特許第6685328号(P6685328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許6685328光触媒コーティングされた顆粒およびそれを作る方法
<>
  • 特許6685328-光触媒コーティングされた顆粒およびそれを作る方法 図000002
  • 特許6685328-光触媒コーティングされた顆粒およびそれを作る方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685328
(24)【登録日】2020年4月2日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】光触媒コーティングされた顆粒およびそれを作る方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20200413BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20200413BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20200413BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   B01J23/30 M
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-559634(P2017-559634)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公表番号】特表2018-514379(P2018-514379A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2016002369
(87)【国際公開番号】WO2016181661
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】62/161,488
(32)【優先日】2015年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング,ブレット ティー.
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−513306(JP,A)
【文献】 特開2008−006419(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0228203(US,A1)
【文献】 特開2009−291717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物または半金属酸化物を流体担体と混合することによって、金属水酸化物または半金属水酸化物、および前記流体担体を含有する混合物を作り出すことと、
光触媒化合物を前記金属水酸化物または半金属水酸化物、および前記流体担体を含有する混合物に加えることと、
250℃よりも高い温度において、前記金属水酸化物または半金属水酸化物、前記流体担体、および前記光触媒化合物を含有する混合物を加熱することによって、前記金属水酸化物または半金属水酸化物を金属酸化物または半金属酸化物に変換することと、
を含む、光触媒複合材料を作るための方法。
【請求項2】
前記光触媒化合物を前記金属水酸化物または半金属水酸化物と相互作用させるために十分な時間、前記金属水酸化物または半金属水酸化物、前記流体担体、および前記光触媒化合物を含有する前記混合物を撹拌することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体担体の揮発性成分を取り除くために十分な時間、前記金属水酸化物または半金属水酸化物、前記流体担体、および前記光触媒化合物を含有する前記混合物を加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属酸化物または半金属酸化物がAlおよびSiOから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属酸化物または半金属酸化物が軽石である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光触媒化合物がWOおよび/またはTiOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光触媒化合物がWOである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光触媒化合物がWOおよびセリアを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記流体担体が水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記光触媒複合材料を洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法
【請求項11】
