(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のコイルが巻回された固定子と、回転子と、回転角センサとを有するワークモータにおいて、前記ワークモータの基準角度と前記回転角センサの基準角度との角度差を測定する回転角センサ取り付け角度測定装置であって、
前記複数のコイルのうちの1つのコイルを第1のコイルとし、
前記回転子の回転に応じて前記第1のコイルに発生する第1の誘起電圧を検出する電圧検出部と、
前記第1の誘起電圧を増幅したアナログ信号と所定の基準電圧との差分の符号が変わるゼロクロスポイントを生成するため、
前記所定の基準電圧が第1の演算増幅器のプラス側入力端子に入力され、
前記第1の誘起電圧が前記第1の演算増幅器のマイナス側入力端子に入力され、
前記第1の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第1の演算増幅器の第1の出力端子との間に抵抗を接続することによる第1の帰還ループを形成することにより、
前記第1の出力端子の出力の前記ゼロクロスポイント付近の電圧を増幅してアナログ信号を出力する第1の反転増幅器と、
第2の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第2の演算増幅器の出力端子との間に抵抗とコンデンサを並列に配した第2の帰還ループを形成することにより、前記アナログ信号の耐ノイズ及び発振防止のための前記第2の演算増幅器を用いた第2の反転増幅器と、
上限電圧を第3の演算増幅回路のプラス側電源電圧以下とし、下限電圧を前記第3の演算増幅回路のマイナス側電源電圧以上とし、
前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記上限電圧に達するまで、又は前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記下限電圧に達するまで、前記アナログ信号を増幅することにより、
前記プラス側電源電圧、又は前記マイナス側電源電圧からの回復時間に起因する出力電圧波形の立ち上り応答や立ち下り応答の遅れを防止することができるように、前記第3の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第3の演算増幅器の出力端子との間に互いに逆向きで直列に2つツェナーダイオードを配して、第3の帰還ループを形成した前記第3の演算増幅器を用いたリミッタ回路と、
前記リミッタ回路の出力波形がデジタル電源電圧とGNDとの間で出力されるようにデジタルレベル変換を行なうレベル変換回路と、
を有するゼロクロスポイント生成部と、
前記回転角センサから供給される信号に基づいて、前記回転角センサの回転角度を検出する回転角検出部と、
前記ゼロクロスポイントに基づいて、前記回転角検出部に検出するタイミングを指示し、前記回転角度検出部が供給する前記回転角センサの回転角度と前記回転子と回転角度との位相差を測定する制御部を備えることを特徴とする回転角センサ取り付け角度測定装置。
複数のコイルが巻回された固定子と、回転子と、回転角センサとを有するワークモータにおいて、前記ワークモータの基準角度と前記回転角センサの基準角度との角度差を測定する回転角センサ取り付け角度測定方法であって、
前記複数のコイルのうちの1つのコイルを第1のコイルとし、前記回転子の回転に応じて前記第1のコイルに発生する第1の誘起電圧を検出し、
前記所定の基準電圧が第1の演算増幅器のプラス側入力端子に入力され、
前記第1の誘起電圧が前記第1の演算増幅器のマイナス側入力端子に入力され、
前記第1の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第1の演算増幅器の第1の出力端子との間に抵抗を接続することによる第1の帰還ループを形成することにより、
前記第1の出力端子の出力の前記ゼロクロスポイント付近の電圧を増幅してアナログ信号を出力する第1の反転増幅器によって、
前記第1の誘起電圧を増幅したアナログ信号と所定の基準電圧との差分の符号が変わるゼロクロスポイントを生成し、
第2の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第2の演算増幅器の出力端子との間に抵抗とコンデンサを並列に配した第2の帰還ループを形成する前記第2の演算増幅器を用いた第2の反転増幅器により、耐ノイズ及び発振防止された前記アナログ信号を出力し、
上限電圧を第3の演算増幅回路のプラス側電源電圧以下とし、下限電圧を前記第3の演算増幅回路のマイナス側電源電圧以上とし、
前記第3の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第3の演算増幅器の出力端子との間に互いに逆向きで直列に2つツェナーダイオードを配して、第3の帰還ループを形成した前記第3の演算増幅器を用いたリミッタ回路によって、
前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記上限電圧に達するまで、又は前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記下限電圧に達するまで、前記アナログ信号を増幅することにより、
前記プラス側電源電圧、又は前記マイナス側電源電圧からの回復時間に起因する出力電圧波形の立ち上り応答や立ち下り応答の遅れを防止し、
レベル変換回路によって、前記リミッタ回路の出力波形がデジタル電源電圧とGNDとの間で出力されるようにデジタルレベル変換を行い、
前記回転角センサから供給される信号に基づいて、前記回転角センサの回転角度を検出し、
