特許第6685830号(P6685830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーインスツル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6685830-サーマルプリンタ及び携帯型端末 図000002
  • 特許6685830-サーマルプリンタ及び携帯型端末 図000003
  • 特許6685830-サーマルプリンタ及び携帯型端末 図000004
  • 特許6685830-サーマルプリンタ及び携帯型端末 図000005
  • 特許6685830-サーマルプリンタ及び携帯型端末 図000006
  • 特許6685830-サーマルプリンタ及び携帯型端末 図000007
  • 特許6685830-サーマルプリンタ及び携帯型端末 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685830
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ及び携帯型端末
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20200413BHJP
   B41J 23/02 20060101ALI20200413BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B41J2/32 Z
   B41J23/02 B
   B41J3/36 T
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-98105(P2016-98105)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-205898(P2017-205898A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 仁久
【審査官】 佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−237118(JP,A)
【文献】 特開2001−224145(JP,A)
【文献】 特開2013−180468(JP,A)
【文献】 特開2009−072982(JP,A)
【文献】 特開2013−006288(JP,A)
【文献】 特開2010−081755(JP,A)
【文献】 特開平02−135798(JP,A)
【文献】 特開2007−030205(JP,A)
【文献】 特開2006−050757(JP,A)
【文献】 特開2000−000984(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/090086(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0176360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/32
B41J 3/36
B41J 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向で対向するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する第1側板部及び第2側板部、並びに前記第1方向に延びるとともに、前記第1側板部及び前記第2側板部同士を架け渡す基部を有するフレームと、
前記第1側板部及び前記第2側板部のうち、前記基部に対して前記第2方向の一方に位置するそれぞれの軸支持部に、前記第1方向の延びる軸線周りに回転可能に支持され、サーマルヘッドとの間に記録紙を挟み込んで紙送りするプラテンローラと、
前記第1側板部のうち、前記基部に対して前記第2方向の他方に位置する駆動支持部に前記第1方向で片持ち状に支持されるとともに、前記プラテンローラに接続される駆動源と、
前記第1方向における前記駆動源と前記駆動支持部との間に配設され、前記駆動源の動力を減速する減速機構と、
前記駆動源に接続され、その一部にフック状の突出部を有する係合部と、
前記基部に開口形成された被係合部と、
を備え
前記係合部の前記突出部が前記被係合部内に収容されて互いに係合することによって、前記基部に対する前記駆動源の前記第2方向の他方への変位を規制することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記駆動源は、前記第1側板部に支持されたフランジ部を備え、
前記係合部は、前記フランジ部に一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記駆動源は、前記第1側板部に支持されたフランジ部を備え、
