(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スプール弁を介した前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの作動油の流れが滞留した所定状態で、前記スイッチが操作された場合に、前記スプール弁のストロークを変化させる、
請求項1に記載のショベル。
前記所定状態は、前記スプール弁に関する入力と出力の関係を取得している間、前記油圧アクチュエータと前記スプール弁との間に設けられた切換弁が遮断されている状態である、
請求項2に記載のショベル。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に、
図1を参照して、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベル(掘削機)について説明する。
図1はショベルの側面図である。
図1に示すショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には作業要素としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には作業要素としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端に作業要素及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、バケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載される。
【0011】
図2は、
図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図であり、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線、点線で示す。
【0012】
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、減圧弁27、吐出圧センサ28、圧力センサ29、コントローラ30、スイッチ31等を含む。
【0013】
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施例では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作する内燃機関としてのディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結される。
【0014】
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するための装置であり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0015】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するための装置である。本実施例では、レギュレータ13は、例えば、メインポンプ14の吐出圧、コントローラ30からの指令電流等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0016】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する装置であり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
【0017】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14が吐出する作動油の流れを制御する複数の制御弁を含む。そして、コントロールバルブ17は、それら制御弁を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。それら制御弁は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。
【0018】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施例では、操作装置26は、パイロットライン及び減圧弁27を介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(以下、「パイロット圧」とする。)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0019】
減圧弁27は、操作装置26が生成したパイロット圧を減圧して出力する装置である。本実施例では、減圧弁27は、コントローラ30からの指令電流に応じてパイロット圧を増減させる。減圧弁27は、例えば、指令電流が大きいほどパイロット圧を低減させる。
【0020】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0021】
圧力センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するためのセンサである。本実施例では、圧力センサ29は、例えば、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、圧力センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0022】
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、例えば、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成される。また、コントローラ30は、入出力関係取得部300に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。
【0023】
