特許第6685959号(P6685959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6685959
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】反射型露光マスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20200413BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20200413BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   G03F1/24
   G02B5/08 A
   G02B5/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-56399(P2017-56399)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-159782(P2018-159782A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 武
(72)【発明者】
【氏名】高居 康介
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−340553(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1285975(KR,B1)
【文献】 特開平06−120125(JP,A)
【文献】 特開2015−125166(JP,A)
【文献】 特開2013−197481(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0192571(US,A1)
【文献】 特開2015−141972(JP,A)
【文献】 特開2016−009744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0131947(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0112510(US,A1)
【文献】 特表2015−529855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/24
G02B 5/00
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に選択的に設けられ、第1層と、前記第1層よりも高い屈折率を有する第2層と、を交互に積層した多層構造を有し、露光光を反射する光反射体と、
前記光反射体の周りに設けられ、その側面を覆い、前記露光光の少なくとも一部を透過する透光体と、
を備え
前記透光体の屈折率は、前記第1層の屈折率と、前記第2層の屈折率と、の間の値である反射型露光マスク。
【請求項2】
前記透光体は、ジルコニウム、炭素または炭化ホウ素を含む請求項1記載の反射型露光マスク。
【請求項3】
前記透光体の前記側面に垂直な方向の厚さは、前記透光体における露光光の侵入長に、前記透光体における前記露光光の屈折角の正接を乗じた値よりも厚い請求項1または2に記載の反射型露光マスク。
【請求項4】
前記光反射体の周りにおいて前記基板の表面を覆い、前記透光体と前記基板との間に位置する中間層をさらに備え、
前記透光体の前記基板の表面に垂直な方向の厚さは、前記反射部における露光光の侵入長よりも厚い請求項1〜3のいずれか1つに記載の反射型露光マスク。
【請求項5】
前記光反射体は、その反射率を部分的に低下させる局部欠陥を含み、
前記透光体は、前記光反射体の反射率が低下した前記部分の側面上に選択的に設けられる請求項1〜のいずれか1つに記載の反射型露光マスク。
【請求項6】
前記透光体は、前記光反射体に照射される前記露光光に対する消衰係数が0.043以下である請求項1〜のいずれか1つに記載の反射型露光マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、反射型露光マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