前記係合部は、前記フランジ部に対して前記第1方向の前記第2側板部寄りに配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記第1側板部及び前記フランジ部を前記第1方向に貫通するとともに、前記第1側板部及び前記駆動源を締結する締結部材を備え、
前記係合部は、前記締結部材のうち、前記フランジ部に対して前記第1方向における前記第2側板部寄りに突出した部分であることを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記駆動源のうち、前記第1方向の前記第2側板部寄りの端部には、前記駆動源を保持する保持部材が設けられ、
前記係合部は、前記保持部材に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のサーマルプリンタと、
前記サーマルプリンタが搭載されたケーシングと、を備えていることを特徴とする携帯型端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタ及び携帯型端末に関する。
【背景技術】
【0002】
記録紙(感熱紙)に対して印刷を行うプリンタとして、サーマルプリンタが知られている。サーマルプリンタは、発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間に記録紙を挟み込んで紙送りするプラテンローラと、プラテンローラやサーマルヘッドを支持するフレームと、を備えている。サーマルプリンタでは、プラテンローラの回転により記録紙が紙送りされる過程で、サーマルヘッドの発熱素子を適宜発熱させることで、記録紙に対して各種情報を印刷できる。
【0003】
上述したフレームは、プラテンローラの軸線方向に対向して配置された第1側板部及び第2側板部と、各側板部同士の間を架け渡す基部と、を有している(例えば、下記特許文献1参照)。各側板部のうち、基部に対して一方に突出する部分には、プラテンローラがそれぞれ回転可能に支持されている。第1側板部のうち、基部に対して他方に突出する部分(以下、モータ支持部という。)には、モータが片持ち状に支持されている。サーマルプリンタでは、モータの動力がギヤ等を介してプラテンローラに伝達されることで、プラテンローラが回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−006288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したサーマルプリンタにあっては、落下衝撃等によるフレームの損傷を抑制する点で未だ改善の余地があった。具体的に、仮に落下衝撃等によりモータが基部に対して離間する方向に変位すると、モータ支持部が基部との接続部分を起点にして撓み変形しようとする。この場合、従来のサーマルプリンタでは、モータがモータ支持部に片持ち状に支持されているため、モータ支持部と基部との接続部分にはモータの慣性に起因して大きなモーメントが作用する。その結果、フレームの塑性変形や破損等が生じするおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、落下衝撃等によるフレームの損傷を抑制できるサーマルプリンタ及び携帯型端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係るサーマルプリンタは、第1方向で対向するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に延在する第1側板部及び第2側板部、並びに前記第1方向に延びるとともに、前記第1側板部及び前記第2側板部同士を架け渡す基部を有するフレームと、前記第1側板部及び前記第2側板部のうち、前記基部に対して前記第2方向の一方に位置するそれぞれの軸支持部に、前記第1方向の延びる軸線周りに回転可能に支持され、サーマルヘッドとの間に記録紙を挟み込んで紙送りするプラテンローラと、前記第1側板部のうち、前記基部に対して前記第2方向の他方に位置する駆動支持部に前記第1方向で片持ち状に支持されるとともに、前記プラテンローラに接続される駆動源と、前記基部に配設された被係合部と、前記駆動源に接続されるとともに、前記被係合部に係合可能とされ、前記基部に対する前記駆動源の前記第2方向の他方への変位を規制する係合部と、を備えている。
【0008】
本態様によれば、サーマルプリンタに対して落下荷重等が作用して、駆動源が基部に対して第2方向の他方に変位すると、駆動源の係合部が被係合部に第2方向の一方向から係合する。これにより、基部に対する駆動源の第2方向の他方への変位が規制され、駆動支持部の撓み変形が抑制される。そのため、サーマルプリンタに作用する落下荷重等によってフレームが損傷するのを抑制できる。その結果、耐久性や信頼性に優れたサーマルプリンタを提供できる。
