(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記区間グループとして、上り坂のある区間のグループ、下り坂のある区間のグループ、カーブのある区間のグループ、分岐のある区間のグループ、合流のある区間のグループ、料金所のある区間のグループ、トンネルのある区間のグループ、橋のある区間のグループ、車線数増加箇所のある区間のグループ、車線数減少箇所のある区間のグループのうち少なくともいずれかを含んでいる、請求項1に記載の事故予報システム。
前記事故予報用テーブル作成処理部は、所定のタイミングで、または、ユーザによる指示入力があったときに、その時点で取得している過去交通データと過去事故データを用いて前記事故予報用テーブルを更新する、請求項1に記載の事故予報システム。
前記区間グループとして、上り坂のある区間のグループ、下り坂のある区間のグループ、カーブのある区間のグループ、分岐のある区間のグループ、合流のある区間のグループ、料金所のある区間のグループ、トンネルのある区間のグループ、橋のある区間のグループ、車線数増加箇所のある区間のグループ、車線数減少箇所のある区間のグループのうち少なくともいずれかを含んでいる、請求項4に記載の事故予報方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下において、「予報」とは、道路における各地点での過去の交通データ(事故発生時の交通データを含む。)に基づいて、交通事故の発生の危険性を計算/予測して事故予報として報知する意味を含むが、予測結果の報知は行わすに、単に、当該各地点における事故の発生しやすさの「予測」だけを行う場合の意味も含むものとする。また、「路線」とは、道路法における路線の意味を含むが、それに限定されず、管理単位の道路という意味も含むものとする。
【0008】
(第1実施形態)
まず、
図1、
図2を参照して、第1実施形態における事故予報システム1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態における事故予報システム1の構成の一例を示したブロック図である。
図2は、第1実施形態において、道路に関して事故予報の単位となる区間と道路センサ部との関係の一例を模式的に示した説明図である。なお、
図2の白抜き矢印Yは、道路R(以下「R」の記載を省略する場合あり。)上における車両の流れ方向を示す。
【0009】
図1に示す事故予報システム1は、
図2に示す道路R上の区間1、2、3、・・・それぞれに対応する道路センサ部RS
1、RS
2、RS
3、・・・により計測される交通データを用いて、各区間における交通事故の発生しやすさ(事故発生の危険度)を予報するシステムである。なお、
図2を用いた以下の説明では、説明を簡潔にするために、区間が区間1〜3の3つであるものとする。
【0010】
道路センサ部RS
1〜RS
3は、それぞれ、道路R上の区間1〜3を走行する車両を検知可能なセンサ(センシングデバイス)を含む。このセンサは、例えば、路面下に設置されるループコイルや、路面を上方から監視するカメラまたは超音波センサなどから構成される。以下、道路センサ部RS
1〜RS
3それぞれを特に区別しないときは、道路センサ部RSと総称する。
【0011】
また、道路センサ部RSは、交通データ処理部を含む。具体的に、交通データ処理部は、センサによって計測された交通データに基づいて、道路R上を走行する車両の交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km]、占有率(オキュパンシー)[%]などを算出し、算出結果を道路交通管制装置2に送信する。この算出と送信は、例えば、1分や5分等の時間単位で実行される。なお、道路センサ部RSがセンサによる計測結果だけを道路交通管制装置2の交通データ取得処理部211に送信し、交通データ取得処理部211が交通量等を算出するようにしてもよい。
【0012】
ここで、第1実施形態では、事故予報システム1は、道路交通管制装置2と、事故予報用テーブル作成装置3と、を備える。道路交通管制装置2は、例えば、一般に道路交通管制システムと呼ばれているコンピュータシステムである。道路交通管制装置2は、
図1では説明を簡潔にするために1台のコンピュータ装置のように示しているが、複数台のコンピュータ装置によって実現してもよい。
【0013】
道路交通管制装置2は、処理部21と、記憶部22と、表示部23と、入力部24と、を備える。なお、道路交通管制装置2は、外部装置との通信のための通信部も有しているが、説明を簡潔にするために図示および説明を省略する。
【0014】
処理部21は、道路交通管制装置2の全体の動作を制御し、道路交通管制装置2が有する各種の機能を実現する。処理部21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。CPUは、道路交通管制装置2の動作を統括的に制御する。ROMは、各種プログラムやデータを記憶する記憶媒体である。RAMは、各種プログラムを一時的に記憶したり、各種データを書き換えたりするための記憶媒体である。CPUは、RAMをワークエリア(作業領域)としてROM、記憶部22等に格納されたプログラムを実行する。処理部21は、交通データ取得処理部211と、事故予報処理部212と、受信処理部213と、表示制御部214と、を備える。
【0015】
