特許第6685600号(P6685600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685600
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】蚊防除用加熱蒸散剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/06 20060101AFI20200413BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20200413BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20200413BHJP
   A01N 25/20 20060101ALI20200413BHJP
   A01N 25/08 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   A01N53/06 110
   A01P7/04
   A01N25/18 103A
   A01N25/20
   A01N25/08
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-106860(P2016-106860)
(22)【出願日】2016年5月28日
(65)【公開番号】特開2017-210463(P2017-210463A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香谷 康幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 憲忠
(72)【発明者】
【氏名】南手 良裕
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−066146(JP,A)
【文献】 特開平02−225442(JP,A)
【文献】 特開平02−233644(JP,A)
【文献】 特開2001−316212(JP,A)
【文献】 特開2010−168360(JP,A)
【文献】 特開昭56−097251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 53/00
A01N 25/00
A01P 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[化1]
【化1】
[式中、Rがメチル基を表わす。]で示されるエステル化合物を有効成分として含有する蚊防除用加熱蒸散剤。
【請求項2】
請求項1に記載の蚊防除用加熱蒸散剤を用いた蚊防除方法。
【請求項3】
一般式[化1]
【化1】
[式中、Rがメチル基を表わす。]で示されるエステル化合物を有効成分として含有する蚊取り線香。
【請求項4】
請求項3に記載の蚊取り線香を用いた蚊防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱蒸散性を有するピレスロイド系化合物の蚊防除剤への用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、蚊取線香の有効成分としてアレスリンやプラレトリンなどのピレスロイド系殺虫剤が使用されている(非特許文献1参照)。しかしながら、これらの蚊に対する防除効力は必ずしも満足のいくものではない。特許文献1にはフルオロベンジルエステル、その製造法およびこれを有効成分とする殺虫剤組成物が記載されている。しかしながら、特許文献1では蚊に対する十分な殺虫活性評価がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−66146号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「続医薬品の開発 第18巻 農薬の開発III」、廣川書店、1993年、p.493
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加熱蒸散性を有する新規なピレスロイド系蚊防除成分を用いた蚊防除用加熱蒸散剤及びこれを用いた蚊防除方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、下記一般式[化1]で示されるエステル化合物が加熱蒸散性に基づく蚊に対する優れた防除効力を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下の発明に係るものである。
(1)一般式[化1]
【化1】
[式中、Rがメチル基を表わす。]で示されるエステル化合物を有効成分として含有する蚊防除用加熱蒸散剤。
(2)(1)に記載の蚊防除用加熱蒸散剤を用いた蚊防除方法。
(3)一般式[化1]
【化1】
[式中、Rがメチル基を表わす。]で示されるエステル化合物を有効成分として含有する蚊取り線香。
(4)(3)に記載の蚊取り線香を用いた蚊防除方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明化合物は加熱蒸散性を持ち、さらに蚊に対して優れた防除効力を有することから、蚊防除の加熱蒸散剤の有効成分として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明化合物には、シクロプロパン環上の1位および3位に存在する2個の不斉炭素原子に由来する光学異性体、並びに、シクロプロパン環3位の置換基に存在する1’位の二重結合に由来する異性体が存在するが、本発明には有害生物防除活性を有する各異性体および任意の比率の異性体混合物が含まれる。
【0010】
本発明化合物の形態としては以下のものが含まれる。
一般式[化2]
【化2】
で示される本発明化合物において、
シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置である化合物;
シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置である化合物;
シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置であり、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がシス配置である化合物;
シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置であり、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置である化合物;
シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置であり、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置であるものに富む化合物;
シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置であり、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置であるものが80%以上である化合物;
シクロプロパン環1位の絶対立体配置がR配置であり、シクロプロパン環1位の置換基とシクロプロパン環3位の置換基との相対立体配置がトランス配置であるものが90%以上である化合物。
【0011】
次に本発明化合物の製造法について説明する。
本発明化合物は、通常のエステル化合物を製造する方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば以下に示す方法により製造することができる。
(製造法1)
式[化3]
【化3】
で示されるアルコール化合物と、
式[化4]
【化4】
[式中、Rはメチル基または塩素原子を表わす。]で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体とを反応させることにより本発明化合物を得る。
【0012】
該反応性誘導体としては、[化4]で示されるカルボン酸化合物の酸ハロゲン化物、該カルボン酸化合物の酸無水物および該カルボン酸化合物のエステル等が挙げられる。該酸ハロゲン化物としては、酸クロライド化合物が挙げられ、エステルとしてはメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
該反応は、通常、縮合剤又は塩基の存在下、溶媒中で行なわれる。
縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロライドが挙げられ、また、
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。
溶媒としては、例えばトルエン及びヘキサン等の炭化水素、テトラヒドロフラン等のエ−テル、エチルアセテートなどのエステル、並びに、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0013】
該反応において、式[化3]で示されるアルコ−ル化合物と、式[化4]で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体の使用モル比は任意に設定できるが、好ましくは、等モル又はそれに近い比である。
縮合剤又は塩基は、式[化3]で示されるアルコ−ル化合物1モルに対して、通常は0.25モルから過剰量まで任意の割合で使用することができ、好ましくは0.5モル〜2モルである。これらの縮合剤又は塩基は、式[化4]で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体の種類により適宜選択される。
反応終了後の反応混合物は、これを濾過して濾液を濃縮する、又は、これを水に注加した後に有機溶媒抽出、濃縮する等の通常の後処理操作を施すことにより、本発明化合物を得ることができる。得られた本発明化合物はクロマトグラフィ−、蒸留等の操作によって精製することができる。
【0014】
式[化3]で示されるアルコール化合物は特開昭64−66146号公報に記載の公知化合物であり、該文献に記載の方法で製造することができる。
一方、一般式[化4]で示されるカルボン酸化合物又はその反応性誘導体は公知化合物であり市販品を購入し使用することができる。
【0015】
本発明の蚊防除用加熱蒸散剤として、例えば、蚊取線香、蚊取マット、蚊取リキッドや燻煙剤のような加熱蒸散剤などが挙げられる。
【0016】
製剤化の方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
(1)本発明化合物を、固体担体、液体担体等と混合し、必要に応じて界面活性剤その他の製剤用補助剤を添加・加工する方法。
(2)本発明化合物を、有効成分を含有していない基材に含浸する方法。
(3)本発明化合物及び基材を混合した後に成形加工する方法。
これらの製剤には、製剤形態にもよるが、通常、本発明化合物を重量比で0.001〜98%含有する。
【0017】
製剤化の際に用いられる固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、活性炭、炭酸カルシウム、シリカ等)等の微粉末及び粒状物、常温で固体の物質(2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン、ナフタリン、p−ジクロロベンゼン、樟脳、アダマンタン等)、並びに羊毛、絹、綿、麻、パルプ、合成樹脂(例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン;アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレエート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、発泡ポリウレタン、発泡ポリプロピレン、発泡エチレン等の多孔質樹脂)、ガラス、金属、セラミック等の1種または2種以上からなるフェルト、繊維、布、編物、シート、紙、糸、発泡体、多孔質体及びマルチフィラメントが挙げられる。
【0018】
液体担体としては、例えば芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−ピロリドン等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
【0019】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類及び糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0020】
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤及び安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)、ポリアクリル酸等、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、及びBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。更に、必要に応じて着色剤や香料等が適宜配合されても構わない。
【0021】
蚊取線香の基材としては、例えば木粉、除虫菊抽出粕粉等の植物性粉末とタブ粉、澱粉、カルボキシメチルセルロース、グルテン等の結合剤との混合物が挙げられる。