【0009】
上記態様において、前記第1方向における前記駆動源と前記駆動支持部との間には、前記駆動源の動力を減速する減速機構が設けられていてもよい。
本態様のように、駆動支持部と駆動源との間に減速機構が設けられている場合には、駆動支持部に駆動源を直接固定する場合に比べて駆動支持部と駆動源との距離が長くなる。そのため、落下荷重等が作用した場合に、駆動支持部と基部との接続部分に大きなモーメントが作用するおそれがある。
これに対して、本態様では、上述したように基部に対する駆動源の変位が係合部及び被係合部によって規制されるので、駆動支持部と駆動源との間に減速機構を設けた場合であっても、フレームの損傷を確実に抑制できる。この場合には、減速機構を駆動支持部に対して第1方向の内側に配置できるので、サーマルプリンタの第1方向における小型化を図ることができる。
【0010】
上記態様において、前記駆動源は、前記第1側板部に支持されたフランジ部を備え、前記係合部は、前記フランジ部に一体形成されていてもよい。
本態様によれば、係合部がフランジに一体で形成されているため、係合部の追加に伴う部品点数の増加を抑制できる。
【0011】
上記態様において、前記駆動源は、前記第1側板部に支持されたフランジ部を備え、前記係合部は、前記フランジ部に対して前記第1方向の前記第2側板部寄りに配置されていてもよい。
本態様によれば、駆動支持部から離れた位置(落下荷重等が作用した際に変位が大きい位置)に係合部を配置することで、基部に対する駆動源の変位を効果的に抑制できる。
【0012】
上記態様において、前記第1側板部及び前記フランジ部を前記第1方向に貫通するとともに、前記第1側板部及び前記駆動源を締結する締結部材を備え、前記係合部は、前記締結部材のうち、前記フランジ部に対して前記第1方向における前記第2側板部寄りに突出した部分であってもよい。
本態様によれば、締結部材のうち、フランジ部に対して第1方向における第2側板部寄りに突出した部分が係合部を構成しているので、駆動支持部から離れた位置に係合部を配置できる。これにより、基部に対する駆動源の変位を効果的に抑制できる。
しかも、締結部材が係合部を構成するので、係合部の追加に伴う部品点数の増加を抑制できる。
【0013】
上記態様において、前記駆動源のうち、前記第1方向の前記第2側板部寄りの端部には、前記駆動源を保持する保持部材が設けられ、前記係合部は、前記保持部材に形成されていてもよい。
本態様によれば、駆動源のうち、第1方向の第2側板部寄りの端部を保持する保持部材に係合部が形成されているので、駆動支持部から離れた位置に係合部を配置できる。これにより、基部に対する駆動源の変位を効果的に抑制できる。
しかも、駆動源と別体の保持部材を介して駆動源が基部に係合されるので、保持部材の設計の自由度を向上させることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る携帯型端末は、上記態様のサーマルプリンタと、前記サーマルプリンタが搭載されたケーシングと、を備えている。
この構成によれば、上記態様のサーマルプリンタを備えているため、耐久性及び信頼性に優れた携帯型端末を提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、落下衝撃等によるフレームの撓み変形を抑制し、フレームの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る携帯型端末の斜視図である。
図2】第1実施形態に係るサーマルプリンタの斜視図である。
図3】第1実施形態に係るサーマルプリンタの分解斜視図である。
図4図2のIV−IV線に相当する断面図である。
図5】第1実施形態に係るサーマルプリンタを−Z方向から見た斜視図である。
図6】第2実施形態に係るサーマルプリンタを−Y方向から見た拡大背面図である。
図7】第3実施形態に係るサーマルプリンタを+X方向から見た拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[携帯型端末]
図1は、携帯型端末1の斜視図である。
図1に示すように、携帯型端末1は、例えばユーザにより携帯可能とされた決済端末である。携帯型端末1は、ケーシング11と、入力表示部12と、サーマルプリンタ13と、を有している。
【0018】
ケーシング11は、ケーシング本体15と、プリンタカバー16と、を有している。
ケーシング本体15は、平面視長方形状の箱型に形成されている。ケーシング本体15の先端部には、記録紙P(感熱紙)を収容する記録紙収容部17が形成されている。記録紙Pは、ロール状に巻回された状態で記録紙収容部17内に収容されている。
