(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
起振体と、前記起振体の外周に配置され前記起振体の回転により撓み変形される可撓性を有する外歯歯車と、前記外歯歯車が内接噛合する第1内歯歯車と、前記第1内歯歯車に並設され前記外歯歯車と内接噛合する第2内歯歯車と、を備える撓み噛合い式歯車装置であって、
前記外歯歯車と前記第1内歯歯車の噛合い部および前記外歯歯車と前記第2内歯歯車の噛合い部の少なくとも一方は、第1領域と前記第1領域よりも軸方向内側に位置する第2領域とを有し、
前記第1領域に対応する前記外歯歯車の部分の径方向内側に隙間が設けられ、
前記外歯歯車の歯厚は、同一の歯丈方向位置において、前記第1領域に対応する部分の方が前記第2領域に対応する部分より大きく、
前記外歯歯車の歯丈は、前記第1領域に対応する部分の方が前記第2領域に対応する部分より小さいことを特徴とする撓み噛合い式歯車装置。
起振体と、前記起振体の外周に配置され前記起振体の回転により撓み変形される可撓性を有する外歯歯車と、前記外歯歯車が内接噛合する第1内歯歯車と、前記第1内歯歯車に並設され前記外歯歯車と内接噛合する第2内歯歯車と、を備える撓み噛合い式歯車装置であって、
前記外歯歯車と前記第1内歯歯車の噛合い部および前記外歯歯車と前記第2内歯歯車の噛合い部の少なくとも一方は、第1領域と前記第1領域よりも軸方向内側に位置する第2領域とを有し、
前記第1領域に対応する前記外歯歯車の部分の径方向内側に隙間が設けられ、
前記第1、2内歯歯車の歯厚は、同一の歯丈方向位置において、前記第1領域に対応する部分の方が前記第2領域に対応する部分より大きく、
前記第1、2内歯歯車の歯丈は、前記第1領域に対応する部分の方が前記第2領域に対応する部分より小さいことを特徴とする撓み噛合い式歯車装置。
前記外歯歯車または前記第1、2内歯歯車の前記第2領域に対応する部分の歯丈は、前記第1領域に隣接する部分がそれ以外の部分よりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の撓み噛合い式歯車装置。
前記外歯歯車または前記第1、2内歯歯車の前記第1領域に対応する部分の歯厚は、前記2領域側から軸方向外側に向かうにしたがって大きくなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の撓み噛合い式歯車装置。
前記外歯歯車または前記第1、2内歯歯車の前記第2領域に対応する部分の歯厚は、同一の歯丈方向位置において軸方向に一定であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の撓み噛合い式歯車装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置は、モータの高速回転出力を低速回転出力として取り出す減速機構として好適に用いられる。例えばロボットの関節部分に用いられるアクチュエータの減速機として好適に用いられる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100を示す断面図である。撓み噛合い式歯車装置100は、入力された回転を減速して出力する。撓み噛合い式歯車装置100は、起振体110と、軸受120と、外歯歯車130と、内歯歯車140と、を備える。
【0015】
起振体110は、撓み噛合い式歯車装置100(特に内歯歯車140)の回転軸Rに沿って延在する部材であり、回転軸Rに直交する断面は略楕円形状を有する。起振体110には、回転軸Rを中心とする入力軸孔111が形成されている。不図示の入力軸の一端が入力軸孔111に挿入され、例えば接着または圧入もしくはキー連結等により起振体110と回転方向に連結される。入力軸の他端は、例えばモータ等の回転駆動源に接続される。起振体110は、入力軸の回転に伴って回転する。
【0016】
軸受120は、外歯歯車130を支持する軸受であり、第1軸受120aと、第2軸受120bと、を含む。第1軸受120aは、第2軸受120bよりも軸方向(すなわち回転軸Rと平行な方向)の一方側(
図1では右側)に位置する。第1軸受120aは、内輪部材121の第1部分121aと、複数の第1転動体122aと、第1保持器123aと、第1外輪部材124aと、を含む。第2軸受120bは、内輪部材121の第2部分121bと、複数の第2転動体122bと、第2保持器123bと、第2外輪部材124bと、を含む。
【0017】
