(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリスチレン系樹脂、難燃剤及び物理発泡剤を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物を押出し発泡させて成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20〜40kg/m3、押出方向垂直断面積100cm2以上のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法において、
該物理発泡剤が(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンとを含み、
該物理発泡剤の総添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して1.0〜2.0molであり、
(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素の添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して0.1〜0.7molであると共に、(B)ハイドロフルオロプロペンの添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して0.3〜0.6molであり、
(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンとの合計添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して0.8〜1.2molであり、
(B)ハイドロフルオロプロペンが(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを含み、
(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとのmol比(B1:B2)が80:20〜20:80であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して0.25mol以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
物理発泡剤がさらにエタノール及び水を含み、エタノールと水とのmol比が40:60〜10:90であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、板状のポリスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法として、ポリスチレン系樹脂に難燃剤を加え、押出機で加熱溶融混練し、次いで物理発泡剤を該押出機中に圧入し更に混練し、これらの溶融混合物を高圧域から低圧域(通常は大気中)に押し出し、押出機のダイ出口に連結された賦形装置などにより板状に成形(賦形)することにより、高厚み、低見かけ密度のポリスチレン系樹脂押出発泡板(以下、発泡板ともいう。)を製造する方法、さらに該製造方法により製造された発泡板が知られている。
【0003】
このようにして製造された発泡板は、主として、建築物の壁、床、屋根等の断熱材や畳芯材等の建築用の断熱材として使用されている。このような用途に使用される場合、ポリスチレン系樹脂押出発泡板には、JIS A9511(2006R)5・13・1に規定される、「測定方法A」に記載の押出ポリスチレンフォーム保温板を対象とする燃焼性規格を満足する高度な難燃性が要求される。さらに、発泡板には、JIS A9511(2006R)4.2で規定される熱伝導率の規格を満足する優れた断熱性が要求される。
【0004】
さらに、環境保護の観点から、地球温暖化係数が小さく、オゾン層を破壊しない発泡剤を使用することも求められており、オゾン破壊係数が0(ゼロ)であり、更に地球温暖化係数も小さいブタン等の飽和炭化水素が、物理発泡剤の主成分として用いられるようになった。
【0005】
飽和炭化水素は、前記利点を有するものの、飽和炭化水素は燃焼しやすい特性を有しているので、発泡板に難燃性を付与するという観点から発泡剤としての使用量が制限され、高発泡倍率の発泡板を製造するためには、発泡板からの散逸が早い易散逸性の物理発泡剤をあわせて用いなければならない。具体的には、易散逸性の物理発泡剤として、塩化メチル等の塩化アルキル、ジメチルエーテル等のエーテル類、エタノール等の脂肪族アルコール、水、二酸化炭素やこれらを組合わせた発泡剤が用いられてきた。
【0006】
こういった状況下、近年、二重結合を含むプロペンが有する6個の水素の内4個がフッ素で置換された1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、HFO1234zeともいう。)や、6個の水素の内3個がフッ素で、1個の水素が塩素で置換された1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下、HFO1233zdともいう。)等のハイドロフルオロプロペンが開発された。これらのハイドロフルオロプロペンは、オゾン破壊係数が0(ゼロ)であり、かつ地球温暖化係数も極めて小さい性質を有する。さらに、ハイドロフルオロプロペンは、炭化水素に比べて熱伝導率も低く、かつ前記した易散逸性の物理発泡剤に比べてポリスチレン系樹脂発泡板からの逸散速度が遅いため、HFO1234zeやHFO1233zdを使用すると、従来のポリスチレン系樹脂押出発泡板に比べ長期にわたって低い熱伝導率を示す発泡板を得ることができる可能性がある。
【0007】
特許文献1〜3には、HFO1234ze、HFO1233zdを用いたポリスチレン系樹脂押出発泡体、さらにその製造方法が開示されている。
具体的には、特許文献1には、HFO1234zeを主として、これにブタン、イソブタン等の炭化水素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、HFO1234ze以外のハイドロフルオロアルケンなどを加えた物理発泡剤を用いることが記載され、実施例には、2軸押出機を用いて、ポリスチレンを用い、HFO1234ze単体、またはHFO1234zeと、HFCである1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)との混合物を発泡剤として注入して押出発泡を行い、見かけ密度70〜100kg/m