プリンタカバー16は、図示しないヒンジ部を介してケーシング本体15に回動可能に連結されている。プリンタカバー16は、記録紙収容部17を開閉する。ケーシング11のうち、記録紙収容部17の開口縁とプリンタカバー16の先端縁との間には、記録紙Pを外部に排出する排出口18が形成されている。
入力表示部12は、ケーシング11の表面に配置されている。入力表示部12は、例えばタッチパネルである。入力表示部12は、画面上に各種情報を表示するとともに、画面上に表示される情報を操作可能とされている。
【0019】
(第1実施形態)
<サーマルプリンタ>
サーマルプリンタ13は、ケーシング11内において、排出口18に隣接した位置に搭載されている。サーマルプリンタ13は、記録紙収容部17から送り出される記録紙Pに対して情報を印刷するとともに、排出口18を通して記録紙Pを排出する。
【0020】
図2は、サーマルプリンタ13の斜視図である。図3は、サーマルプリンタ13の分解斜視図である。
図2図3に示すように、サーマルプリンタ13は、サーマルヘッド21を有するヘッドユニット22と、プラテンローラ23と、を備えている。図1に示す例において、ヘッドユニット22はケーシング本体15に組み付けられている。プラテンローラ23は、プリンタカバー16に回転可能に支持されている。この場合、ヘッドユニット22及びプラテンローラ23は、プリンタカバー16の開閉に伴い分離可能に組み合わされる。そして、ヘッドユニット22及びプラテンローラ23は、プリンタカバー16の閉位置において、上述した排出口18を挟んで対向する。なお、以下の説明では、プラテンローラ23の軸線方向をX方向(第1方向)とし、X方向に直交する2方向をそれぞれY方向、Z方向(第2方向)として説明する。また、以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印方向をプラス(+)方向とし、矢印とは反対の方向をマイナス(−)方向として説明する。
【0021】
図3に示すように、ヘッドユニット22のフレーム31は、Y方向から見た正面視で+Z方向に向けて開放されたU字状に形成されている。具体的に、フレーム31は、X方向に延びる基部32と、基部32におけるX方向の両端部に連設された第1側板部33及び第2側板部34と、を備えている。
基部32は、基部32のうち+Y方向に位置するガイド壁35と、ガイド壁35に対して−Y方向に位置する背面板36(図4参照)と、を有している。ガイド壁35における+Y方向を向く面は、+Z方向に向けて記録紙Pを案内する通紙面を構成している。通紙面は、−Y方向に向けて凸の湾曲面とされている。
【0022】
図4は、図2のIV−IV線に相当する断面図である。
図4に示すように、背面板36は、X方向の中央部がガイド壁35に対してY方向に間隔をあけて対向配置されている。一方、背面板36におけるX方向の両端部は、ガイド壁35に連なっている。なお、背面板36における+Z方向端縁は、ガイド壁35における+Z方向端縁に対して−Z方向に位置している。背面板36における−Z方向端縁は、ガイド壁35における−Z方向端縁に対して+Z方向に位置している。
【0023】
図3に示すように、まず第2側板部34は、基部32(ガイド壁35及び背面板36)における+X方向端部に連設されている。第2側板部34のうち、基部32に対して+Zに突出する部分は、第2軸支持部37を構成している。第2軸支持部37における+Z方向端縁には、−Z方向に窪む第2ローラ収容溝38が形成されている。
【0024】
第1側板部33は、基部32における−X方向端部に連なっている。第1側板部33のうち、基部32に対して+Z方向に突出する部分は、第1軸支持部41を構成している。第1軸支持部41の+Z方向端縁には、−Z方向に窪む第1ローラ収容溝42が形成されている。第1側板部33のうち、基部32に対して−Z方向に突出する部分は、モータ支持部(駆動支持部)43を構成している。
【0025】
図5は、サーマルプリンタ13を−Z方向から見た斜視図である。
図5に示すように、モータ支持部43と基部32との接続部分(モータ支持部43の+X方向端面と基部32の−Z方向端面とのなす角部)には、−Z方向に突出するリブ44が形成されている。リブ44は、モータ支持部43と基部32との接続部分において、Y方向に間隔をあけて複数形成されている。各リブ44は、Y方向から見た正面視で三角形状に形成されている。リブ44は、モータ支持部43における+Z方向端部から基部32における−X方向端部に至る範囲に形成されている。なお、リブ44の形状や数等は、適宜変更が可能である。
【0026】
