特許第6686036号(P6686036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6686036
(24)【登録日】2020年4月3日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】スプレードライ装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/04 20060101AFI20200413BHJP
   B05B 7/08 20060101ALI20200413BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20200413BHJP
   F26B 17/10 20060101ALI20200413BHJP
   F26B 3/12 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   B01J2/04
   B05B7/08
   B05D1/02 Z
   F26B17/10 B
   F26B3/12
【請求項の数】29
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-545009(P2017-545009)
(86)(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公表番号】特表2017-537789(P2017-537789A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】IL2015000048
(87)【国際公開番号】WO2016079727
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年8月21日
(31)【優先権主張番号】235751
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】62/081,094
(32)【優先日】2014年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511203455
【氏名又は名称】オムリックス・バイオファーマシューティカルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Omrix Biopharmaceuticals Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イラン・エレツ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルショノビッチ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】グルマン・ヨタム
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/014923(WO,A1)
【文献】 特表2010−510818(JP,A)
【文献】 特開昭59−230601(JP,A)
【文献】 特開2005−060330(JP,A)
【文献】 米国特許第03621902(US,A)
【文献】 特表平08−504664(JP,A)
【文献】 特開2009−149683(JP,A)
【文献】 特表2001−523108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/02
B01D 1/16
B05B 1/00
F26B 3/12
A61K 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレードライ装置であって、
(i)近位端及び遠位端を有するスプレーノズルであって、前記スプレーノズルが、
前記スプレーノズルの前記遠位端にあるスプレーノズル先端と、
スプレードライされる液体を前記スプレーノズル先端から外へ導くための液体導管と、
前記スプレーノズルを出る前記液体から液滴のスプレーを生成するための噴霧構成要素と、
を備える、スプレーノズル、
(ii)前記液滴のスプレーを乾燥させるための乾燥ガスを導くための、出口を備える乾燥ガス導管、
及び、
(iii)前記乾燥ガスの流れを前記スプレーノズル先端から離れる方向に偏向するよう配置された、乾燥ガスデフレクター、を備え、
前記乾燥ガスデフレクターが、円形の開いた底部を有する中空の切頭円錐部分と、前記切頭円錐部分の近位端に向かって先細になる側面部とを含み、前記切頭円錐部分の前記近位端は、前記スプレーノズルの前記遠位端の近くの位置の外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された周長を有する開口部を備える、スプレードライ装置。
【請求項2】
前記噴霧構成要素が、噴霧ガスの流れを噴霧ガス出口から外へ導き、前記スプレーノズル先端から出る液体に接触させるための、噴霧ガス導管を備える、請求項1に記載のスプレードライ装置。
【請求項3】
前記乾燥ガスの流れを前記スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることにより、前記乾燥ガス導管の前記出口から出る前記乾燥ガスが、前記スプレーノズル先端の任意の方向に最大3mm以内の空間を、加熱することを防止する、請求項1又は2に記載のスプレードライ装置。
【請求項4】
前記乾燥ガスデフレクターが、前記乾燥ガスデフレクターの遠位端において、開いた底部を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項5】
