(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1導体線路、前記第2導体線路、および前記第3導体線路のうち少なくとも1つは、当該導体線路の長さ方向の位置が異なる他の部分の少なくとも一部に比べて幅が狭い幅狭部を有する、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の断熱導波路。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の断熱導波路を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1(a)は実施形態の断熱導波路100の一方の面を示す平面図である。
図1(b)は実施形態の断熱導波路100の他方の面を示す平面図である。
図2は、断熱導波路100の断面図であって、
図1(a)のI−I断面を示す図である。なお、平面視とは、誘電体基板101に垂直な方向から見ることをいう。
【0009】
図1(a)および
図1(b)に示すように、断熱導波路100は、誘電体基板101と、伝達線路102と、第1グランド線路103aと、第2グランド線路103bとを備えている。
【0010】
誘電体基板101は、例えばアルミナ等のセラミック材料等からなる。誘電体基板101は、例えば平面視において長方形とされている。誘電体基板101は「基板」の一例である。
誘電体基板101の長さ方向に沿う方向をY方向という。誘電体基板101の第1主面101aに沿う面内においてY方向に直交する方向をX方向という。
【0011】
断熱導波路100は、例えば、誘電体基板101の長さ方向の一方の端部104aが、他方の端部104bに比べて高温となる環境で用いることができる。すなわち、例えば、端部104aは高温部側に配置され、端部104bは低温部側に配置される。端部104aを高温端部104aといい、端部104bを低温端部104bということがある。断熱導波路100の一方の端部(高温端部104a)と他方の端部(低温端部104b)との温度差は例えば150℃以上である。
【0012】
図1(a)および
図2に示すように、伝達線路102は、誘電体基板101の第1主面101a(一方の面)に形成されている。伝達線路102は、金属などの導電性材料からなる膜である。前記金属としては、例えば金、銅、銅合金等が好ましい。伝達線路102は「第1導体線路」の一例である。
【0013】
伝達線路102は、誘電体基板101の高温端部104aから低温端部104bにわたって形成されている。伝達線路102は、例えば、誘電体基板101の幅方向(X方向)の中央に、誘電体基板101の長さ方向(Y方向)に沿って形成され、長さ方向に一定の幅を有する。伝達線路102の幅(すなわちX方向の寸法)を「幅W」という。
【0014】
伝達線路102は、平面視において、後述するグランド線路103a,103bの間隙105と重なる位置にある。
なお、
図1(a)および
図2等に示す伝達線路102は、全体が間隙105と重なる位置にあるが、伝達線路は、間隙の少なくとも一部と重なる位置にあればよい。
【0015】
図1(b)および
図2に示すように、第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、誘電体基板101の第2主面101b(他方の面)に形成されている。第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、金属などの導電性材料からなる膜である。前記金属としては、例えば金、銅、銅合金等が好ましい。
第1グランド線路103aは「第2導体線路」の一例である。第2グランド線路103bは「第3導体線路」の一例である。
【0016】
第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、それぞれ、誘電体基板101の高温端部104aから低温端部104bにわたって形成されている。第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、例えば、一定の線路幅を有し、誘電体基板101の長さ方向(Y方向)に沿って形成されている。第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bの幅方向はX方向に一致する。
【0017】
第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、これら線路103a,103bの幅方向(X方向)に互いに離間して形成されている。第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、互いに平行であり、並列して誘電体基板101の第2主面101bに形成されている。