前記ゼロクロスポイントに基づいて、前記回転角センサの回転角度を検出するタイミングを制御し、前記回転角センサの回転角度と前記回転子と回転角度との位相差を測定する回転角センサ取り付け角度測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方式では、上述のようにU相電圧波形とZ相信号とをオシロスコープで観測して、その時間差に対応する位相差を算出するので、レゾルバ取り付け角度測定において、レゾルバを取り付けたモータと外部からワークモータとを結合し、ワークモータを回転させて、モータを一定速度で回転させながら作業する必要がある。当然、ワークモータが回転しているときしか位相差を認識できないため、レゾルバの取付け角を調整する作業中でも、ワークモータの回転を継続させることが必要である。このため、レゾルバ調整は危険な作業となり得るという問題が残る。
【0006】
特許文献1においては、電動機に位置検出センサを固定して、電動機の回転子を外部のモータにより回転させて、また特許文献2においては、モータをエンジンによって回転させて、モータの回転子の回転によりコイルに発生する誘起電圧を検出して、位置検出センサの取り付け位置を検出する方法が開示されている。すなわち、動力によって位置検出センサの取り付けられたモータのコイルから供給される誘導電圧を検出するから、モータの回転子に供給される動力が十分ならば、誘導電圧とゼロ電圧の交差するゼロクロスポイントを検出するために十分な電圧変化を呈する誘導電圧(高い周波数または高い電圧)を検出するのに適した装置であるが、外部からの動力が弱い場合、例えば検査作業者が手動で回転させて得られるような誘導電圧では、十分な電圧変化を得られずフラットに近いような場合、ゼロクロスポイントを検出することができず、位置検出センサの取り付け位置を調整することが困難であると考えざるを得ない。
【0007】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、ワークモータの基準角度と回転角センサの基準角度とのオフセット角度(位相差)を検出する際、U相電圧波形が設定した上限電圧および下限電圧に達する程度まで、増幅を行う増幅回路を使用することにより、U相電圧波形が基準電圧と交差するゼロクロスポイントの検出精度および検出感度を向上することができ、本発明の回転角センサ取り付け角度測定装置は、小規模な構成でありながら、測定対象となるワークモータを手動で1回転することにより、オフセット角度を高精度かつ高感度で検出することができる本発明の回転角センサ取り付け角度測定装置及び回転角センサ取り付け角度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のコイルが巻回された固定子と、回転子と、回転角センサとを有するワークモータにおいて、前記ワークモータの基準角度と前記回転角センサの基準角度との角度差を測定する回転角センサ取り付け角度測定装置であって、前記複数のコイルのうちの1つのコイルを第1のコイルとし、前記回転子の回転に応じて前記第1のコイルに発生する第1の誘起電圧を検出する電圧検出部と、前記第1の誘起電圧を増幅したアナログ信号と所定の基準電圧との差分の符号が変わるゼロクロスポイントを生成する
ため、前記所定の基準電圧が第1の演算増幅器のプラス側入力端子に入力され、前記第1の誘起電圧が前記第1の演算増幅器のマイナス側入力端子に入力され、前記第1の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第1の演算増幅器の第1の出力端子との間に抵抗を接続することによる第1の帰還ループを形成することにより、前記第1の出力端子の出力の前記ゼロクロスポイント付近の電圧を増幅してアナログ信号を出力する第1の反転増幅器と、第2の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第2の演算増幅器の出力端子との間に抵抗とコンデンサを並列に配した第2の帰還ループを形成することにより、前記アナログ信号の耐ノイズ及び発振防止のための前記第2の演算増幅器を用いた第2の反転増幅器と、上限電圧を第3の演算増幅回路のプラス側電源電圧以下とし、下限電圧を前記第3の演算増幅回路のマイナス側電源電圧以上とし、前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記上限電圧に達するまで、又は前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記下限電圧に達するまで、前記アナログ信号を増幅することにより、前記プラス側電源電圧、又は前記マイナス側電源電圧からの回復時間に起因する出力電圧波形の立ち上り応答や立ち下り応答の遅れを防止することができるように、前記第3の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第3の演算増幅器の出力端子との間に互いに逆向きで直列に2つツェナーダイオードを配して、第3の帰還ループを形成した前記第3の演算増幅器を用いたリミッタ回路と、前記リミッタ回路の出力波形がデジタル電源電圧とGNDとの間で出力されるようにデジタルレベル変換を行なうレベル変換回路と、を有するゼロクロスポイント生成部と、前記回転角センサから供給される信号に基づいて、前記回転角センサの回転角度を検出する回転角検出部と、前記ゼロクロスポイントに基づいて、前記回転角検出部に検出するタイミングを指示し、前記回転角度検出部が供給する前記回転角センサの回転角度と前記回転子と回転角度との位相差を測定する制御部を備えることにより達成される。
【0009】
本発明の上記目的は、前記アナログ信号が矩形波状の信号に変換されるまで増幅を行う
前記第2の反転増幅回路を有するゼロクロスポイント生成部を備えることにより、或いは前記複数のコイルが発生する全ての誘起電圧に基づいて生成された電圧を前記所定の基準電圧として用い、前記アナログ信号を増幅する増幅回路を有するゼロクロスポイント生成部を備えることにより、より効果的に達成される。
