特許第6685623号(P6685623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6685623圧縮センシングに基づく効率的なスパースチャネル推定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685623
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】圧縮センシングに基づく効率的なスパースチャネル推定
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20200413BHJP
   H04B 7/0456 20170101ALI20200413BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20200413BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H04B7/0413 200
   H04B7/0456 100
   H04B7/08 800
   H04B7/06 956
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-557054(P2018-557054)
(86)(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公表番号】特表2019-516322(P2019-516322A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】JP2017032388
(87)【国際公開番号】WO2018051900
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2018年10月30日
(31)【優先権主張番号】16306171.6
(32)【優先日】2016年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヌルディーヌ、アディ
(72)【発明者】
【氏名】リ、キャンルイ
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/116423(WO,A1)
【文献】 特開2012−165370(JP,A)
【文献】 Zhen Gao et al.,Channel Estimation for Millimeter-Wave Massive MIMO With Hybrid Precoding Over Frequency-Selective Fading Channels,IEEE Communications Letters (Volume:20, Issue:6,June 2016),2016年 4月20日,pp.1259-1262
【文献】 Junho Lee et al.,Channel Estimation via Orthogonal Matching Pursuit for Hybrid MIMO Systems in Millimeter Wave Communications,IEEE Transactions on Communications (Volume:64, Issue:6, June 2016),2016年 4月22日,pp.2370-2386
【文献】 Yonghee Han et al.,Two-stage compressed sensing for millimeter wave channel estimation,2016 IEEE International Symposium on Information Theory (ISIT),2016年 7月15日,pp.860-864
【文献】 上橋 俊介 他,時変動マルチユーザMIMO環境における2段階の圧縮センシングを用いたチャネル予測,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.115 No.472 ,日本,一般社団法人電子情報通信学会 ,2016年 2月24日,第115巻,pp.357-362
【文献】 本間 尚樹 他,圧縮センシングを用いた生体位置推定法の評価,電子情報通信学会2016年総合大会講演論文集 通信1 ,2016年 3月 1日,p.207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
H04B 7/0456
H04B 7/06
H04B 7/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナ(121、12N)を有する送信機(11)からの測定値(301)を、複数の受信アンテナ(131、13N)を有する受信機(12)において受信することを含むチャネル推定の方法であって、
該方法は、
前記受信された測定値(301)に基づいて第1のベクトルの少なくとも1つのセットを求める第1の動作(203)であって、
前記第1のベクトルの座標は、第1の角度に関連し、各第1の角度は、前記送信機(11)と前記受信機(12)との間の無線送信の前記チャネルの少なくとも1つのパスに関連している、第1の動作と、
求められた第1のベクトルに基づいて、第2のベクトルのセットを求める第2の動作(204)であって、
