(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685616
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】炭素繊維複合材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20200413BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20200413BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20200413BHJP
B29C 43/20 20060101ALI20200413BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20200413BHJP
B29C 70/22 20060101ALI20200413BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20200413BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20200413BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20200413BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20200413BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
B29C43/34
B32B5/28 A
B32B3/30
B29C43/20
B29C59/02 A
B29C70/22
B29C70/42
B29K101:10
B29K105:04
B29K105:08
B29L9:00
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-217108(P2018-217108)
(22)【出願日】2018年11月20日
(62)【分割の表示】特願2014-105477(P2014-105477)の分割
【原出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2019-43143(P2019-43143A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】大藪 淳
【審査官】
▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−096482(JP,A)
【文献】
特開2008−254209(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/052243(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/010106(WO,A1)
【文献】
特開平02−029307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00 − 43/58
B29C 59/00 − 59/18
B29C 70/00 − 70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸と横糸で構成される織り方からなる炭素繊維織物に熱硬化性樹脂が含浸した炭素繊維プリプレグの複数枚と、連続気泡構造の発泡体からなる多孔質材に熱硬化性樹脂が含浸した多孔質プリプレグの少なくとも1枚が積層されて加熱、加圧により、前記炭素繊維織物及び前記多孔質材に含浸した前記熱硬化性樹脂が硬化して一体化された炭素繊維複合材であって、
前記多孔質プリプレグが前記炭素繊維プリプレグ間に配置されて前記炭素繊維複合材の表面が前記炭素繊維プリプレグで構成され、
前記炭素繊維複合材の少なくとも一側の表面には、前記一体化の加熱、加圧で形成された凹部と凸部の何れか一方又は両方が賦形され、
前記凹部と凸部に対応して、前記多孔質プリプレグの厚みが減少又は増大し、前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグが一体化すると共に形状が固定されていることを特徴とする炭素繊維複合材。
【請求項2】
前記凹部及び凸部の反対側の表面は凹凸の無い平面からなることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維複合材。
【請求項3】
前記複数の炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグは平面視同一形状からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素繊維複合材。
