(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685956
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20200413BHJP
C23C 14/35 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
H01L21/285 S
C23C14/35 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-44119(P2017-44119)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-145509(P2018-145509A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 達己
【審査官】
村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0205949(US,A1)
【文献】
特開平10−102246(JP,A)
【文献】
特表平06−504092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/285
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に対向するターゲットとを収容する真空槽と、
前記真空槽外において前記ターゲットの裏側に位置する第1面を有する回転部材と、
前記第1面に設けられた第1磁石と、
磁極が前記第1磁石と反対であり、前記第1面において前記第1磁石の内側に設けられた第2磁石と、
前記第1磁石と前記第2磁石との間に設けられ、鉛直方向に往復移動可能な磁性体と、
を備え、
前記磁性体は、円板状または円柱状の頭部を有し、
前記回転部材は、前記頭部を収容する凹部を有する、半導体製造装置。
【請求項2】
前記磁性体は、前記第1磁石と前記第2磁石との中央に設けられている、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記回転部材は、前記磁性体が係合されるねじ穴を有する、請求項1または2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記第1磁石が第1半円形に配置され、前記第2磁石が前記第1半円形と相似な第2半円形に配置され、
前記磁性体が、前記第1半円形の直径部分と前記第2半円形の直径部分との間に配置されているとともに、前記第1半円形の円弧部分と前記第2半円形の円弧部分との間にも配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石を用いたスパッタ装置、いわゆるマグネトロンスパッタ装置は、半導体製造装置の一例として知られている。マグネトロンスパッタ装置では、膜が基板に形成されるとき、磁石によって基板とターゲットとの間に磁界が発生する。このとき、ターゲットの消費に従い、膜の均一性が損なわれる可能性がある。膜の均一性を確保するためには、磁場強度を変更することが望ましい。
しかし、一般的なマグネトロンスパッタ装置では、一旦設定された磁場強度を途中で変更することは考慮されていない。そのため、磁石の取り換え等の大掛かりな作業が必要になり、その結果、装置の稼働率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−291262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、稼働率の低下を抑制することが可能な半導体製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る半導体製造装置は、真空槽と、回転部材と、第1磁石と、第2磁石と、磁性体と、を備える。真空槽は、基板と、基板に対向するターゲットとを収容する。回転部材は、真空槽外においてターゲットの裏側に位置する第1面を有する。第1磁石は、第1面に設けられている。第2磁石は、磁極が第1磁石と反対であり、第1面において第1磁石の内側に設けられている。磁性体は、第1磁石と第2磁石との間に設けられ、鉛直方向に往復移動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態に係る半導体製造装置の概略的な断面図である。
【
図3】(a)は、変形例に係る支持部材の要部を拡大した断面図である。(b)は、(a)に示す支持部材に磁性体が装着された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0008】
図1は、本実施形態に係る半導体製造装置の概略的な断面図である。本実施形態に係る半導体製造装置1は、磁石を用いたスパッタ装置、いわゆるマグネトロンスパッタ装置である。具体的には、半導体製造装置1は、真空槽10と、静電チャック11と、パッキング部材12と、水槽20と、回転部材30と、第1磁石40と、第2磁石41と、磁性体50と、を備える。
【0009】
真空槽10は、基板100およびターゲット200を収容する。基板100は、例えばシリコン基板を含む。また、ターゲット200は、例えばアルミニウム等の金属部材を含む。
【0010】
静電チャック11は、真空槽10内で基板100を固定する。パッキング部材12は、真空状態を維持するために真空槽10を密閉する。パッキング部材12には、ターゲット200が固定されている。真空槽10内で、基板100とターゲット200とは、互いに対向している。
【0011】
水槽20は、パッキング部材12上に設けられている。水槽20内には、回転部材30と、第1磁石40と、第2磁石41と、磁性体50と、が収容されている。また、水槽20内には、ターゲット200を冷やすための水が貯留されている。そのため、回転部材30、第1磁石40、第2磁石41、および磁性体50の材料は、水に錆びにくい特性を有していることが望ましい。
【0012】
水槽20の上部には、穴部21が設けられている。穴部21は、磁性体50の位置を調整する工具を水槽20内に差し込むために形成されている。回転部材30が回転しているとき、穴部21は、水漏れを防ぐために蓋部22によって塞がれている。
【0013】