具体的には、コントローラ30は、吐出圧センサ28、圧力センサ29、スイッチ31等の出力に基づいて入出力関係取得部300による処理を実行する。そして、コントローラ30は、入出力関係取得部300の処理結果に応じた指令を適宜にレギュレータ13、減圧弁27等に対して出力する。
【0024】
入出力関係取得部300は、制御弁に関する入力と出力の関係である入出力関係を取得する機能要素である。本実施例では、入出力関係取得部300は、コントロールバルブ17における制御弁の入出力関係を取得する。制御弁に関する入力は、例えば、コントローラ30が減圧弁27に対して出力する指令電流である。制御弁に関する出力は、例えば、制御弁のポンプ−タンク(PT)ポートの開口面積(以下、「PT開口面積」とする。)である。PT開口面積は、例えば、式(1)を用いて導き出される。
【0025】
【数1】
Qはメインポンプ14の吐出流量、Cは流量係数、AはPT開口面積、ρは作動油の密度、ΔPはPTポートの前後の差圧を表す。
【0026】
スイッチ31は、制御弁に関する入出力関係を取得する処理(以下、「入出力関係取得処理」とする。)を開始させる機能要素である。本実施例では、スイッチ31は、タッチパネル付きの車載ディスプレイに表示されるソフトウェアスイッチである。スイッチ31は、キャビン10内に設置されたハードウェアスイッチであってもよい。なお、入出力関係取得処理の詳細については後述する。
【0027】
次に
図3を参照し、ショベルに搭載される油圧システムの詳細について説明する。
図3は、
図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。
図3は、
図2と同様に、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線、点線で示す。
【0028】
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。メインポンプ14L、14Rは、
図2のメインポンプ14に対応する。
【0029】
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171L〜175Lを通る高圧油圧ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171R〜175Rを通る高圧油圧ラインである。
【0030】
制御弁171Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0031】
制御弁171Rは、走行直進弁としてのスプール弁である。制御弁171Rは、下部走行体1の直進性を高めるべくメインポンプ14Lから左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rのそれぞれに作動油が供給されるように作動油の流れを切り換える。具体的には、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rと他の何れかの油圧アクチュエータとが同時に操作された場合、メインポンプ14Lは、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rの双方に作動油を供給する。他の油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合には、メインポンプ14Lが左側走行用油圧モータ1Lに作動油を供給し、メインポンプ14Rが右側走行用油圧モータ1Rに作動油を供給する。
【0032】
制御弁172Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油をオプションの油圧アクチュエータへ供給し、且つ、オプションの油圧アクチュエータが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。オプションの油圧アクチュエータは、例えば、グラップル開閉シリンダである。
【0033】
制御弁172Rは、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Rへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0034】
制御弁173Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0035】
旋回ブレーキ2Abは、旋回用油圧モータ2Aの回転を機械的に制動する装置である。コントローラ30は、電磁弁2Acに対する制御電流を増減させて旋回ブレーキ2Abによる制動力を調整する。
【0036】
制御弁173Rは、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
【0037】
制御弁174L、174Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。本実施例では、制御弁174Lは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
【0038】
制御弁175L、175Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0039】
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171L〜174Lの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172R〜174Rの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0040】
レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。レギュレータ13L、13Rは、
図2のレギュレータ13に対応する。レギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0041】
