(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、被掃除面としての床面上を自律走行しながら床面を掃除する、いわゆる自律走行型の電気掃除機(掃除ロボット)が知られている。
【0003】
この電気掃除機は、床面に対向する下部に、高速回転してこの床面の塵埃を掻き上げる回転ブラシを備えている。通常、この回転ブラシは、電気掃除機の走行方向である前方向に沿って回転されることで電気掃除機の前進走行を妨げないようになっているものの、例えば電気掃除機の正面に壁が接近している場合や、玄関などの段差に差し掛かった場合には、これら走行障害を検出した電気掃除機が一旦走行障害から後退して距離を取った後に旋回して進行方向を変更することで走行障害を回避するため、この後退の際に回転ブラシが走行方向と逆方向に回転することとなる。このため、例えば玄関に敷かれる、いわゆる玄関マットなどの敷物に回転ブラシが引っ掛かり、電気掃除機の後退動作が阻害されたり、敷物が捲れ上がったりするおそれがある。
【0004】
そこで、電気掃除機の後退を回転ブラシが妨げにくくする構成が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の構成を
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0010】
図1ないし
図4において、11は電気掃除機であり、この電気掃除機11は、本実施形態において、走行面としての被掃除面である床面F上を自律走行(自走)しつつ床面Fを掃除する、いわゆる自走式のロボットクリーナ(掃除ロボット)である。そして、この電気掃除機11は、図示しない充電装置などとともに電気掃除装置を構成している。
【0011】
この電気掃除機11は、中空状の本体ケース20と、この本体ケース20を床面F上で走行させる走行部21と、床面Fなどの塵埃を掃除する掃除手段としての掃除部22と、充電装置を含む外部装置と通信する通信部23と、各種情報を表示する表示部24と、走行部21、掃除部22、通信部23、および表示部24などを制御するコントローラである制御手段(制御部)26と、これら走行部21、掃除部22、通信部23、表示部24および制御手段26などに給電する二次電池27とを備えている。なお、以下、電気掃除機11(本体ケース20)の走行方向に沿った方向を前後方向(
図2などに示す矢印FR,RR方向)とし、この前後方向に対して交差(直交)する左右方向(両側方向)を幅方向として説明する。
【0012】
本体ケース20は、例えば合成樹脂などにより扁平な柱状などに形成されており、本実施形態では、例えば前側が四角形状で後側が半円形状に形成されている。この本体ケース20の床面Fに対向する下面には、集塵口である吸込口31などが開口されている。この吸込口31は、本体ケース20の下面の前側に偏って配置されている。
【0013】
走行部21は、複数(一対)の駆動部としての駆動輪34,34と、これら駆動輪34,34を駆動させる動作部としての駆動手段であるモータ35,35と、旋回用の旋回輪36と、各種センサを有するセンサ部37などを備えている。
【0014】
各駆動輪34は、電気掃除機11(本体ケース20)を床面F上で前進方向および後退方向に走行(自律走行)させる、すなわち走行用のものであり、吸込口31の後方の両側に配置されている。したがって、これら駆動輪34は、本体ケース20の左右幅方向に沿って回動軸を有するように配置されている。
【0015】
各モータ35は、例えば駆動輪34のそれぞれに対応して配置されており、各駆動輪34を独立して駆動させることが可能となっている。
【0016】
旋回輪36は、本体ケース20の下面の幅方向の略中央部で、かつ、後部に位置しており、床面Fに沿って旋回可能な従動輪である。
【0017】
センサ部37は、例えば本体ケース20の前方の所定距離以内の壁や家具などの物理的な物体(障害物)の存否を検出する(第1の)走行障害検出手段((第1の)障害物検出手段)としての前方障害検出部である超音波センサなどの非接触物体検出手段(非接触物体検出部)41、本体ケース20の例えば前部に設けられ物理的な物体(障害物)をこの物体との接触により検出する(第2の)走行障害検出手段((第2の)障害物検出手段)としての前方障害検出部である接触センサなどの接触物体検出手段(接触物体検出部)42、本体ケース20の下部の床面Fとの距離を検出することで床面Fの凹段差などを検出する例えば赤外線センサなどの(第3の)走行障害検出手段としての下方障害検出部である段差検出手段(段差検出部)43、充電装置などの外部装置から出力される無線信号(赤外線信号)を検出することで、この無線信号によって外部装置の周囲や掃除領域内などに形成された物理的、あるいは仮想的な物体(障害物)を検出する(第4の)走行障害検出手段((第3の)障害物検出手段)としての前方障害検出部である例えば赤外線センサなどの検出手段44などを備えている。
