(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6685632
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】蓄熱式燃焼設備
(51)【国際特許分類】
F23L 15/02 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
F23L15/02
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-207720(P2019-207720)
(22)【出願日】2019年11月18日
【審査請求日】2019年11月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
(72)【発明者】
【氏名】北村 和也
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−103668(JP,A)
【文献】
特開平09−257240(JP,A)
【文献】
特開平09−053114(JP,A)
【文献】
特開平09−170749(JP,A)
【文献】
特開平10−219354(JP,A)
【文献】
特開平09−112881(JP,A)
【文献】
特開平06−193862(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0127313(KR,A)
【文献】
特開平10−096512(JP,A)
【文献】
特開平11−006616(JP,A)
【文献】
特開2012−107827(JP,A)
【文献】
特開2012−112588(JP,A)
【文献】
特開2007−003036(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103851609(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる一方の蓄熱式燃焼バーナーと、燃料供給ノズルからの燃料の供給を停止させると共に、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させるようにした他方の蓄熱式燃焼バーナーとによって燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるように対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備において、炉内で燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱式燃焼バーナーにおける蓄熱容器に導く前の位置に冷却用空気を供給する冷却空気供給手段を設け、燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く側に設けられた冷却空気供給手段から冷却用空気を供給する一方、燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く側に設けられた冷却空気供給手段から冷却用空気を供給した場合に、炉内で燃焼された後の高温の燃焼排ガスの一部を炉内から排出させる排ガス排出手段を設け、前記の排ガス排出手段によって排出させる高温の燃焼排ガスの量を、前記の冷却空気供給手段から燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く側に供給する冷却用空気の供給量に応じて決定することを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄熱式燃焼設備において、燃料を燃焼された後の前記の燃焼排ガスの温度が蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼす温度以上になる場合に、燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く部分に設けられた冷却空気供給手段から冷却用空気を供給することを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄熱式燃焼設備において、燃焼排ガスの温度が1400℃以上になった場合に、前記の冷却用空気を供給することを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記の蓄熱式燃焼バーナーにより燃料を炉内で燃焼させる燃焼時における空気比を1以上したことを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記の排ガス排出手段として、前記の炉内における高温の燃焼排ガスを排出させる煙道を設けると共に、この煙道を通して排出させる高温の燃焼排ガスの量を制御する制御装置を設けたことを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の蓄熱式燃焼設備において