(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
共重合体(A)が、構成単量体として共重合体(A)の全ての構成単量体の合計モル数に基づいて(a)を2〜9モル%、(b)を82〜95モル%、並びに(c)を0.5〜10モル%含有する共重合体である請求項3に記載の粘度指数向上剤組成物。
分散剤、清浄剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤及び腐食防止剤からなる群から選ばれる1種以上の添加剤と、請求項1〜5のいずれかに記載の粘度指数向上剤組成物とを含有してなる潤滑油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、下記一般式(1)で表される単量体(a)とアルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)とを必須構成単量体とする共重合体(A)、及びカルボン酸(α)とアルコール(β)からなるエステル化合物(B)を含有する。そして、エステル化合物(B)の下記関係式(1)で表される立体障害ファクター(F)は31〜78である。さらに、共重合体(A)は、構成単量体として(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて(b)を80〜95モル%含有し、かつ共重合体(A)を構成する(a)と(b)のモル比(a/b)が0.01〜0.1である。
【0011】
[R
1は水素原子又はメチル基;−X
1−は−O−又は−NH−で表される基であって、R
2Oは炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレンオキシ基であり、pは0〜20の整数であり、pが2以上の場合のR
2は同一でも異なっていてもよく、(R
2O)
p部分はランダム結合でもブロック結合でもよい;R
3は炭素数32〜44の分岐アルキル基である。]
【0012】
立体障害ファクター(F)=4X+Y (1)
[数式(1)中、Xは、カルボン酸(α)とアルコール(β)からなるエステル化合物(B)中に存在するエステル結合1個につき、エステル結合のカルボニル炭素原子を1番目の原子とし、カルボニル炭素と単結合した酸素原子を2番目の原子としてアルコール(β)に由来する全ての原子に順番に番号を付与した際に、6番目に位置する全ての原子(原子の種類は問わない)の個数の合計とし、2個以上のエステル結合を有する場合は、これらの個数の合計とする。同様に、Yは、7番目に位置する全ての原子(原子の種類は問わない)の個数の合計とし、2個以上のエステル結合を有する場合は、これらの個数の合計とする。但し、6番目に位置する原子が全く存在しない場合はX=0、7番目に位置する原子が全く存在しない場合はY=0となる。]
【0013】
本発明の共重合体(A)は上記の一般式(1)で表される単量体(a)とアルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)を必須構成単量体とする。
なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0014】
一般式(1)におけるR
1は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0015】
一般式(1)における−X
1−は−O−又は−NH−で表される基である。これらのうち粘度指数向上効果の観点から好ましいのは−O−である。
【0016】
一般式(1)におけるR
2Oは炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基が挙げられる。
プロピレンオキシ基としては、1,2−又は1,3−プロピレンオキシ基が挙げられる。ブチレンオキシ基としては1,2−、1,3−又は1,4−ブチレンオキシ基等が挙げられる。これらのうち粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、炭素数2〜3の直鎖又は分岐アルキレンオキシ基であるエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基である。
【0017】
一般式(1)におけるR
3は炭素数32〜44の分岐アルキル基である。
炭素数32〜44の分岐アルキル基としては、2−テトラデシルオクタデシル基(炭素数32)、2−テトラデシルイコシル基(炭素数34)、2−ヘキサデシルオクタデシル基(炭素数34)、2−ヘキサデシルイコシル基(炭素数36)、2−イソヘキサデシルイソイコシル基(炭素数36)、2−オクタデシルドコシル基(炭素数40)、2−イコシルテトラコシル基(炭素数44)、オレフィン[例えばプロピレンオリゴマー(11〜15量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(11〜21量体、モル比20/1〜1/10)及びイソブテンオリゴマー(8〜11量体)等]から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基等が挙げられる。
炭素数32〜44の分岐アルキル基のうち、粘度指数向上剤のエステル化合物(B)への溶解性の観点から好ましいのは、炭素数32〜40の分岐アルキル基であり、さらに好ましいのは炭素数32〜36の分岐アルキル基、特に好ましいのはアルキル基の2位に分岐のある炭素数32〜36の分岐アルキル基である。
【0018】
一般式(1)におけるpは0〜20の整数であり、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、好ましくは0〜5の整数である。更に好ましくは0〜2の整数である。pが2以上の場合のR
2は同一でも異なっていてもよく、(R
2O)
p部分は異なる場合はランダム結合でもブロック結合でもよい。低温粘度の観点から好ましいのはランダム結合である。
【0019】
単量体(a)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2−テトラデシルイコシル、エチレングリコールモノ−2−テトラデシルイコシル基と(メタ)アクリル酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2−ヘキサデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキサデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2−イソヘキサデシルイソイコシル、(メタ)アクリル酸2−オクタデシルドコシル、(メタ)アクリル酸2−イコシルテトラコシル、(メタ)アクリル酸(プロピレンオリゴマー)等が挙げられる。