前記第2のベクトルの座標は、第2の角度に関連し、各第2の角度は、前記送信機(11)と前記受信機(12)との間の無線送信の前記チャネルの少なくとも1つのパスに関連している、第2の動作と、
を含み、
前記第1の角度及び前記第2の角度は、それぞれ、
発射角及び到来角、又は、
到来角及び発射角、
であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の角度及び前記第2の角度に基づいて前記送信機(11)と前記受信機(12)との間の無線送信の前記チャネルの少なくとも1つのパスに関連した位相及び/又は振幅を求めることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の角度及び前記第2の角度は、それぞれ発射角及び到来角であり、
前記受信機(12)は、少なくとも1つのコンバイナーを有し、
前記第1の動作(203)は、少なくとも1つのチャネルベクトルのセットを推定することを含み、各チャネルベクトルha,jは、以下の式に基づいて、前記受信機の前記少なくとも1つのコンバイナーの中の1つのコンバイナーに関係し、
【数1】
ここで、
Pは、前記送信機から送信された信号のセットから取得される行列であり、
は、前記行列Pの共役転置行列を示し、
は、前記現在のコンバイナーにおいて利用可能な測定値のベクトルであり、
は、前記送信アンテナに関する行列であり、
nは、測定値雑音ベクトルであり、
a,jは、チャネルベクトルha,jの共役転置ベクトルを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の動作(204)は、
前記推定された少なくとも1つのチャネルベクトルのセット(306)の非ゼロのエントリに基づいて、ベクトルのセットを計算することと、
前記計算されたベクトルのセットからの各計算されたベクトルvについて、以下の式に基づいて、角度座標において表されたチャネル行列Hの列Ha,qを推定することと、
【数2】
を含み、
ここで、
Qは、前記少なくとも1つのコンバイナーに関する行列であり、
は、前記行列Qの共役転置行列を示し、
は、前記受信機に関する行列であり、
は、推定雑音ベクトルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の動作(203)は、同時直交マッチング追跡アルゴリズムを実行することを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の動作(204)は、直交マッチング追跡アルゴリズムを実行することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
複数の送信アンテナを有する送信機から測定値(301)を受信する受信機と、
回路であって、
前記受信された測定値に基づいて第1のベクトルの少なくとも1つのセットを求めること(203)であって、前記第1のベクトルの座標は、第1の角度に関連し、各第1の角度は、前記送信機と前記受信機との間の無線送信の前記チャネルの少なくとも1つのパスに関連していることと、
求められた第1のベクトルに基づいて、第2のベクトルのセットを求める第2の動作(204)であって、前記第2のベクトルの座標は、第2の角度に関連し、各第2の角度は、前記送信機と前記受信機との間の無線送信の前記チャネルの少なくとも1つのパスに関連していることと、
を行う回路と、
を備え、
前記第1の角度及び前記第2の角度は、それぞれ、
発射角及び到来角、又は、
到来角及び発射角、
である、チャネル推定デバイス。
【請求項8】
プロセッサによって実行されると、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法を実行する命令を含む、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮センシングに基づくチャネル推定に関し、より具体的には、チャネル行列がスパースであると予想される場合に関する。
【背景技術】
【0002】
30ギガヘルツ(GHz)から300GHzに及ぶ搬送波周波数を利用するミリメートル波(ミリ波)無線通信は、例えば、今後の5Gセルラーシステムにとってキーフィーチャになると予想される。そのような高周波数を用いることの主な利点は、より高いデータレートに対してはるかに多くのスペクトルが利用可能であるということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ミリ波伝播は、特に、自由空間における高いパス損失、建築材料を通した高い侵入損失、弱い回折、及び遮断に対する脆弱性によって特徴付けられる。したがって、伝播減損を補償するとともに数百メートルの距離にわたってセルラーカバレッジを可能にするために、送信側及び受信側の双方において高い指向性の適応アンテナアレイを用いなければならない。
【0004】
指向性アレイは、通例、非常に多くのアンテナ素子、例えば、数十個から数百個のアンテナ素子を用いて構築される。
【0005】
高い指向性利得に加えて、大規模なアンテナアレイの使用によって、より狭いビームを実現することができるので、空間多重化が高められる。
【0006】