、前記の冷却空気供給手段を設ける前記の蓄熱容器に導く前の位置とは、前記の蓄熱式燃焼バーナーを取り付ける炉の近傍であることを特徴とする蓄熱式燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる一方の蓄熱式燃焼バーナーと、燃料供給ノズルからの燃料の供給を停止させると共に、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させるようにした他方の蓄熱式燃焼バーナーとにおいて燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるように対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備に関するものである。特に、前記の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させ、燃料を炉内で燃焼させてセラミックスなどの被処理物を加熱処理する場合、燃料を燃焼させて炉内を加熱させる温度を高温にすることが必要になって、燃焼排ガスの温度も高温になり、燃焼を行わない他方の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、このように高温になった炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に蓄熱させる場合に、耐火物で構成された蓄熱容器が高温になった燃焼排ガスによって耐久性が低下するのを適切に防止できるようにした点に特徴を有するものである。なお、ここでいう高温とは、蓄熱容器に悪影響を及ぼすような温度、例えば、1400℃以上の温度をいう。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼材などの各種の被処理物を加熱処理する工業炉などにおいては、炉内において燃料を燃焼させた燃焼排ガスの熱を有効に利用するように、特許文献1等に示されるように、炉内において燃料を燃焼させた後の燃焼排ガスを耐火物で構成された蓄熱容器に導き、燃焼排ガスの熱を前記の蓄熱容器内に収容させたセラミック製のボールやハニカム等の蓄熱体に蓄熱させる一方、前記のようにして蓄熱体に蓄熱された蓄熱容器内を通して燃焼用空気を加熱させ、このように加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させるようにし、このような操作を交互に切り換える対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備が広く利用されている。
【0003】
ここで、前記のように蓄熱式燃焼バーナーにおいて、蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させ、燃料を炉内で燃焼させて被処理物を加熱処理する場合、セラミックスなどの被処理物を加熱処理する場合には、燃料を燃焼させて炉内を加熱させる温度を高温にすることが必要になって、燃焼排ガスの温度も高温になり、燃焼を行わない他方の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、このように高温になった燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて、蓄熱容器に収容された蓄熱体に蓄熱させる場合に、耐火物で構成された蓄熱容器が高温になった燃焼排ガスによって耐久性が低下するという問題があった。
【0004】
なお、前記の特許文献1に示す蓄熱式燃焼設備においては、燃焼時における
空気比を1.0未満にするとともに、排気状態にある蓄熱式バーナーの蓄熱室(蓄熱容器)の高温側空間に燃焼用空気を供給して燃焼排ガス中の未燃分を完全燃焼させることが示されているが、前記のような問題を解決することはできないものであり、さらに、前記のように排気状態にある蓄熱式バーナーの蓄熱室の高温側空間に燃焼用空気を供給して燃焼排ガス中の未燃分を完全燃焼させるため、蓄熱室(蓄熱容器)に導かれる燃焼排ガスの温度がさらに高くなって、蓄熱室(蓄熱容器)の耐久性がさらに低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−141232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる一方の蓄熱式燃焼バーナーと、燃料供給ノズルからの燃料の供給を停止させると共に、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させるようにした他方の蓄熱式燃焼バーナーとにおいて燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるように対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備における前記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0007】