単量体(a)のうち、粘度指数及び低温粘度の観点から好ましいのは、(メタ)アクリル酸2−テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2−テトラデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキサデシルオクタデシル、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸2−テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2−テトラデシルイコシル、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸2−テトラデシルオクタデシルである。
【0020】
アルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸エステル(b)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等が挙げられる。
(b)のうち粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチル、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルである。
【0021】
共重合体(A)は、構成単量体として(a)及び(b)に加え、一般式(2)で表される単量体(c)及び炭素数12〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)からなる群から選ばれる1種以上を含有することが、潤滑油組成物の低温粘度の観点から好ましい。
【0022】
【化3】
[R
4は水素原子又はメチル基;−X
2−は−O−又は−NH−で表される基であって、R
5Oは炭素数2〜4の直鎖又は分岐アルキレンオキシ基であり、qは0〜20の整数;R
6はそれぞれ独立に炭素数6〜14の直鎖又は分岐アルキル基である。]
【0023】
一般式(2)におけるR
4は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0024】
一般式(2)における−X
2−は、−O−又は−NH−で表される基である。これらのうち、粘度指数の観点から好ましいのは−O−で表される基である。
【0025】
一般式(2)におけるR
5Oは、炭素数2〜4のアルキレンオキシ基である。炭素数2〜4のアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、イソプロピレンオキシ基、1,2−又は1,3−プロピレンオキシ基、イソブチレンオキシ基、及び1,2−、1,3−又は1,4−ブチレンオキシ基が挙げられる。
【0026】
一般式(2)におけるqは0〜20の整数であり、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、好ましくは0〜5の整数である。更に好ましくは0〜2の整数である。
qが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、異なる場合はランダム結合でもブロック結合でもよい。低温粘度の観点から好ましいのはランダム結合である。
【0027】
一般式(2)におけるR
6は、それぞれ独立に、炭素数6〜14の直鎖又は分岐アルキル基である。具体的には、n−ヘキシル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基等の直鎖アルキルに加え、イソヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソドデシル基、イソテトラデシル基等の分岐アルキル基が挙げられる。
炭素数6〜14の直鎖又は分岐アルキル基のうち、粘度指数及び低温粘度の観点から好ましいのは、炭素数7〜13の直鎖又は分岐アルキル基であり、更に好ましいのは炭素数8〜12の直鎖又は分岐アルキル基、特に好ましいのは炭素数8〜10の直鎖又は分岐アルキル基である。
【0028】
単量体(c)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヘキシルオクチル、(メタ)アクリル酸2−オクチルデシル、エチレングリコールモノ−2−オクチルペンタデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2−イソオクチルイソドデシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2−イソデシルイソテトラデシル、(メタ)アクリル酸2−ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2−ドデシルペンタデシル及びN−2−オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(c)のうち、粘度指数及び低温粘度の観点から好ましいのは、(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2−イソオクチルイソドデシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2−イソデシルイソテトラデシル、(メタ)アクリル酸2−ドデシルヘキサデシル、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2−イソオクチルイソドデシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2−イソデシルイソテトラデシル、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸2−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルである。
【0029】
