特許第6685570号(P6685570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6685570
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】PC基礎構造体及びその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/22 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   E04B1/22
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-212220(P2019-212220)
(22)【出願日】2019年11月25日
【審査請求日】2019年11月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170772
【氏名又は名称】黒沢建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 亮平
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3916336(JP,B2)
【文献】 特許第4472726(JP,B2)
【文献】 特許第5676800(JP,B2)
【文献】 特開2016−8441(JP,A)
【文献】 特開2017−222996(JP,A)
【文献】 中国実用新案第205776735(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/22
E04B 1/58
E04C 3/26
E04C 5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ラーメン構造の基礎構造体であって、
該基礎構造体は、すくなくとも複数の現場打ちコンクリート製のフーチングとその間に配置されたコンクリート製の大梁とで連続的に形成され、
前記大梁は、同じ部材幅で形成されるプレキャスト梁中間部材と両端の現場打ち梁端部材とからなり、
前記フーチングと大梁とを貫通して緊張材が配設され緊張定着してプレストレスが付与され、
前記基礎構造体の中間部において、少なくとも1箇所に緊張材の連結部が配置され、
該連結部は、フーチングと部材幅が梁中間部材より大きく形成される梁端部材とからなり、
連結部の平面において、フーチングの対向する両端面に定着部が位置をずらしてそれぞれ設けられ、一方から配設される緊張材がフーチングを貫通して片端面の定着部に定着されると共に、他端面の定着部から新たな緊張材が先に配設された緊張材とラップして、梁端部材内に曲げ配線して他方へ延伸して配設され、
前記各梁中間部材は、断面形状寸法を同じとし、部材内の緊張材の配設が一直線で貫通のみとして形成されること
を特徴とするPC基礎構造体。
【請求項2】
前記梁中間部材の長さは、スパンの1/2〜2/3の長さとすること
を特徴とする請求項1に記載のPC基礎構造体。
【請求項3】
前記建物ラーメン構造は、上部構造と下部構造との間に免震装置が設置された免震建物構造とし、前記基礎構造体は、当該上部構造の最下階の構造体とすること
を特徴とする請求項1または2に記載のPC基礎構造体。
【請求項4】
建物ラーメン構造の基礎構造体の構築方法であって、
該基礎構造体を、すくなくとも複数の現場打ちコンクリート製のフーチングとその間に配置されたコンクリート製の大梁とで連続的に形成し、
前記大梁は、プレキャスト梁中間部材と両端の現場打ち梁端部材とを同じ部材幅で形成し、
前記フーチングと大梁とを貫通して緊張材を配設して緊張定着してプレストレスを付与させ、
前記基礎構造体の中間部において、少なくとも1箇所に緊張材の連結部を配置し、該連結部をフーチングと部材幅を梁中間部材より大きくする梁端部材とで形成し、該フーチングの反対側に隣接する大梁を後構築部として設けて、後構築部以外の前記フーチングと大梁を先行構築して形成させ、緊張材を緊張定着してプレストレスを付与した後に、後構築部を構築して緊張材を緊張定着して、先行構築された基礎構造体と一体化させること
