(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2成形体となる構成材料が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム、第1の成形体の金属成形体で使用している金属よりも融点の低い金属から選ばれるものである、請求項5記載の複合成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)表層部に多孔構造を有する金属成形体の製造方法
本発明の製造方法は、
金属成形体の表面に対して連続波レーザーを連続照射するとき、前記金属成形体のレーザー光の非照射面と照射面の少なくとも一部と、前記金属成形体を構成する金属よりも熱伝導率の小さい材料からなる成形体を接触させる第1の方法と、
金属成形体の表面に対して連続波レーザーを連続照射するとき、凹凸部を有する成形体の凸部の上に前記金属成形体を置いた状態でレーザー光を連続照射する第2の方法のいずれかを適用する。
【0016】
金属成形体に対して連続波レーザーを照射するとき、金属成形体を台(金属などからなる作業台)上に置いた状態で照射する。
このとき、金属成形体自体も昇温するが、その熱は作業台を介して周囲環境(室温であり、20〜30℃程度)に放出される。なお、周囲環境(空気)の熱伝導率は非常に小さいため、金属成形体から直接空気中に放熱される量は非常に小さくなる。
金属成形体からの熱の放出が生じると、熱の放出がないとした場合と同程度にまで粗面化する場合には、より大きな照射エネルギー(より長い照射時間)が必要となるため、単位時間当たりのエネルギー量が大きくなることから、エネルギー効率が低下する。
【0017】
上記の第1の方法では、金属成形体を構成する金属よりも熱伝導率の小さい材料からなる成形体を放熱抑制手段として使用し、金属成形体と成形体(放熱抑制手段)を接触させた状態(即ち、金属成形体と作業台が接触していない状態)でレーザー光を連続照射する。
この第1方法により前記金属成形体からの熱の放出を抑制して、エネルギー効率を高める(連続波レーザーの出力を小さくして、単位時間当たりのレーザー照射によるエネルギー量を小さくする)ようにするものであり、これによりレーザー照射時間(加工時間)を短くすることができる。
また連続波レーザーの出力を含む照射条件が同じであれば、熱の放出が抑制されることから、単位時間当たりのレーザー照射によるエネルギー量を大きくすることができる。
【0018】
また上記の第2の方法では、作業台の上に凹凸部を有する成形体を置き、前記凹凸部を有する成形体の凸部の上に前記金属成形体を置いた状態でレーザー光を連続照射する。
この第2の方法によれば、金属成形体と作業台が接触されず、かつ金属成形体と周囲環境の空気との接触面積が増大された状態でレーザー光が連続照射される。
このため、第1方法と同様に、前記金属成形体からの熱の放出を抑制して、エネルギー効率を高める(連続波レーザーの出力を小さくして、単位時間当たりのレーザー照射によるエネルギー量を小さくする)ようにすることができ、これによりレーザー照射時間(加工時間)を短くすることができる。
また連続波レーザーの出力を含む照射条件が同じであれば、熱の放出が抑制されることから、単位時間当たりのレーザー照射によるエネルギー量を大きくすることができる。
なお、本発明の製造方法(上記の第1の方法および第2の方法)では、レーザー照射時における熱の放出を抑制する補助的手段として、金属成形体を予備加熱した後、レーザー照射する方法を実施することもできる。
【0019】
上記第1の方法と第2の方法によれば、連続波レーザー照射時のエネルギー効率を高めることができるため、特に融点の高い金属からなる金属成形体や、熱伝導率の良い金属からなる金属成形体に対して有効であり、表層部に好ましい多孔構造を形成することができる。
金属成形体の金属は、チタン、銅などの単体からなる金属、またはそれらを含む合金などが好ましい。
チタン合金としては、α合金、α−β合金、β合金などを挙げることができる。
銅合金としては、ベリリウム銅、黄銅、洋白、青銅、白銅、ノルディック・ゴールドなどを挙げることができる。
【0020】
金属成形体の形状は特に制限されず、用途に応じた形状にすることができる。
例えば、平板、直方体、立方体、円錐、角錐、円柱のほか、リング、筒、管、箱、半球、球、立体格子や木の枝のような複雑な形状のもの、針、ワイヤのような細いものでもよい。
【0021】
金属成形体の寸法は特に制限されず、用途に応じて調整することができるものであるが、例えば、平板であれば厚さが薄いほど放熱量が大きくなり、丸棒であれば直径が小さいほど放熱量が大きくなる。
このため、本発明の製造方法は、平板の金属成形体であれば厚さが1〜10mm程度のものを使用するときに特に効果が大きく、丸棒の金属成形体であれば直径が1〜10mmのものを使用するときに特に効果が大きい。
【0022】
連続波レーザーは公知のものを使用することができ、例えば、YVO4レーザー、ファイバーレーザー(好ましくはシングルモードファイバーレーザー)、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。これらの中でもエネルギー密度が高められることから、ファイバーレーザーが好ましく、特にシングルモードファイバーレーザーが好ましい。
【0023】
連続波レーザーは、2000mm/sec以上の照射速度で連続照射する。
連続波レーザーの照射速度は、2000〜20,000mm/secが好ましく、2,000〜18,000mm/secがより好ましく、2,000〜15,000mm/secがさらに好ましい。
連続波レーザーの照射速度が前記範囲であると、加工速度を高めることができ(即ち、加工時間を短縮することができ)、接合強度も高いレベルに維持することができる。
【0024】
レーザー光の連続照射は、例えば次のような方法を適用することができるが、特に制限されるものではない。