5〜50at%のAlおよび95〜50at%のSiOを含む軽石と、
WOおよびCeOを含む光触媒化合物と、
を含み、
Al、SiO、WO、およびCeOの少なくとも2つが互いに化学結合された、光触媒複合材料。
【請求項12】
前記化学結合が−O−結合を含む、請求項11に記載の光触媒複合材料。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の光触媒複合材料を含む光触媒素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本態様は、無機粒子を無機基材に付着させる方法に関する。いくつかの態様は、金属/半金属酸化物を光触媒材料と共有結合するための方法を提供する。光触媒が結合された無機材料は、穏やかな条件下において有機化合物を分解し得る製品に有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
近年、光触媒コーティングされた表面の使用はそれらのユニークな特性ゆえに注目されて来た。それらの光触媒材料は、熱可塑性プラスチック、セラミック、および繊維を包含する種々の基材または表面上に結合、配置、または担持されて来た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
残念ながら、基材への光触媒材料の付着には問題がある。それゆえに、基材表面への光触媒材料の付着が改善される方法が必要とされている。
【0004】
当分野における1つの課題は、コーティングされたまたは埋め込まれた粒子は、それらが配置された表面に良好に結合されないということであり、物が用いられるにつれて光触媒素子が脱落する。結果として、公知の方法によって作り出された光触媒素子を有する物は、光触媒素子の量が減るにつれて光触媒有効性を失う傾向がある。
【0005】
それゆえに、光触媒素子の量および有効性が物の通常の使用にもかかわらず十分な期間維持され得るように、光触媒素子が基材表面に十分に結合された、光触媒素子を有する種々の物を製造するための方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載される態様のいくつかは、粒子を無機基材に付着させるための方法を提供する。具体的には、該方法は、光触媒材料または粒子を無機基材に付着させるために有用である。そのため、本明細書に記載される方法は、広範囲の光触媒が付着した無機材料を製造するために用いられ得る。
【0007】
いくつかの態様においては、光触媒複合材料を作るための方法が記載され、該方法は、金属酸化物または半金属酸化物を流体担体と混合することによって金属水酸化物または半金属水酸化物、および流体担体を含有する混合物を作り出すことと、光触媒化合物を金属水酸化物または半金属水酸化物、および流体担体を含有する混合物に加えることと、250℃よりも高い温度において金属水酸化物または半金属水酸化物、流体担体、および光触媒化合物を含有する混合物を加熱することによって、金属水酸化物または半金属水酸化物を金属酸化物または半金属酸化物に変換することとを含む。いくつかの態様において、方法は、光触媒化合物を金属水酸化物または半金属水酸化物と相互作用させるおよび/または光触媒化合物を水和するために十分な時間、金属水酸化物または半金属水酸化物、流体担体、および光触媒化合物を含有する混合物を撹拌することをさらに含む。いくつかの態様において、方法は、流体担体の揮発性成分を取り除くために十分な時間、金属水酸化物または半金属水酸化物、流体担体、例えば水、および光触媒化合物を含有する混合物を加熱することをさらに含み得る。いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物はAlおよびSiOから選択され得る。いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物は軽石であり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOおよび/またはTiOであり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOであり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOおよびセリア(CeO)であり得る。いくつかの態様において、方法は、光触媒複合材料を洗浄することをさらに含む。
【0008】
いくつかの態様においては光触媒複合材料が記載され、複合材料は上に記載されている方法に従って作られる。いくつかの態様においては光触媒素子が記載され、素子は前に記載されている複合材料のいずれかを含む。
【0009】
いくつかの態様においては、光触媒複合材料が記載され、複合材料は、5〜50at%のAlおよび95〜50at%のSiOを含む軽石とWOおよびCeOを含む光触媒化合物とを含み、Al、SiO、WO、およびCeOの少なくとも2つが互いに化学結合される。いくつかの態様において、化学結合は−O−結合を含み得る。
【0010】
