、前記DC出力電圧を提供するために構成されるインダクタと、
を含む、前記n個のスイッチング段と、
前記共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートを前記n個のスイッチング段の各スイッチング段内の前記ハイサイドMOSスイッチのそれぞれのゲート端子に選択的に結合するように構成されるハイサイドドライバ回路要素であって、前記共用ブートストラップキャパシタが前記ハイサイドMOSスイッチのそれぞれのゲート静電容量を充電するように構成される、前記ハイサイドドライバ回路要素と、
を含み、
前記頂部プレートが前記ハイサイドMOSスイッチのゲート端子に結合されるときに前記共用ブートストラップキャパシタの下部プレートが正の電圧電位に結合される、バックコンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載のバックコンバータであって、
nが2に等しい整数である、バックコンバータ。
【請求項3】
請求項1に記載のバックコンバータであって、
前記n個のスイッチング段の各々における前記ハイサイドMOSスイッチがNMOSトランジスタである、バックコンバータ。
【請求項4】
請求項1に記載のバックコンバータであって、
前記共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートを前記正の供給電圧に選択的に結合し、前記共用ブートストラップキャパシタの底部プレートを前記接地電位に選択的に結合するように構成されるブートストラップキャパシタ充電回路要素を更に含む、バックコンバータ。
【請求項5】
請求項1に記載のバックコンバータであって、
前記共用ブートストラップキャパシタの底部プレートを前記正の入力電圧のための前記入力端子に選択的に結合し、前記共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートを前記n個のスイッチング段のうちの選択されたスイッチング段の前記ハイサイドMOSスイッチのゲート端子に選択的に結合するように構成されるハイサイドドライバターンオン制御回路要素を更に含む、バックコンバータ。
【請求項6】
請求項5に記載のバックコンバータであって、
前記ハイサイドドライバ回路要素が、前記n個のスイッチング段の各々に対応するn個のハイサイドドライバを含み、前記n個のハイサイドドライバの各々が、前記共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートと前記ハイサイドMOSスイッチの対応する1つのハイサイドMOSスイッチのゲート端子との間に結合される、バックコンバータ。
【請求項7】
請求項6に記載のバックコンバータであって、
前記ハイサイドドライバの各々が、前記共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートと前記ハイサイドMOSスイッチの対応する1つのハイサイドMOSスイッチの前記ゲート端子との間に直列結合されるバック・トゥ・バックのNMOSトランジスタの対を含み、前記バック・トゥ・バックのNMOSトランジスタが、前記ハイサイドドライバターンオン制御回路要素に結合される共用ゲート端子を有する、バックコンバータ。
【請求項8】
DC・DC電圧コンバータを多相バック構成で提供するように構成される集積回路であって、
充電位相の間に正の供給電圧と接地電位との間に結合されるブートストラップキャパシタと、
n個のスイッチングノード出力を有するn個のスイッチング段であって、nが1より大きい整数であり、前記n個のスイッチング段の各々が、
ゲート端子を有し、正の入力電圧端子と対応するスイッチングノード出力との間に結合されるハイサイドNMOSスイッチデバイスと、
ゲート端子を有し、前記対応するスイッチングノード出力と接地端子との間に結合されるローサイドNMOSスイッチデバイスと、
制御入力に応答して、前記ブートストラップキャパシタの頂部プレートを前記ハイサイドNMOSスイッチデバイスの前記ゲート端子に選択的に結合するハイサイドドライバと、
を含む、前記n個のスイッチング段と、
前記n個のスイッチング段の各スイッチング段の前記ハイサイドドライバの前記制御入力に結合されるハイサイドドライバ制御回路要素と、
を含み、
前記ブートストラップキャパシタが前記n個のスイッチング段の間で共用され、前記頂部プレートが前記ハイサイドNMOSスイッチデバイスのゲート端子に結合されるときに前記ブートストラップキャパシタの下部プレートが正の電圧電位に結合される、集積回路。
【請求項9】
請求項8に記載の集積回路であって、
前記ブートストラップキャパシタに選択的に結合されるブートストラップ充電回路要素であって、前記ブートストラップキャパシタの頂部プレートを前記正の供給電圧に選択的に結合し、前記ブートストラップキャパシタの底部プレートを前記接地電位に選択的に結合するように構成される、前記ブートストラップ充電回路要素を更に含む、集積回路。
【請求項10】
請求項8に記載の集積回路であって、
前記ハイサイドドライバ制御回路要素が、前記ブートストラップキャパシタの前記頂部プレートを前記n個のスイッチング段のうちの選択された1つのスイッチング段の前記ハイサイドNMOSスイッチデバイスのゲート端子に選択的に結合、前記ブートストラップキャパシタの底部プレートを前記正の入力電圧端子に選択的に結合するように構成される、集積回路。
【請求項11】
請求項8に記載の集積回路であって、
前記n個のスイッチング段における前記ハイサイドドライバの各々が、バック・トゥ・バックの直列結合されるNMOSトランジスタの対を含み、前記NMOSトランジスタの対が前記制御入力に結合される共通ゲート端子を有する、集積回路。
【請求項12】
請求項8に記載の集積回路であって、
nが2に等しい、集積回路。
【請求項13】
請求項8に記載の集積回路であって、
各々が前記n個のスイッチングノード出力の対応する1つに結合される、n個のインダクタを更に含み、
前記n個のインダクタが、バックコンバータのためにDC電圧出力端子を形成するように、前記n個のスイッチングノード出力と電圧出力ノードとの間に並列に結合される、集積回路。
【請求項14】
請求項8に記載の集積回路であって、
前記n個のスイッチング段と前記ブートストラップキャパシタとが単一の集積回路上で提供される、集積回路。
【請求項15】
請求項8に記載の集積回路であって、
前記n個のスイッチング段が単一の集積回路上に提供され、前記ブートストラップキャパシタが前記集積回路に結合される外部構成要素として提供される、集積回路。
【請求項16】
n個のスイッチング段を含む多相バックコンバータを制御する方法であって、