を特徴とするPC基礎構造体の構築方法。
【請求項5】
前記の後構築部を20m〜30m毎に設けること
を特徴とする請求項4に記載のPC基礎構造体の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ラーメン構造または免震建物ラーメン構造のPC基礎構造体及びその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のPC基礎構造体に関する従来技術が複数公知になっている。例えば、第1の公知技術としては、上部躯体は、柱部と梁部とを、プレストレス導入用長尺体の緊張によって連結してあり、前記免震装置は、免震装置本体の上部に一体に連結ブロックを設けて構成してあると共に、前記連結ブロックには、その側方に配置する梁端部を載置自在な載置部が形成してあり、前記上部躯体における最下階の梁部は、前記連結ブロックの前記載置部上に梁端部を載置した状態でプレストレス導入用長尺体の緊張によって前記連結ブロックと連結してある免震建物構造、である(特許文献1参照)。
【0003】
上記第1の公知技術は、上部躯体は、柱部と梁部とを、プレストレス導入用長尺体の緊張によって連結してあるから、上部躯体としての剛性を高いものとすることが可能となり、地震に伴う上部躯体の変形を抑制して前記免震装置の免震作用をより効率よく発揮させることが可能となる。従って、必要以上に免震装置をグレードアップする必要が無くなり、コストアップを防止することも可能となる、というものである。
【0004】
第2の公知技術については、下部躯体に設置された免震装置の上面で、上部躯体の最下階のプレキャストコンクリートの梁の端部と現場打ち鉄筋コンクリートの連結部とが一体接合され、前記プレキャストコンクリートの梁の端部から突出した下端筋が前記連結部内で定着することによって連結部と梁が一体接合された免震建物構造、である(特許文献2参照)。
【0005】
上記第2の公知技術による免震建物構造では、梁の下端筋を端部から突出させて現場打ち鉄筋コンクリートの連結部内に定着し、他の梁の端部から突出した下端筋と鉄筋継手で接続することができるので、梁の端部においては、曲げ耐力が梁主筋と緊張材とで半分ずつ負担するとすれば、緊張材量を半分に減らすことができ、せん断力についてもコンクリート全断面が負担することによって緊張材量を大幅に減らすことができるので、プレストレス導入力による軸変形量も半分に減って、プレストレス導入力を支障のない程度に抑えることができる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3916336号の特許公報
【特許文献2】特許第4472726号の特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1では、連結ブロックも梁部もプレキャスト部材であるため、プレキャスト部材同士が鉄筋で繋げないために、PC鋼線の配線量を多くしなければならなかった。このPC鋼線の配線量が多くなると、プレストレス導入力による軸変形量が多くなって免震装置が免震機能を発揮する前に変形してしまい、地震時に免震装置の免震性能を充分に発揮することができないという問題点を有している。
【0008】
この問題については、免震構造だけではなく、耐震構造においても、通常のフーチング(または連結ブロック)の下に杭が設けられているため、プレストレス導入力による軸変形量が多くなると、杭の水平せん断抵抗によって杭頭部とフーチングとの接合にはひび割れや損傷等が生じ、基礎構造体の構造性能を損なうという問題が同様に発生する。
また、PC鋼線の長さに制約があり、通常では、梁間方向および桁行方向において、外周端から配設されたPC鋼線を一旦途中で止めて緊張定着して、続いて新たなPC鋼線を配設して連結する必要がある。
【0009】