指向性利得及び空間多重化は、それぞれ送信側及び受信側におけるビームフォーミングプリコーダー及びビームフォーミングコンバイナーの綿密な設計によって達成することができる。この設計は、以下で詳述するように、チャネル推定方法によって取得することができるシステム上で利用可能なチャネル状態情報(CSI)の量に依拠する。
【0007】
例えば、多入力/多出力(MIMO)を用いた狭帯域フラットフェージングチャネルでは、システムは、通常、以下の式としてモデル化することができる。
【数1】
【0008】
ここで、x及びyは、それぞれ送信ベクトル及び受信ベクトルであり、nは、雑音ベクトルであり、Hは、そのサイズが送信アンテナの数と受信アンテナの数との積に等しいチャネル行列である。通常、行列Hは、チャネル遷移を特徴付け、Hの各成分Hijは、第jの送信アンテナから第iの受信アンテナへのチャネル利得を表す。チャネル推定方法を用いて、一般に、特定の基底(例えば、角度領域)において行列Hの推定、すなわち、Hの数式の推定が試みられる。
【0009】
一般に、チャネル推定は、受信機によって知られているパイロットとも呼ばれるトレーニング信号を送信することによって行うことができる。その場合、受信機では、コンバイナーを用いて受信アンテナにおけるこれらの信号を処理することによってチャネル推定のための測定値が取得される。送信されるパイロットの数は、典型的には送信アンテナの数に等しい。送信アンテナの数が、上述の用途のように非常に多いとき、トレーニングオーバーヘッドは、利用可能なリソースの大きなパーセンテージを必要とするにつれて、法外に大きなものになる可能性がある。
【0010】
チャネルは、通例、伝播パスの寄与度としてモデル化される。狭帯域通信では、パスは、発射角(AOD)の方位及び高度と、到来角(AOA)の方位及び高度と、振幅と、位相との4つのパラメーターによって記述される。ミリ波伝播では、多くのパスが大きく減衰され、大きな利得を有するパスの数は、チャネル行列のサイズと比較して小さいと予想される。その結果、アンテナアレイの高い指向性に起因して、チャネル行列は、角度領域において表されるとスパースであると予想される。
【0011】
行列又はベクトルは、その次元と比較して少数の非ゼロのエントリしか有しない場合に「スパース」であると言われる。
【0012】
チャネルスパース性は、送信パイロットの必要数を激減させるための幾つかの解決策によって利用されてきた。これらの解決策は、例えば、圧縮センシング(CS)アルゴリズムを用いて実施される。
【0013】
幾つかの研究が、CSアルゴリズムに基づくスパースチャネル推定の解決策を提案しており、それらの解決策は、マルチユーザー通信に適している。一般に、これらの解決策は、直交マッチング追跡(OMP)等の貪欲追跡アルゴリズムを実施する。これらのアルゴリズムは反復的に処理される。各反復において、チャネルに寄与する新たなパスが特定され、その振幅及び位相が推定される。この特定は、AOD及びAOAの同時の回復を含む。反復は、停止基準が満たされるまで処理される。
【0014】
そのような解決策は欠点を有する。1つのパスを特定する計算複雑度次数は、実際は、送信機及び受信機におけるアンテナの数の積に比例する。送信機及び受信機の双方に数十個から数百個のアンテナがある場合、実用的で高速な実施について、複雑度は、非常に高いものとなる。
【0015】
したがって、スパースチャネルを効率的に推定するために計算複雑度が低減された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、複数の受信アンテナを有する受信機において、複数の送信アンテナを有する送信機からの測定値を受信することを含むチャネル推定の方法に関する。特に、本方法は、
−受信された測定値に基づいて第1のベクトルの少なくとも1つのセットを求める第1の動作であって、第1のベクトルの座標は、第1の角度に関連し、各第1の角度は、送信機と受信機との間の無線送信のチャネルの少なくとも1つのパスに関連している、第1の動作と、
−求められた第1のベクトルのセットに基づいて、第2のベクトルのセットを求める第2の動作であって、第2のベクトルの座標は、第2の角度に関連し、各第2の角度は、送信機と受信機との間の無線送信のチャネルの少なくとも1つのパスに関連している、第2の動作と、
を含み、
−第1の角度及び第2の角度は、それぞれ、発射角及び到来角、又は、到来角及び発射角、である。
【0017】
上記の「チャネル推定」は、送信機と受信機との間の可能な信号伝播パスのセットを求めること、又は、等価的に、特定の基底(例えば、角度領域)におけるチャネル行列の任意の表現を推定することを意味する。
【0018】
「可能な伝播パス」は、大きな利得を有するパスを指定する。例えば、処理が角度領域において実行される高指向性システムでは、少数のパスしか大きな利得を有しない。
【0019】
第1の動作ステップは、このように、同じ第1の角度を共有する幾つかのパスが存在する場合があることに留意して、可能な伝播パスに対応する第1の角度を求めることを含むことができる。したがって、上記伝播パスは、他のパラメーターを計算することによって、前述の第2の動作の間に特定することができる。本発明の一般的手法によれば、伝播パスを特徴付ける種々のパラメーターは、同時に推定されるのではなく、連続的に推定される。この特徴によって、パスを求めるのに用いられるアルゴリズムの計算複雑度が低減され、したがって、チャネル推定プロセス全体の全体的な複雑度が低減される。
【0020】