これらおよび他の態様が以下においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例において光触媒フィルター素子によるエチレン分解のレートを評価するために用いられた試験チャンバーの模式図である。
図2】例1のエチレン分解試験の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
いくつかの態様においては、光触媒複合材料を作るための方法が記載され、該方法は、金属酸化物または半金属酸化物を流体担体と混合することによって金属水酸化物または半金属水酸化物、および流体担体を含有する混合物を作り出すことと、光触媒化合物を金属水酸化物または半金属水酸化物、および流体担体を含有する混合物に加えることと、250℃よりも高い温度において金属水酸化物または半金属水酸化物、流体担体、および光触媒化合物を含有する混合物を加熱することによって、金属水酸化物または半金属水酸化物を金属酸化物または半金属酸化物に変換することとを含む。いくつかの態様において、方法は、光触媒化合物を金属水酸化物または半金属水酸化物と相互作用させるために十分な時間、金属水酸化物または半金属水酸化物、流体担体、および光触媒化合物を含有する混合物を撹拌することをさらに含む。いくつかの態様において、方法は、流体担体の揮発性成分を取り除くために十分な時間、金属水酸化物または半金属水酸化物、流体担体、および光触媒化合物を含有する混合物を加熱することをさらに含み得る。いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物はZrO、CeO、CeZrO、Al、およびSiOから選択され得る。いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物は軽石であり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOおよび/またはTiOであり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOであり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOおよびセリアであり得る。いくつかの態様において、方法は、光触媒複合材料を洗浄することをさらに含む。
【0013】
いくつかの態様においては光触媒複合材料が記載され、複合材料は上に記載されている方法に従って作られる。いくつかの態様においては光触媒素子が記載され、素子は前に記載されている複合材料のいずれかを含む。
【0014】
いくつかの態様においては光触媒複合材料が記載され、複合材料は、5〜50at%のAlおよび95〜50at%のSiOを含む軽石とWOおよびCeOを含む光触媒化合物とを含み、Al、SiO、WO、およびCeOの少なくとも2つが互いに化学結合される。いくつかの態様において、化学結合は−O−結合を含み得る。
【0015】
酸化物という用語は、酸素原子と別の原子、例えば金属(アルミニウム、チタン)、または半金属(ホウ素、ケイ素)とを包含する化合物を言う。
【0016】
水酸化物という用語は、ヒドロキシル(−OH)基を包含する化合物を言う。
【0017】
いくつかの態様においては、光触媒複合材料を作るための方法が記載され、該方法は、金属酸化物または半金属酸化物を流体担体、例えば水またはバインダーゾルと混合することによって金属水酸化物または半金属水酸化物、および流体担体を含有する混合物を作り出すこと、光触媒化合物を金属水酸化物または半金属水酸化物、および流体担体を含有する混合物に加えること、250℃よりも高い温度において酸化物/流体担体/光触媒化合物混合物を加熱することによって金属水酸化物または半金属水酸化物を金属酸化物または半金属酸化物に変換することを含む。いくつかの態様において、方法は、光触媒化合物を水和された酸化物と相互作用させるために十分な時間、水和された酸化物光触媒化合物および流体担体の混合物を撹拌することをさらに含む。いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物はAlおよびSiOから選択され得る。いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物は軽石であり得る。いくつかの態様において、光触媒材料はドープしたかまたはドープしていないWOおよび/またはTiOであり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOであり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はドープしたかまたはドープしていないCeZrOであり得る。いくつかの態様において、光触媒化合物はWOおよびセリアであり得る。いくつかの態様において、方法は、光触媒複合材料を洗浄することをさらに含む。
【0018】