3、直系約30mmの棒状のポリスチレンフォームを得たことが記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、HFO1234zeとHFO1233zdを特定配合で組合わせた物理発泡剤を用いて低密度ポリスチレンフォームを製造することが記載され、実施例には、50mmの異方向回転二軸押出機を用い、2及び3mmの直径を有するオリフィスストランドダイ(1mmのダイランド)を用いて押出発泡を行い、見かけ密度38〜77kg/m
3の円筒形状を有するポリスチレンフォームを得たことが記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、HFO1234ze等のハイドロフルオロオレフィンと、イソブタン等の炭素数3〜5の飽和炭化水素と、水及び/又は二酸化炭素とを特定配合で組み合わせた物理発泡剤を用いて、ポリスチレン系樹脂押出断熱板を製造することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載されたポリスチレンフォームは、70〜100kg/m
3という高見かけ密度で、断面積も小さいものである。さらに、該スチレン発泡体は、棒状に押出されたものであって板状に成形されたものではない。
また、特許文献2に記載されたポリスチレンフォームは、円筒状に押出されたものであって、押出されてから板状に成形されたものではない。また、特許文献2には、見かけ密度が46kg/m
3以下になると、表面欠陥の発生を防ぐことができないことが記載されている。
【0012】
本発明者等は、特許文献1及び特許文献2に記載された物理発泡剤を用いて、低見かけ密度且つ板状のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造を試みた。
しかし、いずれの組合せの場合であっても、ダイ内で発泡剤が発泡性溶融樹脂組成物から分離してしまうことによって、押出直後に発泡体の表面にスポット(表面欠陥)が発生するという問題が起きた。さらに賦形装置により板状に賦形する段階において、発泡板への成形が安定せず、良好な発泡板が得られないという問題が起きた。
【0013】
一方、特許文献3に記載された製造方法によれば、物理発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含む物理発泡剤を用いて、低見掛け密度で表面が美麗なポリスチレン系樹脂押出発泡断熱板を製造することが可能となった。しかし、得られる発泡板の熱伝導率をさらに低下させようとして、ハイドロフルオロオレフィンの添加量を多くすると、発泡板の断面積が小さな場合には安定して発泡板を製造することが可能であったが、断面積が大きな場合には、発泡が安定せず発泡板の幅が変動するなどして、製造安定性に課題を残すものであった。
【0014】
このように、従来技術では、ハイドロフルオロオレフィンを物理発泡剤として用いる場合、ハイドロフルオロオレフィンの添加量が多くなると、40kg/m
3以下の低見かけ密度で、見掛け密度100cm
2以上の大断面積のポリスチレン系樹脂押出発泡板を安定して得ることができなかった。
【0015】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、ハイドロフルオロプロペンを含む物理発泡剤を用いて、低見かけ密度で大断面積のポリスチレン系樹脂押出発泡板を安定して製造することができるポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、以下に示すポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法、ポリスチレン系樹脂押出発泡板が提供される。
[1] ポリスチレン系樹脂、難燃剤及び物理発泡剤を混練してなる発泡性溶融樹脂組成物を押出し発泡させて成形具により板状に成形する工程を含む、見掛け密度20〜40kg/m
3、押出方向垂直断面積100cm
2以上のポリスチレン系樹脂発泡板の製造方法において、
該物理発泡剤が(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンとを含み、
該物理発泡剤の総添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して1.0〜2.0molであり、
(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素の添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して
0.1〜0.7mo
lであると共に、(B)ハイドロフルオロプロペンの添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して0.3〜0.6molであり、
(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンとの合計添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して0.8〜1.2molであり、
(B)ハイドロフルオロオレフィンが(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを含み、
(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとのmol比(B1:B2)が80:20〜20:80であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[2] (B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの添加量がポリスチレン系樹脂1kgに対して0.25mol以下であることを特徴とする前記1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[3] (A)炭素数4〜5の飽和炭化水素がイソブタンを50mol%以上含むことを特徴とする前記1又は2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[4] 物理発泡剤がさらにエタノール及び水を含み、エタノールと水とのmol比が40:60〜10:90であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法。