バケット操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、バケット6を操作するために用いられる。また、バケット操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁173Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、バケット操作レバー26Aは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁173Rの右側パイロットポートにパイロット圧を作用させる。また、バケット操作レバー26Aは、バケット開き方向に操作された場合には、制御弁173Rの左側パイロットポートにパイロット圧を作用させる。
【0042】
ブーム操作レバー26Bは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。また、ブーム操作レバー26Bは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁174L、174Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、ブーム操作レバー26Bは、ブーム上げ方向に操作された場合に、制御弁174Lの右側パイロットポートにパイロット圧を作用させ、且つ、制御弁174Rの左側パイロットポートにパイロット圧を作用させる。一方、ブーム操作レバー26Bは、ブーム下げ方向に操作された場合には、制御弁174Lの左側パイロットポートにパイロット圧を作用させることなく、制御弁174Rの右側パイロットポートにのみパイロット圧を作用させる。
【0043】
減圧弁27A〜27Cは、
図2の減圧弁27に対応する。減圧弁27Aは、バケット操作レバー26Aが閉じ方向に操作されたときに生成したパイロット圧を減圧して制御弁173Rの右側パイロットポートに作用させる。減圧弁27Bは、ブーム操作レバー26Bが下げ方向に操作されたときに生成したパイロット圧を減圧して制御弁174Rの右側パイロットポートに作用させる。減圧弁27Cは、ブーム操作レバー26Bが上げ方向に操作されたときに生成したパイロット圧を減圧して制御弁174Rの左側パイロットポートに作用させる。
【0044】
圧力センサ29A、29Bは、
図2の圧力センサ29に対応する。圧力センサ29Aは、バケット操作レバー26Aに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。圧力センサ29Bは、ブーム操作レバー26Bに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0045】
左右走行レバー(又はペダル)、アーム操作レバー、及び旋回操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、下部走行体1の走行、アーム5の開閉、及び、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、バケット操作レバー26Aと同様に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じたパイロット圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに作用させる。また、これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、圧力センサ29Aと同様、対応する圧力センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
【0046】
ここで、
図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御(以下、「ネガコン制御」とする。)について説明する。
【0047】
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある制御弁175L、175Rのそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。
【0048】
ネガコン圧センサ19L、19Rは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生させたネガコン圧を検出するセンサである。本実施例では、ネガコン圧センサ19L、19Rは、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0049】
コントローラ30は、ネガコン圧に応じた指令をレギュレータ13L、13Rに対して出力する。レギュレータ13L、13Rは、指令に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。具体的には、レギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
【0050】
油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合(以下、「待機モード」とする。)、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0051】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0052】
上述のような構成により、
図3の油圧システムは、待機モードにおいては、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。なお、無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。
【0053】
また、
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