従来の技術においては、スパンの中間部に定着部を設けてPC鋼線を定着することになっているが、その定着部は、PC鋼線の定着具及び緊張ジャッキ等を格納可能な大きな箱型切欠きが梁の上端に設けられる。この箱型切欠きによって、プレキャスト梁部材の中間部が断面欠損となり、所要な剛性と耐力を満足するために、梁部材の断面を大きくすることが必要となり、構造体のバランスやプレキャスト部材の型枠転用等の製作関係から、結果的に定着部を設けた梁部材の中間断面のみならず梁全長にわたって中間断面の大きさに合せて梁断面が大きくなってしまい、自重が増えることに対して運搬や揚重能力をアップして対応する必要が生じるだけではなく、杭基礎への負担と共に地震荷重が増え、コスト増になるという問題点が生じる。
【0010】
前記特許文献2は、特許文献1に発生しているPCによる軸変形量が大きいという問題に対して、現場打ち鉄筋コンクリート連結部を設けて、鉄筋と緊張材が共同負担することによって緊張材量(PC鋼線量)を減らして軸変形量を抑制することができ、問題点を解消するようにしたものである。
しかし、緊張材とするPC鋼線の定着部は、同じくプレキャスト梁の上端に大きな箱型切欠きを設けて対応することになっているため、上記の断面欠損の問題点が依然として解消されていない。
【0011】
本発明は、前記従来技術における問題点を解決し、フーチングと大梁とを貫通して緊張材を配設して緊張定着してプレストレスを付与してPC基礎構造体を形成するにあたって、梁間方向または桁行方向に適切な長さで緊張材の連結部を設ける必要に応じて、大梁を梁中間部材と両端の梁端部材に分けて、緊張材の連結部を現場打ちコンクリートとするフーチングと梁端部材とし、定着部をずらして配設することやPC鋼線を交わしてラップしながら配置することによって、大きな部材断面や異なる部材断面となる箇所を梁端部材とフーチングに設けて対応し、プレキャスト部材とする梁中間部材に定着具用の切欠きやPC鋼線を曲げ配線して互いにずらして交わして配置する箇所を一切設けず、同じ断面形状寸法及び長さで梁中間部材を形成し、該プレキャスト部材を形成する型枠の転用回数を多くしてコストダウンを図ると共に、部材を軽量化して建設現場への搬入や揚重等を容易にし、合理的で作業効率を向上させたPC基礎構造体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための具体的手段として、本発明に係る第1の発明は、建物ラーメン構造の基礎構造体であって、該基礎構造体は、少なくとも複数の現場打ちコンクリート製のフーチングとその間に配置されたコンクリート製の大梁とで連続的に形成され、前記大梁は、同じ部材幅で形成されたプレキャスト梁中間部材と両端の現場打ち梁端部材とからなり、前記フーチングと大梁とを貫通して緊張材が配設され緊張定着してプレストレスが付与され、前記基礎構造体の中間部において、少なくとも1箇所に緊張材の連結部が配置され、該連結部は、フーチングと部材幅が梁中間部材より大きく形成された梁端部材とからなり、連結部の平面において、フーチングの対向する両端面に定着部が位置をずらしてそれぞれ設けられ、一方から配設される緊張材がフーチングを貫通して片端面の定着部に定着されると共に、他端面の定着部から新たな緊張材が先に配置された緊張材とラップして、梁端部材内に曲げ配線して他方へ延伸して配設され、前記各梁中間部材は、断面形状寸法を同じとし、部材内の緊張材の配設が一直線で貫通のみとして形成されることを特徴とするPC基礎構造体を提供するものである。
【0013】
上記発明において、前記梁中間部材の長さは、スパンの1/2〜2/3の長さとすること;及び前記建物ラーメン構造は、上部構造と下部構造との間に免震装置が設置された免震建物構造とし、前記基礎構造体は、当該上部構造の最下階の構造体とする、ことを付加的な要件として含むものである。
【0014】
本発明に係る第2の発明は、建物ラーメン構造の基礎構造体の構築方法であって、
該基礎構造体を、少なくとも複数の現場打ちコンクリート製のフーチングとその間に配置されたコンクリート製の大梁とで連続的に形成し、前記大梁はプレキャスト梁中間部材と両端の現場打ち梁端部材とを同じ部材幅で形成し、前記フーチングと大梁とを貫通して緊張材を配設して緊張定着してプレストレスを付与させ、前記基礎構造体の中間部において、少なくとも1箇所に緊張材の連結部を配置し、該連結部をフーチングと部材幅を梁中間部材より大きくする梁端部材とで形成し、該フーチングの反対側に隣接する大梁を後構築部として設けて、後構築部以外の前記フーチングと大梁を先行構築して形成させ、緊張材を緊張定着してプレストレスを付与した後に、後構築部を構築して緊張材を緊張定着して、先行構築された基礎構造体と一体化させることを特徴とするPC基礎構造体の構築方法を提供するものである。
