(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続点と直流電源とに両端が接続されるリアクトルとを含むDC/DCコンバータを制御する制御装置であって、
前記DC/DCコンバータの現在の状態値に応じて、前記第1スイッチング素子のオン時間の割合であるデューティ比に対するデッドタイムの有無におけるデューティ比の差分である誤差デューティ比、前記DC/DCコンバータに接続され前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサの両端間電圧であるコンデンサ電圧、及び前記コンデンサのコンデンサ電圧検出誤差を推定するオブザーバと、
前記誤差デューティ比と、前記コンデンサ電圧の検出誤差とを含む状態方程式から前記リアクトルを流れるリアクトル電流を制御するための目標値となるリアクトル電流指令値を算出する電流指令生成器と、
前記リアクトル電流指令値に応じて前記DC/DCコンバータのデューティ比を制御するデューティ比制御器と、を備え、
前記リアクトル電流指令値に応じて前記DC/DCコンバータを制御する、制御装置。
第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の接続点と直流電源とに両端が接続されるリアクトルとを含むDC/DCコンバータを制御する制御装置であって、
前記DC/DCコンバータの現在の状態値に応じて、前記第1スイッチング素子のオン時間の割合であるデューティ比に対するデッドタイムの有無におけるデューティ比の差分である誤差デューティ比、前記DC/DCコンバータに接続され前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサの両端間電圧であるコンデンサ電圧、及び前記コンデンサのコンデンサ電圧検出誤差を推定するオブザーバと、
前記コンデンサ電圧の目標値となるコンデンサ電圧指令値から、前記コンデンサ電圧の検出値と前記コンデンサ電圧の検出誤差とを減算することにより得た偏差をPI演算して、前記リアクトルを流れるリアクトル電流を制御するための目標値となるリアクトル電流指令値を算出する電流指令生成器と、
前記リアクトル電流指令値に応じて前記DC/DCコンバータのデューティ比を制御するデューティ比制御器と、を備え、
前記リアクトル電流指令値に応じて前記DC/DCコンバータを制御する、制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態におけるDC/DCコンバータの制御装置30を含むモータ駆動装置100の基本構成を示している。モータ駆動装置100は、直流電源10、DC/DCコンバータ11、低圧側コンデンサ17、高圧側コンデンサ18及び負荷104を含んで構成される。DC/DCコンバータ11は、リアクトル12、第1スイッチング素子14、第2スイッチング素子16を有する。第1スイッチング素子14は、上側スイッチング素子に相当し、第2スイッチング素子16は、下側スイッチング素子に相当する。負荷104は、インバータ105と、インバータ105に接続され、インバータ105によって駆動されるモータ106とを有する。モータ106はU相、V相、W相の3相交流電流により駆動される3相モータである。
【0013】
直流電源10の正極にはリアクトル12の一端が接続され、リアクトル12の他端には第1スイッチング素子14の一端及び第2スイッチング素子16の一端の接続点Cが接続される。第1スイッチング素子14の他端は正極母線19を介して、負荷104を構成するインバータ105の正極側に接続される。第2スイッチング素子16の他端は負極母線20を介して、直流電源10の負極とインバータ105の負極側とに接続される。低圧側コンデンサ17は、DC/DCコンバータ11の入力側で、リアクトル12の一端及び直流電源10の正極の間と負極母線20との間に接続され、電圧を平滑化させるために用いられる。高圧側コンデンサ18は、DC/DCコンバータ11の出力側で、正極母線19及び負極母線20の間に接続され、リアクトル12からの出力電圧を平滑化させるために用いられる。
【0014】
なお、実施の形態では、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16はNPNトランジスタとする。第1スイッチング素子14は、正極母線19側がコレクタ、リアクトル12側がエミッタとされる。第2スイッチング素子16は、リアクトル12側がコレクタ、負極母線20側がエミッタとされる。また、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のそれぞれに並列に環流ダイオードが接続される。
【0015】
DC/DCコンバータ11において、第1スイッチング素子14をオフ状態及び第2スイッチング素子16をオン状態とすることで、リアクトル12を介して直流電源10の正極から負極に向けたリアクトル電流i
Lが流れる。これによって、リアクトル12にエネルギーが蓄積される。次に、第2スイッチング素子16をオフ状態とすることで、リアクトル電流i
Lが遮断され、リアクトル12の端部に直流電源10の電圧(電源電圧v
b)よりも高い電圧が生じる。そして、これに応じた電流が正極母線19に向けて流れて高圧側コンデンサ18が充電されて高圧側コンデンサ18の両端間電圧であるコンデンサ電圧v
cが上昇する。このコンデンサ電圧v
cが負荷104に印加される。また、第1スイッチング素子14がオン状態とされることで、高圧側コンデンサ18から直流電源10の正極へ向けたリアクトル電流i
Lが流れる。これによって、コンデンサ電圧v
cが低下する。DC/DCコンバータ11の出力電圧、すなわちコンデンサ電圧v
cは、キャリア信号の1周期に対する第1スイッチング素子14のオン割合を示すデューティ比によって決定される。
【0016】