内輪部材121は、環状の部材であり、起振体110に外嵌する。内輪部材121は、可撓性を有し、起振体110が嵌ると楕円状に撓められる。内輪部材121は、接着または圧入により起振体110に固定され、起振体110と一体に回転する。内輪部材121は、第1軸受120aおよび第2軸受120bの両方の内輪部材として一体的に形成されている。なお、内輪部材121は、起振体110と一体に形成されてもよい。
【0018】
複数の第1転動体122aはそれぞれ、略円柱形状を有し、中心軸が軸方向を向いた状態で、周方向(すなわち回転軸Rを中心とし回転軸Rに垂直な円の円周に沿った方向)に間隔を空けて設けられる。第1転動体122aは、第1保持器123aにより転動自在に保持され、内輪部材121の第1部分121aの外周面を転走する。第2転動体122bは、第1転動体122aと同様に構成される。複数の第2転動体122bは、第2保持器123bにより転動自在に保持され、内輪部材121の第2部分121bの外周面を転走する。以降では、第1転動体122aと第2転動体122bとをまとめて「転動体122」とも呼ぶ。また、第1保持器123aと第2保持器123bとをまとめて「保持器123」とも呼ぶ。
【0019】
第1外輪部材124aは、複数の第1転動体122aを環囲する。第1外輪部材124aは、可撓性を有し、起振体110が内輪部材121に嵌ると第1転動体122aを介して楕円状に撓められる。第1外輪部材124aは、起振体110が回転すると、起振体110の形状に合わせて連続的に撓み変形する。第2外輪部材124bは、複数の第2転動体122bを環囲する。第2外輪部材124bは、第1外輪部材124aと同様に、可撓性を有し、起振体110が内輪部材121に嵌ると第2転動体122bを介して楕円状に撓められ、起振体110が回転すると起振体110の形状に合わせて連続的に撓み変形する。第1外輪部材124aと第2外輪部材124bは、別体として形成される。なお、第1外輪部材124aと第2外輪部材124bは、一体に形成されてもよい。以降では、第1外輪部材124aと第2外輪部材124bとをまとめて「外輪部材124」とも呼ぶ。
【0020】
外歯歯車130は、可撓性を有する環状の部材であり、その内側には起振体110および軸受120が嵌まる。外歯歯車130は、起振体110および軸受120が嵌まることによって楕円状に撓められる。外歯歯車130は、起振体110が回転すると、起振体110の形状に合わせて連続的に撓み変形する。詳しくは、外歯歯車130は、第1外歯130aと、第2外歯130bと、基材130cと、を含む。第1外歯130aの内周側には第1軸受120aが嵌まり、第2外歯130bの内周側には第2軸受120bが嵌まる。第1外歯130aと第2外歯130bとは単一の基材である基材130cに形成されており、同歯数である。
【0021】
内歯歯車140は、第1内歯歯車140aと、第1内歯歯車140aに並設される第2内歯歯車140bと、を含む。第1内歯歯車140aと第2内歯歯車140bは別体として形成される。第1内歯歯車140aは、剛性を有する環状の部材であり、内周側に第1内歯141aを有する。第1内歯141aは、楕円状に撓められた第1外歯130aを環囲し、起振体110の長軸方向の2領域で第1外歯130aと噛み合う。第1内歯141aは、第1外歯130aよりも多くの歯を有する。例えば、第1内歯141aの歯数は、第1外歯130aよりも「2」だけ多い。第1内歯歯車140aには、軸方向に貫通する複数のボルト挿通孔142aが形成されており、このボルト挿通孔142aを介して不図示の固定壁(例えばロボットの第1部材)が固定される。
【0022】
第2内歯歯車140bは、剛性を有する環状の部材であり、内周側に第2内歯141bを有する。第2内歯141bは、楕円状に撓められた第2外歯130bを環囲し、起振体110の長軸方向の2領域で第2外歯130bと噛み合う。第2内歯141bは、第2外歯130bと同数の歯を有する。第2内歯歯車140bには、軸方向に貫通する複数のボルト挿通孔142bが形成されており、このボルト挿通孔142bを介して不図示の出力装置(例えばロボットの第2部材)が固定される。
【0023】
以上のように構成された撓み噛合い式歯車装置100の動作を説明する。ここでは、第1外歯130aの歯数が100、第2外歯130bの歯数が100、第1内歯141aの歯数が102、第2内歯141bの歯数が100で、第1内歯歯車140aが固定状態にある場合を例に説明する。
【0024】
第1外歯130aが楕円形状の長軸方向の2箇所で第1内歯141aと噛み合っている状態で、入力軸の回転により起振体110が回転すると、これに伴って第1外歯130aと第1内歯141aとの噛み合い位置も周方向に移動する。第1外歯130aと第1内歯141aとは歯数が異なるため、この際、第1内歯141aに対して第1外歯130aが相対的に回転する。第1内歯歯車140aが固定状態にあるため、第1外歯130aは、歯数差に相当する分だけ自転することになる。つまり、起振体110の回転が大幅に減速されて第1外歯130aに出力される。その減速比は以下のようになる。