【0018】
掃除部22は、例えば本体ケース20内に位置して塵埃を吸い込む電動送風機45と、吸込口31に回転可能に取り付けられて塵埃を掻き上げる回転清掃体としての回転ブラシ46およびこの回転ブラシ46を回転駆動させる清掃体駆動手段(清掃体駆動部)としてのブラシモータ47と、塵埃を溜める集塵部50となどを備えている。なお、本実施形態において、電動送風機45は、必須の構成ではない。また、掃除部22として、本体ケース20の前側などの両側にサイドブラシを設け、このサイドブラシをサイドブラシモータにより駆動させてもよい。
【0019】
回転ブラシ46は、駆動輪34,34の回動軸に沿う(回動軸に対して略平行な)方向に沿って回転軸を有するように配置されている。すなわち、この回転ブラシ46は、本体ケース20の左右幅方向に沿って回転軸を有している。また、この回転ブラシ46の外周には、清掃部材としてのブラシ毛46aが突設されており、回転ブラシ46の回転によって、このブラシ毛46aが絨毯などの床面Fに対して入り込んだ塵埃を掻き出すようになっている。
【0020】
通信部23は、充電装置などへと無線信号(赤外線信号)を送信する例えば赤外線発光素子などの走行体送信手段(走行体送信部)55、および、充電装置などの外部装置からの無線信号(赤外線信号)を受信する例えばフォトトランジスタなどの走行体受信手段(走行体受信部)56などを備えている。
【0021】
表示部24は、時刻や掃除時間、二次電池27の充電状態、電気掃除機11の掃除モードなど、電気掃除機11に関する各種情報などを表示するものであり、例えば本体ケース20の上部に配置されている。なお、この表示部24は、例えば使用者が各種設定を直接入力可能である入力操作手段(入力操作部)の機能を兼ね備えるタッチパネルなどとしてもよい。
【0022】
制御手段26は、例えば制御手段本体(制御部本体)であるCPU、このCPUによって読み出されるプログラムなどの固定的なデータを格納した格納部であるROM、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの各種メモリエリアを動的に形成するエリア格納部であるRAM、現在の日時などのカレンダ情報を計時するタイマなど(それぞれ図示せず)を備えたマイコンである。また、この制御手段26は、走行部21の各モータ35およびセンサ部37、掃除部22の電動送風機45、ブラシモータ47、通信部23の走行体送信手段55および走行体受信手段56および表示部24などと電気的に接続されている。さらに、この制御手段26は、センサ部37(検出手段41〜44の少なくともいずれか)による走行障害の検出の有無に対応してモータ35,35、ブラシモータ47などの動作を制御し、電気掃除機11(本体ケース20)を床面F上で走行させるとともに回転ブラシ46を回転させて床面Fを掃除させる掃除モードと、充電装置を介して二次電池27を充電する充電モードと、動作待機中の待機モードとを有している。
【0023】
また、二次電池27は、例えば本体ケース20の下面の後部の両側に露出する接続部としての充電端子58,58と電気的に接続されており、これら充電端子58,58が充電装置側と電気的および機械的に接続されることで、充電装置に内蔵された充電回路を介して充電されるようになっている。
【0024】
次に、上記一実施形態の動作を説明する。
【0025】
電気掃除機11は、通常、充電装置に接続されて待機モードとなっており、この待機モードから、予め設定された掃除開始時刻となった場合や、使用者によって掃除を開始する命令がリモコンにより入力された場合に、制御手段26が掃除モードとなって掃除部22(電動送風機45および回転ブラシ46(ブラシモータ47))および走行部21の駆動輪34,34(モータ35,35)などを駆動させ、例えば充電装置から離脱して、駆動輪34,34により床面F上を自律走行しながら掃除を開始する。なお、掃除の開始位置は、電気掃除機11の走行開始位置、あるいは掃除領域の出入り口など、任意の場所に設定可能である。