なお、第1グランド線路103aと第2グランド線路103bとは、概ね同じ方向に沿って形成されていればよく、互いに平行でなくてもよい。例えば、第1グランド線路と第2グランド線路とが、いずれも基板の一方の端部と他方の端部とを結んで形成されていれば、概ね同じ方向に沿って形成されているといえる。
【0018】
第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、誘電体基板101の第2主面101bに形成されているため、第1主面101aに形成された伝達線路102とは、誘電体基板101の厚さ方向の位置が異なる。
【0019】
第1グランド線路103aと第2グランド線路103bとの間隙105は、第2主面101bのうち、第1グランド線路103aと第2グランド線路103bとの間の領域である。間隙105は、誘電体基板101の高温端部104aから低温端部104bに至る矩形の領域である。間隙105は、例えば長さ方向(X方向)に一定の幅を有する。間隙105の幅方向の寸法(X方向の寸法)を「ギャップG」という。
【0020】
第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、例えば、伝達線路102と平行である。第1グランド線路103aの幅と、第2グランド線路103bの幅とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
なお、第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bは、伝達線路102と概ね同じ方向に沿って形成されていればよく、伝達線路102と平行でなくてもよい。例えば、グランド線路と伝達線路とが、いずれも基板の一方の端部と他方の端部とを結んで形成されていれば、グランド線路は、概ね伝達線路と同じ方向に沿って形成されているといえる。
【0021】
図2に示すように、第1グランド線路103aおよび第2グランド線路103bの内側の側縁103a1,103b1(向かい合う側の縁)は、例えば、伝達線路102の側縁102a,102aよりも、外方寄りに位置している。すなわち、グランド線路103aの内側の側縁103a1は、伝達線路102の−X方向側の側縁102a1よりも−X方向寄りに位置する。グランド線路103bの内側の側縁103b1は、伝達線路102の+X方向側の側縁102a2よりも+X方向寄りに位置する。
+X方向は、X方向のうち、第1グランド線路103aから第2グランド線路103bに向かう方向である。−X方向は、+X方向の反対方向である。
【0022】
第1グランド線路103aと伝達線路102との幅方向(X方向)の距離L1と、第2グランド線路103bと伝達線路102との幅方向(X方向)の距離L2とは、互いに等しいことが好ましい。
距離L1は、第1グランド線路103aの内側の側縁103a1と、伝達線路102の−X方向側の側縁102a1とのX方向の距離である。距離L2は、第2グランド線路103bの内側の側縁103b1と、伝達線路102の+X方向側の側縁102a2とのX方向の距離である。
【0023】
図1(a)、
図1(b)および
図2に示す断熱導波路100によれば、伝達線路102が、第1グランド線路103aと第2グランド線路103bとの間隙105と重なる位置にある。よって、伝達線路の全体がグランド線路と重なる位置にある場合に比べて、線路の面積が小さい場合でも、損失を低く抑えることができる。
伝達線路102およびグランド線路103a,103bの面積を小さくすれば、熱流入量を抑えることができるため、断熱導波路100では、損失を小さくし、かつ熱流入を抑制できる。すなわち、断熱導波路100では、低損失と低熱流入を両立できる。
【0024】
断熱導波路100において、線路の面積が小さい場合でも損失を抑えることができることについては、次の推測が可能である。
断熱導波路100では、伝達線路102が、グランド線路103a,103bの間隙105と重なる位置にある。そのため、伝達線路102とグランド線路103a,103bとの間の電気的な相互作用による線路側縁での電流分布の偏りによって、伝達線路102およびグランド線路103a,103bにおけるエネルギーの放射が抑制される。したがって、伝達線路の全体がグランド線路と重なる位置にある場合に比べて、線路の面積が小さい場合でも損失を抑えることができる。
【0025】