共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートを正の電圧供給に結合する一方で、前記共用ブートストラップキャパシタの底部プレートを接地電位に結合することにより、前記共用ブートストラップキャパシタを充電することと、
続いて、前記共用ブートストラップキャパシタの前記底部プレートを正の入力電圧に結合する一方で、同時に、前記共用ブートストラップキャパシタの前記頂部プレートをn個のスイッチング段のうちの選択された1つのスイッチング段内のハイサイドNMOSスイッチのゲート端子に結合して、前記n個のスイッチング段の前記ハイサイドNMOSスイッチに供給される入力電圧より大きいブートストラップされた電圧を前記n個のスイッチング段のうちの前記選択された1つのスイッチング段内の前記ハイサイドNMOSスイッチの前記ゲート端子提供し、そのため、前記ハイサイドNMOSスイッチをオンにすることと、
を含み、
nが1より大きい整数である、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記共用ブートストラップキャパシタを前記n個のスイッチング段のうちの前記選択された1つから結合解除することと、
続いて、前記共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートを前記正の電圧供給に再び結合する一方で、前記共用ブートストラップキャパシタの底部プレートを前記接地電位に結合することによって、前記共用ブートストラップキャパシタを再充電することと、
続いて、前記共用ブートストラップキャパシタの前記底部プレートを前記入力電圧に結合する一方で、同時に、前記共用ブートストラップキャパシタの前記頂部プレートを前記n個のスイッチング段のうちの別の選択された1つ内の前記ハイサイドNMOSスイッチのゲート端子に結合して、前記入力電圧より大きい電圧を前記ゲート端子に提供し、そのため、前記n個のスイッチング段のうちの前記別の選択された1つ内の前記ハイサイドNMOSスイッチをオンにすることと、
続いて、前記n個のスイッチング段の各々が、それが充電される一方で、前記共用ブートストラップキャパシタに結合されるまで、上記の3つの工程を反復することと、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
続いて、前記共用ブートストラップキャパシタの前記底部プレートを前記入力電圧に結合する一方で、同時に、前記共用ブートストラップキャパシタの前記頂部プレートを前記ハイサイドNMOSスイッチのうちの選択された1つのハイサイドNMOSスイッチのゲート端子に結合することが、
バック・トゥ・バックの直列結合されるNMOSトランジスタの対を、前記n個のスイッチング段のうちの前記選択された1つのために、前記共用ブートストラップキャパシタの前記頂部プレートと前記ハイサイドNMOSスイッチの前記ゲート端子との間に結合することと、
バック・トゥ・バックの直列結合されたNMOSトランジスタの前記対の共通ゲート端子における所定のゲート閾値電圧より大きい電圧を置くことによって、バック・トゥ・バックの直列結合されるNMOSトランジスタの前記対を動作させ、バック・トゥ・バックの直列結合されたNMOSトランジスタの前記対をオンにすることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、ステップダウンされた電圧を入力電圧から提供するためのDC・DCスイッチングコンバータにおける多相スイッチング回路に関連する。
【背景技術】
【0002】
ポータブル及びバッテリー電力供給デバイスにおいて、DC電力供給回路に対する最近の改善はますます重要になってきている。このようなデバイスにおいて、供給電圧は、AC電力が利用可能であるときDC電圧(12又は24ボルトなど)を出力する、AC・DC変圧器又は「ブリック(brick)」によって提供されることがある。ポータブルデバイスは、しばしば、ACが利用可能でないとき、再充電可能な又はその他のバッテリーから提供される同様のDC電圧上でも動作する。ポータブルデバイスには、「ブリック」を有さず、バッテリーからのみ動作するものもある。ポータブルデバイス内で用いられる電子機器は、典型的に、マイクロプロセッサ、揮発性又は不揮発性ストレージデバイス、デジタル無線又は携帯電話トランシーバデバイスなどの集積回路、及び、ブルートゥース、WiFi、及びディスプレイドライバなどの他の機能を含む。集積回路デバイスは、1.8ボルトのDC又はそれより更に低いなど、より低い動作電圧で動作するように設計されるようになってきている。集積回路のための動作電圧がより低いと、消費する電力がより小さくなり、そのためバッテリー寿命が延びる。2.8V、3.3V、又は5Vなど、他の供給電圧が用いられることもある。バッテリー又はAC・DC変圧器又は「ブリック」からのシステム供給電圧は、典型的に、電子回路要素により必要とされる電圧よりも高く、そのため、DC・DCステップダウンコンバータが用いられる。
【0003】
スイッチング電力コンバータ回路は、電子デバイスに対してDC電圧及び電流を提供するためにますます有用となってきている。「ステップダウン」スイッチングコンバータの場合、「バック(buck)」構成のパルス幅変調(「PWM」)コンバータがしばしば用いられる。これらのPWMコンバータ回路は、ステップダウンされたDC・DC電圧を提供するために従前用いられていたリニアレギュレータよりも、ずっと効率的であり、クール(cooler)に動く。バックコンバータにおいて、ハイサイドスイッチ(MOSトランジスタなど)が、入力電圧端子とスイッチングノードとの間の電流導通経路と結合される。ハイサイドスイッチのゲート端子に結合されるパルス幅変調された信号が、「オン」状態にあるハイサイドスイッチをオンにする又は「閉じる」ために有用であり、パルス幅変調された信号は、「オフ」状態にあるハイサイドスイッチをオフにする又は「開く」ために有用である。これら二つの状態は、比較的一定の周波数パターンで交番する。コンバータの「デューティサイクル」は、ハイサイドスイッチの「オン」時間と「オフ」時間との比である。スイッチングノードと出力電圧のための出力端子との間にインダクタが結合される。出力端子と接地端子との間に出力キャパシタが結合される。「オン」状態時間の間ハイサイドスイッチを閉じること、及び「オン」状態の間インダクタへ電流を駆動すること、その後続いて、「オフ」状態時間の間ハイサイドスイッチを開くことにより、インダクタへ及び負荷へ電流が流れ、出力キャパシタによりサポートされる負荷に出力電圧が生じる。また、スイッチングノードと接地電位との間に整流デバイスが結合される。整流デバイスは、回路に対する「オフ時間」である、ハイサイドスイッチが開であるとき、電流をインダクタに供給するために有用である。次第に、この整流デバイスは、ローサイドドライバスイッチにより置き換えられるが、ダイオード整流器も時折用いられる。ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチ両方(以前のダイオード整流器を置き換える)に対してMOSFETトランジスタを用いることによって、同期スイッチングコンバータトポロジーがつくられる。低RDSオン値を有するMOSFETトランジスタを用いることにより、及びハイサイド及びローサイドスイッチに対してオン及びオフ時間を制御することにより、効率的なDC・DCバックコンバータ回路が実装される。