[5] 難燃剤を含む、見掛け密度20〜40kg/m
3、押出方向垂直断面積100cm
2以上のポリスチレン系樹脂押出発泡板において、
該押出発泡板は(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンとを含み、
該押出発泡板中の(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素の含有量が該押出発泡板1kgあたり
0.1〜0.7mo
lであると共に、(B)ハイドロフルオロプロペンの含有量が該押出発泡板1kgあたり0.3〜0.6molであり
該押出発泡板中の(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素の含有量と(B)ハイドロフルオロオレフィンの含有量との合計が押出発泡板1kgあたり0.8〜1.2molであり、
(B)ハイドロフルオロプロペンが(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを含み、(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとのmol比(B1:B2)が80:20〜20:80であることを特徴とするポリスチレン系樹脂押出発泡板。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法によれば、(B)ハイドロフルオロプロペンとして(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを特定比率で併用し、さらにこれらを特定量の(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と組合わせた物理発泡剤を使用することにより、ハイドロフルオロプロペンを従来よりも多量に添加することができ、しかも、スポットの発生や板状体への成形性(賦形性)の低下を防止することができるので、低見掛け密度で大断面積であり、かつ熱伝導率が低い発泡板を安定して製造することができる。これは、(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたは(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのどちらかだけを(A)飽和炭化水素と組合わせた場合には得ることができない効果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法においては、ポリスチレン系樹脂と、難燃剤と物理発泡剤とを押出機に供給して加熱、溶融、混練し、次に物理発泡剤を注入して更に混練し、得られた発泡性溶融樹脂組成物を、ダイを通して高圧の押出機内より低圧域に押出して発泡させると共に成形具により板状に成形する工程を経ることにより、ポリスチレン系樹脂発泡板が製造される。
【0019】
このように、本発明は、押出された発泡体を板状に成形する工程を含む、発泡板の製造方法である。成形工程においては、該ダイの出口に、平行あるいは入口から出口に向かって緩やかに拡大するよう設置された上下2枚のポリテトラフルオロエチレン樹脂等からなる板で構成される賦形装置(以下、ガイダーとも言う)や成形ロール等の成形具が配置され、押出された発泡組成物は該成形具を通過することによって、板状に成形される。
【0020】
次に、本発明方法で用いられるポリスチレン系樹脂、物理発泡剤、難燃剤、その他の添加剤について順に説明する。
【0021】
本発明において用いられるポリスチレン系樹脂は、スチレンを主体とする重合体であり、スチレン単独重合体のみならず、スチレンと共重合し得るビニル系単量体とスチレンとの共重合体を用いることができる。具体的には、ポリスチレン(GPPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。また、これらのポリスチレン系樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。なお、ポリスチレン系樹脂には、ジビニルベンゼンや多分岐状マクロモノマー等の多官能性モノマー単位成分が含まれていてもよい。これらのポリスチレン系樹脂の中でも、発泡性の観点からポリスチレン(GPPS)が好ましい。
【0022】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン成分が50モル%以上含有し、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0023】
ポリスチレン系樹脂は、本発明の目的、効果が達成される範囲内において、その他の重合体を含むことができる。その他の重合体としては、ポリエチレン系樹脂(エチレン単独重合体及びエチレン単位成分含有量が50モル%以上のエチレン系共重合体の群から選択される1種、或いは2種以上の混合物)、ポリプロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体及びプロピレン単位成分含有量が50モル%以上のプロピレン系共重合体の群から選択される1種、あるいは2種以上の混合物)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂や、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物、スチレン−エチレン共重合体等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの他の重合体は、ポリスチレン系樹脂中で50重量%未満となるように、好ましくは30重量%以下となるように、さらに好ましくは10重量%以下となるように、目的に応じて混合することができる。