一実施の形態では、第1の動作ステップの間に求められる角度は、発射角とすることができる。その実施の形態では、第2の動作は、第1の動作の間に求められたあらゆる発射角について、可能な伝播パスに関連した到来角を計算することを含むことができる。したがって、角度の対(1つの発射角及び1つの到来角)に関連したパスの位相又は振幅を求めることができる。
【0021】
言い換えると、AOAは、第1の動作の間に特定される。次に、伝播パスは、同じAODを異なるAOAと共有する幾つかのパスが存在する場合があることに留意して、それらのAOAを計算することによって第2の動作の間に特定される。所与のAODについて、パスの位相及び振幅の推定は、したがって、AOAを見つけた後の第2の動作の間に行うことができる。
【0022】
そのような方法を用いると、第1の動作の複雑度は、送信アンテナの数に比例し、第2の動作の複雑度は、受信アンテナの数に比例する。この解決策の全体的な複雑度は、これらの2つの動作ステップの複雑度の和に等しい。したがって、この複雑度は、もはや、既存の解決策のように送信及び受信におけるアンテナの数の積の関数ではない。
【0023】
受信機が少なくとも1つのコンバイナーを有する一実施の形態では、第1の動作は、少なくとも1つのチャネルベクトルのセットを推定することを含み、各チャネルベクトルha,jは、以下の式に基づいて、受信機の少なくとも1つのコンバイナーの中の1つのコンバイナーに関係する。
【数2】
【0024】
ここで、
Pは、送信機から送信された信号のセットを用いて取得される行列であり、
は、行列Pの共役転置行列を示し、
は、現在のコンバイナーにおいて利用可能な測定値のベクトルであり、
は、送信アンテナに関する行列であり、
nは、測定値雑音ベクトルであり、
a,jは、チャネルベクトルha,jの共役転置ベクトルを示す。
【0025】
「コンバイナー」は、受信アンテナにおいて受信された信号を結合(例えば、線形結合)したものを出力するデバイスを意味する。
【0026】
は、例えば、送信アンテナの幾何形状に関係することができる。この行列は、アンテナ利得及び空中線指向性図(radiation pattern:放射パターン)も考慮することができる。
【0027】
送信機から受信機に送信された信号は、受信機から知ることができる。そのように、行列Dも既知である場合、コンバイナーにおいて受信された測定値に基づいて、このコンバイナーに関連したベクトルha,jを推定することが可能である。
【0028】
複数のコンバイナーの場合、角度領域において表されたチャネルベクトルは、非ゼロのエントリの同じサポートを共有するか、又は、換言すれば、チャネルパスが存在する同じAODを共有する。これは、これらのチャネルを構成する物理伝播パスが同じであることに起因する。
【0029】
このステップの終わりに、種々のコンバイナーに関連した行列ha,j(ここで、jは全コンバイナー数のうちの或るコンバイナーのインデックスである)の推定値
【数3】
が利用可能である。
【0030】
したがって、第2の動作は、
推定された少なくとも1つのチャネルベクトルのセットの非ゼロのエントリに基づいて、ベクトルのセットを計算することと、
上記計算されたベクトルのセットからの各計算されたベクトルvについて、式
【数4】
に基づいて、角度座標において表されたチャネル行列Hの列Ha,qを推定することと、
を含むことができる。
【0031】
ここで、
Qは、少なくとも1つのコンバイナーに関する行列であり、
は、行列Qの共役転置行列を示し、
は、受信機に関する行列であり、
は、推定雑音ベクトルである。
【0032】
は、受信機の幾何形状に関する行列とすることができる。この行列は、アンテナ利得及び空中線指向性図も考慮することができる。
【0033】
一実施の形態では、
【数5】
が、ha,jの第qの非ゼロのエントリを示す場合、ベクトルv(ただし、q∈{1,2,...,k}である。ここで、kは、推定されたベクトル
【数6】
の非ゼロのエントリの数である)は、以下の式として定義することができる。
【数7】
【0034】
ここで、Lはコンバイナーの数であり、(・)は転置演算を示す。
【0035】
各ベクトルvは、Ha,qの測定値ベクトルとして見ることができ、さらに、Ha,qを推定するのに用いることができる。したがって、伝播パスに関連した全てのベクトルHa,qを推定することは、伝播パスのセット全体を推定することに等しい。
【0036】
代替の実施の形態では、第1の動作ステップの間に求められた角度は到来角である一方、第2の動作は、それぞれの伝播パスに関連した発射角を計算することを含む。したがって、1つの到来角及び1つの発射角の対に関連したパスの位相又は振幅を求めることができる。
【0037】
代替として、第1の角度は、発射角及び到来角を含み、
第1の動作は、
−受信された測定値に基づいて発射角のセットを求めることであって、各第1の角度は、送信機と受信機との間の無線送信のチャネルの少なくとも1つのパスに関連していることと、
−受信された測定値に基づいて到来角のセットを求めることであって、各第1の角度は、送信機と受信機との間の無線送信のチャネルの少なくとも1つのパスに関連していることと、
を含む。
【0038】
第2の動作は、その場合、求められた発射角及び到来角に基づいて、可能な伝播パスに関連した位相又は振幅を計算することを含むことができる。
【0039】