DC/DCコンバータ11は、制御装置30によって各スイッチング素子14,16のオンオフ状態が制御される。制御装置30には、DC/DCコンバータ11の現在の状態値が入力される。制御装置30は入力された状態値に応じてDC/DCコンバータ11を制御する。状態値として、直流電源10の電源電圧v
b、リアクトル12を流れるリアクトル電流i
L、コンデンサ18のコンデンサ電圧v
c、負荷であるモータ106の電流i
u,i
w及びモータ106の回転角θの検出値が対応するセンサから制御装置30へ入力される。例えば、モータ駆動装置100は、リアクトル電流i
Lを検出するリアクトル電流検出器22を備える。制御装置30は、モータの電流i
u,i
w及びモータの回転角θからDC/DCコンバータ11の出力電流i
mを算出する。
【0017】
図2は、制御装置30の構成を示す図である。制御装置30は、電流指令生成器(iL指令生成器)31、オブザーバ32、デューティ比制御器34、及び三角波比較器36を含んで構成される。
【0018】
電流指令生成器31には、コンデンサ電圧指令値v
c*とコンデンサ電圧検出値v
cとが入力される。また、電流指令生成器31には、後述のオブザーバ32からリアクトル12を流れるリアクトル電流i
L、後述の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))、及びコンデンサ電圧検出誤差Δv
cの推定値が入力される。電流指令生成器31は、これらの入力値に応じて、リアクトル電流の指令値i
L*を生成する。リアクトル電流指令値i
L*は、リアクトル電流を制御するための目標値となる値であり、後述のデューティ比制御器34に入力される。電流指令生成器31は、後で詳しく説明する。なお、以下において、図中の推定値には上付の波線(チルダ)を付して示す。
【0019】
オブザーバ32は、コンデンサ電圧v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを受けて、これらの値からDC/DCコンバータ11の状態方程式を用いて、現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))の推定値を算出して出力する。
【0020】
ここで、DC/DCコンバータ11の状態方程式を説明するために、まず、コンデンサ電圧の検出誤差Δv
cを含まないと仮定した比較例の状態方程式としての比較例状態方程式を説明する。
【0021】
比較例状態方程式は、数式(1)にて表される。ここで、コンデンサ電圧はv
c、リアクトル電流はi
L、電源電圧はv
b、出力電流(負荷電流)はi
m、リアクトル12のインダクタンスはL、コンデンサ18のキャパシタンスはC、リアクトル12の抵抗値はR
L、デューティ比はdと示す。
【数1】
【0022】
数式(1)にデッドタイムを考慮した誤差デューティ比Δdを組み込むと数式(2)に示す状態方程式となる。ここで誤差デューティ比とは、第1スイッチング素子のオン時間の割合であるデューティ比に対する、デッドタイムの有無の違いにより生じるデューティ比の差分である。
【数2】
【0023】
数式(2)を、双1次変換を用いて離散化させると数式(3)のように示される。
【数3】
【0024】
図3は、実施形態のオブザーバ32を示す図である。オブザーバ32において、入力信号、出力信号が
図3で示されるようになる。
図3において、Aは、数式(3)の破線枠αで示される係数と、破線枠A1で示される行列とを乗じたものであり、α×A1で表される。
【0025】
図3において、Bは、数式(3)の破線枠αで示される係数と破線枠B1で示される行列とを乗じたものであり、α×B1で表される。
図3のCは、数式(4a)、数式(4b)で表されるものである。
【数4】
【0026】
図3のCとして、数式(4a)、数式(4b)で表されるもので用いることによりリアクトル電流の推定精度を高くできるが、計算量軽減のために、数式(5)を用いることもできる。
【数5】
【0027】
ここで、本実施形態では、DC/DCコンバータ11の状態方程式として、誤差デューティ比Δdとコンデンサ電圧検出誤差Δv
Cとを含む数式(6)を定義する。
【数6】
【0028】
数式(6)を、双1次変換を用いて離散化させると数式(7)のように示される。
【数7】
【0029】
数式(7)に基づいて、コンデンサ18の電圧の推定値であるコンデンサ電圧推定値v
c〜(チルダ)(k)と、リアクトル12の電流の推定値であるリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)(k)とは、数式(8)のように表すことができる。また、数式(7)に基づいて、誤差デューティ比の推定値である誤差デューティ比推定値Δd〜(チルダ)(k)と、コンデンサ電圧検出誤差の推定値であるコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c〜(チルダ)(k)とは数式(8)のように表すことができる。ここで、Tは制御周期であり、h
1〜h
4はオブザーバゲインである。以下では推定値を表すチルダの〜(波線)を省略する場合がある。
【数8】
【0030】
オブザーバ32は、入力されたコンデンサ電圧v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを数式(8)に代入することによって、現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))及びリアクトル電流i
L(=i
L(k))の推定値を算出する。また、オブザーバ32は、コンデンサ電圧検出誤差Δv
c(=Δv
c(k))の推定値も算出する。
【0031】
なお、推定される誤差デューティ比推定値Δd(チルダ)、リアクトル電流推定値i
L(チルダ)、及びコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)は、数式(8)におけるkをk−1に読み替えて処理することによって算出することができる。算出された誤差デューティ比推定値Δd(チルダ)、リアクトル電流推定値i
