(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685423
(24)【登録日】2020年4月2日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ポリシリコン顆粒製造用のピンチフィッティングを有する流動床反応器、ならびにその方法および使用
(51)【国際特許分類】
F16L 11/12 20060101AFI20200413BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20200413BHJP
F16K 7/02 20060101ALI20200413BHJP
F16L 11/08 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
F16L11/12 Z
C01B33/02 E
F16K7/02 A
F16L11/08 Z
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-549532(P2018-549532)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公表番号】特表2019-521286(P2019-521286A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2017054754
(87)【国際公開番号】WO2017162414
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】102016204651.9
(32)【優先日】2016年3月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト、フォルストポイントナー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト、バウマン
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−234113(JP,A)
【文献】
特開2009−085298(JP,A)
【文献】
特開2005−188577(JP,A)
【文献】
特開2007−051061(JP,A)
【文献】
特開2013−224254(JP,A)
【文献】
特開平08−075061(JP,A)
【文献】
特表2016−538213(JP,A)
【文献】
特開2002−161988(JP,A)
【文献】
米国特許第05992818(US,A)
【文献】
特開2001−153238(JP,A)
【文献】
特表2016−522788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/12
C01B 33/02
F16K 7/02
F16L 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定範囲が30μm〜30mm、分析のタイプが粉末および顆粒の乾式測定である、ISO13322−2に従った動的画像分析により測定して、150μm〜10000μmの粒径を有する粒状ポリシリコンの流れを制御および/または停止するピンチフィッティングスリーブを含んでなる少なくとも1つのピンチフィッティングの使用であって、
前記ピンチフィッティングスリーブが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素化エラストマー、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーとの組み合わせからなる群から選択されるエラストマーを含んでなることを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記フッ素化エラストマーが、フッ素ゴムまたはパーフルオロゴムである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ピンチフィッティングスリーブが、フッ素ゴムの内層(16)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムの外層(15)を含んでなる、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
補強織物(17)が前記外層にさらに組み込まれている、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記エラストマーが、1kgのエラストマーを基準として、1mg未満のホウ素、20mg未満のリン、および1mg未満のヒ素を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記エラストマーが、1kgのエラストマーを基準として、200mg未満のアルミニウム、200mg未満のマグネシウム、および100mg未満の亜鉛を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