炭素数12〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)の具体例としては、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸n−ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸n−イコシル、(メタ)アクリル酸n−ドコシル、(メタ)アクリル酸n−テトラコシル、(メタ)アクリル酸n−トリアコンチル及び(メタ)アクリル酸n−ヘキサトリアコンチル等が挙げられる。
(d)のうち粘度指数及び低温粘度の観点から好ましいのは、炭素数12〜20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数12〜18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、特に好ましいのは炭素数14〜18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
【0030】
共重合体(A)は、更に窒素原子含有単量体(但し、(a)及び(c)を除く)(e)、水酸基含有ビニル単量体(f)、及びリン原子含有ビニル単量体(g)からなる群から選ばれる1種以上を構成単量体とする共重合体であってもよい。
窒素原子含有ビニル単量体(e)としては、(a)及び(c)以外の以下の単量体(e1)〜(e4)が挙げられる。
【0031】
アミド基含有ビニル単量体(e1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアミノ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はイソブチルアミノ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等]、N−ビニルカルボン酸アミド[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−又はイソプロピオニルアミド及びN−ビニルヒドロキシアセトアミド等]等のアミド基のみに窒素原子を有するものが挙げられる。
【0032】
ニトロ基含有単量体(e2):
4−ニトロスチレン等が挙げられる。
【0033】
1〜3級アミノ基含有ビニル単量体(e3):
1級アミノ基含有ビニル単量体{炭素数3〜6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有ビニル単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6〜12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有ビニル単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族ビニル系単量体[N,N−ジフェニルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0034】
ニトリル基含有ビニル単量体(e4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0035】
(e)のうち好ましいのは、(e1)及び(e3)であり、更に好ましいのは、N,N−ジフェニルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートであり、特に好ましいのは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0036】
水酸基含有ビニル単量体(f):
水酸基含有芳香族ビニル単量体(p−ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ−又はジ−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール及び1−ウンデセノール等]、炭素数4〜12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル(2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3〜8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3〜8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1〜4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(数平均分子量、以下Mnと略記する:100〜300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130〜500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110〜310)(メタ)アクリレート等;が挙げられる。
【0037】
リン原子含有単量体(g)としては、以下の単量体(g1)〜(g2)が挙げられる。
【0038】
リン酸エステル基含有単量体(g1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2〜4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。
【0039】
ホスホノ基含有単量体(g2):
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2〜4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2〜12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0040】
(i)のうち好ましいのは(g1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2〜4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0041】
共重合体(A)は、単量体(a)〜(g)に加え、更に不飽和基を2つ以上有する単量体(h)を構成単量体とする共重合体であることが、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から好ましい。