【0026】
走行中、制御手段26は、通信部23の走行体受信手段56で信号を受信するとともに、走行体送信手段55から走行方向前方などに赤外線信号を送信しながら、センサ部37の非接触物体検出手段41、接触物体検出手段42、段差検出手段43および検出手段44を介して、例えば掃除領域の周囲を囲む壁部や掃除領域内の障害物、床面Fの凹段差などの走行障害を検出することで電気掃除機11(本体ケース20)の走行状態を監視し、このセンサ部37からの検出に対応して駆動輪34,34(モータ35,35)を駆動させることで、障害物や段差などを回避しながら電気掃除機11を床面F上で走行させる。
【0027】
具体的に、制御手段26は、電気掃除機11(本体ケース20)を前進させつつ掃除部22(電動送風機45および回転ブラシ46)により床面Fを掃除し、センサ部37(非接触物体検出手段41、接触物体検出手段42、段差検出手段43、あるいは検出手段44)により走行障害を検出したときには、電気掃除機11(本体ケース20)を走行障害に対して後退させ、左右いずれかの方向に旋回させて前進方向を転換した後、再度前進させるように駆動輪34,34(モータ35,35)、および、回転ブラシ46(ブラシモータ47)の駆動を制御する。
【0028】
より詳細には、制御手段26は、センサ部37(検出手段41〜44のいずれか)により走行障害を検出しない通常走行時、電気掃除機11(本体ケース20)を前進させる方向に駆動輪34,34を回動させるようにモータ35,35の駆動を制御し、回転ブラシ46を電気掃除機11(本体ケース20)の前進方向に沿って、すなわち駆動輪34,34と同方向である前進方向に回転させるようにブラシモータ47の駆動を制御する。
【0029】
また、センサ部37(検出手段41〜44の少なくともいずれか)により走行障害を検出すると、制御手段26は、まず、電気掃除機11(本体ケース20)を後退させる方向に駆動輪34,34を回動させるようにモータ35,35の駆動を制御することで電気掃除機11(本体ケース20)を走行障害に対して所定距離後退させる。この所定距離は、例えば本体ケース20の形状と関連し、本体ケース20が進行方向を変更(方向転換)するときに走行障害(障害物)に接触(衝突)したり、走行障害(凹段差)から落下したりしないように設定されている。このとき、制御手段26は、回転ブラシ46が駆動輪34,34の回動方向と同方向、すなわち後退方向に回転するようにブラシモータ47の駆動を制御する。換言すれば、制御手段26は、センサ部37(非接触物体検出手段41、接触物体検出手段42、段差検出手段43、あるいは検出手段44)により走行障害を検出すると、駆動輪34,34(モータ35,35)および回転ブラシ46(ブラシモータ47)をともに反転させる(
図1(a)および
図1(b))。この反転のタイミングは、駆動輪34,34(モータ35,35)と回転ブラシ46(ブラシモータ47)とで同時でもよいし、いずれか一方を他方より早く設定してもよい。なお、
図1(a)および
図1(b)は、説明をより明確にするために一部のみを図示し、他部を省略している。
【0030】
ここで、例えば非接触物体検出手段41、接触物体検出手段42、あるいは検出手段44により走行障害(障害物)P1を検出した場合(
図1(a))には、制御手段26は電気掃除機11(本体ケース20)を5cm程度(第1所定距離)後退させ、段差検出手段43により凹段差P2を検出した場合(
図1(b))には、制御手段26は電気掃除機11(本体ケース20)を15cm程度(第2所定距離)、すなわち非接触物体検出手段41、接触物体検出手段42、あるいは検出手段44のいずれかにより走行障害を検出した場合よりも長い距離後退させるように駆動輪34,34(モータ35,35)の駆動(回転数)を制御する。
【0031】
次いで、制御手段26は、駆動輪34,34を互いに反対方向に回動させるようにモータ35,35の駆動を制御することで、電気掃除機11(本体ケース20)を左右いずれかの方向に旋回させて進行方向(前進方向)を変更(転換)する。この旋回の間、制御手段26は、回転ブラシ46(ブラシモータ47)を駆動させていてもよいし、一時的、あるいは全期間に亘って停止させていてもよい。回転ブラシ46(ブラシモータ47)を駆動させる場合、前進方向でも後退方向でもよい。
【0032】
