特許第6685841号(P6685841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685841
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】缶体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/26 20060101AFI20200413BHJP
   B21D 37/02 20060101ALI20200413BHJP
   B65D 8/04 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B21D51/26 Z
   B21D51/26 Q
   B21D37/02 Z
   B21D51/26 B
   B65D8/04 G
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-109186(P2016-109186)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-213580(P2017-213580A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208455
【氏名又は名称】大和製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】望月 一之
(72)【発明者】
【氏名】河田 崇
(72)【発明者】
【氏名】宮下 理央
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−6209(JP,A)
【文献】 特開昭60−92028(JP,A)
【文献】 特開昭63−16823(JP,A)
【文献】 米国特許第5727414(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/26
B65D 6/00 − 13/02
B21D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に構成された缶胴に、径が縮小する段部を有する段ネックを絞り加工により形成し、
前記缶胴をエキスパンド加工することで、前記缶胴を拡径成形して胴部を形成するとともに、前記段ネックを径が次第に小さくなるスムースネックに成形する、缶体の製造方法。
【請求項2】
複数回の前記絞り加工により複数の前記段部を形成し、
前記エキスパンド加工により複数の前記段部を滑らかに傾斜または湾曲するように連続させ、前記スムースネックを形成する、請求項1記載の缶体の製造方法。
【請求項3】
前記スムースネックは、軸方向の一方に向けて径が小さくなるように湾曲また傾斜する成形面を有する、請求項1記載の缶体の製造方法。
【請求項4】
前記エキスパンド加工において、一端側が内方に向かうように傾斜または湾曲し前記段ネック部の内面に当接するネック成形部と、前記ネック成形部の他端側に配され前記胴部の内面に当接する胴成形部と、を有するとともに、周方向に配列される、複数の割型を、前記缶胴内において径方向外方へ移動させることで、前記缶胴を外方に膨出させ、
前記移動の際には、前記ネック成形部が前記段ネックの内面に当接するのと同時またはそれよりも先に、前記胴成形部が前記胴部の内面に当接する、請求項2記載の缶体の製造方法。
【請求項5】
前記スムースネックは、前記胴部から最小径部にかけて傾斜角の異なる複数の傾斜部を有し、前記最小径部側の傾斜角が前記胴部側の傾斜角よりも大きい、請求項1記載の缶体の製造方法。
【請求項6】
前記エキスパンド加工において、前記缶胴を拡径成形して胴部を形成する際に、成形型に形成された凹凸面に対応する凹凸構造を前記胴部に形成する、請求項1記載の缶体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3ピース缶等の缶体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や食品を収容する缶体は、例えば筒状に構成される缶胴と、缶胴の一方の開口を塞ぐ蓋体と、缶胴の他方の開口を塞ぐ底体と、を備えている。このような缶体において、例えば蓋体を小さくしてコストを節減するなどの理由から、缶胴の端部を胴部よりも小径となるように縮径させてネック部を形成することがある。ネック部の形状は、例えば1つ以上の段部を備える段ネックや、なだらかに縮径するスムースネックがある。スムースネックの製造方法として、例えば缶胴の軸線方向に沿って移動する金型を用いて、胴部の端部を少しずつ縮小させるダイネック方式(例えば、特許文献1参照)や、段ネックの成形後にロールで段ネックの内外面を挟み込んでスムースネック形状に成形するスピンロールネック方式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−243666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した缶体の製造方法では、以下の問題があった。即ち、上述のダイネック方式は、成形工程数が多くなる。一方、上述のスピンロールネック方式は、寸法安定性が低い。