この実施の形態では、発射角及び到来角は、2つの別々のステップの間に求められ、各ステップは、受信された測定値に基づいて実行される。好ましくは、これらの2つのステップは並列に実行される。
【0040】
可能なパスのセットは、その場合、2つの求められたセットのデカルト積である。第2の動作では、伝播パスのセットは、可能なパスのセットの中から探索され、振幅及び位相は、選択された伝播パスごとに計算することができる。
【0041】
通常、第1の動作は、同時直交マッチング追跡アルゴリズムによって実行することができる。このアルゴリズムは、推定する全てのスパースベクトルのサポートを併せて回復することを可能にし、したがって、回復精度を改善する。
【0042】
第2の動作は、直交マッチング追跡アルゴリズムによって実行することができる。そのようなアルゴリズムの1つの反復は、1つの伝播パスを回復するのに用いることができる。直交マッチング追跡アルゴリズムは、第1の動作の間に求められた角度ごとに1回実行される。このアルゴリズムの幾つかの実行は、並列に実施することができ、したがって、このプロセスの実行は、有利に加速することができる。
【0043】
本発明の別の態様は、
−複数の送信アンテナを有する送信機から測定値を受信する受信機と、
−回路であって、
−受信された測定値に基づいて第1の角度の少なくとも1つのセットを求めることであって、各第1の角度は、送信機と受信機との間の無線送信のチャネルの少なくとも1つのパスに関連していることと、
−求められた第1の角度のセットに基づいた少なくとも1つのパラメーターの複数のセットを求めることであって、少なくとも1つのパラメーターの各セットは、送信機と受信機との間の無線送信のチャネルのパスに関連していることと、
を行う回路と、
を備える、チャネル推定デバイスに関する。
【0044】
第3の態様は、プロセッサによって実行されると、前述した方法を実行する命令を含むコンピュータープログラム製品に関する。
【0045】
本明細書に開示される方法及びデバイスの他の特徴及び利点は、添付図面に関する非限定的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0046】
本発明は、添付図面の図に、限定としてではなく例として示される。添付図面において、同様の参照符号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本方法を適用することができる従来のハイブリッドアーキテクチャの一例を示す図である。
図2】本発明の可能な実施形態によるチャネル推定方法の異なるステップを示すフローチャートである。
図3】本発明の可能な実施形態において存在する伝播パスに関連したAODを求めることを説明するフローチャートである。
図4】本発明の可能な実施形態において伝播パスを求めることを説明するフローチャートである。
図5】本発明を可能にするデバイスの可能な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
前述したように、ミリ波システムでは、大規模なアンテナアレイを用いて、この周波数帯域におけるパス損失を克服することができる。
【0049】
ミリ波において動作する大規模アレイのハードウェアは、処理することができるパイロット及びコンバイナーの数及び設計に影響を及ぼす制約を受ける。実際に、コスト及び電力を考慮すると、無線周波数(RF)チェーンをアンテナごとに割り当てることは困難である可能性がある。
【0050】
RFチェーンの数を削減する一般的な解決策は、ハイブリッドアナログ/デジタルMIMOアーキテクチャである。
【0051】
図1は、従来のハイブリッドアーキテクチャの一例である。
【0052】
従来のMIMOアーキテクチャによれば、複数の送信アンテナ121,...,12Nを有する送信機11によって、信号T1,T2,...,TNを複数の受信アンテナ131,...,13Nを有する受信機12に送信することができる。受信機12の出力では、信号R1,R2,...,RNが得られる。
【0053】
ハイブリッドアーキテクチャでは、処理は、アナログ領域とデジタル領域とに分割される。送信機側では、プリコーディングが、ベースバンドデジタルプリコーディングユニット110及びRFアナログプリコーディングユニット120によって実行される。デジタル分岐の数、例えば、L個(L≦Nである。ここで、Nは送信アンテナの数を示す)は、RFチェーン111,...,11Lの数に等しい。
【0054】
同様に、受信機側では、結合が、RFアナログ結合ユニット140及びベースバンドデジタル結合ユニット150によって実行される。デジタル分岐の数、例えば、L個(L≦Nである。ここで、Nは受信アンテナの数を示す)は、RFチェーン11,...,1の数に等しい。
【0055】
したがって、送信機側及び受信機側の双方におけるRFチェーンの数は、送信アンテナ及び受信アンテナの数よりも少ない。
【0056】
第1の実施形態では、提案された本発明は、限定ではなく例として、狭帯域ブロックフェージングチャネルの推定に用いることができる。このチャネルは、ここではHによって示されるベースバンドチャネル行列によってモデル化することができる。この行列は、サイズN×Nの複素数値行列であり、N及びNは、それぞれ受信及び送信の際のアンテナの数である。
【0057】