断熱導波路100では、伝達線路102およびグランド線路103a,103bに欠損箇所がないため、直流電流を用いる場合に有利である。よって、下流側に接続される回路への直流電流の供給にも対応できる。
【0026】
次に、実施形態の断熱導波路100の第1変形例について説明する。断熱導波路100との共通点については同じ符号を付して説明を省略する。
図3(a)は、断熱導波路100の第1変形例である断熱導波路100Aの一方の面を示す平面図である。
図3(b)は、断熱導波路100Aの他方の面を示す平面図である。
図4は、断熱導波路100Aの断面図であって、
図3(a)のII−II断面を示す図である。
【0027】
図3(a)、
図3(b)および
図4に示すように、断熱導波路100Aは、伝達線路102の中間部102dに欠損部504が形成されていること以外は、
図1(a)、
図1(b)および
図2に示す断熱導波路100と同じ構成である。
中間部102dは、伝達線路102の一方の端部102bと他方の端部102cの間の部分である。
【0028】
欠損部504は、伝達線路102を構成する導電性膜がない箇所である。欠損部504では、誘電体基板101の第1主面101aが露出している。
欠損部504は、例えば、伝達線路102の側縁102a,102aより内方に位置している。すなわち、欠損部504は、
図4に示すように、伝達線路102の側縁102a1より+X方向寄り、かつ側縁102a2より−X方向寄りに位置する。
【0029】
図3(a)に示すように、欠損部504は、例えば、伝達線路102の幅方向(X方向)の中央に、伝達線路102の長さ方向(Y方向)に沿って形成されている。欠損部504は、例えば長さ方向に一定の幅を有する。欠損部504の平面視形状は、例えば矩形状(例えば長方形)である。なお、欠損部の平面視形状は特に限定されず、例えば、長径方向を線路の長さ方向に向けた楕円形状であってもよい。
【0030】
断熱導波路100Aでは、電流強度が低い中間部102dに欠損部504が形成されているため、損失を増大させずに伝達線路102の面積を小さくできる。よって、損失を低くし、かつ熱流入量をさらに抑えることができる。
【0031】
次に、実施形態の断熱導波路100の第2変形例について説明する。断熱導波路100との共通点については同じ符号を付して説明を省略する。
図5(a)は、断熱導波路100の第2変形例である断熱導波路100Bの一方の面を示す平面図である。
図5(b)は、断熱導波路100Bの他方の面を示す平面図である。
【0032】
図5(a)および
図5(b)に示すように、断熱導波路100Bは、伝達線路802の中間部802dに、伝達線路802の長さ方向の他の部分804aより幅が狭い幅狭部804bが形成されていること以外は、
図1(a)、
図1(b)および
図2に示す断熱導波路100と同じ構成である。
中間部802dは、伝達線路802の一方の端部802bと他方の端部802cの間の部分である。
幅狭部804bは、両方の側縁802a,802aにそれぞれ切欠きを形成することによって形成されている。幅狭部804bは、例えば、長さ方向に一定の幅を有する。
幅狭部804bは、両方の側縁802a,802aにそれぞれ同幅の切欠きを形成することによって形成されている。そのため、幅狭部804bの幅方向(X方向)の位置は、伝達線路802の中央である。
【0033】
断熱導波路100Bでは、電流強度が低い中間部802dに幅狭部804bが形成されているため、損失を増大させずに伝達線路802の面積を小さくできる。よって、損失を低くし、かつ熱流入量をさらに抑えることができる。
【0034】
次に、実施形態の断熱導波路100の第3変形例について説明する。断熱導波路100との共通点については同じ符号を付して説明を省略する。
図6は、断熱導波路100の第3変形例である断熱導波路100Cを模式的に示す図である。
【0035】
図6に示すように、断熱導波路100Cは、基板1001がフレキシブル基板であること以外は、
図1(a)、
図1(b)および
図2に示す断熱導波路100と同じ構成である。
基板1001は、例えばポリイミド系材料からなるフレキシブル基板である。
断熱導波路100Cの両端部にはそれぞれ接続部1004a,1004bが設けられている。
断熱導波路100Cは、例えば、屈曲部1003において、厚さ方向に約90°に曲げられている。
【0036】
断熱導波路100Cでは、基板1001がフレキシブル基板であるため、厚さ方向の曲げ変形が可能となる。そのため、損失を増大させずに実装の自由度を高めることができる。よって、接続部1004a,1004bに設置位置の制約がある場合でも、それに対応して適切な位置に設置できる。よって、断熱導波路100Cを用いた装置の小型化を図ることができる。
【0037】