【0005】
そこで、本発明は、工程数が少なく寸法安定性が高い缶体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の缶体の製造方法は次のように構成されている。
【0007】
本発明の一形態にかかる缶体の製造方法は、筒状に構成された缶胴に、径が縮小する段部を有する段ネックを絞り加工により形成し、前記缶胴をエキスパンド加工することで、前記缶胴を拡径成形して胴部を形成するとともに、前記段ネックを径が次第に小さくなるスムースネックに成形する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば工程数が少なく寸法安定性が高い缶体の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る缶体の構成を示す説明図。
図2】同缶体の製造方法を示す説明図。
図3】同缶体の製造方法のダイネック工程を示す説明図。
図4】同缶体の製造方法のエキスパンド工程を示す説明図。
図5】同実施形態にかかるエキスパンド成形装置を示す説明図。
図6】本発明の他の実施形態にかかる缶体の製造方法を示す説明図。
図7】同缶体の製造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る缶体10、缶体10の製造装置、及び缶体10の製造方法について図1乃至図5を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る缶体10を示す説明図である。図2及び図3は缶体10の製造方法を、それぞれ側面視及び断面視で示す説明図である。図4は缶体10の製造方法に用いられるエキスパンド装置の構成を示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、缶体10は、いわゆる3ピース缶である。缶体10は、筒状に構成された缶胴11と、缶胴11の一方の開口を塞ぐ缶蓋12と、缶胴11の他方の開口を塞ぐ缶底13と、を備えている。缶体10は、スチールやアルミなどの金属材料で構成される。
【0012】
図1及び2に示すように、缶胴11は、金属材料から、軸方向両端に開口を有する円筒状に構成される。缶胴11は例えば樹脂皮膜が両面に形成された表面処理鋼板等を用いて構成される。本実施形態においては、例えば板厚が0.12mm〜0.21mmの表面処理鋼板を用いる。
【0013】
缶胴11は、円筒状の胴部21と、胴部21の軸方向一方側の開口縁近傍の所定箇所が縮径されて成るスムースネック22と、胴部21の軸方向他方側の開口縁近傍の所定箇所において胴部21よりも小径に構成された小径部23と、スムースネック22の上方に配される開口縁26と、小径部23の下方に配される下開口縁27と、を有する。
【0014】
なお、缶胴11は、周方複数に分割された成形領域20aと、複数の成形領域20aの間で軸方向に沿う筋状の複数の継目領域20bと、を周方向において交互に連続して一体に備える。成形領域20aは、後述するエキスパンド型の複数の割型58の成形面58Aに当接して張出成形された部位である。継目領域20bは、割型58の隙間に対応して形成される。
【0015】
胴部21は、所定の径を有する円筒状に構成され、その軸方向の中央付近に凹凸構造としてのビード部24を有している。胴部21は、例えばφ52mm〜65mmの円筒状に構成されている。
【0016】
ビード部24は、缶体10の補強のためにエキスパンド成形時の割型58の凹凸面に沿って形成され、例えば周方向に沿って延びる3本の溝24aを有している。
【0017】
スムースネック22は、後述するエキスパンド型の割型58の成形面58Aに沿う形状であって、胴部21の上端から最小径部22aに向けて、径が次第に小さくなるように傾斜または湾曲する成形面により構成される。スムースネック22は、胴部から開口縁26側の最小径部22aにかけて、傾斜角の異なる複数の傾斜部を有し、軸方向に対する最小径部22a側の傾斜角が胴部21側の傾斜角よりも大きく構成されている。具体的には、スムースネック22は胴部21の一端側から軸方向一端及び内方に向けて傾斜する第1の傾斜部28と、第1の傾斜部28よりも内方に大きく傾斜する第2の傾斜部29と、を有する。
【0018】
