【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、本発明のいくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターを備えるスプレードライ装置とその使用方法に関するものであり、いくつかの実施形態においてこれらは先行技術に比べていくつかの利点を有し得、かつ/あるいは、いくつかの実施形態において、上述したスプレードライが直面する課題の一部を軽減し得る。
【0013】
背景技術の節で述べたように、スプレードライされる液体の冷却のために、熱交換機構を使用することが知られている。しかしながらそのような熱交換機構は、スプレーノズル先端には冷却を提供しない。その結果、スプレーノズル先端が乾燥ガスにより加熱されて、スプレードライ中に熱感受性物質に対して有害な影響をもたらす。例えば、タンパク質の変性並びに/又は活性及び/又は力価の低下、並びに/又はスプレーノズル先端への乾燥物質の層の蓄積によるスプレーパターンの変化を起こし、及び/又はノズルの部分的又は完全な閉塞を生じる可能性がある。
【0014】
本発明の態様及び実施形態は、本明細書中の以下に、及び添付の請求項において、記述される。
【0015】
本明細書に記述されるいくつかの実施形態の一態様によって、スプレードライ装置10が提供され、スプレードライ装置は、
(i)近位端18及び遠位端20を有するスプレーノズル14であって、このスプレーノズルが、
スプレーノズルの遠位端にあるスプレーノズル先端22と、
スプレードライされる液体をスプレーノズル先端から外へ導くための液体導管24と、
スプレーノズルを出る液体から液滴のスプレーを生成するための噴霧構成要素25と、
を含む、スプレーノズル、
(ii)この液滴のスプレーを乾燥させるための乾燥ガスを導くための、出口28を備える乾燥ガス導管16、
及び
(iii)この乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向するよう配置された、乾燥ガスデフレクター40、を備える。
【0016】
いくつかの実施形態において、液体をスプレードライする方法が提供され、この方法は、
本明細書に記述されるようにスプレードライ装置10を設けることと、
スプレーノズル先端22から、液滴のスプレーとして液体をスプレーすることと、
乾燥ガスの流れを、液滴のスプレーに導くことと、
乾燥ガスデフレクターを用いて、この乾燥ガスの流れを、スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることと、
を含む。
【0017】
本明細書に記述される装置又は方法のいくつかの実施形態において、このスプレードライ装置は、熱交換機構を含まない。
【0018】
本明細書に記述される装置又は方法のいくつかの実施形態において、スプレーノズル先端22の遠位端20に噴霧構成要素25が設けられ、スプレーノズル先端22には、遠位端を有する液体導管24が、スプレードライされる液体をスプレーノズル先端22へと送達するために設けられている。
【0019】
いくつかの実施形態において、噴霧構成要素25は噴霧ガス導管26を備え、これは、噴霧ガスの流れを噴霧ガス出口から外へ導き、スプレーノズル先端から出る液体に接触させるためのものである。
【0020】
いくつかの実施形態において、この液体は、噴霧構成要素25の遠位端に位置する小さな開口部を通って高圧で押し出され、これにより圧力低下が生じ、これにより液体が液滴のスプレー(例えば微細液滴)へと変化する。よって、いくつかの実施形態において、噴霧構成要素25は液体導管24の遠位端に位置する開口部を備え、液体がこの開口部から外へ押し出されてスプレーを形成する。
【0021】
いくつかの実施形態において、噴霧構成要素25は回転ディスクを備え、このディスクの回転によって生じる遠心力によって、液体のスプレーが形成される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるように乾燥ガスデフレクターを用いて乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端22から離れる方向に偏向させることによって、潜在的に、スプレーノズル先端22及び/又はスプレードライされる液体の過熱を最小限に抑えるか又は防止し、いくつかの実施形態においてこれにより、熱感受性物質(例えば、血液凝固カスケードのタンパク質であるフィブリノゲン又はトロンビンなどのタンパク質)に対する望ましくない影響を防止する。
【0023】
いくつかの実施形態において、乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることで、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、スプレーノズル先端の任意の方向に最大約3mm以内の空間を、加熱するのを防止する。
【0024】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、遠位端に開いた底部を備える。