【請求項4】
前記多孔質プリプレグは、複数枚重なって前記炭素繊維プリプレグ間に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の炭素繊維複合材。
【請求項5】
前記炭素繊維複合材の一側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数と、他側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数が等しいことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の炭素繊維複合材。
【請求項6】
前記炭素繊維複合材の一側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数と、他側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数が異なることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の炭素繊維複合材。
【請求項7】
炭素繊維プリプレグ間に多孔質プリプレグが配置された炭素繊維複合材の製造方法であって、
前記炭素繊維プリプレグは、縦糸と横糸で構成される織り方からなる炭素繊維織物に熱硬化性樹脂を含浸させたものからなり、
前記多孔質プリプレグは、連続気泡構造の発泡体からなる多孔質材に熱硬化性樹脂を含浸させたものからなり、
下側加圧型と上側加圧型の少なくとも一方の加圧型の型面に凹部と凸部の少なくとも一方又は両方が形成された前記下側加圧型と前記上側加圧型間に、前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグを、前記炭素繊維プリプレグ間に前記多孔質プリプレグが位置する積層状態で配置し、
前記積層状態の前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグを、前記下側加圧型と前記上側加圧型で加圧して前記多孔質プリプレグを全面圧縮し、前記型面の凹部及び凸部では該型面の凹部及び凸部に応じた圧縮量にすると共に加熱し、
前記炭素繊維織物及び前記多孔質材に含浸している前記熱硬化性樹脂を硬化させることにより、前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグを一体化して炭素繊維複合材を形成すると共に、前記炭素繊維複合材の少なくとも一側の表面には前記型面の凹部と凸部により、凹部と凸部の少なくとも一方を賦形し、前記凹部と凸部の少なくとも一方を賦形した炭素繊維複合材の表面に対応して、前記多孔質プリプレグの厚みを減少又は増大させて前記多孔質プリプレグの厚みを固定することを特徴とする繊維強化複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹部と凸部の何れか一方又は両方が賦形された炭素繊維複合材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやプリンタなどのOA機器の筐体や機械部品、義足のインソールなどのように軽量性と剛性が求められる部材に、炭素繊維に樹脂を含浸させて半乾燥させた炭素繊維プリプレグを複数枚積層して、加熱、加圧により一体化した炭素繊維強化プラスチックが使用されるようになってきた。
【0003】
従来、部位によって厚みを異ならせて凸部や凹部を表面に賦形した炭素繊維強化プラスチックを得るには、
図10に示すように、厚みの異なる部位毎に炭素繊維プリプレグ91A〜91Gの積層数を異ならせ、かつ正確な位置に積層させて一体化する必要がある。しかも、その場合には、積層する炭素繊維プリプレグ91A〜91Gは、積層する部位に合わせた異なる形状のものを多数用意しなければならず、必要な炭素繊維プリプレグの種類が大幅に増加し、段取りも成形も複雑になるため、実用的ではなかった。
【0004】
また、炭素繊維プリプレグを複数枚積層し、予め型面に凹凸を設けた加圧型を用いて加圧、加熱成形する際に炭素繊維強化プラスチックの表面に凹凸を賦形する場合、複数枚の炭素繊維プリプレグを一方の型面の凸部で他方の型面の凹部へ押して賦形するため、
図11に示すように、複数枚の炭素繊維プリプレグ92A、92B、92C、92Dからなる炭素繊維強化プラスチック90は、一側の凸部95と反対側の凹部96が対になって形成されることになり、形状に制約がある。さらに、凹凸のない一般部91も凹部及び凸部も同一厚みからなる一定厚みの繊維強化プラスチックしか得られず、部分的に厚みを変化させたものが得られないため、デザインの自由度が低く、用途に制約がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−106461号公報