【0010】
本発明は、複数のコイルが巻回された固定子と、回転子と、回転角センサとを有するワークモータにおいて、前記ワークモータの基準角度と前記回転角センサの基準角度との角度差を測定する回転角センサ取り付け角度測定方法であって、前記複数のコイルのうちの1つのコイルを第1のコイルとし、前記回転子の回転に応じて前記第1のコイルに発生する第1の誘起電圧を検出し、
前記所定の基準電圧が第1の演算増幅器のプラス側入力端子に入力され、前記第1の誘起電圧が前記第1の演算増幅器のマイナス側入力端子に入力され、前記第1の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第1の演算増幅器の第1の出力端子との間に抵抗を接続することによる第1の帰還ループを形成することにより、前記第1の出力端子の出力の前記ゼロクロスポイント付近の電圧を増幅してアナログ信号を出力する第1の反転増幅器によって、前記第1の誘起電圧を増幅したアナログ信号と所定の基準電圧との差分の符号が変わるゼロクロスポイントを生成し、
第2の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第2の演算増幅器の出力端子との間に抵抗とコンデンサを並列に配した第2の帰還ループを形成する前記第2の演算増幅器を用いた第2の反転増幅器により、耐ノイズ及び発振防止された前記アナログ信号を出力し、上限電圧を第3の演算増幅回路のプラス側電源電圧以下とし、下限電圧を前記第3の演算増幅回路のマイナス側電源電圧以上とし、前記第3の演算増幅器のマイナス入力端子と前記第3の演算増幅器の出力端子との間に互いに逆向きで直列に2つツェナーダイオードを配して、第3の帰還ループを形成した前記第3の演算増幅器を用いたリミッタ回路によって、前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記上限電圧に達するまで、又は前記第3の演算増幅回路の出力電圧が前記下限電圧に達するまで、前記アナログ信号を増幅することにより、前記プラス側電源電圧、又は前記マイナス側電源電圧からの回復時間に起因する出力電圧波形の立ち上り応答や立ち下り応答の遅れを防止し、レベル変換回路によって、前記リミッタ回路の出力波形がデジタル電源電圧とGNDとの間で出力されるようにデジタルレベル変換を行い、前記回転角センサから供給される信号に基づいて、前記回転角センサの回転角度を検出し、前記ゼロクロスポイントに基づいて、前記回転角センサの回転角度を検出するタイミングを制御し、前記回転角センサの回転角度と前記回転子と回転角度との位相差を測定することにより達成される。
【0011】
本発明の上記目的は、増幅回路によって前記アナログ信号を増幅し、上限電圧を前記増幅回路のプラス側電源電圧以下とし、下限電圧を前記増幅回路のマイナス側電源電圧以上とし、前記増幅回路のプラス側出力電圧を前記上限電圧に達するまで、かつ前記増幅回路のマイナス側出力電圧を前記下限電圧に達するまで、前記アナログ信号を増幅することにより、前記ゼロクロスポイントの検出精度および検出感度を向上させることにより、
或いは、前記アナログ信号が矩形波状の信号に変換されるまで増幅を行うことにより、
或いは、前記複数のコイルが発生する全ての誘起電圧に基づいて生成された電圧を前記所定の基準電圧として用い、前記アナログ信号を増幅することにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転角センサ取り付け角度測定装置及び回転角センサ取り付け角度測定方法によれば、ワークモータの基準角度と回転角センサの基準角度とのオフセット角度(位相差)を検出する際、U相電圧波形が設定した上限電圧および下限電圧に達する程度まで、増幅を行う増幅回路を使用することにより、U相電圧波形が基準電圧と交差するゼロクロスポイントの検出精度および検出感度を向上することができ、本発明の回転角センサ取り付け角度測定装置は、小規模な構成でありながら、測定対象となるワークモータを手動で1回転することにより、オフセット角度(位相差)を高精度かつ高感度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ブラシレスタイプ(可変リラクタンス型)のレゾルバの構造図である。
【
図2】モータとレゾルバの機械的なズレ角度を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る回転角センサ取り付け角度測定装置システムおよび測定対象の全体構成図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る回転角センサ取り付け角度測定装置システムにおいて生成されるZ相パルス信号、U相電圧波形、ゼロクロス信号、SIN信号41、COS信号42、および角度取得θのタイミング関係を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における、U相電圧の基準電圧、U相誘起電圧、基準電圧とU相誘起電圧との各交点をゼロクロスポイントを、モータのロータ角度をxy平面の原点を中心とした角度として表して、模式的に描いた説明図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における、基準電圧を中心に振動するU相電圧波形のゼロクロスポイントにおける、レゾルバ角度から算出したオフセット角度θ1、θ2、〜θ8の様子を示す図である。
【