【0025】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズルの遠位端に近い位置で、スプレーノズル先端が乾燥ガスデフレクターの遠位端44を超えて突出しないように、スプレーノズルに取り付けられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、熱交換機構を含まないスプレーノズルの一部分に取り付けられる。そのようないくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターが取り付けられているスプレーノズルの部分は、スプレーノズルの長さの一部分、ノズル先端、噴霧構成要素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、多角形、円形、及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、この開いた底部の辺縁は、多角形(例えば三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、又は星形多角形)、円形及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、乾燥ガスデフレクターの遠位端44を構成する円形の開いた底部を有する中空の切頭円錐部分42と、近位端48に向かって先細になる側面部46とを含み、この近位端は、スプレーノズルの遠位端の近くの位置の外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された周長を有する開口部49を備える。
【0029】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、遠位端57及び近位端59を含む中空円筒部分56を更に備え、遠位端57は、切頭円錐部分の近位端48から、切頭円錐部分の底部とは反対の方向に延在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、中空円筒部分は、スプレーノズルの外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された内径58を有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、この切頭円錐部分及び中空円筒部分は一体式構造体として形成されている。そのようないくつかの実施形態において、遠位端57と近位端48は同じ形状である。
【0032】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターはスプレーノズル及び/又はノズル先端に直接取り付けられている。
【0033】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは噴霧構成要素に直接取り付けられている。
【0034】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは円筒部分を備え、この円筒部分は噴霧構成要素に直接取り付けられている。
【0035】
いくつかの実施形態において、このガスデフレクターは、スプレーノズルの長さを、少なくとも部分的に覆う。いくつかの実施形態において、このガスデフレクターの近位端は、スプレーノズルの長さを、少なくとも部分的に覆う。いくつかの実施形態において、このガスデフレクターの円筒部分は、スプレーノズルの長さを、少なくとも部分的に覆う。
【0036】
いくつかの実施形態において、このガスデフレクターの円筒部分は、スプレーノズルの長さ全体を覆う。
【0037】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、スプレードライ装置の、スプレーノズル以外又はノズル先端以外の部分に取り付けられている。
【0038】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、例えば300Kにおいて2W/(m・K)以下の熱伝導度を有する材料などの断熱材料で形成されている。
【0039】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))からなる群から選択される材料で形成されている。
【0040】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの底部は実質的に、約0.1〜約10mmの範囲の周長を有する円形である。
【0041】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの側面部は、約0.1〜約10mmの範囲の長さ50を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの長さ63、すなわち近位端から遠位端までの距離は、約1〜約10mmの範囲である。
【0043】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの側面部の間の開口角66は、約1〜約180°の範囲である。
【0044】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの中空円筒は、約1〜約10mmの範囲の長さ62を有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの内側寸法は、スプレーの伝播を妨げないようになっている。
【0046】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの温度は少なくとも100℃である。
【0047】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの温度は約100℃〜約200℃の範囲であり、例えば約140℃である。
【0048】
いくつかの実施形態において、この液体は熱感受性物質を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、この液体は、例えばフィブリノゲンなどのタンパク質などの熱感受性物質を含む、溶液、懸濁液及び乳濁液からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、この液体はタンパク様溶液である。
【0050】