図3に示すように、サーマルヘッド21は、Y方向を厚さ方向とし、X方向に延びる板状とされている。サーマルヘッド21の+Y方向端面には、複数の発熱素子21aがX方向に間隔をあけて配列されている。サーマルヘッド21は、フレキシブル基板45を介して図示しない制御部等に接続されている。サーマルヘッド21は、サーマルヘッド21上に搭載された図示しないドライバICが制御部からの信号に基づいて発熱素子21aの発熱を制御することで、記録紙Pに対して印刷を行う。
【0027】
サーマルヘッド21は、フレーム31のうちローラ収容溝38,42に対して−Y方向に位置する部分で回動可能に支持されたヘッド支持板46に固定されている。ヘッド支持板46は、Y方向を厚さ方向とし、X方向に延びる板状とされている。サーマルヘッド21は、ヘッド支持板46における+Y方向端面に貼り付けられている。ヘッド支持板46とフレーム31との間には、図示しない付勢部材が介在している。付勢部材は、ヘッド支持板46を+Y方向に付勢している。これにより、サーマルヘッド21は、プラテンローラ23に押し付けられている。
【0028】
プラテンローラ23は、サーマルヘッド21との間に記録紙Pを挟んで記録紙Pを排出口18に向けて搬送する。具体的に、プラテンローラ23は、プラテン軸51と、ローラ本体52と、を備えている。
プラテン軸51は、X方向に延在している。プラテン軸51におけるX方向の両端部には、第1軸受53及び第2軸受54がそれぞれ装着されている。各軸受53,54は、上述したローラ収容溝38,42内に各別に保持されている。これにより、プラテンローラ23は、X方向に延びる軸線周りに回転可能に、かつフレーム31に対して着脱可能に軸支持部37,41(フレーム31)に支持されている。プラテン軸51のうち、第1軸受53に対して−X方向に位置する部分には、従動ギヤ56が設けられている。従動ギヤ56は、プラテンローラ23がローラ収容溝38,42内に保持された状態において、第1軸支持部41よりも−X方向に位置している。
【0029】
ローラ本体52は、ゴム等により形成されている。ローラ本体52は、プラテン軸51のうちX方向の両端部以外の部分に外装されている。ローラ本体52の外周面は、上述したサーマルヘッド21に接触している。
【0030】
図5に示すように、上述したフレーム31のモータ支持部43に対して+X方向に位置する部分には、モータ(駆動源)61が配置されている。モータ61は、X方向に延びる回転軸61aと同軸上に配置されたロータ及びステータ(ともに不図示)がモータケース62内に収容されて構成されている。モータ61は、フレキシブル基板45を介して制御部に接続されている。
【0031】
上述したモータケース62は、ケース本体71と、モータフランジ(フランジ部)72と、を有している。
ケース本体71は、−X方向に開口する有底筒状に形成されている。
モータフランジ72は、ケース本体71における−X方向端縁に溶接等によって固定されている。図4に示すように、モータフランジ72は、ケース本体71の開口部を閉塞するリングプレート73を備えている。リングプレート73の内側には、回転軸61aがX方向に貫通している。リングプレート73のうち、回転軸61aの周方向における一部には、回転軸61aの径方向に突出する取付片74が周方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、ケース本体71及びモータフランジ72は、同一の材料により一体形成しても構わない。
【0032】
図3に示すように、X方向におけるモータ61とモータ支持部43との間には、モータ61の動力を減速する第1減速機構(減速機構)77が配置されている。第1減速機構77は、例えば遊星歯車機構等である。モータ61及び第1減速機構77は、図4に示すビス(締結部材)80によってモータ支持部43に共締めされている。具体的に、ビス80は、モータ支持部43、第1減速機構77を貫通して、モータ61の取付片74に螺着されている。これにより、本実施形態のモータ61及び第1減速機構77は、モータ支持部43に片持ち状に支持されている。なお、図示の例では、2本のビス80を用いてモータ61及び第1減速機構77を固定しているが、ビス80の本数やレイアウト等は適宜変更が可能である。また、ビス80以外の方法によってモータ61をモータ支持部43に固定しても構わない。
【0033】
図3に示すように、第1減速機構77には、−X方向に向けて出力ギヤ78が突設されている。出力ギヤ78は、モータ支持部43に形成された貫通孔43aを通してモータ支持部43に対して−X方向に突出している。
【0034】
上述した第1側板部33に対して−X方向に位置する部分には、第2減速機構79が配置されている。第2減速機構79は、2段ギヤ等を含む輪列機構である。第2減速機構79は、第1減速機構77の出力ギヤ78と、プラテンローラ23の従動ギヤ56と、の間を接続している。なお、図2に示すように、第2減速機構79は、ギヤカバー88によって−X方向から覆われている。
