【実施例1】
【0018】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明のワイヤハーネスを示す図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。また、
図2は本発明のワイヤハーネスの構成を示す図、
図3は
図2の外装部材の構成を示す正面図、
図4は
図3の外装部材の断面図、
図5は
図2のワイヤハーネスの経路配索状態を示す図である。
【0019】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車やエンジンで走行する一般的な自動車等であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用する。
【0020】
<ハイブリッド自動車1の構成について>
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0021】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8(高電圧用のモーターケーブル)により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両における(車体における)車両床下11に配索される。また、中間部10は、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディ(車体)であるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が水密に挿通される。
【0022】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段が電気的に接続される。また、ワイヤハーネス9とインバータユニット4は、前端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段を介して電気的に接続される。
【0023】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを含んで構成される。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んで構成される。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成される。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成される。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化することによりなる。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないのは勿論である。
【0024】
図1(b)において、引用符号15はワイヤハーネスを示す。ワイヤハーネス15は、低圧の(低電圧用の)ものであって、ハイブリッド自動車1における自動車後部7の低圧バッテリー16と、自動車前部17に搭載される補器18(機器)とを電気的に接続するために備えられる。ワイヤハーネス15は、
図1(a)のワイヤハーネス9と同様に、車両床下11を通って配索される(一例であり、車室側を通って配索されてもよいものとする)。
【0025】
図1(a)及び(b)に示す如く、ハイブリッド自動車1には、高圧のワイヤハーネス8、9及び低圧のワイヤハーネス15が配索される。本発明は、いずれのワイヤハーネスであっても適用可能であるが、代表例として低圧のワイヤハーネス15を挙げて以下に説明をする。先ず、ワイヤハーネス15の構成及び構造について説明をする。
【0026】
<ワイヤハーネス15の構成について>
図1(b)において、車両床下11を通って配索される長尺なワイヤハーネス15は、ハーネス本体19と、このハーネス本体19の両端末にそれぞれ配設されるコネクタ20とを備えて構成される。また、ワイヤハーネス15は、これ自身を所定位置に配索するためのクランプC(
図5参照)と、図示しない止水部材(例えばグロメット等)とを備えて構成される。
【0027】
<ハーネス本体19の構成について>
図2において、ハーネス本体19は、一本の導電路21と、この導電路21を収容・保護する外装部材22とを備えて構成される。尚、導電路21の本数に関し、本実施例においては一本であるが、これは一例であるものとする(二本や三本でもよいものとする)。また、外装部材22に関し、高圧のワイヤハーネス9を一緒に収容保護するようなものを採用してもよいものとする。
【0028】
<導電路21について>
図2において、導電路21は、導電性の導体23と、この導体23を被覆する絶縁性の絶縁体24とを備えて構成される。導体23は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により断面円形に形成される。導体23に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。以上のような導体23は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体24が押出成形される。