この後、制御手段26は、通常走行時の制御に戻り、電気掃除機11(本体ケース20)を前進させる方向に駆動輪34,34を回動させるようにモータ35,35の駆動を制御し、回転ブラシ46を電気掃除機11(本体ケース20)の前進方向に沿って回転させるようにブラシモータ47の駆動を制御する。
【0033】
なお、電動送風機45については、上記の電気掃除機11(本体ケース20)の後退および旋回による前進方向の転換の間、そのまま駆動を継続してもよいし、一時的に、あるいは全期間に亘って停止させていてもよい。
【0034】
そして、この電気掃除機11は、電動送風機45の駆動によって発生した負圧が集塵部50を介して作用した吸込口31により床面F上の塵埃を空気とともに集塵部50へと吸い込む。また、回転駆動された回転ブラシ46が床面Fの塵埃を集塵部50へと掻き取る。
【0035】
吸込口31から空気とともに吸い込まれた塵埃は、集塵部50に分離捕集され、塵埃が分離された空気は電動送風機45に吸い込まれ、この電動送風機45を冷却した後、排気風となって本体ケース20の図示しない排気口から外部へと排気される。
【0036】
また、掃除領域の掃除が完了した、または、二次電池27の容量が所定量まで低下して掃除を完了させるのに不足しているなどの所定条件時には、上記の充電装置へと帰還する所定の動作を行う。
【0037】
以上説明した一実施形態によれば、検出手段41〜44により走行障害を検出したときに、制御手段26がモータ35,35による駆動輪34,34の回動方向を後退方向に反転させて走行障害から後退することで本体ケース20(電気掃除機11)が旋回(方向転換)しても本体ケース20が走行障害に接触したり走行障害(段差)から落下したりないようにするために必要な距離を確保した後、進行方向を変更する。このとき、制御手段26がブラシモータ47による回転ブラシ46の回転方向を駆動輪34,34の回動方向と同方向となるように後退方向に反転させることで、この後退時に回転ブラシ46が床面Fなどに引っ掛かりにくく、電気掃除機11(本体ケース20)の後退を回転ブラシ46により妨げにくい。
【0038】
特に、検出手段41,42,44などにより前方の壁部などの障害物P1を検出したときに、進行方向の変更時の障害物P1への本体ケース20(電気掃除機11)の接触や擦れを防止するために、この本体ケース20(電気掃除機11)を後退させて充分な距離を取るようにモータ35,35による駆動輪34,34の回動方向を後退方向へ反転させたのに対応してブラシモータ47による回転ブラシ46の回転方向を駆動輪34,34の回動方向と同方向である後退方向にすることで、この障害物P1からの後退時に壁部などの近傍に位置する絨毯などの敷物Rの端部に対して回転ブラシ46が引っ掛かりにくくなり、電気掃除機11(本体ケース20)の後退を回転ブラシ46により妨げにくいとともに、敷物Rを捲れ上がらせにくくなる。
【0039】
同様に、段差検出手段43により床面Fの凹段差P2を検出したときに、進行方向の変更時の凹段差P2からの本体ケース20(電気掃除機11)の落下を防止するために、この本体ケース20(電気掃除機11)を後退させて充分な距離を取るようにモータ35,35による駆動輪34,34の回動方向を後退方向へ反転させたのに対応してブラシモータ47による回転ブラシ46の回転方向を駆動輪34,34の回動方向と同方向である後退方向にすることで、例えば玄関などの凹段差P2を検出した場合、この凹段差P2からの後退時に通常玄関の床面F上に配置される玄関マットなどの敷物Rの端部に対して回転ブラシ46が引っ掛かりにくくなり、電気掃除機11(本体ケース20)の後退を回転ブラシ46により妨げにくいとともに、敷物Rを捲れ上がらせにくくなる。
【0040】
なお、上記一実施形態において、検出手段41,42,44により走行障害を検出した場合には、電気掃除機11(本体ケース20)を後退させる距離が段差検出手段43により床面Fの凹段差を検出した場合よりも小さいため、回転ブラシ46(ブラシモータ47)の駆動を反転させなくてもよい。すなわち、少なくとも段差検出手段43により床面Fの凹段差を検出して本体ケース20(電気掃除機11)を後退させるときに回転ブラシ46(ブラシモータ47)の駆動を反転させて駆動輪34,34の回動方向と同一とすれば、その他の走行障害を検出して後退する際には回転ブラシ46(ブラシモータ47)の駆動を反転させなくてもよい。
【0041】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。