以下、実施例に基づいて上記の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0038】
まず、実施例1を説明する。
図1(a)、
図1(b)および
図2に示す断熱導波路100を用いて、中心周波数を9GHzとした場合における損失量(dB)と熱流入量(mW)の計算を行った。
断熱導波路100の誘電体基板101の熱伝導率は0.5(W/m・K)、厚みは0.1mm、幅は2mmとした。
伝達線路102およびグランド線路103a,103bを構成する金属膜の厚みは9μmとした。金属膜を構成する金属は銅とした。伝達線路102の幅は0.24mm(マイクロストリップ線路における50Ω線路幅)とした。グランド線路103a,103bの線路幅は合計で0.2mmとした。
この構成において、前記中心周波数における損失量は0.32dB、熱流入量は31.7mWである。結果を
図7に示す。
【0039】
次に、比較例1を説明する。
図12(a)は、従来の断熱導波路の一例である断熱導波路200の一方の面を示す平面図である。
図12(b)は、断熱導波路200の他方の面を示す平面図である。
断熱導波路200は、誘電体基板201と、伝達線路202と、グランド線路203とを備えている。
伝達線路202は、誘電体基板201の第1主面201a(一方の面)に形成されている。伝達線路202は、平面視においてグランド線路203と重なる位置にある。
グランド線路203は、誘電体基板201の第2主面201b(他方の面)に形成されている。グランド線路203は、伝達線路202よりも幅広に形成されている。グランド線路203の長さ方向に沿う中央線は、平面視において伝達線路202の長さ方向に沿う中央線に重なる。
【0040】
図12(a)および
図12(b)に示す断熱導波路200を用いて、中心周波数を9GHzとした場合における損失量(dB)と熱流入量(mW)の計算を行った。
断熱導波路200の誘電体基板201の熱伝導率は0.5(W/m・K)、厚みは0.1mm、幅は2mmとした。
伝達線路202およびグランド線路203を構成する金属膜の厚みは9μmとした。金属膜を構成する金属は銅とした。伝達線路202の幅は0.24mm(マイクロストリップ線路における50Ω線路幅)とした。
グランド線路203の幅W1を0.2mm、0.75mm、1.2mmとした場合に前記中心周波数における損失量はそれぞれ0.50dB、0.26dB、0.18dBである。熱流入量はそれぞれ31.7mW、47.3mW、70.5mWである。結果を
図7に示す。
【0041】
次に、比較例2を説明する。
同軸ケーブルである導波路を用いて、中心周波数を9GHzとした場合における損失量(dB)と熱流入量(mW)の計算を行った。
前記導波路の中心導体(Cu)の外径は2.2mmとした。中間層(Cu)の外径は3.2mmとした。最外層(CuNi)の外径は3.6mmとした。
前記中心周波数における損失量はそれぞれ1.60dB、0.42dB、0.25dBである。熱流入量はそれぞれ78mW、357mW、714mWである。結果を
図7に示す。
【0042】
図7に示すように、実施例1では、比較例1,2に比べて、同程度の損失量では低熱流入量にでき、同程度の熱流入量では低損失量にできる。
このことより、実施例1では、熱流入の要因となる線路面積を減らすことによって損失を抑制できるため、低損失量と低熱流入量を両立できることがわかる。
また、実施例1では線路に欠損箇所がないため、直流電流を用いる場合に有利である。よって、下流側に接続される回路への直流電流の供給にも対応できる。
【0043】
実施例1に示す断熱導波路100において、伝達線路102の幅W(
図1(a)および
図2参照)を一定として、グランド線路103a,103bのギャップG(
図1(b)および
図2参照)を変化させたときの、幅Wに対するギャップGの比率(G/W)を算出した。比率G/Wと、損失量との関係についての計算結果を
図8に示す。なお、伝達線路102の幅方向の中央線と、間隙105の幅方向の中央線とは平面視において一致させた。
【0044】
図8より、比率G/Wを1より大きくすることによって、損失量を低くできる。
比率G/Wは、ある範囲までは大きくなるに従って電流強度の偏りが少なくなるが、大きくなり過ぎれば放射損失が増す可能性がある。そのため、全体としての損失量は増加する可能性がある。
比率G/Wは、2以上とすることによって、損失量をさらに低くできる。比率G/Wは、3.5以下とすることによって、全体の損失量を低くできる。よって、比率G/Wは、2〜3.5とすることによって、損失量を低くできる。
【0045】
次に、実施例2を説明する。
図3(a)、