すなわち、本発明においては、前記のような蓄熱式燃焼バーナーにおいて、蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させ、燃料を炉内で燃焼させてセラミックスなどの被処理物を加熱処理する場合、燃料を燃焼させて炉内を加熱させる温度を高温にすることが必要になって、燃焼排ガスの温度も高温になり、燃焼を行わない他方の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、このように高温になった燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に蓄熱させる場合に、耐火物で構成された蓄熱容器が高温になった燃焼排ガスによって耐久性が低下するのを適切に防止できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄熱式燃焼設備においては、前記のような課題を解決するため、蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる一方の蓄熱式燃焼バーナーと、燃料供給ノズルからの燃料の供給を停止させると共に、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させるようにした他方の蓄熱式燃焼バーナーとによって燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるように対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備において、炉内で燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱式燃焼バーナーにおける蓄熱容器に導く前の位置に冷却用空気を供給する冷却空気供給手段を設け、燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く側に設けられた冷却空気供給手段から冷却用空気を供給する一方、炉内で燃焼された後の高温の燃焼排ガスの一部を炉内から排出させる排ガス排出手段を設け
、前記の排ガス排出手段によって排出させる高温の燃焼排ガスの量を、前記の冷却空気供給手段から燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く側に供給する冷却用空気の供給量に応じて決定するようにした。なお、蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる側の蓄熱式燃焼バーナーにおいては、前記の冷却空気供給手段から冷却用空気を供給させないようにする。
【0009】
そして、本発明の蓄熱式燃焼設備のように、燃焼と蓄熱とを交互に切り換えて行う対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備において、冷却空気供給手段から燃料が燃焼された後の燃焼排ガスが炉内から蓄熱容器に導かれる部分に冷却用空気を供給すると、このように供給された冷却用空気により蓄熱容器に導かれる燃焼排ガスの温度が低下されて、燃焼排ガスによって蓄熱容器の耐久性が低下するのが防止されるようになる。
【0010】
ここで、前記の蓄熱式燃焼設備において、特に燃焼排ガスの温度が一般的な耐火物で構成された蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼす温度以上である場合には、冷却空気供給手段から燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導かれる部分に冷却用空気を供給させて、燃焼排ガスの温度を蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼさない温度に低下させるようにすることが好ましい。
【0011】
また、一般的な耐火物で構成された蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼすのは約1400℃以上である。なお、冷却用空気を供給し始める温度は、1400℃ちょうどでなくても、1400℃以上のどの温度でもよい。
【0012】
また、本発明に係る蓄熱式燃焼設備において
は、前記のように燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導かれる部分に、冷却空気供給手段から冷却用空気を供給した場合には、炉内で燃焼された後の高温の燃焼排ガスの一部を炉内から排出させる排ガス排出手段を設けた。このようにすると、前記のように燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導かれる部分に、冷却空気供給手段から冷却用空気を供給した場合
においても、炉内で燃焼された後の高温の燃焼排ガスの一部が排ガス排出手段によって排出されるようになり、蓄熱容器を通して排気させる燃焼排ガスの量が増加