【0004】
一定周波数及びパルス幅変調でのデューティサイクルを用いるスイッチングバックコンバータにおいて、出力電流が負荷にコンスタントに流れるとき、出力端子において得られるDC出力電圧は、電圧入力端子における入力DC電圧に正比例する。より具体的には、出力電圧は、ハイサイドスイッチのオフ時間に対するオン時間の比により乗算された入力電圧に比例する。従って、DC出力電圧はデューティサイクルに比例する。そのため、「オン」状態のパルス幅を変えることにより、出力電圧は所望の値に変えられ得、レギュレートされ得る。典型的に、回路をクロックするパルスソースを得るために、オンボード又はオフボード発振器が用いられる。例えば、出力における感知レジスタ又はその他の電流センサをフィードバック制御と共に用いることにより、出力電圧はその後、ハイサイドスイッチを閉じる変調されたパルスの幅を変えることによって所望の値にレギュレートされ得、それにより、入力電圧又は供給電圧をインダクタのためスイッチングノードに結合する。負荷に電流が流れないか又は低電流が流れている間、出力をレギュレートするために、付加的な回路要素が用いられることがある。例えば、回路は、脈動される周波数モードに切り替え得、又は軽い負荷状態が存在するときその他の方式でサイクルをスキップする。一例として、本願と同じ出願人が所有し、参照により全般的に本明細書に組み込まれている、2014年4月29日に登録された米国特許番号第8,710,816号、発明者、宮崎、発明の名称「軽い負荷下の低減されたリップルを有するバックコンバータ」は、軽い負荷下で動作するときバックコンバータ回路の効率を増大させるための回路要素を開示している。
【0005】
バックコンバータは、DC電圧を提供するために従前用いられているリニアレギュレータよりも実質的により効率的であるが、バックコンバータ性能を更にするために多相バックコンバータが用いられることが多くなってきている。多相バックコンバータにおいて、幾つかのスイッチング回路段及び対応するインダクタが互いに並列に結合され、これらの複数段はノンオーバーラップ(non-overlapping)位相で動作される。複数の位相出力は、その後、単に加算されて全体的な出力を形成する。2、3、4、又はそれ以上の位相及び対応する回路段が存在し得る。しかし、複数位相の付加は、制御回路要素の複雑度を増大させ、そのため、位相の数と制御回路要素の量(及び複雑度)との間に設計トレードオフが存在する。
【0006】
多相コンバータの利用は、単一相バックコンバータのための出力における望ましくないリップル電圧を有利に低減し、また、多相バックコンバータは、単一相バックコンバータに比して、負荷電流の変動を非常にうまく取り扱う。最近のマイクロプロセッサは、ポータブルデバイスのバッテリー寿命が延びるようにアイドルマイクロプロセッササイクルの間電力を低減するために有用な、多くの「スリープ」及び「パワーセーブ」モードを有するので、最近のマイクロプロセッサにより要望される電流は実質的に変動する。従って、多相バックコンバータは、特にマイクロプロセッサシステムにおいてDC電圧を供給するためにますます用いられるようになってきている。
【0007】
図1は、典型的な多相バックコンバータ回路10のブロック図である。図1において、第1の段スイッチング回路11が、ハイサイドMOSFETスイッチ111を含み、これは、「オン」状態の間、必要とされる又は予期される負荷電流を、対応するインダクタL_1に提供するために充分に大きなn型MOSFET(「NMOS」)トランジスタである。MOSFETスイッチ111のゲート端子にハイサイドドライバ回路113が結合される。ハイサイドMOSFETスイッチ111はスイッチングノードSW1に結合され、スイッチングノードSW1は、インダクタL_1の一つの端子に結合される。更に、第1の段スイッチング回路11において、この例では同じくN型であるMOSFETデバイス117であるローサイドスイッチ117が、スイッチノードSW1と接地端子との間に結合される。ローサイドドライバ115が、ローサイドスイッチ117のゲート端子上の電圧を制御することによりローサイドスイッチ117を制御する。スイッチング回路11の「オフ状態」の間、ローサイドスイッチ117は、インダクタL_1への電流経路を供給電流に提供する。
【0008】
図1において、多相バックコンバータ10は、アスタリスクで示すようにn個の位相を有する。この例では、2つの位相が示されている。しかし、実際のシステムにおいて、nは、2より大きいか又は2に等しい任意の正の整数であり得、種々の応用例に対して、3、4、及びそれ以上の位相バックコンバータシステムが知られている。これは図1において、第1の段インダクタL_1と、L_Nで示される底部段のためのインダクタとの間のコラムにおいてアスタリスクで示される。
【0009】
図1において、第2段スイッチング回路13は、第1の段スイッチング回路11と並列に結合される。第2段スイッチング回路13内の回路要素は、第1の段スイッチング回路11のものと同じであり、この場合もNMOSトランジスタであり得るハイサイドMOSスイッチ131を含み、ハイサイドMOSスイッチ131のゲート端子にハイサイドドライバ回路133が結合され、ローサイドスイッチ137のゲート端子にローサイドドライバ回路135が結合される。スイッチング回路13はスイッチングノードSWNに結合され、スイッチングノードSWNは、インダクタL_Nの一つの端子に結合される。
【0010】