(I)
図1、
図2に示すように、レーザー照射面(例えば長方形とする)の一辺(短辺または長辺)側から反対側の辺に向かって1本の直線または曲線が形成されるように連続照射し、これを繰り返して複数本の直線または曲線を形成する方法。
(II)レーザー照射面の一辺側から反対側の辺に向かって連続的に直線または曲線が形成されるように連続照射し、今度は逆方向に間隔をおいての直線または曲線が形成されるように連続照射することを繰り返す方法(
図17)。
(III)レーザー照射面の一辺側から反対側の辺に向かって連続照射し、今度は直交する方向に対して連続照射する方法。
(IV)レーザー照射面に対してランダムに連続照射する方法。
【0025】
(I)〜(IV)の方法を実施するとき、レーザー光を複数回連続照射して1本の直線または1本の曲線を形成することもできる。
同じ連続照射条件であれば、1本の直線または1本の曲線を形成するための照射回数(繰り返し回数)が増加するほどレーザー照射面に対する粗面化(多孔構造)の程度が大きくなる。なお、照射回数が過度になると、返って粗面化の程度が小さくなる場合がある。
【0026】
(I)、(II)の方法において、複数本の直線または複数本の曲線を形成するとき、それぞれの直線または曲線が0.005〜1mmの範囲(
図1に示すb1の間隔)で等間隔に形成されるようにレーザー光を連続照射することができる。
このときの間隔は、レーザー光のビーム径(スポット径)よりも大きくなるようにする。また、このときの直線または曲線の本数は、金属成形体のレーザー照射面の面積に応じて調整することができる。
【0027】
(I)、(II)の方法において、複数本の直線または複数本の曲線を形成するとき、それぞれの直線または曲線が0.005〜1mmの範囲(
図1、
図2に示すb1の間隔)で等間隔に形成されるようにレーザー光を連続照射することができる。
そして、これらの複数本の直線または複数本の曲線を1群として、これを複数群形成することができる。
このときの各群の間隔は0.01〜1mmの範囲(
図2に示すb2の間隔)で等間隔になるようにすることができる。
なお、
図1、
図2に示す連続照射方法に代えて、
図3に示すように、連続照射開始から連続照射終了までの間、中断することなく連続照射する方法も実施することができる。
【0028】
レーザー光の連続照射は、例えば次のような条件で実施することができる。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜2500Wがより好ましく、100〜2000Wがさらに好ましく、250〜2000Wがさらに好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、11〜80μmがさらに好ましい。
さらに出力とスポット径の組み合わせの好ましい範囲は、レーザー出力とレーザー照射スポット面積(π・〔スポット径/2〕
2)から求められるエネルギー密度(W/μm
2)より選択することができる。
エネルギー密度(W/μm
2)は、0.1W/μm
2以上が好ましく、0.2〜10W/μm
2がより好ましく、0.2〜6.0W/μm
2がさらに好ましい。
エネルギー密度(W/μm
2)が同じであるとき、出力(W)が大きい方がより大きなスポット面積(μm
2)に対してレーザー照射できることになるため、処理速度(1秒当たりのレーザー照射面積;mm
2/sec)が大きくなり、加工時間も短くすることができる。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
【0029】
連続波レーザーの照射速度、レーザー出力、レーザービーム径(スポット径)およびエネルギー密度との好ましい関係は、連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、前記レーザー出力とスポット面積(π・〔スポット径/2〕
2)から求められるエネルギー密度(W/μm
2)が0.2〜10W/μm
2の範囲である。
【0030】
金属成形体を構成する金属よりも熱伝導率の小さい材料からなる成形体(放熱抑制手段)は、次の材料から選ばれる材料からなるものを使用することができる。
放熱抑制手段となるものは、熱伝導率が50W/m・k以下の材料が好ましく、例えば、
フロート板ガラス(通常の窓用ガラス)(20℃,1W/m・k)、型板ガラス、スリ板ガラス、強化ガラス、複層ガラス(2枚のフロート板ガラスの間に中空空気層が形成されたもの)などのガラス、
コンクリート(20℃,1.6W/m・k))、普通レンガ(20℃,0.62W/m・k)、耐火レンガ(20℃,0.99W/m・k)、
アルミナ(20℃,32W/m・k)、窒化ケイ素(Si
3N
4)(20℃,27W/m・k)、サーメット(TiC−TiN)(20℃,17W/m・k)、イットリア(Y
2O
3)(20℃,14W/m・k)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2)(20℃,5W/m・k)、フォルステライト(2MgO・SiO
2)(20℃,5W/m・k)、コージライト(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)(20℃,4W/m・k)、ジルコニア(ZrO
2)(20℃,3W/m・k)、ステアタイト(MgO・SiO
2)(20℃,2W/m・k)などのセラミックスを使用することができる。
【0031】
<第1の方法>
図4に示す平板形状の金属成形体10は、第1面11とその反対面の第2面12を有しており、第1面11側にレーザー光照射面(レーザー光照射領域)13を有している。
平板形状の金属成形体10の厚みは、特に制限されるものではない。
放熱抑制手段として、1枚の放熱抑制板20が使用されている。
金属成形体10の第2面12の全面は、放熱抑制板20の第1面21の全面と当接されている。
