(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685930
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】鞄
(51)【国際特許分類】
A45C 5/00 20060101AFI20200413BHJP
A45C 5/03 20060101ALI20200413BHJP
A45C 5/14 20060101ALI20200413BHJP
A45C 13/10 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
A45C5/00 B
A45C5/03
A45C5/14 A
A45C13/10 N
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-564292(P2016-564292)
(86)(22)【出願日】2015年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2015064504
(87)【国際公開番号】WO2016185588
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102304
【氏名又は名称】エース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若生 然太
【審査官】
山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−097722(JP,U)
【文献】
中国実用新案第203452494(CN,U)
【文献】
実開平06−020840(JP,U)
【文献】
実開平04−059714(JP,U)
【文献】
実開平07−039540(JP,U)
【文献】
実開昭57−146531(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 5/00−5/14
A45C 13/00
B65D 6/13
E04D 7/10−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の本体および蓋体の対応する辺の開口縁同士が互いに突き合わされるとともに、前記本体および前記蓋体の特定の辺がヒンジ部を有する連結具により連結されてなる鞄であって、
前記連結具は、前記ヒンジ部が前記本体および前記蓋体の一方から分離可能、または、前記ヒンジ部を構成する部材が互いに分離可能となっており、前記本体および前記蓋体の両側辺間と、前記本体および前記蓋体の上辺間または下辺間とに設けられる鞄。
【請求項2】
前記連結具の前記ヒンジ部は、軸部と前記軸部を回動自在に支持する第1軸受部および第2軸受部とが結合した状態で、前記第1軸受部および前記第2軸受部の一方に一体的に形成される部材が前記本体に、他方に一体的に形成される部材が前記蓋体に、いずれか一方が分離可能な状態で設けられており、
分離可能な側の前記第1軸受部または前記第2軸受部に一体的に形成される部材と前記本体または前記蓋体との間には、それぞれを一体化して前記本体と前記蓋体との突き合わせ部分に前記ヒンジ部を構成する係合機構が設けられる請求項1に記載の鞄。
【請求項3】
前記連結具の前記ヒンジ部は、軸部と前記軸部を回動自在に支持する軸受部とが分離可能な状態で、前記軸部および前記軸受部の一方が前記本体に、他方が前記蓋体に、それぞれ設けられており、
前記軸受部は、互いに分離可能な第1部材と第2部材とから構成され、
前記第1部材は、前記本体または前記蓋体に取り付けられた固定部に設けられており、
前記第2部材は、前記固定部に対して前記固定部から離脱する方向に付勢されるように取り付けられた可動部に設けられており、
前記固定部と前記可動部との間には、前記軸部および前記軸受部を一体化して前記本体と前記蓋体との突き合わせ部分に前記ヒンジ部を構成する係合機構が設けられる請求項1に記載の鞄。
【請求項4】
前記連結具には、前記蓋体の開放を防止する錠が設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の鞄。
【請求項5】
箱状の本体および蓋体からなる鞄の前記本体および前記蓋体の両側辺間、ならびに、前記本体および前記蓋体の上辺間または下辺間を連結する連結具であって、
前記連結具は、ヒンジ部を有し、
前記ヒンジ部が前記本体および前記蓋体の一方から分離可能、または、前記ヒンジ部を構成する部材が互いに分離可能である連結具。
【請求項6】
前記ヒンジ部は、軸部と前記軸部を回動自在に支持する第1軸受部および第2軸受部とが結合した状態で、前記第1軸受部および前記第2軸受部の一方に一体的に形成される部材が前記本体に、他方に一体的に形成される部材が前記蓋体に、いずれか一方が分離可能な状態で設けられており、
分離可能な側の前記第1軸受部または前記第2軸受部に一体的に形成される部材と前記本体または前記蓋体との間には、それぞれを一体化して前記本体と前記蓋体との突き合わせ部分に前記ヒンジ部を構成する係合機構が設けられる請求項5に記載の連結具。