顆粒状ポリシリコン製造用流動床反応器プラントであって、
−ポリシリコン種粒子から顆粒状ポリシリコンを製造する少なくとも1つの流動床反応器(7)と、
−入口導管を介して前記流動床反応器(7)に接続された前記ポリシリコン種粒子用の少なくとも1つの貯蔵容器(2)と、
−出口導管を介して前記流動床反応器(7)に接続された前記顆粒状ポリシリコン用の少なくとも1つの収集容器(13)と、
を含んでなり、
ピンチフィッティングスリーブを含んでなる少なくとも1つのピンチフィッティング(5、10)が、前記貯蔵容器(2)と前記流動床反応器(7)との間の前記入口導管、および/または前記流動床反応器(7)と前記収集容器(13)との間の前記出口導管に配置され、
前記ピンチフィッティングスリーブが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素化エラストマー、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーとの組み合わせからなる群から選択されるエラストマーを含んでなる、
流動床反応器プラント。
【請求項8】
前記貯蔵容器(2)と前記流動床反応器(7)との間の前記入口導管、および/または前記流動床反応器(7)と前記収集容器(13)との間の前記出口導管に配置された少なくとも1つの計量ユニット(4、10)をさらに含んでなる、請求項7に記載の流動床反応器プラント。
【請求項9】
前記ピンチフィッティング(5、10)が、前記計量ユニット(4、10)と前記流動床反応器(7)との間の前記入口導管および/または前記出口導管に配置されている、請求項8に記載の流動床反応器プラント。
【請求項10】
前記ピンチフィッティングスリーブのフッ素化エラストマーが、フッ素ゴムまたはパーフルオロゴムである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の流動床反応器プラント。
【請求項11】
前記ピンチフィッティングスリーブが、フッ素ゴムの内層(16)およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムの外層(15)を含んでなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の流動床反応器プラント。
【請求項12】
補強織物(17)が、前記ピンチフィッティングスリーブの前記外層にさらに組み込まれている、請求項11に記載の流動床反応器プラント。
【請求項13】
前記ピンチフィッティングスリーブの前記エラストマーが、1kgのエラストマーを基準として、1mg未満のホウ素、20mg未満のリン、および1mg未満のヒ素を含有する、請求項7〜12のいずれか一項に記載の流動床反応器プラント。
【請求項14】
前記ピンチフィッティングスリーブの前記エラストマーが、1kgのエラストマーを基準として、200mg未満のアルミニウム、200mg未満のマグネシウム、および100mg未満の亜鉛を含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の流動床反応器プラント。
【請求項15】
顆粒状ポリシリコンの製造方法であって、
−少なくとも1つの貯蔵容器(2)にポリシリコン種粒子を与えることと、
−少なくとも1つの顆粒状ポリシリコン製造用流動床反応器(7)に前記ポリシリコン種粒子を供給することと、
−前記顆粒状ポリシリコンを少なくとも1つの収集容器(13)に吐出することと、
を含んでなり、
供給および/または吐出におけるポリシリコン種粒子および/または顆粒状ポリシリコンの流れが、ピンチフィッティングスリーブを含んでなる少なくとも1つのピンチフィッティングによって制御および/または停止され、
前記ピンチフィッティングスリーブが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素化エラストマー、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーとの組み合わせからなる群から選択されるエラストマーを含んでなる、
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状ポリシリコンの流れを制御または停止するピンチフィッティングスリーブを含んでなる少なくとも1つのピンチフィッティングの使用、この種の少なくとも1つのピンチフィッティングを用いる顆粒状ポリシリコン製造用流動床反応器プラント、および当該ピンチフィッティングを用いる顆粒状ポリシリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顆粒状ポリシリコン(多結晶シリコンの顆粒)は、シーメンス法によって製造されるポリシリコンの代替物である。