図1において、ドライバ制御回路15が、ハイサイドドライバ回路113及び133の、及びローサイドドライバ回路115及び135の制御を提供する。オペレーションにおいて、第1の位相で、ハイサイドMOSスイッチ111は、ハイサイドドライバ回路113からゲート端子上に、ハイサイドMOSスイッチ(トランジスタ)111に対するトランジスタ閾値電圧Vtだけソース電圧を超えるゲート電圧を駆動することによって閉じられる。このアクションは、ハイサイドMOSスイッチ111を「閉じ」、入力電圧VINをスイッチングノードSW1に結合する。電流が、インダクタL_1内に、及び出力ノードから外に流れ、それによりキャパシタCOを充電し、負荷電流フローが、出力Voにおける出力電圧を形成する。この「オン」状態の間、インダクタL_1は、インダクタを囲む磁場におけるエネルギーをストアする。「オン」状態が終了した後、ドライバ制御回路15は、ハイサイドドライバ回路113を制御し、ハイサイドMOSFETスイッチ111をオフにし、ドライバ制御回路15は、ローサイドドライバ回路115を制御し、ローサイドスイッチ(MOSFET)117をオフにする。ローサイドスイッチ117は、第1の段スイッチング回路11の「オフ」状態の間、電流経路を提供し、そのため、電流が、ストアされたエネルギーからインダクタL_1を介して及びキャパシタCO内に及び出力端子Voにおいて負荷(図示せず)内に流れ、これは、「オフ」状態の間、出力端子Voにおける電圧をサポートする。
【0011】
第2段スイッチング回路13は、第1の段スイッチング回路11と同じ方式で動作するが、これら2段は、ノンオーバーラップ位相において動作される。このようにして、2つの位相スイッチング回路11及び13によって提供される出力電流は、出力Voにおいて加算され、2つのスイッチング回路11及び13は共に、この電流を負荷に提供する。ドライバ制御回路15は、ハイサイドMOSスイッチ111及び131に対してハイサイドドライバ回路113及び133をオンにするため、及びノンオーバーラップ位相においてローサイドスイッチ117及び137をオンにするために必要とされるパルスを提供する。
【0012】
ハイサイドMOSスイッチ111及び131をオンにするため、MOSトランジスタのゲート端子における電圧が、入力電圧より高いことが必要となる。このゲート電圧は、ブートストラップキャパシタを用いて形成されている。このキャパシタは「フライキャップ」と称されることもあるが、本開示は、「ブートストラップキャパシタ」という用語を用いる。ブートストラップキャパシタは、まず、内部的にレギュレートされた電圧VDDなどの正の供給電圧に結合される頂部プレートと、接地電位に結合される底部プレートとを備えて構成される。このようにして、ブートストラップキャパシタは、供給電圧レベルまで充電される。ブートストラップキャパシタは、その後、底部プレートが正の入力電圧VINであり、頂部プレートがハイサイドスイッチゲートに結合されるように結合される。そのため、ハイサイドスイッチゲートにおける電圧は、正の供給電圧と底部プレートにおける入力電圧VINとの和である電圧に「ブートストラップされる」。このようにして、ハイサイドMOSスイッチ111、131をオンにするためにゲート電圧が生じ得る。
【0013】
必要とされるゲート電圧をハイサイドMOSスイッチにおいて提供するためにブートストラップキャパシタを用いる従来の多相バックコンバータにおいて、各スイッチング回路段は、個別のブートストラップキャパシタを必要とする。更に、n型MOSFET(「NMOS」)トランジスタであるハイサイドスイッチデバイスは、大きなゲート静電容量を有する。従って、各段に対して必要とされるブートストラップキャパシタもまた比較的大きい。これは、それがハイサイドMOSスイッチのゲートキャパシタを充電するために必要なためである。従って、多相バックコンバータ構成の利用は、複数の大きなブートストラップキャパシタを必要とする。これらのブートストラップキャパシタが、コンバータ集積回路におけるハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチと統合される場合、ブートストラップキャパシタに必要とされるシリコンエリアの量が、多相バックコンバータ回路を、或る半導体プロセスにおいて製造されるべき単一デバイス上の製造には過剰に大きくし得る。代替として、ブートストラップキャパシタが、集積回路に結合される外部構成要素として代わりに提供される場合、複数のブートストラップキャパシタの利用は、これらの付加された構成要素の各々のために2つの外部ピンを必要とする。この余分のピンは、コンバータ集積回路のためのピンカウントを望ましくなく増大させ得、それに対応してパッケージング及び他の製造コストを増大させ得る。これは、必要とされるピンが全く利用可能でない状況につながり得る。更に、複数の大きな外部ブートストラップキャパシタの利用は、多相DC・DCバックコンバータを実装するためのボードエリアを望ましくなく増大させる。
【発明の概要】
【0014】
記載される例において、少なくとも2つのハイサイドスイッチに結合される共用ブートストラップキャパシタを含む、多相バックコンバータ回路が実装される。一例において、DC入力電圧からDC出力電圧を生成するためのバックコンバータがn個のスイッチング段を含み、n個のスイッチング段の各々は、対応するスイッチングノードに結合される。この例では、n個のスイッチング段の各々はまた、正の入力電圧と対応するスイッチングノードとの間に結合されるハイサイドMOSスイッチ、対応するスイッチングノードと接地端子との間に結合されるローサイドMOSスイッチ、対応するスイッチングノードと出力端子との間に並列に結合され、DC出力電圧を提供するために構成される、n個のスイッチング段の各々に対応するインダクタ、及び、共用ブートストラップキャパシタを、n個のスイッチング段の各スイッチング段内のハイサイドMOSスイッチの各ハイサイドMOSスイッチのゲート端子に選択的に結合するためのハイサイドドライバ回路要素を含む。ブートストラップキャパシタは、ハイサイドMOSスイッチの各々のゲート静電容量を充電するように構成される。
【0015】
別の例において、バック構成のDC・DC電圧コンバータを提供するように構成される集積回路が、n個のスイッチングノード出力を有するn個のスイッチング段を含む。この例では、n個のスイッチング段の各々は、ゲート端子を有し、且つ、正の入力電圧と対応するスイッチングノード出力との間に結合される、ハイサイドNMOSスイッチデバイス、ゲート端子を有し、且つ、対応するスイッチングノード出力と接地端子との間に結合される、ローサイドNMOSスイッチデバイス、ゲート端子に応答してブートストラップキャパシタの頂部プレートをハイサイドNMOSスイッチデバイスの制御入力に選択的に結合するハイサイドドライバ、及び、n個のスイッチング段の各スイッチング段のハイサイドドライバの制御入力に結合されるハイサイドドライバ制御回路要素を含む。このようにして、ブートストラップキャパシタは、n個のスイッチング段間で共用される。
【0016】
上述の例において、nは、2、3、4及びそれ以上の数など、2より大きいか又は2に等しい正の整数である。
【0017】