減速比=(第1外歯130aの歯数−第1内歯141aの歯数)/第1外歯130aの歯数
=(100−102)/100
=−1/50
【0025】
第2外歯130bは、第1外歯130aと一体的に形成されているため、第1外歯130aと一体に回転する。第2外歯130bと第2内歯141bは歯数が同一であるため、相対回転は発生せず、第2外歯130bと第2内歯141bとは一体に回転する。このため、第1外歯130aの自転と同一の回転が第2内歯141bすなわち第2内歯歯車140bに出力される。結果として、第2内歯歯車140bからは起振体110(入力軸)の回転を−1/50に減速した出力を取り出すことができる。
【0026】
続いて、外歯歯車130と内歯歯車140との噛み合いに関する構成についてより詳細に説明する。以下では、まず、実施の形態と比較すべき比較例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車と内歯歯車との噛み合いに関する構成について説明し、その後、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100の外歯歯車130と内歯歯車140との噛み合いに関する構成について説明する。
【0027】
図2(a)、(b)は、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車230を示す図である。
図2(a)は、外歯歯車230を周方向から見た図である。
図2(b)は、
図2(a)のA−A線端面図である。比較例に係る撓み噛合い式歯車装置は、外歯歯車130の代わりに外歯歯車230を備える点を除いて、撓み噛合い式歯車装置100と同様の構成を有する。
【0028】
外歯歯車230は、第1外歯230aと、第2外歯230bと、基材230cと、を含む。第1外歯230a、第2外歯230b、基材230cはそれぞれ、第1外歯130a、第2外歯130b、基材130cに対応する。
【0029】
第1外歯230aは、外歯端部231aと、外歯中央部232aと、を含む。外歯中央部232aは、軸方向で第2外歯230bに隣接する。外歯端部231aは、軸方向で外歯中央部232aよりも第2外歯230bの遠くに位置する。外歯端部231aおよび外歯中央部232aは、同一の歯丈方向位置(すなわち同一の径方向位置)において、外歯端部231aの歯厚T
e1が外歯中央部232aの歯厚T
e2よりも大きくなるよう形成される。本比較例では、外歯中央部232aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e2が軸方向で一定となるよう形成される。また、外歯端部231aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e1が軸方向で変化するよう形成される。具体的には、外歯端部231aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e1が外歯中央部232aとの境界235aで最小で、外歯中央部232aから軸方向に離れるほど線形的に大きくなり、最端部236aで最大となるよう形成される。
【0030】
なお、外歯歯車230は歯切り加工で製作されるため、歯厚を厚くすると、それに伴って歯丈が高くなる。したがって、外歯端部131aは、境界235aから最端部236aに向かうほど、歯丈が高くなっている。
【0031】
第2外歯230bは、外歯端部231bと、外歯中央部232bと、を含む。外歯中央部232bは、軸方向で第1外歯230aに隣接する。外歯端部231bは、軸方向で外歯中央部232bよりも第1外歯230aの遠くに位置する。外歯中央部232b、外歯端部231bはそれぞれ、第1外歯230aの外歯中央部232a、外歯端部231aと同様に形成される。具体的には、外歯端部231bは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e1が外歯中央部232bとの境界235bで最小で、外歯中央部232bから軸方向に離れるほど線形的に大きくなり、最端部236bで最大となるよう形成される。
【0032】
なお、図示は省略するが、第1内歯歯車140aおよび第2内歯歯車140bはいずれも、歯厚が軸方向で一定となるよう形成される。
【0033】