交通データ取得処理部211は、道路の区間ごとに設置されている道路センサ部RSそれぞれから、計測した交通データを定期的に取得する。そして、交通データ取得処理部211は、その取得した交通データを、記憶部22の現在データベース221に現在交通データとして蓄積するように送信するとともに、事故予報用テーブル作成装置3の記憶部32に過去交通データとして蓄積するように送信する。なお、道路の車線が複数で、それぞれの車線に対応して道路センサ部RSが設定されている場合、交通データ取得処理部211は、例えば、各車線の交通データを統合すればよい。また、本実施形態において、交通データのうち、例えば直近の数分間程度の交通データを現在交通データと称し、現在交通データを含む過去の長期間の交通データを過去交通データと称する。また、過去交通データは、事故発生時に計測された交通データも含んでいる。
【0016】
事故予報処理部212は、道路の区間ごとに、当該区間の現在交通データ(例えば、交通量、平均速度、車両密度)、および、当該区間に対応する事故予報用テーブル(詳細は後述)を用いて、事故の発生しやすさを予報(予測)する。
【0017】
受信処理部213は、事故予報用テーブル作成装置3の送信処理部312から受信した事故予報用テーブル(詳細は後述)を記憶部22の事故予報用テーブルデータベース222に格納する。受信処理部213は、事故予報用テーブルが複数の場合は、それぞれの識別情報とともに事故予報用テーブルデータベース222に格納する。
【0018】
表示制御部214は、事故予報処理部212による事故の予報結果(後述する事故発生度等)を表示部23に事故予報として表示するよう制御を行う。例えば、事故発生度が高い区間については事故が発生しやすいものとして表示部23の警報ランプを点灯表示する等して管制員に知らせるのが好ましい。なお、道路交通管制装置2では、上記のように警報ランプを点灯表示する場合、例えば、併せて、音声出力手段(不図示)により警報音を鳴らす等してもよい。
【0019】
記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。記憶部22は、現在データベース221と事故予報用テーブルデータベース222とを記憶する。
【0020】
現在データベース221は、交通データ取得処理部211が取得した直近の例えば数分間程度の交通データ(現在交通データ)を記憶する。また、現在データベース221では、交通データ取得処理部211にて取得された交通データを蓄積するとともに、対象道路の特性を表す道路特性データ(例えば道路長やセンサ設置位置、各計測地点の周辺情報、料金所位置等)や、施策情報、事故情報、工事情報等の道路交通管制において管理されている情報や制限速度情報等を格納する。対象道路の特性を表す道路特性データは、事前のシステム構築時に入力しておいてもよいが、管制官等により追記修正してもよい。また、施策情報、事故情報、工事情報等の道路交通管制において管理されている情報や制限速度情報は、例えば、道路交通管制装置2のユーザ(管制官等)が手作業で入力すればよい。そして、現在データベース221における現在交通データは、事故予報処理部212にて事故予報(予測)を行う際に利用される。このとき、事故予報(予測)を行う際には、現在データベース221に格納された道路特性データを参照してその事故予報の該当箇所に対応する現在交通データをデータセット(交通量[台/h]、平均速度[km/h]、車両密度[台/km](または占有率[%])のセット)として利用する。
【0021】
事故予報用テーブルデータベース222は、1つ以上の事故予報用テーブル(詳細は後述)を記憶する。
【0022】
表示部23は、例えば、事故予報処理部212による事故の予報結果等を表示する。表示部23は、例えば、液晶表示装置(LCD(Liquid Crystal Display))、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置等により実現される。
【0023】
入力部24は、道路交通管制装置2に対するユーザの操作を受け付ける。入力部24は、例えば、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0024】
事故予報用テーブル作成装置3は、事故予報用テーブルを作成するためのコンピュータ装置である。事故予報用テーブル作成装置3は、処理部31と、記憶部32と、表示部33と、入力部34とを備えている。なお、事故予報用テーブル作成装置3は、外部装置との通信のための通信部も有しているが、説明を簡潔にするために図示および説明を省略する。
【0025】
処理部31は、事故予報用テーブル作成装置3の全体の動作を制御し、事故予報用テーブル作成装置3が有する各種の機能を実現する。処理部31は、例えば、CPUと、ROMと、RAMと、を備える。CPUは、事故予報用テーブル作成装置3の動作を統括的に制御する。ROMは、各種プログラムやデータを記憶する記憶媒体である。RAMは、各種プログラムを一時的に記憶したり、各種データを書き換えたりするための記憶媒体である。CPUは、RAMをワークエリア(作業領域)としてROM、記憶部32等に格納されたプログラムを実行する。処理部31は、事故予報用テーブル作成処理部311と、送信処理部312と、を備える。
【0026】