別の例において、或る方法が、n個のスイッチング段をn個のスイッチング出力ノードに結合することを含む。n個のスイッチング段の各々は、ゲート端子を有し、且つ、正の入力電圧とn個のスイッチング出力ノードの対応する一つとの間に結合される、ハイサイドNMOSスイッチを含む。また、n個のスイッチング段の各々は更に、スイッチング出力ノードの対応する一つと接地電位との間に結合されるローサイドNMOSスイッチを含む。この方法は、ブートストラップキャパシタの頂部プレートを正の供給電圧に結合することによって共用ブートストラップキャパシタを充電する一方で、ブートストラップキャパシタの底部プレートを接地電位に結合すること、及びその後、充電された共用ブートストラップキャパシタの底部プレートを正の入力電圧に結合する一方で、同時に、充電された共用ブートストラップキャパシタの頂部プレートを、n個のスイッチング段のうち選択された一つのスイッチング段内のハイサイドNMOSスイッチデバイスのうち選択された一つのハイサイドNMOSスイッチデバイスのゲート端子に結合することにより継続する。このようにして、共用ブートストラップキャパシタは、選択されたハイサイドNMOSスイッチのゲート端子上の正の供給電圧より大きい電圧を提供するように、及びそれにより、選択されたハイサイドNMOSスイッチをオンにするように動作される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】典型的な多相バックコンバータ回路の回路図である。
【0019】
図2】例示の実施例のハイサイドドライバ回路の一部のブロック図である。
【0020】
図3】例示の実施例のハイサイドドライバ回路の回路図である。
【0021】
図4図3の回路における選択された信号のオペレーションのタイミング図である。
【0022】
図5】例示のキャパシタ充電回路の回路図である。
【0023】
図6】一例の集積回路のブロック図である。
【0024】
図7】代替例の集積回路のブロック図である。
【0025】
図8】方法の簡略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
例示の実施例は、DC入力電圧からDC出力電圧が提供される種々の応用例に適用し得るバック構成において効率的な多相スイッチングコンバータを提供する。なお、図面は一定の縮尺で描いてはいない。
【0027】
図2は、例示の実施例の多相バックコンバータのハイサイド回路部20の簡略化した回路図である。図2において、第1のスイッチング段220が、「HSD_1」と示されるハイサイドドライバ回路213を含み、ハイサイドドライバ回路213は、NMOSトランジスタであるハイサイドMOSスイッチ211のゲート端子において「HSD_Gate_1」と示されるノードに結合される。ハイサイドMOSスイッチ211は、入力電圧VINとスイッチングノードSW1との間に結合されるソース・ドレイン電流経路を有する。
【0028】
更に、図2において、第2のスイッチング段240が、「HSD2」と示されるハイサイドドライバ回路233を含み、ハイサイドドライバ回路233は、ハイサイドMOSスイッチ231のためのゲート端子である「HSD_Gate_2」と示されるノードに結合される。ハイサイドMOSスイッチ231は、入力電圧VINとスイッチングノードSW2との間に結合されるソース・ドレイン電流経路を有する。この例はn個のスイッチング段を有し、n=2である。他の例においてnは2より大きい整数である。n個のスイッチング段の各々は、図2にあるように、対応するスイッチングノードに結合されるハイサイドMOSスイッチ、及びハイサイドドライバ回路を含む。
【0029】
スイッチングノードSW1、SW2の各々はまた、スイッチングノードに結合される対応するインダクタを有し、これらは、それぞれ、段220及び段240に対してインダクタ223及び243として図2に示される。これらの段の各々に対するインダクタ223、243は、並列に及び電圧出力ノードVoに結合され、また、出力キャパシタ(図示せず)が上述のように電圧出力ノードに結合される。
【0030】
ハイサイドドライバ回路213及び233は、HSDターンオン制御回路215により制御される。HSDターンオフ制御回路217が、「オン」段オペレーションの端部においてMOSスイッチをオフにするため、ハイサイドMOSスイッチ211及び231のゲート端子を放電する。
【0031】
図2において、CBと示される単一のブートストラップキャパシタ221が、HSDターンオン制御回路215に結合され、及びブートストラップキャパシタ充電回路219にも結合される。有利には、例示の実施例において、共用ブートストラップキャパシタが複数のスイッチング段に対して用いられる。従来のアプローチとは著しく対称的に、例示の実施例は、単一のブートストラップキャパシタが、多相バックコンバータのn個のスイッチング段の各々に対するハイサイドMOSスイッチの各ハイサイドMOSスイッチのゲート端子において必要とされるブーストされた電圧を提供することを可能にする。必要とされるブートストラップキャパシタが一つのみであるため、多相コンバータを実装するために必要とされるシリコンエリアが著しく低減される。代替として、ブートストラップキャパシタ221が外部回路構成要素として結合される場合、ブートストラップ機能のために必要とされるピンの数は2つのみである。共用外部ブートストラップキャパシタの利用は、付加的な例を形成する。
【0032】
ブートストラップキャパシタ221のサイズは、図2における211、231など、ハイサイドMOSスイッチのゲート静電容量により或る程度決められる。ブートストラップキャパシタ221は、これらのn型MOSFET(「NMOS」)デバイスのゲート静電容量を充電するために充分に大きくする必要があり、これらはまた、電流を正の入力電圧VINから負荷に搬送するために充分に大きな寸法とされる。一例において、ブートストラップキャパシタは1.2ナノファラド(1.2nF)の値を有し、これは、集積回路キャパシタにしては比較的大きい。多相バックコンバータに対して単一の共用ブートストラップキャパシタを用いることにより、例示の実施例は、従来のアプローチの不備及び欠点を有利に克服する。
【0033】