蚊取マットの基材としては、例えばコットンリンターを板状に固めたもの、及びコットンリンターとパルプとの混合物のフィリブルを板状に固めたものが挙げられる。
自己燃焼型燻煙剤の基材としては、例えば、硝酸塩、亜硝酸塩、グアニジン塩、塩素酸カリウム、ニトロセルロース、エチルセルロース、木粉等の燃焼発熱剤、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩の熱分解刺激剤、硝酸カリウム等の酸素供給剤、メラミン、小麦デンプン等の支燃剤、珪藻土等の増量剤及び合成糊料等の結合剤が挙げられる。
【0022】
化学反応型燻煙剤の基材としては、例えば、アルカリ金属の硫化物、多硫化物、水硫化物、酸化カルシウム等の発熱剤、炭化鉄、活性白土等の触媒剤、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、ポリスチレン、ポリウレタン等の有機発泡剤、及び、天然繊維片、合成繊維片等の充填剤が挙げられる。
【0023】
樹脂蒸散剤等の基材に用いられる樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン−ビニルエステル共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体;エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−ビニルカルボン酸共重合体;ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリブタジエン、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体、スチレン−共役ジエンブロック共重合体水素添加物等のスチレン系エラストマー;フッ素樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル酸樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリレート、ヒドロキシ安息香酸ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン等が挙げられ、これらの基材は、単独で用いても2種以上の混合物として用いても良く、これらの基材には必要によりフタル酸エステル類(フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル等)、アジピン酸エステル類、ステアリン酸等の可塑剤が添加されていてもよい。樹脂蒸散剤は、本発明化合物を上記基材中に混練した後、射出成型、押出成型、プレス成型等により成型することにより得ることができる。得られた樹脂製剤は、必要により更に成型、裁断等の工程を経て、板状、フィルム状、テープ状、網状、ひも状等の形状に加工することもできる。これらの樹脂製剤は、例えば、非加熱蒸散剤、動物用首輪、動物用イヤータッグ、シート製剤、誘引テープ、誘引紐、園芸用支柱として加工される。
【0024】
本発明化合物は他の殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、忌避剤、共力剤、肥料、土壌改良材と混用または併用して用いることもできる。
【0025】
かかる殺虫剤、殺ダニ剤の有効成分としては、例えば、
[1]ピレスロイド系化合物
ピレトリン(pyrethrins)、アレスリン(allethrin)、プラレトリン(prallethrin)、フラメトリン(furamethrin)、レスメトリン(resmethrin)、テトラメトリン(tetramethrin)、イミプロトリン(imiprothrin)、エンペントリン(empenthrin)、トランスフルトリン(transfluthrin)、メトフルトリン(metofluthrin)、プロフルトリン(profluthrin)、フェノトリン(phenothrin)、シフェノトリン(cyphenothrin)、ペルメトリン(permethrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータ−シフルトリン(beta−cyfluthrin)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、ビフェントリン(bifenthrin)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、フルメトリン(flumethrin)、アクリナトリン(acrinathrin)、トラロメトリン(tralomethrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、ラムダシハロトリン(lambda−cyhalothrin)、テフルトリン(tefluthrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルバリネート(fluvalinate)、エトフェンプロックス(etofenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、モンフルオロトリン(momfluorothrin)、ジメフルトリン(dimefluthrin)等;
[2]有機リン系化合物
アセフェート(acephate)、ブタチオホス(butathiofos)、ダイアジノン(diazinon)、ジクロルボス(dichlorvos:DDVP)、ジメトエート(dimethoate)、フェンチオン(fenthion:MPP)、フェニトロチオン(fenitrothion:MEP)、マラチオン(malathion)、ピリダフェンチオン(pyridafenthion)、プロパホス(propaphos)、トリクロルホン(trichlorphon:DEP)等;
[3]カーバメート系化合物
カルバリル(carbary1)、カルボフラン(carbofuran)、フェノブカルブ(fenobucarb)、イソプロカルブ(isoprocarb:MIPC)、メソミル(methomyl)、NAC、プロポクスル(propoxur:PHC)等;
[4]ネライストキシン系化合物
カルタップ(cartap)、ベンスルタップ(bensu1tap)等;
[5]ネオニコチノイド系化合物
イミダクロプリド(imidac1oprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、アセタミプリド(acetamiprid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、チアクロプリド(thiacloprid)、ジノテフラン(dinotefuran)、クロチアニジン(clothianidin)等;