【0029】
絶縁体24は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体23の外周面に押出成形される。絶縁体24は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体24は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。尚、引用符号25は導電路21の外周面(ここでは絶縁体24の外周面に相当)を示す。
【0030】
<外装部材22について>
図2及び
図3において、外装部材22は、樹脂成形にて一本の真っ直ぐな管体形状のものに形成される(使用前は真っ直ぐである)。また、外装部材22は、腹割きなしの形状に形成される(別な言い方をすれば、スリットのない形状に形成される(割チューブでない形状に形成される))。さらに、外装部材22は、断面円形状に形成される(本実施例では真円形状であるが一例であり、例えば断面長円形状や楕円形状、矩形状等であってもよいものとする)。
【0031】
このような外装部材22は、可撓性を有する可撓管部26と、導電路21をストレートに配索する部分としてのストレート管部27とを有する。可撓管部26とストレート管部27は、
図3に示すように複数形成される。また、これら可撓管部26とストレート管部27は、交互に配置形成される。
【0032】
<可撓管部26について>
図2ないし
図5において、可撓管部26は、車両取付形状(ワイヤハーネス配索先の形状。取付対象39の形状)に合わせて配置される。また、可撓管部26は、車両取付形状に合わせた長さにも形成される。可撓管部26の長さは一定でなく、車両取付形状に合わせて必要な長さにそれぞれ形成される。このような可撓管部26は、ワイヤハーネス15の梱包状態や輸送時、さらには車両への経路配索時に、それぞれ所望の角度で撓ませることができる部分に形成される。すなわち、可撓管部26は、撓ませて曲げ形状にすることができるとともに、図示のような真っ直ぐな元の状態(樹脂成形時の状態)に戻すことも当然にできる部分に形成される。
【0033】
可撓管部26は、蛇腹管形状に形成される。具体的には、周方向の蛇腹凹部28及び蛇腹凸部29を有するとともに、これら蛇腹凹部28及び蛇腹凸部29が管軸方向に交互に連続するように形成される。
図4において、蛇腹凸部29における引用符号30は頂部を示す。また、引用符号31は斜面を示す。一方、蛇腹凹部28における引用符号32は溝底部を示す。
【0034】
<ストレート管部27について>
図2ないし
図5において、ストレート管部27は、可撓管部26のような可撓性を持たない部分として形成される。また、ストレート管部27は、梱包状態や輸送時、経路配索時において曲がらない部分としても形成される(曲がらない部分とは、可撓性を積極的に持たせない部分という意味である)。ストレート管部27は、長い直管形状に形成される。このようなストレート管部27の外周面33は、凹凸のない形状部分として形成される(一例であるものとする。実施例2のような形状部分であってもよいものとする)。
【0035】
ストレート管部27は、可撓管部26と比べ、リジッドな部分に形成される。このようなストレート管部27は、車両取付形状に合わせた位置や長さに形成される。尚、一番長いストレート管部27は、本実施例において、車両床下11(
図1参照)に配置される部分として形成される。
【0036】
<可撓管部26とストレート管部27の連続部分34について>
図2ないし
図5において、可撓管部26とストレート管部27の連続部分34には、テーパ形状部35(35a、35b)が形成される。このテーパ形状部35は、周方向全体にわたって形成される。テーパ形状部35は、本発明の特徴部分として形成される。尚、引用符号35aは、比較的斜面が急なテーパ形状部、引用符号35bは比較的斜面が緩やかなテーパ形状部を示すものとする。
【0037】
<テーパ形状部35について>
図2ないし
図5において、テーパ形状部35は、可撓管部26とストレート管部27との連続部分34での応力集中を緩和するための、又は、無くすための部分として形成される。別な言い方をすれば、連続部分34に応力が集中しない用にするための部分として形成される。このようなテーパ形状部35は、この内周面36及び外周面37が共に、可撓管部26における蛇腹凸部29の頂部30とストレート管部27との間で斜面になる形状される。テーパ形状部35の斜面(傾斜)は、適宜角度で設定される(急な斜面にするのであれば例えばテーパ形状部35aが好適であり、緩やかな斜面にするのであれば例えばテーパ形状部35bが好適である)。
【0038】
テーパ形状部35は、可撓管部26及びストレート管部27に対し上記斜面がラウンド38(R)で連続する形状に形成される。また、テーパ形状部35は、このテーパ形状部35の厚みが可撓管部26及び/又はストレート管部27に対し略均一な形状にも形成される。このような形状は、応力集中をし難くするために採用される。尚、ラウンド38(R)の曲率は適宜設定されるものとする。すなわち、小さなRや大きなR等、いずれであってもよいものとする。
【0039】
図3及び
図5において、本実施例でのテーパ形状部35は、車両床下11(