オペレーションにおいて、図2のバックコンバータ回路20は、ブートストラップキャパシタ221のための初期充電位相を実施する。ブートストラップキャパシタ充電位相の間、ブートストラップキャパシタ221は、ノードCB_HIGHにおいて頂部プレートに結合される供給電圧(VDD)を有し、ブートストラップキャパシタが供給電圧まで充電されるまで、接地電位がノードCB_LOWにおいて底部プレートに結合される。供給電圧は、低ドロップアウトレギュレータなどの内部電圧レギュレータによって提供され得る。代替として、供給電圧VDDは、同様のレギュレータ回路により外部的に提供され得、又は更に別の例示の実施例において、供給電圧は、正の入力電圧VINから直接的に提供され得る。続いて、ハイサイドドライバターンオン位相において、充電されたブートストラップキャパシタ221は、供給電圧から結合解除される。充電されたブートストラップキャパシタ221は、その後、VINなどの正の入力電圧に置かれるノードCB_LOWにおいて底部プレートと結合され、ノードCB_HIGHにおける頂部プレートは、n個のスイッチング段のうちの一つのスイッチング段のハイサイドMOSスイッチのうち選択された一つのハイサイドMOSスイッチのゲートに結合される。ここではブートストラップキャパシタ電圧が正の入力電圧に付加されるので、選択されたハイサイドMOSスイッチのゲート端子における電圧は、入力電圧より高い電位にブースト又は「ブートストラップ」される。従って、ゲート端子は、キャパシタにストアされたストア電圧と、ここでは充電されたブートストラップキャパシタの底部プレートに置かれる正の入力電圧VINとの和である、「ブートストラップされた」電圧を受け取る。そのため、ハイサイドMOSスイッチゲート静電容量は、ブートストラップされた電圧で充電される。このアクションは、この例ではNMOSトランジスタであるハイサイドMOSスイッチをオンにする。例えば、ブートストラップキャパシタ221の頂部プレートをハイサイドMOSスイッチ211のゲート端子に結合するため、ハイサイドドライバ回路213(HSD_1と示される)が、HSDターンオン制御回路215により制御される。
【0034】
選択されたハイサイドMOSドライバのターンオンに続いて、MOSスイッチ211、231は、ゲート静電容量がHSDターンオフ制御回路217により放電されるまで、オンのままであり(又はスイッチ用語を用いると、閉じられ)得る。一方、HSDターンオン制御回路215は、213などのハイサイドドライバ回路を制御することにより、選択されたスイッチング段からブートストラップキャパシタ221CBを結合解除させ得る。ブートストラップキャパシタ充電回路219は、その後、ブートストラップキャパシタ221を再充電するため、キャパシタ充電位相を再び実施し得る。その後、ハイサイドドライバターンオンシーケンスが、この例ではハイサイドドライバ回路233を用いて、別のスイッチング段のために反復され、そのため、単一ブートストラップキャパシタ221CBは、n個のスイッチング段間で共有される。驚くことに、従来のアプローチにおいて必要とされるような、各スイッチング段に対して個別のブートストラップキャパシタの必要性は、有利にも例示の実施例の利用によりなくされる。多相バックコンバータの各位相に対する個別のブートストラップキャパシタをなくすことは、シリコンエリアを節約し、回路要素のための構成要素カウントを有利に低減する。
【0035】
図3において、ハイサイドドライバ30のための例示の実装の一部を回路図に示す。ハイサイドドライバ回路313及び333が、それぞれ、HSD_GATE_1及びHSD_GATE_2と示されるハイサイドMOSスイッチゲートノードに結合される。これらのゲート信号は、その後、図2に関連して上述したようにハイサイドMOSスイッチのゲート端子に結合される(簡潔にするためここでは図示していない)。ハイサイドドライバ回路313及び333は、それぞれ、ターンオンマスター回路303及びターンオンスレーブ回路305により制御される。図3において、「HSD_TURN−ON」と示される別の回路315が、「HSD_TURNON」と示される制御信号を出力する。共用ブートストラップキャパシタ321が上述のように結合される。この例では、ブートストラップキャパシタ321は1.2nFの値を有する。しかし、ブートストラップキャパシタ値は、応用例に応じて大きく変化し得る。ブートストラップキャパシタのサイズは、ハイサイドMOSスイッチトランジスタのゲート静電容量によって決まり、これは、MOSスイッチトランジスタのサイズに比例する。MOSスイッチトランジスタのサイズは、必要とされる電流を正の入力電圧VINから負荷に供給するために充分に大きい。これらの例は、単一の大きなブートストラップキャパシタを、多相コンバータの多くの段間で共有させ、これは有利にも、非常に大きなキャパシタ値が集積回路上で用いられることを可能にし、又は多相コンバータを実装する集積回路のために外部キャパシタに必要とされるピン数を大いに制限する。
【0036】
図3の例において、ハイサイドドライバ回路313及び333は各々、有利にも、バック・トゥ・バック(back to back)で直列結合されるNMOSトランジスタの対を用いて実装される。これらのNMOSトランジスタをハイサイドドライバ回路として用いることによって、幾つかの利点が達成される。直列結合されたNMOS対は、ハイサイドMOSスイッチのゲート静電容量を放電することなく、ハイサイドMOSスイッチのゲートからブートストラップキャパシタを結合解除する効率的な方式を提供する。このようにして、ブートストラップキャパシタ321は、ハイサイドMOSスイッチがまだオンにされたままである間、及びハイサイドMOSスイッチにおけるゲート静電容量充電を妨害することなく、ゲートハイサイドMOSスイッチからブートストラップキャパシタ321を結合解除することによって再充電され得る。これは、有利にも、ハイサイドMOSスイッチの「オン」状態の間、スイッチング回路の次の段を駆動する際に用いるための準備におけるブートストラップキャパシタ321の再充電を可能にする。更に、幾つかのオペレーションにおいて、ハイサイドスイッチはより多く又はより少なく継続的に閉じられ得、バック・トゥ・バックの直列結合されたNMOS対の利用は、有利にも、ブートストラップキャパシタが同時に再充電されている間でも、ハイサイドMOSスイッチをオンにされた又は閉じられたままとし得る。
【0037】
ハイサイドドライバ回路313及び333は、供給電圧より大きい、2倍で乗算された、NMOSトランジスタ閾値電圧より大きいターンオン電圧を必要とする。図3の例において、このターンオン電圧は、有利にも、第2の共用ブートストラップキャパシタ回路を用いてつくられる。この例では40ピコファラド(pF)の値を有するキャパシタ351が、ノードVBOOSTLにおける底部プレート、及びノードVBOOSTHにおける頂部プレートを有する。この例では、このキャパシタ351も共用される。ノードVBOOSTHにおける頂部プレートは、ターンオン回路315、303、及び305の各々に結合される。トランジスタ353及び355の対が、キャパシタ351を正の供給電圧VDDと接地端子との間で選択的に結合する。キャパシタ充電位相の間、キャパシタ351は、この例ではVDD_7V又は7ボルトである供給電圧まで充電される。その後、(a)VBOOSTLと示されるキャパシタ351の底部プレートは、CB_HIGHと示されるブートストラップキャパシタ321の頂部プレートにトランジスタ309により結合され得、及び(b)VBOOSTHと示されるキャパシタ351の頂部プレートは、その後、CB_HIGHより大きい電圧まで上げられる。