いくつかの態様においては光触媒複合材料が記載され、複合材料は上に記載されている方法に従って作られる。いくつかの態様において、複合材料は無機顆粒および光触媒材料を含み、光触媒材料は無機顆粒の外表面上に配置される。いくつかの態様において、光触媒材料は無機顆粒の外表面に化学結合される。いくつかの態様において、光触媒材料は無機顆粒の外表面に共有結合される。いくつかの態様において、光触媒材料は−O−結合を介して無機顆粒の外表面に共有結合される。いくつかの態様においては光触媒素子が記載され、素子は前に記載されている複合材料のいずれかを含む。いくつかの態様において、無機材料は軽石であり得る。
【0019】
いくつかの態様においては光触媒複合材料が記載され、複合材料は軽石と光触媒化合物とを含み、軽石は5〜50at%のAlおよび95〜50at%のSiOを含み得、光触媒化合物はWOおよびCeOであり得、Al、SiO、WO、およびCeOの少なくとも2つが互いに化学結合される。いくつかの態様において、化学結合は−O−結合を含み得る。
【0020】
いくつかの態様において、方法は、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム(Al)、または半金属酸化物、例えば二酸化ケイ素(SiO)を流体担体と混合することによって金属水酸化物混合物を作り出すことを包含する。いくつかの態様において、金属酸化物はWOおよびCeOであり得、これらはアルミナおよびシリカと同じやり方で流体担体、例えば水と反応し得、表面金属酸化物は金属水酸化物に変換される。いくつかの態様において、酸化物は少なくとも1つのM=O官能基を含む。いくつかの態様において、酸化物は少なくとも1つの表面M=O官能基を含む。
【0021】
いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物は希土類元素であり得る。いくつかの態様において、金属水酸化物はセリウム、タングステン、タンタル、スズ、亜鉛、ストロンチウム、ジルコニウム、バリウム、インジウム、ニオブ、バナジウム、鉄、カドミウム、ゲルマニウム、ケイ素、および/またはアルミニウムを含み得る。金属または半金属酸化物はCuO、MoO、Mn、Y、Gd、TiO、SrTiO、KTaO、SiC、KNbO、SiO、SnO、Al、ZrO、Fe、Fe、NiO、Nb、In、Ta、SiO、WO、またはCeOをもまた含み得る。いくつかの態様において、金属酸化物材料は酸化セリウム(CeO)であり得る。いくつかの態様において、金属酸化物材料は酸化マンガンを含み得る。いくつかの態様において、組成物は非光触媒金属酸化物をさらに含み得る。いくつかの態様において、金属酸化物または半金属酸化物は軽石であり得る。いくつかの態様において、軽石は5〜50at%のAlおよび95〜50at%のSiOの間を含み得る。いくつかの態様において、軽石は、酸化第二鉄(Fe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、三酸化硫黄(SO)、酸化カリウム(KO)、酸化ナトリウム(NaO)、および/または上のいずれかの組み合わせの少なくとも1つの0〜10at%をさらに含み得る。いくつかの態様において、軽石は少なくとも50%、60%、75%、80%、および/または90%空隙率の多孔性を有し得る。いくつかの態様において、軽石は多孔性顆粒であり得る。いくつかの態様において、多孔性顆粒は一般的に球状および/または卵形の形状を有し得る。いくつかの態様において、軽石は約0.1、0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、および/または5.0mmの最大直径を有し得る。いくつかの態様において、軽石は、粉末化された軽石、例えば、VitroCo(Vitrolite(登録商標))、Elkem(Sidistar(登録商標))、Hessによって製造されたもの、およびその組み合わせであり得る。
【0022】
いくつかの態様において、少なくとも1つのM=O官能基を含む金属または半金属は、流体担体と反応して金属または半金属の水酸化物を作り出す。いくつかの態様において、方法は、水和された酸化物と光触媒化合物を相互作用させるために十分な時間、少なくとも1つのM=O官能基を含む金属酸化物または半金属酸化物を撹拌することをさらに含む。
【0023】
いくつかの態様においては、流体担体が提供されて、無機基材の表面を変改、例えば水酸化物官能基をヒドロキシル官能基に水和もしくは変換し、および/または光触媒材料を無機基材中に分散する。いくつかの態様において、流体担体はプロトン性溶媒であり得る。用語プロトン性溶媒は、少なくとも1つのヒドロキシル(−OH)官能基を含む溶媒を言う。いくつかの態様において、流体担体は水であり得る。いくつかの態様において、流体担体はバインダーゾルであり得る。いくつかの態様において、流体担体は、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)、水、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、塩酸、遷移金属塩、トリエタノールアミン、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、硝酸、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、尿素、有機ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、キトサン、フュームドシリカ、または遷移金属アルコキシド、例えばアルミニウム(III)sec−ブトキシド、チタン(IV)ブトキシド、セリウム(III)ブトキシド、ジルコニウム(IV)ブトキシド、およびまたはその混合物を包含し得る。いくつかの態様において、流体担体は、実質的に水のみ、水および塩酸(HCl)の混合物、水+TEOS+エタノール+HClの混合物、水+エタノールの混合物、ならびに/または水+エタノール+HClの混合物であり得る。