シーメンス法におけるポリシリコンは、円筒状のシリコンロッドの形態で得られ、さらなる処理の前に、チップポリ(chip poly)と呼ばれるものを得るために時間とコストがかかる方法で粉砕しなければならず、再び洗浄する必要があることがあるが、顆粒状ポリシリコンは、バルク材特性を有し、太陽光発電およびエレクトロニクス産業のための単結晶製造用などの原料として直接使用することができる。顆粒状ポリシリコンは、流動床反応器内で製造される。これは、加熱装置によって高温(約600℃〜1200℃)に加熱される流動床中のガス流によるシリコン粒子(ポリシリコン種粒子)の流動化によって達成される。ケイ素含有反応ガスの添加は、高温粒子表面での熱分解反応をもたらす。ケイ素元素が種粒子上に析出し、個々の粒子は直径が大きくなる(顆粒状のポリシリコン粒子)。成長した粒子を定期的に除去し、種粒子として小さなシリコン粒子を添加することにより、プロセスの連続運転が可能になる。好適なケイ素含有反応ガスは、ケイ素−ハロゲン化合物(例えば、クロロシランまたはブロモシラン)、モノシラン(SiH
4)、およびこれらのガスと水素との混合物である。この種の方法および装置は、例えば、米国第4786477 A号、欧州第1990314 A2号、国際公開第2014177377 A2号、国際公開第2014180693 A1号、国際公開第2014191274 A1号、国際公開第2015104127 A1号、および国際公開第2015140028 A1号により公知である。
【0003】
流動床法による顆粒状ポリシリコンの製造では、ポリシリコン種粒子および目的生成物(顆粒状ポリシリコン)は、通常、必要に応じて連結された流動床反応器から分離された貯蔵容器に存在する。連続運転の場合、種粒子を一定の時間間隔で補充されなければならない貯蔵容器から計量する。目的の最終生成物用の収集容器も、一定の時間間隔で空にしなければならない。反応空間の充填/排出のために、容器の両方のタイプは、遮断弁によって気体および固体を通さない様式で反応雰囲気から分離されなければならない。この目的は、通常、遮断弁または制御弁によって果たされる。
【0004】
気密封止を与える遮断弁は、独国第199 49 577 A1号などに記載の固体適合性ボールバルブ、または欧州第2 270 371 A2号などに記載のスライドゲートバルブであり得る。非気密封止を与えるバルブと気密封止を与える下流のバルブを組み合わせることによって、好適な分離を達成することも可能であり、この場合、非気密封止を与えるバルブは、気密封止を与えるバルブの上流の固体の流れを最初に止める。しかしながら、前述の解決策では、多数のスイッチング動作にわたって汚染を最小限にして気密停止を実際に達成することが困難である。
【0005】
高純度の多結晶顆粒状シリコンを製造するためには、供給原料が高純度を有するだけでなく、流動床反応器の運転に使用される構成要素についても、供給原料および顆粒に全く不純物を放出しない材料から作られていることが、さらに必要である。
【0006】
米国第2015 0104369 A1号は、例えば、顆粒状ポリシリコンの製造において反応空間と接触する可撓性チューブおよびホース中の保護層としての微孔性ポリウレタン(PU)を記載している。微孔性PUは、ここではパイプライン表面による金属汚染に対する保護のための保護層として使用される。しかしながら、研究により、PUはクロロシランに対して化学的安定性が低いことが示されている。したがって、微孔性PUの使用限度は200℃である。したがって、反応器に近い位置が、材料に熱損傷を与えないことは、可能ではない。
【0007】
したがって、顆粒状ポリシリコンの特定の性質(高い摩損性、高い硬度、高い純度)および製造プロセスに対する要求(汚染のリスク、高温)は、選択された遮断弁の特定の性質に関連する。生成物または媒体と接触する遮断弁は、理想的には不純物がある場合は不純物をシリコンへほとんど送りこんではならず、使用される雰囲気中で化学的に安定でなければならず、通路内の固体の流れによって永久的な気密封止を与えることができなければならない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、特に粒状シリコンの製造用流動床反応器プラントでの使用のための、顆粒状ポリシリコンの流れの制御および/または停止におけて使用に適した好適な遮断弁または制御弁を見出すことであった。遮断弁または制御弁は、好ましくは永久的な気密性および低汚染性の様式で、ポリシリコンフローを制御および/または停止することができ、長寿命であり、化学的および熱的に安定であり、ポリシリコンの高い硬度および摩損性に耐えることができるべきである。
【0009】
驚くべきことに、エチレン−プロピレン−ジエンゴムおよび/またはフッ素化エラストマー製のピンチフィッティングスリーブを有するピンチフィッティングがこの目的に特に適していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】2層構造を有するピンチフィッティングスリーブを示す。
【