【0024】
また、発泡板の断熱性を高めるために、ポリスチレン系樹脂として、非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体を含むものを使用することができる。この場合、非晶性ポリエチレンテレフタレート系共重合体は、ポリスチレン系樹脂中に5質量%以上50質量%未満となるように配合することが好ましい。
【0025】
また、ポリスチレン系樹脂は、発泡性や成形性の観点から、その溶融粘度が500〜2500Pa・s程度のものを用いることが好ましく、より好ましくは600〜2000Pa・s、さらに好ましくは700〜1500Pa・sである。なお、上記溶融粘度は、JIS K7199:1999に基づき、温度200℃、せん断速度100秒
−1の条件で測定した値である。
【0026】
本発明方法において用いられる物理発泡剤は、(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンとを含むものである。
【0027】
(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、シクロブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン等が挙げられ、これらの飽和炭化水素は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。これらの中では、低見かけ密度の発泡板を製造しやすく、断熱性に優れる発泡板を得ることができることから、イソブタン、n−ブタンが好ましく、イソブタンが特に好ましい。
【0028】
イソブタンを用いる場合、(A)飽和炭化水素中のイソブタンの含有量は、50mol%以上であることが好ましく、より好ましくは60mol%以上、更に好ましくは、70mol%以上、特に好ましくは80mol%以上、最も好ましくは90mol%以上である。
【0029】
(B)ハイドロフルオロプロペンとしては、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1233zd)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO1225zc)、1,1,2,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO1225yc)などが挙げられる。
【0030】
本発明方法における物理発泡剤は、(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンを含むものであり、その総添加量はポリスチレン系樹脂1kgに対して1.0〜2.0molである。該総添加量が少なすぎると、所望される低見かけ密度の発泡板を得ることができなくなるおそれがある。一方、多すぎると、安定した押出発泡ができなくなるおそれがある。かかる観点から、総添加量の下限は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して1.1molであることが好ましい。一方、総添加量の上限は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して1.8molであることが好ましく、より好ましくは1.6mol、更に好ましくは1.5molである。
【0031】
(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素の添加量はポリスチレン系樹脂1kgに対して0.7mol以下である。(A)飽和炭化水素の添加量が多すぎると、得られる発泡板が燃えやすくなり、難燃剤を多量に添加しても発泡板に高度な難燃性を付与できなくなるおそれがある。かかる観点から、(A)飽和炭化水素の添加量の上限は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して0.6molであることが好ましい。一方、発泡性や得られる発泡板の断熱性の観点から、その下限は概ね0.1molであることが好ましく、より好ましくは0.2mol、更に好ましくは0.3molである。
【0032】
(B)ハイドロフルオロプロペンの添加量は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して0.3〜0.6molである。該添加量が多すぎると、前記スポット(表面欠陥)の発生を防止できなくなるおそれや、成形具内での成形性が低下するおそれ、押出された発泡体の幅が大きく変動するおそれがある。一方、該添加量が少なすぎると、低熱伝導率の発泡板を得られなくなるおそれがある。かかる観点から、(B)ハイドロフルオロプロペンの添加量の上限は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して0.5molであることが好ましい。その下限は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して0.35molであることが好ましく、より好ましくは0.4molである。
【0033】
(A)飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンとの合計添加量はポリスチレン系樹脂1kgに対して0.8〜1.2molである。該合計添加量が少なすぎると、所望される熱伝導率を有する発泡板が得られないおそれがある。一方、該合計添加量が多すぎると、板状体への成形性が低下して、良好な発泡板が得られなくなるおそれがある。
かかる観点から、該合計添加量の上限は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して1.1molであることが好ましく、より好ましくは1.0molである。また、その下限は、ポリスチレン系樹脂1kgに対して0.9molであることが好ましい。
【0034】
本発明方法において用いられる(B)ハイドロフルオロプロペンは、(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)と(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1233zd)とを含むものである。