【0015】
上記第2の発明において、前記の後構築部を20m〜30m毎に設けること、を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るPC基礎構造体によれば、以下の効果を奏するものである。
1、基礎構造体において、梁間方向または桁行方向に適切な長さで緊張材の連結部を設ける必要に応じて、大梁をプレキャスト梁中間部材と両端の現場打ち梁端部材に分けて、同じ部材幅で梁端部材と梁中央部材を形成する大梁を一般部とし、部材幅を梁中間部材より大きくした梁端部材とフーチングを緊張材の連結部として形成し、連結部において、定着部の位置をずらして設置することやPC鋼線をラップしながら交わして配設することによって、大きな部材断面や異なる部材断面となる箇所が発生することに対して、大きな断面形状を有するフーチングを有効に利用して、これらの箇所を現場打ちで形成される梁端部材とフーチングに設けて対応し、緊張材のラップ配線や定着具を交わす位置の設定が簡単にでき、プレキャスト部材とする梁中間部材に定着部用の切欠きやPC鋼線を曲げ配線して互いにずらして交わすように配置する箇所を一切設けず、同じ断面形状寸法及び長さで梁中間部材を形成し、該プレキャスト部材を形成する型枠の転用回数を多くしてコストダウンを図ると共に、梁中間部材を軽量化して建設現場への搬入や揚重等を容易にし、合理的かつ作業効率を向上させることができる。
2、プレキャスト梁中間部材の長さは、スパンの1/2〜2/3とすることによって、より部材を合理的に統一して軽量化可能にすることが簡単にできる。
3、基礎構造体は、免震建物構造の上部構造の最下階の構造体とすることによって、地震入力値を小さくした上部構造によって、最適な部材断面寸法でプレキャスト中間梁部材を形成することができ、コンクリート部材で必要な剛性を確保した上で軽量化可能にして免震建物構造に最も相応しい上部構造が形成できる。
4、PC基礎構造体の構築方法において、後構築部を設けることによって、構築して形成されたPC基礎構造体は、プレストレスによる軸変形の影響を殆ど受けることなく、所定の構造性能が得られる。
また、後構築部は、20〜30m毎に設けることによって、緊張による軸変形を最小限に抑制されると共に、緊張材の長さによる緊張ロスを適切に抑制することができる。
なお、本願発明において、定着部とは、定着具及び緊張ジャッキ等を格納できるスーベスのことであり、プレキャスト梁中間部材とは、プレキャストコンクリート製とする梁中間部材であり、現場打ち梁端部材とは、現場打ちコンクリート製とする梁端部材である。
連結部とは、定着部と、緊張材のラップ区間と、緊張材の曲げ配線区間を含むものであり、緊張材の曲げ配線とは、一方から配設された緊張材を曲げて方向を変えて他方へ連続的に配設していくことであり、スパンとは、柱芯間の距離である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る免震建物構造における最下階に形成されたPC基礎構造体を示す一部の側面図である。
図2】同PC基礎構造体の平面配置図である。
図3図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
図4】本発明に係るPC基礎構造体の構築方法における上部構造と下部構造の最下部構造体の一部の第1工程を示す側面の説明図である。
図5】同構築方法の第2工程を示す側面の説明図である。
図6】同構築方法の第3工程を示す側面の説明図である。
図7】同構築方法の第4工程を示す側面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図示の実施の形態に係る具体例について図面を参照して説明する。まず、図1図3について説明する。
建物ラーメン構造について、例えば、図1に示したように、上部構造と下部構造との間に免震装置が設置された免震建物構造とし、上部構造の最下階の構造体は、PC基礎構造体1とする。