【特許文献2】特開2004−209717号公報
【特許文献3】特開平07−243147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、表面に凹部及び凸部の賦形が容易になり、かつデザインの設計自由度が高い炭素繊維複合材とその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、縦糸と横糸で構成される織り方からなる炭素繊維織物に熱硬化性樹脂が含浸した炭素繊維プリプレグの複数枚と、連続気泡構造の発泡体からなる多孔質材に熱硬化性樹脂が含浸した多孔質プリプレグの少なくとも1枚が積層されて加熱、加圧により、前記炭素繊維織物及び前記多孔質材に含浸した前記熱硬化性樹脂が硬化して一体化された炭素繊維複合材であって、前記多孔質プリプレグが前記炭素繊維プリプレグ間に配置されて前記炭素繊維複合材の表面が前記炭素繊維プリプレグで構成され、前記炭素繊維複合材の少なくとも一側の表面には、前記一体化の加熱、加圧で形成された凹部と凸部の何れか一方又は両方が賦形され、
前記凹部と凸部に対応して、前記多孔質プリプレグの厚みが減少又は増大し、前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグが一体化すると共に形状が固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項
2の発明は、請求項
1において、前記凹部及び凸部の反対側の表面は凹凸の無い平面からなることを特徴とする。
【0010】
請求項
3の発明は、請求項
1又は2において、前記複数の炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグは平面視同一形状からなることを特徴とする。
【0011】
請求項
4の発明は、請求項
1から3の何れか一項において、前記多孔質プリプレグは、複数枚重なって前記炭素繊維プリプレグ間に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項
5の発明は、請求項
1から4の何れか一項において、前記炭素繊維複合材の一側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数と、他側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数が等しいことを特徴とする。
【0013】
請求項
6の発明は、請求項
1から4の何れか一項において、前記炭素繊維複合材の一側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数と、他側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数が異なることを特徴とする。
【0014】
請求項
7の発明は、炭素繊維プリプレグ間に多孔質プリプレグが配置された炭素繊維複合材の製造方法であって、前記炭素繊維プリプレグは、縦糸と横糸で構成される織り方からなる炭素繊維織物に熱硬化性樹脂を含浸させたものからなり、前記多孔質プリプレグは、連続気泡構造の発泡体からなる多孔質材に熱硬化性樹脂を含浸させたものからなり、下側加圧型と上側加圧型の少なくとも一方の加圧型の型面に凹部と凸部の少なくとも一方又は両方が形成された前記下側加圧型と前記上側加圧型間に、前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグを、前記炭素繊維プリプレグ間に前記多孔質プリプレグが位置する積層状態で配置し、前記積層状態の前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグを、前記下側加圧型と前記上側加圧型で加圧
して前記多孔質プリプレグを全面圧縮し、前記型面の凹部及び凸部では該型面の凹部及び凸部に応じた圧縮量にすると共に加熱し、前記炭素繊維織物及び前記多孔質材に含浸している前記熱硬化性樹脂を硬化させることにより、前記炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグを一体化して炭素繊維複合材を形成すると共に、前記炭素繊維複合材の少なくとも一側の表面には前記型面の凹部と凸部により、凹部と凸部の少なくとも一方を賦形
し、前記凹部と凸部の少なくとも一方を賦形した炭素繊維複合材の表面に対応して、前記多孔質プリプレグの厚みを減少又は増大させて前記多孔質プリプレグの厚みを固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、複数の炭素繊維プリプレグ間に多孔質プリプレグを配して加熱、加圧することにより、表面に凹部と凸部の何れか一方又は両方が賦形された炭素繊維複合材を得ることができるようになり、凹部及び凸部を賦形するために形状の異なる多種類の炭素繊維プリプレグや多孔質プリプレグを積層する必要がなくなり、凹凸の賦形が容易になると共にデザインの設計自由度が高くなる。