なお、(B)ハイドロフルオロプロペンは、(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)及び(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1233zd)を90mol%以上含むことが好ましい。
また、本発明方法においては、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)は、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランスHFO1234ze)とシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(シスHFO1234ze)の両方又はどちらかのみを含むことができ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1233zd)は、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランスHFO1233zd)とシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(シスHFO1233zd)の両方又はどちらかのみを含むことができる。
【0035】
(B1)HFO1234zeと(B2)HFO1233zdの両者を特定比率で用いて、特定量の(A)飽和炭化水素と組合わせて用いると、(B1)と(B2)のどちらかを単独で(A)飽和炭化水素と組合わせる場合の(B1)または(B2)の添加量に対して、(B1)と(B2)の合計添加量を増やしても、スポットの発生が抑制されると共に押出された発泡体の幅変動も抑制される。
【0036】
(B1)HFO1234zeと(B2)HFO1233zdとのmol比(B1:B2)は、80:20〜20:80である。(B1)と(B2)のmol比が前記範囲外であると、発泡性が悪化するおそれがある。また、(B1)と(B2)のmol比が前記範囲内であると、より熱伝導率の低い発泡板を得ることができる。これらの観点から、該mol比は、70:30〜30:70であることが好ましい。
【0037】
(B1)HFO1234zeの添加量はポリスチレン系樹脂1kgに対して0.25mol以下であることが好ましい。(B1)の添加量がこの範囲であると、特に安定して発泡板を得ることができる。
【0038】
本発明においては、所望の見掛け密度の発泡板を得るために、物理発泡剤に(A)飽和炭化水素及び(B)ハイドロフルオロプロペン以外の他の発泡剤を含有させることができる。
他の発泡剤としては、塩化メチル、塩化エチル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、メタノール、エタノール、水、二酸化炭素、窒素などが挙げられる。これらの他の発泡剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0039】
前記他の発泡剤の中では、発泡板の難燃性を阻害することがなく、かつ、環境に優しいことから、エタノール、二酸化炭素及び水から選択される1又は2以上が好ましい。
【0040】
発泡性に優れ、低見かけ密度の発泡板を製造しやすいという観点から、これらの中でも、エタノールと水の組み合わせがより好ましい。その場合、エタノールと水とのmol比は40:60〜10:90であることが好ましい。
【0041】
本発明で用いられる難燃剤は臭素系難燃剤が好ましい。該臭素系難燃剤としては、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体、臭素化ビスフェノール系難燃剤、臭素化イソシアヌレート系難燃剤等が挙げられる。本発明においては、これらの内の臭素化ブタジエン−スチレン共重合体がより好ましい。但し、臭素化ブタジエン−スチレン共重合体に、他の臭素系難燃剤を組み合わせて使用することができる。
【0042】
臭素系難燃剤の総配合量は、ポリスチレン100重量部に対して0.5〜10重量部配合することが好ましく、より好ましくは1〜8重量部である。この範囲内であれば、難燃剤が発泡性を阻害することなく、JIS A9511:2006R記載の押出ポリスチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満足する発泡板を得ることができる。
【0043】
前記臭素化ブタジエン−スチレン共重合体は従来公知のものであり、例えば、特表2009−516019号公報や特表2012−512942号公報で開示されたものが使用できる。
【0044】
代表的な臭素化ブタジエン−スチレン共重合体である臭素化ブタジエン−スチレンブロック共重合体は下記一般式で表すことができる。
【0045】
【化1】
(式中、X、Y及びZは、正の整数である。)
【0046】
臭素化ブタジエン−スチレンブロック共重合体としては、Chemtura社のEmerald Innovation 3000、ICL−IP社のFR−122Pなどの市販品が挙げられる。
【0047】
本発明の製造方法においては、前記難燃剤に加えて、熱安定剤、難燃助剤をポリスチレン系樹脂に添加することができる。
【0048】
熱安定剤としては、エポキシ系化合物、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物及びホスファイト系化合物から選択される1又は2以上の熱安定剤が挙げられる。なお、該熱安定剤の総配合量は、難燃剤100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましい。
【0049】
難燃助剤としては、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ポリアルキルベンゼンから選ばれる少なくとも1種の難燃助剤が挙げられる。これらを配合することで、得られる発泡体の酸素指数を向上させることができる。
【0050】