前記乾燥ガスデフレクターは、前記スプレーノズル先端が前記乾燥ガスデフレクターの遠位端を超えて突出しないように、前記スプレーノズルの前記遠位端に近い位置において前記スプレーノズルに取り付けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項6】
前記乾燥ガスデフレクターが更に、遠位端及び近位端を含む中空円筒部分を備え、前記中空円筒部分の前記遠位端は、前記切頭円錐部分の前記近位端から、前記切頭円錐部分の前記底部とは反対の方向に延在する、請求項1に記載のスプレードライ装置。
【請求項7】
前記中空円筒部分が、前記スプレーノズルの外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された内径を有する、請求項6に記載のスプレードライ装置。
【請求項8】
前記切頭円錐部分及び前記中空円筒部分が、一体式構造体として形成されている、請求項7に記載のスプレードライ装置。
【請求項9】
前記乾燥ガスデフレクターが、前記スプレーノズル及び/又は前記スプレーノズル先端に直接取り付けられている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項10】
前記乾燥ガスデフレクターが、前記噴霧構成要素に直接取り付けられている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項11】
前記乾燥ガスデフレクターが、前記スプレードライ装置の、前記スプレーノズル以外又は前記スプレーノズル先端以外の部分に取り付けられている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項12】
前記乾燥ガスデフレクターが断熱材料で形成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項13】
前記断熱材料が、300Kにおいて、2W/(m・K)以下の熱伝導度を有する、請求項12に記載のスプレードライ装置。
【請求項14】
前記乾燥ガスデフレクターが、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))からなる群から選択される材料で形成されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項15】
前記乾燥ガスデフレクターの前記底部が、0.1〜10mmの範囲の周長を有する実質的に円形である、請求項4に記載のスプレードライ装置。
【請求項16】
前記乾燥ガスデフレクターの前記側面部が、0.1〜10mmの範囲の長さを有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項17】
前記乾燥ガスデフレクターの近位端から遠位端までの距離が、1〜10mmの範囲である、請求項1〜16のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項18】
前記乾燥ガスデフレクターの前記側面部の開口角が、1〜180°の範囲である、請求項1〜17のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項19】
前記乾燥ガスデフレクターの前記中空円筒部分が、1〜10mmの範囲の長さを有する、請求項6に記載のスプレードライ装置。
【請求項20】
前記乾燥ガスデフレクターの内側寸法が、前記液滴のスプレーの伝播を妨げないようになっている、請求項1〜19のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項21】
前記液体が熱感受性物質を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項22】
前記液体が、前記熱感受性物質を含む、溶液、懸濁液及び乳濁液からなる群から選択される、請求項21に記載のスプレードライ装置。
【請求項23】
前記熱感受性物質がタンパク質である、請求項21又は22に記載のスプレードライ装置。
【請求項24】
前記タンパク質がフィブリノゲンを含む、請求項23に記載のスプレードライ装置。
【請求項25】
前記乾燥ガスの温度が、少なくとも100℃である、請求項1〜24のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項26】
前記乾燥ガスの温度が、100℃〜200℃の範囲である、請求項25に記載のスプレードライ装置。
【請求項27】
前記乾燥ガスの温度が140℃である、請求項26に記載のスプレードライ装置。
【請求項28】
前記中空の切頭円錐部分の遠位端の前記開いた底部の前記周長と、前記中空の切頭円錐部分の前記側面部の長さとの比が、1:100〜100:1の範囲である、請求項1〜17のいずれか一項に記載のスプレードライ装置。
【請求項29】
液体をスプレードライする方法であって、
請求項1〜28のいずれか一項に記載のスプレードライ装置を設けることと、
前記スプレーノズル先端から、液滴のスプレーとして液体をスプレーすることと、
前記乾燥ガスの流れを、前記液滴のスプレーに導くことと、
前記乾燥ガスデフレクターを用いて、前記乾燥ガスの流れを、前記スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプレードライの分野に関するものであり、より具体的には、乾燥ガスデフレクターを備えるスプレードライ装置とその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプレードライは、液体(例えば溶液、懸濁液又は乳濁液)を、例えば、噴霧ガスに接触させながら、スプレーノズルを通してスプレーすることによりスプレー粒子を形成することによる噴霧化を含むか、液体流とガス流の組み合わせによりスプレーが形成され、このガス流により噴霧化エネルギーが供給される二流体ノズル噴霧化による噴霧化を含むか、あるいは、この溶液が回転ディスクに送達され、このディスクの回転によって生じるエネルギーによってスプレーが形成される遠心噴霧化による噴霧化を含む。別法として、液体流は加圧ノズルを用いてスプレーすることができ、この場合、液体流は小さな開口部を通って押し出され、この圧力の変化により、液体流が小さな液滴のスプレーへと変換される。