【0042】
不飽和基を2つ以上有する単量体(h)としては、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4〜12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン及び1,7−オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載のMnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0043】
共重合体(A)は、単量体(a)〜(h)に加え、以下の単量体(i)〜(o)を構成単量体としてもよい。
【0044】
脂肪族炭化水素系単量体(i):
炭素数2〜20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)等が挙げられる。
【0045】
脂環式炭化水素系単量体(j):
シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン及びピネン等が挙げられる。
【0046】
芳香族炭化水素系単量体(k):
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン、インデン及び2−ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0047】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(l):
炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1〜12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル及びビニル−2−ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1〜8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0048】
エポキシ基含有単量体(m):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0049】
ハロゲン元素含有単量体(n):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0050】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(o):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1〜8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0051】
共重合体(A)を構成する(a)の割合は、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、好ましくは1〜10モル%であり、更に好ましくは2〜9モル%、特に好ましくは3〜8モル%である。
共重合体(A)を構成する(b)の割合は、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、80〜95モル%であり、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、好ましくは81モル〜95モル%であり、更に好ましくは82〜95モル%、特に好ましくは84〜94モル%である。
共重合体(A)を構成する(c)及び(d)それぞれの割合は、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、好ましくは0〜10モル%であり、更に好ましくは0.5〜8モル%、特に好ましくは1.5〜6モル%である。
共重合体(A)を構成する(c)及び(d)の合計の割合は、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、好ましくは0〜15モル%であり、更に好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは2〜6モル%である。
共重合体(A)を構成する(e)〜(g)それぞれの割合は、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、好ましくは0〜15モル%であり、更に好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは2〜6モル%である。
共重合体(A)を構成する(h)〜(i)それぞれの割合は、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、好ましくは0〜15モル%であり、更に好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは2〜6モル%である。
共重合体(A)を構成する(j)の割合は、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、好ましくは0.01〜0.1モル%であり、更に好ましくは0.02〜0.07モル%、特に好ましくは0.03〜0.06モル%である。
共重合体(A)を構成する(k)〜(o)それぞれの割合は、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、(A)を構成する単量体の合計モル数に基づいて、好ましくは0〜10モル%であり、更に好ましくは0.5〜8モル%、特に好ましくは1.5〜6モル%である。
【0052】
共重合体(A)を構成する(a)と(b)のモル比(a/b)は、0.01〜0.1であり、粘度指数向上効果及び潤滑油組成物の低温粘度の観点から、好ましくは0.03〜0.1、更に好ましくは0.035〜0.095である。
【0053】
共重合体(A)の溶解性パラメーター(以下SP値と略記する)は、粘度指数向上効果及びエステル化合物(B)への溶解性の観点から、好ましくは9.0〜10.0(cal/cm
3)
1/2であり、より好ましくは9.1〜9.7(cal/cm
3)
1/2であり、更に好ましくは9.2〜9.6(cal/cm
3)
1/2である。