L(チルダ)、及びコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)は、電流指令生成器31(
図2)に入力される。
【0032】
なお、kは、制御回数を示す。例えば、d(k)は、k回目の制御におけるデューティ比dを表し、d(k+1)は、(k+1)回目の制御におけるデューティ比dを表す。他の状態量についても同様である。
【0033】
ここで、本実施形態において、オブザーバ32は、数式(8)の4つのオブザーバゲインh
1、h
2、h
3、h
4を持つ。このうち、数式(8)の3行目と4行目とに対応するh
3、h
4は、第1スイッチング素子14の常時オン状態か否かに応じて、値が切り替わる。以下、h
3は第1オブザーバゲインh
3と記載し、h
4は、第2オブザーバゲインh
4と記載する場合がある。オブザーバゲインh
1、h
2、h
3、h
4は、
図3のhに対応する。
【0034】
図4は、オブザーバゲインの切換部37の構成を示す図である。制御装置30は、切換部37を持ち、その切換部37は、第1及び第2オブザーバゲインh
3、h
4の値を、第1スイッチング素子14の常時オン状態か否かに応じて切り換える。具体的には、第1オブザーバゲインh
3は、デッドタイムによる誤差でデューティ比を計算するためのオブザーバゲインである。第2オブザーバゲインh
4は、コンデンサ電圧検出誤差を計算するためのオブザーバゲインである。
【0035】
図4において、上アームの常時オン信号として、第1スイッチング素子14のオンオフ状態が切換部37に入力される。
図4では、切換部37の内部において「1」は、第1スイッチング素子14が常時オンとなり、上アームが常時オンされたことを表す。このときには第2スイッチング素子16が常時オフされる。
図4の切換部37の内部において「0」は、第1スイッチング素子14がスイッチングを開始し、上アームの常時オンが解除されたことを表す。このときには第2スイッチング素子16もスイッチングを開始する。
【0036】
切換部37は、第1スイッチング素子14が常時オンされたときに、第1オブザーバゲインh
3を0とし、第2オブザーバゲインh
4に0以外の数値C4を持たせる。一方、切換部37は、第1スイッチング素子14の常時オンが解除された後に、第1オブザーバゲインh
3に0以外の数値を持たせ、第2オブザーバゲインh
4を0とする。
【0037】
また、数式(8)の1行目と2行目とに対応するオブザーバゲインh
1、h
2は、第1スイッチング素子14の常時オン状態に無関係に0以外の数値C1、C2を持っている。
【0038】
これにより、第1スイッチング素子14が常時オンされたときに、コンデンサ電圧検出誤差に対応する値が第2オブザーバゲインh
4に対応して出力されるので、コンデンサ電圧検出誤差を精度よく推定できる。また、第1スイッチング素子14の常時オンを解除されたときには、デッドタイムによる誤差デューティ比に対応する値が第1オブザーバゲインh
3に対応して出力される。これにより、誤差デューティ比を用いてデューティ比を精度よく計算することができる。このように数式(8)を用いたオブザーバ32では、コンデンサ電圧検出誤差を推定でき、その推定値が次の制御周期に用いられて、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、及び誤差デューティ比Δdの推定値が推定される。
【0039】
オブザーバ32は、このようにコンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、及びコンデンサ電圧検出誤差Δv
cを推定する。
図2に示すように、オブザーバ32からは、誤差デューティ比推定値Δd(チルダ)と、コンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)とを外乱として出力する。
【0040】
一方、電流指令生成器31では、DC/DCコンバータ11の状態方程式を離散化した数式、すなわち数式(7)を変形することによってリアクトル電流指令値i
L*を算出する。リアクトル電流指令値i
L*は、数式(7)において、左辺の1行目v
c(k+1)をv
c*(k)、右辺のi
L(k)をi
L*(k)に、Δd(k)をΔd(k)(チルダ)に、Δv
cをΔv
c(k)(チルダ)に置き換えて展開した数式(9)を用いて算出される。電流指令生成器31で算出されたリアクトル電流指令値i
L*と、現在のリアクトル電流i
L(実測値)とは、デューティ比制御器34に入力される。
【数9】
【0041】
デューティ比制御器34では、指令値となるデューティ比d(k+1)を求めるための演算が行われる。指令値となるデューティ比d(k+1)は、数式(10)にて算出することができる。デューティ比制御器34は、PI演算部と、F/F補償部とを有する。
【数10】
【0042】
デューティ比制御器34のPI演算部は、数式(10)の右辺の第2項及び第3項の計算を行う。数式(10)において、Kpは比例項の係数、Kiは積分項の係数である。
【0043】
デューティ比制御器34のF/F補償部は、コンデンサ電圧指令値v
c*及び電源電圧v
bの入力を受けて、フィード・フォワード補償値を算出する。フィード・フォワード補償値は、数式(10)の右辺の第1項で表される。PI演算部からの出力値とF/F補償部からの出力値とが加算されてデューティ比d(k+1)として、デューティ比制御器34から出力される。
【0044】
デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(k+1)は、三角波比較器36に入力される。三角波比較器36は、三角波キャリア信号の値と、デューティ比とを比較し、その比較した結果に基づいてスイッチング信号を生成し、DC/DCコンバータ11の各スイッチング素子14,16に出力される。各スイッチング素子14,16は、そのスイッチング信号によりオンオフ状態が制御されることにより、適切な電圧制御が行われる。これにより、リアクトル電流指令値i