EUV光(Extreme Ultraviolet light)を用いたフォトリソグラフィ、所謂EUV露光に用いられる反射型露光マスクは、例えば、ガラス基板上に設けられた多層膜によりEUV光を選択的に反射する構造を有する。EUV露光では、反射型露光マスクにEUV光を照射し、ウェーハ上に形成されたフォトレジスト膜上にその反射光を結像させることにより所定のパターンを転写する。この際、転写パターンの精度を向上させるためには、レジスト膜上に結像される光学像のコントラストを高くできる反射型露光マスクを用いることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6872497号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、光学像のコントラストを向上させる反射型露光マスクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る反射型露光マスクは、基板と、前記基板上に選択的に設けられ、第1層と、前記第1層よりも高い屈折率を有する第2層と、を交互に積層した多層構造を有し、露光光を反射する光反射体と、前記光反射体の周りに設けられ、その側面を覆い、前記露光光の少なくとも一部を透過する透光体と、を備える。前記透光体の屈折率は、前記第1層の屈折率と、前記第2層の屈折率と、の間の値である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る反射型露光マスクを示す模式図である。
図2】第1実施形態に係る反射型露光マスクと、比較例に係る反射型露光マスクと、を示す模式断面図である。
図3】第1実施形態に係る反射型露光マスクの特性を示す模式図である。
図4】第1実施形態の変形例に係る反射型露光マスクを示す模式断面図である。
図5】第2実施形態に係る反射型露光マスクを示す模式図である。
図6】第2実施形態に係る反射型露光マスクの特性を示す模式図である。
図7】第2実施形態の変形例に係る反射型露光マスクを示す模式図である。
図8】第2実施形態の別の変形例に係る反射型露光マスクを示す模式断面図である。
図9】第2実施形態の他の変形例に係る反射型露光マスクを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る反射型露光マスク1を示す模式図である。図1(a)は、反射型露光マスク1の上面図であり、図1(b)は、図1(a)中に示すA−A線に沿った断面図である。
【0009】
反射型露光マスク1は、基板10と、光反射体20と、透光体30と、を備える。基板10は、例えば、ガラス基板である。光反射体20は、基板10の上に選択的に設けられる。透光体30は、光反射体20の周りに設けられ、光反射体20の側面を覆う。
【0010】
図1(a)に示すように、反射型露光マスク1は、例えば、複数の光反射体20を備える。透光体30は、光反射体20間および光反射体20の周りの基板10の表面を覆うように設けられる。
【0011】
図1(b)に示すように、光反射体20は、バッファ層21、第1屈折率層23、第2屈折率層25および保護層27を含む多層構造を有する。バッファ層21は、基板10上に設けられ、第1屈折率層23および第2屈折率層25は、バッファ層21上に交互に積層される。保護層27は、多層構造の最上層として設けられる。
【0012】
バッファ層21は、例えば、シリコン層であり、第1屈折率層23および第2屈折率層25よりも厚く形成される。第1屈折率層23は、例えば、モリブデン層であり、バッファ層21に上に形成される。第2屈折率層25は、例えば、シリコン層であり、第1屈折率層23の上に設けられる。
【0013】
光反射体20は、例えば、バッファ層21上に交互に積層された第1屈折率層23および第2屈折率層25の複数のペアを含む。第1屈折率層23は、例えば、第2屈折率層25の屈折率よりも低い屈折率を有する。さらに、光反射体20は、保護層27として、例えば、2.5nmの厚さのルテニウム層を含む。
【0014】
透光体30は、例えば、ジルコニウムを含む。透光体30は、例えば、EUV光の吸収体として用いられる窒化タンタル(TaN)および窒化タンタルボロン(TaBN)よりも小さい消衰係数(光吸収係数)を有する。TaNの消衰係数は0.0436であり、TaBNの消衰係数は0.0437であり、透光体30は、例えば、0.043以下の消衰係数を有する。
【0015】
透光体30は、基板10上に、例えば、ジルコニウム層を堆積することにより形成される。例えば、光反射体20の高さよりも厚いジルコニウム層を堆積させ、その後、ジルコニウム層をエッチバックもしくは研磨し、光反射体20の上面20aを露出させることにより形成される。図1(b)に示すように、透光体30の上面30aは、光反射体20の上面20aと略同一のレベルに位置する。すなわち、透光体30の上面30aは、光反射体20の上面20aの高さと略同一の高さに形成される。
【0016】
次に、図2および図3を参照して、第1実施形態に係る反射型露光マスク1の特性を説明する。図2は、反射型露光マスク1と、比較例に係る反射型露光マスク2と、を示す模式断面図である。図3は、反射型露光マスク1および2の特性を示す模式図である。
【0017】
図2(a)は、反射型露光マスク1を示す断面図であり、図2(b)は、反射型露光マスク2を示す断面図である。図2(b)に示すように、反射型露光マスク2では、透光体30が設けられない。また、図2(a)および(b)中に示すL1、L2およびL3は、各露光マスクに照射される露光光の一部を示している。露光光L1、L2およびL3は、平行光であり、所定の入射角、例えば、6度を持って反射型露光マスク1および2に照射される。