前記ジフェエニルアルカンとしては、例えば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジエチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、3,4−ジエチル−3,4−ジフェニルヘキサンが挙げられる。ジフェニルアルケンとしては、例えば、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−エチル−1−ペンテンが挙げられる。ポリアルキレンベンゼンとしては、例えば、ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン(CCPIB)が挙げられる。これらの中でもポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン(CCPIB)が好ましい。なお、難燃助剤の配合量は、難燃剤100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましい。
【0051】
本発明の製造方法においては、さらに気泡調整剤、着色剤、酸化防止剤、輻射抑制剤、充填剤、滑剤等をポリスチレン系樹脂に添加することができる。
【0052】
気泡調整剤としては、タルク、カオリン、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、クレー、酸化アルミニウム、ベントナイト、ケイソウ土等の無機物が例示される。また、該気泡調整剤は2種以上組合せて用いることもできる。なお、気泡調整剤の配合量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して0.01〜7.5質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0053】
輻射抑制剤としては、例えば、輻射抑制効果を有する微粉末状のものが挙げられ、具体的には、酸化チタン等の金属酸化物、アルミニウム等の金属、カーボンブラック、黒鉛等のカーボン、セラミック等を例示することができる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。輻射抑制剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100重量部に対し、0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部の範囲で使用される。
【0054】
次に、本発明方法により得られる発泡板の物性について説明する。
発泡板の見掛け密度は20〜40kg/m
3である。見かけ密度が小さすぎると、圧縮強度などの機械的強度が低下しすぎて、断熱材として使用できなくなるおそれがある。一方、見かけ密度が大きすぎると、軽量性が損なわれて扱いにくいものとなったり、断熱性が低下するおそれがある。かかる観点から、見かけ密度は25kg/m
3以上38kg/m
3未満であることが好ましい。
【0055】
本発明に係る発泡板は、その押出方向垂直断面積は、100cm
2以上であり、200cm
2以上であることが好ましい。その断面積の上限は概ね1500cm
2である。
本明細書において、押出方向垂直断面積とは、押出発泡板の押出方向と直交する垂直断面の断面積をいう。
【0056】
通常、発泡板は、所望のサイズよりも一回り以上大きなサイズの原板(発泡体)を作製し、原板を切削加工するなどして、幅と長さ、場合によっては厚みを調整することにより製造される。ここで、製造中に原板の幅が大きく変動し、幅が規定よりも狭くなってしまうと、規定のサイズの発泡板を得ることができず、歩留まりが悪くなってしまう。さらに、発泡板の製造においては、見掛け密度が低く、断面積が大きいほど発泡が難しくなる傾向にある。本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板の製造方法によれば、物理発泡剤としてハイドロフルオロプロペンを含む発泡剤を用いて、見掛け密度が低く、断面積が大きい発泡板を製造する場合も、外観が良好な発泡板を安定して製造することができる。
【0057】
本発明に係る発泡板は断熱材として使用される場合、その厚みは10〜150mmが好ましく、15mm〜120mmがより好ましい。
【0058】
発泡板の幅は800mm以上であることが好ましく、より好ましくは900mm以上である。その上限は、概ね1200mmである。
【0059】
発泡板の厚み方向平均気泡径は、発泡板の機械的強度と断熱性能とのバランスから好ましくは0.05〜1mmであり、より好ましくは0.06〜0.5mmであり、さらに好ましくは0.07〜0.2mmである。
【0060】
本明細書における平均気泡径とは、次の測定方法により求められる気泡径を意味する。
発泡板厚み方向の平均気泡径(DT:mm)及び発泡板幅方向の平均気泡径(DW:mm)は、発泡板の押出方向垂直断面積断面(発泡板の押出方向と直交する垂直断面)に存在する個々の気泡に対して、厚み方向及び幅方向に平行な四辺を有し、かつ気泡に外接する長方形の厚み方向の辺の長さ及び幅方向の辺の長さを計測して、それぞれを各気泡の厚み方向の気泡径、幅方向の気泡径を求め、各々の算術平均値を厚み方向の平均気泡径(DW)、幅方向の平均気泡径(DT)とする。
一方、発泡板押出方向の平均気泡径(DL:mm)は、発泡板の押出方向垂直断面(発泡板の押出方向に平行に、幅方向の中央部で二等分した垂直断面)に存在する個々の気泡に対して、厚み方向及び押出方向に平行な四辺を有し、かつ気泡に外接する長方形の押出方向の辺の長さを計測して、各気泡の厚み方向の気泡径を求め、それらの算術平均値を押出方向の平均気泡径(DL)とする。
また、発泡板の水平方向の平均気泡径(DH:mm)は、DWとDLの相乗平均値とする。
【0061】
更に、発泡板の気泡変形率は0.7〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.5であることがより好ましく、0.8〜1.2であることが更に好ましい。気泡変形率とは、上記測定方法により求められたD
TをD
Hで除すことにより算出される値(D
T/D
H)であり、該気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、かつ更に高い断熱性を有する発泡板となる。
【0062】