チャネル行列Hも、角度領域において表すことができる。Hによって示される取得された行列は、以下の式によってHに関連付けられる。
【数8】
【0058】
ここで、Hは、角度座標で表されたチャネル行列であり、D及びDは、その列が、通例、ステアリング方向に対応する基底(又は辞書)行列である。Xは、行列Xの共役転置行列を示す。
【0059】
前述したように、ミリ波伝播では、高いパス減衰及びパス損失に起因して、少数のパスしか大きな利得を有しない。アンテナアレイが高い指向性を有するとき、Hによって示される、角度領域において表されたチャネル行列は、通例、スパースである。このスパースであることは、この行列が少数の非ゼロのエントリしか有しないことを意味する。
【0060】
チャネル推定の1つの目的は、(未知の)行列Hを推定することとすることができる。
【0061】
図2は、本発明の可能な実施形態によるチャネル推定方法の異なるステップを示すフローチャートである。
【0062】
ステップ201において、「パイロット」とも呼ばれるL個のベクトル信号のセット
【数9】
が、送信機から受信機に送信される。これらのパイロットは、受信機によって知られている。第1の実施形態では、パイロットは、特定の受信機に適合するように調整されない。別の実施形態では、パイロットは、複数の受信機によってチャネル推定に用いることができる。
【0063】
ステップ202において、L個のコンバイナー
【数10】
が、受信アンテナにおいて受信された信号に適用される。この処理によって、チャネル推定に用いることができる測定値が生成される。
【0064】
例えば、1つのパイロットp及び1つのコンバイナーqから生成され、デジタル結合ユニット(図1の要素150)の関連した出力において収集されるスカラー測定値yは、以下の式に従ってモデル化することができる。
【数11】
【0065】
ここで、nは、例えば、ゼロ平均複素ガウス雑音であると仮定することができる(スカラー)測定雑音を示す。
【0066】
ステップ203において、存在する伝播パスに関連したAODを求めることが実行される。「存在する」(又は「可能な」)伝播パスは、送信アンテナのアレイから受信アンテナのアレイへの、利得が十分大きなパスを意味する。したがって、1つの実施形態では、この求めるステップは、異なるパスの利得が大きいか否かを評価する基準を固定することによって実行される。
【0067】
ステップ204において、事前に回復されたAODに基づいて、伝播パスを完全に求めること(例えば、AOA、振幅及び位相等の他のパラメーターを求めること)が達成される。ステップ204の終わりには、角度領域におけるチャネル行列Hの推定値が利用可能になる。
【0068】
1つの実施形態では、ステップ203及び204は、受信機において実行することができる。別の実施形態では、このアーキテクチャは、(例えば、周波数分割複信システムにおいて)チャネル相反性を仮定し、これらのステップは、送信機においてアップリンクパイロットを用いて実行することができる。
【0069】
従来技術では、全てのパラメーター(例えば、AOD及びAOA)を同時に求めるために、通例、1つのステップしか実行されないことに留意されたい。本方法では、異なるパラメーターを求めることは、2つの異なるステップ(203及び204)において行われる。
【0070】
一方におけるAODを求めることと、他方におけるチャネルパスに関連した他のパラメーターの推定とを分離することによって、アルゴリズムの計算複雑度が低減される。
【0071】
求められた各伝播パスについて、第1のステップの複雑度は、実際は、送信アンテナの数に比例し、ステップ2の複雑度は、受信アンテナの数に比例する。この解決策の全体の複雑度は、ステップ1及び2の複雑度の和に等しい。したがって、この複雑度は、AOD及びAOAが同時に回復される既存の解決策の場合のように、送信及び受信の際のアンテナの数の積の関数ではない。
【0072】
図3は、本発明の可能な実施形態において存在する伝播パスに関連したAODを求めることを説明するフローチャートである。この図は、図2のステップ203の可能な実現例を提示している。
【0073】
送信アンテナ及び1つのコンバイナーq(j∈{1,...,L})の出力は、多入力単一出力(MISO)システムとして見ることができる。このMISOシステムの等価チャネルベクトルは、以下の式のように、MIMOチャネル行列にコンバイナーベクトルを乗算することによって取得することができる。
【数12】
【0074】
等価MISOチャネルベクトルは、以下のように、角度座標において表すことができる。
【数13】
【0075】
ミリ波の用途では、ベクトルha,jは、スパースであると予想される。ベクトルha,jのエントリは、AODに関連付けられている。その場合、存在する伝播パスのAODの推定は、測定値301のセット(このセットは、通常、図2のステップ202の終わりに取得される)に基づいてベクトルha,jを推定することによって行うことができる。
【0076】
例えば、
【数14】
がL個のパイロット
【数15】
によって構成された行列を示す場合、各コンバイナーq(j∈{1,...,L})について、L個の測定値が受信機において利用可能であり、これらの測定値は、以下の式によって与えることができる。
【数16】
【0077】
ここで、yは測定値ベクトルであり、nは測定値雑音ベクトルである。
【0078】