【0024】
いくつかの態様において、金属または半金属の酸化物は流体担体、例えば水と反応して、金属または半金属の水酸化物、すなわち少なくとも1つのM−O−H官能基を有する化合物を作り出す。理論によって拘束されることを欲するものではないが、水と金属または半金属の酸化物のいずれかの接触は水酸化物官能基(単数または複数)からヒドロキシル官能基(単数または複数)への少なくとも何らかの変換を提供し得ると考えられる。撹拌、酸もしくはアルカリの添加(流体担体のpHを変改すること)、および/または加熱は、表面酸化物から表面水酸化物への変換を促進し得る。金属または半金属の水酸化物の存在を決定するための好適な方法は、フーリエ変換赤外分光(FTIR)および/または拡散反射フーリエ変換赤外分光(DRIFT)を包含する。例えば、水和された金属酸化物材料はフィルター上に集められ、流通する乾燥空気中で室温において乾燥され、それからFTIRによって測定され得る。3000cm−1の波数付近のヒドロキシル領域におけるピークの存在は、ヒドロキシルの存在を示し得る。DRIFTもまた特徴的な水和ピークを検出し得る。
【0025】
いくつかの態様において、金属酸化物ナノ粒子は光触媒化合物を含む。いくつかの態様において、光触媒化合物は無機顆粒の表面上に配置される。いくつかの態様において、光触媒材料は無機顆粒に化学結合される。いくつかの態様において、光触媒材料は−O−化学結合またはリンクを介して共有結合される。
【0026】
いくつかの態様において、方法は、酸化物化合物を十分に濡らすかまたは水和するために十分な時間、酸化物化合物と流体担体、例えば水とを撹拌することを含み得る。いくつかの態様において、方法は、金属酸化物の少なくとも1つのM=O官能基をM−OH官能基に変換するために十分な時間、酸化物化合物と流体担体、例えば水とを撹拌することをさらに含み得る。いくつかの態様において、十分な時間は約5分から約2時間であり得る。
【0027】
光触媒は、光によって触媒される反応をもたらすことを助け、不快生物を分解する、殺す、脱臭する、およびその増殖を抑制するために機能する物質として当業者に周知である。それらは、光によって触媒される反応をもたらし、揮発性有機および無機化合物を部分的にまたは完全に酸化するために機能することもまた公知である。いくつかの態様において、光触媒化合物は、ドープしたかもしくはドープしていないTiO、ドープしたかもしくはドープしていないWO、ドープしたかもしくはドープしていないSnO、ドープしたかもしくはドープしていないCeO、またはそのいずれかの組み合わせであり得る。いくつかの態様において、ドープしたTiO化合物はTiSn(CNO)であり得、これはその全体が参照によって組み込まれる2013年1月14日出願の米国特許出願13/741,191(2013年8月1日公開の米国特許出願公開第2013/0192976号明細書)に記載されている。いくつかの態様において、光触媒化合物はCuOを担持した光触媒複合材料であり得、これはそれらの全体が参照によって組み込まれる2013年3月15日出願の米国特許出願13/840,859および/または2013年6月14日出願の米国仮出願61/835,399に記載されている。光触媒粒子は多くの場合に粉末形態である。いくつかの態様において、光触媒粒子は粉末形態である。いくつかの態様において、光触媒材料はWおよび/またはTiを含む。いくつかの態様において、光触媒材料はWOであり得る。いくつかの態様において、光触媒材料はTiOであり得る。
【0028】
いくつかの態様において、光触媒材料は、0.1および1.0ミクロンの間の狭く分布した粒径範囲の粒子からなり得る。いくつかの態様において、狭く分布した粒径は10ミクロン未満であり得る。いくつかの態様において、狭く分布した粒径は1.0ミクロン未満であり得る。いくつかの態様において、狭く分布した粒径は0.5ミクロン未満であり得る。いくつかの態様において、光触媒材料は、これと同時に出願された同時係属の特許出願(2015年5月14日出願の「Methods for processing powder of photocatalyst」と題する米国仮出願、出願No.62/161,516)に従って調製されたものであり得る。
【0029】
いくつかの態様において、方法は、光触媒材料を酸化物化合物上に十分に分散するために十分な時間、酸化物化合物と光触媒材料と流体担体、例えば水とを撹拌することを含み得る。いくつかの態様において、十分な時間は約5分から約2時間であり得る。