事故予報用テーブル作成処理部311は、それぞれが複数の区間に分けられている複数の道路に関して、区間の所定の集合ごとに、記憶部32における過去交通データと過去事故データ(詳細は後述)を用いて所定の学習アルゴリズム(例えば自己組織化マップを用いた学習アルゴリズム)に基づいて事故発生パターンを学習して、交通状況(交通量、平均速度、車両密度、占有率等)ごとの事故の発生しやすさを表す事故予報用テーブルを作成する(詳細は後述)。ここで、自己組織化マップとは、プロセス解析や、制御、検索システム、さらには経営のための情報分析など、実社会における重要な分野に応用されるニューラルネットワークの一種であり、高次元の入力データを、教師信号(入力データに対して理想的と考えられる出力)などの予備知識なしにクラスタリングするためのアルゴリズムである。この自己組織化マップの具体的な内容については後述する。
【0027】
また、事故予報用テーブル作成処理部311は、所定のタイミングで、または、ユーザによる指示入力があったときに、その時点で取得している過去交通データと過去事故データを用いて事故予報用テーブルを更新する。所定のタイミングとは、例えば、1年ごとで、直近1年分の過去交通データ、過去事故データが蓄積されたタイミングである。この際に、事故予報用テーブル作成装置3で蓄積された1年分の当該データを用いて事故予報用テーブルを作成し、その事故予報用テーブルを道路交通管制装置2に送信して事故予報用テーブルデータベース222の事故予報用テーブルを更新する。また、ユーザによる指示入力があったときとは、例えば、対象道路の周辺に大きな道路ができた等により、対象道路の車両の流れが変わった場合に、その後、例えば数か月分程度等、充分な量の過去交通データと過去事故データが蓄積されたときにユーザが事故予報用テーブルの更新のための指示入力を事故予報用テーブル作成装置3の入力部34を用いて行った場合である。
【0028】
送信処理部312は、事故予報用テーブル作成処理部311が作成(初回作成、更新用作成)した事故予報用テーブル(詳細は後述)を道路交通管制装置2の処理部21の受信処理部213に送信する。
【0029】
記憶部32は、HDDやSSDなどの記憶装置である。記憶部32は、過去データベース321を記憶する。過去データベース321は、過去交通データと、過去事故データを記憶する。過去交通データは、道路交通管制装置2の交通データ取得処理部211から受信する交通データにより順次蓄積される。
【0030】
過去事故データとは、対象道路において起きた過去の事故のデータである。この過去事故データは、例えば、ユーザが事故帳票等を見ながら事故予報用テーブル作成装置3の入力部34を用いて入力することで、記憶部32の過去データベース321に格納するようにすればよい。過去事故データは、具体的には、例えば、事故に関する情報として、事故発生地点、事故発生日時、事故タイプ等を含んでいる。過去事故データは、過去数年以上の事故情報であることが好ましい。また、過去事故データは、ユーザが事故予報用テーブル作成装置3の入力部34で入力するほか、ユーザが道路交通管制装置2の入力部24で入力して道路交通管制装置2から事故予報用テーブル作成装置3に送信することで、記憶部32の過去データベース321に格納するようにしてもよい。あるいは、他のコンピュータ装置にある過去事故データを、DVD(Digital Versatile Disk)やUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の情報記憶媒体を介して事故予報用テーブル作成装置3の記憶部32の過去データベース321に格納するようにしてもよい。
【0031】
表示部33は、各種画面を表示する。表示部33は、例えば、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置等により実現される。
【0032】
入力部34は、事故予報用テーブル作成装置3に対するユーザの操作を受け付ける。入力部34は、例えば、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0033】
また、例えば、事故予報用テーブル作成装置3の事故予報用テーブル作成処理部311は、区間の所定の集合としての道路ごとに、事故予報用テーブルを作成する。そのとき、道路交通管制装置2の事故予報処理部212は、複数の道路それぞれについて、区間ごとに、当該区間の現在交通データ(例えば、交通量、平均速度、車両密度)、および、当該道路に対応する事故予報用テーブルを用いて、事故の発生しやすさを予報(予測)する(
図9〜
図11とともに後述)。
【0034】
また、例えば、事故予報用テーブル作成装置3の事故予報用テーブル作成処理部311は、区間の所定の集合ごととして、複数の道路それぞれについて、道路状況に基づいて区間が分類された区間グループごとに、事故予報用テーブルを作成する。そのとき、道路交通管制装置2の事故予報処理部212は、複数の道路それぞれについて、区間ごとに、当該区間の現在交通データ(例えば、交通量、平均速度、車両密度)、および、当該区間が分類された区間グループに対応する事故予報用テーブルを用いて、事故の発生しやすさを予報(予測)する(
図12〜
図14とともに後述)。
【0035】
次に、第1実施形態における事故予報システム1の動作について説明する。まず、
図3を参照して、第1実施形態における事故予報用テーブル作成処理部311の動作について説明する。
図3は、第1実施形態における事故予報用テーブル作成処理部311が実行する処理の流れの一例を示したフローチャートである。
【0036】
図3に示すように、事故予報用テーブル作成処理部311は、まず、ステップS1において、過去データベース321から過去交通データと過去事故データを読み出す。