図2】ピンチフィッティングを使用する、顆粒状ポリシリコン製造用流動床反応器プラントの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、粒状ポリシリコンの流れを制御および/または停止するピンチフィッティングスリーブを含んでなる少なくとも1つのピンチフィッティングの使用であって、前記ピンチフィッティングスリーブが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素化エラストマー、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーの組み合わせからなる群から選択されるエラストマーを含んでなることを特徴とする、ピンチフィッティングの使用に関する。
【0012】
チューブ締付バルブまたはチューブ締付フィッティングとも呼ばれるピンチフィッティングは、一般に、円形または楕円形(通常は金属製)ハウジングと、特別に製作された高弾性エラストマーチューブ部品−ピンチフィッティングスリーブ−とからなり、前記チューブ部品は、ハウジングの中央に中心が置かれ、2つの端部のそれぞれで、例えば2つのフランジまたはマフを用いて固定されている。固体粒子流はピンチフィッティングスリーブを通って流れる。
【0013】
ハウジングとピンチフィッティングスリーブとの間には、制御/機能空間と呼ばれるものが通常存在し、これによって、断面を狭め、固体粒子流を停止または制御するために、ピンチフィッティングスリーブを空気圧式、液圧式、または機械式の手段などによって変形させることができる。系が緩められると、ピンチフィッティングスリーブが再び開き、固体粒子がピンチフィッティングスリーブを全断面にわたって流れることができる。
【0014】
チューブ締付バルブは、他の産業分野、例えば、食品産業、水処理技術、とりわけ、摩損性、腐食性、および繊維状の生成物の遮断用に、既に試みられ、検査されている。チューブ締付バルブに通常使用される従来のエラストマーは、例えば、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)、NR(天然ゴム)、NBR(ニトリル−ブタジエンゴム)、CSM(クロロスルホン化ポリエチレン)、CR(クロロプレンゴム)、IIR(イソブテン―イソプレンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、BR(ブタジエンゴム)、PUR(ポリウレタン)、またはSI(シリコーン)である。前述のエラストマーの種々の改変物は、特定の特性の調整のために種々の営利製造業者によって供給されている。機械的、物理的、化学的、および定性的特性に影響を及ぼす、エラストマーの化学組成が変動し得る幅広い範囲は、本発明に係る顆粒状ポリシリコン用に特別に開発されたスリーブの基礎を形成する。
【0015】
本発明において、ピンチフィッティングスリーブは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素化エラストマー、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーとの組み合わせからなる群から選択されるエラストマーを含んでなる。好ましくは、ピンチフィッティングスリーブは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素化エラストマー、またはエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーとの組み合わせと、必要に応じて1つ以上の補強織りインレーと、必要に応じて接着促進剤(例えば多層構造のピンチフィッティングスリーブの場合)とのみからなる。
【0016】
フッ素化エラストマーは、少なくとも1種のフッ素化モノマーから調製された弾性ポリマーである。フッ素化モノマーは、例えば、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、およびパーフルオロメチルビニルエーテルである。フッ素化エラストマーは、1種以上のフッ素化モノマーと1種以上のフッ素化されていないモノマー、例えばプロペンまたはエテンとのポリマーであってもよい。好適なフッ素化エラストマーは、フッ素ゴム(FKM)、パーフルオロゴム(FFKM)、テトラフルオロ−エチレン/プロピレンゴム(FEPM)、およびフッ素化シリコーンゴムである。フッ素化エラストマーは、好ましくはFKMまたはFFKMである。
【0017】
エチレン−プロピレン−ジエンゴムおよびフッ素化エラストマーは、他のスリーブ材料と比較して、耐磨耗性、汚染のリスク、ならびに、顆粒状ポリシリコンの製造で生じる反応物、生成物、およびオフガスに対する熱的および化学的安定性に関して最適化された特性を有することが分かっている。特に顆粒状ポリシリコンの製造で形成/使用される物質であるモノシラン、クロロシラン、HCl、および水素に対する、EPDMおよびフッ素化エラストマーの非常に良好な化学的安定性により、これらを流動床反応器の周囲の環境で使用することが可能になる。