【0030】
いくつかの態様において、方法は、金属および/または半金属の水酸化物を金属酸化物および/または半金属酸化物に変換することを含み得る。いくつかの態様において、金属水酸化物から金属酸化物への変換は、金属水酸化物と流体担体(例えば水)と光触媒化合物との混合物を250℃よりも高い温度で加熱することによってであり得る。いくつかの態様において、金属水酸化物/流体担体(例えば水)/光触媒化合物混合物の加熱は、約200℃、250℃、および/もしくは約300℃から約450℃、500℃、および/もしくは約550℃の間の温度、ならびに/または前述の値のいずれかの組み合わせ、例えば約400℃においてであり得る。理論によって限定されることを欲するものではないが、例えば400℃以上などの高温において加熱すると、隣り合う金属水酸化物は縮合反応を受け、これは一般式M1−OH+M2−OH−>M1−O−M2+HOに従って金属酸化物表面を互いに共有結合し、化学的な水を遊離させると考えられ、M1は第1の金属または半金属原子であり、M2は第2の金属または半金属原子である。それゆえに、隣り合う金属水酸化物表面は高温において互いに化学的に融合され、優れた接着を提供し得る。いくつかの態様において、方法は、金属水酸化物を金属酸化物に少なくとも1回変換することを含み得る。いくつかの態様において、方法は、コーティングされた粒子を洗浄して未融合の材料を取り除いた後に、金属水酸化物を金属酸化物に再び変換することをさらに含み得る。
【0031】
ひとたび水酸化物から酸化物への変換が起こったら、コーティングされた粒子は、流体担体および/または流体担体の揮発性成分の実質的に全てを蒸発させるためにベーキングされ、互いにしっかりと付着した粒子を残し得る。当分野において公知の標準的な方法が、流体担体および/または流体担体の揮発性成分を蒸発させるために用いられ得る。いくつかの態様において、組成物の加熱は、基材および/または顆粒の突沸または割れを起こすことなしに、流体担体および/または流体担体の揮発性成分の全てを実質的に取り除くために十分な温度および/または時間においてであり得る。ベーキング温度および時間は流体担体および粒子に基づいて適宜選ばれ得る。いくつかの態様において、流体担体は室温において一定の期間の後に蒸発し得、そのため、ベーキング温度は室温に等しくあり得る。いくつかの態様において、例えば流体担体が水である場合に、ベーキング温度は少なくとも100℃であり得る。いくつかの態様において、方法は、酸化物/光触媒材料/流体担体混合物から流体担体を取り除くことを含み得る。いくつかの態様において、流体担体混合物は250℃未満の温度において加熱され得る。いくつかの態様において、流体担体混合物は約90℃から150℃の間の温度で加熱され得る。
【0032】
いくつかの態様において、方法は、融合した金属酸化物/光触媒複合材料を洗浄することをさらに含む。いくつかの態様において、融合した金属酸化物/光触媒複合材料を洗浄することは、融合した金属酸化物/光触媒複合材料を水の十分量によってフラッシングして、いずれかの未融合の金属酸化物および/または光触媒材料を取り除くことを含む。いくつかの態様において、水の量は、本明細書に記載される複合材料態様の10gあたり水の少なくとも25ml、50ml、75ml、100ml、200ml、300ml、および/または最大1000mlであり得る。
【0033】
いくつかの態様において、方法は、第1の光触媒軽石顆粒を第2の光触媒軽石顆粒と混合することをさらに含む。いくつかの態様において、第1の光触媒軽石顆粒はWOであり得、第2は第2の光触媒材料であり得る。いくつかの態様において、第2の光触媒材料は酸化チタンを含み得る。いくつかの態様において、酸化タングステン対酸化チタン顆粒の比は1:1から約10:1であり得る。
【0034】
無機基材、例えば顆粒に付着した光触媒材料の接着の強さは当分野において公知の方法によって測定され得る。いくつかの態様において、顆粒上のコーティングの接着の強さは、コーティングされた顆粒を水中に浸け、浸けた顆粒を粗いメッシュによって濾別し、乾燥し、それから洗浄の前後の顆粒の質量差を測定することによって、または濾液を徹底的に乾燥し、どのくらい多くの材料がフィルターメッシュを通過したかを測定することによって試験され得る。
【実施例】
【0035】
本発明を限定することを意図されないある種の態様に関して、態様を説明する。さらに、本開示において、条件および/または構造が規定されていないところでは、当業者は、日常的な実験作業の事として、本明細書の教示に照らしてかかる条件および/または構造を難なく提供し得る。
【0036】
(酸化物/光触媒粒子の合成)
例1
スラリー調製
WO粉末(Nanostructured&Amorphousマテリアルズ社,ヒューストン,TX)の70g、ジルコニウム粉砕ボール(Zr)の150g、およびエタノールの130mlを250mlイットリウム安定化ジルコニウムボール粉砕ジャーに追加した。それから、WOスラリーを遊星ボール粉砕機を用いて15Hzのレートで18時間粉砕した。