放熱抑制板20の大きさや形状は特に制限されず、放熱抑制効果を高めるため、金属成形体10よりも大きなものを使用することもできる。
放熱抑制板20は、金属成形体10と放熱抑制板20との接触面積を減少させて放熱抑制効果を高めるため、第1面21が波形や独立した多数の凹凸などを有するものにすることもできる。
このように金属成形体10と放熱抑制板20との接触面積を小さくすると、金属成形体10から放熱抑制板20に移行する熱量を減少させることができるため、より放熱抑制効果が高められる。
【0032】
図4に示す状態において、レーザー光照射面13に対して
図1〜
図3に示すようにして連続的にレーザーを照射すると、金属成形体10の温度が上昇する。
第2面12と放熱抑制板20の第1面21が接触していることから、金属成形体10の熱は、第2面12から放熱抑制板20に移行し難くなっており、放熱が抑制される。なお、第1面11から空気中へは、より放熱し難くなっている。
このため、金属成形体10自体の温度低下が抑制され、エネルギー効率が高められ、加工時間(レーザー照射時間)を短縮することができる。
【0033】
図5に示す平板形状の金属成形体10は、
図4に示すものと同じものである。
放熱抑制手段として、大きな第1放熱抑制板20と2枚の小さな第2放熱抑制板30が使用されている。
金属成形体10の第1面11は、2枚の第2放熱抑制板30の第2面32と当接され、金属成形体10の第2面12は、第1放熱抑制板20の第1面21と当接されており、レーザー光照射面13が2枚の第2放熱抑制板30で挟まれている。
第1放熱抑制板20は、金属成形体10と第1放熱抑制板20との接触面積を減少させて放熱抑制効果を高めるため、第1面21が波形や独立した多数の凹凸を有するものにすることもできる。
第2放熱抑制板30は、金属成形体10と第2放熱抑制板30との接触面積を減少させて放熱抑制効果を高めるため、第2面32が波形や独立した多数の凹凸を有するものにすることもできる。
【0034】
図5に示す状態において、レーザー光照射面13に対して例えば、
図1〜
図3に示すようにして連続的にレーザーを照射すると、金属成形体10の温度が上昇する。
第1面11の一部と第2放熱抑制板30の第2面32が接触し、第2面12の全部と第1放熱抑制板20の第1面21が接触していることから、金属成形体10の熱は第1面11から第2放熱抑制板30に移行し難くなり、さらに第2面12から第1放熱抑制板20に移行し難くなっているため、放熱が抑制される。なお、第1面11から空気中へは、より放熱し難くなっている。
このため、金属成形体10自体の温度低下が抑制され、エネルギー効率が高められ、加工時間(レーザー照射時間)を短縮することができる。
【0035】
図6に示す平板形状の金属成形体10は、
図4に示すものと同じものである。
図6では、放熱抑制手段として、開口部42を有する上型40と下型41の組み合わせが使用されており、上型40と下型41の組み合わせにより内部に金属成形体10を嵌め込むことができる空間が形成されるようになっている。
図6では、上型40と下型41の内部空間に金属成形体10が嵌め込まれており、第1面11は上型40の内側面と当接され、第2面12は下型41の内側面と当接された状態が図示されている。さらに金属成形体10の4つの側面は、上型40と下型41の側面の内側面と当接されている。
金属成形体10のレーザー光照射面13は、上型40の開口部42に面しており、上型40と下型41で包囲された状態になっている。レーザー光照射面13と開口部42の面積は同じでもよいが、開口部42の面積の方が少し大きくなるようにすることもできる。
上型40および下型41は、金属成形体10との接触面積を減少させて放熱抑制効果を高めるため、内側面が波形や多数の独立した凹凸を有するものにすることもできる。
【0036】
図6に示す状態において、開口部42から露出しているレーザー光照射面13に対して
図1〜
図3に示すようにして連続的にレーザーを照射すると、金属成形体10の温度が上昇する。
金属成形体10の第1面11の全部と上型40が接触し、第2面12の全部と下型41が接触しており、さらに金属成形体10の4つの側面の全部が上型40と下型41の内側面と接触していることから、金属成形体10の熱は上型40および下型41に移行し難くなっており、放熱が抑制される。
このため、金属成形体10自体の温度低下が抑制され、エネルギー効率が高められ、加工時間(レーザー照射時間)を短縮することができる。
【0037】
図7に示す丸棒形状の金属成形体100は、周面101、第1端面102、反対側の第2端面を有しており、周面101にレーザー光照射面(レーザー光照射領域)105を有している。
放熱抑制手段として、1つの第1放熱抑制カップ110が使用されている。第1放熱抑制カップ110は、第1周面111、第1閉塞端面112、第1開口部113を有している。
図7は、金属成形体100が第1放熱抑制カップ111の第1開口部113から嵌め込まれた状態が示されており、金属成形体100の周面101は第1放熱抑制カップ110の第1周面111の内側面と接触し、金属成形体100の第2端面は第1放熱抑制カップ110の第1閉塞端面112の内側面と接触している。
第1放熱抑制カップ110は、金属成形体100と第1放熱抑制カップ110との接触面積を減少させて放熱抑制効果を高めるため、内周面が波形や独立した多数の凹凸を有するものにすることもできる。
なお、第1放熱抑制カップ110に代えて、金属成形体100の周面101だけに接触できる筒を使用することもできる。
【0038】
図7に示す状態において、レーザー光照射面105に対して
図1〜
図3に示すようにして連続的にレーザーを照射すると、金属成形体100の温度が上昇する。
第1放熱抑制カップ110と金属成形体100の一部が接触していることから、金属成形体100の熱は周面101および第2端面から第1放熱抑制カップ110に移行し難くなっており、放熱が抑制される。