L*に応じてDC/DCコンバータ11が制御される。
【0045】
具体的には、制御装置30は、デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(=d(k+1))となるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。これにより、DC/DCコンバータ11は、指令値とされるコンデンサ電圧指令値v
c*及びリアクトル電流指令値i
L*となるようにコンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
Lが制御される。
【0046】
なお、デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(k+1)は、リミッタ(図示せず)に入力することもできる。リミッタは、デューティ比制御器34から出力されたデューティ比d(k+1)の入力をうけ、入力されたデューティ比d(k+1)が最適デューティ比範囲DR内になるように制限する。リミッタから出力された最適範囲のデューティ比d(k+1)は、三角波比較器36に入力される。これにより、制御装置30は、三角波比較器36に入力されたデューティ比d(=d(k+1))となるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。
【0047】
上記の制御装置30によれば、電流指令生成器31が、誤差デューティ比と、コンデンサ電圧検出誤差とを含む状態方程式からリアクトル電流指令値i
L*を算出する。これにより、DC/DCコンバータ11において、コンデンサ電圧検出誤差がある場合でも、リアクトル電流指令値i
L*を精度よく算出できるので、DC/DCコンバータ11を精度よく制御できる。したがって、コンデンサ電圧検出誤差を考慮してコンデンサ電圧を目標電圧より高く昇圧する必要がないので、DC/DCコンバータ11及びインバータ105(
図1)のスイッチング損失を低減できる。また、コンデンサ電圧検出誤差を考慮してコンデンサ電圧を目標電圧より低く昇圧する必要がないので、インバータ105の出力電圧限界の低下を抑制できる。
【0048】
上記の第1の実施形態では、電流指令生成器31においてリアクトル電流指令値i
L*の算出のために上記の数式(9)を用いたが、実施形態の別例として、数式(11)を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(9)では、検出されたコンデンサ電圧v
c(k)とコンデンサ電圧推定値v
c(k)(チルダ)とがほぼ同等であるため、数式(9)のv
c(k)(チルダ)をv
c(k)に置き換えることにより、数式(11)を得た。
【数11】
【0049】
また、実施形態の別例として、数式(12)を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(9)において、C2の下線を付した右辺第2項は、C1の下線を付した右辺第1項に比べて十分に小さい。これにより、数式(9)で右辺第2項を省略して数式(12)を得た。これにより計算を簡略化できる。
【数12】
【0050】
また、実施形態の別例として、数式(13)を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(12)において、検出されたコンデンサ電圧v
c(k)とコンデンサ電圧推定値v
c(k)(チルダ)とがほぼ同等であるため、数式(12)のv
c(k)(チルダ)をv
c(k)に置き換えることにより、数式(13)を得た。
【数13】
【0051】
上記の各実施形態では、数式(7)の状態方程式から変換した数式(9)、数式(11)から数式(13)のいずれかの数式を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出する場合を説明した。一方、上記の数式(3)の状態方程式から変換した数式を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(3)は、数式(7)と異なり、Δv
c(k+1)を算出する部分が省略されている。例えば、実施形態の別例として、数式(14)を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(14)は、数式(3)において、左辺の1行目v
c(k+1)をv
c*(k)に、右辺のi
L(k)をi
L*(k)に、Δd(k)をΔd(k)(チルダ)に、v
c(k)を(v
c(k)(チルダ)−Δv
c(k)(チルダ))に置き換えて展開して得られる。
【数14】
【0052】
また、実施形態の別例として、数式(15)を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(14)では、検出されたコンデンサ電圧v
c(k)とコンデンサ電圧推定値v
c(k)(チルダ)とがほぼ同等であるため、数式(14)のv
c(k)(チルダ)をv
c(k)に置き換えることにより、数式(15)を得た。
【数15】
【0053】
また、実施形態の別例として、数式(16)を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(14)において、右辺第2項は、右辺第1項に比べて十分に小さい。これにより、数式(14)で右辺第2項を省略して数式(16)を得た。これにより計算を簡略化できる。
【数16】
【0054】
また、実施形態の別例として、数式(17)を用いて、リアクトル電流指令値i
L*を算出してもよい。数式(16)において、検出されたコンデンサ電圧v
c(k)とコンデンサ電圧推定値v
c(k)(チルダ)とがほぼ同等であるため、数式(16)のv
c(k)(チルダ)をv
c(k)に置き換えることにより、数式(17)を得た。
【数17】
【0055】
<第2の実施形態>
図1から