まず、下部構造として、地盤に所要間隔をもって打ち込まれた複数の杭2の頭部近傍に水平繋ぎ部材3が設けられると共に、各杭頭部に天端調整台4が形成され、該天端調整台4の上部に夫々免震装置5が取り付けられて、免震層が形成され、その上に上部構造が構築される。
【0019】
上部構造については、本願発明の要点となる最下階の構造体とするPC基礎構造体1についてのみ説明し、その最下階のPC基礎構造体1の上に柱と梁を構築して種々のラーメン構造を形成することができるので、その説明は省略する。
【0020】
図示のように、最下階のPC基礎構造体1は、所定のスパンをおいて複数の現場打ちコンクリート製のフーチング8とその間に配置されたコンクリート製の大梁6とで連続的に形成される。大梁6は、同じ部材幅で形成されるプレキャスト梁中間部材6aと両端の現場打ち梁端部材6bとからなり、フーチング8と大梁6とを貫通して緊張材11が配設され緊張定着してプレストレスが付与される。
なお、耐震構造の図示は省略するが、図示の免震装置5と下部構造を無くして、フーチング8の下に杭2を設けるだけで免震構造が耐震構造に変更される。耐震構造とする場合においても、本願発明のPC基礎構造体1の構成は同様に適用可能とする。
【0021】
緊張材11の配置について、通常では、梁間方向及び桁行方向において、ラーメン構造の外周の一端から他端まで中断せずに連続的に配置することができないため、外周の一端から配設された緊張材11とするPC鋼線を一旦途中で止めて緊張定着して、続いて新たなPC鋼線を配設して連結する必要がある。要するに、所定の長さ毎に連結部9を設ける必要がある。
図示にように、たとえば、基礎構造体1の外周右端のフーチング8に定着部12を2箇所設け、2本の緊張材11が定着部12から左側へ延伸して配置される。緊張材11は、複数のPC鋼撚り線からなるPCケーブルとすることが好ましい。
【0022】
定着部12には、緊張材11に所要の定着具を設ける。図示では、2本の緊張材11は右端のフーチング8から一直線で2スパンを渡って3番目のフーチング8を貫通して端面に設けられた定着部12まで配置される。引き続きとして平面において、同フーチング8の反対側の端面にて定着部22を2箇所設けて、そして右側の梁端部材6bの幅より位置を広げて、それぞれ緊張作業を可能にしてある。
定着部22から新たな緊張材21を先に配置された緊張材11とラップして配設し、左側の梁端部材6bへ延伸して、梁端部材6b内に曲げ配線して梁中間部材6aを貫通して他方へ延長して配置する。曲げ配線をするために、当該の梁端部材6bの部材幅は一般部の梁端部材6b及び梁中間部材6aより大きくしてある。
【0023】
平面において、フーチング8としては、両端面に定着部12と定着部22をそれぞれ設け、緊張材21の配線間隔を緊張材11より幅を広げてラップしながら配置するものと、緊張材11のみを一直線で貫通して、片端面に定着部12を設けるものとがある。また、梁端部材6bとしては、緊張材21を曲げ配線して平面間隔を変化させて配置する区間を設け、部材幅を梁中間部材6aより大きくしたものと、緊張材11を一直線で貫通して配置し、部材幅が梁中間部材6aと同じとしたものとが2種類ある。
本願発明では、両端面に定着部12と定着部22をそれぞれ設けたフーチング8と、部材内に曲げ配線して部材幅を梁中間部材6aより大きくした梁端部材6bとを合せて連結部9とする。
【0024】
要するに、緊張材11の配置には長さ的に制約があるために、一旦途中で中断して定着部12にて緊張定着して、つなぎ材として新な緊張材21を先に配置された緊張材11とラップしながら交わして配置すると共に、別な定着部22で緊張定着することになる。定着部22の間隔を広げて設けることによって緊張材21の間隔も広げて配置して、緊張材11とラップして交わすのである。その後、緊張材21の間隔を戻すように曲げ配線区間を設けて間隔を変化させて配設する。これらによって、フーチング部材8と梁端部材6bにおいては大きな部材断面や異なる部材断面となる箇所が発生する。
【0025】