図3(b)および
図4に示す断熱導波路100Aを用いて、中心周波数を9GHzとした場合における損失量(dB)と熱流入量(mW)の計算を行った。
実施例2は、伝達線路102の幅方向の中央に欠損部504が形成されていること以外は実施例1と同様とした。
この構成において、前記中心周波数における損失量および熱流入量の計算結果を表1に示す。
【0047】
表1より、実施例2では、実施例1に比べて損失量を増加させずに熱流入量を低くできることがわかる。
【0048】
次に、実施例3を説明する。
図5(a)および
図5(b)に示す断熱導波路100Bを用いて、中心周波数を9GHzとした場合における損失量(dB)と熱流入量(mW)の計算を行った。
実施例3は、伝達線路802の中間部802dに幅狭部804bが形成されていること以外は実施例1と同様とした。
この構成において、前記中心周波数における損失量および熱流入量の計算結果を表2に示す。
【0050】
表2より、実施例3では、実施例1に比べて損失量を増加させずに熱流入量を低くできることがわかる。
【0051】
次に、実施例4を説明する。
図6に示す断熱導波路100Cを用いて、中心周波数を9GHzとした場合における損失量(dB)の計算を行った。
実施例3は、基板としてフレキシブル基板1001を用いること以外は実施例1と同様とした。
この構成において、断熱導波路100Cに、厚さ方向に90°の曲げを加えた場合、および曲げを加えない場合(曲げ角度0°)の、前記中心周波数における損失量を表3に示す。
【0053】
表3より、実施例4では、曲げを加えた場合でも、曲げを加えない場合と同等の損失量が得られることがわかる。
【0054】
図9(a)は、断熱導波路100の第1の例である断熱導波路100Dにおいて、一方の面(第1主面101a)における電流強度の分布を示す図である。
図9(b)は、断熱導波路100Dにおいて、他方の面(第2主面101b)における電流強度の分布を示す図である。
図9(a)および
図9(b)においては電流強度が濃淡で表されている。
【0055】
図9(b)に示すように、断熱導波路100Dでは、グランド線路103a,103bのギャップG(G1)は比較的小さい。そのため、グランド線路103a,103bと、伝達線路102との距離は小さい。
図9(a)に示すように、伝達線路102の側縁102a,102aのうち端部102b,102cに近い部分においては、電流強度が高くなっている。
図9(b)に示すように、グランド線路103a,103bの内側の側縁103a1,103b1(向かい合う側の縁)のうち、端部103a2,103a3,103b2,103b3に近い部分においては、電流強度が高くなっている。
【0056】
図10(a)は、断熱導波路100の第2の例である断熱導波路100Eにおいて、一方の面(第1主面101a)における電流強度の分布を示す図である。
図10(b)は、断熱導波路100Eにおいて、他方の面(第2主面101b)における電流強度の分布を示す図である。
【0057】
図10(b)に示すように、断熱導波路100Eでは、グランド線路103a,103bのギャップG(G2)は比較的大きい。そのため、
図9(a)および
図9(b)に示す断熱導波路100Dに比べて、グランド線路103a,103bと、伝達線路102との距離は大きい。
図10(a)に示すように、伝達線路102の側縁102a,102aのうち端部102b,102cに近い部分では、電流強度は他の部分に比べて高くなるが、
図9(a)に示す断熱導波路100Dの伝達線路102に比べれば電流強度の偏りは小さい。
図10(b)に示すように、グランド線路103a,103bの内側の側縁103a1,103b1(向かい合う側の縁)であって端部103a2,103a3,103b2,103b3に近い部分では、電流密度は他の部分に比べて高くなるが、
図9(b)に示す断熱導波路100Dのグランド線路103a,103bに比べれば電流密度の偏りは小さい。
【0058】
図11(a)は、断熱導波路の他の例である断熱導波路100Fにおいて、一方の面(第1主面101a)における電流密度の分布を示す図である。
図11(b)は、断熱導波路100Fにおいて、他方の面(第2主面101b)における電流密度の分布を示す図である。
【0059】
断熱導波路100Fは、
図9(b)および
図10(b)に示すグランド線路103a,103bのギャップGがゼロとなった例である。そのため、
図11(b)に示すように、誘電体基板101の第2主面101bには、グランド線路103a,103bに代えて、1つのグランド線路103abが形成されている。
【0060】
図9(a)〜
図11(b)に示すように、