1つのコンバイナーは、1つのMISOチャネルベクトルを規定する。複数のコンバイナーの場合、角度領域において表されたMISOチャネルベクトルは、非ゼロのエントリの同じサポートを共有するか、又は、換言すれば、伝播パスが存在する同じAODを共有する。これは、これらのチャネルを構成する物理伝播パスが同じであることに起因する。
【0079】
これらの全てのスパースベクトルのサポートを同時に回復することによって、回復精度は改善されることが期待される。圧縮センシング(CS)ツールは、同時スパース回復の幾つかのアルゴリズムを提供する。1つのそのようなアルゴリズムは、例えば、各反復において、スパースベクトルの新たな非ゼロのエントリを特定する反復的なアルゴリズムである同時直交マッチング追跡(SOMP)である。このアルゴリズムの反復は、停止基準が満たされたときに終了する。停止基準は、例えば、既定の反復の数に達すること、又は残余が閾値を下回ることとすることができる。残余は、探索されたスパースベクトルの既に特定されたエントリの寄与度を測定値から減算することによって取得される。
【0080】
次に、このAOD推定手順は、以下のように説明することができる。
−ステップ302において、カウント変数kは、k=0に初期化される。
−次に、停止基準が満たされているか否かを知るための検査(ステップ303)が行われる。
−基準が満たされている場合、アルゴリズムは終了し、回復されたAODのセットが出力において生成される。
−そうでない場合、存在するパスに関連したAODが求められ(ステップ304)、回復されたAODのセットに追加され(ステップ305)、カウント変数kがインクリメントされ(k←k+1)、検査303が再度行われる。
【0081】
SOMP反復の終了によって、出力は、MISOチャネルベクトルの角度領域表現の推定値となる。L個の中からの第jのコンバイナーqについて、アルゴリズムは、角度座標で表された等価チャネルha,jの推定値
【数17】
を提供する。このアルゴリズムの終わりに、推定値のセット
【数18】
(要素306)が利用可能となる。
【0082】
a,jの推定のために行われたSOMPの反復の数をkで示すことにする。その場合、推定ベクトル
【数19】
(ただし、j∈{1,...,L})は、k個の非ゼロのエントリのみを有する。これらの非ゼロのエントリのインデックスは、ゼロに等しくないものとして特定されたHの列に対応するか、又は、換言すれば、伝播パスに対応するAODに対応する。
【0083】
AODを推定する手順は、受信機においてパイロットが知られているだけでなく、辞書行列Dも知られていることが必要であることに留意することができる。換言すれば、送信機アンテナアレイの幾何形状が、受信機において知られている必要がある。この幾何形状を規定する幾つかのパラメーターは、例えば、等間隔直線アレイ(ULA)の場合のアンテナ間隔、均一平面アレイ(UPA)の場合のアンテナの行及び列の数並びに垂直アンテナ間隔及び水平アンテナ間隔、又はアンテナ偏波情報である。
【0084】
図4は、本発明の可能な実施形態において伝播パスを求めることを説明するフローチャートである。この図は、図2のステップ204の可能な実現例を提示している。
【0085】
図4に表されたフローチャートの入力は、事前に求められた推定値
【数20】
である。前述したように、これらのベクトル
【数21】
(ただし、j∈{1,...,L})は、固定数kの非ゼロのエントリを有する。
【0086】
【数22】
の第qの非ゼロのエントリ(スカラー)を
【数23】
で示し、以下のベクトルを定義する。
【数24】
【0087】
ここで、Yは、ベクトルYの転置ベクトルを示す。このベクトルは、以下のように記述することができる。
【数25】
【0088】
ここで、
【数26】
は、コンバイナーの行列であり、Ha,qは、ゼロに等しくないとして特定されるHの第q列であり、nは、推定雑音ベクトルである。ゼロに等しくないとして特定されるHの列の総数はkである。
【0089】
ベクトルvは、Ha,qの測定値ベクトルとして見ることができ、CSアルゴリズム、例えば直交マッチング追跡(OMP)アルゴリズムによってHa,qを回復するのに用いることができる。OMP反復の数は、Ha,qに関連付けられたAODの回復されたパスの数に対応する。
【0090】
次に、この伝播パス推定手順は、以下のように説明することができる。
−ステップ401において、カウント変数qが0に初期化される(q=0);
−ステップ402において、現在の変数qがkと比較され、手順を停止しなければならないか否かが判断される:
−q≦k(検査KO)である場合、回復動作が適用され、vに基づいてHa,qが推定される(ステップ403);カウント変数qは、その後、インクリメントされる(ステップ404:q←q+1);
−q>k(検査OK)である場合、手順は終了し、Ha,qの推定値
【数27】
の完成したセット(405)が出力において得られる。その後、これらの推定値
【数28】
に基づいて行列Hの推定値
【数29】
を構築することが可能である。
【0091】
この手順は、このように、k個のベクトルHa,q(q∈{1,...,k})に対してk個の回復動作を適用することを必要とすることに留意しなければならない。好ましい実施形態では、これらの動作は並列に実施される。
【0092】