図4に示した第1の実施形態では、リアクトル12を実際に流れるリアクトル電流i
Lをリアクトル電流検出器22(
図1)により検出し、そのリアクトル電流i
Lに基づいてデューティ比dを制御する制御装置30の構成を説明した。
図5は、第2の実施の形態における制御装置30aの構成を示す。第2の実施形態では、モータ駆動装置は、リアクトル電流i
Lを検出するリアクトル電流検出器を備えていない。その代わりに、
図5に示すように、制御装置30aに含まれるオブザーバ32aは、電流指令生成器31に入力するために算出したリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)を、デューティ比制御器34にも入力する。
【0056】
デューティ比制御器34での処理は、第1の実施の形態と同様である。このとき、デューティ比制御器34では、上記の数式(10)において、リアクトル電流i
Lとして、オブザーバ32aから入力されたリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)を用いて、デューティ比d(=d(k+1))を算出する。これにより、デューティ比制御器34は、リアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)を用いてデューティ比を制御する。本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図4に示した第1の実施形態と同様である。
【0057】
<第3の実施形態>
図1から
図4に示した第1の実施形態における制御装置30で用いるデューティ制御器として、PI演算部及びF/F補償部に代えて、第1モデル予測制御器(MPC)50(
図7)を有する構成としてもよい。
図6は、第3の実施の形態における制御装置30bの構成を示す。以下、第1モデル予測制御器50は第1MPC50と記載する場合がある。
【0058】
制御装置30bは、オブザーバ32bを含んでいる。オブザーバ32bは、第1の実施形態と同様に、コンデンサ電圧v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを受けて、これらの値から現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))、リアクトル電流i
L、コンデンサ電圧検出誤差Δv
cの推定値を算出して出力する。算出された誤差デューティ比推定値Δd(チルダ)及びコンデンサ電圧検出誤差の推定値Δv
c(チルダ)は、電流指令生成器31及び第1MPC50に入力される。算出されたリアクトル電流推定値i
L(チルダ)は、電流指令生成器31に入力される。
【0059】
電流指令生成器31は、第1の実施形態と同様に、リアクトル電流指令値i
L*を算出する。算出されたリアクトル電流指令値i
L*は、第1MPC50に入力される。
【0060】
第1MPC50は、DC/DCコンバータ11の状態方程式を用いてデューティ比を制御する。このとき、第1MPC50は、第1及び第2スイッチング素子14、16のデューティ比dを複数の異なる値に変化させたときのDC/DCコンバータ11における所定の状態値(状態量)に対する予測値を算出する。そして、第1MPC50は、その状態値(状態量)の目標を示す指令値と予測値との差に応じてデューティ比dを制御する。
【0061】
本実施形態では、第1MPC50は、所定の状態値としてリアクトル12を流れる電流の予測値であるリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出する。そして、第1MPC50は、リアクトル電流指令値i
L*に近づくようなリアクトル電流予測値i
L^(ハット)となるデューティ比dを求める処理を行う。
【0062】
図7は、第1MPC50の構成を示す図である。
図7に示すように、第1MPC50は、加算器40(40−2〜40−129)、予測演算器42(42−1〜42−129)、評価関数演算器44(44−1〜44−129)、最小値選択器46を含んで構成される。
【0063】
加算器40(40−2〜40−129)は、現在のデューティ比d(k)に所定値を加算することによりデューティ比d(k)に変化を与えて出力する。本実施の形態では、デューティ比d(k)は、0〜1023の値の範囲で表されるものとする。すなわち、下アームである第2スイッチング素子16が常時オンであり、上アームである第1スイッチング素子14が常時オフである状態のときのデューティ比dが0で表されるものとする。また、下アームである第2スイッチング素子16が常時オフであり、上アームである第1スイッチング素子14が常時オンである状態のときのデューティ比dが1023で表されるものとする。加算器40は、現在のデューティ比d(k)を中心値として、d(k)±64の範囲で変化を与えて出力する。変化の範囲は、DC/DCコンバータ11のデッドタイムの期間及びPWM周期に基づいて設定することが好適である。例えば、デッドタイム/PWM周期×デューティ比dの数値範囲で算出される値よりも大きな変換の範囲とすることが好適である。具体的には、デッドタイムが5μs、PWM周期が100μsである場合、デューティ比dを0〜1023の範囲で表した場合には5/100×1023=51よりも大きい数値範囲を変化の範囲とすることが好適である。一方、演算負荷をできるだけ小さくするために、変化の範囲はできるだけ狭い方が好適である。そこで、本実施の形態では、変化の範囲を±64とした例を示している。
【0064】
加算器40−2は、現在のデューティ比d(k)に1を加算してd(k)+1を出力する。加算器40−3は、現在のデューティ比d(k)に2を加算してd(k)+2を出力する。同様に、加算器40−4〜加算器40−65は、現在のデューティ比d(k)にそれぞれ3〜64を加算して出力する。また、加算器40−66は、現在のデューティ比d(k)から1を減算してd(k)−1を出力する。加算器40−67は、現在のデューティ比d(k)から2を減算してd(k)−2を出力する。同様に、加算器40−68〜加算器40−129は、現在のデューティ比d(k)からそれぞれ3〜64を減算して出力する。加算器40−2〜40−129からの出力は、それぞれ予測演算器42−2〜42−129へ入力される。