【請求項7】
前記ヒンジ部は、軸部と前記軸部を回動自在に支持する軸受部とが分離可能な状態で、前記軸部および前記軸受部の一方が前記本体に、他方が前記蓋体に、それぞれ設けられており、
前記軸受部は、互いに分離可能な第1部材と第2部材とから構成され、
前記第1部材は、前記本体または前記蓋体に取り付けられた固定部に設けられており、
前記第2部材は、前記固定部に対して前記固定部から離脱する方向に付勢されるように取り付けられた可動部に設けられており、
前記固定部と前記可動部との間には、前記軸部および前記軸受部を一体化して前記本体と前記蓋体との突き合わせ部分に前記ヒンジ部を構成する係合機構が設けられる請求項5に記載の連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞄に関し、特に箱状の本体および蓋体を備える鞄に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーツケースやアタッシュケースのような、箱状の本体および蓋体の対応する辺の開口縁同士を互いに突き合わせて、特定の一辺をヒンジで連結されてなる鞄が汎用されている(例えば、特許文献1)。このような鞄は通常、本体および蓋体の一辺にのみヒンジが設けられており、他の辺は分離可能となっている。そして、ヒンジが設けられている辺を軸として、蓋体が本体に対して回動し、鞄が開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−185407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるような鞄は、ヒンジが設けられた辺を軸としてしか蓋体を回動させることができず、一方向にしか鞄を開けることができなかった。そのため、狭いスペースで鞄を開きたい場合や、移動中特に空港や駅等で少しだけ鞄を開きたい場合でも、ある程度の広さを確保しないと容易に鞄を開くことができず、鞄を開くのに不便が生じていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、狭いスペースや移動中でも容易に開放できる鞄を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、箱状の本体および蓋体の対応する辺の開口縁同士が互いに突き合わされるとともに、本体および蓋体の特定の辺がヒンジ部を有する連結具により連結されてなる鞄である。連結具は、ヒンジ部が本体および蓋体の一方から分離可能、または、ヒンジ部を構成する部材が分離可能となっており、本体および蓋体の少なくとも二辺に設けられる。
【0007】
この構成によれば、本体と蓋体とを連結する連結具が、蓋体を本体に対して回動させることができるヒンジ部を備えており、ヒンジ部が本体および蓋体の一方から分離されるか、ヒンジ部を構成する部材が分離されるようになっている。そのため、ヒンジ部が結合された状態では、ヒンジ部は蓋体を本体に対して回動させるように機能するが、ヒンジ部が分離されると、蓋体は本体から離間されて鞄を開放することができる。このような連結具が、本体および蓋体の少なくとも二辺に取り付けられるため、一方の辺の連結具を分離させると、他方の辺の連結具のヒンジ部を軸として蓋体が回動し鞄を開放できる一方で、他方の辺の連結具を分離させると、一方の辺の連結具のヒンジ部を軸として蓋体が回動し鞄を開放できる。これにより、少なくとも二方向に鞄を開放することができ、鞄を広げるスペースや鞄の状態(背面を下にして置いた状態、底面を下にして置いた状態、側面を下にして置いた状態等)に応じて、所望の方向に鞄を開けることができる。その結果、狭いスペースや移動中でも容易に鞄を開放することができる。
【0008】
なお、鞄の通常の使用状態、例えばスーツケースであれば、キャスターを載置面上に載せた状態、アタッシュケースであれば、把持部を握って提げた状態において上下方向を定義し、上側の面を上面、上側の辺を上辺、下側の面を底面、下側の辺を下辺という。また、蓋体側を前側、本体側を後側として前後方向を定義し、鞄の前側の面を正面、鞄の後側の面を背面という。さらに、上下方向と前後方向とに直交する方向を左右方向とし、鞄に向かって右側の面および辺をそれぞれ左側面および左側辺、鞄に向かって左側の面および辺をそれぞれ右側面および右側辺という。この点は、本明細書を通じて同義である。
【0009】
好ましい実施形態の鞄では、連結具は、本体および蓋体の両側辺間に設けられる。さらに好ましい実施形態では、本体および蓋体の少なくとも一方の側辺間と、本体および蓋体の上辺間または下辺間とに設けられる。
【0010】
好ましい実施形態の鞄では、連結具のヒンジ部は次のように構成される。一実施形態では、連結具のヒンジ部は、軸部と軸部を回動自在に支持する第1軸受部および第2軸受部とが結合した状態で、第1軸受部および第2軸受部の一方が本体に、他方が蓋体に、いずれか一方が分離可能な状態で設けられており、分離可能な側の第1軸受部または第2軸受部と本体または蓋体との間には、それぞれを一体化して本体と蓋体との突き合わせ部分にヒンジ部を構成する係合機構が設けられる。他の実施形態では、連結具のヒンジ部は、軸部と軸部を回動自在に支持する軸受部とが分離可能な状態で、軸部および軸受部の一方が本体に、他方が蓋体に、それぞれ設けられており、軸部と軸受部との間には、それぞれを一体化して本体と蓋体との突き合わせ部分にヒンジ部を構成する係合機構が設けられる。