図1参照)に配置される一番長いストレート管部27と可撓管部26との連続部分34で、比較的斜面が緩やかなテーパ形状部35bが配置される(一例であるものとする)。
【0040】
<ワイヤハーネス15の製造〜経路配索について>
上記構成及び構造において、ワイヤハーネス15は次のようにして製造される(例えば
図2及び
図5参照)。すなわち、ワイヤハーネス15は、全体が略直線状に樹脂成形された外装部材22の一端開口から他端開口へと導電路21を挿通することにより製造される。また、ワイヤハーネス15は、外装部材22の外面所定位置にクランプCやグロメット、ブーツ等を取り付けることにより製造される。さらに、ワイヤハーネス15は、導電路21の端末部分にコネクタ20を設けることにより製造される。
【0041】
上記の如く製造された後は、所定の可撓管部26を折り畳むようにして曲げを施すと、ワイヤハーネス15の梱包が完了する。梱包状態のワイヤハーネス15はコンパクトであり、このようなコンパクトな状態で車両組み付け現場まで輸送される。
【0042】
車両組み付け現場では、車両床下11(
図1参照)に対応する長尺な部分からワイヤハーネス15は車両の取付対象39に取り付けられる。ワイヤハーネス15は、車両床下11に対応する長尺な部分に外装部材22の一番長いストレート管部27が配置されることから、ワイヤハーネス15は撓みを抑えた状態に取り付けられる。この時、ワイヤハーネス15は作業性良く取り付けられる。車両床下11に対応する長尺な部分がクランプC等で固定された後には、外装部材22における可撓管部26の部分を撓ませつつ(曲げつつ)残りの部分が取り付けられる。取り付けに係る一連の作業が完了すると、ワイヤハーネス15は所望の経路で配索された状態になる。
【0043】
<本発明の効果について>
以上、
図1ないし
図5を参照しながら説明してきたように、本発明のワイヤハーネス15によれば、外装部材22における可撓管部26とストレート管部27との連続部分34において、テーパ形状部35が応力集中を緩和するための部分として、又は、応力集中を無くす部分として有効に機能する。つまり、外装部材22が例えば車両走行中の振動を受けたとしても、従来では応力が集中していたのが、緩和させたり無くしたりすることができる。従って、本発明のワイヤハーネス15によれば、応力集中に起因する亀裂や破損の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0044】
この他、本発明のワイヤハーネス15によれば、テーパ形状部35に関し、ラウンド38(R)を形成したり、厚みを略均一にしていることから、応力集中に起因する亀裂や破損の発生をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【実施例2】
【0045】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。
図6は他の例となる外装部材の断面図であり、(a)は比較的斜面が急なテーパ形状部の断面図、(b)は比較的斜面が緩やかなテーパ形状部の断面図である。尚、上記実施例1と基本的に同じ構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
<他の例となる外装部材22について>
図6において、他の例となる外装部材22は、樹脂成形品であって、可撓性を有する可撓管部26と、導電路をストレートに配索する部分としてのストレート管部27とを有する。可撓管部26とストレート管部27は、複数形成される。また、これら可撓管部26とストレート管部27は、交互に配置形成される。実施例2の外装部材22は、図から分かるようにストレート管部27が実施例1よりも若干太くなる形状に形成される。
【0047】
<他の例となるテーパ形状部35について>
図6において、テーパ形状部35(35a、35b)は、可撓管部26とストレート管部27との連続部分34での応力集中を緩和するための、又は、無くすための部分として形成される。別な言い方をすれば、連続部分34に応力が集中しない用にするための部分として形成される。このようなテーパ形状部35は、この内周面36及び外周面37が共に、可撓管部26における蛇腹凹部28の溝底部32とストレート管部27との間で斜面になる形状に形成される。テーパ形状部35の斜面(傾斜)は、適宜角度で設定される(急な斜面にするのであれば例えばテーパ形状部35aが好適であり、緩やかな斜面にするのであれば例えばテーパ形状部35bが好適である)。
【0048】
テーパ形状部35は、可撓管部26及びストレート管部27に対し上記斜面がラウンド38(R)で連続する形状に形成される。また、テーパ形状部35は、このテーパ形状部35の厚みが可撓管部26及び/又はストレート管部27に対し略均一な形状にも形成される。
【0049】
<本発明の効果について>
以上、
図6を参照しながら説明してきたように、実施例2の外装部材22を採用すれば、実施例1と同様の効果を奏することができる。すなわち、応力集中に起因する亀裂や破損の発生を防止することができる。
【0050】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。