例えば、図2に示すように、外周の左端から1番目から3番目のフーチング8の間に配置された梁端部材6bは、緊張材11が一直線で配設されているために、梁中間部材6aと同じ部材幅で形成されるが、3番目のフーチングの左側の梁端部材6bは、緊張材21の間隔を変化して曲げ配線区間を設けるために、幅を広くする必要となり、他の梁端部材6bと異なり、プレキャスト部材には不向きである。
また、通常では、フーチング8の部材断面は、梁間方向と桁行方向の大梁6(基礎梁)を連結すると共に、その上面に柱14を設置し、その下に杭2を設置して荷重を伝達する為に、大梁6(基礎梁)より大きくしてある。また、図2に示すように、フーチング8の平面位置によって、その大きさも異なる。
【0026】
そこで、本願発明では、フーチング8の部材断面が大きいという特徴を利用して、緊張材11、21のラップ区間と定着部12、22をフーチング8に設けるようにして、緊張材11、21を互いにずらして交わすために曲げ配線して間隔を広げて配置する区間を梁端部材6bに設けて対応することにし、各梁中間部材6aは、断面形状寸法及び長さを同じにし、部材内の緊張材11、21の平面配設が一直線で貫通のみとして配設して形成するようにしたのである。
つまり、役物によって形状寸法がまちまちとなる部材を現場打ちコンクリートで対応し、プレキャストコンクリート製とする部材形状寸法及び長さを同じにし、より部材の製作を合理的かつ経済的にしたのである。
ただし、図示の実施例として部材の平面において、一方の緊張材21を曲げて他方の緊張材11と互いに交わして配置しているが、この限りではなく、部材の側面においても同様な方法で配置することができる。
【0027】
構築される上部構造体の最下階のPC基礎構造体1は、図2に示したように、平面においては左右方向を梁間方向とし、前後方向を桁行方向とするが、左右のみならず前後にも同じように設置することになるが、前後方向(桁行方向)の連結部の図示は省略した。
また、図3に示すように、プレキャスト梁中間部材6aの上端に予め鉄筋15を突出させて設けておいて、現場打ちトップコンクリート(スラブ含む)と梁端部材6b及びフーチング8とを一体的に形成する。
図示は省略するが、プレキャスト梁中間部材6aの両端部から鉄筋を出して、現場打ち梁端部材6bに定着若しくは鉄筋同士を接続することで部材を連結して一体化することができる。また、プレキャスト梁中間部材6aに1次ケーブルをプレテンション方式で配設してプレストレスを導入させることができる。
【0028】
また、本願発明でいうプレキャスト梁中間部材6aと、トップコンクリートと形成された合成梁は、最終的に梁中間部材となる。各プレキャスト梁中間部材6aを同じ断面形状寸法とすれば、トップコンクリートの厚さが同じであるから、最終的に得られる梁中間部材も同じである。なお、符号16は各スパンに形成された大梁6間に取り付けられる小梁である。
PC基礎構造体1が形成された後に、フーチング8の上面に柱14が立設され、図示は省略するが、梁が柱間に形成され、上部のラーメン構造が順次に構築されて形成される。
【0029】
次に、図4図7に示すPC基礎構造体1の構築方法について説明する。
複数の免震装置5間において、例えば、隣接する三か所の免震装置5の間に、それぞれプレキャストコンクリート製の梁中間部材6aをサポート材7により所要高さで水平に且つ一直線上に支持させて設置する。
なお、梁中間部材6aの断面形状寸法および長さを同じにすることとし、その長さは、スパン(柱芯間距離)の1/2〜2/3の範囲とし、例えば、1/2程度として部材形状寸法の統一化および軽量化することが好ましい。
【0030】
梁中間部材6aの両端から所定の長さで鉄筋を出して、現場打ち梁端部材6bに定着若しくは現場打ち梁端部材6bの鉄筋と接続して部材を連結して一体化するものとする。なお、鉄筋の図示は省略とする。
この状態で、図5に示したように、各免震装置5の上にはフーチング8と、梁端部材6bおよび梁中間部材6aの上面にトップコンクリート(スラブ含む)10を現場打ちコンクリートを打設して一体的に形成する。
形成されたフーチング8と大梁6とに、緊張材11を貫通して配置して定着部12に緊張定着してプレストレスを付与して、PC基礎構造体1の一部が先行構築して形成される。
プレストレスによる軸変形を小さくするため、図示のように、1箇所に大梁6を後構築部13として設けておくことが望ましい。