【0037】
粉砕の後に、WOスラリーを石英ビーカーに移し、エタノールが完全に蒸発するまで(約6時間)110℃で乾燥した。それから、もたらされた乾燥されたWO粉末をagar乳棒および乳鉢によって約5分間挽いた。それから、アニーリング処理に先立ってWO粉末を30メッシュ篩に通した。アニーリング処理のためには、篩われ乾燥されたWO粉末を100ml石英坩堝中に追加し、大気中において約400℃まで約5時間加熱した。
【0038】
遠心
例1に記載されているように調製したスラリーの200mlを遠心のために調製した。遠心分離のためには、WO粉末の20gおよび脱イオン水の180mlを高密度ポリプロピレンジャーに追加して、10wt%のWO含量を作り出した。WOスラリーを遊星ミキサー(THINKYミキサーASRE−310,THINKY,ラグーナヒルズ,CA)によって2000rpmで2分間処理した。それから、粒子集団の一部を含有する上清を取り除き、取り置いた。より大きいサイズのWO粒子の沈殿物は別に集めた。
【0039】
第2の遠心分離を、市販の遠心機(IEC−Centra−CL2,サーモエレクトロンコーポレーション,ウォルサム,MA)を用いて行った。第1の遠心分離から得られた上清、最初の200mlの実質的に全てをポリプロピレン遠心管(45ml,VWR−SuperClear(商標))に追加し、約1500rpmで約5分間操作した。もたらされた上清をガラスビーカー中に集め、約110℃において大気中で約10時間乾燥した。もたらされたWO粒径はVOC分解性能評価のキャラクタリゼーションに好適に見えた。WO粒径は直径約1.4から約3.1mmの間であった。
【0040】
例2
ラボスケールコーティングプロセス
粒状軽石(グレード8[メッシュ6−14],Kramerインダストリーズ)の16.0gを蓋付きの60mlガラスジャー中に置いた。軽石グレード8の16gは約46mlであった。純水(ミリQ)の6.0gをジャーに追加した。軽石の16gおよび水の6gを含有するジャーにキャップをし、ラボボルテックスを用いて振盪した。振盪の継続時間は約3〜5分であり、視覚的に観察して、軽石の全てがきれいに濡らされたことを確認した。上の例1に記載されているように調製された触媒粉末の5.7gをジャーに追加した。触媒粉末はWO:CeOの1:1モル比であった。例えば、粉末の5.7gは、上に記載されているように調製されたWOの3.27gとCeO(シグマ・アルドリッチ)の2.43gとの混合物である。軽石、水、WO、およびCeOを含有するジャーにキャップをし、ラボボルテックスを用いて振盪した。振盪の継続時間は約3〜5分であり、視覚的に観察して、コーティングが顆粒の全ての上に均一であるということを確認した。開いたジャーをアルミニウム箔によってカバーし、予熱した110℃のオーブン中に約15時間置いて、余分な水を取り除いた。加熱の後に、アルミニウム箔を取り除き、キャップをしていないジャーを箱型炉内に起き、温度を400℃に2時間セットし、加熱ランプ・レートはおよそ20℃/分であって、金属水酸化物から金属酸化物への変換により水を凝縮し、取り除いた。400℃における約2時間の後に、炉を消し、室温まで冷えさせた。形成された顆粒を脱イオン水(100ml)を含有するビーカー内に入れることによって、PCATコーティングされた顆粒を洗浄した。約10秒間の穏やかな旋回の後に、顆粒をプラスチックに結合したファイバーフィルターシート上に集めて、基材に融合しなかった微粒子を分別した。加えて、フィルター上にある間に顆粒をDI水の約100mlによってリンスして、基材に融合しなかった粒子を取り除いた。それから、PCAT顆粒をキャップをしていないクリーンなジャー内に置き、110℃のオーブン内に少なくとも6時間保存し、水を取り除いた。乾燥したPCAT顆粒を含有するジャーを箱型炉内に置き、温度を400℃に1時間セットして、残留水をさらに脱着させた。加熱ランプ・レートは約20℃/分であった。400℃における1時間の後に、オーブンを消し、室温まで達するようにした。
【0041】
例3から4F2
例3(A−4)においては、コーティングプロセスを例2に関して記載されている様式で行ったが、ただし、1、2、3、および5wt%フュームドシリカ(Evonik,aerosol−200)を水中で混合し、約30分間ソニケーションし、それから水和/ソニケーションされた軽石混合物に加えた。
【0042】
例4Aにおいては、14.3モル%TEOS、42.9モル%エタノール、および57.1モル%pH2.0の酸性化した水の混合物を約1時間撹拌し、それから水和/ソニケーションされた軽石混合物に加えた。
【0043】
例4B〜4Fにおいては、コーティングプロセスを上に記載されている様式で行ったが、ただし、TEOSの量を(水の適切な量を加えることによって)改変して、ベーキング後の組成物中の光触媒と相対的に1wt%(例4B)、3wt%(例4C)、5wt%(例4D)、7wt%(例4E)、および14wt%(例4F)のTEOS由来シリカ含量を提供した。
【0044】