スムースネック22の縮径率、すなわち胴部21の径に対してスムースネック22の最小径部22aである開口縁26の径が縮径された比率は、10%〜20%であり、好ましくは15%〜20%程度に構成されている。
【0019】
小径部23は、胴部21の下端から缶胴11の下方の開口縁にかけてなだらかに縮径する湾曲面を有している。小径部23の縮径率、すなわち胴部21に対して小径部23の開口縁27の径が縮径された比率は、5%程度に構成されている。
【0020】
以上のように構成された缶体10の製造方法について、図2乃至図4を参照して説明する。缶体10の製造方法は、胴形成工程と、段ネック形成工程と、エキスパンド工程と、組付け工程と、を備える。
【0021】
胴形成工程においては、金属の板状部材を円筒状に湾曲形成し、その両端縁同士を重ね合せて溶接することで、円筒状の缶胴11を構成する。
【0022】
段ネック形成工程においては、図3に示すように、例えばダイネック方式の絞り装置40を用いて、缶胴11の端部の所定箇所に、径が縮小する段部31〜33を有する段ネック30を、絞り加工により形成する。
【0023】
絞り装置40は、例えば、缶胴11の内部に配された円筒状の内金型41と、缶胴11の外面側に配されたリング状の外金型42と、缶胴11とこれらの型41,42を相対移動させる駆動機構と、を備える。外金型42は、段部31〜33と同形状に湾曲した絞り成形面42aを有している。
【0024】
段ネック形成工程では、この絞り装置40を用いて、内金型41と外金型42の間に缶胴11を挟持し、缶胴11を外金型の絞り成形面42aに押しつけるように軸方向に移動させることで、胴部21の端縁を変形させ、1段ずつ絞り加工し、複数回の絞り加工を行うことで、複数の段部を形成する。例えば本実施形態においては、3回の絞り加工により3つの段部31〜33を形成する。
【0025】
段ネック形成工程後の缶胴11は、胴部21から内方に突出する第1の段部31と、第1の段部31の上方にてさらに内方に突出する第2の段部32と、第2の段部32の上方にてさらに内方に突出する第3の段部33と、を備える。第3の段部33の上方の領域は再び軸方向に延びる開口縁26を構成する。
【0026】
このような段ネック30を有する缶胴11は、各段部31〜33においてそれぞれ内方に突出する。この段ネック形成工程後の缶胴11は複数の段部31がそれぞれ5%ずつ縮径し、3つの段部31が連続して形成されることで段ネック30全体として15%の縮径率となっている。
【0027】
スムースネック形成工程は、段ネック30を有する缶胴11をエキスパンド加工することにより、缶胴11全体を拡径成形して所定の径を有する胴部21を形成するとともに、段部31を有するネック部を、径が次第に小さくなるスムースネック22に成形する。すなわち、胴部21を形成すると同時に、段差を無くして3つの段部31〜33を滑らかに連続させ、スムースネック22を成形する。
【0028】
エキスパンド工程において、例えば図5に示すエキスパンド成形装置50を用いる。エキスパンド成形装置50は、複数の割型58で構成される成形型としての可動型51と、可動型51の移動方向を案内する案内装置と、可動型51を駆動させる駆動装置54と、駆動装置54を制御する制御装置55と、を備えている。
【0029】
エキスパンド成形装置50は、複数の割型58から構成される可動型51を円筒状の缶胴11内に挿入し、駆動装置54によって各割型58を径方向に移動させることにより、缶胴11を張り出し成形可能に形成されている。
【0030】
可動型51は、その軸心から径方向に移動可能な複数の割型58を備えている。可動型51は、その軸心を中心に放射状に分割された複数の割型58により、挿入穴51aを有する中空の樽型形状に形成されている。
【0031】
可動型51は、複数の割型58が可動型51の軸心から径方向に離間する方向に移動することで、外径が拡径し、各割型58の外面で構成される成形面58Aが缶胴11を成形する形状となるように割型58が配置される。可動型51は、割型58が可動型51の軸心から径方向に離間する方向に移動することで、割型58間には間隙が形成される。
【0032】
割型58は、複数、例えば、本実施の形態においては10個設けられる。複数の割型58は、可動型51の外周面を構成する成形面58Aと、可動型51の中空部を構成し駆動装置54のくさび軸54aの動きを受ける受け面59と、を備える。10個の割型58が一体となり、その成形面58Aが円形に連続することで、可動型51として、樽型形状の外面を構成する。
【0033】
成形面58Aは、例えばネック部に当接するネック成形部58aと、胴部21に当接する胴成形部58bと、小径部23に対向する小径部対向部58cと、を軸方向に順番に備える。
【0034】
