特許第6685810号(P6685810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6685810起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685810
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/02 20060101AFI20200413BHJP
   A62C 35/68 20060101ALI20200413BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   A62C35/02 A
   A62C35/68
   F16K17/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-76474(P2016-76474)
(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公開番号】特開2017-185043(P2017-185043A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168676
【氏名又は名称】株式会社コーアツ
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】井上 康史
(72)【発明者】
【氏名】米田 裕策
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 剛敏
(72)【発明者】
【氏名】鴨 三範
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−141102(JP,A)
【文献】 特開平05−164258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の消火剤貯蔵容器の各々に容器弁を配設し、該容器弁を、起動用ガスの流通方向を制限する不還弁を介在させた起動用ガス管路により接続し、火災発生時に、起動用ガス管路に起動用ガスを供給することで、容器弁を選択的に開放して、開放された容器弁に対応する消火剤貯蔵容器に貯蔵されているガス系消火剤を、容器弁及び管路を介して、消火対象区画に供給するようにした、起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムにおいて、前記不還弁に、シート面を備えたピストンと、起動用ガスの流通を遮断する方向に向けてピストンを付勢するばねと、ピストンに部分的に起動用ガスのガス圧がかからないようにするピストンの摺動面をシールするシール部とを備えることによって、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁を用いたことを特徴とする起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起動回路に不還弁を介在させたガス系消火システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、消火剤として、ハロン、窒素、二酸化炭素等のガス系消火剤を用いるガス系消火システムにおいて、1つのガス系消火システムを用いて、容積が異なる複数の消火対象区画の消火を行うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このガス系消火システムは、例えば、図1に示すように、5本の消火剤貯蔵容器1−1、1−2、・・・1−5を備え、各容器1には、容器弁2を介して連結管3を接続し、さらに連結管3を1本の集合管4に接続し、この集合管4を各消火対象区画6−1、6−2、6−3まで延設した主配管5−1、5−2、5−3に接続する。主配管5−1、5−2、5−3には、選択弁9−1、9−2、9−3を配設し、消火対象区画6−1、6−2、6−3に選択的にガス系消火剤を送るようにする。消火対象区画6−1、6−2、6−3まで延設した主配管5−1、5−2、5−3を、消火対象区画6−1、6−2、6−3内にそれぞれ配設した枝管8−1、8−2、8−3に接続し、この枝管8−1、8−2、8−3を消火対象区画6−1、6−2、6−3内の適所に複数個配設した噴射ヘッド7−1、7−2、7−3に接続する。
【0004】
この場合、消火対象区画6−1、6−2、6−3は、その容積が異なるため、消火するのに必要となるガス系消火剤の量も異なる。このため、主配管5−1、5−2、5−3の口径を各消火対象区画6−1、6−2、6−3の容積に応じて異ならせるほか、火災発生時に、消火対象となる消火対象区画6−1、6−2、6−3に対応した本数の消火剤貯蔵容器1が開放されるようにガス系消火システムを構成する。
【0005】
ここで、開放すべき消火剤貯蔵容器1の本数を、消火対象区画6−1が5本、消火対象区画6−2が3本、消火対象区画6−3が1本に設定する場合について説明する。