【0003】
スプレー粒子の形成の後、乾燥ガス導管により供給される高温ガス(例えば空気)の流れの中でこのスプレーを乾燥させる。スプレー粒子は急速に乾燥され、粉末を生じる。粉末は、その後サイクロン装置中で高温空気流から分離され、例えばバイアルなどの収集容器内に収集することができる。市販のスプレードライ装置10の一例が図1に示されており、装置は、スプレーノズル14及び乾燥ガス導管16を有する乾燥筒12を備える。
【0004】
スプレーノズル14は近位端18及び遠位端20を有し、遠位端20にスプレーノズル先端22を備える。噴霧構成要素25(スプレーノズル14の拡大図である図2に示されている)がスプレーノズル先端22の遠位端20に設けられ、これは、液体からスプレーを生成することに関与する。
【0005】
液体導管24は、スプレーノズル先端22の位置に遠位端を有し、これは、スプレードライされる液体をスプレーノズル先端22へと送達するために設けられており、この中を液体が通過する。
【0006】
図2は、噴霧構成要素25を備えるスプレーノズル14を示す。噴霧器ガス導管26は、噴霧ガスを噴霧構成要素25へとガイドするために設けられ、これにより噴霧ガスは、スプレーノズル先端22にある液体導管24の遠位端の近くに送達される。噴霧ガスは、スプレーノズル先端22から外に、液体が通過する際又は出る際に、液体と接触し、これにより液体からスプレーが形成される。空気、窒素及びアルゴンを含む、任意の好適な不活性ガスを、噴霧ガスとして使用することができる。好ましくは、噴霧ガスは、相対湿度が約30%以下の乾燥状態である。典型的に、この乾燥ガスは約100℃〜約190℃の範囲の温度に加熱される。
【0007】
乾燥ガス導管16は、乾燥ガスを供給するための乾燥ガス出口28を備え、乾燥ガスにより、ノズル先端22から出る際に液体から形成されるスプレーを乾燥させ、これによって粉末を形成する。
【0008】
生成された粉末は、サイクロン装置30により乾燥ガスから分離され、サイクロン装置30の底部で、例えば収集容器32内に収集される。分離された乾燥ガスと粉末の経路が、それぞれ、図1の35及び36として示されている。
【0009】
周知のように、タンパク質(例えばフィブリノゲン)は一般に高温に対して感受性であり、例えば、ヒトタンパク質は45℃以上の温度に対して感受性である。その結果、タンパク質を含有する液体をスプレードライすると、結果として得られるスプレードライされたタンパク質は、変性を起こすか、及び/又は力価の低減若しくは喪失を起こすことがある。更に、スプレーノズル先端で沈降が生じることがあり、これによりスプレーノズル先端が部分的又は完全に閉塞されて、材料の喪失及び/又はタンパク質の凝集が起こることがある。
【0010】
液体導管24内のスプレードライされる液体の温度を下げようとする1つの試みにおいて、熱交換機構を設けることが当該技術分野で知られている。一つのそのような機構が図2に模式的に図示されており、これは、冷水を循環させるための2本のチューブ、すなわち、液体導管24の周りに同心状に配置されている、冷水を導入するための第1のチューブ34aと、冷水を排出するための第2のチューブ34bとを備え、冷水は、循環ポンプ(図示なし)を使用して第1のチューブ34a内へ入り、第2のチューブ34bから水槽へと出て、循環する。
【0011】
背景技術には、米国特許第5,227,017号、同第2,833,345号、PCT特許公開第WO2014078694A1号、米国公告特許第5851575A号、欧州特許公開第0979377A1号、ロシア登録特許第2435118C1号、ドイツ実用新案第202005015411U1号、及び欧州特許公開第2728288A1号が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、本発明のいくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターを備えるスプレードライ装置とその使用方法に関するものであり、いくつかの実施形態においてこれらは先行技術に比べていくつかの利点を有し得、かつ/あるいは、いくつかの実施形態において、上述したスプレードライが直面する課題の一部を軽減し得る。
【0013】
背景技術の節で述べたように、スプレードライされる液体の冷却のために、熱交換機構を使用することが知られている。しかしながらそのような熱交換機構は、スプレーノズル先端には冷却を提供しない。その結果、スプレーノズル先端が乾燥ガスにより加熱されて、スプレードライ中に熱感受性物質に対して有害な影響をもたらす。例えば、タンパク質の変性並びに/又は活性及び/又は力価の低下、並びに/又はスプレーノズル先端への乾燥物質の層の蓄積によるスプレーパターンの変化を起こし、及び/又はノズルの部分的又は完全な閉塞を生じる可能性がある。
【0014】
本発明の態様及び実施形態は、本明細書中の以下に、及び添付の請求項において、記述される。
【0015】
本明細書に記述されるいくつかの実施形態の一態様によって、スプレードライ装置10が提供され、スプレードライ装置は、
(i)近位端18及び遠位端20を有するスプレーノズル14であって、このスプレーノズルが、
スプレーノズルの遠位端にあるスプレーノズル先端22と、
スプレードライされる液体をスプレーノズル先端から外へ導くための液体導管24と、
スプレーノズルを出る液体から液滴のスプレーを生成するための噴霧構成要素25と、