図7】(A)は、本発明の第1実施形態における、正弦波状のU相電圧波形のゼロクロスポイントを正確に測定するための測定区間(囲みの部分)を示す図である。(B)は、測定区間を伸張すると、U相電圧波形がフラットになり、ゼロクロスポイントの決定範囲が広がって誤差が拡大する様子を示す図である。(C)は、U相電圧を増幅して、ゼロクロスポイント付近のU相電圧波形の傾きを増大することによって、ゼロクロスポイントの誤差が減少する様子を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態における、U相電圧波形が増幅回路の最大出力電圧(上限電圧)−最小出力電圧(下限電圧)の間でリミットされる様子を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態における、回転角センサ取り付け角度測定装置の操作手順を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第2実施形態における、回転角センサ取り付け角度測定装置の全体構成図である。
【
図11】本発明の第2実施形態における、U相電圧、V相電圧およびW相電圧に基づいて生成した基準電圧を用いて、U相電圧波形を増幅する増幅回路である。
【
図12】本発明の第2実施形態における、U相電圧波形のゼロクロス付近の電圧変化を拡大するための反転増幅回路である。
【
図13】本発明の第2実施形態における、U相電圧波形に対するリミッタ回路およびデジタルレベル変換回路である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、測定対象となるワークモータに取り付けられた回転角センサ(例えば、レゾルバ)からの回転角度のデータとワークモータのU相電圧波形のゼロクロスポイントという時間情報とを比較した結果に基づいて、ワークモータの基準角度と回転角センサの回転角度とのオフセット角度(ズレ)を検出する際、U相電圧波形が設定した上限電圧および下限電圧に達する程度まで、増幅を行う増幅回路を使用することにより、U相電圧波形が中性点の基準電圧と交差するゼロクロスポイントの検出精度および検出感度を向上することができる。特に、本発明の回転角センサ取り付け角度測定装置は、小規模な構成でありながら、測定対象となるワークモータを手動で1回転することにより、オフセット角度(ズレ)を高精度かつ高感度で検出することができる。
【0015】
以下に、本発明である回転角センサ取り付け角度測定装置及び回転角センサ取り付け角度測定方法における、最良の形態について、図面を参照して説明をする。
【0016】
先ず、本発明において測定対象となる回転角センサが取り付けられたワークモータ(以下、単に「モータ」とも記載する)は、例えば、3相交流同期電動機が挙げられる。また、本発明の実施形態における測定対象は、回転角センサ、例えば、
図1に示すようにブラシレスタイプ(可変リラクタンス型)のレゾルバ10であり、モータのロータと結合して回転するロータ12と、ロータ12の回転によって変化する励磁電圧を検出するコイル11が、ロータ12の周囲に円環状に配置されたステータ13というような構造である。そして、
図2に示すように、レゾルバ20をモータ部21に取り付ける際、モータ部21におけるワークモータ0度位置22という基準に対して、レゾルバ20のレゾルバ0度位置23は、幾分かのオフセット角度24、すなわちモータとレゾルバの機械的なオフセット角度(位相差)を生じる。本発明である回転角センサ取り付け角度測定装置は、このオフセット角度24を、U相電圧波形が基準電圧に対し符号が変わる時点(以下、「ゼロクロスポイント」と記載する)におけるレゾルバからの回転角度のデータ(以下、「レゾルバ角度」と記載する)を測定することによって算出する。
【0017】
本発明の第1実施形態に係る回転角センサ取り付け角度測定装置システムおよび測定対象の全体構成を
図3に示す。測定対象はモータ32に取り付けられたレゾルバ31である。回転角センサ取り付け角度測定装置システム30(以下、単に「レゾメータ」とも記載する)は、レゾルバデジタルコンバータ(以下、「RDコンバータ」と記載する)33、マイコン34、およびゼロクロスポイント生成部35から構成されている。
【0018】
レゾメータ30は、レゾルバ31に駆動信号として、正弦波状のリファレンス信号(以下、「REF」と記載する)40を供給し、モータ32の角度に基づいて、レゾルバ31は、SIN信号(以下、単に「SIN」または「Sin」と記載する)41およびCOS信号(以下、単に「COS」または「Cos」と記載する)42を生成して、レゾメータ30に供給する。そして、REF40、SIN41およびCOS42の関係としては、励磁信号であるREF40がレゾルバ31に入力されることにより、互いに直交する2つの検出コイル(図示しない)からは、モータ32のロータ(図示しない)の角度に応じて変調されたSINおよびCOSという2つの信号をRDコンバータ33に供給する。レゾルバ角度は、SINおよびCOSのアークタンジェントから、原理的に算出することができ、ラッチ44信号の受信タイミングで角度取得43信号として、マイコン34に供給する。また、ゼロクロスポイント生成部35は、モータ32から供給されたU相電圧45、V相電圧46およびW相電圧47を可変抵抗VRU48a、VRV48bおよびVRW48cによって調整した中性点の電圧を基準電圧としたU相電圧45を増幅して、基準電圧付近のU相電圧波形を拡大して、マイコン34に供給することができる。
【0019】
なお、U相、V相およびW相の各相電圧の間には、回路基板上における信号経路の抵抗の差等によって誤差が生じる場合があるが、可変抵抗VRU48a、VRV48bおよびVRW48cを調整することによって、回路基板等による該誤差を実質的に0(ゼロ)となるようにして、正確な中性点の電圧を生成することができる。
【0020】