なお、図中、9−1、9−2、9−3は選択弁、10−1、10−2、10−3は選択弁開放装置、11−1、11−2、11−3は起動用ガス容器、12−1、12−2、12−3は起動用ガス容器開放用のソレノイドである。また、図中、13−1、13−2、13−3は、選択弁9−1、9−2、9−3及び起動用ガス容器11−1、11−2、11−3の開放をコントロールする起動用ガス管路で、選択弁開放装置10−1、10−2、10−3に接続され、その途中の適所に不還弁14−1、14−2、14−3、14−A、14−Bを配設する。なお、不還弁14−1、14−2、14−3、14−A、14−Bの通過可能方向は、図の矢印の向きで表している。なお、これらの部材の末尾の数字1、2、3は、消火対象区画の末尾の数字1、2、3にそれぞれ対応している。
【0006】
そして、消火対象区画6−1に火災が発生したとすれば、火災発見者がこの消火対象区画6−1に対応する押釦(手動操作の場合)を操作すると、電気信号が起動用ガス容器開放用のソレノイド12−1に送られ、ソレノイド12−1が動作して起動用ガス容器11−1が開放される。起動用ガス容器11−1が開放されることにより放出された起動用ガス(起動用ガスのガス圧:周囲温度や管容積にもよるが、概ね1〜11MPaに設定)は、まず、選択弁開放装置10−1に導入されて選択弁9−1を開放してから、不還弁14−1を経て起動用ガス管路13−1を通り、不還弁14−A及び不還弁14−Bを通過してすべての容器弁2に至って消火剤貯蔵容器1を5本とも開放する。このとき、不還弁14−2及び不還弁14−3を通過することができないため、選択弁9−2及び選択弁9−3は開放されない。そして、開放された5本の消火剤貯蔵容器1から、ガス系消火剤が、容器弁2、連結管3、集合管4、選択弁9−1、主配管5−1及び枝管8−1を介して噴射ヘッド7−1まで送られ、噴射ヘッド7−1から消火対象区画6−1内に放出される。
【0007】
また、消火対象区画6−2に火災が発生したとすれば、火災発見者がこの消火対象区画6−2に対応する押釦(手動操作の場合)を操作すると、電気信号が起動用ガス容器開放用のソレノイド12−2に送られ、ソレノイド12−2が動作して起動用ガス容器11−2が開放される。起動用ガス容器11−2が開放されることにより放出された起動用ガスは、まず、選択弁開放装置10−2に導入されて選択弁9−2を開放してから、不還弁14−2を経て起動用ガス管路13−2を通り、不還弁14−Bを通過して容器弁2に至って消火剤貯蔵容器1を3本だけ、すなわち、消火剤貯蔵容器1−3、1−4、1−5を開放する。このとき、不還弁14−Aを通過することができないため、消火剤貯蔵容器1のうち2本、すなわち、消火剤貯蔵容器1−1、1−2は開放されない。また、不還弁14−1及び不還弁14−3を通過することができないため、選択弁9−1及び選択弁9−3は開放されない。そして、開放された3本の消火剤貯蔵容器1−3、1−4、1−5から、ガス系消火剤が、容器弁2、連結管3、集合管4、選択弁9−2、主配管5−2及び枝管8−2を介して噴射ヘッド7−2まで送られ、噴射ヘッド7−2から消火対象区画6−2内に放出される。
【0008】
また、消火対象区画6−3に火災が発生したとすれば、火災発見者がこの消火対象区画6−3に対応する押釦(手動操作の場合)を操作すると、電気信号が起動用ガス容器開放用のソレノイド12−3に送られ、ソレノイド12−3が動作して起動用ガス容器11−3が開放される。起動用ガス容器11−3が開放されることにより放出された起動用ガスは、まず、選択弁開放装置10−3に導入されて選択弁9−3を開放してから、不還弁14−3を経て起動用ガス管路13−3を通り、容器弁2に至って消火剤貯蔵容器1を1本だけ、すなわち、消火剤貯蔵容器1−5を開放する。このとき、不還弁14−Bを通過することができない(したがって、当然、不還弁14−Aも通過することができない)ため、消火剤貯蔵容器1のうち4本、すなわち、消火剤貯蔵容器1−1、1−2、1−3、1−4は開放されない。また、不還弁14−1及び不還弁14−2を通過することができないため、選択弁9−1及び選択弁9−2は開放されない。そして、開放された1本の消火剤貯蔵容器1−5から、ガス系消火剤が、容器弁2、連結管3、集合管4、選択弁9−3、主配管5−3及び枝管8−3を介して噴射ヘッド7−3まで送られ、噴射ヘッド7−3から消火対象区画6−3内に放出される。
【0009】
ここでは、消火対象区画が3区画で、消火剤貯蔵容器1の本数が5本の場合を例にして説明したが、消火対象区画の数及び消火剤貯蔵容器1の本数並びに開放される消火剤貯蔵容器1の本数は、任意に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−299492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来のガス系消火システムにおいては、起動用ガス管路13−1、13−2、13−3における起動用ガスの流通方向を制限する不還弁14−1、14−2、14−3、14−A、14−Bに、構造が簡単で、動作の安定性が高い、図2に示すような構造の不還弁V0を用いるようにしている。