を含む、スプレーノズル、
(ii)この液滴のスプレーを乾燥させるための乾燥ガスを導くための、出口28を備える乾燥ガス導管16、
及び
(iii)この乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向するよう配置された、乾燥ガスデフレクター40、を備える。
【0016】
いくつかの実施形態において、液体をスプレードライする方法が提供され、この方法は、
本明細書に記述されるようにスプレードライ装置10を設けることと、
スプレーノズル先端22から、液滴のスプレーとして液体をスプレーすることと、
乾燥ガスの流れを、液滴のスプレーに導くことと、
乾燥ガスデフレクターを用いて、この乾燥ガスの流れを、スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることと、
を含む。
【0017】
本明細書に記述される装置又は方法のいくつかの実施形態において、このスプレードライ装置は、熱交換機構を含まない。
【0018】
本明細書に記述される装置又は方法のいくつかの実施形態において、スプレーノズル先端22の遠位端20に噴霧構成要素25が設けられ、スプレーノズル先端22には、遠位端を有する液体導管24が、スプレードライされる液体をスプレーノズル先端22へと送達するために設けられている。
【0019】
いくつかの実施形態において、噴霧構成要素25は噴霧ガス導管26を備え、これは、噴霧ガスの流れを噴霧ガス出口から外へ導き、スプレーノズル先端から出る液体に接触させるためのものである。
【0020】
いくつかの実施形態において、この液体は、噴霧構成要素25の遠位端に位置する小さな開口部を通って高圧で押し出され、これにより圧力低下が生じ、これにより液体が液滴のスプレー(例えば微細液滴)へと変化する。よって、いくつかの実施形態において、噴霧構成要素25は液体導管24の遠位端に位置する開口部を備え、液体がこの開口部から外へ押し出されてスプレーを形成する。
【0021】
いくつかの実施形態において、噴霧構成要素25は回転ディスクを備え、このディスクの回転によって生じる遠心力によって、液体のスプレーが形成される。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるように乾燥ガスデフレクターを用いて乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端22から離れる方向に偏向させることによって、潜在的に、スプレーノズル先端22及び/又はスプレードライされる液体の過熱を最小限に抑えるか又は防止し、いくつかの実施形態においてこれにより、熱感受性物質(例えば、血液凝固カスケードのタンパク質であるフィブリノゲン又はトロンビンなどのタンパク質)に対する望ましくない影響を防止する。
【0023】
いくつかの実施形態において、乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることで、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、スプレーノズル先端の任意の方向に最大約3mm以内の空間を、加熱するのを防止する。
【0024】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、遠位端に開いた底部を備える。
【0025】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズルの遠位端に近い位置で、スプレーノズル先端が乾燥ガスデフレクターの遠位端44を超えて突出しないように、スプレーノズルに取り付けられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、熱交換機構を含まないスプレーノズルの一部分に取り付けられる。そのようないくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターが取り付けられているスプレーノズルの部分は、スプレーノズルの長さの一部分、ノズル先端、噴霧構成要素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、多角形、円形、及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、この開いた底部の辺縁は、多角形(例えば三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、又は星形多角形)、円形及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、乾燥ガスデフレクターの遠位端44を構成する円形の開いた底部を有する中空の切頭円錐部分42と、近位端48に向かって先細になる側面部46とを含み、この近位端は、スプレーノズルの遠位端の近くの位置の外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された周長を有する開口部49を備える。
【0029】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、遠位端57及び近位端59を含む中空円筒部分56を更に備え、遠位端57は、切頭円錐部分の近位端48から、切頭円錐部分の底部とは反対の方向に延在する。
【0030】
いくつかの実施形態において、中空円筒部分は、スプレーノズルの外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された内径58を有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、この切頭円錐部分及び中空円筒部分は一体式構造体として形成されている。そのようないくつかの実施形態において、遠位端57と近位端48は同じ形状である。
