【実施例】
【0028】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。
【0029】
なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ、「質量部」及び「質量%」を意味するものである。また、製造されたシェルモールド用RCSの各特性は、以下の試験法に従って測定したものである。
【0030】
(1)数平均分子量(Mn)の測定
東ソー株式会社製ゲル濾過クロマトグラフSC−8010シリーズ・ビルドアップシステム(カラム:G1000H
XL+G2000H
XL、検出器:UV254nm、キャリヤ:テトラヒドロフラン1mL/分、カラム温度:38℃)を用いたGPC測定により、標準ポリスチレン換算の数値として求めたものである。
【0031】
(2)曲げ強度の測定
それぞれのRCSを用いて、JIS−K−6910に準拠して、JIS式テストピース(10mm×10mm×60mm、焼成条件:250℃×60秒間)を作製し、その得られたJIS式テストピースについて、JACT試験法:SM−1に準じて、その曲げ強度(kgf/cm
2 )を測定した。この曲げ強度が高い程、鋳型が高強度となることを示している。
【0032】
(3)ベンド(500gf)量の測定
JACT試験法:SM−3の撓み試験法に準拠して、それぞれのRCSを用いて得られた各試験片(180mm×40mm×5mm、焼成条件:250℃×40秒間)に対して、その中央部に、500gfの荷重を加えて、1分間放置した後の、試験片中央部の歪み量(mm)をダイヤルゲージで読み取り、その値を、ベンド(500gf)量とした。このベンド量(撓み量)は、鋳型造型直後のハンドリング性及び鋳型硬化速度を示す目安指標であり、このベンド量が小さい程、鋳型の硬化速度が速く、ハンドリング性が良くなることを意味している。
【0033】
(4)硬化層厚の測定
それぞれのRCSを用いて、直径:50mm×高さ:50mmの円柱状テストピース(焼成条件:260℃×60秒間)を作製し、かかるテストピースの中心部分(高さ:25mm部位)で切断した。そして、その切断したテストピースをアセトンに浸し、未硬化部分を除去した後、室温にて静置乾燥させた。その乾燥後、テストピース内部の硬化層の厚みを測定した。この硬化層厚が厚い程、鋳型の内部硬化が進んでいることを示しており、鋳型の強度が安定することを意味している。
【0034】
−フェノール樹脂Aの製造−
ガラス製反応フラスコ内に、フェノールの1000部を収容し、更に、47%ホルムアルデヒド水溶液の414部、触媒としての蓚酸の3.5部を添加した後、加熱・攪拌混合下に縮合・濃縮を行うことにより、遊離フェノール量が0.5%のフェノール樹脂Aを得た。この得られたフェノール樹脂Aの数平均分子量(Mn)は、685であった。
【0035】
−フェノール樹脂Bの製造−
ガラス製反応フラスコ内に、フェノールの1000部を収容し、更に、47%ホルムアルデヒド水溶液の492部、触媒としての蓚酸の3.5部を添加した後、加熱・攪拌混合下に縮合・濃縮を行うことにより、遊離フェノール量が3%のフェノール樹脂Bを得た。この得られたフェノール樹脂Bの数平均分子量(Mn)は、758であった。
【0036】
−フェノール樹脂Cの製造−
ガラス製反応フラスコ内に、フェノールの1000部を収容し、更に、47%ホルムアルデヒド水溶液の535部、触媒としての蓚酸の3.5部を添加した後、加熱・攪拌混合下に縮合・濃縮を行うことにより、遊離フェノール量が2.5%のフェノール樹脂Cを得た。この得られたフェノール樹脂Cの数平均分子量(Mn)は、875であった。
【0037】
−フェノール樹脂Dの製造−
ガラス製反応フラスコ内に、フェノールの1000部を収容し、更に、47%ホルムアルデヒド水溶液の549部、触媒としての蓚酸の3.5部を添加した後、加熱・攪拌混合下に縮合・濃縮を行うことにより、遊離フェノール量が1%のフェノール樹脂Dを得た。この得られたフェノール樹脂Dの数平均分子量(Mn)は、1100であった。
【0038】
−実施例1−
上記で得られたフェノール樹脂Bの100部に、ニコチン酸アミド2部、エチレンビスステアリン酸アミド1部、安息香酸1.5部、及びγ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.8部を加熱溶融混合し、樹脂組成物を得た。
【0039】
その後、スピードミキサー内に、温度:約140℃に余熱した、フラタリーサンドの7000部と、上記で得られた樹脂組成物の105部とを収容して、50秒間の混練を行なった後、水105部にヘキサメチレンテトラミン15.8部を溶かした溶液を添加して、20秒間混合した後、塊状物が崩壊するまで送風し、次いで、ステアリン酸カルシウムの7部を添加した後、10秒間混合して取り出すことにより、シェルモールド用鋳型材料を得た。
【0040】
−実施例2〜4−
実施例1において、安息香酸を、サリチル酸、パラアミノ安息香酸又はアントラニル酸に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0041】
−実施例5−
実施例1において、ニコチン酸アミドをε−カプロラクタムに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0042】