なお、共重合体(A)及びエステル化合物(B)のSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147〜154)に記載の方法で算出される値である。
共重合体(A)のSP値は、共重合体(A)を構成する単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体のSP値を、構成単量体単位のモル分率に基づいて平均した値である。
共重合体(A)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより所定の値にすることができる。
【0054】
共重合体(A)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)は、粘度指数向上効果の観点から、好ましくは5,000〜2,000,000であり、更に好ましくは50,000〜1,200,000、特に好ましくは100,000〜800,000、最も好ましくは200,000〜700,000である。
Mwが5,000未満の場合には粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が小さくコストが上昇するおそれがあり、Mwが2,000,000を超える場合には剪断安定性やエステル化合物(B)への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
【0055】
共重合体(A)の数平均分子量(以下Mnと略記する)は好ましくは2,500〜300,000であり、更に好ましくは5,000〜280,000であり、特に好ましくは10,000〜260,000であり、最も好ましくは15,000〜240,000である。Mnが2,500未満の場合には粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が小さくコストが上昇するおそれがあり、Mnが300,000を超える場合には剪断安定性やエステル化合物(B)への溶解性、貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
【0056】
共重合体(A)のMn及びMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記)により以下の条件で測定することができる。
<共重合体(A)のMn及びMwの測定条件>
装置 :「HLC−802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」[東ソー(株)製]2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0057】
共重合体(A)の結晶化温度は、潤滑油組成物の低温粘度の観点から好ましくは−20℃以下であり、更に好ましくは−30℃以下、特に好ましくは−40℃以下、最も好ましくは−50℃以下である。
なお、共重合体(A)の結晶化温度は、示差走査熱量計「ユニックス(登録商標)DSC7」(PERKIN−ELMER社製)を使用し、共重合体(A)5mgを試料とし、10℃/分の等温速度で100℃から−60℃まで冷却したときに観測される結晶化温度である。
【0058】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エステル油等が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビスバレロニトリル等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2〜20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25〜150℃であり、更に好ましくは50〜130℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(A)を得ることができる。
共重合体(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0059】
共重合体(A)のMwとMnの比(Mw/Mn)は、1.0〜6.0であることが好ましく、より好ましくは1.2〜5.0であり、更に好ましくは1.4〜4.5であり、特に好ましくは1.6〜4.0である。Mw/Mnが1.0未満や6.0を超える場合には、粘度温度特性が悪化すなわち省燃費性が悪化するおそれがある。
【0060】
本発明の潤滑油組成物における共重合体(A)の含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜37重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜35重量%、更に好ましくは0.5〜33重量%、特に好ましくは1〜30重量%である。共重合体(A)の含有量が0.01重量%より少なくなると、粘度指数向上効果や製品粘度の低減効果が小さくなることから、省燃費性の向上が図れなくなるおそれがある。
【0061】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、カルボン酸(α)とアルコール(β)からなるエステル化合物(B)を含有してなる。エステル化合物(B)としては、モノエステル系化合物、ジエステル系化合物が挙げられる。
【0062】
本発明のエステル化合物(B)の炭素/酸素原子数比は、(B)の炭素原子数を(B)の酸素原子数で除して求めた数値である。エステル化合物(B)の炭素/酸素原子数比は10以下であり、低温粘度の観点から、好ましくは5.0〜9.0であり、より好ましくは6.0〜8.0であり、更に好ましくは6.5〜7.5である。
【0063】
また、エステル化合物(B)は下記関係式(1)で表される立体障害ファクター(F)が31〜78であり、好ましくは32〜76であり、更に好ましくは33〜74であり、特に好ましくは34〜70である。
立体障害ファクター(F)が31未満である場合、潤滑油組成物の溶解性に悪影響が生じ、低温粘度が高くなる。一方、78を超える場合には粘度指数が悪くなる。
【0064】
立体障害ファクター(F)=4X+Y (1)
【0065】