このため、金属成形体100自体の温度低下が抑制され、エネルギー効率が高められ、加工時間(レーザー照射時間)を短縮することができる。
【0039】
図8に示す丸棒形状の金属成形体100は、
図7に示すものと同じものである。
放熱抑制手段として、第1放熱抑制カップ110と第2放熱抑制カップ120が使用されている。
第1放熱抑制カップ110は、第1周面111、第1閉塞端面112、第1開口部113を有している。
第2放熱抑制カップ120は、第2周面121、第2閉塞端面122、第2開口部123を有している。
図8は、金属成形体100の両端面側から第1放熱抑制カップ110と第2放熱抑制カップ120が嵌め込まれた状態が示されている。
金属成形体100の周面101は、第1放熱抑制カップ110の第1周面111の内側面および第2放熱抑制カップ120の第2周面121の内側面と接触している。
金属成形体100の周面101は、第1放熱抑制カップ110の第1閉塞面112の内側面および第2放熱抑制カップ120の第2閉塞面122の内側面と接触している。
第1放熱抑制カップ110および第2放熱抑制カップ120は、金属成形体100と第1放熱抑制カップ110および第2放熱抑制カップ120との接触面積を減少させて放熱抑制効果を高めるため、それぞれ内周面が波形や独立した多数の凹凸を有するものにすることもできる。
なお、第1放熱抑制カップ110と第2放熱抑制カップ120の一方または両方に代えて、金属成形体100の周面101だけに接触できる1つまたは2つの筒を使用することもできる。
【0040】
図8に示す状態において、レーザー光照射面105に対して
図1〜
図3に示すようにして連続的にレーザー光を照射すると、金属成形体100の温度が上昇する。
第1放熱抑制カップ110および第2放熱抑制カップ120と金属成形体100の一部が接触していることから、金属成形体100の熱は周面101および両端面から第1放熱抑制カップ110および第2放熱抑制カップ120に移行し難くなっており、放熱が抑制される。
このため、金属成形体100自体の温度低下が抑制され、エネルギー効率が高められ、加工時間(レーザー照射時間)を短縮することができる。
【0041】
図9に示す丸棒形状の金属成形体100は、
図7に示すものと同じものである。
放熱抑制手段として、縦方向または横方向に分割できる放熱抑制容器130が使用されている。
放熱抑制容器130は、周面131、第1端面132、第2端面133を有し、周面131には開口部134が形成されている。
図9は、放熱抑制容器130内に金属成形体100が収容され、レーザー光照射面105が開口部131に面しており、放熱抑制容器130で包囲された状態になっている。レーザー光照射面105と開口部134の面積は同じでもよいが、開口部134の面積の方が少し大きくなるようにすることもできる。
金属成形体100は、金属成形体100の外表面と放熱抑制容器130の内表面が接触した状態で収容されている。
放熱抑制容器130は、金属成形体100と放熱抑制容器130との接触面積を減少させて放熱抑制効果を高めるため、内周面が波形や独立した多数の凹凸を有するものにすることもできる。
【0042】
図9に示す状態において、レーザー光照射面105に対して
図1〜
図3に示すようにして連続的にレーザー光を照射すると、金属成形体100の温度が上昇する。
金属成形体100の外表面と放熱抑制容器130の内表面が接触していることから、金属成形体100の熱は周面および両端面から放熱抑制容器130に移行し難くなっており、放熱が抑制される。
このため、金属成形体100自体の温度低下が抑制され、エネルギー効率が高められ、加工時間(レーザー照射時間)を短縮することができる。
【0043】
また本発明の製造方法は、
図4〜
図6で使用した平板、
図7〜
図9で使用した丸棒のほか、管や箱のような立体的な金属成形体に対しても有効である。
管の外表面に対して連続波レーザーを連続照射するときには、次の方法で放熱を抑制することができる
(i)前記管の外表面のレーザー光の非照射面(第1非照射面)のみに放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法。
(ii)前記管の外表面の厚さ方向反対面となる内表面(第2非照射面)のみに放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法。
(iii)前記管の第1非照射面と第2非照射面の両方に放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法。
(i)の放熱抑制方法を実施するときは、管の外表面の第1非照射面に放熱抑制手段となる管(管形状の放熱抑制ジャケット)を嵌め込む方法を適用することができる。このとき、放熱抑制対象となる管の外径と、放熱抑制手段となる管の内径を調節して、互いに接触するようにする。
(ii)の放熱抑制方法を実施するときは、管の内側に放熱抑制手段となる棒(または管)を嵌め込む方法を適用することができる。このとき、放熱抑制対象となる管の内径と放熱抑制手段となる棒(または管)の外径が同じになるか、放熱抑制手段となる棒(または管)の外径が僅かに小さくなるように調節する。
(iii)の放熱抑制方法を実施するときは、(i)と(ii)の方法を組み合わせることができる。
【0044】
また、放熱抑制対象が、一面が開口している箱形状の金属成形体であり、前記開口部に対向する底面や側面の外表面に対して連続波レーザーを連続照射するときには、次の方法で放熱抑制方法を実施することができる。以下、底面に連続波レーザーを連続照射する実施形態として説明する。
(iv)前記箱底面の外表面のレーザー光の非照射面(第1非照射面)のみに放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法。