図3(a)、(b)は、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車230と内歯歯車140との噛み合いの様子を示す模式図である。
図3(a)は噛み合い開始時の噛み合いの様子を示し、
図3(b)外歯歯車230に掛かる負荷が増大したときの噛み合いの様子を示す。第1外歯230aと第1内歯歯車140aとの噛合い部250aは、第1領域251aと、第1領域251aよりも軸方向内側に位置する第2領域252aとを含む。第1領域251aは、第1外歯230aの外歯端部231aと第1内歯歯車140aの第1内歯141aとの接触部分であり、第2領域252aは第1外歯230aの外歯中央部232aと第1内歯歯車140aの第1内歯141aとの接触部分である。
【0034】
第2外歯230bと第2内歯歯車140bとの噛合い部250bも同様に、第1領域251bと、第1領域251bよりも軸方向内側に位置する第2領域252bとを含む。第1領域251bは第2外歯230bの外歯端部231bと第2内歯歯車140bの第2内歯141bとの接触部分であり、第2領域252bは第2外歯230bの外歯中央部232bと第2内歯歯車140bの第2内歯141bとの接触部分である。
【0035】
以降では、外歯端部231aと外歯端部231bとをまとめて「外歯端部231」とも呼び、外歯中央部232aと外歯中央部232bとをまとめて「外歯中央部232」とも呼び、第1領域251aと第1領域251bとをまとめて「第1領域251」とも呼び、第2領域252aと第2領域252bとをまとめて「第2領域252」とも呼ぶ。
【0036】
第1外歯230aの外歯端部231aと第1外輪部材124aとの間には、隙間260aが設けられている(
図3(a)参照)。隙間260aは、回転軸Rを環囲する環状の隙間であり、軸方向に外歯中央部232aから離れるほど径方向における幅(厚み)が大きくなっている。ここでは、第1外輪部材124aのうちの径方向で外歯端部231aと対向する部分が、軸方向に第2外輪部材124bから離れるほど外径が小さく(すなわち厚みが薄く)なるよう形成されることにより、隙間260が設けられる。
【0037】
第2外歯230bの外歯端部231bと第2外輪部材124bとの間にも同様に、隙間260bが設けられている(
図3(b)参照)。隙間260bは、隙間260aと同様に構成される。
【0038】
比較例に係る撓み噛合い式歯車装置では、上述したように、同一の歯丈方向位置において、第1領域251に対応する外歯端部231の歯厚は第2領域252に対応する外歯中央部232の歯厚よりも大きい。このため、第1領域251では、第2領域252に比べて噛み合い開始時の接触圧力を高くできる。すなわち、第1領域251では、第2領域252に比べてバックラッシを小さくできる。
【0039】
また、外歯歯車230の外歯端部231と外輪部材124との間には、隙間が設けられている。このため、回転時に外歯端部231に掛かる負荷が増大したとき、
図3(b)に示すように外歯歯車230の外歯端部231が変形して径方向内側の隙間に逃げ、内歯歯車140と外歯端部231との噛み合いの深さが浅くなる。これにより、回転時に外歯端部231に掛かる負荷が増大したときの外歯端部231および内歯歯車140の摩耗が低減され、バックラッシの増大を抑制できる。
【0040】
ここで、外歯歯車130の外歯と内歯歯車140の内歯とが噛み合う際は、より歯先側の噛合い部から噛み合い始める。つまり、比較例では、第1領域251の径方向外側の部分(
図3(a)の点線で囲んだ部分)253から噛み合い始める。したがって、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置では、噛み合い開始時から外歯歯車130が変形して
図3(b)の状態に変化するまでの間は、部分253に局所的に大きな負荷が掛かり、外歯歯車130または内歯歯車140が摩耗する虞がある。そこで、実施の形態では、外歯歯車130の構成を工夫することにより、外歯歯車130および内歯歯車140の摩耗をさらに低減する。
【0041】
図4(a)、(b)は、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100の外歯歯車130を示す図である。
図4(a)は、外歯歯車130を周方向から見た図である。
図4(b)は、
図4(a)のB−B線端面図である。
図4(a)、(b)は、
図2(a)、(b)に対応する。
図5は、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100の外歯歯車130を示す斜視図である。
【0042】