さらに、ゼロクロスポイント生成部35の増幅率は非常に大きいので、U相電圧45において基準電圧付近から十分離れた部分の波形は、リミッタ処理がなされて、設定した上限電圧および下限電圧に達する程度まで、増幅またはレベル変換がなされる。このため、上限電圧および下限電圧の平坦部を有する矩形波状の波形に変換されたU相電圧のゼロクロス信号49がマイコン34に供給される。なお、上限電圧はゼロクロスポイント生成部35における増幅回路のプラス側電源電圧以下の電圧と設定し、下限電圧はゼロクロスポイント生成部35における増幅回路のマイナス側電源電圧の以上の電圧として設定するならば、出力電圧が増幅回路の飽和電圧に達した際に起こる問題を回避することができる。特に増幅回路が演算増幅器を備えていたような場合、出力電圧が増幅回路の飽和電圧に達した際の応答時間の遅れの回避に有効である。
【0021】
以上のように、基準電圧に対してU相電圧45がプラスからマイナスに変化するタイミングに対応するゼロクロス49の立ち上がりの時点、またはマイナスからプラスに変化するタイミングに対応するゼロクロス49の立ち下がりを利用することによって、容易にU相電圧のゼロクロスポイントのタイミング情報を検出することができる。U相電圧45のゼロクロスポイントに基づいて、マイコン34がRDコンバータ33にラッチ43の信号を供給することによって、モータ32のロータが基準位置または基準角度に合致した時点におけるレゾルバ角度を取得することができる。以上のように取得したゼロクロスポイントにおけるレゾルバ角度に基づいて、モータ32の基準角度に対するレゾルバ角度(電気角)のズレを算出することができる。
【0022】
レゾメータ30の実装基板については、RDコンバータ33、マイコン34、ゼロクロスポイント生成部35が、1枚の基板に実装されていても良く、それぞれ異なる基板に実装されていて、コネクタおよびケーブルを使用して接続して信号を入出力するようにしても良い。また、手動でワークモータ32を回転させず、ロータリエンコーダを搭載した駆動モータ(図示しない)でワークモータ32を回転させるような場合、モータのロータが基準角度、すなわち出力角度0°の時における絶対角度の検出が可能なZ相パルス信号を利用してモータ32のロータが1周回転していることを検出し、U相電圧のゼロクロスポイントを検出するためのタイミング信号を生成しても良い。
【0023】
ここで、レゾメータ30を使用して、オフセット角度を算出する際の動作について説明する。
図4に、モータ32のロータ回転角度が0度において生成されるZ相パルス、モータ32から供給されるU相電圧、U相電圧を増幅して矩形波状に変換されたゼロクロス49、レゾルバ31からRDコンバータ33に供給されるSIN信号41、COS信号42、およびRDコンバータ33からマイコン34に供給される角度取得θのタイミング関係を示す。動作の概要は、
図4に示すように、2つのZ相パルスに挟まれた期間に、4周期分のU相電圧波形が存在し、その期間がモータのロータ1周に対応する。またモータ32のU相電圧45の波形が基準電圧に対して、負から正の値または正から負に変化する過程で基準電圧を横切る時点がゼロクロスポイントである。したがって、各ゼロクロスポイントは、ゼロクロス49の立ち上がりまたは立ち下がりのタイミングに対応する。本来レゾルバ31の取り付け位置が正しければ、ゼロクロスポイント時点における、レゾルバ31が指すワークモータ32のロータ角度(「レゾルバ角度」に対応する)は基準角度(0°)であるが、実際は取り付け誤差としてズレを生じている。このため4つのゼロクロスポイントにおけるレゾルバ角度は0°にならないから、調整のために測定する必要が生じる。
【0024】
具体的なレゾルバ角度の測定は、サーボモータZ相パルスをタイミングの基準として、U相、V相、W相の中性点Nを電圧基準としたU相電圧の立下りゼロクロスポイントを1点目とし、またU相、V相、W相の中性点Nを基準としたU相電圧の立上がりゼロクロスポイントを2点目として、4点目までのゼロクロスポイントのデータを取得することができる。U相電圧のゼロクロスポイントの各時点において、各レゾルバ角度を角度取得θの信号として算出されるが、一般的に各ゼロクロスポイントにおける各レゾルバ角度の測定値は誤差を含むため、それぞれ一致するものではないから、一周分して算出された各レゾルバの平均値をレゾルバ31とモータ32の角度のズレ、すなわちオフセット角度の測定値として採用する。
【0025】
第1実施形態においては、モータのU相波形は1回転が4周期とするため、ゼロクロスポイントは、1回転あたり8点(ポイント)が45°間隔で存在するものと設定する。また、レゾルバの電気角は1回転あたり2周期(360°×2)と設定するため、ゼロクロスポイントを1つ通過するごとに、機械角に換算すると45°位相が進むことに相当する。ここで、ゼロクロスポイント1〜4までは、通過したゼロクロスポイントをnとすると、(n−1)×45°なる補正値をレゾルバの計測角度から減算して、適正なレゾルバ角度を算出することができる。なお、一般的には12ビットRDコンバータにおいてレゾルバ角度が180度に達するとレゾルバ角度を示すデジタルデータがフルビットとなるため、該デジタルデータをリセットするような設計となっている。これに対応するため、ゼロクロスポイント5〜8以下では、(n−5)×45°なる補正値をレゾルバの計測角度から減算して、適正なレゾルバ角度を算出する。以上をまとめると、ゼロクロスポイント1〜4以下では、“ゼロクロスポイントに対応するオフセット角度”=“レゾルバの計測角度”−{45°×(n−1)}で算出し、ゼロクロスポイント5〜8以下では、“ゼロクロスポイントに対応するオフセット角度”=“レゾルバの計測角度”−{45°×(n−5)}で算出することができる。
【0026】
図5は、モータのロータ角度をxy平面50の原点51を中心とした角度として表し、U相電圧の基準電圧として所定の半径を有する基準円52、円周に垂直方向に振動するU相誘起電圧53、基準円52とU相誘起電圧53との各交点をゼロクロスポイント54a、54b、54c、54d、54e、54f、54g、および54hとして、模式的に描いた説明図である。また、
図6には、基準電圧を中心に振動するU相電圧波形のゼロクロスポイントにおける、レゾルバ角度から算出するオフセット角度θ1、θ2、〜θ8の様子を示す。また、実際に各ゼロクロスポイントにおけるレゾルバ角度に基づいて、算出したオフセット角度の様子を例として表1に示す。この結果においても、各ゼロクロスポイントにおけるオフセット角度(ズレ)は、ばらついており、1箇所のみの測定では誤差が大きいことを示している。
【0027】
【表1】
表1のようなオフセット角度の測定値が得られた際、各ゼロクロスポイントにおけるオフセット角度の平均値をレゾルバのオフセット角度として採用し、誤差を小さくする。
【0028】
本発明においては、ゼロクロスポイントの測定精度を向上させるため、U相電圧波形を矩形波状に変換する考え方を説明する。例えば、
図7(A)に示すように正弦波状のU相電圧波形のゼロクロスポイントを正確に測定するため、測定区間(囲みの部分)を伸張すると、
図7(B)に示すように、U相電圧波形がフラットになり、すなわちゼロクロスポイントの決定範囲が広がることで誤差が拡大する様子を示している。そこで、最善の方法としては、
図7(C)のようにゼロのU相電圧波形の傾きを、特にクロスポイント付近で拡大することである。例えば、
図8のように、U相電圧波形に対して増幅回路の最大出力電圧−最小出力電圧を超えて、リミットされるような高い増幅を行っても良いから、基準電圧付近におけるU相電圧波形の変化率をできるだけ拡大して、ゼロクロスポイントの決定範囲を狭めるような増幅回路を使用することである。そうすると、U相電圧波形の電圧変化の傾きが急峻になるほど、U相電圧波形とU相、V相、W相の中性点Nである基準電圧と交差する点(タイミング)、すなわちゼロクロスポイントの誤差が少ない正確な測定を行えるようになる。さらに、増幅度に関しては、20dBの増幅器を4段にカスケード接続すると、増幅度にして80dBの利得が得られる。このように高利得増幅回路を使用すると、基準電圧より高い期間の波形は、設定した上限電圧に達し、基準電圧より低い期間の波形は、設定した下限電圧に達し、入力電圧が増幅器の基準電圧を境に2値化されたような波形を出力するから、
図8に示すように、増幅回路の出力段にはコンパレータ回路のような2値化回路を設けて、波形変換を行っても良い。また、コンパレータから供給される信号に対して、トランジスタを用いたデジタルレベル変換を行うことによって、U相電圧波形のゼロクロスポイントが、デジタル信号の立ち上がり、および立ち下がり対応するようにし、パソコン等の制御用機器においてもU相電圧波形のゼロクロスポイントを容易に判定することができる波形変換を行うようにしても良い。
【0029】
第1実施形態における回転角センサ取り付け角度測定装置30(以下、単に「本体」とも記載する)の操作手順を、
図9に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、本体30を被測定対象であるモータ32の近傍に設置し、REF信号40をレゾルバ31に供給し、レゾルバ31から出力されるSIN信号41およびCOS信号42を本体30に供給するレゾルバケーブル36を、またモータ32からのU相電圧波形、V相電圧波形およびW相電圧波形を本体30に伝送するモータケーブル37、それぞれ本体30に接続する(S100)。本体30の電源をONにする(S200)。そして、測定をするためのモータ32、レゾルバ31および測定条件に関する設定を行う。具体的には、モータ32の極対数(2,3,4,5,6,7,8,9から選択する)、レゾルバ31の軸倍角(1,2,3,4,5,6,7,8,9から選択する)、角度単位(機械角、電気角から選択する)、位相差符号(正、負から選択する)、モータ0°基準(U相電圧ゼロクロスの立上り、立下りから選択する)、レゾルバ変圧比(0.14〜0.23、0.18〜0.30、0.24〜0.41、0.39〜0.66から選択する)、位相差計測(標準、1周平均から選択する)およびブレーキ出力設定(24V定電圧、12V定電圧、2A定電流、5A定電流から選択する)を設定する(S300)。なお、ブレーキ出力設定については後述する。そして、モータケーブル37とレゾルバケーブル36の断線チェックを行う(S400)。モータケーブル37とモータ32とを接続し、レゾルバケーブル36とレゾルバ31とを接続する(S500)。レゾルバ31が正常に動作し、かつ上記の設定が正しい場合、本体30に具備する表示画面(図示しない)には、現在のレゾルバ31のロータ角度が表示される。次に、本体30に具備する表示画面(図示しない)の計測スタートボタンを押して、計測を開始する(S600)。例えば、手動によってモータ32を1周以上回転させると、計測画面にレゾルバ31のオフセット角度(位相差)が算出され、表示される(S700)。表示されたオフセット角度(位相差)に基づいて、レゾルバの取り付け角度を調整する(S800)。再度計測を行うかを判断し、判断結果がYesであるならば、ステップ500に戻るが、判断結果がNoであるならば、ステップ1000に進む(S900)。本体30の電源をOFFにし、モータケーブル37を本体30およびモータ32から取り外し、レゾルバケーブル36を本体30およびレゾルバ31から取り外し(S1000)、測定を終了する。測定後、オフセット角度に基づいてレゾルバ31の基準角度とモータ32の基準角度とが一致するように取り付け直しを行っても良い。
【0030】