フィブリノゲン及びトロンビンは場合により、初期血液組成物から調製され得る。この血液組成物は、全血、又は血液の一分画、すなわち、血漿のような全血の一分画であり得る。フィブリノゲン及びトロンビンの由来は、自家であってよく、すなわち、患者自身の血液から、プールされた血液から、又は血液分画から製造されたフィブリノゲン及びトロンビンであり得る。トロンビン又はフィブリノゲンは、遺伝子組換え法により調製することもできる。
【0051】
本発明の一実施形態において、フィブリノゲンは、血漿由来のタンパク質溶液である生物学的有効成分(BAC)を含み、場合により、トラネキサム酸等の抗線維素溶解薬剤及び/若しくはアルギニン、リシン、これらの製薬的に許容できる塩類等の安定剤、又はこれらの混合物を更に含む。BACは、場合により、クリオプレシピテート、特に濃縮クリオプレシピテート由来である。
【0052】
「クリオプレシピテート」という用語は、全血から調製される凍結血漿、回収された血漿、又は血漿瀉血により回収された元血漿から得られる、血液成分を指す。クリオプレシピテートは場合により、凍結した血漿を低温、通常は0〜4℃の温度で徐々に解凍すると得られ、結果としてフィブリノゲン及び第XIII因子を含む沈殿物が形成される。沈殿物は、例えば、遠心分離によって収集し、120mMの塩化ナトリウム、10mMのクエン酸三ナトリウム、120mMのグリシン、95mMのアルギニン塩酸塩、1mMの塩化カルシウムを含む緩衝液等の好適な緩衝液に溶解することができる。
【0053】
BACの溶液は、場合により、例えば、米国特許第6,121,232号及びPCT特許公開第WO9833533号に記載されるように、例えば、第VIII因子、フィブロネクチン、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF)、ビトロネクチン等の追加の因子を含む。
【0054】
BACの組成は、場合により、トラネキサム酸及びアルギニン塩酸塩等の安定剤を含む。BACの溶液内のトラネキサム酸の量は、場合により、約80〜約110mg/mLの範囲である。アルギニン塩酸塩の量は、場合により、約15〜約25mg/mLの範囲である。
【0055】
場合により、フィブリノゲン溶液は生理学的適合性を有するpH値に緩衝される。緩衝液は場合により、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び溶媒としての注射用蒸留水を含む。グリシンは場合により、約6〜約10mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在し、クエン酸ナトリウムは場合により、約1〜約5mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在し、塩化ナトリウムは場合により、約5〜約9mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在し、塩化カルシウムは場合により、約0.1〜約0.2mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0056】
本発明の一実施形態において、フィブリノゲンは、例えばBAC組成物などの血液由来である。本発明の別の実施形態において、血液由来成分中のプラスミン及び/又はプラスミノゲンの濃度は、低減される。血液由来成分からのプラスミン及びプラスミノゲンの除去は、米国特許第7,125,569号及びPCT特許公開第WO02095019号に記載のように実行することができる。
【0057】
トロンビン溶液は場合により、ヒトトロンビン(800〜1200IU/mL)、塩化カルシウム、ヒトアルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム、及び注射用蒸留水を含む。いくつかの実施形態において、フィブリノゲン成分の濃度は約60mg/mLであり、トロンビン成分の濃度は約1000IU/mLである。
【0058】
フィブリノゲン及びトロンビン成分は、OMRIX(例えばEVICEL(登録商標)、QUIXIL(登録商標)、ADHEXIL(商標)、EVITHROM(登録商標))、Baxter(例えばTISEEL(登録商標))、CSL(例えばBeriplast(登録商標))などの製造者より入手可能である。一実施形態において、フィブリノゲン及びトロンビン成分は、ヒトを供給源とするプールされた血漿より製造され、1つのバイアル瓶が生物学的有効成分1又は2(BAC1又はBAC2)を含み、別のバイアル瓶がトロンビン成分を含む、2つのバイアル瓶からなる単回使用キットとして提供されている。
【0059】
スプレーノズル先端22の過熱は、液体、又は液体から形成されたスプレーがノズル先端22から出るより前、及び/又は出る時点で、最小限に抑えるか又は防止される。
【0060】
本明細書の教示による乾燥ガスデフレクターの使用は、いくつかの実施形態において、スプレードライ中のタンパク質及びその他の熱感受性物質の変性を低減及び/若しくは防止し、並びに/又は、タンパク質の力価を実質的に維持し、並びに/又は、スプレーノズル先端22の周囲への固体物質の蓄積を低減し、並びに/又は、スプレーパターンの変化及びスプレーノズル先端22の閉塞の可能性を低減若しくは防止する。典型的に、理想的なスプレーパターンは、微細液滴により形成された円錐形を有する。スプレーパターンの何らかの変化、すなわち液滴サイズの急激な増加及び/又はスプレー円錐方向の変化は、スプレー先端、スプレードライヤー筒、又はスプレードライヤー装置の他の部品に、溶質の蓄積を引き起こすことがある。
【0061】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態は、熱感受性物質(例えばタンパク質)を含む溶液のスプレードライを可能にし、比較的高収率で熱感受性物質の乾燥粉末を生成する。
【0062】
製薬組成物の調製に使用するための乾燥粉末は、一般的に溶液の凍結乾燥により調製される。
【0063】