第1外歯130aは、外歯端部131aと、外歯中央部132aと、を含む。外歯中央部132aは、軸方向で第2外歯130bに隣接する。外歯端部131aは、軸方向で外歯中央部132aよりも第2外歯130bの遠くに位置する。外歯端部131aおよび外歯中央部132aは、同一の歯丈方向位置において、外歯端部131aの歯厚T
e1が外歯中央部132aの歯厚T
e2よりも大きくなるよう形成される。本実施の形態では、外歯中央部132aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e2が軸方向で一定となるよう形成される。また、外歯端部131aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e1が軸方向で変化するよう形成される。具体的には、外歯端部131aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e1が外歯中央部132aとの境界135aで最小で、外歯中央部132aから軸方向に離れるほど線形的に大きくなり、最端部136aで最大となるよう形成される。
【0043】
また、第1外歯130aは、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置の第1外歯230aとは異なり、外歯端部131aの歯丈H
e1が外歯中央部132aの歯丈H
e2よりも小さくなるよう形成される。本実施の形態では、外歯端部131aの歯丈H
e1が外歯中央部132aの歯丈H
e2よりも小さく、かつ、外歯端部131aの歯丈H
e1が軸方向に一定となるよう形成される。
【0044】
第2外歯130bは、外歯端部131bと、外歯中央部132bと、を含む。外歯中央部132bは、軸方向で第1外歯130aに隣接する。外歯中央部132bは、軸方向で外歯中央部132bよりも第1外歯130aの遠くに位置する。外歯端部131b、外歯中央部132bはそれぞれ、第1外歯130aの外歯端部131a、外歯中央部132aと同様に形成される。具体的には、外歯端部131bは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
e1が外歯中央部132bとの境界135bで最小で、外歯中央部132bから軸方向に離れるほど線形的に大きくなり、最端部136bで最大となるよう形成される。また、外歯端部131bの歯丈が外歯中央部132bの歯丈よりも小さく、かつ、外歯端部131bの歯丈が軸方向に一定となるよう形成される。
【0045】
つまり、外歯歯車130は、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車230の各外歯の外歯端部231を径方向内側に向けてカットして外歯端部の歯丈を小さくした形状を有する。
【0046】
図6(a)、(b)は、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100の外歯歯車130と内歯歯車140との噛み合いの様子を示す模式図である。
図6(a)は噛み合い開始時の噛み合いの様子を示し、
図6(b)は外歯歯車130に掛かる負荷が増大したときの噛み合いの様子を示す。
図6(a)、(b)は、
図3(a)、(b)に対応する。
【0047】
第1外歯130aと第1内歯歯車140aとの噛合い部150aは、第1領域151aと、第1領域151aよりも軸方向内側に位置する第2領域152aとを含む。第1領域151aは、第1外歯130aの外歯端部131aと第1内歯歯車140aの第1内歯141aとの接触部分であり、第2領域152aは第1外歯130aの外歯中央部132aと第1内歯歯車140aの第1内歯141aとの接触部分である。
【0048】
第2外歯130bと第2内歯歯車140bとの噛合い部150bも同様に、第1領域151bと、第1領域151bよりも軸方向内側に位置する第2領域152bとを含む。第1領域151bは第2外歯130bの外歯端部131bと第2内歯歯車140bの第2内歯141bとの接触部分であり、第2領域152bは第2外歯130bの外歯中央部132bと第2内歯歯車140bの第2内歯141bとの接触部分である。
【0049】
以降では、外歯端部131aと外歯端部131bとをまとめて「外歯端部131」とも呼び、外歯中央部132aと外歯中央部132bとをまとめて「外歯中央部132」とも呼び、第1領域151aと第1領域151bとをまとめて「第1領域151」とも呼び、第2領域152aと第2領域152bとをまとめて「第2領域152」とも呼ぶ。
【0050】
第1外歯130aの外歯端部131aと第1外輪部材124aとの間には隙間160aが設けられており、第2外歯130bの外歯端部131bと第2外輪部材124bとの間には隙間160bが設けられている(