例4B2〜4F2においては、コーティングプロセスを上に記載されている様式で行ったが、ただし、フュームドシリカのある量を上のTEOS改変した例に加えて、ベーキング後の組成物中の光触媒と相対的に1wt%(例4B−2)、3wt%(例4C−2)、5wt%(例4D−2)、7wt%(例4E−2)、および14wt%(例4F−2)のTEOS由来シリカ含量の1wt%フュームドシリカ態様を提供した。
【0045】
例5
エチレンの除去
頂点および底に約4.9cmの開口部を有するポリプロピレンの5cm幅、5cm長さ、および5mm奥行きのフレームを構築した。1mm目開きのメッシュのシートを底の開口に被せてフレームの底に取り付け、上に記載されているように調製された光触媒顆粒のある量をメッシュ上かつフレーム内に配置した。顆粒の十分量を、フレームを満たすようにフレームの頂点と同じ高さに配置した(顆粒の約12ccまたは約4グラム)。1mm目開きのメッシュの第2のシートをフレームの頂点に取り付け、光触媒顆粒をフレーム内にトラップした。光触媒顆粒を満たしたフレームを工業規格評価JIS−R1701/ISO22197−1のようにフラット反応チャンバー内に置いた。図1参照。試験チャンバーの入口は10%エチレン含有大気の分あたり1リットルの連続流を供給した。出口におけるガスのエチレンの濃度を測定した。入口および出口の間のエチレン濃度の差は光触媒活性を示す。コーティングされたWO顆粒はエチレンを時間あたり約2.5〜3.0ppmで除去した。図2参照。
【0046】
別様に示されていない限り、本明細書および請求項において用いられる成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合に用語「約」によって修飾されるものと理解されるべきである。従って、それと反対に示されない限り、本明細書および添付の請求項において示される数的パラメータは、得られることを求められる所望の特性に応じて変動し得る概算である。少なくとも、かつ請求項の範囲への均等論の適用を限定しようとするものとしてではなく、それぞれの数的パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数に照らし、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0047】
本明細書を記載する文脈において(特に、次の請求項の文脈において)用いられる用語「a」、「an」、「the」、および類似の指示物は、本明細書において別様に示されていないかまたは文脈と明白に矛盾しない限り、単数形および複数形両方をカバーすると解釈されるべきである。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別様に示されていないかまたはさもなければ文脈と明白に矛盾しない限り、いずれかの好適な順序で行われ得る。本明細書において提供されるいずれかおよび全ての例または例示的な文言(例えば「などの」)の使用は、単に本発明をより良く例解することを意図されており、いずれかの請求項の範囲に限定を課さない。本明細書におけるいかなる文言も、いずれかの請求されていない要素が本発明の実施に必須であるということを示すものと解釈されるべきではない。
【0048】
本明細書において開示される代替的な要素または態様の群は限定として解釈されるべきではない。それぞれの群構成要素は、個々に、または群の他の構成要素もしくは本明細書に見いだされる他の要素とのいずれかの組み合わせで参照および請求され得る。便宜性および/または特許性の理由で、ある群の1つ以上の構成要素がある群において包含または削除され得るということが予想される。いずれかのかかる包含または削除が生ずるときには、本明細書は改変された群を含有すると見なされ、それゆえに、添付の請求項に用いられる全てのマーカッシュ群の記述要件を満たす。
【0049】
本発明を実施するための本発明者に既知のベストモードを包含するある種の態様が本明細書に記載されている。当然のことながら、それらの記載されている態様の変形は先行する記載を読み取ることによって当業者には明らかとなろう。本発明者は、当業者がかかる変形を適宜使用することを予期し、本発明者は、本発明が具体的に本明細書に記載されるものとは別様に実施されることを意図する。従って、請求項は、適用法令によって許される請求項に記載される主題の全ての改変および均等物を包含する。その上、上に記載されている要素のいずれかの組み合わせは、本明細書において別様に示されていないかまたはさもなければ文脈と明白に矛盾しない限り、その全てのあり得る変形において企図される。
【0050】
結びに、本明細書において開示される態様は請求項の原理を例示しているということが理解されるべきである。使用され得る他の改変は請求項の範囲内である。それゆえに、限定ではなく例として、代替的な態様が本明細書の教示に従って利用され得る。従って、請求項は、まさに示され記載されている通りの態様には限定されない。
【0051】
本願は2015年5月14日出願の米国仮出願No.62/161,488に基づき、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2