【0018】
ピンチフィッティングスリーブの寿命に関して、ピンチフィッティングは、できるだけ少ない熱応力を有する点で使用されることが好ましい。好ましくは、ピンチフィッティングは、0℃〜100℃の温度で、より好ましくは15℃〜90℃の温度で、最も好ましくは20℃〜80℃の温度で使用される。
【0019】
特に、フッ素化エラストマーは高い熱安定性を示す。具体的には、FFKMは、320℃までの温度で、短時間では360℃までの温度で使用できる。したがって、エラストマーに熱損傷を与えることなく、反応器に比較的近い位置が可能である。したがって、フッ素化エラストマー製、特にFFKM製のピンチフィッティングスリーブを有するピンチフィッティングは、320℃以下の温度で、好ましくは200℃〜320℃の温度で、より好ましくは220℃〜300℃の温度で、最も好ましくは250℃〜290℃の温度で使用することができる。
【0020】
好ましくは、ピンチフィッティングスリーブのエラストマーは、1kgのエラストマーを基準として、1mg未満のホウ素、20mg未満のリン、および1mg未満のヒ素を含有する。
【0021】
さらに、エラストマーは、好ましくは、1kgのエラストマーを基準として、200mg未満のアルミニウム、200mg未満のマグネシウム、および100mg未満の亜鉛を含有する。
【0022】
エラストマーは、好ましくは、1kgのエラストマーを基準として、10000mg未満、より好ましくは5000mg未満の金属総含有量を有する。金属総含有量には、上記のMg、Al、およびZnだけでなく、Ba、Be、Bi、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mn、Mo、Na、Ni、Pb、Pt、Sb、Sr、Ti、V、Zr、およびWも含まれる。
【0023】
対応する純度のエラストマーは、様々な供給元から市販されている。
【0024】
金属不純物は、軸方向のICP(誘導結合プラズマ)発光分光法によって測定される。この目的のために、サンプルをマイクロ波中の酸性条件下で(HF/HNO
3/H
2O
2)消化する。ICP−OESの測定は、PFA(パーフルオロアルコキシポリマー)製のHF耐性サンプル導入システムを使用して、ISO 11885 “Wasserbeschaffen-heit - Bestimmung von ausgewaehlten Elementen durch induktiv gekoppelte Plasma-Atom-Emissionsspektrometrie [Water quality - Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry] (ICP-OES) (ISO 11885:2007); German version EN ISO 11885:2009”に従う。
【0025】
製造された顆粒状ポリシリコンの純度に対する付加(汚染)効果は、NBR製の従来のスリーブと比較して、上記のピンチフィッティングスリーブの本発明に係る使用などによって、4分の1に低減することができる。
【0026】
汚染の定性的評価では、顆粒状ポリシリコンを試験される材料と接触させ、その後、ポリシリコンの物理的および化学的分析のための標準的試験方法によって試験する。これは、第一に、試験結晶(単結晶)を引っ張り、そこからサンプルをウエハの形態で切り出し、研磨し、液体ヘリウムで冷却することによって行う。このサンプルを、ホウ素、リン、アルミニウム、およびヒ素の元素についてのフォトルミネセンス分光法によって分析する。第二に、上記のようにICPによって金属について顆粒を直接測定する。
【0027】
ピンチフィッティングスリーブに新規のエラストマーを使用することにより、NBRなどの他の従来のエラストマーで作られたピンチフィッティングと比較して、フィッティングの平均有効寿命が2倍以上となった。「有効寿命」とは、フィッティングの設置からフィッティングのイベント駆動型の取り外しまでの期間を意味すると理解される。イベントは、例えば、欠陥のあるスリーブまたは他の何らかの機能不全であり得る。好ましくは、ピンチフィッティングの有効寿命は1年以上である。
【0028】
スリーブの寿命は、スリーブに損傷を与えることなく行われることができるスイッチングサイクルの数によって特徴付けられる。スリーブのスイッチングサイクル数は50000以上であることが好ましい。
【0029】
閉鎖運転中に遮断される媒体流の固形分が多いほど、理論的には、スリーブ材料に対する機械的応力が大きくなる。応力の最も極端な場合は、顆粒状ポリシリコン固体のカラムへのスリーブの閉鎖であると考えられる。特に、この使用の場合、上記のEPDMおよび/またはフッ素化エラストマーのスリーブの場合、他の材料と比較して、ピンチ領域にクラックが形成されない。クラッキングは、例えば、フィッティングを取り付けた内視鏡検査によって、観察することができる。
【0030】