図6(a)参照)。隙間160a、隙間160bはそれぞれ、比較例に係る撓み噛合い式歯車装置の隙間260a、隙間260bと同様に構成される。
【0051】
実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100では、上述したように、同一の歯丈方向位置において、第1領域151に対応する外歯端部131の歯厚は第2領域152に対応する外歯中央部132の歯厚よりも大きい。このため、比較例と同様に、第1領域151では、第2領域152に比べて噛み合い開始時の接触圧力を高くできる。すなわち、第1領域151では、第2領域152に比べてバックラッシを小さくできる。
【0052】
また、外歯歯車130の外歯端部131と外輪部材124との間には、隙間が設けられている。このため、回転時に外歯端部131に掛かる負荷が増大したとき、
図6(b)に示すように外歯歯車130の外歯端部131が変形して径方向内側の隙間に逃げ、内歯歯車140と外歯端部131との噛み合いの深さが浅くなる。これにより、回転時に外歯端部131に掛かる負荷が増大したときの外歯端部131および内歯歯車140の摩耗が低減され、バックラッシの増大を抑制できる。
【0053】
さらに、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100では、外歯歯車130の外歯端部131の歯丈が外歯中央部132の歯丈よりも小さくなるよう形成される。これにより、外歯端部131が内歯歯車140と噛み合い始めるタイミングを比較例に係る撓み噛合い式歯車装置と比べて遅らせることができる。例えば、外歯端部131が内歯歯車140と噛み合い始めるタイミングを、外歯中央部132が内歯歯車140と噛み合い始めるタイミングと実質的に同じにできる。その結果、比較例のような局所的に大きな負荷が噛合い部150の第1領域151に掛かるのを抑止でき、外歯歯車130および内歯歯車140が摩耗するのを抑止でき、バックラッシが増大するのが抑制できる。
【0054】
以上、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置の構成と動作ついて説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0055】
(変形例1)
実施の形態では、外歯歯車の各外歯の外歯端部は、歯厚T
e1が外歯中央部との境界で最小で、外歯中央部から軸方向に離れるほど線形的に大きくなり、最端部で最大となるよう形成される場合について説明した。しかしながら、外歯端部が外歯中央部よりも歯厚が厚ければよく、外歯の形状には様々な変形例が考えられる。
【0056】
図7(a)〜(c)は、変形例に係る外歯歯車130を示す図である。
図7(a)〜(c)は、
図2(b)に対応する。
【0057】
図7(a)では、外歯端部131は、歯厚が外歯中央部132との境界135で最小で、外歯中央部132から軸方向に離れるほど非線形的に大きくなり、最端部136で最大となるよう形成されている。
【0058】
図7(b)では、外歯端部131は、歯厚が軸方向で一定となる部分を有している。具体的には、外歯端部131は、歯厚が外歯中央部132との境界135で最小で、軸方向の途中までは外歯中央部132から軸方向に離れるほど線形的に大きくなり、そこから最端部136まで軸方向で一定となるよう形成されている。
【0059】
図7(c)では、外歯端部131は、外歯中央部132との境界135での歯厚と最端部136での歯厚とが同じになるよう、すなわち歯厚が軸方向で一定となるよう形成されている。
【0060】
(変形例2)
図8(a)、(b)は、変形例に係る外歯歯車130を示す図である。
図8(a)、(b)は、
図4(a)、(b)に対応する。本変形例では、外歯中央部132は、外歯端部131に隣接する隣接部137の歯丈が、それ以外の部分138の歯丈よりも小さくなるよう形成される。これにより、上述の外歯歯車230の外歯端部231の歯先をカットして外歯歯車130を形成する場合に、加工誤差を吸収して、外歯端部131の全体の歯丈を確実に外歯中央部132(隣接部137を除く)の歯丈よりも小さくできる。
【0061】
(変形例3)
実施の形態では、第1外歯130aおよび第2外歯130bの両方が、外歯端部131と、外歯中央部132とを含む場合について説明したが、これに限られない。第1外歯130aおよび第2外歯130bのいずれか一方は、外歯端部131、外歯中央部132の区別のない構成であってもよい。すなわち、第1外歯130aおよび第2外歯130bのいずれか一方は、歯丈が軸方向に一定で、かつ、同一の歯丈方向位置において、歯厚が軸方向で一定であってもよい。この場合、外歯端部131、外歯中央部132の区別のない外歯の内側の隙間も不要となる。