【0032】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターはスプレーノズル及び/又はノズル先端に直接取り付けられている。
【0033】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは噴霧構成要素に直接取り付けられている。
【0034】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは円筒部分を備え、この円筒部分は噴霧構成要素に直接取り付けられている。
【0035】
いくつかの実施形態において、このガスデフレクターは、スプレーノズルの長さを、少なくとも部分的に覆う。いくつかの実施形態において、このガスデフレクターの近位端は、スプレーノズルの長さを、少なくとも部分的に覆う。いくつかの実施形態において、このガスデフレクターの円筒部分は、スプレーノズルの長さを、少なくとも部分的に覆う。
【0036】
いくつかの実施形態において、このガスデフレクターの円筒部分は、スプレーノズルの長さ全体を覆う。
【0037】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、スプレードライ装置の、スプレーノズル以外又はノズル先端以外の部分に取り付けられている。
【0038】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、例えば300Kにおいて2W/(m・K)以下の熱伝導度を有する材料などの断熱材料で形成されている。
【0039】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))からなる群から選択される材料で形成されている。
【0040】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの底部は実質的に、約0.1〜約10mmの範囲の周長を有する円形である。
【0041】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの側面部は、約0.1〜約10mmの範囲の長さ50を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの長さ63、すなわち近位端から遠位端までの距離は、約1〜約10mmの範囲である。
【0043】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの側面部の間の開口角66は、約1〜約180°の範囲である。
【0044】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの中空円筒は、約1〜約10mmの範囲の長さ62を有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターの内側寸法は、スプレーの伝播を妨げないようになっている。
【0046】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの温度は少なくとも100℃である。
【0047】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの温度は約100℃〜約200℃の範囲であり、例えば約140℃である。
【0048】
いくつかの実施形態において、この液体は熱感受性物質を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、この液体は、例えばフィブリノゲンなどのタンパク質などの熱感受性物質を含む、溶液、懸濁液及び乳濁液からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、この液体はタンパク様溶液である。
【0050】
フィブリノゲン及びトロンビンは場合により、初期血液組成物から調製され得る。この血液組成物は、全血、又は血液の一分画、すなわち、血漿のような全血の一分画であり得る。フィブリノゲン及びトロンビンの由来は、自家であってよく、すなわち、患者自身の血液から、プールされた血液から、又は血液分画から製造されたフィブリノゲン及びトロンビンであり得る。トロンビン又はフィブリノゲンは、遺伝子組換え法により調製することもできる。
【0051】
本発明の一実施形態において、フィブリノゲンは、血漿由来のタンパク質溶液である生物学的有効成分(BAC)を含み、場合により、トラネキサム酸等の抗線維素溶解薬剤及び/若しくはアルギニン、リシン、これらの製薬的に許容できる塩類等の安定剤、又はこれらの混合物を更に含む。BACは、場合により、クリオプレシピテート、特に濃縮クリオプレシピテート由来である。
【0052】
「クリオプレシピテート」という用語は、全血から調製される凍結血漿、回収された血漿、又は血漿瀉血により回収された元血漿から得られる、血液成分を指す。クリオプレシピテートは場合により、凍結した血漿を低温、通常は0〜4℃の温度で徐々に解凍すると得られ、結果としてフィブリノゲン及び第XIII因子を含む沈殿物が形成される。沈殿物は、例えば、遠心分離によって収集し、120mMの塩化ナトリウム、10mMのクエン酸三ナトリウム、120mMのグリシン、95mMのアルギニン塩酸塩、1mMの塩化カルシウムを含む緩衝液等の好適な緩衝液に溶解することができる。
【0053】
BACの溶液は、場合により、例えば、米国特許第6,121,232号及びPCT特許公開第WO9833533号に記載されるように、例えば、第VIII因子、フィブロネクチン、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF)、ビトロネクチン等の追加の因子を含む。