(v)前記箱底面の外表面の厚さ方向反対面となる内表面(第2非照射面)のみに放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法。
(vi)前記箱底面の第1非照射面と第2非照射面の両方に放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法。
(iv)の放熱抑制方法を実施するときは、箱底面の外表面の第1非照射面に放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法を適用することができる。
(v)の放熱抑制方法を実施するときは、箱底面の内表面に放熱抑制手段となる成形体を接触させる方法を適用することができる。
(vi)の放熱抑制方法を実施するときは、(iv)と(v)の方法を組み合わせることができる。
【0045】
図10(a)、(b)により別の実施形態を説明する。
図10(a)は、長尺状の金属成形体150に対して、所定間隔をおいてレーザー光を連続照射するときに放熱抑制手段160により放熱を抑制する工程を示している。
例えば、板材やワイヤなどの長尺状の金属成形体150に対して10cmの間隔でレーザー光を連続照射するとき、放熱抑制手段160は固定した状態で、放熱抑制手段160の開口部161からレーザー光照射面151に対して
図1〜
図3のようにレーザー光を連続照射する。
このとき、レーザー光照射面151の周囲の金属成形体150は、放熱抑制手段160により放熱が抑制される。
その後、長尺状の金属成形体150を10cmだけ移動させた後、同様の操作を実施して、これらの操作を繰り返す。
【0046】
図10(b)は、放熱抑制手段160の後段にさらに放熱抑制手段170を配置することで、2段階で放熱を抑制する工程を示している。
このように2つの放熱抑制手段を使用して2段階で放熱を抑制することで、より放熱抑制効果を高めることができる。
【0047】
<第2の方法>
図11(a)は、第2の方法で使用することができる凹凸部を有する成形体400の斜視図である。
基板401の一面に多数の独立突起402が分散された状態で形成されている。
独立突起402は、凸部であれば特に制限されるものではなく、
図11(a)に示す円錐形のもののほか、三角錐、四角錐などでもよい。
独立突起402は、頂点402aで金属成形体を支持するものであるため、金属成形体の支持が容易になるように頂点402a部分が切断されて平坦面となっているもの(円錐台形状のもの)にすることもできる。
成形体400の材質は特に制限されるものでななく、第1の方法で使用する金属成形体を構成する金属よりも熱伝導率の小さい材料からなる成形体を使用することができるほか、金属成形体を構成する金属よりも熱伝導率の大きい材料からなる成形体も使用することができる。
【0048】
図11(b)は、第2の方法で使用することができる凹凸部を有する成形体410の斜視図である。
基板411の一面には、一方向(短辺方向)に連続した凸部412と凹部413が形成されており、凸部412と凹部413は直交する方向(長辺方向)に交互に形成されている。
凸部412の長辺方向の断面形状は特に制限されるものではなく、
図11(b)に示す三角形のほか、半円形でもよい。
また、先端が切断されて平坦面になったもの(断面形状が三角錐台のもの)でもよい。
成形体410の材質は特に制限されるものでななく、第1の方法で使用する金属成形体を構成する金属よりも熱伝導率の小さい材料からなる成形体を使用することができるほか、金属成形体を構成する金属よりも熱伝導率の大きい材料からなる成形体も使用することができる。
その他、凹凸部を有する成形体としては、網形状、格子形状、多数の穴を有する板形状のものなどを使用することでもでき、さらに穴(開口部)がない部分の幅方向の断面形状を三角形、半円形などにして接触面積が小さくなるようにすることもできる。
【0049】
第2の方法を実施するときは、
図11(c)に示すようにする。
図示していない作業台の上に
図11(b)の凹凸部を有する成形体410を置き、成形体410の凸部412のみと接触するように金属成形体10を置く。
その後、連続波レーザーを照射する。
図11(c)に示すように、金属成形体10は成形体410との接触面積が非常に小さく、周囲環境の空気との接触面積が大きくなっているため、放熱が抑制される。
このため、金属成形体10自体の温度低下が抑制され、エネルギー効率が高められ、加工時間(レーザー照射時間)を短縮することができる。
なお、第2の方法では、凹凸部を有する成形体として特に熱伝導率の小さいものを使用する必要はなく、熱伝導率の高い鉄、ステンレス、銅、アルミニウムなどの金属も使用することができる。
【0050】
本発明の製造方法を実施することにより表層部に多孔構造を有する金属成形体を得ることができる。
このときの
図4〜
図6に示す金属成形体10のレーザー光照射面13の状態を
図12〜
図14により説明する。
図12に示すとおり、レーザー光(例えば、スポット径11μm)を連続照射して多数の線(
図12では3本の線261〜263を示している。各線の間隔は50μm程度。)を形成することで多孔構造にする(即ち、粗面化する)ことができる。1本の直線への照射回数は1〜10回が好ましい。
このとき、粗面化されたレーザー光の照射面13を含む金属成形体10の表層部は、
図13(a)、
図14(a)〜(c)に示すようになっている。「金属成形体10の表層部」は、表面から粗面化により形成された開放孔(幹孔または枝孔)の深さ程度までの部分であり、金属成形体の表面から50〜500μm程度の深さ部分である。