【0037】
次に、事故予報用テーブル作成処理部311は、ステップS2において、ステップS1で読み出した過去交通データと過去事故データに基づいて、交通データと事故の発生しやすさとの相関関係を学習する。学習方法としては、例えば、次のような自己組織化マップを用いた方法を用いる。
【0038】
図4は、第1実施形態において用いられる自己組織化マップの一般的な構成の一例を示した図である。
図4に示すように、自己組織化マップとは、入力層および競合層(出力層)を備えた2層構造のニューラルネットワークである。入力層は、分析対象のデータx
1,…,x
i,…,x
nと同数のユニットを備えた平面として表される。ここで、分析対象のデータx
1,…,x
i,…,x
nの組み合わせを、入力ベクトルと呼ぶ。また、競合層は、複数のユニット1,…,j,…,Nを備えた平面として表される。入力層の各ユニットと、競合層の各ユニットとは、入力ベクトルと同次元の重みベクトルw
j=(w
j1,…,w
ji,…,w
jn)によって関連付けられている。
【0039】
図5は、第1実施形態において用いられる自己組織化マップのより具体的な構成の一例を示した図である。
図5に示すように、過去データベース321から読み出された過去交通データが、学習対象の入力ベクトルとして用いられる。例えば、過去交通データは、道路R上の各地点において過去のある時点で計測された3種類のデータ(交通量、平均速度および車両密度)により構成される。
【0040】
図5の自己組織化マップでは、まず、(1)勝者ユニットを決定し、当該勝者ユニットの重みベクトルを更新する処理が実行される。そして、(2)勝者ユニットの近傍に位置する近傍ユニットの重みベクトルを更新する処理が実行される。なお、勝者ユニットとは、入力ベクトルと最も類似する重みベクトルによって当該入力ベクトルと関連付けられる競合層上の1つのユニットである。また、重みベクトルの更新は、学習回数と、所定の学習係数とを考慮した数式を用いて行われる。なお、入力ベクトルと最も類似する重みベクトルの決定方法や、重みベクトルの更新に用いられる数式の詳細については、例えば特開2014−35639号公報に開示されているため、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0041】
また、入力ベクトルとして用いられる過去交通データに対応して設定される事故発生度が入力される。事故発生度とは、入力ベクトルに対応して設定される事故の発生しやすさを示す値である。入力ベクトルの各要素が事故発生時の交通データである場合、事故発生度は、例えば「1」(または「100」)に設定される。また、入力ベクトルの各要素が事故の無い時の交通データである場合、事故発生度は、例えば「0」に設定される。また、入力ベクトルの各要素が事故発生直前の交通データである場合、事故発生度は、事故発生時の事故発生度(「1」(または「100」))よりも小さい値に設定される。
【0042】
第1実施形態では、上記の(1)および(2)の処理が実行された後、(3)入力された事故発生度で、競合層上の勝者ユニットおよび近傍ユニットに対応する事故発生度分布の層上のユニットの値を更新する処理が実行される。具体的に、勝者ユニットに対応するユニットの値が、入力された事故発生度によって更新され、近傍ユニットに対応するユニットの値が、入力された事故発生度よりも小さい値によって更新される。この更新処理の詳細についても、上記の特開2014−35639号公報に開示されているため、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0043】
第1実施形態では、上記の(1)〜(3)の処理が繰り返し実行されることで、過去交通データと事故発生度との相関関係が学習される。
【0044】
図3に戻り、ステップS3において、事故予報用テーブル作成処理部311は、ステップS2における学習結果に基づいて、事故予報用テーブルを作成する。すなわち、事故予報用テーブル作成処理部311は、
図5に示した自己組織化マップによって得られた相関関係をテーブル化し、過去交通データと事故発生度との相関関係を定義する事故予報用テーブルを作成する。
図6を用いて、自己組織化マップのより具体的な構成例と、その自己組織化マップに対応する事故予報用テーブルの例について説明する。
【0045】
図6(a)は、第1実施形態において用いられる自己組織化マップのより具体的な構成の一例を示した図である。
図6(b)は、
図6(a)の自己組織化マップに対応する事故予報用テーブルを示した図である。
【0046】
図6(a)に示すように、入力層には入力ベクトルとして交通量、平均速度および車両密度のデータが入力される。ここで、競合層には、1−1、1−2、・・・、10−10の100(10×10)のユニットがあるものとする。また、事故発生度の範囲は「0」〜「10」とする。この場合、事故予報用テーブルは
図6(b)に示す通りとなる。
図6(b)に示す事故予報用テーブルでは、index(競合層や事故発生度分布のユニットに対応)ごとに、交通量に対する重み、平均速度に対する重み、車両密度に対する重み、および、事故発生度が関連付けられている。
図6(b)の事故予報用テーブルの使い方については後述する。
【0047】
次に、
図7を参照して、第1実施形態における事故予報処理部212の動作について説明する。
図7は、第1実施形態における事故予報処理部212が実行する処理の流れの一例を示したフローチャートである。なお、この