【0018】
図2(a)に示す反射型露光マスク1では、露光光L1は、光反射体20の上面20aから入射された後、第1屈折率層23と第2屈折率層25との間の界面IFで反射され、光反射体20の上面20aから上方に出射される。一方、露光光L2は、透光体30の上面30aから入射し、透光体30中を伝播した後、界面IFで反射される。さらに、露光光L2は、光反射体20中を上方に伝播し、光反射体20の上面20aから出射される。
【0019】
図2(b)に示す反射型露光マスク2でも、露光光L1は、光反射体20中を伝播し、界面IFで反射された後、上方に伝播し、光反射体20の上面から出射される。一方、露光光3は、露光雰囲気中を伝播した後、界面IFで反射され、光反射体20中を上方に伝播し、光反射体20の上面20aから出射される。
【0020】
例えば、モリブデン層である第1屈折率層23の厚さを2.8ナノメートル(nm)とし、シリコン層である第2屈折率層25の厚さを4.2nmとする。また、光反射体20は、40ペアの第1屈折率層23および第2屈折率層25を含むとする。
【0021】
光反射体20中に侵入するEUV光は、その約90%が上面20aから20ペア分の深さに位置する界面IFに達し、上方に反射される。すなわち、殆どのEUV光は、光反射体20の半分の高さまで侵入する。
【0022】
EUV光の屈折率は、シリコン中において0.999であり、モリブデン中において0.921である。真空の屈折率を1.000とすると、光反射体20の半分の位置まで侵入し、界面IFにおいて反射された露光光L1と、同じ界面IFで反射された露光光L3と、の位相差は、例えば、約2分の1π(π/2)ラジアンである。
【0023】
これに対し、屈折率が真空中よりも大きい透光体30中を伝播し界面IFで反射される露光光L2と、露光光L1と。の位相差は、π/2よりも小さくなる。例えば、透光体30の材料としてジルコニウムを用いた場合、露光光L1とL2の位相はほぼ一致する。
【0024】
図3(a)は、光反射体20で反射されたEUV光によりウェーハ上に結像される光学像20Rを示す模式図である。図3(b)は、図3(a)中に示すB−B線に沿ったEUV光の強度を示す模式図である。また、図3(b)中に示す光強度分布LAおよびLBは、反射型露光マスク1および2によりそれぞれ反射されたEUV光を結像した光学像の光強度分布を示している。
【0025】
光強度分布LAは、反射型露光マスク1により結像された光学像の光強度分布を示し、光強度分布LBは、反射型露光マスク2により結像された光学像の光強度分布を示している。図3(b)に示すように、光強度分布LAにおける光強度のピーク値は、光強度分布LBのピーク値よりも高い。すなわち、反射型露光マスク1では、露光光L1とL2の位相が一致し、その干渉により反射光の強度が強められる。このため、ウェーハ上の光学像の光強度が高くなる。一方、反射型露光マスク2では、露光光L1とL3の位相が異なり、その干渉により反射光の強度が低下する。結果として、反射型露光マスク1の光学像よりも光学像の光強度は低くなる。
【0026】
また、反射型露光マスク1では、光反射体20に入射された後、界面IFにより反射され、透光体30中を上方に伝播する露光光(図示しない)と、露光光L1と、の位相差も小さくすることができる。さらに、この効果は、光反射体20中に最も深く侵入する露光光に限らず、複数の界面IFのそれぞれにおいて反射される露光光間の干渉も寄与する。このため、反射型露光マスク1によりウェーハ上に結像される光学像のコントラストは、反射型露光マスク2のコントラストよりも高くなる。
【0027】
このように、実施形態に係る反射型露光マスク1では、透光体30を設けることにより反射光の強度を高くすることが可能であり、ウェーハ上に結像される光学像のコントラストを向上させることができる。透光体30に用いられる材料は、ジルコニウムの限定される訳ではなく、露光光L1とL2の位相差を小さくできるものであれば良い。透光体30には、例えば、炭素、炭化ホウ素などを用いることができる。また、透光体30の屈折率は、例えば、第1屈折率層23の屈折率と、第2屈折率層25の屈折率と、の間の値であることが好ましい。
【0028】
図4(a)および(b)は、第1実施形態の変形例に係る反射型露光マスク4、5を示す模式断面図である。
【0029】
図4(a)に示す反射型露光マスク4は、基板10と透光体30との間に設けられた中間層40をさらに備える。中間層40は、例えば、シリコン酸化層である。中間層40の形成過程では、例えば、光反射体20の高さHよりも厚いシリコン酸化層を形成し、光反射体20および基板10の表面を覆う。さらに、その表面を平坦に研磨した後において、シリコン酸化層を選択的にエッチバックする。
【0030】