【0035】
ここで、図4に示すように、上述したリングプレート73の外周縁のうち、+Z方向に位置する部分には、係合部81が形成されている。係合部81は、X方向から見た側面視でL字状に形成されている。具体的に、係合部81は、リングプレート73から+Z方向に突出する脚部82と、脚部82の+Z方向端部に連なる突出部83と、を有している。
突出部83は、脚部82から+Y方向に延在している。すなわち、突出部83は、X方向から見た側面視で回転軸61aを中心とする仮想円の接線方向における一方に延在している。突出部83の+Z方向端縁は、+Y方向に向かうに従い−Z方向に傾斜している。一方、突出部83の−Z方向端縁は、+Y方向に直線状に延在している。
【0036】
上述した基部32のガイド壁35のうち、突出部83とY方向で対向する部分には、突出部83を収容する被係合部85が形成されている。被係合部85は、ガイド壁35をY方向に貫通している(図2図3参照)。なお、被係合部85は、少なくとも−Y方向(回転軸61aを中心とする仮想円の接線方向における他方)に開口していれば、ガイド壁35を貫通していなくても構わない。
【0037】
上述した突出部83の−Z方向端縁は、被係合部85内において、被係合部85の内面にZ方向で対向している。これにより、突出部83は、被係合部85の内面に+Z方向から係合可能に構成されている。そして、本実施形態では、係合部81及び被係合部85によってフレーム31に対するモータ61の−Z方向への変位を規制する規制部91を構成している。なお、突出部83の−Z方向端縁は、被係合部85の内面に予め当接していても構わない。
【0038】
[携帯型端末の動作方法]
次に、上述した携帯型端末1の動作方法について説明する。なお、以下の説明において、プラテンローラ23とサーマルヘッド21との間には、記録紙Pの先端部が挟み込まれているものとする。
携帯型端末1においては、入力表示部12を操作することで、記録紙Pへの印刷が開始する。具体的には、フレキシブル基板45等を介して制御部からモータ61に信号が出力されることで、モータ61が回転する。モータ61の動力は、第1減速機構77及び第2減速機構79で減速された後、従動ギヤ56に伝達される。これにより、プラテンローラ23が回転する。すると、プラテンローラ23の外周面とサーマルヘッド21との間に挟まれた記録紙Pが、排出口18に向けて送り出される。
【0039】
プラテンローラ23の回転により記録紙Pが送り出される過程において、フレキシブル基板45を介して制御部からサーマルヘッド21に信号が出力されることで、サーマルヘッド21の発熱素子21aが適宜発熱する。これにより、記録紙Pに対して各種の情報が印刷される。そして、排出口18から排出された記録紙Pは、切断してレシート等に使用される。
【0040】
[作用]
次に、本実施形態のサーマルプリンタ13の作用について説明する。以下の説明では、サーマルプリンタ13の−Z方向を下方として携帯型端末1が落下した際の落下衝撃に対するサーマルプリンタ13の作用について説明する。
サーマルプリンタ13に対して−Z方向から落下荷重等が作用すると、モータ61等(第1減速機構77を含む)が慣性によって基部32に対して−Z方向に変位する場合がある。モータ61が−Z方向に変位すると、モータ支持部43が基部32との接続部分を起点にして−X方向に撓み変形するおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態では、モータ61が−Z方向に変位すると、モータ61の突出部83が被係合部85の内面に+Z方向から係合(当接)する。これにより、基部32に対するモータ61の−Z方向への変位が規制され、モータ支持部43の撓み変形が抑制される。
【0042】
このように、本実施形態では、被係合部85に係合可能とされ、基部32に対するモータ61の−Z方向への変位を規制する係合部81を備える構成とした。
この構成によれば、係合部81と被係合部85との係合によって基部32に対するモータ61の−Z方向への変位が規制されることで、モータ支持部43の撓み変形を抑制できる。そのため、サーマルプリンタ13に作用する落下荷重等によってフレーム31が損傷するのを抑制できる。その結果、耐久性や信頼性に優れたサーマルプリンタ13を提供できる。
【0043】
本実施形態では、上述したようにモータ支持部43とモータ61との間に第1減速機構77が配置されている。この場合には、モータ支持部43にモータ61を直接固定する場合に比べてモータ支持部43とモータ61との距離が長くなる。そのため、落下荷重等が作用した場合に、モータ支持部43と基部32との接続部分に大きなモーメントが作用するおそれがある。