【0012】
この不還弁V0は、1次側14aと2次側14bとを遮断可能に配設した、シート面14dを備えたピストン14cと、1次側14aに向けてピストン14cを付勢するばね14eと、起動用ガスの流路14f1、14f2とを備えて構成されている。
【0013】
次に、この不還弁V0は、以下のように動作する。
2次側14bから起動用ガスのガス圧がかかったとき、ピストン14cにかかるばね14eの付勢力とガス圧力によってシート面14dが弁座14gに押圧されることで、1次側14aと2次側14bとが遮断され、1次側14aには起動用ガスは流れない。
【0014】
一方、1次側14aから起動用ガスのガス圧がかかったとき、ガス圧が、ばね14eがピストン14cを付勢する力以上の圧力であれば、ピストン14cが2次側14bに動き、流路14f1、14f2を通って2次側14bに起動用ガスが流れる。
ここで、1次側14aの起動用ガスのガス圧をP1、2次側14bの起動用ガスのガス圧をP2、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1を受けるピストン14cの受圧面積をA1、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2を受けるピストン14cの受圧面積をA2、弁座14gの直径をd1(面積をS1=π・d1/4)、ピストン14cの直径をd2(面積をS2=π・d2/4)、ばね14eの変位をx、ばね定数をkとする。
ピストン14cに働く力Fは、
F=P1・A1−P2・A2−kx
となる。
ピストンが動作を開始する条件は、初期状態がP2=0であり、A1=S1であるので、この不還弁V0では、
P1・S1−kx>0
のときに、ピストン14cが動作を開始する。
ピストン14cが動作を開始してから、2次側14bに起動用ガスが流れ込むことによって、P2の圧力が上昇していき、
P1・A1−P2・A2−kx=0
となったときに、ピストン14cの動きが停止し、平衡状態となる。その後P2の上昇に従って、ピストン14cが移動し、シート面14dが弁座14gに接して、1次側14aから2次側14bへの起動用ガスの流れが停止する。
この状態では、A1=A2=S1であるので、
P1−P2−kx/S1=0
となり、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1と、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2との間に、圧力差kx/S1(ただし、P1>P2)が発生する。
【0015】
このように、従来の起動用ガス管路13−1、13−2、13−3における起動用ガスの流通方向を制限する不還弁14−1、14−2、14−3、14−A、14−Bとして用いられている、不還弁V0は、構造が簡単で、動作の安定性が高い反面、平衡状態では、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1と、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2との間に、圧力差kx/S1(ただし、P1>P2)が発生するため、例えば、複数の不還弁V0を起動用ガス管路に直列状態で介在させた場合、各不還弁V0の位置で起動用ガスの圧力が低下していき、起動用ガス管路の末端の圧力が低くなり、容器弁2の作動の安定性が確保しにくくなることが考えられる。
【0016】
本発明は、上記従来の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムの有する問題点に鑑み、複数の不還弁を起動用ガス管路に直列状態で介在させた場合でも、各不還弁の位置で起動用ガスの圧力が低下せず、起動用ガス管路の末端の圧力を維持して、容器弁の作動の安定性が確保することができるようにした起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムは、複数の消火剤貯蔵容器の各々に容器弁を配設し、該容器弁を、起動用ガスの流通方向を制限する不還弁を介在させた起動用ガス管路により接続し、火災発生時に、起動用ガス管路に起動用ガスを供給することで、容器弁を選択的に開放して、開放された容器弁に対応する消火剤貯蔵容器に貯蔵されているガス系消火剤を、容器弁及び管路を介して、消火対象区画に供給するようにした、起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムにおいて、前記不還弁に、シート面を備えたピストンと、起動用ガスの流通を遮断する方向に向けてピストンを付勢するばねと、ピストンに部分的に起動用ガスのガス圧がかからないようにするピストンの摺動面をシールするシール部とを備えることによって、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムによれば、複数の消火剤貯蔵容器の各々に容器弁を配設し、該容器弁を、起動用ガスの流通方向を制限する不還弁を介在させた起動用ガス管路により接続し、火災発生時に、起動用ガス管路に起動用ガスを供給することで、容器弁を選択的に開放して、開放された容器弁に対応する消火剤貯蔵容器に貯蔵されているガス系消火剤を、容器弁及び管路を介して、消火対象区画に供給するようにした、起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムにおいて、前記不還弁に、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁を用いることにより、複数の不還弁を起動用ガス管路に直列状態で介在させた場合でも、各不還弁の位置で起動用ガスの圧力が低下せず、起動用ガス管路の末端の圧力を維持して、容器弁の作動の安定性が確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムの一例を示す説明図である。
図2】従来の不還弁の説明図である。
図3】本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムに用いる不還弁の一例を示す説明図である。
図4】本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムに用いる不還弁の一例を示す説明図である。
図5】本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムに用いる不還弁の一例を示す説明図である。
図6】本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムに用いる不還弁の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムは、図1に示す、ガス系消火システムと同様、消火剤として、ハロン、窒素、二酸化炭素等のガス系消火剤を用いるガス系消火システムにおいて、1つのガス系消火システムを用いて、容積が異なる複数の消火対象区画の消火を行うようにしたもので、複数の消火剤貯蔵容器1−1、1−2、・・・1−5の各々に容器弁2を配設し、この容器弁2を、起動用ガスの流通方向を制限する不還弁14−1、14−2、14−3、14−A、14−Bを介在させた起動用ガス管路13−1、13−2、13−3により接続し、火災発生時に、起動用ガス管路13−1、13−2、13−3に起動用ガスを供給することで、容器弁2を選択的に開放して、開放された容器弁2に対応する消火剤貯蔵容器1−1、1−2、・・・1−5に貯蔵されているガス系消火剤を、容器弁2及び管路(連結管3、集合管4、主配管5−1、5−2、5−3及び枝管8−1、8−2、8−3)を介して、消火対象区画6−1、6−2、6−3に供給するようにしたものである。
【0022】
そして、本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムにおいては、起動用ガス管路13−1、13−2、13−3における起動用ガスの流通方向を制限する不還弁14−1、14−2、14−3、14−A、14−Bに、図3図5に示す、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁V1、V2、V3、V4を用いるようにしている。
【0023】
これにより、本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムは、複数の不還弁を起動用ガス管路に直列状態で介在させた場合でも、各不還弁の位置で起動用ガスの圧力が低下せず、起動用ガス管路の末端の圧力を維持して、容器弁の作動の安定性が確保することができる。
【0024】
図3に示す、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁V1は、1次側14aと2次側14bとを遮断可能に配設した、シート面14dを備えたピストン14cと、1次側14aに向けてピストン14cを付勢するばね14eと、起動用ガスの流路14fと、シール部14h1、14h2と、大気連通路14iとを備えて構成されている。また、弁座14gの直径をd1(面積をS1=π・d1/4)、シール部14h1、14h2部分の直径をそれぞれd2、d3(面積をS2=π・d2/4、S3=π・d3/4)とする。
【0025】