ネック成形部58aは、所望のスムースネック22を構成する形状であり、例えば第1の傾斜面58dと第2の傾斜面58eとを連続して有する。具体的には、ネック成形部58aは、胴成形部58bの一端側から軸方向一端及び内方に向けて傾斜する第1の傾斜面58dと、第1の傾斜面58dよりも内方に大きく傾斜する第2の傾斜面58eと、を有する。
【0035】
胴成形部58bは軸方向に沿う平面部58fと、周方向に沿う凹凸面58gとを有している。凹凸面58gはエキスパンド加工の際に、胴部21のビード部24を構成する形状であり、例えば周方向に沿う3本の溝を有している。
【0036】
小径部対向部58cは、小径部23を構成する湾曲形状であり、例えば10個の小径部対向部58cが円形に配されることで下方に凸となる椀状の湾曲面58hを構成する。
【0037】
割型58は、径方向外方への移動の際に、ネック成形部58aが段ネック30の内面に当接するのと同時またはそれよりも先に、胴成形部58bが前記胴部21の内面に接触するように構成されている。具体的には、例えば、移動前の初期位置におけるネック成形部58aと段ネック30の内面との径方向の間隙が、胴成形部58bと胴部21の内面との径方向の間隙のよりも大きく設定されている。
【0038】
受け面59は、軸方向に沿うとともに円弧状に湾曲した面であって、複数の割型58の受け面59が円形に連続することで、くさび軸54aが挿入される挿入穴51aを形成する。
【0039】
駆動装置54は、くさび軸54aと、くさび軸54aを駆動する駆動手段54bと、を備えている。くさび軸54aは、駆動手段54bに接続される。
【0040】
くさび軸54aは角錐状に構成され、軸方向及び径方向に傾斜したテーパ状の外面を有している。くさび軸54aは挿入穴51aに挿入されて軸方向に移動することで、挿入穴51aの受け面59を外方に押圧して外方に移動させる。すなわち、くさび軸54aのテーパ状の外面によって、軸方向の力を、割型58の径方向における移動に変換する。
【0041】
駆動手段54bは、くさび軸54aを軸心方向に移動させることが可能に形成されている。
【0042】
制御装置55は、駆動手段54bを制御することで、くさび軸54aを、可動型51に対して往復移動させる。
【0043】
案内装置は、例えば割型58に係合するとともに径方向に沿って配されるレール機構を備えている。案内装置は例えば割型58の移動方向を径方向に案内するとともに、軸方向における割型58移動を規制する。
【0044】
以上のように構成されたエキスパンド成形装置50は、制御装置55の制御によって駆動手段54bを駆動することで、くさび軸54aを挿入孔に挿入する。くさび軸54aが次第に上方に移動すると、くさび軸54aの外面によって受け面59が押圧されることで、複数の割型58が案内装置に案内されて外方へ移動する。
【0045】
割型58が所定位置に至ると、まず胴成形部58bが胴部21の内面に当接する。そして胴部21の内面を外方に押圧することで、胴部21を外方に膨出するように成形する。例えば拡径率は4%〜15%程度である。
【0046】
このとき、胴成形部58bに形成された凹凸面58gによって、胴部21に複数の溝24aを有するビード部24が同時に形成される。また、胴部21への当接と同時かそれよりも後に、ネック成形部58aが段ネック30の内面に当接する。そして、ネック成形部58aによって段ネック30の内面を外方に押圧することで、段ネック30をネック成形部58aの成形面58Aの形状に沿って外方に湾曲するように膨出成形する。すなわち、段部31が複数形成されていた段ネック30は、内方に突出する複数の段差が緩やかに連続して次第に縮径するスムースネック22となる。
【0047】
さらに組付け工程として、缶胴11の両端の開口縁26、27を外方に折曲形成してフランジを形成し、上端のフランジにステイオンタブ式の缶蓋12を、下端のフランジに缶底13を、それぞれ巻締め固定することで、缶体10が完成する。
【0048】
本実施形態にかかる缶体10の製造方法は、以下の効果を奏する。すなわち、絞り加工によって段部31を有する段ネック30を形成した後、エキスパンド加工により缶胴11を膨出加工する工程で、段部31をスムースネック22にすることができる。したがって、工程数が少なく、かつ皺ができにくい。
【0049】
ここで、例えばダイネック方式などで絞りを形成する場合には、皺の発生を防止するために1度の絞り加工での縮径率を低く抑える必要がある。このため、ネック部全体での縮径率が大きい場合には絞り加工の回数を増やす必要がある。一方、上記実施形態にかかる缶体10の製造方法によれば、エキスパンド加工の前に段ネック形成工程で段ネック30を形成してから、エキスパンド加工で胴部21を大径にすることで、胴部21とスムースネック22の最小径部22aとの比率である縮径率を稼ぐことができる。また、これに加え、同じエキスパンド加工において段部31をスムースネック22に成形できるため、工程数の増加を抑制できる。したがって、工程数が少なく寸法安定性が高い缶体の製造方法を提供することが可能となる。