本明細書でタンパク質に関して使用される用語「収率」は、スプレードライ前の溶液のタンパク質力価に比べた、粉末の再構成時のタンパク質(生物学的)力価のパーセンテージである。
【0064】
本明細書で使用される用語「力価」は、物質の有効性、すなわち、望ましい結果を達成する能力を指す。一実施形態において、タンパク質がフィブリノゲンである場合、タンパク質力価は、とりわけ、トロンビン(又は、フィブリノゲンとの反応によりフィブリンを形成することができるタンパク質分解酵素)により開裂されて、フィブリンを形成する潜在能力を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、溶液のフリーズドライ(凍結乾燥とも呼ばれる)とその後の乾燥粉末の摩砕は不要である。
【0066】
「凍結乾燥」という用語は典型的には、溶液を凍結してから、水の濃度を、例えば昇華によって、生物反応又は化学反応を支持しないレベルまで低下させるプロセスを指す。
【0067】
多くの製薬及び手術支援製品が、乾燥薬物を含んでおり、これらは通常、凍結乾燥により液相から乾燥相へと乾燥されている。凍結乾燥された薬物の製造プロセスはバッチプロセスであり、これは通常数日間かかり、凍結乾燥機サイズの容量により制限される。これは、プロセスが完了するまでのかなりの時間の間、乾燥バッチ全体をリスクにさらすことになる。更に、製造される凍結乾燥薬物は「ケーク」の形状であり、これは、粉末を得るために破砕、ふるい、及び/又は摩砕などの更なる加工工程を必要とする。これらの工程は、乾燥製品の力価及び質量収率を低下させ得る。
【0068】
好都合なことに凍結乾燥の代わりにスプレードライプロセスを使用することで、コスト効率が良く、連続的で、高能力のプロセスが提供され、この乾燥生成物は、「ケーク」としてではなく、即座に乾燥粉末の形態で得られる。
【0069】
本明細書において使用するとき、用語「ケーク」又は「固体ケーク」は、凍結乾燥から生じる多孔質及びスポンジ構造様組成物を指す。
【0070】
下記の実施例セクションで示すように、いくつかの実施形態において、スプレードライプロセス中に本明細書の教示による乾燥ガスデフレクターを用いることにより、有利に、均一なスプレーパターンの形成がもたらされ、すなわち、液滴のサイズ及び/又は方向並びに/又は流量がスプレードライプロセス全体を通して変化しない微細液滴のスプレーがもたらされ、これによって、スプレードライされた物質の収率が向上する。
【0071】
本明細書で使用される用語「微細液滴」は、特定のスプレードライ条件下で乾燥ガスに接触すると乾燥されて粉末になり得る液滴を指すことができ、一方、大きな液滴は、同じ条件で乾燥しても粉末にはならなくて、代わりにスプレードライ装置の内壁に付着し、これが乾くとプロセス製品の喪失をもたらし、すなわち、質量収率の低減がもたらされることがある。いくつかの実施形態によれば、「微細液滴」は、1mm以下の直径を有するものである。いくつかの実施形態によれば、「大きな液滴」は、1mmより大きいサイズを有する液滴を指す。
【0072】
本明細書に記述されるいくつかの実施形態の更なる一態様によれば、液体をスプレードライする方法が提供され、この方法は、
本明細書に開示される乾燥ガスデフレクターを含むスプレードライ装置10を設けることと、
この装置のスプレーノズル先端を出る液体から、液滴のスプレーを形成することと、
乾燥ガスの流れを、液滴のスプレーに導くことと、
乾燥ガスデフレクターを用いて、この乾燥ガスの流れを、スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることと、
を含む。
【0073】
本明細書の教示を実施するために、任意の好適な液滴サイズを使用することができる。いくつかの実施形態において、この液滴は1〜1000マイクロメートルの直径を有する。
【0074】
本明細書に開示されるスプレードライ装置又は方法のいくつかの実施形態によれば、
乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることで、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、ノズル先端の任意の方向に最大約5mm以内(例えば、ノズル先端の最大約1mm、最大約2mm、最大約3mm、最大約4mm又は最大約5mm)の空間を加熱することを防止する。
【0075】
本明細書に開示されるスプレードライ装置又は方法のいくつかの実施形態によれば、乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることによって、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、スプレーノズル先端に接触することを防止する。
【0076】
本明細書に開示されるスプレードライ装置又は方法のいくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズル先端が乾燥ガスデフレクターの遠位端44を超えて突出しないように、スプレーノズルに取り付けられている。そのようないくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズルの遠位端の近くの位置において取り付けられている。
【0077】
