【実施例】
【0027】
以下の原料と
図4に示した製造装置30を用いて表1に示す
参考例1、実施例2、実施例3及び実施例4を製造した。
参考例1は、前記第1実施形態の微生物担体10と同様、複数の突起として十字形を構成する4個の突起12の形状が四角形からなって、表面に凹凸(メルトフラクチャー)を有しない例である。実施例2は、前記第3実施形態の微生物担体10Bと同様、複数の突起として十字形を構成する4個の突起12bの形状が四角形からなって、表面に凹凸(メルトフラクチャー)13bを有する例である。実施例3は、複数の突起として3個の突起を有し、かつ突起の形状が四角形からなって、表面に凹凸(メルトフラクチャー)を有する例である。実施例4は、複数の突起として5個の突起を有し、かつ突起の形状が四角形からなって、表面に凹凸(メルトフラクチャー)を有する例である。なお、
参考例1、実施例2、実施例3及び実施例4の微生物担体の長さ(ストランドの切断長さ)は何れも3mmである。
【0028】
・ポリオレフィン系樹脂:ポリエチレン樹脂、品名;ニポロンハード5700、MFR1.0(g/10min)、東ソー社製
・無機粉末:炭酸カルシウム、品名;BF300、備北粉化工業社製
・アクリル樹脂:品名;アクリペットVH−001、三菱レイヨン社製
ポリオレフィン系樹脂/無機粉末/アクリル樹脂=45質量部/50質量部/5質量部
【0029】
前記押出機31は、品名;二軸押出機KTX30、神戸製鋼社製である。押出機の条件は、ダイが
参考例1、実施例2〜4の何れもストランド押出用の穴×4つ、バレル設定温度が
参考例1では220℃、実施例2〜4では180℃、吐出量が
参考例1、実施例2〜4の何れも60kg/時、押し出し速度が
参考例1、実施例2〜4の何れも10m/分、スクリュー回転数が
参考例1、実施例2〜4の何れも400rpm、引き取り速度が
参考例1、実施例2〜4の何れも11m/分である。なお、ダイのストランド押出用の穴の寸法は、突起を十字形に4個設ける
参考例1と実施例2用のダイについては、
図1のaに対応する寸法が6mm、cに対応する寸法が2mm、dに対応する寸法が2mmである。また、突起の数が3個の実施例3用のダイ及び突起の数が4個の実施例4用のダイについては、
図1とは突起の数が相違するが、aに相当する部分の寸法が6mm、cに相当する部分の寸法が2mm、dに相当する部分の寸法が2mmである。
【0030】
図5は、前記ストランドカッターで切断する前の
参考例1の押出成形体100と実施例2の押出成形体100Aについて側部を、スケール110と共に撮影した写真である。スケール110の目盛りの値「1」は1cm(10mm)であり、「2」は2cm(20mm)である。
参考例1の押出成形体100は、表面に凹凸(メルトフラクチャー)が無く、一方、実施例2の押出成形体100Aは、表面に凹凸を有する。押出成形体100及び110は、その後に前記ストランドカッターで長さ3mmに切断されて
参考例1の微生物担体と実施例2の微生物担体となる。
【0031】
また、比較例1として、外径10mm、内径8mmのポリエチレン製中空パイプを長さ10mmに切断して微生物担体を形成した。
比較例2、3として、
参考例1、実施例2〜4と同一の配合からなる原料及び同一の製造装置を用い、以下に示す押出機の条件で微生物担体を製造した。比較例2は、表面に凹凸(メルトフラクチャー)が無い円柱状のものであり、比較例3は、表面に凹凸(メルトフラクチャー)を有する円柱状のものである。
【0032】
比較例2、3に対する押出機の条件は、ダイが比較例2、3の何れも直径3mm×4つ、バレル設定温度が比較例2では220℃、比較例3では180℃、吐出量が比較例2、3の何れも60kg/時、押し出し速度が比較例2、3の何れも9m/分、スクリュー回転数が比較例2、3の何れも400rpm、引き取り速度が比較例2、3の何れも9m/分である。また、比較例2及び比較例3の微生物担体の長さ(ストランドカッターによる切断長さ)は、何れも3mmである。
【0033】
【表1】
【0034】
参考例1、実施例2〜4と比較例1〜3の微生物担体に対して、真比重(JIS Z 8807準拠)、かさ比重(JIS K 7365準拠)、体積充填率(%)、沈降性(mm/s)、汚泥付着減少率(%)を測定した。なお、比較例1は、沈降しなかったため、沈降性については測定できなかった。測定結果を表1に示す。
【0035】
体積充填率は、[体積充填率=かさ比重/真比重]の式で計算した。体積充填率が高い(大きい)ほど、排水(処理用液体)と担体との接触面積が大きくなり、微生物担体に付着した微生物による処理能力を高くできる。
【0036】
沈降性は、200mm×200mm×350mmの水槽を用い、その水槽内に底から300mmの位置まで水を投入し、微生物担体を水槽表面で水に漬けて微生物担体の表面に水を付着させた後、水面の位置(水槽の底から300mmの位置)で微生物担体を静かに放して水槽の底に到達するまでの時間をストップウオッチで測定し、[(底までの距離(300mm))/(底に到達するまでの時間(秒))]の式で沈降速度(mm/秒)を計算した。沈降速度が大であるほど沈降性が高く、嫌気性微生物による処理に好適であると。なお、沈降速度は、n=5で測定して平均値を算出した。