【0050】
また、上記実施形態にかかる缶体10の製造方法によれば、胴部21を拡径するエキスパンド加工にてビード部24も形成することが可能であるため、処理効率が良く、工程数及び製造コストを低減できる。
【0051】
また、上記実施形態にかかる缶体10の製造方法によれば、エキスパンド加工の前段階に段ネック30形成用の絞り装置40を設けるだけで、工程数が少なく寸法安定性の高い缶体10の製造方法を実現することができる。
【0052】
ここで、例えば本実施形態にかかる缶胴11は、胴部21における径が50mm、最小径部22aである上端の開口縁の径は43mmとすれば、例えばネック部全体での縮径率は14%程度となる。一般に、板厚0.15程度でφ50程度の場合、一回の絞り工程において形状不良無く形成できる縮径率は5%程度である。本実施形態においては3段階に分けて絞り加工を行い、さらにエキスパンド工程にて胴部21を拡径することでも縮径率をかせぐことができるため、20%程度の縮径率を少ない工程で実現でき、さらに皺などの形状不良の発生を抑制できる。
【0053】
上記実施形態にかかる缶体10の製造方法において、エキスパンド工程における可動型51の形状は胴部21がネック部と同時またはそれよりも先に型に当接する工程としたことで、缶体10に加えられた径方向の力により、缶体10の浮き上がりを防止することができ、高精度の成形が可能となる。また、缶体10を保持するための機構を簡略化することが可能となる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば上述した第実施形態において、段ネック形成工程として、3段階の段部31〜33を形成する例を示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態として図6及び図7に示す缶体10の製造方法においては、ダイネック方式で1つの段部31を有する段ネック30Aを形成し、段ネック30Aを有する缶胴11Aをエキスパンド加工によって拡径することで、スムースネック22Aを形成する。
【0055】
また、スムースネック22及びネック成形部58aの形状も上述の第1実施形態に限られるものではない。上記第1実施形態において、例えば複数段階で傾斜するスムースネック22を例示したが、これに限られるものではなく、例えば他の実施形態として図6及び図7に示される缶胴11Aは、胴部21の上部から最小径部22aに向けて次第に縮径する湾曲面を有するスムースネック22Aを備える。この場合にあっても上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
また、上記実施形態においてはテーパ状の外面を有するくさび軸54aを、上方が縮径するテーパ状の挿入穴51aに挿入する例を示したがこれに限られるものではない。例えば挿入穴51aの内面を円筒状に構成してもよい。この場合にも上記実施形態と同様の効果が得られる。また、エキスパンド加工時にくさび軸54aの移動に伴って、段部31が上方に押圧されて缶胴11が浮き上がることを確実に防止するために、缶体10の上部に缶体10を保持する保持装置を設けてもよい。また、エキスパンド加工は、金型を用いたものだけでなく、圧力を用いて拡径するバルジ加工等の製缶技術の一般的な拡径技術であればよい。
【0057】
また傾斜角度などの寸法条件も上記実施形態に限られるものではなく、適宜変更可能である。
また、上述した例では、缶胴11は、溶接部を備える所謂溶接缶である構成を説明したが、これに限定されない。
この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0058】
10…缶体、11…缶胴、12…缶蓋、13…缶底、20a…成形領域、20b…継目領域、21…胴部、22…スムースネック、22a…最小径部、23…小径部、24…ビード部、24a…溝、26…開口縁、27…開口縁、28…第1の傾斜部、29…第2の傾斜部、30…段ネック、31〜33…段部、40…絞り装置、41…内金型、42…外金型、50…エキスパンド成形装置、51…可動型、51a…挿入穴、54…駆動装置、54a…くさび軸、54b…駆動手段、55…制御装置、58…割型、58a…ネック成形部、58b…胴成形部、58c…小径部対向部、58d…第1の傾斜面、58e…第2の傾斜面、58g…凹凸面、58h…湾曲面、59…受け面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7