ブレーキ出力の設定については、図示しない電磁ブレーキ付モータには、無励磁作動型の電磁ブレーキが採用されているものがあり、電圧が印加されていない状態の場合、アーマチュアがコイルスプリングによりブレーキハブに押し付けられ、結果モータ軸が固定されブレーキが働く状態となり、逆に励磁コイルに電圧が印加されると、コイルスプリングに抗して電磁石にアーマチュアが吸引され、ブレーキが開放された状態となり、モータ軸は自由に回転することができるモータが存在する。このようなタイプのモータに対応するため、本体30には、ブレーキケーブル(図示しない)の接続端子が用意されており、本体30の設定画面からブレーキ出力を設定することで、モータの電磁ブレーキを掛けたり、解除したりする電源を制御することができる機能を備えている。
【0031】
次に、第2実施形態における回転角センサ取り付け角度測定装置60の全体構成図を
図10に示す。第2実施形態においては、ゼロクロスポイントの検出について、第1実施形態よりも具体的な回路構成を説明する。なお、
図3、及び
図10において、共通の構成に対しては同一符号を用いる。全体構成として、レゾルバ取り付け角度測定装置60のメインプログラムを実行する制御PC61、制御PC61から制御信号70gに基づいて、レゾルバ取り付け角度測定についての開始および終了の指示をインターフェース基板(以下、「IF基板」とする)62に送出するシーケンス制御専用のプログラマブル・ロジック・コントローラ(以下、「PLC」とする)63、第1実施形態と同様に、REF信号40をワークモータ32に取り付けられたレゾルバ31に供給し、レゾルバ31のロータ(図示しない)の角度によって変調を受けたSIN信号41およびCOS信号42に基づいてロータ角度を12ビットのデジタルデータ(以下、「DB0〜11」と記載する)70aとして演算して、PLC63を介して、制御PC61に供給し、ワークモータ32から供給されるU相逆電圧波形(以下、単に「U相電圧波形」とも記載する)、SIN信号41、およびCOS信号42を制御PC61に組み込まれたアナログ/デジタル変換基板(以下、「ADボード」と記載する)61aに供給するIF基板62から構成されている。そして、
図10が示すように、IF基板62は、RDコンバータ62a、バッファ・ゲイン調整62b、およびIO⇔TTL変換回路62cから構成されている。制御PC61から送られる制御信号70gに基づいて、PLC63は測定開始の指示する信号がIO⇔TTL変換回路62cを介して、IF基板62内のRDコンバータ62aに出力されると、第1実施形態と同様に、RDコンバータ62aは、REF信号40をワークモータ32に取り付けられたレゾルバ31に供給し、レゾルバ31のロータ(図示しない)の角度によって変調を受けたSIN信号41およびCOS信号42を基づいて演算したレゾルバ角度を12ビットのデジタルデータ(BD0〜11)70aをIO⇔TTL変換回路62cおよびPLC63を介して、制御PC61に供給する。具体的に測定開始に関する信号として、例えば、レゾルバ31のロータ角度サンプリングを指示するSAMPLE信号(以下、「SAMPLE」と記載する)70d、レゾルバ31のロータ角度を読むように指示するRD信号(以下、「RD」と記載する)70eが用いられ、それらはレゾルバ角度を測定するタイミングを制御する。また、RDコンバータ62aのリセットを指示するためのリセット信号(以下、「リセット」と記載する)70fについても、制御PC61は、IO⇔TTL変換回路62cおよびPLC63を介して、送信することができる。
【0032】
RDコンバータ62aはレゾルバ角度データの保障に関する2つの信号を送信する機能を有する。その1つ目はRDコンバータ62aが出力するトラッキング喪失状態を検出する信号LOT(以下、「LOT」とする)70b、その2つ目は信号性能低下状態を検出する信号DOS(以下、「DOS」とする)70cであるが、LOT信号70b、およびDOS信号70cはRDコンバータ62aの状態を示す信号で、LOT信号70b、DOS信号70cのどちらか、もしくは両方のアクティブが検出された時は、角度データである12ビットのデジタルデータ(DB0〜11信号)70aは保障されないことを示す信号であるから、LOT信号およびDOS信号に基づいて、レゾルバ角度データとしてRDコンバータ側62aから保障されたDB〜11信号70aを選択的に検出することができる。
【0033】
ゼロクロスポイントの検出に関して、ワークモータ32から供給されたU相電圧は、バッファ・ゲイン調整62bにおいて高い増幅度で増幅されて、U相波形は上述の基準電圧付近以外は、出力範囲として設定した上限電圧および下限電圧に達してしまう反面、基準電圧付近のU相波形の変化が劇的に拡大されたU相アナログ信号71aを生成し、ゼロクロスポイントを正確に検出する上で有用である。そして、制御PC61内に組み込まれたADボード61aにおいて、デジタル変換されたU相アナログ信号71aに基づいて検出されたゼロクロスポイントの示すタイミングに合わせて、制御PC61は、IO⇔TTL変換回路62cおよびPCC63を介して、レゾルバ角度を12ビットのデジタルデータ(BD0〜11)70aを読み取るように、RDコンバータ62aに指示を出することができる。以上のようにして、精度の高いU相電圧のゼロクロスポイントに基づいたタイミングに合わせて、レゾルバ31のレゾルバ角度を検出し、レゾルバ角度に基づいて、オフセット角度(ズレ)を正確に算出することができる。
【0034】
なお、IO⇔TTL変換回路62cについて補足すると、ノイズ対策等のため、DB0〜11信号70a、SAMPLE信号70d、RD信号70e、およびリセット信号70fを電気的にアイソレートを行い、さらに電圧レベル変換を行ってPLC63に供給する。またIO⇔TTL変換回路62cは、LOT信号およびDOS信号を電気的なアイソレートを行い、さらに電圧レベル変換を行って、PLC63に供給するようにしても良い。また、バッファ・ゲイン調整62bについても補足すると、REF信号40、SIN信号41、COS信号42およびU相電圧45をそれぞれ増幅して、制御PC61に組み込まれたADボード61aに供給するようにしても良い。また、エンコーダ64aを搭載した駆動モータ64のシャフトとワークモータ32のシャフトとを結合して、ワークモータ32を回す際は、制御PC61またはPLC63がタイミング信号を合成するためにエンコーダ64aの発生する信号、例えばZ相パルスを利用しても良い。