−実施例6−
実施例5において、安息香酸をパラアミノ安息香酸に変えたこと以外は、実施例5と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0043】
−実施例7−
実施例1において、ニコチン酸アミドをアセトアミドに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0044】
−実施例8−
実施例7において、安息香酸をパラアミノ安息香酸に変えたこと以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0045】
−実施例9−
実施例1において、ニコチン酸アミドをアセトアニリドに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0046】
−実施例10−
実施例9において、安息香酸をパラアミノ安息香酸に変えたこと以外は、実施例9と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0047】
−実施例11−
実施例1において、ニコチン酸アミドをステアリン酸アミドに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0048】
−実施例12−
実施例1において、安息香酸を3部としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0049】
−実施例13−
実施例1において、エチレンビスステアリン酸アミドを配合しないこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0050】
−実施例14−
実施例3において、エチレンビスステアリン酸アミドを配合しないこと以外は、実施例3と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0051】
−実施例15−
実施例1において、フェノール樹脂Bをフェノール樹脂Aに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0052】
−実施例16−
実施例1において、フェノール樹脂Bをフェノール樹脂Cに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、フラタリーサンドの7000部に対して、その得られた樹脂組成物の126部を配合して混練を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0053】
−比較例1−
実施例1において、安息香酸を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0054】
−比較例2−
実施例7において、安息香酸を配合しないこと以外は、実施例7と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0055】
−比較例3−
比較例1において、ニコチン酸アミドを配合しないこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0056】
−比較例4−
比較例1において、エチレンビスステアリン酸アミドを配合しないこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0057】
−比較例5−
比較例4において、ニコチン酸アミド3部としたこと以外は、比較例4と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0058】
−比較例6−
比較例4において、パラトルエンスルホン酸1.5部をさらに添加したこと以外は、比較例4と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0059】
−比較例7−
実施例16において、フェノール樹脂Cをフェノール樹脂Dに変えたこと以外は、実施例16と同様にして、樹脂組成物を得た後、シェルモールド用鋳型材料を作製した。
【0060】
かくして得られた実施例1〜16及び比較例1〜7に係る各種のシェルモールド用鋳型材料について、それぞれ、その曲げ強度、ベンド(500gf)量、及び硬化層厚の測定を行い、その得られた結果を、下記表1〜表3に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
かかる表1〜表3の結果の対比から明らかなように、実施例1〜実施例16に係る本発明に従うフェノール樹脂組成物及びそれから得られたシェルモールド用鋳型材料(RCS)にあっては、何れも、曲げ強度の向上、ベンド量の低減、及び硬化層厚の増大において、優れた特徴を発揮していることが認められる。これに対して、比較例1〜比較例7において得られたフェノール樹脂組成物やシェルモールド用鋳型材料(RCS)にあっては、ベンゼンカルボン酸類が添加されていなかったり、或いは所定のアミド化合物が添加されていなかったり、或いは数平均分子量の大きなフェノール樹脂が用いられていたりするために、充分な曲げ強度を実現することが出来ず、またベンド量が大きくなったり、或いは硬化層厚が薄く、テストピース内部の硬化層の厚みを充分に確保することが困難であることが明らかとなった。