するのを防止することができる。このため、増加した燃焼排ガスを排出させるように、大型の排気装置
を設けたり、このような排気装置による燃焼排ガスの排気量を制御したりする必要
がなくなる。
【0013】
また、本発明に係る蓄熱式燃焼設備において、前記のように燃焼された後の高温の燃焼排ガスの一部を炉内から排出させる排ガス排出手段としては、前記の炉内における高温の燃焼排ガスを排出させる煙道を設けると共に、この煙道を通して排出させる高温の燃焼排ガスの量を制御する制御装置を設けるようにすることができる。このようにようにすると、従来から炉に設けられている煙道を利用して、排出させる高温の燃焼排ガスの量を制御装置により制御することができ、別に、炉内における高温の燃焼排ガスを排出させるための装置を新たに設ける必要がなく、設備に要するコストを低減できるようになる。
【0014】
また、本発明に係る蓄熱式燃焼設備において
は、前記のように冷却空気供給手段から冷却用空気を供給した場合に、前記の燃焼された後の高温の燃焼排ガスの一部を排ガス排出手段により炉内から排出させるにあたっ
て、冷却空気供給手段から供給する冷却用空気の供給量に対応するようにして、前記の排ガス排出手段により炉内から燃焼排ガスの一部を排出させる量を決定
するようにしている。具体的には、冷却用空気を炉内に供給しても、炉内の圧力が変動しないように、燃焼排ガスの一部を排出させる量を調整して排出する。
【0015】
また、燃焼排ガスが蓄熱容器に導かれる前の位置に冷却空気供給手段を設けるにあたっては、その位置が蓄熱式燃焼バーナーを取り付ける炉の近傍であることが好ましい。そのようにすれば、冷却用空気が蓄熱容器の全体に広がりやすくなり、蓄熱容器に導かれる燃焼排ガスの温度を低下でき、蓄熱容器全体の耐久性が低下するのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における蓄熱式燃焼設備においては、前記のように蓄熱体を収容させた耐火物で構成された蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる一方、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させるようにし、燃焼と蓄熱とを交互に行う対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備において、炉内で燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱式燃焼バーナーにおける蓄熱容器に導く前の位置に冷却用空気を供給する冷却空気供給手段を設け、燃料を燃焼された後の燃焼排ガスの温度が前記の蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼす高温である場合に、冷却空気供給手段から燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く部分に冷却用空気を供給させるようにした。
【0017】
このように、本発明における蓄熱式燃焼設備においては、冷却空気供給手段から炉内で燃焼された後の燃焼排ガスを蓄熱式燃焼バーナーにおける蓄熱容器に導く部分に冷却用空気を供給させるようにしたため、炉内で燃料を燃焼された後の燃焼排ガスの温度が蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼす高温であっても、この燃焼排ガスに対して冷却空気供給手段から冷却用空気を供給することにより、蓄熱容器に導かれる燃焼排ガスの温度が低下され、燃焼排ガスによって蓄熱容器の耐久性が低下するのを防止できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄熱式燃焼設備を炉に設けて使用する例を示し、対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備における第1の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、蓄熱体を収容させた蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる一方、第2の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させるにあたり、炉内で燃焼された後の燃焼排ガスを第2の蓄熱式燃焼バーナーにおける蓄熱容器に導く前の位置に冷却空気供給手段から冷却用空気を供給する一方、過剰な燃焼排ガスを炉内から煙道を通して排出させる状態を示した概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態における蓄熱式燃焼設備において、対になった蓄熱式燃焼バーナーにおける燃焼と蓄熱とを切り換える場合を示し、第2の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、蓄熱体を収容させた蓄熱容器を通して加熱された