この数式(1)中、Xは、カルボン酸(α)とアルコール(β)からなるエステル化合物(B)中に存在するエステル結合1個につき、エステル結合のカルボニル炭素原子を1番目の原子とし、カルボニル炭素と単結合した酸素原子を2番目の原子としてアルコール(β)に由来する全ての原子に順番に番号を付与した際に、6番目に位置する全ての原子(原子の種類は問わない)の合計個数を表す。但し、エステル化合物(B)が2個以上のエステル結合を有する場合は、これらの合計個数の合計とする。また、6番目に位置する原子が全く存在しない場合はX=0となる。
同様に、Yは、7番目に位置する全ての原子(原子の種類は問わない)の合計個数を表す。但し、エステル化合物(B)が2個以上のエステル結合を有する場合は、これらの合計個数の合計とし、7番目に位置する原子が全く存在しない場合はY=0となる。
【0066】
例えばエステル化合物(B)が下記化学式(3)で表されるセバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステルの場合、エステル基を2個含む。
6番目に位置する原子は、エステル結合1個につき、炭素原子2個と水素原子4個で合計は6個のため、エステル結合2個では総数は12個であり、7番目に位置する原子は、エステル結合1個につき、炭素原子1個と水素原子5個での合計は6個のため、化合物全体の個数は12個である。従って(F)=12×4+12=60となる。
【0068】
立体障害ファクター(F)が上記の範囲を満足させるには、4番目に位置する原子である炭素原子が3級炭素又は4級炭素であることが好ましい。また、5番目に位置する原子の炭素原子が3級炭素又は4級炭素であることも好ましい。4番目又は5番目に位置する原子である炭素原子が3級炭素又は4級炭素であり、上記の範囲を満足させることで潤滑油組成物の溶解性が向上し、低温粘度が高くなることを見出した。
【0069】
このような(F)を満足するエステル化合物(B)のうちのジエステルの場合のアルコール(β)の分岐アルキル基の具体例としては、2−エチルヘキシル(F=60)、2−エチルペンチル(F=60)、2−メチルヘキシル(F=54)、2−メチルペンチル(F=54)、2−メチルブチル(F=54)、3−メチルヘキシル(F=36)、3−メチルペンチル(F=36)、3−メチルブチル(F=36);2,2−ジメチルヘキシル(F=78)、2,2−ジメチルペンチル(F=78)、3,3−ジメチルヘキシル(F=42)、3,3−ジメチルペンチル(F=42)、3,3−ジエチルヘキシル(F=42)、3,3−ジエチルペンチル(F=42)、2−エチル−3−メチルヘキシル(F=66)、2−エチル−3−エチルヘキシル(F=66)、2−メチル−3−メチルヘキシル(F=60)2−エチル−3−メチルペンチル(F=66)、2−エチル−3−エチルペンチル(F=66)、2−メチル−3−メチルペンチル(F=60)などが挙げられる。
また、(F)を満足するエステル化合物(B)のうちのモノエステルの場合のアルコール(β)の分岐アルキル基の具体例としては、2,2−ジメチルヘキシル(F=39)、2,2−ジメチルペンチル(F=39)、2,2−ジエチルヘキシル(F=45)、2,2−ジエチルペンチル(F=45)、2−エチル−3−メチルヘキシル(F=33)、2−エチル−3−エチルヘキシル(F=33)、2−エチル−3−メチルペンチル(F=33)、2−エチル−3−エチルペンチル(F=33)などが挙げられる。
【0070】
エステル化合物(B)は100℃における動粘度が2.5〜4.5mm
2/sであり、好ましくは2.60〜4.40mm
2/sであり、より好ましくは2.70〜4.30mm
2/sであり、更に好ましくは2.80〜4.20mm
2/sであり、特に好ましくは2.90〜4.00mm
2/sであり、最も好ましくは3.00〜3.90mm
2/sである。ここでいう100℃における動粘度とは、ASTM D−445に規定される100℃での動粘度を示す。エステル化合物(B)の100℃動粘度が4.5mm
2/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られず、2.5mm
2/s未満の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油組成物の蒸発損失が大きくなる。
【0071】
エステル化合物(B)の40℃における動粘度は10.0〜20.0mm
2/sであり、好ましくは11.0〜19.0mm
2/sであり、より好ましくは12.0〜18.0mm
2/sであり、更に好ましくは13.0〜17.0mm
2/sであり、特に好ましくは13.5〜17.5mm
2/sであり、最も好ましくは14.0〜17.0mm
2/sである。エステル化合物(B)の40℃動粘度が20.0mm
2/sを超える場合には、低温粘度特性が悪化し、また十分な省燃費性が得られない場合もあり、10.0mm
2/s未満の場合は潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油組成物の蒸発損失が大きくなる場合もある。
【0072】
本発明に係るエステル化合物(B)は、上記条件を満たしていれば特に制限されない。具体的には、モノエステル系化合物、ジエステル系化合物、ポリエステル系化合物などの内、上記条件を満たすエステル化合物が使用できる。
【0073】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は、低温粘度の観点から、好ましくは10.0〜15.0mm
2/sであり、より好ましくは10.4〜14.0mm
2/sであり、更に好ましくは10.6〜13.5mm
2/sであり、特に好ましくは10.8〜13.0mm
2/sであり、最も好ましくは11.0〜12.0mm
2/sである。100℃における動粘度が10.0mm
2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、15.0mm
2/sを超える場合には必要な低温粘度及び十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
【0074】
本発明の潤滑油組成物の40℃における動粘度は、20〜40mm
2/sであることが好ましく、より好ましくは22.0〜38.0mm
2/sであり、更に好ましくは23.0〜37.0mm
2/sであり、特に好ましくは24.0〜36.0mm
2/sであり、最も好ましくは25.0〜35.0mm
2/sである。40℃における動粘度が20.0mm
2/s未満の場合には、潤滑性不足を来たすおそれがあり、40.0mm
2/sを超える場合には必要な低温粘度及び十分な省燃費性能が得られないおそれがある。