【0065】
予測演算器42は、加算器40からの出力、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、電源電圧v
b、出力電流(負荷電流)i
m、誤差デューティ比Δd〜(=Δd〜(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧検出誤差Δv
c〜(=Δv
c〜(k)(チルダ))を用いてリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出して出力する。リアクトル電流予測値i
L^(ハット)は、リアクトル12を流れる電流の予測値である。
【0066】
リアクトル電流予測値i
L^(ハット)は、数式(7)において、左辺の2行目i
L(k+1)をi
L^[d(k)+a](ハット)に置き換えて展開したi
L^[d(k)+a](ハット)の演算式を用いて算出される。
【0067】
予測演算器42−1は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを0としてi
L^[d(k)](ハット)を算出して出力する。予測演算器42−2は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを1としてi
L^[d(k)+1](ハット)を算出して出力する。同様に、予測演算器42−3〜予測演算器42−65は、それぞれaを2〜64としてi
L^[d(k)+a](ハット)を算出して出力する。予測演算器42−66は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを−1としてi
L^[d(k)−1](ハット)を算出して出力する。予測演算器42−67は、i
L^[d(k)+a](ハット)の演算式のaを−2としてi
L^[d(k)−2](ハット)を算出して出力する。同様に、予測演算器42−68〜予測演算器42−129は、それぞれaを−3〜−64としてi
L^[d(k)+a](ハット)を算出して出力する。予測演算器42−1〜32−129の出力は、それぞれ評価関数演算器44−1〜44−129へ入力される。
【0068】
評価関数演算器44は、コンデンサ電圧指令値v
c*、予測演算器42から入力されたリアクトル電流予測値i
L^(ハット)、電流指令生成器41から入力されたリアクトル電流指令値i
L*に基づいて評価関数Jの演算を行い、演算結果を出力する。評価関数Jは、数式(18)にて表される。
【数18】
【0069】
評価関数演算器44−1は、数式(18)のaを0としてJ[d(k)]を算出して出力する。評価関数演算器44−2は、数式(18)のaを1としてJ[d(k)+1]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器44−3〜評価関数演算器44−65は、それぞれaを2〜64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器44−66は、数式(18)のaを−1としてJ[d(k)−1]を算出して出力する。評価関数演算器44−67は、数式(18)のaを−2としてJ[d(k)−2]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器44−68〜評価関数演算器44−129は、それぞれaを−3〜−64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器44−1〜44−129の出力は、最小値選択器46へ入力される。
【0070】
なお、評価関数Jは、数式(19)としてもよい。この場合も、評価関数演算器44−1〜評価関数演算器44−129にてそれぞれJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]を算出して出力する。
【数19】
【0071】
最小値選択器46は、評価関数演算器44−1〜評価関数演算器44−129にて算出されたJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]のうち最小値を選択する。最小値選択器46は、評価関数Jを最小値とするd(k)+aを次の制御の際のデューティ比d(k+1)として三角波比較器36に出力する。これにより、デューティ比制御器34は、リアクトル電流推定値i
L(チルダ)がリアクトル電流指令値i
L*となるようにデューティ比d(k+1)を制御する。本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図4に示した第1の実施形態と同様である。
【0072】
第3の実施形態の別例として、第3の実施形態における第1MPC50の構成を第2モデル予測制御器に変更してもよい。以下、
図1〜6を参照して説明する。第2モデル予測制御器は、第2MPCと記載する場合がある。第3の実施形態の別例では、第2MPCは、DC/DCコンバータ11の状態方程式を、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dに対する二次方程式に変形し、当該二次方程式にオブザーバ32b(
図6)で算出された誤差デューティ比推定値Δd〜(=Δd〜(k)(チルダ))とコンデンサ電圧検出誤差Δv
c〜(=Δv
c〜(k)(チルダ))を導入、すなわち適用することでデューティ比dを算出して制御する。制御装置は、算出されたデューティ比dを用いてDC/DCコンバータ11を制御する。
【0073】
数式(7)の左辺の2行目i
L(k+1)をi
L*(k)、右辺のΔd(k)をΔd〜(k)(チルダ)、Δv
c(k)をΔv