【0011】
好ましい実施形態の鞄では、連結具には、蓋体の開放を防止する錠が設けられている。このように連結具に錠を設けることで、不用意に鞄が開かれることを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鞄によれば、狭いスペースや移動中にも容易に鞄を開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る鞄の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の連結具の拡大斜視図で、連結具を結合した状態を示す図である。
【
図4】
図1の連結具の拡大斜視図で、連結具を分離した状態を示す図である。
【
図5】
図1の連結具の拡大斜視図で、連結具を分離した状態を別の角度から示す図である。
【
図6】
図1の鞄の左側を開いた状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の鞄の右側を開いた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図1の鞄の上側を開いた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図1の鞄の本体と蓋体とを分離した状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明に係る鞄の第2実施形態を示す斜視図である。
【
図11】
図10の連結具の拡大斜視図で、連結具を結合した状態を示す図である。
【
図12】
図10の連結具の拡大斜視図で、連結具を分離した状態を示す図である。
【
図13】
図10の連結具の拡大斜視図で、連結具を分離し、本体および蓋体を離間させた状態を示す図である。
【
図14】
図10の連結具の拡大斜視図で、連結具を分離し、本体および蓋体を離間させた状態を別の角度から示す図である。
【
図18】
図10の鞄の本体と蓋体とを分離した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る鞄の一実施形態について添付図面を参照して説明する。ここでは、箱状の本体および蓋体を備える鞄として、スーツケースを例に取って説明する。もちろん、本発明はこれに制限されるものではなく、例えばアタッシュケース等についても適用可能である。
【0015】
まず、本発明に係る鞄1の第1実施形態について、
図1〜
図9を参照して説明する。
図1および
図2に示すように、鞄1は、任意の大きさの底面矩形状の箱状の本体2と、本体2と略同等の大きさおよび形状の箱状の蓋体3とを備えている。鞄1は、本体2の上面および左側面に、鞄1を提げるための把持部4が設けられており、本体2および蓋体3の底面に、キャスター5が設けられている。
【0016】
本体2と蓋体3とは対応する辺の開口縁同士が互いに突き合わされて配置され、本体2および蓋体3の特定の辺がヒンジ部11を有する連結具10により連結されている。連結具10は、本体2および蓋体3の少なくとも二辺に設けられれば良く、本実施形態では、左右両側辺と底辺の三辺に設けられている。また、連結具10は、左右両側辺にはそれぞれ2個ずつ、底辺には1個設けられている。
【0017】
図3〜
図5に示すように、連結具10は、ヒンジ部11と、ヒンジ部11に連接する本体取付部12および蓋体取付部13とを備えている。ヒンジ部11は、軸部111と、軸部111を回動自在に支持する第1軸受部112および第2軸受部113とを有している。軸部111は、円柱状に形成され、一端に径の大きい頭部を有している。第1軸受部112および第2軸受部113は、軸部111を挿通可能な断面円形の中空部を有する筒状に形成されている。本実施形態では、第1軸受部112は2個一組となっており、第2軸受部113を挟んで、第1軸受部112、第2軸受部113、第1軸受部112の順に軸部111に挿し通されている。その状態で、軸部111の他端にボルト114を取り付けることで、軸部111、第1軸受部112および第2軸受部113は、第1軸受部112および第2軸受部113が軸部111から抜け出ないように、互いに結合状態となっている。なお、軸部111の他端は、ボルト114を取り付ける代わりにかしめることでも、軸部111、第1軸受部112および第2軸受部113を結合状態とすることもできる。
【0018】
本体取付部12は、矩形の板状を呈しており、2個の第1軸受部112と一体的に形成されている。この本体付部12は、ネジ等の任意の手段によって、本体2の開口縁付近に取り付けられている。
【0019】
蓋体取付部13は、蓋体3に取り付けられる基台131と、第2軸受部113に一体的に形成される取付体132とから構成されている。基台131は、略矩形の板状に形成されており、ネジ等の任意の手段によって、本体取付部12に対応する位置で蓋体3の開口縁付近に取り付けられている。