【0075】
本発明の粘度指数向上剤は潤滑油組成物の重量に基づいて10〜30重量%含有しているものが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は本発明の粘度指数向上剤及び基油を含有してなる。基油としては鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、ナフテン油等)、合成潤滑油(炭化水素系合成油、エステル系合成潤滑油等)及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち好ましいのは合成潤滑油である。また、本発明の潤滑油組成物は後述する各種添加剤を含有してもよい。
潤滑油組成物がエンジン油として使用される場合には、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を2〜30重量%含有しているものが好ましい。
潤滑油組成物がギヤ油として使用される場合には、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を10〜70重量%含有しているものが好ましい。
潤滑油組成物が自動変速機油(ATF及びbelt−CVTF等)として使用される場合には、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を10〜70重量%含有しているものが好ましい。
潤滑油組成物がトラクション油として使用される場合には、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を0.5〜20重量%含有しているものが好ましい。
【0076】
本発明の潤滑油組成物の−40℃における低温粘度は、エンジンの初期始動性観点から、好ましくは5,000mPa・s以下であり、より好ましくは4,000mPa・s以下であり、更に好ましくは3,000mPa・s以下である。
【0077】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF及びbelt−CVTF等]、トラクション油(トロイダル−CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)等に好適に用いられる。これらのうち好ましいのは、ギヤ油、MTF、変速機油及びトラクション油、パワーステアリング油であり、更に好ましいのはギヤ油、MTF、ATF及びbelt−CVTF、パワーステアリング油であり、特に好ましいのはギヤ油、ATF及びbelt−CVTFであり、最も好ましいのはギヤ油である。
【0078】
本発明の潤滑油組成物は、各種添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、分散剤、清浄剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤及び腐食防止剤等の添加剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
分散剤としては、コハク酸イミド類(ビス−又はモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等が挙げられる。
【0080】
清浄剤としては、塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、亜鉛系、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
【0082】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル−3−(3−メチル−5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
油性向上剤としては、長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等が挙げられる。
【0084】
流動点降下剤としては、長鎖アルキルメタクリレート(アルキル基炭素数12〜18)の共重合物等が挙げられる。
【0085】
摩擦摩耗調整剤としては、モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等が挙げられる。
【0086】
極圧剤としては、硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等が挙げられる。
【0087】
消泡剤としては、シリコンオイル、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等が挙げられる。
【0088】
抗乳化剤としては、4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等が挙げられる。
【0089】
腐食防止剤としては、窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート等)等が挙げられる。
【0090】
これらの添加剤は1種だけ使用してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を使用することもできる。これらの添加剤を配合したものを性能添加剤と呼ぶこともある。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
製造例1 粘度指数向上剤組成物(R−1)の製造 >
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、単量体(a−1)[メタクリル酸2−テトラデシルオクタデシル(Sasol製ISOFOL32とメタクリル酸のエステル化物]18重量部(4.7モル)、単量体(b−1)64重量部(90モル)、単量体(c−3)18重量部(5.3モル)、エステル化合物(B−1)300重量部、及び1,1’−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.2重量部を投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った。密閉下、撹拌しながら100℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。110℃に昇温後、3時間熟成を行い、120〜130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027〜0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、共重合体(A−1)を含有する粘度指数向上剤組成物(R−1)を得た。