【0035】
続いて、U相電圧波形を増幅する具体的な増幅回路について、
図11〜13を用いて説明する。まず
図11に示すように、モータ32から供給されるU相電圧、V相電圧、およびW相電圧を抵抗R13、R14およびR15を介して互いに接続した中性点Nを設置することにより、U相電圧を増幅するための基準電圧を生成する。そして、該中性点Nを演算増幅器A1のマイナス側の入力端子に接続し、U相電圧波形を演算増幅器A1のプラス側の入力端子に接続する。さらに、演算増幅器A1の出力端子を抵抗R12を介してプラス入力端子に接続して帰還ループを設けて、反転増幅回路81を形成する。そして、U相電圧波形を抵抗R11を介して演算増幅器A1のプラス側の入力端子に供給するが、ここでは、演算増幅器A1はU相電圧最大入力122Vp−pに対して、約20Vp−pの出力するように反転増幅回路80のR11およびR12の抵抗値を設定する。反転増幅回路81の増幅率は、−R12/R11で表され、およそ1/6程度であるため、例えばR11=4.7kΩ、R22=820Ωという設定を行えば十分である。なお、演算増幅器A1のマイナス側の入力端子は、例えば820Ωの抵抗R10を介して接地を行う。
【0036】
次の段では、演算増幅器A1を含む反転増幅回路81の出力波形Vout1を演算増幅器A2を含む増幅回路82に入力して振幅を改めて増幅するため、抵抗R20およびR21を介して演算増幅器A2のマイナス側の入力端子に接続する。演算増幅器A2の出力を抵抗R22を介してマイナス入力端子に接続して帰還ループを設けて、反転増幅回路82を形成する。また、該反転増幅回路82の帰還ループには抵抗R22と並列にコンデンサCを配置して、対ノイズおよび発振防止の対策を施す。そして、反転増幅回路82の増幅率は、−R22/(R20+R21)で表されるため、増幅率を約10(20dB)としたい場合、例えばR20、R21=5.1kΩ、R22=100kΩという設定を行えば十分である。なお、演算増幅器A2のプラス側の入力端子は、例えば10kΩの抵抗R23を介して接地をする。また、マイナス側入力端子を過剰な電圧から保護するため、互いに電流の流れる向きの異なる2つのダイオードを介して接地をする。
【0037】
そして、U相電圧波形に対する増幅率をさらに増加するため、上述の反転増幅回路81をカスケード接続して、該接続する反転増幅回路の段数を重ねることによって、U相電圧波形に対する増幅率を劇的に増大させることができる。この結果、基準電圧付近以外のU相電圧波形は、基準電圧付近のU相電圧波形の変化は拡大され、ゼロクロスポイントの測定には優位な波形として出力される。したがって、U相電圧波形の電圧変化が緩慢な場合であっても、ゼロクロスポイントの正確な読み取りを行うことができる。以上のような高い利得の増幅回路を実現するには、例えば、上述のような反転増幅回路81を4段にカスケード接続をすれば可能であり、約80dB(=20dB×4)の高利得を得ることができる。
【0038】
最後に、
図13に、リミッタ回路およびデジタルレベル変換回路82を示す。前段に配置されたリミッタ回路では、上述の反転増幅回路81の最終段の出力波形Vout2を抵抗R30を介して、演算増幅器A3のマイナス側入力端子に入力する。そして、演算増幅器A3の出力端子と演算増幅器A3のマイナス側入力端子との間には、互いに向きが逆の2つのツェナーダイオードZD1、ZD2を直列に接続して配置して、帰還ループを形成する。該ループにより、プラス側もマイナス側もツェナー電圧以内にほぼリミットされるように波形整形をすることができる。さらに、これらのツェナーダイオードZD1、ZD2の機能を説明すると、演算増幅器A3におけるツェナーダイオードは、出力電圧波形をプラス側電源電圧を超えないように、かつマイナス側電源電圧を下回らないように制限(リミット)を行う。このため、演算増幅器A3は飽和することはなく、演算増幅器A3におけるツェナーダイオードは、プラス側およびマイナス側電源電圧への飽和からの回復時間に起因する、出力電圧波形の立ち上り応答や立ち下り応答の遅れを防止することができる。以上説明したように、演算増幅器A3の電源電圧への飽和を回避するツェナーダイオードZD1、ZD2の役割は、モータU相電圧を増幅する多段増幅回路におけるゼロクロスポイント測定の精度を確保するために有用である。なお、演算増幅器におけるツェナーダイオードによる制限される上限電圧は演算増幅器のプラス側電源電圧以下、かつ下限電圧はマイナス側電源電圧以上に設定することが好ましい。また、演算増幅器を単電源で駆動する場合には、下限電圧をGND電位以上に設定するようにしても良い。
【0039】
そして、第2実施形態では、演算増幅器が飽和しないように出力電圧を制限(リミット)するものとしてツェナーダイオードを採用したが、同様の機能が発揮される電子素子または電子回路であればツェナーダイオードに限定されるものではない。
【0040】
さらに、後段に配置されたデジタルレベル変換回路では、プルアップ抵抗R34をトランジスタTrのコレクタ側に接続し、エミッタ側を接地したトランジスタTrを用いて、演算増幅器A3の出力波形の振幅を電源電圧とGNDとの間で出力されるようにレベル変換を行う。これによって、制御PC61に設置されたA/Dボード61aを用いて、U相電圧波形の電圧変化が緩慢な場合であっても、ゼロクロスポイントの読み取りを容易に行うことができる。