なお、金属の種類によっても強度が最大となる照射回数は若干異なるが、1本の直線への照射回数が10回を超える回数である場合には、粗面化のレベルをより高めることができ、複合成形体1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合強度を高めることができるが、合計照射時間が長くなる。このため、目的とする複合成形体1の接合強度と製造時間との関係を考慮して、1本の直線への照射回数を決めることが好ましい。1本の直線への照射回数が10回を超える回数であるとき、好ましくは10回超〜50回以下、より好ましくは15〜40回、さらに好ましくは15〜35回である。
【0051】
粗面化されたレーザー光照射面13を含む金属成形体10の表層部は、
図13、
図14に示すように、レーザー光の照射面13側に開口部231のある開放孔230を有している。
開放孔230は、厚さ方向に形成された開口部231を有する幹孔232と、幹孔232の内壁面から幹孔232とは異なる方向に形成された枝孔233からなる。枝孔233は、1本または複数本形成されていてもよい。
【0052】
粗面化されたレーザー光照射面13を含む金属成形体10の表層部は、
図13、
図14に示すように、レーザー光照射面13側に開口部のない内部空間240を有している。
内部空間240は、トンネル接続路250により開放孔230と接続されている。
【0053】
粗面化されたレーザー光照射面13を含む金属成形体10の表層部は、
図13(b)に示すように、複数の開放孔230が一つになった開放空間245を有していてもよいし、開放空間245は、開放孔230と内部空間240が一つになって形成されたものでもよい。一つの開放空間245は、一つの開放孔230よりも内容積の大きなものである。
なお、多数の開放孔230が一つになって溝状の開放空間245が形成されていてもよい。
【0054】
図示していないが、
図14(a)に示すような2つの内部空間240同士がトンネル接続路250で接続されていてもよいし、
図13(b)に示すような開放空間245と、開口孔230、内部空間240、他の開放空間245がトンネル接続路250で接続されていてもよい。
【0055】
内部空間240は、全てが開放孔230および開放空間245の一方または両方とトンネル接続路250で接続されているものであるが、内部空間240のうちの一部が開放孔230および開放空間245と接続されていない閉塞状態の空間であってもよい。
【0056】
このようにレーザー光を連続照射したときに
図13、
図14で示されるような開放孔230、内部空間240などが形成される詳細は不明であるが、所定速度以上でレーザー光を連続照射したとき、金属成形体表面に一旦は孔や溝が形成されるが、溶融した金属が盛り上がって蓋をしたり、堰き止めたりする結果、開放孔230、内部空間240、開放空間245が形成されるものと考えられる。
また、同様に開放孔230の枝孔233やトンネル接続路250が形成される詳細も不明であるが、一旦形成された孔や溝の底部付近に滞留した熱によって、孔や溝の側壁部分が溶融する結果、幹孔232の内壁面が溶融して枝孔233が形成され、さらに枝孔233が延ばされてトンネル接続路250が形成されるものと考えられる。
なお、連続波レーザーに代えてパルスレーザーを使用したときには、金属成形体の接合面には開放孔や溝が形成されるが、開口部を有していない内部空間と、前記開放孔と前記内部空間を接続する接続通路は形成されない。
【0057】
本発明の製造方法を実施することにより得られる表層部に多孔構造を有する金属成形体は、研磨材、微粒子の担体などとして使用することができるほか、樹脂などの他の材料との複合成形体の製造用としても使用することができる。
【0058】
(2)複合成形体の製造方法
次に、上記の製造方法により得られる表層部に多孔構造を有する第1成形体である金属成形体と、第1成形体である金属成形体とは異なる第2の成形体となる構成材料を使用した複合成形体の製造工程を説明する。
第2成形体となる構成材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム、第1の成形体の金属成形体で使用している金属よりも融点の低い金属から選ばれるものを使用することができる。
【0059】
図15は、表層部に多孔構造を有する平板形状の金属成形体10のレーザー光照射面(接合面)13を含む部分と樹脂成形体300を一体化させる工程が示されている。
この工程では、
レーザー光が照射された金属成形体10の接合面13を含む部分を金型内に配置して、樹脂成形体となる樹脂を射出成形する工程、または
レーザー光が照射された金属成形体10の接合面13を含む部分を金型内に配置して、少なくとも接合面13と樹脂成形体となる樹脂を接触させた状態で圧縮成形する工程、
のいずれかの方法を適用することができる。
その他、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の成形方法として使用される公知の成形方法も適用することができる。
熱可塑性樹脂を使用した場合には、溶融した樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を冷却固化させることで複合成形体を得られる方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、射出圧縮成形などの成形方法も使用することができ、さらに溶射法も適用することができる。
熱硬化性樹脂を使用した場合には、液状或いは溶融状態の樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を熱硬化させることで複合成形体を得られる成形方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、トランスファー成形などの成形方法も使用することができる。
ゴムを使用した場合には、圧縮成形、トランスファー成形などの成形方法を使用することができる。
【0060】