これに対して、本実施形態では、基部32に対するモータ61の変位が規制部91によって規制されるので、モータ支持部43とモータ61との間に第1減速機構77を配置した場合であっても、フレーム31の損傷を確実に抑制できる。この場合には、第1減速機構77をモータ支持部43に対して内側(+X方向)に配置できるので、フレーム31のうち第1側板部33に対して−X方向の寸法を縮小できる。その結果、サーマルプリンタ13のX方向における小型化を図ることができる。
【0044】
本実施形態では、モータフランジ72に一体で形成された係合部81が、基部32に形成された被係合部85内に収容されるため、規制部91の追加に伴う部品点数の増加を抑制できる。
【0045】
本実施形態では、係合部81(突出部83)が回転軸61aを中心とする仮想円の接線方向(+Y方向)に突出し、被係合部85が接線方向(−Y方向)に開口している構成とした。
この構成によれば、モータ61を回転軸61a周りに回転させながらフレーム31に組み付けることで、突出部83を被係合部85内に進入させることができる。これにより、係合部81の形成に伴う組付性の低下を抑制できる。
【0046】
そして、本実施形態の携帯型端末1では、上述したサーマルプリンタ13を備えているため、耐久性及び信頼性に優れた携帯型端末1を提供できる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、係合部81及び被係合部85がY方向に延在する構成について説明したが、基部32に対するモータ61の−Z方向への変位を規制する構成であれば、係合部81及び被係合部85は例えばX方向に延在していても構わない。
上述した実施形態では、係合部81がモータフランジ72に一体に形成された構成について説明したが、この構成のみに限らず、モータフランジ72とは別体で係合部81を形成しても構わない。
同様に、被係合部85についても、基部32に一体で形成しても、基部32とは別体で形成されていても構わない。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図6は、第2実施形態に係るサーマルプリンタ100を−Y方向から見た拡大背面図である。本実施形態のサーマルプリンタ100では、基部32に対するモータ61の変位を、ビス110を用いて規制する点で上述した実施形態と相違している。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図6に示すサーマルプリンタ100において、ケース本体71の+X方向端部にはエンドプレート101が設けられている。エンドプレート101は、ケース本体71を間に挟んでモータフランジ72とX方向で対向している。エンドプレート101は、X方向から見た側面視でケース本体71の外形よりも大きくなっている。なお、エンドプレート101は、ケース本体71に一体で設けられていても、ケース本体71とは別体で設けられていても構わない。
【0049】
本実施形態において、ビス110,111は、モータ支持部43、第1減速機構77、モータ61の取付片74を貫通するとともに、エンドプレート101にそれぞれ螺着されている。これにより、モータ61及び第1減速機構77が、モータ支持部43に片持ち状に支持されている。図示の例において、各ビス110,111は、エンドプレート101をX方向に貫通している。各ビス110,111のうち、+Z方向に位置するビス(以下、第1ビス110という。)におけるエンドプレート101に対して+X方向に突出する部分は、係合部110aを構成している。
【0050】
ここで、基部32のうち、エンドプレート101よりも+X方向に位置する部分には、−Z方向に突出する係合片(被係合部)120が形成されている。係合片120のうち、X方向から見た側面視で上述した第1ビス110と重なり合う位置には、第1ビス110が挿通された挿通孔121が形成されている。第1ビス110の係合部110aは、挿通孔121内において、挿通孔121の内面にZ方向で対向している。これにより、第1ビス110は、挿通孔121の内面に+Z方向から係合可能に構成されている。そして、本実施形態では、第1ビス110及び係合片120によって基部32に対するモータ61の−Z方向への変位を規制する規制部125を構成している。なお、本実施形態では、第1ビス110の係合部110aが挿通孔121内で係合される構成について説明したが、この構成のみに限らず、第1ビス110と係合片120とが係合可能であれば構わない。
【0051】
本実施形態においても、規制部125によって基部32に対するモータ61の−Z方向への変位が規制されることで、モータ支持部43の撓み変形を抑制できる。
特に、本実施形態では、モータ61に対して+X方向に規制部125を設ける構成とした。この構成によれば、モータ支持部43から離れた位置(落下荷重等が作用した際に変位が大きい位置)に規制部125を配置することで、基部32に対するモータ61の変位を効果的に抑制できる。