ピンチフィッティングスリーブのためのエラストマーの選択における他の重要な点は、エラストマーを通るガスの透過特性である。エラストマースリーブを通る拡散容積は、以下の透過式(1)を用いて、推定値として確認することができる。
【0032】
窒素および水素についての種々のエラストマーの透過係数は、先行技術において知られている。ここでは、例えば、以下の参考文献:KGK Kautschuk Gummi Kunststoffe, volume 55, no. 6/2002; Technoprofil TP Blau GmbH, 09-2013 editionを参照する。
【0033】
下記の表1は、例えば、NR、CR、およびNBRの透過係数を示す。
【0035】
室温(25℃)での窒素についてのEPDMの透過係数は、NBRの透過係数よりも最大8倍高い。しかし、FKMの場合、室温における窒素についての透過係数はNBRの透過係数の約半分に過ぎない。したがって、拡散抵抗に関する最良の結果は、FKMを含んでなる、好ましくはFKMのみからなるスリーブによって与えられる。例えば、ピンチフィッティングのハウジングに取り付けられたマノメータを用いて、拡散抵抗を試験することができる。なぜなら、正のハウジング圧力は、より高い拡散速度でより迅速に上昇するからである。
【0036】
ピンチフィッティングスリーブは、単層または多層構造、好ましくは二層構造を有し得る。拡散抵抗を増加させるために、EPDMおよびフッ素化エラストマーを組み合わせることができる。特に好ましい実施形態は、コア材料(外層)としてのEPDMとカバー層(内層)としてのFKMとの組み合わせであることが分かっている。
【0037】
図1は、例として、2層構造を有するピンチフィッティングスリーブを示す。生成物と接触するスリーブの内層16(シェル)は、FKMから製造されていることが好ましく、外層15(コア)はEPDMからなることが好ましい。さらに、1つ以上の補強織物17を必要に応じて外層に組み込むことができる。スリーブのコアは、織物と共に、スリーブに必要な機械的安定性を与える。シェルは、耐摩耗性および拡散抵抗性を改善し、生成物汚染を低減する。ピンチフィッティングスリーブの任意の織りインレーは、とりわけ、スリーブの圧縮強度および最適機能ならびにその有効寿命のために役立つ。(例えば、接着促進剤の使用による)2つのエラストマー間の接着は、好ましくは50,000回以上のスイッチングサイクル用に設計されるべきである。
【0038】
拡散抵抗の最適化と同様に、スリーブの多層構造は、摩耗の認識の可能性をさらに与える。エラストマーの特定の成分のおかげで、エラストマーの主要な元素についての顆粒状ポリシリコンの微量成分分析を介して、最上層への損傷または摩耗を検出することが可能である。
【0039】
多層構造と比較して、単層構造は、異なるエラストマー間の接着促進剤が省かれることによって支持される。このことは、通常、製造の複雑さを低下させ、そのため製造コストを低減させる。
【0040】
ポリシリコン粒子のサイズおよび形状パラメータ(粒径分布、粒子形状など)は、ISO13322−2に従った動的画像分析(DIA)(測定範囲:30μm〜30mm、分析のタイプ:粉末および顆粒の乾式測定)により測定される。種粒子の平均直径は、好ましくは少なくとも400μmである。多結晶顆粒状シリコンは、好ましくは、150μm〜10000μmの粒径を有する粒子を含んでなる。顆粒状シリコンの粒径分布の質量基準中央値は、好ましくは850μm〜2000μmである。
【0041】
したがって、ピンチフィッティングスリーブを有する上記のピンチフィッティングは、好ましくは、平均粒径が100μm〜5000μm、より好ましくは150μm〜2000μm、最も好ましくは200μm〜1000μmのポリシリコンの流れを制御および/または停止させるために使用される。
【0042】
DN 15〜DN 100、好ましくはDN 20〜DN 80、特にDN 50の公称幅を有するピンチフィッティングを使用することが好ましい。
【0043】
上記のピンチフィッティングスリーブを有するピンチフィッティングは、顆粒状ポリシリコンの製造用流動床反応器プラントでの使用に特に適している。流動床反応器での顆粒状ポリシリコンの製造における構造およびプロセスパラメータの詳細な説明は、例えば、公開された明細書である欧州第1990314 A2号、国際公開第2014177377 A2号、国際公開第2014180693 A1号、国際公開第2014191274 A1号、国際公開第2015104127 A1号、および国際公開第2015140028 A1号により公知である。
【0044】
したがって、本発明はまた、顆粒状ポリシリコン製造用流動床反応器プラントであって、
−ポリシリコン種粒子から顆粒状ポリシリコンを製造する少なくとも1つの流動床反応器と、
−入口導管を介して前記流動床反応器に接続された前記ポリシリコン種粒子用の少なくとも1つの貯蔵容器と、
−出口導管を介して前記流動床反応器に接続された前記顆粒状ポリシリコン用の少なくとも1つの収集容器と、
を含んでなり、