図7では事故予報処理部212の処理の概要を説明し、
図11、
図14で事故予報処理部212の処理の具体例について説明する。
【0048】
図7に示すように、事故予報処理部212は、まず、ステップS11において、予報タイミングが到来したか否かを判定し、Yesの場合はステップS12に進み、Noの場合はステップS11に戻る。予報タイミングは、例えば、5分おきとすればよいが、これに限定されない。
【0049】
次に、事故予報処理部212は、ステップS12〜S17で路線ごとの処理を行う。つまり、事故予報処理部212は、複数の路線について区間ごとの事故予報(予測)を行う場合、まず1つ目の路線についてステップS13〜S16の処理を行い、次に2つ目の路線についてステップS13〜S16の処理を行い、・・・、という処理をすべての路線について順番に行う。
【0050】
前記したように、事故予報処理部212は、ステップS13〜S16で区間ごとの処理を行う。つまり、事故予報処理部212は、着目する路線に関し、まず1つ目の区間についてステップS14、S15の処理を行い、次に2つ目の区間についてステップS14、S15の処理を行い、・・・、という処理をすべての区間について行う。
【0051】
ステップS14において、事故予報処理部212は、着目する区間について、記憶部22の現在データベース221から現在交通データ(
図6の例では、交通量、平均速度、車両密度)を読み出す。
【0052】
次に、ステップS15において、事故予報処理部212は、その区間に対応する事故予報用テーブルを記憶部22の事故予報用テーブルデータベース222から読み出して用いて事故予報(予測)を行う。
【0053】
ここで、ステップS15について、
図8を用いて説明する。
図8は、
図5の自己組織化マップを用いて事故予報(予測)を行う場合の説明図である。
図8に示すように、この自己組織化マップでは、次の(11)〜(13)の処理を実行する。
【0054】
(11)勝者ユニットを決定(例えば、
図6(a)における競合層の「2−1」)。なお、勝者ユニットの決定の方法は、前記した(1)(
図5)の場合と同様である。
(12)当該勝者ユニットに対応した事故発生度分布の層上のユニットを選択(例えば、
図6(a)における事故発生度分布の「2−1」)。
(13)選択されたユニットの事故発生度を出力(例えば、
図6(b)の事故予報用テーブルにおけるindex「2−1」に対応する事故発生度「6.2」)。
【0055】
このようにして、事故予報処理部212は、ステップS12〜S17で、複数の路線について、路線ごとに各区間の事故発生度を取得することができる。
【0056】
ステップS18において、表示制御部214は、事故予報処理部212による事故の予報結果(事故発生度等)を警報ランプ等とともに表示部23に事故予報として表示するよう制御を行う。これにより、道路交通管制装置2を用いる管制員等は、対象道路について、各区間ごとに、現在の交通状況に対応した事故の発生しやすさを認識することができる。また、事故予報用テーブルが、区間の所定の集合ごとに作成され、使用されるので、道路における事故をより高精度で予報(予測)するとともに、計算負荷を小さく抑えることができる。
【0057】
(具体例1)
次に、
図9〜
図11を参照して、第1実施形態の具体例1について説明する。
図9は、具体例1の説明図である。この具体例1では、対象とする路線(道路)を路線Aと路線Bの2つとする。そして、路線Aについて1つの事故予報用テーブルを全区間共通で使用し、また、路線Bについて別の1つの事故予報用テーブルを全区間共通で使用する。以下、事故予報用テーブル(自己組織化マップ)をSOM(Self-Organizing Map)と称する。
【0058】
図9(a)に示すように、路線Aは、n個の区間(区間1〜n)に分けられている。各区間には道路センサ部RS(RS
A1〜RS
An)が設けられている。各道路センサ部RSは、現在交通データとして交通量Q、平均速度V、車両密度Dを出力する。例えば、道路センサ部RS
A1は、交通量Q
A1、平均速度V
A1、車両密度D
A1を出力する。出力された現在交通データ(交通量Q、平均速度V、車両密度D)は、記憶部22の現在データベース221(
図1)に格納される。また、路線Aの全区間について、共通のSOM
Aを使用する。SOM
Aは、路線Aの全区間の過去交通データおよび過去事故データを用いて作成される。
【0059】
同様に、
図9(b)に示すように、路線Bは、m個の区間(区間1〜m)に分けられている。各区間には道路センサ部RS(RS
B1〜RS
Bm)が設けられている。各道路センサ部RSは、現在交通データとして交通量Q、平均速度V、車両密度Dを出力する。例えば、道路センサ部RS
B1は、交通量Q
B1、平均速度V
B1、車両密度D
B1を出力する。出力された現在交通データ(交通量Q、平均速度V、車両密度D)は、記憶部22の現在データベース221(
図1)に格納される。また、路線Bの全区間について、共通のSOM
Bを使用する。SOM
Bは、路線Bの全区間の過去交通データおよび過去事故データを用いて作成される。
【0060】
ここで、
図10は、具体例1の場合の事故予報用テーブルデータベース222の構成の一例を示した図である。
図10に示すように、事故予報用テーブルデータベース222には、SOM
A、SOM
Bが格納される。
【0061】
次に、
図11を参照して、具体例1の場合に事故予報処理部212が実行する処理について説明する。