[6]ベンゾイル尿素系化合物
クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、ビストリフルロン(bistrifluron)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、トリフルムロン(triflumuron)等;
[7]フェニルピラゾール系化合物
フィプロニル(fiproni1)、ピリプロール(pyriprole)、ピラフルプロール(pyrafluprole)等;
[8]ヒドラジン系化合物
クロマフェノジド(chromafenozide)、ハロフェノジド(halofenozide)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)等;
[9]天然系殺虫剤
マシン油(machine oil)、硫酸ニコチン(nicotine−sulfate);
[10]その他の殺虫剤
アベルメクチン(avermectin−B)、ブプロフェジン(buprofezin)、クロルフェナピル(chlorphenapyr)、ハイドロプレン(hydroprene)、メトプレン(methoprene)、インドキサカルブ(indoxacarb)、メトキサジアゾン(metoxadiazone)、ミルベマイシンA(milbemycin−A)、ピリダリル(pyridalyl)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、スピノサッド(spinosad)、スルフラミド(sulfluramid)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)、フルベンジアミド(flubendiamide)、シフルメトフェン(cyflumetofen)、臭化メチル(Methyl bromide)、オレイン酸カリウム(Potassium oleate)等が挙げられる。
【0026】
忌避剤の有効成分としては、例えばN,N−ジエチル−m−トルアミド、リモネン、リナロール、シトロネラール、メントール、メントン、ヒノキチオール、ゲラニオール、p−メンタン−3,8−ジオール、ユーカリプトール、カラン−3,4−ジオール、IR−3535、MGK−R−326、MGK−R−874、KBR−3023等が挙げられる。
【0027】
共力剤の有効成分としては、例えば5−〔2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシメチル〕−6−プロピル−1,3−ベンゾジオキソール、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、オクタクロロジプロピルエーテル、チオシアノ酢酸イソボルニル、N−(2−エチルへキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0028】
本発明の加熱蒸散剤が効力を有する蚊としては、アカイエカ、コガタアカイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のヤブカ類、シナハマダラカ等のハマダラカ類、ユスリカ類等が挙げられる。
【0029】
本発明の蚊の防除方法は、本発明化合物の有効量を、通常本発明の有害生物防除剤の形態にて、蚊又は蚊の生息場所に施用することにより行われる。
本発明の蚊防除剤の施用方法としては、蚊の生息場所で、加熱により有効成分を揮散させる方法が挙げられる。
この場合、本発明化合物の施用量、施用濃度はいずれも本発明の蚊防除剤の形態、施用時期、施用場所、施用方法、蚊の種類、被害状況等に応じて適宜定めることができる。
【0030】
本発明化合物を蚊防除用として用いる場合は、その施用量は空間に適用するときは、本発明化合物の量として通常0.001〜100mg/m3であり、平面に適用するときは0.001〜100mg/m2である。蚊取線香、蚊取マット等はその製剤形態に応じて加熱により有効成分を揮散させて施用する。
本発明の蚊防除剤を蚊防除用として施用する空間としては、例えば、リビングルーム、食堂、寝室、和浴場等が挙げられ、さらに野外の開放空間で施用することもできる。
【実施例】
【0031】
以下、製造例、製剤例及び効果試験例等により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0032】
まず、本発明化合物の製造例を示す。
製造例1
4−エチニル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール(100mg,0.49mmol)及び(1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸(124mg,0.74mmol)のクロロホルム溶液(5mL)に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド ハイドロクロライド(141mg、0.74mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(5mg)を加えた。室温で時間攪拌した後、反応液に水を注加し、これを酢酸エチルで抽出した。該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式[化5]
【化5】

で示される4−エチニル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル (1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物Aと記す。)134mgを得た。
【0033】
無色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm):1.13(s, 3H)、1.27(s, 3H)、1.38(d,1H)、1.69(s,3H)、1.70(s,3H)、2.07(m,1H)、3.66(s,1H)、4.87(d,1H)、5.22(m,2H)
【0034】
製造例2
4−エチニル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジルアルコール(55mg,0.27mmol)のテトラヒドロフラン溶液(2mL)にピリジン(106mg,1.35mmol)、(1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロ−1−エテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸クロリド(215mg,0.36mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(4mg)を順次加えた。室温で18時間攪拌した後、反応液に水を注加し、これを酢酸エチルで抽出した。該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧条件下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式[化6]