【0017】
請求項
1の発明によれば、凹部と凸部に対応して、多孔質プリプレグの厚みが減少又は増大している構成からなるため、凹部及び凸部を賦形するために形状の異なる多種類の炭素繊維プリプレグや多孔質プリプレグを積層する必要がなくなり、凹凸の賦形が容易になると共にデザインの設計自由度が高くなる。
【0018】
請求項
2の発明によれば、凹部及び凸部の反対側の表面は凹凸の無い平面からなるため、凹部及び凸部とは反対側の表面では、凹部及び凸部による形状の影響を上記平面に及ぼすことなく設計でき、デザイン設計の自由度が高くなる。たとえば、部品であるならば収納される空間に対して無駄なく、収納空間を有効に活用できる。
【0019】
請求項
3の発明によれば、複数の炭素繊維プリプレグと多孔質プリプレグは平面視同一形状からなるため、凹部及び凸部を賦形するために形状の異なる多種類の炭素繊維プリプレグや多孔質プリプレグを積層する必要がなくなり、凹凸の賦形が容易になると共に、製品内の寸法ばらつきを抑えることができ、量産性が高まるとともに、作業工数の削減につながる。
【0020】
請求項
4の発明によれば、多孔質プリプレグが複数枚重なって炭素繊維プリプレグ間に配置されているため、凹部の深さや凸部の高さを大きなものにすることができる。
【0021】
請求項
5及び6の発明によれば、炭素繊維複合材の一側表面のみに凹部及び凸部が形成される場合、あるいは両側表面に凹部及び凸部が形成される場合等に応じて、炭素繊維複合材の両側表面と多孔質プリプレグ間に配置される炭素繊維プリプレグの枚数を変化させることにより、良好な凹部や凸部を形成し、かつ反りの無い炭素繊維複合材を得ることができる。また、多孔質プリプレグの配列位置を適宜変更することで、反り量を制御できる。
【0022】
請求項
7の発明によれば、複数の炭素繊維プリプレグ間に多孔質プリプレグを配して加熱、加圧することにより、表面に凹部と凸部の何れか一方又は両方が賦形された炭素繊維複合材を得ることができるようになり、凹部及び凸部を賦形するために形状の異なる多種類の炭素繊維プリプレグや多孔質プリプレグを積層する必要がなくなり、凹凸の賦形が容易になると共にデザインの設計自由度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る炭素繊維複合材の平面図である。
【
図4】第1実施形態の炭素繊維複合材を成形する際の装置を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る炭素繊維複合材の平面図である。
【
図8】第2実施形態の炭素繊維複合材を成形する際の装置を示す概略断面図である。
【
図9】第3実施形態に係る炭素繊維複合材の一部を示す拡大断面図である。
【
図10】従来の積層によって炭素繊維強化プラスチックに形成した凸部を示す拡大断面図である。
【
図11】従来の加圧によって炭素繊維強化プラスチックに形成した凸部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
図1に示す第1実施形態の炭素繊維複合材10は、ノートパソコンの筐体における蓋の外板として使用されるものであり、
図2及び
図3にも示すように、外側表面には枠形状の凹部101で囲まれた部分に凹部103で構成された文字が形成されている。なお、前記凹部101、103には、金属箔が貼着されたり、装飾用の着色樹脂が積層されたりすることもある。
【0025】
前記炭素繊維複合材10は、2枚の炭素繊維プリプレグ11、13間に1枚の多孔質プリプレグ21が配置されて加熱、加圧により一体化された積層体で構成されている。
前記炭素繊維プリプレグ11、13は、炭素繊維織物に熱硬化性樹脂が含浸したものからなる。前記炭素繊維織物は、軽量及び高剛性に優れるものであり、特に、繊維が一方向のみではない織り方のものが好ましく、例えば、縦糸と横糸で構成される平織、綾織、朱子織及び3方向の糸で構成される三軸織などが好適である。また、前記炭素繊維織物は、熱硬化性樹脂の含浸及び剛性の点から、繊維重さが50〜600g/m
2のものが好ましい。
【0026】
前記炭素繊維織物に含浸する熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、前記炭素繊維複合材10の剛性を高めるためには、熱硬化性樹脂自体がある程度の剛性を有する必要があり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合物からなる群より選択することができる。また、前記炭素繊維複合材10に難燃性が求められる場合、前記熱硬化性樹脂は難燃性のものが好ましい。フェノール樹脂は、その組成を理由に難燃性を付与する添加物を削減でき良好な難燃性を有するため、前記炭素繊維織物に含浸させる熱硬化性樹脂として好適なものである。