図9(a)〜
図10(b)に示す断熱導波路100D,100Eは、
図11(a)および
図11(b)に示す断熱導波路100Fとは、伝達線路およびグランド線路における電流密度の分布が異なる。
また、断熱導波路100D(
図9(a)、
図9(b)参照)に比べて、ギャップGが大きい断熱導波路100E(
図10(a)、
図10(b)参照)は、電流密度の偏りが比較的小さい。
【0061】
図1(a)、
図1(b)および
図2に示す断熱導波路100においては、平面視において伝達線路102の全体が間隙105に重なる位置にあるが、伝達線路102の一部は、グランド線路103a,103bに重なっていてもよい。
断熱導波路100では、
図2に示すように、第1グランド線路103aと伝達線路102との距離L1と、第2グランド線路103bと伝達線路102との距離L2とは互いに等しいが、距離L1と距離L2は同じでなくてもよい。
断熱導波路100においては、伝達線路102と、第1グランド線路103aと、第2グランド線路103bとは平行であるが、これに限らず、線路102,103a,103bは、これらのうち2以上の線路が平行でなくてもよい。
【0062】
断熱導波路100は、2つのグランド線路103a,103bを有するが、グランド線路の数は複数であればよく、例えば幅方向に間隔をおいて形成された3以上のグランド線路を有していてもよい。その場合、断熱導波路は、グランド線路間の間隙を複数有するが、伝達線路は、複数の間隙のうち少なくとも1つの間隙の少なくとも一部と重なる位置にあればよい。
【0063】
断熱導波路100では、伝達線路102とグランド線路103a,103bとが、それぞれ誘電体基板101の一方および他方の面にそれぞれ形成されている。これによって、伝達線路102とグランド線路103a,103bとは、誘電体基板101の厚さ方向に位置を違えて形成されている。実施形態の断熱導波路では、伝達線路とグランド線路とが基板の厚さ方向に位置を違えて形成される構成はこれに限らない。例えば、伝達線路とグランド線路のうち一方が基板の表面に形成され、他方が基板の内部に埋設された構成も可能である。
【0064】
図2に示す断熱導波路100では、グランド線路103a,103bの内側の側縁103a1,103b1は、幅方向(X方向)について、全長にわたって伝達線路102の側縁102a,102aよりも外方寄りに位置しているが、側縁103a1,103b1の長さ方向の一部のみが伝達線路102の側縁102a,102aよりも外方寄りに位置していてもよい。
【0065】
グランド線路103a,103bの側縁103a1,103b1は、平面視において、伝達線路102の側縁102a,102aより外方寄りに位置することが好ましいが、側縁102a,102aと一致する位置にあってもよいし、側縁102a,102aより内方寄りに位置していてもよい。
【0066】
図3(a)、
図3(b)および
図4に示す断熱導波路100Aでは、伝達線路102およびグランド線路103a,103bのうち伝達線路102のみに欠損部504が形成されている。実施形態の断熱導波路は、これに限らず、伝達線路およびグランド線路のうち少なくともいずれか1つに欠損部が形成されている構成であってもよい。例えば、第1グランド線路および第2グランド線路のいずれか一方または両方に欠損部が形成されていてもよい。
断熱導波路100Aでは、欠損部504の幅方向(X方向)の位置は、伝達線路102の中央であるが、伝達線路における欠損部の幅方向の位置はこれに限らず、中央に対してX方向にずれた位置でもよい。
【0067】
図5(a)および
図5(b)に示す断熱導波路100Bでは、伝達線路802およびグランド線路103a,103bのうち伝達線路802のみに幅狭部804bが形成されている。実施形態の断熱導波路は、これに限らず、伝達線路およびグランド線路のうち少なくともいずれか1つに幅狭部が形成されている構成であってもよい。例えば、第1グランド線路および第2グランド線路のいずれか一方または両方に幅狭部が形成されていてもよい。
断熱導波路100Bでは、幅狭部804bの幅方向(X方向)の位置は、伝達線路802の中央であるが、伝達線路における幅狭部の幅方向の位置はこれに限らず、中央に対してX方向にずれた位置でもよい。
【0068】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、伝達線路102が、第1グランド線路103aと第2グランド線路103bとの間隙105と重なる位置にあるため、損失を小さくし、かつ熱流入を抑制できる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。