発泡板の独立気泡率は60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。独立気泡率が高い程、イソブタンなどの発泡剤が長く気泡中に留まることが可能となり、高い断熱性能を長期に亘って維持することができると共に、機械的強度にも優れた発泡板となる。
【0063】
独立気泡率:S(%)は、ASTMD2856−70(1976再認定)に記載されている手順Cに準拠し、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型等を使用して測定される試験片の実容積(独立気泡の容積と樹脂部分の容積との和):Vx(cm
3)から、下記式(1)により算出できる。
S(%)=(Vx−W/ρ)×100/(Va−W/ρ)・・・(1)
但し、上記式中の、Va、W、ρは以下の通りである。
Va: 測定に使用した試験片の見かけ容積(cm
3)
W: 試験片の質量(g)
ρ: 試験片を構成する樹脂組成物の密度(g/cm
3)
【0064】
なお、樹脂組成物の密度ρ(g/cm
3)は、試験片の質量W(g)及び測定に使用した試験片を加熱プレスにより気泡を脱泡させてから冷却する操作を行い、得られたサンプルの体積(cm
3)から求めることができる。
【0065】
発泡板の熱伝導率は、0.020〜0.028W/m・Kが好ましく、0.021〜0.025W/m・Kがより好ましい。発泡板の熱伝導率がこの範囲内であると、優れた断熱性を得ることができる。なお、熱伝導率の測定は、JIS A1412−2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて測定することができる。
【0066】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板は、前記した本発明方法により製造することができ、その形状は板状で、前記難燃剤を含むものである。
【0067】
発泡板の見掛け密度は20〜40kg/m
3であり、好ましくは25kg/m
3以上38kg/m
3未満である。
その押出方向垂直断面積は、100cm
2以上であり、200cm
2以上であることが好ましい。その断面積の上限は概ね1500cm
2である。
【0068】
発泡板は、(A)炭素数4〜5の飽和炭化水素と(B)ハイドロフルオロプロペンを含んでいる。
【0069】
発泡板中の(A)飽和炭化水素の含有量は、発泡板1kgあたり0.7mol以下である。該含有量が多すぎると、難燃性が損なわれるおそれがある。かかる観点から、該含有量は、発泡板1kgあたり0.6mol以下であることが好ましい。一方、該含有量が少なすぎると、所望される断熱性が得られないおそれがある。該含有量の下限は、概ね0.1molであることが好ましく、より好ましくは0.2mol、さらに好ましくは0.3molである。
【0070】
発泡板中の(B)ハイドロフルオロプロペンの含有量は、発泡板1kgあたり0.3〜0.6molである。該含有量が多すぎると、製造時にスポット(表面欠陥)の発生を防止できなくなるおそれや、成形性が低下するおそれ、押出された発泡体の幅が大きく変動するおそれがある。一方、該含有量が少なすぎると、所望される断熱性が維持できないおそれがある。かかる観点から、(B)ハイドロフルオロプロペンの含有量の上限は、発泡板1kgに対して0.5molであることが好ましい。その下限は、発泡板1kgに対して0.4molであることが好ましい。
【0071】
発泡板中の(A)飽和炭化水素の含有量と(B)ハイドロフルオロプロペンの含有量との合計含有量は発泡板1kgあたり0.8〜1.2molである。
該合計含有量が少なすぎると、所望の断熱性を発現しなくなる。一方、該合計含有量が多すぎる場合、製造時にこれらの発泡剤の合計配合量が多くなるため、良好な発泡板が得られない。かかる観点から、該合計含有量の上限は、発泡板1kgに対して1.1molであることが好ましく、より好ましくは1.0molである。また、その下限は、発泡板1kgに対して0,9molであることが好ましい。
【0072】
(B)ハイドロフルオロプロペンは、(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとを含むものである。
【0073】
(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペンと(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとのmol比(B1:B2)は80:20〜20:80であり、70:30〜30:70であることが好ましい。
【0074】
発泡板中の(A)飽和炭化水素の含有量及び(B)ハイドロフルオロプロペンの含有量は、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により測定することができる。具体的には、発泡板から適量のサンプルを切り出し、このサンプルを適量のトルエンと内部標準物質の入った蓋付き試料ビン中に入れ蓋を閉めた後、充分に撹拌し、サンプル中の(A)飽和炭化水素及び(B)ハイドロフルオロプロペンをトルエン中に溶解させた溶液を測定用試料としてガスクロマトグラフ分析を行って発泡板中の(A)飽和炭化水素の含有量及び(B)ハイドロフルオロプロペンの含有量を求める。
【実施例】
【0075】
以下、本発明について、実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0076】
内径150mmの第1押出機と内径200mmの第2押出機とが直列に連結されており、間隙1mm×幅440mmの断面長方形の樹脂排出口(ダイリップ)を備えたフラットダイが第2押出機の出口に連結され、該フラットダイの樹脂出口には、平行に設置された上下一対のポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる板により構成された賦形装置(間隔28mm)が付設されている押出装置を用いた。
【0077】
発泡板の製造には、以下の原料を用いた。
[ポリスチレン系樹脂]
ポリスチレン:重量平均分子量Mw=27万、溶融粘度1100Pa・s(重量平均分子量Mw=32万のポリスチレン50質量%と重量平均分子量Mw=20万のポリスチレン50質量%との混合樹脂)