本明細書で使用される用語「取り付け」とは、直接的又は間接的に固定されることを意味する。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、多角形、円形、及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、その遠位端において開いた底部を備える。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、この開いた底部の辺縁は、多角形(例えば三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、及び十角形からなる群から選択される多角形)、円形及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。いくつかの実施形態において、この多角形は星形多角形である。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、この開いた底部は円形の形状を有する。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、遠位端を備えた中空の切頭円錐部分42を含み、これが乾燥ガスデフレクターの遠位端44を構成し、乾燥ガスデフレクターは、円形の形状を有する開いた底部と、開いた底部から近位端48に向かって先細になった側面部46とを含み、この近位端は、スプレーノズルの遠位端の近くでスプレーノズルの一部分の外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された周長を有する開口部49を備える。いくつかの実施形態によれば、開口部49は、噴霧構成要素25を取り囲んで配置されるように構成された周長を有する。
【0083】
いくつかのそのような実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは更に、遠位端57及び近位端59を含む中空円筒部分56を備え、遠位端57は、切頭円錐部分42の近位端48から、乾燥ガスデフレクターの遠位端44から離れる方向(反対方向)に延在し、中空円筒部分56は、スプレーノズルの外側部分を少なくとも部分的に取り囲んで同心状に配置されるよう構成された内径58を有する。そのようないくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターが取り付けられているスプレーノズルの部分は、スプレーノズルの長さの一部分、ノズル先端、噴霧構成要素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、この切頭円錐部分及び中空円筒部分は一体式構造体として形成されている。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、この切頭円錐部分及び中空円筒部分は別々の構造体として形成され、これらは互いに、当該技術分野で周知の任意の方法で連結されている。好適な方法としては、接着剤の使用(例えば、中空円筒部分の遠位縁部/端、及び/又は切頭円錐部分の近位縁部に、接着剤を塗布する)、あるいは、切頭円錐部分と中空円筒部分を、例えば連結要素を用いて(例えば、中空円筒部分の遠位縁部及び/又は切頭円錐部分の近位縁部に、クリップ、タブ、スロット、ねじ切り、ピン、ノブなどを設ける)、並びに/又は、溶接を用いて、嵌合可能なように構成することが挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターはスプレーノズルに直接取り付けられている。そのようないくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、例えば、スプレーノズルを包囲するチューブを用いて、及び/又は、スプレーノズル先端の上の位置でこの周りを取り囲み、乾燥ガスデフレクターを支持する1本又は2本以上のロッドを用いて、スプレーノズル上に保持される。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、液滴形成を妨げないような方法で、スプレーノズルに直接取り付けられている。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは噴霧構成要素に直接取り付けられている。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターのスプレーノズルへの取り付けが、スプレーノズルの外側表面に乾燥ガスデフレクターを設置することを含むように、この乾燥ガスデフレクターの一部分の内径58は、スプレーノズルの外側表面の少なくとも一部分の周りに直接、しっかりフィットするよう構成されてよい。そのようないくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターとスプレーノズルのうち一方又は両方が、これら2つを一緒に固定するための部品(例えば、バネ付勢の戻り止めボール又はピン)を含み得る。いくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターが取り付けられているスプレーノズルの外側表面の部分は、スプレーノズル先端の外側表面の一部分である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、このデフレクター及びノズルは別々の構造体として形成され、これらは一方を他方に、液滴形成を妨げないような方法で、当該技術分野で周知の任意の方法で連結される。好適な方法としては、液滴形成を妨げないような方法で、接着剤の使用、あるいは、連結部品の使用(例えば中空円筒部分の遠位縁部及び/又は切頭円錐部分の近位縁部に、クリップ、タブ、スロット、ねじ切り、ピン、ノブなどを設ける)、及び/又は、溶接することが挙げられる。この乾燥ガスデフレクターは、乾燥ガスデフレクターをシリコーンなどのエラストマー材料から形成することによって、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端に連結することができ、この場合、乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端の外側断面(例えば直径)よりも小さい、内側断面58(例えば直径)を有しており、これによって、乾燥ガスデフレクターの弾性特性により生じる圧力で嵌め合いが達成される。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、このデフレクター及びノズルは、一体式構造体として形成されている。