図5に示すように、基台131の四隅には、基台131から突出した係合爪141が設けられている。
【0020】
取付体132は、断面略U字状で、ヒンジ部11の軸方向に延びる枠体161と、枠体161の長手方向両端から枠体161に挿し込んで取り付けられる一組の解除具162と、枠体161の開口を覆う底部163とから構成されている。枠体161の略U字の底面は、基台131と同等の形状を有している。解除具162は、枠体161に対してスライド可能で、長手方向の各端部側へ付勢するように取り付けられている。底部163は、矩形の板状に形成されており、取付体132を基台131上に載置した際に係合爪141と対応する位置に、係合爪141が挿通可能な凹部163aが形成されている。また、解除具162には、取付体132を基台131上に載置した際に係合爪141と対応する位置に、係合爪141と係合可能な係合片142が取り付けられている。
【0021】
取付体132は、ヒンジ部11によって基台131上に載置される状態と基台131から離間する状態との間で回動可能となっており、基台131上に載置されると、係合爪141と係合片142とが係合して、基台131と結合される。この係合爪141と係合片142とが係合機構14を構成している。そして、係合爪141と係合片142とが一体化されると、本体2と蓋体3との突き合わせ部分にヒンジ部11が構成される。解除具162が押圧されると、解除具162が枠体161に対してスライドし、係合片142が係合爪141から外れ、取付体132が基台131から分離される。これにより、取付体132と一体的に構成される第2軸受部113が、基台131から、延いては蓋体3から分離される。
【0022】
図3および
図4に示すように、取付体132には錠15が設けられている。錠15により解除具162が押圧できないようになっており、蓋体3の意図しない開放を防止することができる。この錠15には、図示のダイヤル錠等の既知の任意の錠を採用することができる。
【0023】
次に、
図6〜
図9を参照して、上記のように構成された連結具10を取り付けた鞄1の使用方法について説明する。例えば、
図6に示すように、鞄1の左側辺および下辺の連結具10を外すと、鞄1の右側辺の連結具10のヒンジ部11を軸として蓋体3を本体2に対して回動させることができる。これにより、鞄1の左側辺を開放することができる。反対に、
図7に示すように、鞄1の右側辺および下辺の連結具10を外すと、鞄1の左側辺の連結具10のヒンジ部11を軸として蓋体3を本体2に対して回動させることができる。これにより、鞄1の右側辺を開放することができる。また、
図8に示すように、鞄1の左右両側辺の連結具10を外すと、鞄1の下辺の連結具10のヒンジ部11を軸として蓋体3を本体2に対して回動させることができる。これにより、鞄1の上辺を開放することができる。さらに、
図9に示すように、鞄1の連結具10を全て外すと、蓋体3を本体2から完全に離すことができる。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、本体2と蓋体3とを連結する連結具10が、蓋体3を本体2に対して回動させることができるヒンジ部11を備えており、取付体132が基台131から分離することで、ヒンジ部11が蓋体3から分離される。そのため、ヒンジ部11が結合された状態では、ヒンジ部11は蓋体3を本体2に対して回動させるように機能するが、ヒンジ部11が分離されると、蓋体3は本体2から離間されて鞄1を開放することができる。このような連結具10が、本体2および蓋体3の左右両側辺および下辺に取り付けられるため、一の辺の連結具10を残して他の辺の連結具10を分離することで、残した辺の連結具10のヒンジ部11を軸として蓋体3が回動し、鞄1を開放することができる。これにより、三方向に鞄1を開放できるとともに、連結具10を全て分離すると蓋体3を本体2から完全に外すこともできる。その結果、鞄1を広げるスペースや鞄1の状態に応じて、所望の方向に鞄1を開けることができ、狭いスペースや移動中でも容易に鞄1を開放することができる。
【0025】
次に、本発明に係る鞄1の第2実施形態について、
図10〜
図18を参照して説明する。なお、上記第1実施形態に係る鞄1と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0026】
図10に示すように、鞄1は、本体2と、蓋体3とを備え、本体2の上面および左側面に、鞄1を提げるための把持部4が設けられており、本体2および蓋体3の底面に、キャスター5が設けられている。本体2と蓋体3とは対応する辺の開口縁同士が互いに突き合わされて配置され、本体2および蓋体3の特定の辺がヒンジ部21を有する連結具20により連結されている。連結具20は、上記第1実施形態と同様に、左右両側辺と底辺の三辺に設けられており、左右両側辺にはそれぞれ2個ずつ、底辺には1個設けられている。
【0027】
図11〜