ターンオン位相の間、CB_HIGHは供給電圧より大きく、そのため、電圧VBOOSTHは、更に大きな電圧まで上昇され、選択されたハイサイドドライバ回路313、333をオンにする。ハイサイドドライバ回路313、333においてバック・トゥ・バックで直列結合されたNMOSトランジスタを用いることで、ノードHSD_GATE_1及びHSD_Gate_2で、ハイサイドスイッチのゲートをブートストラップキャパシタ321の頂部プレートに迅速に結合するために高速スイッチングが達成される。ハイサイドドライバ回路313、333のうち選択された一方が、キャパシタ351の頂部プレートが上昇し始めるとすぐオンになる。ハイサイドドライバ回路313、333は、わずかな損失で低抵抗電流経路を提供する。更に、ハイサイドドライバ回路313、333は、ハイサイドスイッチNMOSデバイスがまだアクティブである間、ブートストラップキャパシタ321をハイサイドスイッチNMOSデバイスから隔離させ得、「オン」状態の間でもブートストラップキャパシタの再充電を可能にする。これは有利にも、100%デューティサイクルオペレーションの間など、ハイサイドスイッチが継続的にオンである場合でも、ブートストラップキャパシタの利用を可能とする。
【0038】
図3において、ブートストラップキャパシタ充電回路319が、キャパシタ充電位相の間、正の供給電圧と接地電位との間でブートストラップキャパシタ321を結合する。図3において、この内部的にレギュレートされた電圧はVDD_7Vと示され、約7ボルトである。しかし、他の内部及び外部供給電圧が代わりに用いられてもよい。代替として、入力電圧端子VINにおける正の入力電圧が用いられ得る。続いて、(a)CB_LOWと示されるブートストラップキャパシタ321の底部プレートが、入力電圧VINに結合され、及び(b)CB_HIGHと示されるブートストラップキャパシタの頂部プレートが、ハイサイドドライバ回路313、333のそれぞれ一方により、ハイサイドMOSスイッチゲート端子HSD_GATE_1又はHSD_Gate_2の一方に結合される。
【0039】
図4は、図3のハイサイドドライバ回路30の選択されたノードのためのタイミング図である。図4において、頂部のトレースは、図3においてHSD_GATE_1と示されるノードにおける電圧に対応し、これは、ハイサイドMOSスイッチ(図3には示していない)のゲート端子に結合される。頂部から2番目のトレースは、図3における信号HSD_TURNONに対応し、これは、HSDターンオン回路315により出力される。頂部から3番目のトレースは、図3においてVBOOSTHと示されるキャパシタ351の頂部プレートに対応する。頂部から4番目のトレースは、図3におけるブートストラップキャパシタ321の頂部プレート、ノードCB_HIGHに対応する。図4の頂部から5番目のトレースは、図3においてTURNON_Mと示されるノードに対応し、これは、ハイサイドドライバ回路313を制御する。図4の頂部から6番目のトレースは、図3におけるノードCB_LOWに対応し、これは、ブートストラップキャパシタ321の底部プレートである。図4における底部のトレースは、図3におけるノードVBOOST_Lに対応し、これは、キャパシタ351の底部プレートである。
【0040】
図4において、タイミング図は、2サイクルにわたって動作する図3のハイサイドドライバ回路30を図示する。時間(マイクロ秒単位)が横軸に示され、図4の底部において示されている。キャパシタ充電位相が時間4.9に示されている。ブートストラップキャパシタの底部プレートCB_LOWは、約ゼロボルト(接地)である。ブートストラップキャパシタの頂部プレートCB_HIGHは、同じ時間期間の間、内部VDD供給電圧又は約7ボルトである。同様に、キャパシタ351の底部プレートVBOOSTLは、時間4.9において約ゼロボルトである。キャパシタ351の頂部プレートVBOOSTHは、同じ時間に約7ボルトである。このように、キャパシタ充電位相の間、2つのキャパシタが内部供給電圧レベルまで充電される。
【0041】
水平スケール上の時間5.02において、ハイサイドドライバターンオン位相が開始する。制御信号HSD_TURNONは、図3におけるHSDターンオン回路315により出力される。ブートストラップキャパシタ充電回路319は、その後、入力電圧VINをブートストラップキャパシタ321の底部プレートノードCB_LOWに結合し、これはその電圧まで上昇する。この例では、CB_LOWは、時間5.02において約17ボルトまで上昇する。図4におけるノードCB_HIGHは、ブートストラップキャパシタ321の頂部プレートにおける電圧を図示し、それは、時間5.02において約22ボルトのブートストラップされた電圧まで上昇する。
【0042】
第2の共用キャパシタ351もまた、ブーストされた電圧を提供する。タイミング図に示すように、キャパシタ351の底部プレートである、図3におけるノードVBOOSTLは、時間5.02においてノードCB_HIGHと同じ電圧まで上昇する。図3において、トランジスタ309が、図3に示すような制御信号HSD_TURNON上の高電圧に応答して、キャパシタ351の底部プレートをノードCB_HIGHに結合する。図4における時間5.02において、ノードVBOOSTHは、約22ボルトのブーストされたレベルまで上昇する。図4において、ノードTURNON_Mは、信号VBOOSTHが上昇することに応答して、時間5.02において上昇する。このブーストされた電圧は、ハイサイドドライバ回路313内の直列結合されたNMOSトランジスタの共用ゲート端子に結合され、それらをオンにする。図4において、出力信号HSD_GATE_1は、ハイサイドドライバ回路313のゲート端子において制御信号TURNON_Mが上昇することに応答して、時間5.02における高電圧まで上昇する。
【0043】
図4の時間5.08において、制御信号HSD_TURNONが低下する。ブートストラップキャパシタ及びキャパシタ351は、その後、いずれも再び充電位相に入る。時間5.08において制御信号TURNON_Mも低下する。しかし、ゲート信号HSD_GATE_1は、時間5.1まで高のままである。ハイサイドMOSスイッチのゲート静電容量は、ハイサイドドライバ313がオフにされた後、ゲートを充電されたままに保つために充分に大きい。このようにして、これらの例は、有利にも、ハイサイドMOSスイッチはまだオンにされたままである一方で、ブートストラップキャパシタ321の充電位相を開始することを可能にする。
【0044】