【0027】
また、前記熱硬化性樹脂は、炭素繊維プリプレグにおける樹脂重量比率が50〜80%、特には55〜70%となるように前記炭素繊維織物に含浸させることが好ましい。前記樹脂比率とすることにより、軽量性及び剛性をより良好にすることができる。
【0028】
前記多孔質プリプレグ21は、多孔質材に熱硬化性樹脂が含浸したものである。
多孔質材としては、特に限定されるものではなく、発泡体を挙げることができる。発泡体としては連続気泡構造からなる発泡体が適し、例えば、ウレタン樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体、ポリオレフィン(ポリアミド)発泡体等から選択することができる。発泡体は連続気泡であることで、熱硬化性樹脂が含浸できるだけでなく、高い圧縮率で成形が可能となる。上記素材を多孔質材として選ぶことにより炭素繊維織物を積層した厚みにまで圧縮成形が可能である。特に、前記多孔質材として、メラミン樹脂発泡体もしくはポリアミド樹脂発泡体が好ましい。また、前記炭素繊維複合材10に難燃性が求められる場合には、前記多孔質材としては難燃性のものが好ましく、メラミン樹脂発泡体は良好な難燃性を有するため、前記多孔質材として好適なものである。前記多孔質材の圧縮前の元厚みは適宜設定され、例えば1〜25mmを挙げる。また、前記多孔質材が発泡体からなる場合、発泡体は圧縮容易性、含浸性、軽量性、剛性の点から、圧縮前の密度が5〜80kg/m
3のものが好ましい。
【0029】
前記多孔質材に含浸する熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、前記炭素繊維複合材10の剛性を高めるためには、熱硬化性樹脂自体がある程度の剛性を有する必要があり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合物からなる群より選択することができる。また、前記炭素繊維複合材10に難燃性が求められる場合、前記熱硬化性樹脂は難燃性のものが好ましい。フェノール樹脂は良好な難燃性を有するため、前記多孔質材に含浸させる熱硬化性樹脂として好適なものである。また、多孔質プリプレグに含浸させる熱硬化性樹脂と、炭素繊維プリプレグに含浸させる熱硬化性樹脂は、同じものであることが好ましく、密着性が高まることで層間剥離の発生が著しく低減される。
【0030】
前記炭素繊維複合材10は、外側となる一側の表面に前記枠状の凹部101と文字の凹部103が形成され、前記凹部101、103の位置では、凹部及び凸部の無い一般部111と比べ、前記多孔質プリプレグ21の圧縮量が大にされて多孔質プリプレグ21の厚みが減少し、それにより前記炭素繊維複合材10の厚みが減少している。また、前記凹部101、103の位置における反対側の表面は、凹凸の無い平面で構成されている。
【0031】
前記炭素繊維プリプレグ11、13と多孔質プリプレグ21は、平面視形状が同一である。なお、前記炭素繊維プリプレグ及び多孔質プリプレグの積層枚数は、前記炭素繊維複合材の用途及び要求される強度等に応じて適宜設定される。ちなみに、
図1の枠状及び文字の凹部からなる図柄部分は、縦横30mm×100mmの大きさで、凹部の深さは、0.5mmである。
【0032】
前記第1実施形態の炭素繊維複合材10について成形方法の一例を示す。
図4に示すように、下側加圧型31と、型面に凹部形成用突起33、34が形成された上側加圧型32間に、硬化前の前記炭素繊維プリプレグ11と前記多孔質プリプレグ21と前記炭素繊維プリプレグ13をこの順序で積層し、前記下側加圧型31と上側加圧型32を接近させて前記炭素繊維プリプレグ11と前記多孔質プリプレグ21と前記炭素繊維プリプレグ13を積層状態で加圧すると共に加熱する。前記下側加圧型31と上側加圧型33は、電熱ヒーター等の加熱手段によって前記熱硬化性樹脂が硬化可能な温度に加熱されている。
【0033】
前記下側加圧型31と上側加圧型32による前記炭素繊維プリプレグ11、13と多孔質プリプレグ21の加圧、加熱時に、前記上側加圧型32の突起33、34によって押圧された部位に前記凹部101、103が形成され、その状態で前記炭素繊維プリプレグ11、13及び多孔質プリプレグ21に含浸している熱硬化性樹脂が硬化することにより、前記炭素繊維プリプレグ11、13と多孔質プリプレグ21が一体化すると共に形状が固定され、前記炭素繊維複合材10が得られる。
【0034】
図5に示す第2実施形態の炭素繊維複合材50は、義足用インソールとして使用されるものであり、
図6及び
図7にも示すように、足の指の付け根付近、土踏まず部分、及びかかと部分と対応する部位に凹部501、503と、凸部502、504、506が形成されている。
【0035】