【0091】
本明細書で使用される用語「エラストマー材料」は、形状記憶を有する材料を指し、例えばゴム、準剛性又は硬質のプラスチックなどの、軟質又は準剛性材料を含む。エラストマー材料の非限定的な例としては、シリコーン、Viton、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、天然ゴム、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))からなる群から選択される材料で形成されている。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターを形成する材料は、約30 Shore A〜約70 Shore A、例えば約30 Shore A〜約50 Shore Aの範囲の弾性を有する。
【0094】
Shore Aは、エラストマー性物質の硬度を測定するデュロメータの使用により測定することができる。
【0095】
いくつかのそのような実施形態において、デフレクター58の内側断面は、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端の外側断面よりも、約1%〜約30%(デフレクターの弾性特性に依存する)小さい。
【0096】
いくつかのそのような実施形態において、デフレクターと、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端との間には、物理的な隙間は実質的にない。
【0097】
そのようないくつかの実施形態において、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端及び/又は噴霧構成要素25は、デフレクターがその表面に取り付けられたときに変形しないような、剛性/硬質の材料(例えばステンレス鋼など)で形成されている。
【0098】
そのようないくつかの実施形態において、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端に取り付けられているデフレクターの部分の形状と、デフレクターが取り付け/配置されているスプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端の形状とは、嵌合可能である。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターの近位端59の内側部分58と、スプレーノズルの外側部分は、それぞれ嵌合可能な部品(例えば、合致するねじ切り、又は合致するピン・溝部品)を備えて提供され、これによって、乾燥ガスデフレクターのスプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端への取り付けは、乾燥ガスデフレクターを、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端に対して回転させることを含む。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、例えば、デフレクターを乾燥チャンバ内壁、乾燥チャンバ近位端、又はスプレードライヤー装置の他の任意の部分に連結することにより、スプレーノズルに間接的に固定され、これによってデフレクターは、上述のように機能することができる。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、スプレードライ装置の、スプレーノズル以外又はスプレーノズル先端以外の部分に取り付けられる。例えば、いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターはスプレーノズル上には取り付けられず、スプレーノズル先端が乾燥ガスデフレクターの遠位端を超えて突出しないように、スプレーノズル先端と乾燥ガスの流れとの間の位置に設置される。そのような実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、例えば、開いた平坦な又は湾曲した表面を含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは例えば、300Kにおいて2W/(m・K)以下(例えば0.5W/(m・K)以下、1W/(m・K)以下、1.5W/(m・K)以下)の熱伝導度を有する材料などの断熱材料で形成されている。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、その遠位端44において開いた底部を備え、この開いた底部は実質的に円形であり、約0.1〜約10mm、約1〜約50mm、約5〜約15mm、好ましくは約6〜約10mmの範囲の、例えば6mm、7mm、8mm、9mm又は10mmの周長を有する。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクター40の側面部46の長さ50は、約0.1〜約10mm、約0.5〜約7mm、約1〜約5mm、好ましくは約2〜約4mmの範囲で、例えば約2mm、約3mm、約4mmであり、より好ましくは約2.9mmである。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、遠位端44の開いた底部の周長と、側面部46の長さ50との比は、約1:100〜約100:1の範囲であり、例えば約1:7〜約100:1、1:1〜5:1、又は約1.5:1〜約5:1の範囲である。いくつかの実施形態において、この比は約3.45:1である。