圧縮成形法を適用するときは、例えば、型枠内に接合面13が露出された状態で(接合面13が表側になった状態で)金属成形体10を配置し、そこに熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(但し、プレポリマー)、ゴム(未硬化のゴム)を入れた後で、圧縮する方法を適用することができる。
なお、射出成形法と圧縮成形法で熱硬化性樹脂(プレポリマー)を使用したときは、後工程において加熱などをすることで熱硬化させる。
また、使用するゴムの種類によっては、主として残留モノマーを除去するため、金型から取り出した後、オーブンなどでさらに二次加熱(二次硬化)する工程を付加することができる。
【0061】
本発明の複合成形体の製造方法は、表層部に多孔構造を有する平板形状の金属成形体10のレーザー光照射面(接合面)13に接着剤を塗布して多孔構造内に接着剤が入り込ませ、かつ粗面13を接着剤で覆う接着剤層を形成した後、前記接着剤層を介して、金属成形体10と樹脂成形体300を一体化させる方法を適用することができる。
また、本発明の複合成形体の製造方法は、金属成形体10の接着剤層が形成された面を金型内に入れ、射出成形法などを適用しても製造することができる。
【0062】
この工程で使用する樹脂成形体の樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のほか、熱可塑性エラストマーも含まれる。
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
【0063】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0064】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。
【0065】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーには、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等のものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
【0066】
これらの繊維状充填材は、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができるが、これらの中でも、例えば金属成形体10の接合面13が粗面化されて形成される開放孔230などの開口径より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。繊維径は、より望ましくは5〜30μm、さらに望ましくは7〜20μmである。
このような開放孔230などの開口径より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体の開放孔230などの内部に繊維状充填材の一部が張り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー100質量部に対する繊維状充填材の配合量は5〜250質量部が好ましい。より望ましくは、25〜200質量部、さらに望ましくは45〜150質量部である。
【0067】
ゴムとしては、エチレン‐プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン‐オクテンコポリマー(EOM)、エチレン‐ブテンコポリマー(EBM)、エチレン‐オクテンターポリマー(EODM)、エチレン‐ブテンターポリマー(EBDM)などのエチレン‐α‐オレフィンゴム;
エチレン/アクリル酸ゴム(EAM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム(NBR)、水添NBR (HNBR)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロルヒドリン(ECO)、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(合成ポリイソプレンを含む) (NR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ブロム化ポリメチルスチレン‐ブテンコポリマー、スチレン‐ブタジエン‐スチレン(S‐B‐S)およびスチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレン(S‐E‐B‐S)ブロックコポリマー、アクリルゴム(ACM)、エチレン‐酢酸ビニルエラストマー(EVM)、およびシリコーンゴムなどを使用することができる。
【0068】
ゴムには、必要によりゴムの種類に応じた硬化剤を含有させるが、その他、公知の各種ゴム用添加剤を配合することができる。ゴム用添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、老化防止剤、シランカップリング剤、補強剤、難燃剤、オゾン劣化防止剤、充填剤、プロセスオイル、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤などを使用することができる。
【0069】
本発明の製造方法により得られた複合成形体1は、
図13および
図14に示すような金属成形体10が有している開放孔230、内部空間240、トンネル接続路250、開放空間245内に、樹脂成形体300を形成する樹脂が入り込んだ状態で一体にされている。
開放孔230と(幹孔232と枝孔233)開放空間245の内部には、それぞれの開口部分から樹脂が入り込んでおり、内部空間240の内部には、開放孔230や開放空間245の開口部から入り込んだ樹脂がトンネル接続路250を通って入り込んでいる。
このため、本発明の製造方法により得られた複合成形体1は、開放孔230や開放空間245内のみに樹脂が入り込んだ複合成形体と比べると、
図15において金属成形体10と樹脂成形体300の接合面13に対して、金属成形体10の端部を固定した状態で樹脂成形体300を平行方向(