次に、この不還弁V1は、以下のように動作する。ここで、1次側14aの起動用ガスのガス圧をP1、2次側14bの起動用ガスのガス圧をP2、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1を受けるピストン14cの受圧面積をA1、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2を受けるピストン14cの受圧面積をA2、ばね14eの変位をx、ばね定数をkとする。
ピストン14cに働く力Fは、
F=P1・A1−P2・A2−kx
である。
2次側14bから起動用ガスのガス圧がかかったとき、P1=0、A2=S1−S2+S3であるから、
F=−P2・(S1−S2+S3)−kx<0
のとき、ピストン14cにかかるばね14eの付勢力とガス圧力によってシート面14dが弁座14gに押圧されることで、1次側14aと2次側14bとが遮断され、1次側14aには起動用ガスは流れないため、S1、S2、S3、kxは上式を満たすように設計される。特に、圧力とばね力を精密に設定しなくて済むように、S1−S2+S3>0となるように機器を設計する(例えば、d1=8mm、d2=12mm、d3=9mm)。
【0026】
一方、1次側14aから起動用ガスのガス圧がかかったとき、ガス圧が、ばね14eがピストン14cを付勢する力以上の圧力であれば、ピストン14cが2次側14bに動き、流路14fを通って2次側14bに起動用ガスが流れる。
ピストンが動作を開始する条件は、初期状態がP2=0であり、A1=S1であるので、この不還弁V1では、
P1・S1−kx>0
のときに、ピストン14cが動作を開始する。
ピストン14cが動作を開始してから、2次側14bに起動用ガスが流れ込むことによって、P2の圧力が上昇していき、
P1・A1−P2・A2−kx=0
となったときに、ピストン14cの動きが停止し、平衡状態となるが、この不還弁V1では、その形状(2次側14bの起動用ガスのガス圧P2を受けるピストン14cの受圧面積A2は、大気連通路14iを介して大気圧がかかる部分だけ受圧面積が小さくなっている。)からA1>A2であるため、条件によっては平衡状態にならずピストン14cが2次側14bに圧力によって付勢され続け、ピストン14cが不還弁V1の弁本体部に当たることによって停止する。このときにピストンに働く力Fは、P1=P2であるので
F=P1・(S2−S3)-kx>0
となる。
上式を満たすとき、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1と、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2との間に、圧力差が発生しないようにすることができる。また、P1は起動用ガスであり十分に大きい値であるため、通常の使用においては上式を満たす。
【0027】
図4に示す、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁V2は、1次側14aと2次側14bとを遮断可能に配設した、ピストン14cと、1次側14aに向けてピストン14cを付勢するばね14eと、起動用ガスの流路14fと、シール部14h1、14h2と、組み上げ時に閉空間となるピストン室14kとを備えて構成されている。
【0028】
次に、この不還弁V2は、以下のように動作する。
2次側14bから起動用ガスのガス圧がかかったとき、ピストン14cにかかるばね14eの付勢力によってピストン14cが図4(a)の位置から動かないため、ピストン14cよって1次側14aと2次側14bとが遮断され、1次側14aには起動用ガスは流れない。
【0029】
一方、1次側14aから起動用ガスのガス圧がかかったとき、ガス圧が、ばね14eがピストン14cを付勢する力以上の圧力であれば、ピストン14cが2次側14bに動き、流路14fを通って2次側14bに起動用ガスが流れる。
ここで、1次側14aの起動用ガスのガス圧をP1、2次側14bの起動用ガスのガス圧をP2、ピストン室14k内の圧力をP3、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1を受けるピストン14cの受圧面積をA1、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2を受けるピストン14cの受圧面積をA2、ピストン室14k内の圧力P3を受けるピストン14cの受圧面積をA3、ピストン14cの先端部の直径をd1(面積をS1=π・d1/4)、ばね14eの変位をx、ばね定数をkとする。
ピストン14cに働く力Fは、
F=P1・A1−P3・A3−kx
である。
ピストン14cが動作を開始する条件は、初期状態がP3は組立時の圧力であるため、P3=0であり、A1=S1であるので
F=P1・S1−kx>0
のときに、ピストン14cが動作を開始する。
ピストン14cが動作を開始してから、ピストン14cの動作によって、ピストン室14kの容積が減少し、結果としてピストン室14k内の圧力が上昇する。