例えば、反射型露光マスク上に設けられる反射パターンが微細化され、光反射体20のアスペクト比(高さH/底面の幅W)が大きくなると、反射型露光マスクの製造過程において光反射体20が倒れるおそれが生じる。そこで、反射型露光マスク4では、光反射体20の倒壊を防ぐために、光反射体20の下部を覆う中間層40が設けられる。
【0031】
透光体30は、中間層40の上に設けられ、その上面30aが光反射体20の上面20aと略同じ高さになるように設けられる。透光体30は、中間層40の上面からの高さがHとなるように設けられる。透光体30の高さHは、例えば、EUV光の光反射体20中への侵入長Lpよりも大きいことが好ましい。ここで、侵入長Lpは、例えば、光反射体20の等価的な吸収係数の逆数の半分である。第1屈折率層23および第2屈折率層25のペア数を40とした時、透光体30は、例えば、光反射体20の高さHの2分の1と等しいか、もしくは、Hの2分の1よりも高い。
【0032】
透光体30の上面30aから入射した露光光L2は、透光体30の内部を伝播した後、中間層40よりも上のレベルに位置する界面IFにより反射され、光反射体20の上面20aから放出されウェーハ上に到達する。一方、透光体30中および中間層40中の両方を伝播する露光光(図示せず)は、透光体30より下のレベルに位置する界面IFにより反射され、光反射体20の内部を伝播する。透光体30よりも下のレベルに位置する界面IFで反射された露光光の光反射体20中における伝播距離は、侵入長Lpよりも長くなる。したがって、このような露光光は、光反射体20に吸収されるため反射光として放出されない。
【0033】
このように、反射型露光マスク4では、中間層40よりも上のレベルに位置する界面IFで反射された露光光L2だけが露光光L1(図2(a)参照)と干渉し、ウェーハ上に結像される光学像の光強度を透光体30により高くすることができる。
【0034】
図4(b)に示す反射型露光マスク5は、光反射体20の側面を覆う透光体50を有する。透光体50は、光反射体20の周りに露出した基板10の表面全体を覆うのではなく、その一部を露出させるように設けられる。すなわち、透光体50は、光反射体20の側面だけを覆う。
【0035】
透光体50に用いられる材料は、ジルコニウム、または、露光光L1とL2の位相差を小さくできるものであれば良い。透光体50には、例えば、炭素、炭化ホウ素などを用いることができる。また、透光体50の屈折率は、例えば、第1屈折率層23の屈折率と、第2屈折率層25の屈折率と、の間の値であることが好ましい。
【0036】
図4(b)に示すように、露光光L2の屈折角をθとすれば、光反射体20の側面に垂直な方向における透光体50の幅Wは、例えば、侵入長Lp×tanθと同じか、それよりも広い。これにより、露光光L1(図2(a)参照)と、露光光L2と、の位相差が小さくなり、ウェーハ上に結像される光学像の光強度を高くすることができる。すなわち、透光体50の側面から入射し、界面IFにより反射される露光光(図示せず)は、光反射体20中において吸収されるため、例えば、露光光L1と位相が異なる反射光が光反射体20から放出されることはなく、光学像の光強度低下を防ぐことができる。
【0037】
透光体50の形成過程では、例えば、基板10の表面および光反射体20を覆い、透光体50の幅Wに対応する厚さを有するジルコニウム層を堆積する。その後、例えば、異方性RIE(Reactive Ion Etching)を用いて、光反射体20の側面上に形成されたジルコニウム層を残し、基板10の表面上および光反射体20の上面上に形成された部分を選択的に除去する。
【0038】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る反射型露光マスク6を示す模式図である。図5(a)は、反射型露光マスク6を示す上面図であり、図5(b)は、図5(a)中に示すC−C線に沿った断面を示す模式図である。
【0039】
図5(a)に示すように、反射型露光マスク6は、基板10と、複数の光反射体20と、透光体60と、を備える。光反射体20は、基板10の上に設けられ、透光体60は、光反射体20の側面上に選択的に設けられる。
【0040】
この例では、光反射体20は、その側面に欠損部Dpを有し、透光体60は、欠損部Dpを覆うように形成される。透光体60は、例えば、EBデポジションを用いて形成される。すなわち、透光体60の原料となるガス雰囲気中において、欠損部Dpに電子線(Electron Beam:EB)を照射することにより、欠損部Dp上に透光体60を選択的に堆積させる。
【0041】
図5(b)に示すように、光反射体20は、基板上に交互に積層された第1屈折率層23および第2屈折率層25を含む。透光体60は、光反射体20の側面上に設けられ、例えば、侵入長Lp×tanθと同じか、それよりも広い幅Wを有する。透光体60に用いられる材料は、例えば、ジルコニウムである。また、透光体60は、露光光L1とL2の位相差を小さくできるものであれば良く、例えば、炭素、炭化ホウ素などを用いることができる。また、透光体60の屈折率は、例えば、第1屈折率層23の屈折率と、第2屈折率層25の屈折率と、の間の値であることが好ましい。