【0106】
そのようないくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターの側面部は、開口角66が、約0〜約180°、約1〜約180°、約20〜約170°、約40〜約160°、約60〜約150°、約80〜約140°、約100〜約130°、約110〜約120°、好ましくは約115〜約120°の範囲であり、例えば115°、116°、117°、118°、119°又は120°であり、より好ましくは約118°である。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクター40の長さ63、すなわち、乾燥ガスデフレクターの第1の端(遠位端)から第2の端(近位端)までの距離は、約1〜約10mm、約2〜約8mm、好ましくは約3〜約7mmの範囲であり、例えば約3mm、約4mm、約5mm、約6mm又は約7mmであり、より好ましくは約6.5mmである。
【0108】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターの中空円筒の長さ62は、約1〜約10mm、約1.5〜約5mm、好ましくは約2〜約3mmの範囲であり、例えば約2.1mm、約2.2mm、約2.3mm、約2.4mm、約2.5mm、約2.6mm、約2.7mm、約2.8mm、約2.9mm又は約3mmであり、より好ましくは約2.5mmである。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、デフレクター40の長さ63と、円筒部分56の長さ62との比は、約1:10〜約10:1、例えば約1:2.5〜約5.33:1、約1:1〜約2.33:1の範囲である。いくつかの実施形態において、この比は約2.6:1である。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターの内側及び/又は外側寸法は、スプレーの伝播を妨げないようになっている。
【0110】
本方法のいくつかの実施形態によれば、この液体は、タンパク質(例えばフィブリノゲン)などの熱感受性物質を含む。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、この液体は、この熱感受性物質を含む、溶液、懸濁液及び乳濁液からなる群から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は約50℃〜約200℃の範囲である。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は、約100℃〜約200℃、約120℃〜約180℃、約140℃〜約170℃の範囲である。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は、少なくとも100℃であり、例えば140℃である。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は約140℃である。
【0114】
本明細書で使用される用語「乾燥ガスデフレクター」は、スプレードライ装置内の乾燥ガスの流れの向きを、スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させる装置を指す。
【0115】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの流れの方向は、元の方向に対して、最大約90°、最大約80°、最大約70°、最大約60°、又は最大約50°、偏向される。いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの流れの方向は、最大約59°偏向される。
【0116】
一実施形態において、乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることにより、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、ノズル先端から最大約5mm以内(例えば、ノズル先端の最大約1mm、最大約2mm、最大約3mm、最大約4mm又は最大約5mm)の空間を加熱することを、最小限に抑えるか、及び/又は防止する。
【0117】
本明細書で使用される用語「熱感受性物質」は、加熱されたときに、構造変化及び/又は力価の低下を被る可能性がある、化学的又は生物学的力価を有する材料(例えばタンパク質)を指す。構造変化には、変性、凝集、及び/又は重合が挙げられるがこれらに限定されない。
【0118】
本明細書において使用するとき、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、及びその文法的変形は、記載される特徴、完成体、工程、又は構成要素を特定するものとして理解されるが、1つ以上の追加的特徴、完全体、工程、構成要素、又はこれらの群の追加を排除するものではない。これらの用語は、用語「〜からなる」、及び「〜から本質的になる」を包含する。
【0119】
本明細書において使用するとき、不定冠詞「a」及び「an」は、文脈が明確にそうでない旨を表さない限り、「少なくとも1つの」又は「1つ又は2つ以上の」を意味する。
【0120】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、±10%を指す。
【0121】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。加えて、記載、材料、方法、及び実施例は、単に例示的なものであり、限定することを意図するものではない。本発明を実施する上で、本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を使用することができる。