この不還弁V2では、その形状から、条件によっては平衡状態にならずピストン14cがP1の圧力によって付勢され続け、ピストン14cが不還弁V2の弁本体部に当たることによって停止する。このときに働く力FはA1=A3=S1であるので
F=P1・S1−P3・S1−kx>0
となる。
上式を満たすとき、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1と、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2との間に、圧力差が発生しないようにすることができる。ピストン14cの移動によってピストン室14kが減少する容積は十分に小さく、よって、ピストン室14k内の圧力は小さいものとなる。例えば、図4の関係において、容積は3011mmから2703mmに減少し、圧力は0から0.01MPaに上昇する。また、P1は起動用ガスであり十分に大きい値であるため、通常の使用においては上式を満たす。
【0030】
図5に示す、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁V3は、1次側14aと2次側14bとを遮断可能に配設した、ピストン14cと、1次側14aに向けてピストン14cを付勢するばね14eと、起動用ガスの流路14fと、シール部14h1、14h2と、大気連通路14i、作動表示部Bとを備えて構成されている。
【0031】
次に、この不還弁V3は、以下のように動作する。
2次側14bから起動用ガスのガス圧がかかったとき、ピストン14cにかかるばね14eの付勢力によってピストン14cが図5(a)の位置から動かないため、ピストン14cよって1次側14aと2次側14bとが遮断され、1次側14aには起動用ガスは流れない。
【0032】
一方、1次側14aから起動用ガスのガス圧がかかったとき、ガス圧が、ばね14eがピストン14cを付勢する力以上の圧力であれば、ピストン14cが2次側14bに動き、流路14fを通って2次側14bに起動用ガスが流れる。
ここで、1次側14aの起動用ガスのガス圧をP1、2次側14bの起動用ガスのガス圧をP2、大気連通路14i側の大気圧P3、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1を受けるピストン14cの受圧面積をA1、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2を受けるピストン14cの受圧面積をA2、大気連通路14i側の受圧面積A3、ピストン14cの先端部の直径をd1(面積をS1=π・d1/4)、ばね14eの変位をx、ばね定数をkとする。
ピストン14cに働く力Fは、
F=P1・A1−P3・A3−kx
である。
ピストン14cが動作を開始する条件は、初期状態がP3=0、A1=S1であるので、この不還弁V3では、
F=P1・S1−kx>0
のときに、ピストン14cが動作を開始する。
ピストン14cが動作を開始してから、2次側14bに起動用ガスが流れ込むことによって、P2の圧力が上昇していく。
この不還弁V3では、14iによって大気開放されていることにより常にP3=0であるので、ピストン14cの動作条件が満たされれば、平衡状態にならずピストン14cが1次側14aの圧力によって付勢され続け、ピストン14cが不還弁V3の弁本体部に当たることによって停止する。
このとき、1次側14aの起動用ガスのガス圧P1と、2次側14bの起動用ガスのガス圧P2との間に、圧力差が発生しない。
また、このとき表示器Bが不還弁V3の弁本体部から突出することにより、不還弁V3の動作状態を確認できる。この表示器は着色や一部欠損させることなどによって、視認性を向上させてもよい。
【0033】
図6に示す、1次側のガス圧と2次側のガス圧とに圧力差が生じない不還弁V4は、図5に示す不還弁V3と、基本的な構造及び作用は同じである。ただし、Oリングの装着溝にシール部14h1に急激な圧力上昇によるOリングの脱落が発生しにくくなる加工がされている。
【0034】
以上、本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムは、複数の不還弁を起動用ガス管路に直列状態で介在させた場合でも、各不還弁の位置で起動用ガスの圧力が低下せず、起動用ガス管路の末端の圧力を維持して、容器弁の作動の安定性が確保することができるという特性を有していることから、起動用ガス管路に不還弁を介在させたガス系消火システムの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 消火剤貯蔵容器
2 容器弁
6 消火対象区画
7 噴射ヘッド
13−1、13−2、13−3 起動用ガス管路
14−1、14−2、14−3、14−A、14−B 不還弁
V1 不還弁
V2 不還弁
V3 不還弁
V4 不還弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6