【0054】
次に
図4及び
図5を参照し、入出力関係取得処理について説明する。
図4は入出力関係取得処理の流れを示すフローチャートである。コントローラ30は、所定条件が満たされた場合にこの入出力関係取得処理を実行する。所定条件は、例えば、ショベルが初めて起動されたことの検知、前回の入出力関係取得処理の実行から所定期間(例えば1ヶ月)が経過したことの検知、制御弁に関する部品が交換されたことの検知、作動油が交換されたことの検知等を含む。また、コントローラ30は、スイッチ31がオン操作された場合に入出力関係取得処理を実行してもよい。
図5は、入出力関係取得処理中に移動するスプール弁である制御弁173Rを通過する作動油の流れを便宜的に示した図である。
図4及び
図5の例では、バケットシリンダ9に関連する制御弁173Rの入出力関係を取得する場合について説明する。但し、他の制御弁の入出力関係を取得する場合にも同様の説明が適用される。また、油圧回路における制御弁173Rの特性(スプールの移動に伴って変化するPT開口面積の特性)は、PTポートに絞りの記号を記載することで表現されてもよい。
【0055】
最初に、コントローラ30は、バケットシリンダ9に作動油が流入しない状態を創出する(ステップST1)。この例では、コントローラ30は、「バケットを最大限閉じて下さい」といったテキストメッセージをキャビン10内に設置された車載ディスプレイに表示してバケット6を完全に閉じるための操作の実行を操作者に促す。或いは、コントローラ30は、操作者による所定の操作入力に応じて開閉弁を閉じてもよい。開閉弁は、例えば、制御弁173Rとバケットシリンダ9とを接続する一対の管路に設置された一対の電磁弁であり、制御弁173Rとバケットシリンダ9との間の連通を遮断できる。
【0056】
バケット操作レバー26Aが閉じ方向に操作されると、
図5(A)の破線矢印AR1で示すように、制御弁173Rは右側パイロットポートでパイロット圧を受けて左方向に移動する。そのため、センターバイパス管路40Rを連通させるPTポートのPT開口面積が小さくなり、センターバイパス管路40Rを流れる作動油の流量が減少する。その結果、ネガコン圧が低下してメインポンプ14Rの吐出量が増大する。
図5(A)の実線矢印は作動油の流れ方向を表し、実線矢印が太いほど流量が大きいことを表す。
図5(C)、
図5(D)についても同様である。
【0057】
また、制御弁173Rでは、メインポンプ14Rとバケットシリンダ9とを連通させるポンプ−シリンダ(PC)ポート、及び、バケットシリンダ9と作動油タンクとを連通させるシリンダ−タンク(CT)ポートの開口面積が大きくなる。そして、バケットシリンダ9のロッド側油室から流出する作動油、及び、バケットシリンダ9のボトム側油室に流入する作動油の流量が増大する。その結果、
図5(A)の破線矢印AR2で示すように、バケットシリンダ9が伸張してバケット6が閉じられる。
【0058】
図5(B)に示すようにバケットシリンダ9のピストンが伸張側のストロークエンドに達してバケット6が最大限閉じられると、バケットシリンダ9のボトム側油室への作動油の流入、及び、バケットシリンダ9のロッド側油室からの作動油の流出が止まる。このとき、メインポンプ14Rが吐出する作動油は、例えば、リリーフ弁を介して作動油タンクに排出される。
図5(B)は、制御弁173Rが左方に最大限ストロークして右弁位置が選択された状態を示す。
【0059】
その後、コントローラ30は、スイッチ31がオン操作されたか否かを判定する(ステップST2)。この例では、コントローラ30は、「スイッチを押して下さい」といったテキストメッセージを車載ディスプレイに表示する。
【0060】
スイッチ31がオン操作されていないと判定した場合(ステップST2のNO)、コントローラ30は、スイッチ31がオン操作されたと判定するまでステップST2を繰り返す。
【0061】
スイッチ31がオン操作されたと判定した場合(ステップST2のYES)、コントローラ30は特性テーブルを生成する(ステップST3)。特性テーブルは、制御弁に関する入出力特性を参照可能に記憶するデータセットであり、コントローラ30のNVRAM等に保存される。この例では、特性テーブルは、PT開口面積と指令電流との対応関係を記憶する。コントローラ30は、この特性テーブルを参照することで、所望のPT開口面積を実現するための指令電流を導き出し、その指令電流を減圧弁27に対して出力することで所望のPT開口面積、ひいては所望のバケット6の閉じ速度を実現できる。
【0062】
具体的には、コントローラ30は、減圧弁27Aに対して出力していた指令電流を所定値まで徐々に増大させる。閉じ方向に操作されたままのバケット操作レバー26Aの操作量とは無関係に制御弁173Rの右側パイロットポートに作用するパイロット圧を所定圧まで徐々に低減させて制御弁173Rを中立弁位置の方向に移動させるためである。所定圧は、例えば、制御弁173Rが中立弁位置にあるときに制御弁173Rの右側パイロットポートに作用するパイロット圧と同じ圧力である。また、コントローラ30はネガコン制御を停止させる。なお、減圧弁27Aの一次側の圧力は、バケット操作レバー26Aが閉じ方向に操作されたままであるため変化しない。
【0063】
右側パイロットポートに作用するパイロット圧が低下すると、
図5(C)の破線矢印AR3に示すように、制御弁173Rは右方向に移動する。また、ネガコン制御が停止しているため、メインポンプ14Rは吐出量を低減させずに維持している。さらに、バケットシリンダ9のピストンが伸張側のストロークエンドに達しているため、メインポンプ14Rが吐出した作動油が、制御弁173RのPCポートを通ってバケットシリンダ9のボトム側油室に流入することもない。そのため、メインポンプ14Rが吐出した作動油の全てが制御弁173RのPTポートに向かう。そして、PT開口面積が大きくなるにつれて、センターバイパス管路40Rを流れる作動油の流量が増大する。
【0064】
右側パイロットポートに作用するパイロット圧が所定圧まで低下すると、