【0093】
製造例2〜12および比較製造例1〜10
製造例1において、単量体とエステル化合物(B)を表1に記載した仕込み量で反応を行い、それぞれ共重合体(A−2)〜(A−12)及び(A’−1)〜(A’−10)を含有する粘度指数向上剤組成物(R−1)〜(R−12)及び(R’−1)〜(R’−10)を得た。
【0094】
【表1】
【0095】
なお、表1に記載の単量体(a)〜(g)の組成は、以下に記載した通りである。
【0096】
(a−1):メタクリル酸2−テトラデシルオクタデシル(Sasol製ISOFOL32とメタクリル酸のエステル化物) (炭素数32(アルキルエステル中のアルキル基の炭素数以下同じ))
(a−2):メタクリル酸2−テトラデシルイコシル (炭素数34)
(a−3):メタクリル酸2−ヘキサデシルイコシル (炭素数36)
(b−1):メタクリル酸メチル (炭素数1)
(b−2):メタクリル酸n−ブチル (炭素数4)
(c−1):メタクリル酸2−オクチルドデシル (炭素数20)
(c−2):メタクリル酸2−n−デシルテトラデシル (炭素数24)
(c−1):メタクリル酸2−ドデシルヘキサデシル (炭素数28)
(d−1):メタクリル酸n−ドデシル (炭素数12)
(d−2):メタクリル酸n−テトラデシル (炭素数14)
(d−3):メタクリル酸n−ヘキサデシル (炭素数16)
(d−4):メタクリル酸n−オクタデシル (炭素数18)
(e−1):N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
(f−1):ヒドロキシエチルメタクリレート
(g−1):メタクリロイロキシエチルホスフェート
【0097】
また、使用したエステル化合物(B−1)〜(B−3)、(B’−1)〜(B’−2)は以下の通りである。
エステル化合物(B−1):ドデカン2酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル(田岡化学工業製DODN、SP値8.92)
エステル化合物(B−2):アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル(田岡化学工業製、SP値8.88)
エステル化合物(B−3):セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル(田岡化学工業製DOS、SP値8.87)
エステル化合物(B−4):セバシン酸ジ(2−メチルペンチル)エステル(SP値8.91)
エステル化合物(B−5):セバシン酸ジ(3−メチルブチル)エステル(SP値8.95)
エステル化合物(B’ −1):セバシン酸ジイソデシルエステル(伊藤製油製DIDS、SP値8.85)
エステル化合物(B’−2):アジピン酸ジイソデシルエステル(大八化学工業性DIDA、SP値10.69)
エステル化合物(B’−3):セバシン酸ジ(1−エチル−2−エチルブチル)エステル(SP値8.76)
【0098】
得られた共重合体(A−1)〜(A−12)、(A’−1)〜(A’−10)の重量平均分子量(Mw)とSP値、使用したエステル化合物(B−1)〜(B−5)、(B’−1)〜(B’−3)のSP値を表1に記載した。
また、粘度指数向上剤組成物(R−1)〜(R−12)及び(R’−1)〜(R’−10)の低温貯蔵安定性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0099】
<粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A)とエステル化合物(B)への相溶性評価> 粘度指数向上剤組成物(R1)〜(R8)、(S1)〜(S4)をエステル化合物(B)又は比較のエステル化合物の重量に対して20重量%添加して均一化し、室温で24時間貯蔵後の外観を目視で観察し、以下の評価基準で相溶性を評価した。
[評価基準]
○:外観が均一であり、共重合体(A)の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、共重合体(A)の不溶解物が認められる
【0100】
実施例1 <潤滑油組成物(V−1)の製造と評価>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、 得られる潤滑油組成物の100℃動粘度が11.50±0.02(mm
2/s)になるように、粘度指数向上剤組成物(R−1)17.8重量部と添加剤として分散剤5重量部、洗浄剤5重量部、酸化防止剤0.5重量部、摩耗調整剤2重量部、極圧剤1重量部、消泡剤0.1重量部、抗乳化剤1重量部、腐食防止剤0.5重量部を含む基油82.2重量部を混合し、潤滑油組成物(V−1)を得た。
【0101】
<実施例2〜12および比較例1〜10>
実施例1と同様にして、粘度指数向上剤組成物(R−1)〜(R−12)及び(R’−1)〜(R’−10)と添加剤入りの基油を表2に記載の部数で配合して、潤滑油組成物(V−2)〜(V−12)および(V’−1)〜(V’−10)を得た。
【表2】
【0102】
潤滑油組成物(V−1)〜(V−12)、(V’−1)〜(V’−10)の100℃における動粘度、40℃における動粘度、粘度指数、−40℃での低温粘度を以下の方法で測定した。
なお、比較例2、3、6の潤滑油組成物はエステル化合物(B)に溶解しなかったため、評価できなかった。結果を表2に示す。
【0103】
<潤滑油組成物の粘度指数の計算方法>
ASTM D 445の方法で40℃と100℃の動粘度を測定し、ASTM D 2270の方法で計算した。
【0104】
<潤滑油組成物の低温粘度(−40℃)の測定方法>
ASTM D 2983の方法により、−40℃で測定した。
【0105】
表2の結果から明らかなように、本発明の粘度指数向上剤を含有してなる実施例1〜12の潤滑油組成物は、粘度指数向上効果が高く、かつ低温粘度が低いという効果を共に満たすが、比較例1〜10の潤滑油組成物は粘度指数向上効果が低かったり、低温粘度が高かったりして、全てを満足するものはない。