図11は、具体例1の場合に事故予報処理部212が実行する処理の流れの一例を示したフローチャートである。
【0062】
図11に示すように、事故予報処理部212は、まず、ステップS201において、予報タイミングが到来したか否かを判定し、Yesの場合はステップS202に進み、Noの場合はステップS201に戻る。予報タイミングは、例えば、5分おきとすればよい。
【0063】
次に、事故予報処理部212は、ステップS202〜S205で路線Aの区間ごとの処理を行う。具体的には、ステップS203において、事故予報処理部212は、路線Aの区間1について、記憶部22の現在データベース221から現在交通データ(交通量Q
A1、平均速度V
A1、車両密度D
A1)を読み出す。次に、ステップS204において、事故予報処理部212は、記憶部22の事故予報用テーブルデータベース222からSOM
Aを読み出し、現在交通データ(交通量Q
A1、平均速度V
A1、車両密度D
A1)とSOM
Aを用いて事故予報(予測)を行い、予報結果RE
A1(
図9(a))を得る。事故予報処理部212は、路線Aの区間2〜nについて、同様に事故予報(予測)を行い、予報結果RE
A2〜RE
An(
図9(a))を得る。
【0064】
次に、事故予報処理部212は、ステップS206〜S209で路線Bの区間ごとの処理を行う。具体的には、ステップS207において、事故予報処理部212は、路線Bの区間1について、記憶部22の現在データベース221から現在交通データ(交通量Q
B1、平均速度V
B1、車両密度D
B1)を読み出す。次に、ステップS208において、事故予報処理部212は、記憶部22の事故予報用テーブルデータベース222からSOM
Bを読み出し、現在交通データ(交通量Q
B1、平均速度V
B1、車両密度D
B1)とSOM
Bを用いて事故予報(予測)を行い、予報結果RE
B1(
図9(b))を得る。事故予報処理部212は、路線Bの区間2〜mについて、同様に事故予報(予測)を行い、予報結果RE
B2〜RE
Bm(
図9(b))を得る。
【0065】
ステップS210において、表示制御部214は、路線A、Bの各区間の予報結果(事故発生度等)を警報ランプ等とともに表示部23に事故予報として表示するよう制御を行う。
【0066】
このようにして、路線Aについては単一のSOM
Aを使用し、また、路線Bについては単一のSOM
Bを使用することで、路線ごとの事故特性を踏まえて事故をより高精度で予報(予測)するとともに、区間ごとにすべて別々のSOMを使用する場合に比べて計算負荷(メモリリソース、計算リソース)を有意に小さく抑えることができる。つまり、
図6の例ではSOMにおける競合層のユニット数を100(10×10)としたが、実際にはこれよりも多い場合が多く、そうなると、区間ごとにすべて別々のSOMを使用するものとすると、計算負荷(メモリリソース、計算リソース)が過多になってしまう。一方、本実施形態の手法によれば、メモリリソースを節約できるとともに、プログラム処理の簡素化等により計算リソースを低減できる。
【0067】
(具体例2)
次に、
図12〜
図14を参照して、具体例2について説明する。前記したように、道路の区間ごとにすべて別々のSOMを使用するのは、計算負荷の点で好ましくない場合がある。しかし、1つの道路について、例えば、道路状況等に基づいて複数の区間をいくつかの区間グループに分類し、その区間グループごとに1つのSOMを対応付けて使用するのは、有効な場合もある。なぜなら、その方法によれば、計算負荷の増加がそれほど大きくなく、かつ、道路形状等による事故の発生しやすさの特性を踏まえることができるからである。
【0068】
区間グループとしては、例えば、上り坂のある区間のグループ(上り坂区間グループ)、下り坂のある区間のグループ(下り坂区間グループ)、カーブのある区間のグループ(カーブ区間グループ)、分岐のある区間のグループ(分岐区間グループ)、合流のある区間のグループ(合流区間グループ)、料金所のある区間のグループ(料金所区間グループ)、トンネルのある区間のグループ(トンネル区間グループ)、橋のある区間のグループ(橋区間グループ)、車線数増加箇所のある区間のグループ(車線数増加区間グループ)、車線数減少箇所のある区間のグループ(車線数減少区間グループ)、その他の区間のグループ(通常区間グループ)が考えられる。
【0069】
例えば、上り坂、下り坂、カーブは、運転者がアクセル操作、ブレーキ操作、ハンドル操作等を強いられる場面であり、事故の発生しやすさの特性に影響があると考えられる。
【0070】
また、分岐、合流、車線数増加箇所、車線数減少箇所は、他車両との関係で、事故の発生しやすさの特性に影響があると考えられる。
【0071】
また、料金所は、一時的に速度を大幅に低下させる必要がある点で、事故の発生しやすさの特性に影響があると考えられる。なお、例えば、本線料金所とその他の料金所とで、運転者の運転挙動が有意に異なる場合は、別々に扱うようにしてもよい。
【0072】
また、トンネルは、明るさが急激に変化するという点で、事故の発生しやすさの特性に影響があると考えられる。
【0073】
また、橋は、低温時に凍結しやすい、風が強い等の点で、事故の発生しやすさの特性に影響があると考えられる。
【0074】
なお、上記した部分以外でも、例えば、山の北側等で終日気温が上がらない部分等、事故の発生しやすさの特性に影響があると考えられる道路状況に応じて、区間グループを設定すればよい。