【0037】
汚泥付着減少率は、次のようにして測定した。
・初期付着汚泥重量の測定
園芸用土壌2kgに水1リットルを加え、よく混ぜて粘りのある汚泥を作成した。次に重量測定済みの容器にサンプル(微生物担体)を所定量収容して、[容器+サンプル]の重量を測定し、得られた[容器+サンプル]の重量から容器の重量を差し引いてサンプル重量(初期サンプル重量)を算出する。次に、前記初期サンプル重量のサンプル(微生物担体)が収容されている容器に、サンプル(微生物担体)が埋まるように過剰の汚泥を投入し、汚泥とサンプル(微生物担体)を撹拌してサンプル(微生物担体)表面に汚泥を絡ませる。容器から汚泥とサンプル(微生物担体)をふるい(JIS Z8801 規格;平織金網 目開き2mm)上に落とし、1分間ふるいにかけてサンプル(微生物担体)に絡まって(付着して)いない汚泥をふるい落とす。ふるい上に残ったサンプル(微生物担体)を熱風オーブン式乾燥機(品名;DKM600、YAMATO製)で80℃×10時間乾燥させた後、乾燥後のサンプル重量(乾燥後サンプル重量)を測定する。乾燥後サンプル重量から初期サンプル重量を減算して初期付着汚泥重量を算出する。初期付着汚泥重量は、多いほうが良く、9g以上であれば良い。
・撹拌後付着汚泥重量の測定
容積1リットルの容器に、初期付着汚泥重量の測定で得られた乾燥後サンプル(微生物担体)を投入し、スターラー(条件;300rpm)で1分間撹拌させた後、容器内の収容物(汚泥とサンプル(微生物担体))を、ふるい(JIS Z8801 規格;平織金網 目開き2mm)上に落とし、1分間ふるいにかけてサンプル(微生物担体)から脱落した汚泥をふるい落とす。ふるい上に残ったサンプル(微生物担体)を熱風オーブン式乾燥機(品名;DKM600、YAMATO製)で80℃×10時間乾燥させた後、乾燥後のサンプル重量(撹拌後サンプル重量)を測定する。撹拌後サンプル重量から初期サンプル重量を減算して撹拌後付着汚泥重量を算出する。撹拌後付着汚泥重量は、多いほうが良く、7g以上であれば良い。
また、初期付着汚泥重量から撹拌後付着汚泥重量を減算して脱落汚泥重量を算出し、さらに[脱落汚泥重量/初期付着汚泥重量×100]の式によって汚泥付着減少率を算出する。汚泥付着減少率は、少ないほうが良いが、36%以下であれば良い。
【0038】
表1の
参考例1、実施例2〜4及び比較例1〜3の測定結果について以下に示す。
参考例1は、微生物担体の断面形状が4個の複数突起(=十字形)を有するため、円柱の比較例2と比べて初期付着汚泥重量が大であり、嫌気性微生物による処理性能が良好となる。
【0039】
実施例2は、
参考例1と同様に微生物担体の断面形状が4個の複数突起(十字形)を有するため、円柱の比較例2と比べて初期付着汚泥重量が大であり、さらに、実施例2では表面に凹凸(メルトフラクチャー)を有するため、凹凸(メルトフラクチャー)の無い
参考例1よりも、初期付着汚泥重量が大であって、かつ撹拌による汚泥付着減少率が小さく、嫌気性微生物による処理性能がより良好なものである。また、実施例2と比較例3を比較すると、両者は何れも表面に凹凸(メルトフラクチャー)を有するが、4個の複数突起(十字形)を有する実施例2は、円柱形の比較例3よりも、初期付着汚泥重量が大であって、かつ撹拌による汚泥付着減少率が小さく、嫌気性微生物による処理性能がより良好なものである。
【0040】
実施例3は、微生物担体の断面形状が3個の複数突起を有するものであり、実施例2と比べて初期付着汚泥重量が大であるが、撹拌による汚泥付着減少率が大きく、実施例2と比べて嫌気性微生物による処理性能が劣るものである。しかし、実施例3は、比較例3よりは嫌気性微生物による処理性能が良好なものである。
【0041】
実施例4は、微生物担体の断面形状が5個の複数突起を有するものであり、実施例2と比べて初期付着汚泥重量が小であって、撹拌による汚泥付着減少率が若干大きく、実施例2と比べて嫌気性微生物による処理性能が劣るものである。しかし、比較例3よりは嫌気性微生物による処理性能が良好なものである。
【0042】
比較例1は、中空円柱形状のため、体積充填率が小さく、しかも真比重が1より小で沈降性が低く、浮上するため、嫌気性微生物による処理には不適である。
比較例2は、体積充填率は大であるが、円柱形のため、初期付着汚泥量が少なくなっている。
比較例3は、表面の凹凸(メルトフラクチャー)により初期付着汚泥量は多いが、外形が円柱形のため、撹拌による汚泥付着減少率が大きく、嫌気性微生物による処理性能に劣ることになる。
【0043】
このように、本発明の微生物担体は、円柱形状の微生物担体に比べて嫌気性微生物による良好な汚水処理性能を得ることが可能となる。