【0031】
次に、図6に示すように、後構築部13を開けて、その次のフーチング8から、前記の構築方法と同じようにして次のPC基礎構造体1を連続して構築する。
【0032】
最後に、図7に示すように、後構築部13を前記と同じ手順で構築してPC基礎構造体1を完成する。
【0033】
このように構築して形成されたPC基礎構造体1は、プレストレスによる軸変形の影響を殆ど受けることなく、所定の構造性能が得られるようにした。
また、後構築部13は、緊張材11の長さによる緊張ロスを適度に抑制するために、20〜30m毎に設けることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る建物ラーメン構造のPC基礎構造体1及びその構築方法であって、該基礎構造体1は、少なくとも複数の現場打ちコンクリート製のフーチング8とその間に配置されたコンクリート製の大梁6とで連続的に形成され、前記大梁6は、同じ幅で形成されるプレキャスト梁中間部材6aと両端の現場打ち梁端部材6bとからなり、前記フーチング8と大梁6とを貫通して緊張材11、21が配設され緊張定着してプレストレスが付与され、前記PC基礎構造体1の中間部において、少なくとも1箇所に緊張材11、21の連結部9が形成され、該連結部9は、フーチング8と部材幅が梁中間部材6aより大きく形成される梁端部材6bとからなり、連結部9の平面において、フーチング8の対向する両端面に定着部12,22が位置をずらしてそれぞれ設けられ、一方から配設される緊張材11がフーチング8を貫通して片端面の定着部12に定着されると共に、他端面の定着部22から新たな緊張材21が先に配設された緊張材11とラップして、梁端部材6b内に曲げ配線して梁中間部材6aを貫通して他方へ延伸して配設され、前記各梁中間部材6aは、断面形状寸法を同じにし、部材内の緊張材11、21の配設が一直線で貫通のみとして形成されることによって、大きな部材断面や異なる部材断面となる箇所を現場打ちで形成される梁端部材6bとフーチング8に設けて対応し、プレキャスト部材とする各梁中間部材6aを同じ断面形状寸法及び長さで形成し、該プレキャスト部材を形成する型枠の転用回数を多くしてコストダウンを図ると共に、軽量化して建設現場への搬入や揚重等を容易にし、合理的かつ作業効率を向上させたPC基礎構造体1を形成することができる。
また、後構築部13を設けて構築する方法によって、軸変形量を最小限に抑制することが可能になり、形成されたPC基礎構造体1は、プレストレスによる軸変形の影響は殆ど受けることなく、所定の構造性能が得られる。
以上によって、この種建物ラーメン構造または免震建物構造に広く利用されることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 PC基礎構造体
2 杭
3 水平繋ぎ部材
4 天端調整台
5 免震装置
6 大梁
6a 梁中間部材
6b 梁端部材
7 サポート材
8 フーチング
9 連結部
10 トップコンクリート(スラブ)
11、21 緊張材
12、22 定着部
13 後構築部
14 柱
15 鉄筋
16 小梁
【要約】      (修正有)
【課題】プレキャスト部材を形成する型枠の転用回数を多くしてコストダウンを図ると共に、部材を軽量化して建設現場への搬入や揚重等を容易にし、合理的かつ作業効率を向上させたPC基礎構造体を提供する。
【解決手段】基礎構造体は、複数の現場打ちコンクリート製のフーチング8とその間に配置されたコンクリート製の大梁6とで連続的に形成され、大梁6は、同じ部材幅で形成されるプレキャスト梁中間部材6aと両端の現場打ち梁端部材6bとからなり、フーチングと大梁とを貫通して緊張材11,21が配設され緊張定着してプレストレスが付与され、基礎構造体の中間部において、連結部9が配置され、連結部は、フーチングと部材幅が梁中間部材より大きく形成される梁端部材とからなり、連結部の平面において、フーチングの対向する両端面に定着部12,22がそれぞれ設けられ、一方から配設される緊張材がフーチングを貫通して片端面の定着部に定着される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7