【0075】
以上を踏まえて、以下、具体例2について具体的に説明する。
図12は、具体例2の説明図である。この具体例2では、対象とする路線(道路)を路線Aと路線Bの2つとする。そして、路線Aについて区間グループごとに異なる事故予報用テーブルを使用し、また、路線Bについても区間グループごとに異なる事故予報用テーブルを使用する。
【0076】
図12(a)に示すように、路線Aは、模式的に16個の区間(区間1〜16)に分けられている。なお、各区間に道路センサ部RSが設けられており、各道路センサ部RSが現在交通データとして交通量Q、平均速度V、車両密度Dを出力し、出力された現在交通データ(交通量Q、平均速度V、車両密度D)が記憶部22の現在データベース221に格納される点は具体例1と同様であるので、図示を省略している(
図12(b)も同様)。また、区間1〜16は、6種類の区間グループに分類されている。区間1,3,5,6,8,10,11,13,15は、通常区間グループである。区間2,12は、合流区間グループである。区間4,14は、分岐区間グループである。区間7は、下り坂区間グループである。区間9は、上り坂区間グループである。区間16は、料金所区間グループである。それぞれの区間グループについて、使用されるSOMは、順に、SOM
Aa、SOM
Ab、SOM
Ac、SOM
Ad、SOM
Ae、SOM
Afである。各SOMは、その区間グループに属する区間の過去交通データおよび過去事故データを用いて作成される。
【0077】
同様に、
図12(b)に示すように、路線Bは、模式的に17個の区間(区間1〜17)に分けられている。また、区間1〜17は、7種類の区間グループに分類されている。区間2,4,6,8,10,11,12,14,16は、通常区間グループである。区間9,13は、合流区間グループである。区間7,15は、分岐区間グループである。区間3は、下り坂区間グループである。区間5は、上り坂区間グループである。区間1は、料金所区間グループである。区間17は、カーブ区間グループである。それぞれの区間グループについて、使用されるSOMは、順に、SOM
Ba、SOM
Bb、SOM
Bc、SOM
Bd、SOM
Be、SOM
Bf、SOM
Bgである。各SOMは、その区間グループに属する区間の過去交通データおよび過去事故データを用いて作成される。
【0078】
ここで、
図13は、具体例2の場合の事故予報用テーブルデータベース222の構成の一例を示した図である。
図13に示すように、事故予報用テーブルデータベース222には、路線A用としてSOM
Aa〜SOM
Afが格納され、また、路線B用としてSOM
Ba〜SOM
Bgが格納される。
【0079】
次に、
図14を参照して、具体例2の場合に事故予報処理部212が実行する処理について説明する。
図14は、具体例2の場合に事故予報処理部212が実行する処理の流れの一例を示したフローチャートである。
【0080】
図14に示すように、事故予報処理部212は、まず、ステップS301において、予報タイミングが到来したか否かを判定し、Yesの場合はステップS302に進み、Noの場合はステップS301に戻る。予報タイミングは、例えば、5分おきとすればよい。
【0081】
次に、事故予報処理部212は、ステップS302〜S305で路線Aの区間ごとの処理を行う。具体的には、ステップS303において、事故予報処理部212は、路線Aの区間1について、記憶部22の現在データベース221から現在交通データ(交通量、平均速度、車両密度)を読み出す。次に、ステップS304において、事故予報処理部212は、記憶部22の事故予報用テーブルデータベース222から区間1が分類された通常区間グループに対応するSOM
Aaを読み出し、現在交通データとSOM
Aaを用いて事故予報(予測)を行う。ステップS304において、区間2のときはSOM
Abが使用され、区間3のときはSOM
Aaが使用され、区間4のときはSOM
Acが使用される。区間5〜16のときも、同様に、その区間が分類された区間グループに対応するSOMが使用される。
【0082】
次に、事故予報処理部212は、ステップS306〜S309で路線Bの区間ごとの処理を行う。具体的には、ステップS307において、事故予報処理部212は、路線Bの区間1について、記憶部22の現在データベース221から現在交通データ(交通量、平均速度、車両密度)を読み出す。次に、ステップS308において、事故予報処理部212は、記憶部22の事故予報用テーブルデータベース222から区間1が分類された料金所区間グループに対応するSOM
Bfを読み出し、現在交通データとSOM
Bfを用いて事故予報(予測)を行う。ステップS308において、区間2のときはSOM
Baが使用され、区間3のときはSOM
Bdが使用され、区間4のときはSOM
Baが使用される。区間5〜17のときも、同様に、その区間が分類された区間グループに対応するSOMが使用される。
【0083】
ステップS310において、表示制御部214は、路線A、Bの各区間の予報結果(事故発生度等)を警報ランプ等とともに表示部23に事故予報として表示するよう制御を行う。
【0084】
このようにして、1つの路線について、区間グループごとに1つのSOMを対応付けて使用することで、その区間グループごとの事故特性を踏まえて事故をより高精度で予報(予測)するとともに、区間ごとにすべて別々のSOMを使用する場合に比べて計算負荷(メモリリソース、計算リソース)を有意に小さく抑えることができる。