回転部材30は、軸部材31と、支持部材32と、を有する。回転部材30は、軸部材31を回転軸として回転する。軸部材31は、支持部材32の中央に設けられている。支持部材32は、ターゲット200の裏側に位置する第1面32aと、第1面32aの反対側の第2面32bと、を有する。
【0014】
図2は、支持部材32を第1面32a側から見た平面図である。第1面32aには、第1磁石40が、半円形(第1半円形)に配置されている。第1磁石40の内側には、第2磁石41が、第1磁石40の半円形と相似な半円形(第2半円形)に配置されている。本実施形態では、第1磁石40の磁極はN極であり、第2磁石41の磁極はS極である。しかし、第1磁石40の磁極がS極であり、第2磁石の磁極がN極であってもよい。
【0015】
また、
図2に示すように、支持部材32の外周部には、切欠き32cが設けられている。切欠き32cは、回転中の支持部材32を、磁性体50が水槽20の穴部21に対向する位置、換言すると磁性体50を調整可能な位置で停止させるための目印である。この位置では、光学センサ33が切欠き32cに対向するので、光学センサ33の光を受光できる。そのため、光学センサ33の受光状態に基づいて支持部材32を上記位置で停止することができる。
【0016】
磁性体50は、第1磁石40の半円形の直径部分と第2磁石41の半円形の直径部分との間に配置されるとともに、第1磁石40の半円形の円弧部分と第2磁石41の半円形の円弧部分との間にも配置されている。前者の磁性体50は、ウェハ形状の基板100の中央付近に形成される膜の厚さを調整するために用いられる。一方、後者の磁性体50は、基板100の外周付近に形成される膜の厚さを調整するために用いられる。
【0017】
磁性体50は、鉛直方向に往復移動できるように支持部材32に設けられている。例えば、支持部材32には、磁性体50が係合するねじ穴が設けられている。この場合、作業者が、水槽20の穴部21から工具を差し込んで磁性体50を右回りおよび左回りに回転させると、磁性体50の頭部50aは、支持部材32とパッキング部材12との間を鉛直方向に往復移動できる。頭部50aは、円板状または円柱状であることが望ましいが、他の形状であってもよい。頭部50aが円板状または円柱状である場合、第1磁石40および第2磁石41によって形成される磁場強度を全方向で均一に変化させることができる。
【0018】
以下、上述した半導体製造装置1を用いた成膜プロセスについて簡単に説明する。半導体製造装置1では、
図1に示すように、第1磁石40から真空槽10内を経由して第2磁石41に至る磁力線Bが発生する。そのため、真空槽10内では、プラズマ領域Rが基板100とターゲット200との間に発生する。
【0019】
プラズマ領域Rでは、真空槽10内に予め注入された希ガス(例えばアルゴン)のプラズマ密度が高くなり、ターゲット200から基板100にスパッタされる金属粒子(例えばアルミニウム粒子)が増加する。そのため、基板100に膜を形成する時間を短縮することができる。このとき、基板100内で膜厚が不均一に形成される場合には、不均一な部分に対応する磁性体50の位置を上述した方法で調整する。
【0020】
例えば、基板100の中心部分の膜厚が他の部分に比べて厚い場合、当該中心部分に対応する磁性体50、具体的には、軸部材31の付近に配置された磁性体50をターゲット200側へ近づける。この場合、磁力線Bの一部が磁性体50に吸収されるので、磁場強度は弱まる。その結果、スパッタ量が局所的に減少するので、膜厚の不均一が改善される。
【0021】
以上説明した本実施形態によれば、磁性体50の位置を調整することによって、磁場強度を局所的に変化させることができる。これにより、基板100に形成される膜の厚さの均一性を向上させることができる。磁性体50の位置は、上述したように、水槽20に設けられた穴部21から工具(例えばドライバ)を差し込むことによって、簡易に調整できる。そのため、第1磁石40および第2磁石41を取り換えるような大掛かりな作業は不要になるので、装置の稼働率の低下を抑制することができる。
【0022】
また、本実施形態では、磁性体50が、第1磁石40と第2磁石41との間に設置されている。そのため、磁性体50の位置が変化しても、プラズマ領域Rの発生位置は変動しにくい。そのため、基板100に対する成膜位置の精度を維持することができる。なお、磁性体50が、第1磁石40と第2磁石41との中央、すなわち第1磁石40および第2磁石41から等距離の位置に設けられていると、プラズマ領域Rの発生位置をより安定させることができる。
【0023】
さらに、本実施形態では、複数の磁性体50が、支持部材32の第1面32aに分散して配置されている。そのため、基板100の中心エリアや外周エリアなど複数のエリアで膜厚を調整することができる。
【0024】
(変形例)
以下、
図3(a)および
図3(b)を参照して、上述した実施形態の変形例について説明する。
図3(a)は、本変形例に係る支持部材32の要部を拡大した断面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示す支持部材に磁性体50が装着された状態を示す。
【0025】
図3(a)に示すように、本変形例では、支持部材32は、ねじ穴34と、ねじ穴34に連通する凹部35と、を有する。ねじ穴34には、
図3(b)に示すように、磁性体50が係合される。これにより、磁性体50を右回りおよび左回りに回転させると、磁性体50の頭部50aは、支持部材32とパッキング部材12との間を鉛直方向に往復移動できる。
【0026】
凹部35は、
図3(b)に示すように、磁性体50の頭部50aを収容できる。頭部50aが凹部35に収容されると、第1磁石40および第2磁石41によって形成される磁場強度は、磁性体50の影響を受けない。すなわち、本変形例では、磁性体50が無い磁場環境も作り出すこともできる。この磁場強度は、プラズマ領域Rに影響するので、結果的に基板100に形成される膜の厚さに影響する。
【0027】
したがって、本変形例によれば、磁場強度の変動範囲が広がるので、膜厚の調整範囲を広げることが可能となる。
【0028】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
10 真空槽、 30 回転部材、34 ねじ穴、35 凹部、40 第1磁石、41 第2磁石、50 磁性体、50a 頭部