前記炭素繊維複合材50は、裏側の最下層から順に、炭素繊維プリプレグ51、52、53、54、多孔質プリプレグ61、炭素繊維プリプレグ55、多孔質プリプレグ62、炭素繊維プリプレグ56、57、58が積層されて、加熱、加圧により一体化された10層の積層体で構成されている。第2実施形態における炭素繊維プリプレグ51〜58及び多孔質プリプレグ61、62は、前記第1実施形態の炭素繊維プリプレグ11、13及び多孔質プリプレグ21と同様の構成からなる。
【0036】
前記炭素繊維複合材50は、凹部501、503及び凸部502、504、506の形成されている表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグ62までの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数が3枚とされているのに対し、凹部及び凸部の無い反対側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグ61までの間に存在する前記炭素繊維プリプレグの枚数が4枚とされ、凹部及び凸部側寄りに多孔質プリプレグ62が配置されている。この配置により、前記凹部及び凸部の賦形が容易とされている。
【0037】
前記凹部501、503の位置では、凹部及び凸部の無い一般部511と比べ、前記多孔質プリプレグ61、62の圧縮量が大にされて多孔質プリプレグの厚みが減少し、それにより前記炭素繊維複合材50の厚みが減少している。一方、前記凸部502、504、506の位置では、凹部及び凸部の無い一般部511と比べ、前記多孔質プリプレグ61、62の圧縮量が小にされて多孔質プリプレグの厚みが増大し、それにより前記炭素繊維複合材50の厚みが増大している。また、前記凹部501、503及び凸部502、504、506の位置における反対側の表面は、凹凸の無い平面で構成されている。
【0038】
前記複数の炭素繊維プリプレグ51〜58と多孔質プリプレグ61、62は、何れも平面視形状が同一である。また、前記炭素繊維プリプレグ及び多孔質プリプレグの積層枚数は、前記炭素繊維複合材の用途及び要求される強度等に応じて適宜設定される。
【0039】
前記炭素繊維複合材50の成形方法の一例を示す。
図8に示すように、下側加圧型71と、型面に凹部形成用突起73、75及び凸部形成用の窪み74、76、78が形成された上側加圧型72間に、硬化前の前記炭素繊維プリプレグ51、52、53、54、多孔質プリプレグ61、炭素繊維プリプレグ55、多孔質プリプレグ62、炭素繊維プリプレグ56、57、58をこの順序で積層し、前記下側加圧型71と上側加圧型72を接近させて前記積層状態の炭素繊維プリプレグ及び多孔質プリプレグを加圧すると共に加熱する。前記下側加圧型71と上側加圧型72は、電熱ヒーター等の加熱手段によって前記熱硬化性樹脂が硬化可能な温度に加熱されている。
【0040】
前記下側加圧型71と上側加圧型72による前記炭素繊維プリプレグ及び多孔質プリプレグの加圧、加熱時に、前記上側加圧型72の突起73、75によって押圧された部位に前記凹部501、503が形成され、一方、前記窪み74、76、78に当接する部位に前記凸部502、504、506が形成され、その状態で前記炭素繊維プリプレグ51〜56及び多孔質プリプレグ61、62に含浸している熱硬化性樹脂が硬化することにより、前記炭素繊維プリプレグ51〜58と多孔質プリプレグ61、62が一体化すると共に形状が固定され、前記炭素繊維複合材50が得られる。
【0041】
図9には、他の積層構造からなる第3実施形態の炭素繊維複合材80の一部を拡大して示す。前記炭素繊維複合材80は、2枚の多孔質プリプレグ81A、81Bが重ねられ、その両側にそれぞれ4枚の炭素繊維プリプレグ82A、82B、82C、82D、83A、83B、83C、83Dが積層されて、加熱、加圧により一体化された10層の積層体で構成され、炭素繊維複合材80の両側表面に凸部85、87が形成されている。第3実施形態における炭素繊維プリプレグ82A〜82D、83A〜83D及び多孔質プリプレグ81A、81Bは、前記第1実施形態の炭素繊維プリプレグ11、13及び多孔質プリプレグ21と同様の構成からなる。
【0042】
前記炭素繊維複合材80は、凸部85の形成された一側の表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグ81Aまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグ82A〜82Dの枚数と、反対側の凸部87の形成された表面と該表面に最も近い前記多孔質プリプレグ81Bまでの間に存在する前記炭素繊維プリプレグ83A〜83Dの枚数は、何れも4枚からなり、両側で等しく配置されている。この配置により、両側表面で凸部85、87の賦形が容易とされている。
【0043】