【0085】
(第2実施形態)
次に、
図15を参照して、第2実施形態の事故予報システム1aについて説明する。
図15は、第2実施形態における事故予報システム1aの構成の一例を示したブロック図である。
図15の事故予報システム1aが
図1の第1実施形態の事故予報システム1と異なっている点は、道路交通管制装置2aに受信処理部213がない点と、事故予報用テーブル作成装置3aに送信処理部312がない点である。
図1の事故予報システム1と同様の点については説明を省略する。
【0086】
図1の第1実施形態の事故予報システム1では、事故予報用テーブル作成装置3の処理部31の事故予報用テーブル作成処理部311は、初めて事故予報用テーブルを作成した後、所定のタイミングで、または、ユーザによる指示入力があったときに、その時点で取得している過去交通データと過去事故データを用いて事故予報用テーブルを新たに作成し、更新するものとした。一方、
図15の事故予報システム1aでは、この事故予報用テーブルの更新を想定していない。事故予報用テーブル作成処理部311が初めて事故予報用テーブルを作成した後には、その事故予報用テーブルを、例えば、インターネット経由で、あるいは、DVDやUSBメモリ等の情報記憶媒体を介して、道路交通管制装置2aの記憶部22の事故予報用テーブルデータベース222に格納する。その後、事故予報用テーブルの更新は行わない。
【0087】
このようにして、第2実施形態の事故予報システム1aによれば、事故予報用テーブルの更新を行わない分、構成や処理がシンプルになる。路線によって、事故予報用テーブルの更新が必要ない場合には、このような第2実施形態の事故予報システム1aを適用することができる。
【0088】
(第3実施形態)
次に、
図16を参照して、第3実施形態の事故予報システム1bについて説明する。
図16は、第3実施形態における事故予報システム1bの構成の一例を示したブロック図である。
図16の事故予報システム1bが
図1の第1実施形態の事故予報システム1と異なっている点は、道路交通管制装置2の構成と事故予報用テーブル作成装置3の構成を一体化して事故予報システム1bとした点である。この事故予報システム1bは、例えば、従来の道路交通管制システムを利用して実現できる。
【0089】
具体的には、事故予報システム1bは、処理部21aと、記憶部22aと、表示部23と、入力部24と、を備える。処理部21aは、交通データ取得処理部211と、事故予報処理部212と、表示制御部214と、事故予報用テーブル作成処理部311と、を備える。記憶部22aは、現在データベース221と、事故予報用テーブルデータベース222と、過去データベース321と、を記憶する。個別の構成(各部、各データベース)については第1実施形態の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
このようにして、第3実施形態の事故予報システム1bによれば、単一のシステムであるので、構成や処理がシンプルになるほか、リアルタイムに得られる交通データを使用しての事故予報用テーブルの更新が容易となる。この場合、例えば、1日毎や1ヶ月毎に、交通データ、事故データが蓄積される毎に事故予報用テーブルを自動で更新するようにしたり、あるいは、事故データが所定件数蓄積される毎に事故予報用テーブルを自動で更新するようにしたりする方法が考えられる。
【0091】
(変形例)
上記の実施形態では、学習および予報(予測)を行うための方法として、自己組織化マップを用いた方法を例示した。しかしながら、学習および予報(予測)の方法としては、自己組織化マップを用いた方法以外にも、種々の方法が考えられる。例えば、比較的簡単な方法として、事故発生時の過去交通データを保持(蓄積)して現在交通データと単純に比較する方法や、事故発生時の過去交通データの組合せを統計処理でクラスタリングし、事故発生時に類似したケースの交通データを生成する方法などが考えられる。また、他の方法として、例えばペイジアンネットワークなどの他の多変量解析を利用した方法も考えられる。
【0092】
また、上記の実施形態では、学習および予報(予測)に使用するデータとして、交通量、平均速度、車両密度、占有率を例示した。しかし、これら4種類以外の他の情報であっても、事故の発生と相関が見られる情報であれば、学習および予報(予測)に使用してよく、例えば、次の(A)〜(L)のような情報がある。
【0093】
(A)天候情報(晴れ、雨、霧、雪などの天候、温度、湿度等)
(B)大型車混入情報(トラック、バス等の大型車の混入率等)
(C)低速車両混入情報(所定値以下の速度で走行する低速車両の混入率等)
(D)制限速度情報(常時制限速度、臨時制限速度等)
(E)イベント情報(道路の周辺におけるイベントの開催状況情報等)
(F)ハザード情報(ハザードマップなどに基づく道路の状態に関する情報等)
(G)二輪車混入情報(二輪車の混入率等)
(H)道路整備情報(道路工事情報等)
(I)通行止め情報(事故や設備トラブルなどによる通行止めの状況を示す情報等)
(J)路面状態情報(路面の乾燥、湿潤、凍結を示す情報等)
(K)渋滞情報(渋滞の長さ、開始位置、終了位置等)
(L)車線制限情報(3車線中の1車線が現在使用不可等)
【0094】
また、
図1の事故予報用テーブル作成装置3を、クラウドコンピューティング技術を利用してクラウド化させてもよい。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。