【0054】
BACの組成は、場合により、トラネキサム酸及びアルギニン塩酸塩等の安定剤を含む。BACの溶液内のトラネキサム酸の量は、場合により、約80〜約110mg/mLの範囲である。アルギニン塩酸塩の量は、場合により、約15〜約25mg/mLの範囲である。
【0055】
場合により、フィブリノゲン溶液は生理学的適合性を有するpH値に緩衝される。緩衝液は場合により、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び溶媒としての注射用蒸留水を含む。グリシンは場合により、約6〜約10mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在し、クエン酸ナトリウムは場合により、約1〜約5mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在し、塩化ナトリウムは場合により、約5〜約9mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在し、塩化カルシウムは場合により、約0.1〜約0.2mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0056】
本発明の一実施形態において、フィブリノゲンは、例えばBAC組成物などの血液由来である。本発明の別の実施形態において、血液由来成分中のプラスミン及び/又はプラスミノゲンの濃度は、低減される。血液由来成分からのプラスミン及びプラスミノゲンの除去は、米国特許第7,125,569号及びPCT特許公開第WO02095019号に記載のように実行することができる。
【0057】
トロンビン溶液は場合により、ヒトトロンビン(800〜1200IU/mL)、塩化カルシウム、ヒトアルブミン、マンニトール、酢酸ナトリウム、及び注射用蒸留水を含む。いくつかの実施形態において、フィブリノゲン成分の濃度は約60mg/mLであり、トロンビン成分の濃度は約1000IU/mLである。
【0058】
フィブリノゲン及びトロンビン成分は、OMRIX(例えばEVICEL(登録商標)、QUIXIL(登録商標)、ADHEXIL(商標)、EVITHROM(登録商標))、Baxter(例えばTISEEL(登録商標))、CSL(例えばBeriplast(登録商標))などの製造者より入手可能である。一実施形態において、フィブリノゲン及びトロンビン成分は、ヒトを供給源とするプールされた血漿より製造され、1つのバイアル瓶が生物学的有効成分1又は2(BAC1又はBAC2)を含み、別のバイアル瓶がトロンビン成分を含む、2つのバイアル瓶からなる単回使用キットとして提供されている。
【0059】
スプレーノズル先端22の過熱は、液体、又は液体から形成されたスプレーがノズル先端22から出るより前、及び/又は出る時点で、最小限に抑えるか又は防止される。
【0060】
本明細書の教示による乾燥ガスデフレクターの使用は、いくつかの実施形態において、スプレードライ中のタンパク質及びその他の熱感受性物質の変性を低減及び/若しくは防止し、並びに/又は、タンパク質の力価を実質的に維持し、並びに/又は、スプレーノズル先端22の周囲への固体物質の蓄積を低減し、並びに/又は、スプレーパターンの変化及びスプレーノズル先端22の閉塞の可能性を低減若しくは防止する。典型的に、理想的なスプレーパターンは、微細液滴により形成された円錐形を有する。スプレーパターンの何らかの変化、すなわち液滴サイズの急激な増加及び/又はスプレー円錐方向の変化は、スプレー先端、スプレードライヤー筒、又はスプレードライヤー装置の他の部品に、溶質の蓄積を引き起こすことがある。
【0061】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態は、熱感受性物質(例えばタンパク質)を含む溶液のスプレードライを可能にし、比較的高収率で熱感受性物質の乾燥粉末を生成する。
【0062】
製薬組成物の調製に使用するための乾燥粉末は、一般的に溶液の凍結乾燥により調製される。
【0063】
本明細書でタンパク質に関して使用される用語「収率」は、スプレードライ前の溶液のタンパク質力価に比べた、粉末の再構成時のタンパク質(生物学的)力価のパーセンテージである。
【0064】
本明細書で使用される用語「力価」は、物質の有効性、すなわち、望ましい結果を達成する能力を指す。一実施形態において、タンパク質がフィブリノゲンである場合、タンパク質力価は、とりわけ、トロンビン(又は、フィブリノゲンとの反応によりフィブリンを形成することができるタンパク質分解酵素)により開裂されて、フィブリンを形成する潜在能力を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、溶液のフリーズドライ(凍結乾燥とも呼ばれる)とその後の乾燥粉末の摩砕は不要である。
【0066】
「凍結乾燥」という用語は典型的には、溶液を凍結してから、水の濃度を、例えば昇華によって、生物反応又は化学反応を支持しないレベルまで低下させるプロセスを指す。
【0067】
多くの製薬及び手術支援製品が、乾燥薬物を含んでおり、これらは通常、凍結乾燥により液相から乾燥相へと乾燥されている。凍結乾燥された薬物の製造プロセスはバッチプロセスであり、これは通常数日間かかり、凍結乾燥機サイズの容量により制限される。これは、プロセスが完了するまでのかなりの時間の間、乾燥バッチ全体をリスクにさらすことになる。更に、製造される凍結乾燥薬物は「ケーク」の形状であり、これは、粉末を得るために破砕、ふるい、及び/又は摩砕などの更なる加工工程を必要とする。これらの工程は、乾燥製品の力価及び質量収率を低下させ得る。
【0068】