図4において、時間5.16で第2の位相オペレーションが図示されている。しかし、このオペレーションにおいて、制御信号TURNON_Mは応答して上昇しない。これは、この第2の位相オペレーションは、図4におけるタイミング図において示されていない図3におけるゲート信号HSD_GATE_2のためだからである。このようにして、共用ブートストラップキャパシタ321及びキャパシタ351は、n個のスイッチング段の各々に対して用いられ、これらのキャパシタの各々が、これらの段間で共有される。時間5.38において、パターンが反復する。2つのサイクル全体が図4のタイミング図に示されている。
【0045】
図5は、図3における回路319に類似する、ブートストラップキャパシタ充電回路40のための例示の実装を示す。これらの例を用いた用途のために他の回路実装が配され得る。
【0046】
図5において、回路40は、入力信号HSD_CHARGE及びHSD_TURNONを有する。例えば、HSD_CHARGE信号が低であるとき、インバータ413のオペレーションに起因してトランジスタ411のゲートは高電圧である。そのため、ブートストラップキャパシタ421の底部プレートは、トランジスタ411により接地に結合される。同様に、トランジスタのゲートにおけるノードCB_CHARGEは高レベルであり、従って、トランジスタ425は、供給電圧VDD_7Vをブートストラップキャパシタ421の頂部プレートCB_HIGHに結合する。このようにして、ブートストラップキャパシタが充電される。信号CB_CHARGEはまた、図3に示すように、ここでは高である。この信号は、図3における351など、第2のブートストラップキャパシタの充電を可能とするために有用である。
【0047】
図5において、HSD_TURNON信号は、NMOSトランジスタ427の別のバック・トゥ・バックで直列結合された対に結合される。制御入力信号HSD_TURNONが高電圧にあるとき、トランジスタ429のゲートにおける電圧は、回路427によりCB_HIGHにおける電圧に結合され、オンにすることを開始し得る。その後、ブートストラップキャパシタ421の底部プレートに電圧VINが結合され、頂部プレートCB_HIGHは、上述のように、電圧VIN及び供給電圧VDD_7Vの和である一層高い電圧まで「ブートストラップされ」得る。
【0048】
図5における制御信号HSD_CHARGEが上昇するとき、ハイサイドドライバターンオン位相が開始していることを示し、トランジスタ425及び411は、ゲート入力において低信号を有し得、これらのトランジスタは、オフとなり得、ブートストラップキャパシタ421を電圧VDD_7V及び接地端子から隔離し得る。信号HSD_TURNONが高に向かうとき、ブートストラップキャパシタ421の底部プレートは電圧VINまで上昇し得、キャパシタ421の頂部プレートは、上述のようにブートストラップされた電圧まで上昇し得る。ブートストラップキャパシタを供給電圧にまず結合すること、ブートストラップキャパシタを充電すること、その後、供給電圧からブートストラップキャパシタを結合解除すること、及びその後、底部プレートを入力電圧VINに結合することにより、回路40は、ブートストラップされた電圧をノードCB_HIGHにおいて効率的に提供する。
【0049】
図6は、上述のような集積された共用ブートストラップキャパシタを組み込む例における、2相ステップダウンバックコンバータ60を形成するための集積回路611のブロック図である。2つの位相は、2つのスイッチングノードSW1及びSW2により示され、これらは、ノードVoにおいて出力を駆動するインダクタ613及び615に結合される。この例では、集積回路611は、図6に示すように4ボルトから17ボルトまで変動し得る入力電圧の範囲から6アンペアの電流で、3.3ボルトの出力電圧を提供するように構成される。
【0050】
図7は、上述の共用ブートストラップキャパシタのために外部構成要素キャパシタを用いる例において、2相ステップダウンバックコンバータ70を形成するための集積回路711のブロック図である。図7において、2つの位相は、集積回路711の2つのスイッチングノード出力SW1及びSW2により示される。インダクタ713及び715が、出力ノードVoへの供給電流に並列に結合される。出力は、図6にあるように3.3Vであるように構成される。この例示の構成では、入力電圧範囲は4〜17ボルトである。図7において、キャパシタ717はブートストラップキャパシタである。この例では、集積回路711は、図6の集積されたブートストラップキャパシタの代わりに、外部ブートストラップキャパシタを用いるように構成される。端子CB_HIGH及びCB_LOWは、図2図3、及び図5に示す回路におけるこれらのノードに対応する。回路要素のオペレーションは、外部構成要素をブートストラップキャパシタとして用いることによって、その他の影響を受けない。図7の例において、バックコンバータ回路70は、スイッチングノードSW1、SW2に対応する2つのスイッチング段にわたってブートストラップキャパシタ717を共用する。他の例において、一層多くのスイッチング段が用いられ、ブートストラップキャパシタは、複数の段にわたって共用される。従って、図7において、インデックス「n」は2に等しい。しかし、nは、2より大きいか又は2に等しい正の整数であり得、3、4又はそれ以上の段を含む。
【0051】
図8は、工程81で開始する方法のフローチャートであり、インデックスnは1に等しく設定される。工程83において、ブートストラップキャパシタ充電位相が実施され、ブートストラップキャパシタが、供給電圧まで充電される。工程85において、ハイサイドドライバターンオン位相が開始する。充電されたブートストラップキャパシタは、ブートストラップされた電圧をつくるため正の入力電圧に結合される底部プレートを有する。工程87で、充電されたブートストラップキャパシタの頂部プレートが、「n番目の」スイッチング段のため、選択されたハイサイドMOSスイッチのゲート端子に結合される。工程91で、全ての段が実施されたかについて判定が成される。実施されるべき付加的なスイッチング段が残っている場合、この方法は工程93に続き、ブートストラップキャパシタは、ハイサイドスイッチから結合解除される。工程95において、この方法を次の段に進めるためインデックスnが増分される。図8の方法は、その後「n」個の段の各々に対して、ブートストラップキャパシタ充電位相及びハイサイドドライバターンオン位相を反復する。例えば、2段の場合、nは1で始まり、この方法は、第1の段に対して実施され、インデックス「n」が2に増分され、この方法は第2段に対して実施され、その後、この方法は終了する。
【0052】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に変形が成され得、他の実施例が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8