c〜(k)(チルダ)に置き換えて、デューティ比d(k)に対する二次方程式に変更すると数式(20)となる。
【数20】
【0074】
数式(20)の二次方程式をデューティ比d(k+1)に対して解くと、数式(21)で表される。
【数21】
【0075】
第2MPCは、算出したデューティ比d(k+1)を、リミッタを介してまたはリミッタを介さずに三角波比較器36に出力する。これにより、制御装置は、三角波比較器36に入力されるデューティ比d(=d(k+1))となるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。このため、DC/DCコンバータ11は、指令値とされるコンデンサ電圧指令値v
c*及びリアクトル電流指令値i
L*となるようにコンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
Lが制御される。
【0076】
<第4の実施の形態>
図8は、第4の実施の形態における制御装置30cの構成を示す。本実施形態のモータ駆動装置は、リアクトル12を流れるリアクトル電流i
Lを計測するためのリアクトル電流検出器を備えていない。その代わりに、
図8に示すように、制御装置30cはオブザーバ32cを含んでいる。オブザーバ32cは、電流指令生成器31に入力するために算出したリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)を、デューティ比制御器34aにも入力する。
【0077】
デューティ比制御器34aでの処理は、
図6、
図7に示した第3の実施の形態と同様である。このとき、デューティ比制御器34aでは、リアクトル電流i
Lとして、オブザーバ32cから入力されたリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)を用いて、デューティ比d(=d(k+1))を算出する。これにより、デューティ比制御器34aは、リアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)を用いてデューティ比を制御する。本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図4に示した第1の実施形態、または
図6、
図7に示した第3の実施形態と同様である。
【0078】
<第5の実施の形態>
図9は、第5の実施形態における電流指令生成器31aの構成を示す図である。第5の実施形態における制御装置は、
図1から
図4に示した第1の実施形態における電流指令生成器31(
図2)の代わりに、電流指令生成器31aと、中心周波数計算器39とを含んでいる。電流指令生成器31aは、電流指令計算部(iL指令計算部)38aと、ノッチフィルタ38bとを有する。
【0079】
電流指令計算部38aには、
図2に示した電流指令生成器31と同様に、コンデンサ電圧指令値v
c*とコンデンサ電圧検出値v
cとが入力される。また、電流指令計算部38aには、オブザーバ32(
図2)からリアクトル電流i
L、誤差デューティ比Δd、及びコンデンサ電圧検出誤差Δv
cの推定値も入力される。電流指令計算部38aは、これらの入力値に応じて、DC/DCコンバータ11の状態方程式を離散化した数式、すなわち数式(7)を変形することによって得た数式(9)を用いて、フィルタ処理前のリアクトル電流指令値i
L*を算出する。算出されたリアクトル電流指令値i
L*は、ノッチフィルタ38bに入力される。
【0080】
中心周波数計算器39には、DC/DCコンバータ11の出力電流が入力されるインバータ105(
図1)のキャリア周波数と、DC/DCコンバータ11のキャリア周波数とが入力される。中心周波数計算器39は、これらの入力値に基づいて、インバータ105のキャリア周波数の2倍の周波数からDC/DCコンバータ11のキャリア周波数を減算した値の絶対値を、中心周波数f0として算出する。このとき、インバータ105のキャリア周波数をfciとし、DC/DCコンバータ11のキャリア周波数をfccとした場合に、中心周波数f0は、(2fci−fcc)の(絶対値)である│2fci−fcc│として表される。算出された中心周波数f0は、ノッチフィルタ38bに入力される。
【0081】
ノッチフィルタ38bは、フィルタ処理前のリアクトル電流指令値i
L*と、中心周波数f0とを用いて、フィルタ処理前のリアクトル電流指令値i
L*から中心周波数f0の成分を除去する。そして、ノッチフィルタ38bは、フィルタ処理後のリアクトル電流指令値i
L*をデューティ比制御器34(
図2)に出力する。
【0082】
上記の第5の実施形態によれば、リアクトル電流指令値i
L*、リアクトル電流i
L及びコンデンサ電圧v
cの定常時の振れの幅を狭くし、制御の安定性を向上させることができる。
図10は、第5の実施形態と異なり、制御装置がノッチフィルタを含まない構成において、デューティ比を固定した場合におけるコンデンサ電圧波形を示す図である。
【0083】
図10に示すようにノッチフィルタを含まない場合には、コンデンサ電圧が1/(│2fci−fcc│(絶対値))の周期で振動するので、その中心値も波形に振動する。第5の実施形態によれば、この1/(│2fci−fcc│(絶対値))の周期の振動成分を除去できる。
【0084】
図11〜
図13は、第5の実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーション結果を示す図である。
図11は、比較例の第1例の制御装置において、コンデンサ電圧検出誤差が−10Vである場合の電圧及び電流の制御を示す図である。
図12は、比較例の第2例の制御装置において、コンデンサ電圧検出誤差が−10Vである場合の電圧及び電流の制御を示す図である。
【0085】
図11に制御を示す比較例の第1例は、
図1から