図5(D)に示すように制御弁173Rは中立弁位置に至る。
【0065】
コントローラ30は、制御弁173Rが中立弁位置に向かって移動する際に、メインポンプ14Rの吐出量及び吐出圧、ネガコン圧、並びに、減圧弁27Aに対する指令電流の大きさ等を時系列でRAMに記録する。
【0066】
メインポンプ14Rの吐出量は、例えば、メインポンプ14Rの斜板傾転角、又は、レギュレータ13Rに対する制御電流の大きさから導き出される。メインポンプ14Rの吐出圧は、例えば、吐出圧センサ28Rの検出値から導き出される。ネガコン圧は、例えば、ネガコン圧センサ19Rの検出値から導き出される。
【0067】
その後、コントローラ30は、RAMに記録したデータに基づいて特性テーブルを生成してNVRAMに保存する。
【0068】
コントローラ30は、バケットシリンダ9に作動油が流入しない状態が創出されたことを確認できた場合に限り、特性テーブルを生成してもよい。この場合、コントローラ30は、姿勢センサ等の各種センサの出力に基づいてバケットシリンダ9に作動油が流入しない状態が創出されたか否かを判定してもよい。
【0069】
また、コントローラ30は、関連する操作装置以外の操作装置が中立状態になっていることを確認できた場合に限り、特性テーブルを生成してもよい。例えば、コントローラ30は、制御弁173Rに関する特性テーブルを作成する場合、圧力センサ29の出力に基づいてバケット操作レバー26A以外の操作装置26が非操作状態になっていることを確認してもよい。
【0070】
ここで、
図6を参照し、RAMに記録された特性テーブルに関する各種データの対応関係について説明する。
図6(A)は指令電流とパイロット圧との対応関係を示す。指令電流は減圧弁27Aに対する指令値であり、パイロット圧は設計値である。
図6(B)は指令電流とメインポンプ14Rの吐出圧との対応関係を示す。メインポンプ14Rの吐出圧は吐出圧センサ28Rで検出された実測値である。
図6(C)は指令電流と制御弁173RのPT開口面積との対応関係を示す。制御弁173RのPT開口面積は、式(1)を用いてメインポンプ14Rの吐出量及び吐出圧とネガコン圧とから算出される値である。
【0071】
バケット操作レバー26Aが閉じ方向にフルレバー操作されると、
図6(A)に示すように、制御弁173Rの右側パイロットポートに作用するパイロット圧は値PP1となるように設計されている。このとき、減圧弁27Aに対する指令電流は値I1となるように設計されている。パイロット圧が値PP1になると、制御弁173Rは左方に最大限ストロークして右弁位置が選択された状態になる。この状態でスイッチ31がオン操作されると、コントローラ30は、指令電流を値I1から値I2まで徐々に増大させる。パイロット圧は指令電流に対して反比例の関係にあり、指令電流が増大するにつれて低下し、指令電流が値I2になったときに値PP2に至る。パイロット圧が値PP2になると、制御弁173Rは中立弁位置が選択された状態になる。
【0072】
メインポンプ14Rの吐出圧は、バケット操作レバー26Aが閉じ方向にフルレバー操作されてバケットシリンダ9のピストンが伸張側のストロークエンドに達すると、値DP1となる。また、メインポンプ14Rの吐出量は、バケット操作レバー26Aの操作量に応じた量となっている。この状態でスイッチ31がオン操作されると、コントローラ30は、指令電流を値I1から値I2まで徐々に増大させる。メインポンプ14Rの吐出圧は、
図6(B)に示すように指令電流が増大するにつれて低下し、指令電流が値I2になったときに値DP2に至る。指令電流が増大するにつれて制御弁173Rが中立弁位置に近づいてPT開口面積が増大してPTポートを通る作動油の流量が増大するためである。
【0073】
制御弁173RのPT開口面積は、バケット操作レバー26Aが閉じ方向にフルレバー操作されて制御弁173Rが右弁位置の状態に達すると値ゼロになる。この状態でスイッチ31がオン操作されると、コントローラ30は、指令電流を値I1から値I2まで徐々に増大させる。PT開口面積は、
図6(C)に示すように指令電流が値I1から値I3まで増大するにつれて比較的緩やかに増大し、指令電流が値I3から値I2まで増大するにつれて比較的急激に増大する。そして、指令電流が値I2になったときに値A2に至る。このようにして、コントローラ30は、PTポートが開き始める時の指令電流の値I1と、開口特性が変化する時の指令電流の値I3を求めることができる。これにより、コントローラ30は、作業中において、アタッチメントの姿勢、アタッチメントに加わる負荷等に基づいて所定条件が満たされたと判定すると、指令電流の値を変化させることで、PT開口面積を変化させることができる。したがって、望ましいPT開口面積を実現でき、バケットシリンダ9へ送る作動油の流量を安定させることができる。その結果、ショベルの操作性を安定させることができる。
【0074】
コントローラ30は、例えば
図6(C)に示すような制御弁173Rの入出力関係を記憶する特性テーブルを参照することで所望の出力を実現するための入力の値を決定できる。この場合、制御弁173に関する入力は指令電流であり、出力はPT開口面積である。具体的には、コントローラ30は、特性テーブルを参照することで所望のPT開口面積を実現するための指令電流の値を決定できる。なお、特性テーブルが表す入出力関係は計算式で表されてもよい。この場合、コントローラ30は、例えば、所望のPT開口面積の値を計算式に与えることでそのPT開口面積に対応する指令電流の値を導き出してもよい。
【0075】
以上の構成により、コントローラ30は、減圧弁27A、圧力センサ29A、コントローラ30、及び制御弁173Rの少なくとも1つで基準特性に対するずれが存在する場合であっても、バケット操作レバー26Aの操作量に応じた所望のストローク量だけ制御弁173Rを移動させることができる。そのため、操作者は、バケット操作レバー26Aの操作量に応じた所望の速度でバケットシリンダ9を伸張させることができ、ひいては所望の速度でバケット6を閉じることができる。その結果、バケット6の閉じ動作の遅延、バケット6の開き過ぎ等を防止できる。すなわち、バケット6の操作特性を安定化させることができる。この特徴は、バケット操作レバー26Aの操作量とは無関係にバケット6を自動制御する場合にも有効である。