の推定値は、行列Hを計算する必要なく、ビームフォーミングプリコーダー及びビームフォーミングコンバイナーの設計又は送信機へのCSIのフィードバックに用いることができる。
【0093】
図5は、本発明を可能にするデバイスの可能な実施形態である。
【0094】
この実施形態では、デバイス500は、コンピューターを備え、このコンピューターは、プログラム命令を記憶するメモリ505を備える。これらのプログラム命令は、回路内にロード可能であり、これらのプログラム命令が回路504によって実行されると、本発明の上記ステップを回路504に実行させるように適合されている。
【0095】
メモリ505は、上述したような本発明のステップを実行するためのデータ及び有用な情報も記憶することができる。
【0096】
回路504は、例えば、以下のものとすることができる。
−コンピューター言語による命令を解釈するように適合されたプロセッサ若しくは処理ユニットとすることができる。このプロセッサ若しくは処理ユニットは、命令を含むメモリを備えることもできるし、このようなメモリに関連付けることもできるし、このようなメモリに取り付けることもできる。
−或いは、プロセッサ/処理ユニットとメモリとを関連付けたものとすることができる。このプロセッサ若しくは処理ユニットは、コンピューター言語による命令を解釈するように適合され、メモリは上記命令を含む。
−或いは、本発明のステップがシリコン内に記載された電子カードとすることができる。
−或いは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイを意味する)チップ等のプログラマブル電子チップとすることができる。
【0097】
このコンピューターは、本発明による上記方法に用いられる測定値の受信用の入力インターフェース503と、推定されたベクトルのセット
【数30】
(ただし、q∈{1,...,k})又は推定された行列
【数31】
のいずれかを提供する出力インターフェース506とを備える。
【0098】
コンピューターとのインターラクションを容易にするために、画面501及びキーボード502を提供して、コンピューター回路504に接続することができる。
【0099】
さらに、図2に表されたフローチャートは、例えば、受信機に配置されたプロセッサによって実行することができるプログラムのステップを表すことができる。したがって、図2は、本発明の意味の範囲内でコンピュータープログラムの一般的なアルゴリズムのフローチャートに対応することができる。
【0100】
代替の実現態様では、回復順序は逆にされ、AOAが最初に回復され、残りのパスパラメーターは、推定されたAOAに基づいて、その後に回復される。順序を逆にすることによって、送信及び受信の際のアンテナの数と、プリコーダー及びコンバイナーの数とに応じて、回復精度が改善される可能性もあるし、劣化する可能性もある。
【0101】
本発明は、周波数選択性チャネルの推定に適用することができる。例えば、直交周波数分割多重化(OFDM)のようなシステムでは、複数の周波数部分帯域においてMIMOチャネル行列を構成するパスは、同じAOD及びAOAを共有し、位相及び振幅のみが異なる。したがって、複数の部分帯域又は副搬送波にわたるAOD及びAOAの同時回復によって、回復精度を改善することができる。SOMPは、この目的に適用することができる。符号分割多元接続(CDMA)のようなシステム又は超広帯域(UWB)のようなシステムでは、本発明を適用して、受信機の相関器分岐の出力においてMIMOチャネルを推定することができる。CDMAシステムにおける受信機の一例は、複数の相関器分岐を有するレイク受信機である。
【0102】
代替として、第1の動作ステップは、2回適用することができる。ここで、第1の適用は、可能なパスの発射角のセットを求めるためのものであり、第2の適用は、可能なパスの到来角のセットを求めるためのものである。その場合、可能なパスのセットは、2つの求められたセットのデカルト積である。
【0103】
A及びBの「2つのセットのデカルト積」は、全ての順序対(a,b)のセットを意味する。ここで、a∈Aであり、b∈Bである。
【0104】
その場合、ステップ2において、可能なパスのセットの中からパスが探索され、それらの振幅及び位相が計算される。
【0105】
本方法は、基地局とユーザー機器又は端末との間のセルラーアクセス、2つのエッジセル間又はエッジセルとコアネットワークとの間のバックホール、ポイントツーポイント通信及びデバイスツーデバイス通信等の多くの用途に用いることができる。
【0106】
もちろん、本発明は、例として上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、他の変形形態に拡張される。
【0107】
例えば、この解決策は、行列Hがスパースではなく、圧縮可能であるときも適用される。Hは、この行列が少数の支配的なエントリを有し、非支配的なエントリをゼロに設定しても、重大なエラーを招かない場合に圧縮可能であると言われる。
【0108】
代替の実現態様では、第1の推定手順の出力におけるAODは、送信機にフィードバックされ、ビームフォーミングプリコーダーを設計するのに利用される。その場合、ビームフォーミングされたパイロットが送信され、AOAの回復及びビームフォーミングコンバイナーの設計に用いられる。このストラテジーの利点は、ビームフォーミングされたパイロットのSNRの向上から得られる。
図1
図2
図3
図4
図5