図15のX方向)に引っ張ったときのせん断接合強度(S1)と、金属成形体10と樹脂成形体300の接合面13に対して垂直方向(
図15のY方向)に引っ張ったときの引張り接合強度(S2)の両方が高くなる。
【0070】
次に、融点の高い第1金属成形体と融点の低い第2金属成形体の複合成形体の製造方法について説明する。
金型内に、接合面が粗面化された融点の高い第1金属成形体を接合面が上になるように配置する。
その後、例えば周知のダイカスト法を適用して、溶融状態の融点の低い金属(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、マグネシウムおよびそれらを含む合金)を金型内に流し込む。
このようにすることで、第1金属成形体の
図13、
図14に示すような開放孔230、内部空間240、開放空間245、開放孔230の枝孔233やトンネル接続路250内に、第2金属成形体を構成する溶融金属が侵入する。
【0071】
その後、冷却することで、融点の高い第1金属成形体と融点の低い第2金属成形体の複合成形体を得ることができる。
前工程の処理のとおり、溶融金属(第2金属成形体を構成する融点の低い金属)は、開放孔230、内部空間240、開放空間245、開放孔230の枝孔233やトンネル接続路250内に侵入しているため、前記開放孔230などに侵入した金属によるアンカー効果がより強く発揮されることになる。
このため、このようにして得られた第1金属成形体と第2金属成形体からなる金属成形体同士の複合成形体の接合強度は、第1金属成形体の表面に対して、エッチング処理などの化学的処理またはサンドブラスト処理などの物理的処理をした後で、公知のダイカスト法を適用して得た金属成形体同士の複合成形体の接合強度よりも高くすることができる。
【実施例】
【0072】
実施例1および比較例1
表1に示す材質で、
図16に示す形状の金属板10(30mm×30mm)の20mm×6mmの領域13(接合面13)に対して、表1に示す条件で、
図17に示す照射パターンにて連続波レーザーを照射した。
連続波レーザーの照射時には、実施例1では放熱抑制手段として、作業台(厚さ12mmの鋼板)の上にガラス板(厚さ1.1mm)を
図4のように配置して、金属板10からの放熱を抑制した。
比較例1では、作業台(厚さ12mmの鋼板)上に直接金属板10を置いた。
図18(a)、(b)に実施例1と比較例1の連続波レーザーの照射面(領域13)のSEM写真を示す。
図18(a)、(b)から、ガラス板を使用した実施例1の方が、粗面化状態がより均一状態で、きれいな状態であることが確認できた。
【0073】
実施例1と比較例1の金属板10を使用して、下記の方法で射出成形して、
図19に示すような複合成形体を得た。
<射出成形>
樹脂:GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66−GF60−01(L7):ダイセルポリマー(株)製),ガラス繊維の繊維長:11mm
樹脂温度:320℃
金型温度:100℃
射出成形機:ファナック製ROBOSHOT S2000i100B)
【0074】
得られた複合成形体について、
図20で示すY方向に相当する引張り接合強度を次の方法にて測定した。
引張試験は、
図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体300が破断するまで
図21のY方向(
図15のY方向であり、接合面13に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面13が破壊されるまでの最大荷重を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0076】
【表1】
【0077】
表1から確認できるとおり、実施例1では、レーザー照射時に放熱を抑制することでエネルギー効率が良くなったため、加工条件(加工時間など)が同一であるときには、比較例1よりも接合強度を高くすることができた。
この結果からは、実施例1を比較例1と同じ接合強度にするときには、加工時間をより短くできることが分かった。
また、比較例1を実施例1と同じ接合強度にするためには、加工時間を長くすればよいことになるが、その場合には粗面化が過度になるおそれもある。
【0078】
実施例2〜5および比較例2〜5
表1に示す材質で、
図16に示す形状の金属板10(30mm×30mm)の20mm×6mmの領域13(接合面13)に対して、表2に示す条件で、
図17に示す照射パターンにて連続波レーザーを照射した。
連続波レーザーの照射時には、実施例2〜5では放熱抑制手段としてガラス板を
図4のように配置して、金属板10からの放熱を抑制し、比較例2〜5では鋼板を
図4のように配置した。
図21〜
図24に実施例2〜5と比較例2〜5の連続波レーザーの照射面(領域13)のSEM写真を示す。
図21〜
図24から、領域13に多孔構造が形成されたことが確認できた。
【0079】
実施例1と同様にして射出成形して、
図19に示すような複合成形体を得た。
さらに得られた複合成形体について、実施例1と同様にして、接合強度を測定した。結果を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
表2の実施例と比較例から確認できるとおり、実施例2〜5では、レーザー照射時に放熱を抑制することでエネルギー効率が良くなったため、加工条件(加工時間など)が同一であるときには、比較例2〜5よりも接合強度を高くすることができた。
この結果からは、実施例2〜5を比較例2〜5と同じ接合強度にするときには、加工時間をより短くできることが分かった。
また、比較例2〜5を実施例2〜5と同じ接合強度にするためには、加工時間を長くすればよいことになるが、その場合には粗面化が過度になるおそれもある。