【化6】

で示される4−エチニル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル (1R)−トランス−3−(2,2−ジクロロ−1−エテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、本発明化合物Bと記す。)64mgを得た。
【0035】
無色液体:1H−NMR(CDCl3,TMS)δ(ppm): 1.19 (s, 3H)、1.31 (s, 3H)、1.62(d,1H)、2.25(m,1H)、3.67(s,1H)、5.23(m,2H)、5.59(d,1H)
【0036】
次に、製剤例を示す。なお、部は質量部を示す。
【0037】
製剤例1
本発明化合物A及びB0.3g及びBHT0.5gを、蚊取線香用基材(除虫菊抽出粕粉、木粉、タブ粉、及び澱粉を混合したもの) 99.2gに均一に攪拌混合した後、着色剤としてマラカイトグリーンを含む水 100mLを加え、十分混練したものを成型乾燥し、蚊取線香を得る。
【0038】
製剤例2
本発明化合物A及びBの各々0.8g、ピペロニルブトキシド 0.4g、及び染料に脱臭灯油を加えて溶解し、全部で10mLとする。この溶液 0.5mLを22mm×35mm、厚さ2.8mmの蚊取マット用基材(コットンリンターとパルプの混合物のフィリブルを板状に固めたもの)に均一に含浸させて、蚊取マット剤を得る。
【0039】
製剤例3
本発明化合物A及びBの各々0.7部及びBHT0.3部を、界面活性剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)50部と精製水49部に溶解して得られる液剤をポリエステル製容器に入れ、上部をヒーターで加熱できるようにした吸液芯(無機粉体を焼成したもの)を挿入することにより、加熱蒸散装置に用いる水性蚊取リキッド剤を得る。
【0040】
製剤例4
本発明化合物A及びBの各々100mgを適量のアセトンに溶解し、4cm×4cm、厚さ1.2cmの多孔セラミック板に含浸させて、加熱燻煙剤を得る。
【0041】
次に、本発明化合物が蚊防除剤の有効成分として有効であることを試験例として示す。
【0042】
効果試験例1(アカイエカに対する基礎殺虫活性試験)
直径28mm、内高13mm、底面積6.15cmであるシャーレに本発明化合物である[化5]を0.1mg含む 0.2%アセトン溶液0.05mLを滴下し、底面に均一になるよう拡げた後、2連球でアセトンを除去する。各試料が底面に保持されたシャーレに、アカイエカの雌3匹を入れ、穴あきフィルムで上側をカバーした後、1分毎にノックダウン数を記録し、KT50(50%ノックダウンする時間)と24時間後の致死率を測定しかつ記録した。ノックダウン率につき所定以上の数値を示す試料については、前記0.2%アセトン溶液に更にアセトンを加えて10倍に希釈し、0.02%アセトン溶液とし、前記の各器具(シャーレ)、試験方法を順次繰り返した。
また、比較対照として下記式[化7]
【化7】
で示される4−アセトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル (1R)−トランス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(特開昭64−66146号公報に記載の化合物。以下、比較化合物Cと記す。)、下記式[化8]
【化8】
4−エチニル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル (1R)−トランス−3−(2−フルオロ−1−エテニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(特開昭64−66146号公報に記載の化合物。以下、比較化合物Dと記す。)およびアレスリン:(RS)−2−メチル−3−(2−プロペニル)−シクロペント−2−エン−4−オン−1−イル (1RS)−トランス、シス−3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート(以下、比較化合物Eと記す。)を用い、同様に試験を行った。
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
試験の結果、本発明化合物A及び本発明化合物Bは、比較化合物C、比較化合物D及び比較化合物E(アレスリン)と比較して、蚊に対して高いノックダウン効果及び致死効果を示すことが分かった。
【0045】
効果試験例2(蚊取線香による殺虫活性試験)
3m立方の小部屋内にネッタイシマカ成虫約100匹を放ち、そこへ製剤例1によって得られた本発明化合物A及び本発明化合物Bの蚊取線香0.1gの両端に点火したものを入れ、1分毎にノックダウン数を記録し、KT50(50%ノックダウンする時間)を測定しかつ記録した。
また、比較対照として比較化合物C、比較化合物D及び比較化合物E(アレスリン)を用い、同様に試験を行った。
結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
試験の結果、本発明化合物A及び本発明化合物Bを有効成分として含有する蚊取線香は比較化合物C、比較化合物D及び比較化合物E(アレスリン)を有効成分とするものと比較して、高いノックダウン効果を示すことが分かった。
【0048】
効果試験例3(チャバネゴキブリに対する殺虫活性試験)
本発明化合物A、比較化合物C及び比較化合物Dの所定濃度(表3参照)の油剤(ネオチオゾール)を調製した。ガラス容器にチャバネゴキブリの雄10匹を入れて金網で蓋をし、直径40cm、高さ45cmであるガラス円筒容器の底面に設置した。該油剤0.3mlをガラス円筒容器の上方の小孔よりスプレーガン(圧力1.5×10Pa)で散布した。その10分後までの時間経過に伴うノックダウン数を記録し、KT50(50%ノックダウンする時間)を測定しかつ記録した。
その結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
試験の結果、本発明化合物Aはチャバネゴキブリに対して比較化合物C及び比較化合物Dとほぼ同等のノックダウン活性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明化合物は蚊に対する優れた防除効力を有することから、蚊防除用加熱蒸散剤の有効成分として有用である。