図14に示すように、連結具20は、蓋体3に取り付けられる軸部211と、軸部211を回動自在に支持する軸受部212と、軸受部212を本体2に取り付けるための本体取付部22とを備えている。軸部211は、円柱状を呈しており、一対の脚部23により両端が支持されている。脚部23は、蓋体3の開口縁付近にネジ等の任意の手段によって取り付けられている。
【0028】
軸受部212は、第1部材261と第2部材262とから構成されている。第1部材262および第2部材262はいずれも、断面半円形状の凹溝状となっており、互いに凹溝を対向させて合わさることで、軸部211を回動可能に支持する軸受部212を構成している。
【0029】
本体取付部22は、本体2に固定される固定部221と、固定部221に対して可動する可動部222と、可動部222を固定部221から離脱させる解除具223とから構成されている。固定部221は、略矩形の板状に形成されており、ネジ等の任意の手段によって、軸部211に対向する位置で本体2の開口縁付近に取り付けられている。固定部221の蓋体3側の端部に軸受部212の第1部材261が設けられている。第1部材261は、蓋体3側に凹溝が向くように配置されている。可動部222は、略矩形の板状に形成されており、固定部221に対して、固定部221から離脱する方向に付勢されるように取り付けられている。可動部222の蓋体3側の端部に軸受部212の第2部材262が設けられている。第2部材262は、本体2側に凹溝が向くように配置されている。
【0030】
解除具223は、可動部222に対して本体2側から蓋体3側またはその逆方向へとスライド可能で、本体2側へ付勢するように取り付けられている。固定部221には、固定部221から突出した係合爪241が設けられており、解除具223には、固定部221側へ突出し、係合爪241と係合可能な係合片242が設けられている。この係合片242は、可動部222が固定部221上に載置され、解除具223が本体2側へ付勢された状態で、係合爪241と係合する位置に設けられている。
【0031】
可動部222は、固定部221上に載置される状態と、本体2から浮き上がり蓋体3側に移動した状態との間で移動可能となっており、固定部221上に載置されると、係合爪241と係合片242とが係合して、固定部221と結合される。このとき、係合爪241と係合片242とが係合機構24を構成している。そして、係合爪241と係合片242とが一体化されると、第1部材261および第2部材262が軸部211を挟み、軸部211と軸受部212とが一体化され、本体2と蓋体3との突き合わせ部分に軸部211と軸受部212とからなるヒンジ部21が構成される。解除具223が押圧されると、解除具223が可動部222に対してスライドし、係合片242が係合爪241から外れ、可動部222が固定部221から分離される。これにより、ヒンジ部21を構成する第1部材261と第2部材262とが分離される。
【0032】
可動部222には錠25が設けられている。錠25により解除具223が押圧できないようになっており、蓋体3の意図しない開放を防止することができる。この錠25には、シリンダ錠等の既知の任意の錠を採用することができる。
【0033】
次に、
図15〜
図18を参照して、上記のように構成された連結具20を取り付けた鞄1の使用方法について説明する。例えば、
図15に示すように、鞄1の左側辺および下辺の連結具20を外すと、鞄1の右側辺の連結具20のヒンジ部21を軸として蓋体3を本体2に対して回動させることができる。これにより、鞄1の左側辺を開放することができる。反対に、
図16に示すように、鞄1の右側辺および下辺の連結具20を外すと、鞄1の左側辺の連結具20のヒンジ部21を軸として蓋体3を本体2に対して回動させることができる。これにより、鞄1の右側辺を開放することができる。また、
図17に示すように、鞄1の左右両側辺の連結具20を外すと、鞄1の下辺の連結具20のヒンジ部21を軸として蓋体3を本体2に対して回動させることができる。これにより、鞄1の上辺を開放することができる。さらに、
図18に示すように、鞄1の連結具20を全て外すと、蓋体3を本体2から完全に離すことができる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、本体2と蓋体3とを連結する連結具20が、蓋体3を本体2に対して回動させることができるヒンジ部21を備えており、ヒンジ部21を構成する軸受部212が第1部材261と第2部材262とに分離されることで、軸部211が軸受部212から離間可能となっている。そのため、ヒンジ部21が結合された状態では、ヒンジ部21は蓋体3を本体2に対して回動させるように機能するが、ヒンジ部21を構成する第1部材261と第2部材262とが分離されると、蓋体3は本体2から離間されて鞄1を開放することができる。このような連結具20が、本体2および蓋体3の左右両側辺および下辺に取り付けられるため、一の辺の連結具20を残して他の辺の連結具20を分離することで、残した辺の連結具20のヒンジ部21を軸として蓋体3が回動し鞄1を開放できる。これにより、三方向に鞄1を開放できるとともに、連結具20を全て分離すると蓋体3を本体2から完全に外すこともできる。