前記凸部85、87の位置では、凹部及び凸部の無い一般部811と比べ、前記多孔質プリプレグ81A、81Bの圧縮量が小にされて多孔質プリプレグ81A、81Bの厚みが増大し、それにより前記炭素繊維複合材80の厚みが増大している。また、前記凸部85、87の位置における反対側の表面は、凹凸の無い平面で構成されている。
【0044】
前記複数の炭素繊維プリプレグ82A〜82D、83A〜83Dと多孔質プリプレグ81A、81Bは、何れも平面視形状が同一である。また、前記炭素繊維プリプレグ及び多孔質プリプレグの積層枚数は、前記炭素繊維複合材の用途及び要求される強度等に応じて適宜設定される。
【実施例】
【0045】
・実施例1
図1の炭素繊維複合材10を成形する例を示す。熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂(旭有機材料株式会社製、品名;PAPS−4と旭有機材料株式会社製、品名;ヘキサメチレンテトラミンを100:12で混合したもの)をメタノールに30wt%の濃度となるように溶解した。このフェノール樹脂溶液中に平織の炭素繊維織物(東邦テックス株式会社製、品名;W−3101、繊維重さ200g/m
2)を漬け、取り出した後に25℃の室温にて2時間自然乾燥し、更に60℃の雰囲気下にて1時間乾燥させて炭素繊維プリプレグを2枚形成した。炭素繊維織物は、200×300mmの平面サイズに裁断したもの(重量12g/枚)を使用した。
【0046】
また、連続気泡構造の発泡体として、厚み10mm、平面サイズ200×300mm(重量5.4g)に切り出したメラミン樹脂発泡体(BASF社製、品名:バソテクトV3012、密度9kg/m
3)を、炭素繊維織物と同様にしてフェノール樹脂溶液に漬け、取り出した後に25℃の室温にて2時間自然乾燥し、更に60℃の雰囲気下にて1時間乾燥させて多孔質プリプレグを1枚形成した。
【0047】
次に、キャビティを有する上下成形金型に、上記炭素繊維プリプレグと上記多孔質プリプレグを積層加熱して、炭素繊維複合体を得る。すなわち、予め離型剤を表面に塗布したSUS製の下側金型のキャビティ上に、
図4に示した積層順序、すなわち炭素繊維プリプレグ、多孔質プリプレグ、炭素繊維プリプレグの順に積層して配置し、下側金型上の積層体を、型面に凹部形成用の突起が形成された上側金型により、180℃で3分間、5MPaの面圧をかけて押圧し、圧縮及び加熱を行ない、前記圧縮状態でフェノール樹脂を反応硬化させた。その際の加熱は、上下金型に取り付けられた鋳込みヒーターにより行なった。圧縮後の厚みは、製品形状に応じて平板を形成する一般部に応じてキャビティを設計した。その後、上下金型を室温で冷却させた後に開き、前記炭素繊維プリプレグと多孔質プリプレグが積層一体化した
図1の炭素繊維複合材10を得た。
【0048】
・実施例2
図5の炭素繊維複合材50を成形する例を示す。実施例1と同様にして炭素繊維プリプレグを8枚形成し、また多孔質プリプレグを2枚形成した。
次に、予め離型剤を表面に塗布したSUS製の下側金型上に、
図8に示した積層順序で、炭素繊維プリプレグと多孔質プリプレグを順に積層して配置し、下側金型上の積層体を、型面に凹部形成用の突起と凸部形成用の窪みが形成された上側金型により、180℃で3分間、5MPaの面圧をかけて押圧し、圧縮及び加熱を行ない、前記圧縮状態でフェノール樹脂を反応硬化させた。その際の加熱は、上下金型に取り付けられた鋳込みヒーターにより行なった。圧縮後の厚みは、製品形状に応じて平板を形成する一般部に応じてキャビティを設計した。その後、上下金型を室温で冷却させた後に開き、前記炭素繊維プリプレグと多孔質プリプレグが積層一体化した炭素繊維複合材を得た。その後、炭素繊維複合材の周囲の余剰部分をカットするトリミングを行い、
図5の炭素繊維複合材50を得た。
【0049】
このように、本発明によれば、凹部及び凸部を賦形するために形状の異なる多種類の炭素繊維プリプレグや多孔質プリプレグを積層する必要がなく、凹凸の賦形が容易になると共にデザインの設計自由度が高くなる。
【0050】
本明細書と図面を参照することにより、様々な変形例を想到できる。本明細書の教示により、本発明には、以下のものを含む。
前記複数の炭素繊維プリプレグと前記多孔質プリプレグは、平面視形状が同一である場合に限られず、成形する製品の形状に応じて、積層位置に応じて、上記2種類のプリプレグの平面形状を、裁断、設計することができる。特に多孔質プリプレグの平面視形状を、その積層位置に応じて、裁断、設計することができる。
【符号の説明】
【0051】
10、50、80炭素繊維複合材
11、13、51〜58、82A〜82D、83A〜83D 炭素繊維プリプレグ
21、61、62、81A、81B 多孔質プリプレグ
101、103、501、503 凹部
502、504、506、85、87 凸部
111、511、811 一般部