燃焼用空気と、燃料供給ノズルから供給された燃料とを混合させて、燃料を炉内で燃焼させる一方、第1の蓄熱式燃焼バーナーにおいて、炉内において燃料が燃焼された後の燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導いて蓄熱容器に収容された蓄熱体に燃焼排ガスの熱を蓄熱させるにあたり、炉内で燃焼された後の燃焼排ガスを第1の蓄熱式燃焼バーナーにおける蓄熱容器に導く前の位置に冷却空気供給手段から冷却用空気を供給する一方、過剰な燃焼排ガスを炉内から煙道を通して排出させる状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る蓄熱式燃焼設備を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る蓄熱式燃焼設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0020】
この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、蓄熱式燃焼バーナー10として、
図1及び
図2に示すように、対になった第1の蓄熱式燃焼バーナー10aと第2の蓄熱式燃焼バーナー10bとを工業炉からなる炉1の内部に向けて対向するように設け、対になった各蓄熱式燃焼バーナー10a,10bにおいては、それぞれ燃料を炉1内に導く燃料供給管11a,11bを設けると共に、レンガなどの耐火物で構成された蓄熱容器12a,12bを設け、各蓄熱容器12a,12b内には、それぞれ蓄熱容器12a,12bよりも耐熱性の高い蓄熱体xを収容させている。
【0021】
ここで、
図1に示した蓄熱式燃焼設備においては、一方の蓄熱式燃焼バーナー10aにおいて、燃料供給管11aに設けた弁11a1を開けて、燃料を炉1の内部に向けて供給する一方、他方の蓄熱式燃焼バーナー10bにおいて、燃料供給管11bに設けた弁11b1を閉じて、燃料が炉1の内部に供給させないようにしている。なお、この実施形態における蓄熱式燃焼設備において、
図1及び
図2に示した前記の弁11a1,11b1及び後述する各弁については、それぞれ弁を開いた状態を白抜きで示し、弁を閉じた状態を黒塗りで示すようにした。
【0022】
そして、
図1に示した蓄熱式燃焼設備においては、一方の蓄熱式燃焼バーナー10aにおいて、前記のように燃料供給管11aに設けた弁11a1を開けて、燃料を炉1の内部に向けて供給すると共に、給気装置20から燃焼用空気を前記の一方の蓄熱式燃焼バーナー10a側に設けた一方の蓄熱容器12aに導く空気案内経路21aに設けた弁21a1を開ける一方、この一方の蓄熱容器12aから燃焼排ガスを排気装置30に導く排ガス経路31aに設けた弁31a1を閉じるようにし、前記の燃焼用空気を前記の蓄熱式燃焼バーナー10a側に設けた一方の蓄熱容器12aに収容されて蓄熱された状態にある蓄熱体xを通して加熱させ、このように加熱された燃焼用空気と前記の燃料供給管11aから供給された燃料とを混合させて燃料を炉1の内部に向けて燃焼させるようにしている。
【0023】
一方、
図1に示した蓄熱式燃焼設備において、他方の蓄熱式燃焼バーナー10bにおいては、前記のように燃料供給管11bに設けた弁11b1を閉じて、燃料を炉1の内部に向けて供給させないようにすると共に、給気装置20から燃焼用空気を前記の他方の蓄熱式燃焼バーナー10b側に設けた他方の蓄熱容器12bに導く空気案内経路21bに設けた弁21b1を閉じて、燃焼用空気を他方の蓄熱容器12bに導かないようにし、この状態で、この他方の蓄熱容器12bから燃焼排ガスを排気装置30に導く排ガス経路31bに設けた弁31b1を開けて、前記のように炉1の内部において燃料を燃焼させた後の燃焼排ガスを前記の蓄熱容器12bに導き、この蓄熱容器12bに収容された蓄熱体xに燃焼排ガスの熱を蓄熱させた後、蓄熱後の燃焼排ガスを前記の排ガス経路31bを通して排気装置30により排気させるようにしている。
【0024】
ここで、この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、各蓄熱式燃焼バーナー10a,10bに設けられた各蓄熱容器12a,12bに導かれる燃焼排ガスの温度を低下させるための冷却空気を供給する冷却空気供給手段40を設け、冷却空気供給手段40から冷却用空気を、燃焼排ガスを炉1内からそれぞれの蓄熱容器12a,12bに導く部分に供給する冷却用空気案内管41a,41bを設けると共に、これらの冷却用空気案内管41a,41bにそれぞれ開閉弁41a1,41b1を設けている。
【0025】
また、この実施形態における蓄熱式燃焼設備においては、炉1内において燃焼された燃焼排ガスの一部を炉1内から排出させる排ガス排出手段50として、炉1の天井部1aに、炉1の内で燃料を燃焼させた燃焼排ガスの一部を排出させるための煙道50を設け、この煙道50を通して排出させる燃焼排ガスの量を制御するために、この煙道50にダンパー等の制御弁51からなる制御装置51を設けている。
【0026】