その結果、鞄1を広げるスペースや鞄1の状態に応じて、所望の方向に鞄1を開けることができ、狭いスペースや移動中でも容易に鞄1を開放することができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、上記第1実施形態では、蓋体取付部13が基台131と取付体132とに分離可能に形成され、基台131から取付体132が分離されることで、蓋体3から取付体132、延いては第2軸受部113が分離される構成となっているが、連結具10の構成は上記構成に限られない。連結具10のヒンジ部11は、第1軸受部112および第2軸受部113の一方が本体2に、他方が蓋体3に、いずれか一方が分離可能な状態で設けられれば良く、例えば、本体取付部12が上記第1実施形態の蓋体取付部13のように構成され、本体取付部12が分離されることで、第1軸受部112が本体2から分離される構成としても良い。この場合でも、分離可能な側の第1軸受部112または第2軸受部113と本体2または蓋体3との間に、それぞれを一体化して本体2と蓋体3との突き合わせ部分にヒンジ部11を構成する係合機構14が設けられれば良い。すなわち、上記の例では、分離される第1軸受部112と本体2との間に、上記第1実施形態のような係合爪141および係合片142からなる係合機構14が設けられ、係合爪141と係合片142とが一体化することで、本体2と蓋体3との突き合わせ部分にヒンジ部11が構成されるようにすれば良い。
【0037】
また、上記第2実施形態では、軸受部212が第1部材261と第2部材262とに分離されることで、ヒンジ部21が軸部211と軸受部212とに分離される構成となっているが、ヒンジ部21の構成は上記構成に限られない。例えば、軸部211が2つの部材に分離され、軸受部212から抜け出るような構成とすることもできる。また、上記第2実施形態では、軸部211が蓋体3に取り付けられ、軸受部212が本体取付部22を介して本体2に取り付けられているが、軸部211が本体2に、軸受部212が蓋体3に取り付けられても良い。この場合でも、軸部211と軸受部212との間には、それぞれを一体化して本体2と蓋体3との突き合わせ部分にヒンジ部22を構成する係合機構24が設けられれば良い。
【0038】
また、連結具10,20は、上記第1実施形態および第2実施形態に限られず、ヒンジ部11が本体2および蓋体3の一方から分離可能、または、ヒンジ部21を構成する部材が分離可能となっていれば良い。例えば、第1軸受部112および第2軸受部113がそれぞれ本体取付部12および蓋体取付部13を介して本体2および蓋体3に取り付けられており、軸部111が第1軸受部112および第2軸受部113から離脱することでヒンジ部11が分離できる構成とすることもできる。
【0039】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、連結具10は、本体2および蓋体3の左右両側辺間と、本体2および蓋体3の下辺間とに設けているが、連結具10は、本体2および蓋体3の少なくとも二辺に設けられれば上記実施形態に限られない。すなわち、連結部10は、例えば、本体2および蓋体3の両側辺間にのみ設けることもできるし、本体2および蓋体3の左右いずれか一方の側辺間と、本体2および蓋体3の上辺間または下辺間とに設けることもできる。このとき、通常の使用状態で鞄1が開かないように、他の辺に既知のスーツケース等に用いられる錠を取り付けても良い。このような構成でも、二方向から鞄1を開放できることで、鞄1の利便性は十分に高まる。特に、本体2および蓋体3の左右いずれか一方の側辺間と、上辺間または下辺間とに設ける構成では、上下方向と左右方向というように異なる方向へ鞄1を開くことができ、より鞄1の利便性は向上する。また、上記実施形態では、連結具10は左右両側辺にそれぞれ2個ずつ設けているが、各辺の本体2と蓋体3との開放が防止され、必要時には蓋体3を本体2に対して回動できれば、連結具10の個数は特に限定されず、各辺に少なくとも1個設けられれば良い。
【0040】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、係合機構14,24は、係合爪141,241と係合片142,242とを係合させる構成としているが、結合・分離可能な構成であれば、既知の任意の構成を採用することができる。
【0041】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、各辺に2個の連結具10,20が設けられる場合において、いずれの連結具10,20にも錠15,25を設けているが、各辺に2個の連結具10,20が設けられる場合には、いずれか一方の連結具10,20にのみ錠15,25を設けることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 鞄
2 本体
3 蓋体
10 連結具
11 ヒンジ部
111 軸部
112 第1軸受部
113 第2軸受部
14 係合機構
15 錠
20 連結具
21 ヒンジ部
211 軸部
212 軸受部
24 係合機構
25 錠