ピンチフィッティングスリーブを含んでなる少なくとも1つのピンチフィッティングが、前記貯蔵容器と前記流動床反応器との間の前記入口導管、および/または前記流動床反応器と前記収集容器との間の前記出口導管に配置され、
前記ピンチフィッティングスリーブが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素化エラストマー、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーとの組み合わせからなる群から選択されるエラストマーを含んでなる、
流動床反応器プラントにも関する。
【0045】
好ましくは、流動床反応器プラントは、貯蔵容器と流動床反応器との間の入口導管、および/または流動床反応器と収集容器との間の出口導管に配置された、少なくとも1つの計量ユニットをさらに含んでなる。ここでのピンチフィッティングは、好ましくは、計量ユニットと流動床反応器との間の入口導管または出口導管に配置される。
【0046】
好ましくは、ピンチフィッティングスリーブは、流動床反応器プラントにおいて好ましいものとして上述した実施形態で使用される。
【0047】
図2は、例として、種粒子添加および生成物除去を伴う流動床反応器を示す。種粒子は、ピンチフィッティング1を介して貯蔵容器2に供給され、ピンチフィッティング3を介して計量ユニット4に供給される。ピンチフィッティング5は、流動床反応器7の近くに取り付けられており、そのため、長時間にわたって高い運転温度に耐えるために、FKMなどのフッ素化エラストマーのスリーブを備えていることが、好ましい。流動床反応器7は、プロセスガス8を送り込むための2つのノズル、流動化ガス9のための2つの給送装置、反応器からプロセスオフガス6を除去するためのオフガスオリフィス、および反応器の底部にある完成した顆粒状シリコン粒子のための除去オリフィスをさらに備えている。粒子除去はピンチフィッティング10によって中断することができ、ピンチフィッティング10は、反応器に近いフィッティングであり、好ましくはFKMなどのフッ素化エラストマーのスリーブを備えている。計量ユニット11によって、粒子は制御された方法で反応器7から引き出され、下流の収集容器13に供給される。容器13を空にするには、フィッティング12を閉じ、ピンチフィッティング14を開く。
【0048】
本発明は、顆粒状ポリシリコン製造方法であって、
−少なくとも1つの貯蔵容器にポリシリコン種粒子を与えることと、
−少なくとも1つの顆粒状ポリシリコン製造用流動床反応器に前記ポリシリコン種粒子を供給することと、
−前記顆粒状ポリシリコンを少なくとも1つの収集容器に吐出することと、
を含んでなり、
供給および/または吐出におけるポリシリコン種粒子および/または顆粒状ポリシリコンの流れが、ピンチフィッティングスリーブを含んでなる少なくとも1つのピンチフィッティングによって制御および/または停止され、
前記ピンチフィッティングスリーブが、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、フッ素化エラストマー、およびエチレン−プロピレン−ジエンゴムとフッ素化エラストマーとの組み合わせからなる群から選択されるエラストマーを含んでなる、
ことを特徴する、方法にさらに関する。
【0049】
ここでは、好ましいものとして上述した実施形態におけるピンチフィッティングスリーブの使用が好ましい。
【0050】
さらに、顆粒状ポリシリコンを、好ましくは、上記の流動床反応器プラント、より好ましくは好ましいものとして上述した実施形態における流動床反応器プラントで製造する。
【実施例】
【0051】
顆粒状ポリシリコン製造に適したピンチフィッティングスリーブ材料を確認するために、様々な材料を物理的および化学的特性について試験した。
【0052】
耐摩耗性を確認するために、例えば、エラストマーNBR、FKM、およびEPDMを、顆粒の表面にどれだけの炭素を送りこむかについて標準化された試験方法で試験した。炭素による汚染は、自動分析装置によって測定する。このことは、米国第2013/0216466 A1号の段落[0108]〜[0158]およびドイツ第10 2012 202 640 A1号の段落[0097]〜[0147]に詳細に記載されている。
【0053】
第2の試験では、材料サンプルをクロロシラン、HCl、および水素からなるプロセスガス雰囲気中で80℃の温度で72時間の期間にわたって貯蔵し、次いでその化学的安定性について試験した。さらに詳細には、試験したのは、材料がその特性を変化させたかどうか、例えば膨潤、収縮、脆化、または破壊などである。
【0054】
実験の結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
驚くべきことに、スリーブ材料としてのFKMおよびEPDMの使用は、NBRよりも基準サンプルの汚染を低減させることが分かった。さらに、FKMおよびEPDMは、顆粒状ポリシリコン製造において生じるガスに関して、良好から非常に良好な化学的安定性を示した。