【0076】
また、上述の例では、コントローラ30は、指令電流を値I1から値I2まで増大させる(正スイープさせる)際にメインポンプ14Rの吐出量及び吐出圧、ネガコン圧、並びに、減圧弁27Aに対する指令電流の大きさ等の各種データを時系列でRAMに記録する。しかしながら、コントローラ30は、指令電流を値I2から値I1まで低減させる(逆スイープさせる)際に各種データを時系列でRAMに記録してもよい。
【0077】
また、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aに作動油が流入しない状態を創出する場合、電磁弁2Acに所定の制御電流を出力して旋回ブレーキ2Abを作動させて旋回用油圧モータ2Aを回転させないようにしてもよい。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0079】
例えば、上述の実施例では、操作者は、バケット6を最大限閉じた状態でバケット閉じ操作を継続しながらスイッチ31をオン操作する。この場合、コントローラ30は、制御弁173Rを介したメインポンプ14Rからバケットシリンダ9への作動油の流れが滞留した状態で、減圧弁27Aに対する指令電流を正スイープさせる。具体的には、バケットシリンダ9のピストンが伸張側のストロークエンドに達してボトム側油室への作動油の流入が不可能となった状態でメインポンプ14Rが所定量の作動油を吐出しているときに制御弁173Rを右弁位置から中立弁位置に強制的に移動させる。すなわち、バケット操作レバー26Aの操作量とは無関係に制御弁173Rを右弁位置から中立弁位置に強制的に移動させる。そして、バケットシリンダ9に対応する制御弁173Rの入出力に関するデータを記録し、バケット6の閉じ操作に関する特性テーブルを生成する。
【0080】
コントローラ30は、バケット6の開き操作に関する特性テーブルを同様に生成してもよい。例えば、操作者は、バケット6を最大限開いた状態でバケット開き操作を継続しながらスイッチ31をオン操作する。この場合、コントローラ30は、制御弁173Rを介したメインポンプ14Rからバケットシリンダ9への作動油の流れが滞留した状態で、制御弁173Rの左側パイロットポートに対応する減圧弁に対する指令電流を正スイープさせる。具体的には、バケットシリンダ9のピストンが収縮側のストロークエンドに達してロッド側油室への作動油の流入が不可能となった状態でメインポンプ14Rが所定量の作動油を吐出しているときに制御弁173Rを左弁位置から中立弁位置に強制的に移動させる。そして、制御弁173Rの入出力に関するデータを記録し、バケット6の開き操作に関する特性テーブルを生成する。
【0081】
コントローラ30は、他の制御弁の特性テーブルを同様に生成してもよい。例えば、操作者は、ブーム4を最大限下降させた状態でブーム下げ操作を継続しながらスイッチ31をオン操作する。この場合、コントローラ30は、制御弁174Rを介したメインポンプ14Rからブームシリンダ7への作動油の流れが滞留した状態で、減圧弁27Bに対する指令電流を正スイープさせる。具体的には、ブームシリンダ7のピストンが収縮側のストロークエンドに達してロッド側油室への作動油の流入が不可能となった状態でメインポンプ14Rが所定量の作動油を吐出しているときに制御弁174Rを右弁位置から中立弁位置に強制的に移動させる。そして、ブームシリンダ7に対応する制御弁174Rの入出力に関するデータを記録し、ブーム4の下げ操作に関する特性テーブルを生成する。
【0082】
また、コントローラ30は、各作業要素に関する油圧シリンダのピストンをストロークエンドに至らせることなく、その油圧シリンダに作動油が流入しない状態を創出してもよい。例えば、制御弁173〜175と油圧シリンダ7〜9との間に設けられた切換弁を閉じることで、制御弁173〜175から油圧シリンダ7〜9へ作動油が流れないようにして油圧シリンダのピストンがストロークエンドに達したときと同じ状態を創出してもよい。旋回用油圧モータ2A等の他の油圧アクチュエータについても同様である。
【0083】
また、操作者は、ブーム4を最大限上昇させた状態でブーム上げ操作を継続しながらスイッチ31をオン操作する。この場合、コントローラ30は、制御弁174Rを介したメインポンプ14Rからブームシリンダ7への作動油の流れが滞留した状態で、減圧弁27Cに対する指令電流を正スイープさせる。具体的には、ブームシリンダ7のピストンが伸張側のストロークエンドに達してボトム側油室への作動油の流入が不可能となった状態でメインポンプ14Rが所定量の作動油を吐出しているときに制御弁174Rを左弁位置から中立弁位置に強制的に移動させる。そして、ブームシリンダ7に対応する制御弁174Rの入出力に関するデータを記録し、ブーム4の上げ操作に関する特性テーブルを生成する。アーム5の閉じ操作及び開き操作のそれぞれに関する特性テーブルについても同様である。
【0084】
また、操作者は、旋回ブレーキを作動させた状態で右旋回操作を継続しながらスイッチ31をオン操作する。この場合、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aがロックされて旋回用油圧モータ2Aの吸入ポートへの作動油の流入が不可能となった状態でメインポンプ14Lが所定量の作動油を吐出しているときに制御弁173Lを左弁位置から中立弁位置に強制的に移動させる。そして、旋回用油圧モータ2Aに対応する制御弁173Lの入出力に関するデータを記録し、右旋回操作に関する特性テーブルを生成する。左旋回操作に関する特性テーブルについても同様である。また、走行直進弁としての制御弁171Rに関する特性テーブルについても同様である。