上記溶融粘度は、キャピログラフ1D((株)東洋精機製作所製)の流動特性測定機を用いて、温度200℃、せん断速度100秒
−1の条件で測定した値である。
【0078】
[難燃剤]
臭素化ブタジエン−スチレンブロック共重合体(ICL−IP製、製品名「FR-122P」)及びトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート(鈴裕化学製、製品名「FCP−660」);重量比60:40
【0079】
[物理発泡剤]
(A)飽和炭化水素:イソブタン(三井化学製)
(B1)1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze):(ハネウェル製、製品名「ソルスティス1234ze(E)」)
(B2)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO1233zd):(ハネウェル製、製品名「ソルスティス1233zd(E)」)
他の発泡剤:水、エタノール
【0080】
[添加剤]
気泡調整剤:タルク(松村産業製、製品名「ハイフィラー#12」)
熱安定剤:ノボラック型エポキシ化合物(DIC製、製品名「EPICLON N680」)50質量%、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト(ADEKA製、製品名「PEP36」)45質量%、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(BASF製、製品名「Irganox1076」)5質量%
難燃助剤:ポリ−1,4−ジイソプロピルベンゼン(UNITED INITIATORS製、製品名「CCPIB」)
【0081】
実施例1〜4、比較例1〜4
表1に示す配合及び配合量となるように、ポリスチレン系樹脂、難燃剤、さらに難燃助剤、熱安定剤及び気泡調整剤を、第1押出機に供給し、200℃まで加熱し、混練して溶融樹脂組成物とし、第1押出機の先端部に設けられた発泡剤注入口から表1に示す配合組成及び量の物理発泡剤を溶融樹脂組成物に供給してさらに混練した。得られた発泡剤含有溶融樹脂組成物を第2押出機に移送するとともに、樹脂温度を同表に示す発泡樹脂温度(押出機とダイとの接合部の位置で測定された溶融樹脂組成物の温度)に調整して発泡性溶融樹脂組成物とした後、吐出量800kg/hrで発泡性溶融樹脂組成物をダイリップからガイダー内に押出発泡して発泡体(原板)とし、ガイダー内を通過させながら板状に成形(賦形)し、さらに、切削加工により厚み、幅及び長さを調整して、直方体状のポリスチレン系樹脂押出発泡板(幅:910mm、長さ:1820mm、厚み:25mm、押出方向断面積:227.5cm
2)を得た。なお、製造直後に発泡板を23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内に移し、該恒温恒湿室内に発泡板を静置した。
【0082】
得られた実施例1〜4、比較例1〜4の発泡板について、製造7日後に、見かけ密度、厚み、断面積、独立気泡率、発泡剤含有量、熱伝導率を以下の方法で測定し、難燃性、外観(表面性及びスポット)、製造安定性について以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
(見かけ密度)
発泡板の幅方向の中央部、両端部付近から50mm×50mm×厚み:発泡板の厚みの直方体の試料を各々切り出して重量を測定し、該重量を体積で割算することにより夫々の試料の見掛け密度を求め、それらの算術平均値を発泡板の見掛け密度とした。
【0085】
(厚み)
発泡板の押出方向垂直切断面の幅方向中央部及び両端部の厚みをノギスで読取り、その測定値を算術平均した値を発泡板の厚みとした。
【0086】
(断面積)
発泡板の厚みと発泡板の幅との積として、押出方向垂直断面の断面積を求めた。なお、発泡板の幅は、発泡板から無作為に選択した5箇所の幅の算術平均値として求めた。
【0087】
(独立気泡率)
発泡板の幅方向中央部から、それぞれ25mm×40mm×20mmのサイズの直方体状のサンプルを切出し、前記ASTM−D2856−70の手順Cにより各サンプルの独立気泡率を測定し、それらの算術平均値を発泡板の独立気泡率とした。
【0088】
(発泡剤含有量)
発泡板の中央部から約1gの測定用試験片を切り出し、ガスクロマトグラフ分析(内部標準法)を行って、発泡板中の(A)飽和炭化水素の含有量及び(B)ハイドロフルオロプロペンの含有量を求めた。
<ガスクロマトグラフ分析の測定条件>
カラム:信和加工株式会社製
担体:chromosorb W、60〜80メッシュ、AW−DMCS処理品
液相:Silicone DC550(液相量20%)
カラム寸法:カラム長さ4.1m、カラム内径3.2mm
カラム素材:ガラス
カラム温度:40℃
注入口温度:200℃
キャリヤーガス:窒素
キャリヤーガス速度:50ml/min
検出器:FID
検出器温度:200℃
【0089】
(熱伝導率)
発泡板の中央部付近から縦200mm×横200mm×厚み:発泡板の厚みの直方体状の試験片を切り出し、該試験片についてJIS A1412−2(1999年)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側38℃、低温側8℃、平均温度23℃)に基づいて熱伝導率を測定した。
【0090】
(難燃性)
JISA9511(2006R)記載の押出ポリスチレンフォーム保温板の燃焼性規格を満たすものを「○」と評価し、満たさないものを「×」と評価した。
【0091】
(外観)
発泡板の表面状態を目視により、以下の基準にて評価した。
○:スポットの発生が見られず、表面が平滑である
×:スポットが発生しており、表面が平滑でない
【0092】
(製造安定性)
発泡板製造時に原板の幅を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:原反の幅の変動(最大値−最小値)が25mm以内である
○:原反の幅の変動(最大値−最小値)が25mmを超え30mm以下である
×:原反の幅の変動(最大値−最小値)が30mmを超え、規定の幅(910mm)を下回るときがある