そして、
図1に示した蓄熱式燃焼設備における一方の蓄熱式燃焼バーナー10aにおいて、前記のように加熱された燃焼用空気と燃料供給管11aから供給された燃料とを混合させて炉1の内部で燃料を燃焼させたときにおける燃焼排ガスの温度が高くなり、このような燃焼排ガスが導かれる他方の蓄熱式燃焼バーナー10bに設けられた他方の蓄熱容器12bの耐久性に悪影響を及ぼすような場合には、前記の冷却空気供給手段40から冷却用空気を他方の蓄熱式燃焼バーナー10bに設けた他方の蓄熱容器12bに導く冷却用空気案内管41bに設けた開閉弁41b1を開けて、冷却用空気を燃焼排ガスが炉1内から前記の蓄熱容器12bに導かれる部分に供給し、他方の蓄熱容器12bに導かれる燃焼排ガスの温度をこの冷却用空気により前記の蓄熱容器12bの耐久性に悪影響を及ぼさない温度に低下させて、このように温度が低下した燃焼排ガスを前記の蓄熱容器12bに導くようにする。なお、前記の冷却空気供給手段40から燃焼を行っている一方の蓄熱式燃焼バーナー10a側に冷却用空気を導く冷却用空気案内管41aにおいては、この冷却用空気案内管41a設けた開閉弁41a1を閉じた状態にして、冷却用空気が一方の蓄熱式燃焼バーナー10a側に供給されないようにしている。
【0027】
ここで、前記のように冷却空気供給手段40から冷却用空気を、燃焼排ガスが炉1内から他方の蓄熱式燃焼バーナー10bに設けた他方の蓄熱容器12bに導く部分に供給すると、前記の蓄熱容器12bに収容された蓄熱体xに燃焼排ガスの熱を蓄熱させた後における燃焼排ガスの量が増加して、前記の排ガス経路31bを通して排気装置30により排気させる排気量が増加し、排気装置30として大型の装置を用いたり、排気量を適切に制御させたりことが必要になって、コストが高くついたりする。
【0028】
このため、
図1に示した蓄熱式燃焼設備においては、前記のように燃焼排ガスが炉1内から他方の蓄熱式燃焼バーナー10bに設けた他方の蓄熱容器12bに導く部分に、冷却空気供給手段40から冷却用空気を供給する場合には、炉1の天井部1aに設けた炉1内における燃焼排ガスの一部を排出させるための煙道50に設けた制御弁51を調整し、冷却空気供給手段40から他方の蓄熱容器12bに導く部分に供給した冷却用空気の量に対応するようにして、煙道50を通して炉1内から排出させる高温の燃焼排ガスの量を調整するようにしている。このようにすると、排気装置30により排気させる燃焼排ガスの量が増加するのが防止され、排気装置30として大型の装置を用いたり、排気量を適切に制御させたりする必要がなくなる。なお、このように煙道50を通して炉1内から高温の燃焼排ガスを排出させる場合、この高温の燃焼排ガスの熱を有効に利用するように、前記の煙道50に熱交換器(図示せず)などを設けて、燃焼排ガスの熱を有効に利用させるようにすることが好ましい。
【0029】
次に、
図2に示した蓄熱式燃焼設備においては、前記の
図1に示した蓄熱式燃焼設備の場合とは、一方の蓄熱式燃焼バーナー10aと他方の蓄熱式燃焼バーナー10bとにおける燃焼と蓄熱とを切り換えるようにしている。
【0030】
ここで、
図2に示した蓄熱式燃焼設備においては、他方の蓄熱式燃焼バーナー10bにおいて、燃料供給管11bに設けた弁11b1を開けて、燃料を炉1の内部に向けて供給する一方、一方の蓄熱式燃焼バーナー10aにおいて、燃料供給管11aに設けた弁11a1を閉じて、燃料を炉1の内部に供給させないようにしている。
【0031】
そして、
図2に示した蓄熱式燃焼設備においては、他方の蓄熱式燃焼バーナー10bにおいて、前記のように燃料供給管11bに設けた弁11b1を開けて、燃料を炉1の内部に向けて供給すると共に、給気装置20から燃焼用空気を前記の他方の蓄熱式燃焼バーナー10b側に設けた他方の蓄熱容器12bに導く空気案内経路21bに設けた弁21b1を開ける一方、この他方の蓄熱容器12bから燃焼排ガスを排気装置30に導く排ガス経路31bに設けた弁31b1を閉じるようにし、前記の燃焼用空気を前記の蓄熱式燃焼バーナー10b側に設けた他方の蓄熱容器12bに収容されて蓄熱された状態にある蓄熱体xを通して加熱させ、このように加熱された燃焼用空気と前記の燃料供給管11bから供給された燃料とを混合させて燃料を炉1の内部に向けて燃焼させるようにしている。
【0032】
一方、
図2に示した蓄熱式燃焼設備において、一方の蓄熱式燃焼バーナー10aにおいては、
図1に示した他方の蓄熱式燃焼バーナー10bの場合と同様に、前記のように燃料供給管11aに設けた弁11a1を閉じて、燃料を炉1の内部に向けて供給させないようにすると共に、給気装置20から燃焼用空気を前記の一方の蓄熱式燃焼バーナー10a側に設けた一方の蓄熱容器12aに導く空気案内経路21aに設けた弁21a1を閉じて、燃焼用空気を一方の蓄熱容器12aに導かないようにし、この状態で、この一方の蓄熱容器12aから燃焼排ガスを排気装置30に導く排ガス経路31aに設けた弁31a1を開けて、前記のように炉1の内部において燃料を燃焼させた後の燃焼排ガスを前記の蓄熱容器12aに導き、この蓄熱容器12aに収容された蓄熱体xに燃焼排ガスの熱を蓄熱させた後、蓄熱後の燃焼排ガスを前記の排ガス経路31aを通して排気装置30により排気させるようにしている。