【0042】
図6は、第2実施形態に係る反射型露光マスク6の特性を示す模式図である。図6は、図5(a)中に示すC−C線に沿った部分からウェーハ上に反射される光強度分布を示す模式図である。図6中に破線で示す光強度分布LCは、反射型露光マスク6の特性を示している。また、実線で示す光強度分布LDは、透光体60を設けない場合の特性を示している。
【0043】
光強度分布LDに示すように、透光体60を設けない場合、欠損部Dpを有する光反射体20の反射率は低下する。一方、光反射体20の側面上に透光体60を設けると、露光光L1と露光光L2の位相差がなくなり、その干渉により反射光の強度を高めることができる。その結果、欠損部Dpにより低下した反射率を補償することができる。
【0044】
図7(a)および(b)は、第2実施形態の変形例に係る反射型露光マスク7、8を示す模式図である。
【0045】
図7(a)に示すように、透光体60は、欠損部Dpの内部に埋め込まれても良い。また、図7(b)に示すように、透光体60は、光反射体20における欠損部Dpとは反対側の側面上に選択的に形成しても良い。すなわち、欠損部Dpの反対側の側面おける反射率を高くすれば、ウェーハ上に結像される光学像において光強度の低下を補償することができる。
【0046】
さらに、図7(b)に示す透光体60と、図5(a)もしくは図7(a)に示す透光体60と、を組み合わせても良い。すなわち、光反射体20の両側の側面に透光体60を設け、欠損部Dpがその間に位置するようにしても良い。
【0047】
図8は、第2実施形態の別の変形例に係る反射型露光マスク9を示す模式断面図である。図8は、図5(a)のC−C線に沿った断面に該当する断面を示す模式図である。
【0048】
図8に示す反射型露光マスク9は、基板10の表面および光反射体20の下部側面を覆う中間層40を有する。中間層40は、例えば、光反射体20の倒壊を防ぐために設けられるシリコン酸化層である。
【0049】
図8に示すように、透光体60は、中間層40の上において光反射体20の欠損部Dp(図5(a)参照)を覆うように設けられる。透光体60は、光反射体20の上面20aと略同一のレベルに位置する上面60aを有する。透光体60は、例えば、EUV光の光反射体20中への侵入長Lpと同じか、もしくは、それよりも高い高さHを有する。これにより、露光光L1とL2(図5(b)参照)の位相差を小さくすることが可能となり、欠損部Dpによる反射率の低下を補償することができる。
【0050】
図9(a)および(b)は、第2実施形態の他の変形例に係る反射型露光マスク11、12を示す模式断面図である。図9(a)および(b)は、図5(a)のC−C線に沿った断面に該当する断面を示す模式図である。図9(a)および(b)は、光反射体20の側面上に、例えば、自然酸化膜などの変質層73が存在する場合を示している。
【0051】
図9(a)に示す例では、光反射体20側面上に透光体60を形成する前に、変質層73は除去される。変質層73は、例えば、EBアシストエッチングにより除去される。すなわち、エッチングガス雰囲気中において、変質層73にEBを照射することにより、変質層73を選択的に除去する。透光体60に用いられる材料は、例えば、ジルコニウムである。また、透光体60は、露光光L1とL2の位相差を小さくできるものであれば良く、例えば、炭素、炭化ホウ素などを用いることができる。
【0052】
また、図9(b)に示すように、光反射体20側面上において変質層73の上に透光体60を設けても良い。この場合、露光光L2は、透光体60中および変質層73中の両方を伝播した後に、界面IFにおいて反射される。したがって、透光体60の材料は、変質層73を含む伝播経路を経由した露光光L2と露光光L1との位相が一致するか、その差がより小さくなるように選択される。透光体60は、例えば、窒化クロムを含む。
【0053】
このように、本実施形態は、光反射体20が欠損部Dpを有する場合に、従来技術では実現できなかった修正(反射率の補償)が可能とする。なお、透光体60による光強度の補償は、光反射体20の欠損部Dpに起因するもの限定される訳ではなく、他の欠陥により反射率が局部的に低下する場合にも適用できる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1〜9、11、12…反射型露光マスク、 10…基板、 20…光反射体、 20R…光学像、 20a、30a、60a…上面、 21…バッファ層、 23…第1屈折率層、 25…第2屈折率層、 27…保護層、 30、50、60…透光体、 40…中間層、 73…変質層、 θ…屈折角、 Dp…欠損部、 IF…界面、 L1、L2、L3…露光光、 LA、LB、LC、LD 光強度分布、 Lp…侵入長
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9