【0062】
(変形例4)
実施の形態および上述の変形例の技術思想を、外歯歯車130に代えてまたは外歯歯車130に加えて、内歯歯車140に適用してもよい。
【0063】
図9(a)、(b)は、変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の内歯歯車140を示す図である。
図9(a)は、内歯歯車140を周方向から見た図である。
図9(b)は、
図9(a)のC−C線端面図である。
図10(a)、(b)は、変形例に係る撓み噛合い式歯車装置の外歯歯車130と内歯歯車140との噛み合いの様子を示す模式図である。
図10(a)、(b)は
図6(a)、(b)に対応する。
【0064】
第1内歯歯車140aの第1内歯141aは、内歯端部143aと、内歯中央部144aと、を含む。内歯中央部144aは、軸方向で第2内歯141bに隣接する。内歯端部143aは、軸方向で内歯中央部144aよりも第2内歯141bの遠くに位置する。内歯端部143aおよび内歯中央部144aは、同一の歯丈方向位置において、内歯端部143aの歯厚T
i1が内歯中央部144aの歯厚T
i2よりも大きくなるよう形成される。内歯中央部144aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
i2が軸方向で一定となるよう形成される。内歯端部143aは、同一の歯丈方向位置において、歯厚T
i1が軸方向で変化するよう形成される。具体的には、内歯端部143aは、同一の歯丈方向位置において、内歯中央部144aとの境界で最小で、内歯中央部144aから軸方向に離れるほど線形的に大きくなり、最端部で最大となるよう形成される。
【0065】
また、第1内歯141aは、内歯端部143aの歯丈H
i1が内歯中央部144a(面取り部を除く)の歯丈H
i2よりも小さくなるよう形成される。本実施の形態では、内歯端部143aの歯丈H
i1が内歯中央部144aの歯丈H
i2よりも小さく、かつ、内歯端部143aの歯丈H
i1が軸方向に一定となるよう形成される。
【0066】
第2内歯歯車140bは、内歯端部143bと、内歯中央部144bと、を含む。内歯中央部144bは、軸方向で第1内歯141aに隣接する。内歯端部143bは、軸方向で内歯中央部144bよりも第1内歯141aの遠くに位置する。内歯端部143b、内歯中央部144bはそれぞれ、第1内歯141aの内歯端部143a、内歯中央部144aと同様に形成される。以降では、内歯端部143aと内歯端部143bとをまとめて「内歯端部143」とも呼び、内歯中央部144aと内歯中央部144bとをまとめて「内歯中央部144」とも呼ぶ。
【0067】
なお、図示は省略するが、第1外歯130aおよび第2外歯130bはいずれも、歯厚が軸方向で一定となるよう形成される。
【0068】
本変形例に係る撓み噛合い式歯車装置では、同一の歯丈方向位置において、第1領域151に対応する内歯端部143の歯厚は第2領域152に対応する内歯中央部144の歯厚よりも大きい。このため、実施の形態に係る撓み噛合い式歯車装置100と同様に、第1領域151では、第2領域152に比べて噛み合い開始時の接触圧力を高くできる。すなわち、第1領域151では、第2領域152に比べてバックラッシを小さくできる。
【0069】
また、実施の形態と同様に、回転時に外歯端部131に掛かる負荷が増大したとき、
図9(b)に示すように外歯歯車130の外歯端部131が変形して径方向内側の隙間に逃げ、内歯歯車140と外歯端部131との噛み合いの深さが浅くなる。これにより、回転時に外歯端部131に掛かる負荷が増大したときの外歯端部131および内歯歯車140の摩耗が低減され、バックラッシの増大を抑制できる。
【0070】
さらに、本変形例に係る撓み噛合い式歯車装置では、内歯歯車140の内歯端部143の歯丈が内歯中央部144の歯丈よりも小さくなるよう形成される。これにより、内歯端部143が外歯歯車130と噛み合い始めるタイミングを、例えば内歯中央部144が外歯歯車130と噛み合い始めるタイミングと実質的に同じにできる。その結果、上述した比較例のような局所的に大きな負荷が噛合い部150の第1領域151に掛かるのを抑止でき、外歯歯車130および内歯歯車140が摩耗するのを抑止でき、バックラッシが増大するのが抑制できる。
【0071】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。