【0033】
そして、
図2に示した蓄熱式燃焼設備における他方の蓄熱式燃焼バーナー10bにおいて、前記のように加熱された燃焼用空気と燃料供給管11bから供給された燃料とを混合させて炉1の内部で燃料を燃焼させたときにおける燃焼排ガスの温度が高くなり、このような燃焼排ガスが導かれる一方の蓄熱式燃焼バーナー10aに設けられた他方の蓄熱容器12aの耐久性に悪影響を及ぼすような場合には、前記の
図1に示した蓄熱式燃焼設備の場合とは逆に、前記の冷却空気供給手段40から冷却用空気を一方の蓄熱式燃焼バーナー10aに設けた一方の蓄熱容器12aに導く冷却用空気案内管41aに設けた開閉弁41a1を開けて、冷却用空気を燃焼排ガスが炉1内から前記の蓄熱容器12aに導かれる部分に供給し、一方の蓄熱容器12aに導かれる燃焼排ガスの温度をこの冷却用空気により前記の蓄熱容器12aの耐久性に悪影響を及ぼさない温度に低下させて、このように温度が低下した燃焼排ガスを前記の蓄熱容器12aに導くようにする。なお、前記の冷却空気供給手段40から燃焼を行っている他方の蓄熱式燃焼バーナー10b側に冷却用空気を導く冷却用空気案内管41bにおいては、この冷却用空気案内管41bに設けた開閉弁41b1を閉じた状態にして、冷却用空気が他方の蓄熱式燃焼バーナー10b側に供給されないようにしている。
【0034】
ここで、前記のように冷却空気供給手段40から冷却用空気を、燃焼排ガスが炉1内から一方の蓄熱式燃焼バーナー10aに設けた一方の蓄熱容器12aに導く部分に供給すると、前記の蓄熱容器12aから排ガス経路31aを通して排気装置30に導かれる燃焼排ガスの量が増加する。
【0035】
このため、
図2に示した蓄熱式燃焼設備においても、前記の
図1に示した蓄熱式燃焼設備の場合と同様に、炉1の天井部1aに設けた炉1内における燃焼排ガスの一部を排出させるための煙道50に設けた制御弁51を調整し、冷却空気供給手段40から一方の蓄熱容器12aに導く部分に供給した冷却用空気の量に対応するようにして、煙道50を通して炉1内から排出させる高温の燃焼排ガスの量を調整するようにする。このようにすると、排気装置30により排気させる燃焼排ガスの量が増加するのが防止され、排気装置30として大型の装置を用いたり、排気量を適切に制御させたりする必要がなくなる。
【0036】
また、前記の
図1及び
図2に示した蓄熱式燃焼設備においては、炉1内における燃焼排ガスの一部を炉1内から排出させる排ガス排出手段50として、炉1の天井部1aに煙道50を設け、この煙道50を通して炉1の内で燃料を燃焼させた後の燃焼排ガスの一部を排出させるように、煙道50を通して排出させる燃焼排ガスの量を制御する制御弁51からなる制御装置51を設けるようにしたが、炉1内において燃焼された燃焼排ガスの一部を炉1内から排出させる排ガス排出手段50はこのようなものに限られず、図示していないが、炉1の床などの部分に、炉1内における燃焼排ガスの一部を排出させる排出口と、この排出口を通して排出される燃焼排ガスの量を制御する制御装置を設けるようにすることもできる。
【0037】
また、前記の特許文献1のように、燃焼排ガス中の未燃分が蓄熱容器の中で燃えて燃焼排ガスの温度が上がり、冷却用空気による燃焼排ガスの温度低下の効果が落ちないように、蓄熱式燃焼バーナーにおける燃焼時の空気比を1以上にするとよい。
【符号の説明】
【0038】
1 :炉
1a :天井部
10,10a,10b :蓄熱式燃焼バーナー
11a,11b :燃料供給管
11a1,11b1 :弁
12a,12b :蓄熱容器
20 :給気装置
21a,21b :空気案内経路
21a1,21b1 :弁
30 :排気装置
31a,31b :排ガス経路
31a1,31b1 :弁
40 :冷却空気供給手段
41a,41b :冷却用空気案内管
41a1,41b1 :開閉弁
50 :煙道(排ガス排出手段)
51 :制御弁(制御装置)
x :蓄熱体
【要約】
【課題】 燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるように対になった蓄熱式燃焼バーナーを備えた蓄熱式燃焼設備において、炉内で燃料を燃焼させた後の燃焼排ガスの温度が高温になった場合にも耐火物で構成された蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼすのを防止する。
【解決手段】 燃焼と蓄熱とを交互に切り換えるように対になった蓄熱式燃焼バーナー10a,10bを備えた蓄熱式燃焼設備において、一方の蓄熱式燃焼バーナー10aにより炉1内で燃焼された後の燃焼排ガスを他方の蓄熱式燃焼バーナー10bにおける蓄熱容器12bに導く前の位置に冷却用空気を供給する冷却空気供給手段40を設け、燃焼排ガスの温度が前記の蓄熱容器の耐久性に悪影響を及ぼす高温である場合に、前記の冷却空気供給手段から燃焼排ガスを炉内から蓄熱容器に導く部分に冷却用空気を供給するようにした。
【選択図】
図1