【0052】
本実施形態では、第1ビス110に対してエンドプレート101から突出した部分が係合部110aを構成しているので、係合部110aの追加に伴う部品点数の増加を抑制できる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、第1ビス110をエンドプレート101に螺着する構成について説明したが、これに限らず、エンドプレート101を設けない構成としても構わない。この場合には、第1実施形態と同様に第1ビス110をモータフランジ72(取付片74)に螺着した上で、第1ビス110のうちモータフランジ72よりも+X方向に突出した部分を係合片120に係合可能に構成すれば構わない。
上述した実施形態では、モータ61に対して+X方向に規制部125が配置された構成について説明したが、この構成のみに限らず、モータフランジ72よりも+X方向に規制部125が配置されていれば構わない。
上述した実施形態では、各ビス110,111のうち、+Z方向に位置する第1ビス110を係合片120に係合させる構成について説明したが、この構成のみに限られない。すなわち、各ビス110,111のうち、少なくとも一方のビスが係合片120に係合可能であれば構わない。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態に係るサーマルプリンタ200を+X方向から見た拡大側面図である。本実施形態のサーマルプリンタ200では、モータ61を保持する保持部材210に係合部214,215を形成した点で、上述した実施形態と相違している。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図7に示すサーマルプリンタ200において、保持部材210は、モータ61の+X方向端部と基部32とを連結している。保持部材210は、X方向から見た側面視で+Z方向に開口するU字状に形成されている。具体的に、保持部材210は、保持部211と、保持部211に連なる一対のアーム部212,213と、を備えている。なお、保持部材210は、弾性変形可能な材料によって一体に形成されている。
【0055】
保持部211は、X方向から見た側面視で円弧状に形成されている。保持部211は、モータ61(ケース本体71)における+X方向端部を−Z方向から取り囲んでいる。これにより、保持部211は、モータ61を着脱可能に保持している。図示の例において、保持部211は、ケース本体71のうち+X方向に突出するボス部220を保持している。
【0056】
各アーム部212,213は、保持部211の両端部からそれぞれ+Z方向に延在している。各アーム部212,213の+Z方向端部には、係合部214,215が突設されている。係合部214,215は、各アーム部212,213においてY方向で互いに離間する向きに突出している。各係合部214,215は、基部32に形成された被係合部221,222にそれぞれ+Z方向から係合可能とされている。そして、本実施形態では、保持部材210及び被係合部221,222によって基部32に対するモータ61の−Z方向への変位を規制する規制部225を構成している。
【0057】
本実施形態によれば、モータ支持部43から離れた位置(落下荷重等が作用した際に変位が大きい位置)に規制部225を配置することで、基部32に対するモータ61の変位を効果的に抑制できる。
特に、本実施形態では、モータ61と別体の保持部材210を介してモータ61が基部32に係合されるので、保持部材210の設計の自由度を向上させることができる。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
上述した実施形態では、携帯型端末1の一例として決済端末を用いた場合について説明したが、この構成のみに限らず、種々の携帯型端末に本発明の構成を適用しても構わない。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1…携帯型端末
13.100.200…サーマルプリンタ
21…サーマルヘッド
23…プラテンローラ
31…フレーム
32…基部
33…第1側板部
34…第2側板部
37…第2軸支持部
41…第1軸支持部
43…モータ支持部(駆動支持部)
61…モータ(駆動源)
61a…回転軸
72…モータフランジ(フランジ部)
77…第1減速機構(減速機構)
80,110,111…ビス(締結部材)
81,214,215…係合部
85…被係合部
110a…係合部
120…係合片(被係合部)
210…保持部材
221…被係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7