図4に示した第1の実施形態において、電流指令生成器が、コンデンサ電圧検出誤差を含まない状態方程式から変形した演算式を用いてリアクトル電流指令値を算出している。また、比較例の第1例では、算出されたリアクトル電流指令値からノッチフィルタにより中心周波数f0の成分を除去することは行わない。比較例の第2例は、比較例の第1例の構成において、電流指令生成器が、第5の実施形態と同様に、算出されたリアクトル電流指令値から中心周波数f0の成分を除去するノッチフィルタを含んでいる。
【0086】
図11、
図12、及び後述する
図13ではコンデンサ電圧の制御を示す図において、破線によりコンデンサ電圧指令値v
c*を示している。また、
図11から
図13の制御では、コンデンサ電圧の検出誤差を−10Vとしている。
【0087】
図11に示すように、比較例の第1例では、リアクトル電流指令値i
L*、リアクトル電流i
L及びコンデンサ電圧v
cの振動幅がいずれも大きくなった。また、コンデンサ電圧v
cの波形の中心値はコンデンサ電圧指令値v
c*に対して大きくオフセットされている。
【0088】
図12に示すように、比較例の第2例では、比較例の第1例に対してノッチフィルタが追加されているので、リアクトル電流指令値i
L*、リアクトル電流i
L及びコンデンサ電圧v
cの振動幅は少し小さくなった。一方、コンデンサ電圧v
cの波形の中心値は、比較例の第1例と同様に、コンデンサ電圧指令値v
c*に対して大きくオフセットされている。
【0089】
一方、
図13は、第5の実施形態において、コンデンサ電圧検出誤差が−10Vである場合の電圧及び電流の制御を示す図である。
図13に示すように、第5の実施形態の制御では、リアクトル電流指令値の算出がコンデンサ電圧検出誤差の推定値を用いて行われるので、比較例の第2例よりもさらにリアクトル電流指令値i
L*、リアクトル電流i
L及びコンデンサ電圧v
cの振動幅を小さくできた。また、コンデンサ電圧v
cの波形の中心値が、コンデンサ電圧指令値v
c*に対してほぼ一致した。これにより第5の実施形態によれば、コンデンサ電圧v
cをほぼ目標値通りに制御できることを確認できた。
【0090】
本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図4に示した第1の実施形態と同様である。また、本実施形態のノッチフィルタ38bは、上記の
図5から
図8の実施形態でも同様に適用できる。
【0091】
<第6の実施の形態>
図14は、第6の実施形態における制御装置30dの構成を示す図である。
図15は、
図14に示している電流指令生成器31bの構成を示す図である。第6の実施形態では、
図1から
図4に示した第1の実施形態において、制御装置30dは、電流指令生成器31(
図2)の代わりに電流指令生成器31bを含んでいる。電流指令生成器31bには、コンデンサ電圧指令値v
c*とコンデンサ電圧検出値v
cとが入力される。電流指令生成器31bには、オブザーバ32からコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)が入力される。
【0092】
電流指令生成器31bは、
図15に示すように、PI制御部60を有する。PI制御部60には、コンデンサ電圧指令値v
c*から、コンデンサ電圧検出値v
cとコンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)とを減算することにより得た偏差が入力される。PI制御部60は、その偏差をPI演算してリアクトル電流指令値i
L*を算出する。算出されたリアクトル電流指令値i
L*はデューティ比制御器34に出力される。デューティ比制御器34は、
図1から
図4の第1の実施形態と同様に、リアクトル電流指令値i
L*とリアクトル電流検出値i
Lとに応じてデューティ比d(k+1)を制御する。このとき、リアクトル電流検出値i
Lの代わりに、オブザーバ32で算出されたリアクトル電流推定値i
L(チルダ)を用いることもできる。
【0093】
上記の第6の実施形態によれば、コンデンサ電圧検出誤差推定値Δv
c(チルダ)を用いてリアクトル電流指令値i
L*を算出する。これにより、第1の実施形態と同様に、DC/DCコンバータ11において、コンデンサ電圧検出誤差Δv
cがある場合でも、リアクトル電流指令値i
L*を精度よく算出できるので、DC/DCコンバータ11を精度よく制御できる。したがって、DC/DCコンバータ11及びインバータ105(
図1)のスイッチング損失を低減できるとともに、インバータ105の出力電圧限界の低下を抑制できる。本実施形態において、その他の構成及び作用は、
図1から
図4の第1の実施形態、または上記の
図5の第2の実施形態と同様である。なお、本実施形態において、
図6、
図7の実施形態と同様にデューティ比制御器34として、第1MPCまたは第2MPCを含む構成を用いることもできる。
【0094】
[変形例]
DC/DCコンバータにおいて、リアクトル電流に応じてリアクトルのインダクタンスLの値は変化する。そこで、上記の各実施形態における制御において、リアクトル12に流れるリアクトル電流i
Lまたは流れると予想されるリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)に応じてリアクトル12のインダクタンスLを変更するように設定することが好適である。
【0095】
図16は、電流値に対するリアクトル12のインダクタンスLの変化を示す図である。
図16において、横軸の電流値は最大電流を1として正規化し、縦軸のリアクトル12のインダクタンスLは電流値が0のときを1として正規化して示している。
【0096】
なお、上記の実施形態では、オブザーバを同一次元オブザーバとしたが、最小次元オブザーバを適用してもよい。また、双1次変換を利用して状態方程式を離散化したが、これに限定されるものではなく、0次ホールド、前進差分、後退差分を利用して離散化させてもよい。
【0097】
上記の各実施形態及びその変形例によれば、リアクトル電流指令値i
L*を精度よく算出できるので、DC/DCコンバータ11を精度よく制御できる。