好都合なことに凍結乾燥の代わりにスプレードライプロセスを使用することで、コスト効率が良く、連続的で、高能力のプロセスが提供され、この乾燥生成物は、「ケーク」としてではなく、即座に乾燥粉末の形態で得られる。
【0069】
本明細書において使用するとき、用語「ケーク」又は「固体ケーク」は、凍結乾燥から生じる多孔質及びスポンジ構造様組成物を指す。
【0070】
下記の実施例セクションで示すように、いくつかの実施形態において、スプレードライプロセス中に本明細書の教示による乾燥ガスデフレクターを用いることにより、有利に、均一なスプレーパターンの形成がもたらされ、すなわち、液滴のサイズ及び/又は方向並びに/又は流量がスプレードライプロセス全体を通して変化しない微細液滴のスプレーがもたらされ、これによって、スプレードライされた物質の収率が向上する。
【0071】
本明細書で使用される用語「微細液滴」は、特定のスプレードライ条件下で乾燥ガスに接触すると乾燥されて粉末になり得る液滴を指すことができ、一方、大きな液滴は、同じ条件で乾燥しても粉末にはならなくて、代わりにスプレードライ装置の内壁に付着し、これが乾くとプロセス製品の喪失をもたらし、すなわち、質量収率の低減がもたらされることがある。いくつかの実施形態によれば、「微細液滴」は、1mm以下の直径を有するものである。いくつかの実施形態によれば、「大きな液滴」は、1mmより大きいサイズを有する液滴を指す。
【0072】
本明細書に記述されるいくつかの実施形態の更なる一態様によれば、液体をスプレードライする方法が提供され、この方法は、
本明細書に開示される乾燥ガスデフレクターを含むスプレードライ装置10を設けることと、
この装置のスプレーノズル先端を出る液体から、液滴のスプレーを形成することと、
乾燥ガスの流れを、液滴のスプレーに導くことと、
乾燥ガスデフレクターを用いて、この乾燥ガスの流れを、スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることと、
を含む。
【0073】
本明細書の教示を実施するために、任意の好適な液滴サイズを使用することができる。いくつかの実施形態において、この液滴は1〜1000マイクロメートルの直径を有する。
【0074】
本明細書に開示されるスプレードライ装置又は方法のいくつかの実施形態によれば、
乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることで、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、ノズル先端の任意の方向に最大約5mm以内(例えば、ノズル先端の最大約1mm、最大約2mm、最大約3mm、最大約4mm又は最大約5mm)の空間を加熱することを防止する。
【0075】
本明細書に開示されるスプレードライ装置又は方法のいくつかの実施形態によれば、乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることによって、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、スプレーノズル先端に接触することを防止する。
【0076】
本明細書に開示されるスプレードライ装置又は方法のいくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズル先端が乾燥ガスデフレクターの遠位端44を超えて突出しないように、スプレーノズルに取り付けられている。そのようないくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズルの遠位端の近くの位置において取り付けられている。
【0077】
本明細書で使用される用語「取り付け」とは、直接的又は間接的に固定されることを意味する。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、多角形、円形、及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、その遠位端において開いた底部を備える。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、この開いた底部の辺縁は、多角形(例えば三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、及び十角形からなる群から選択される多角形)、円形及び楕円形からなる群から選択される形状を有する。いくつかの実施形態において、この多角形は星形多角形である。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、この開いた底部は円形の形状を有する。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、遠位端を備えた中空の切頭円錐部分42を含み、これが乾燥ガスデフレクターの遠位端44を構成し、乾燥ガスデフレクターは、円形の形状を有する開いた底部と、開いた底部から近位端48に向かって先細になった側面部46とを含み、この近位端は、スプレーノズルの遠位端の近くでスプレーノズルの一部分の外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された周長を有する開口部49を備える。いくつかの実施形態によれば、開口部49は、噴霧構成要素25を取り囲んで配置されるように構成された周長を有する。
【0083】
いくつかのそのような実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは更に、遠位端57及び近位端59を含む中空円筒部分56を備え、遠位端57は、切頭円錐部分42の近位端48から、乾燥ガスデフレクターの遠位端44から離れる方向(反対方向)に延在し、中空円筒部分56は、スプレーノズルの外側部分を少なくとも部分的に取り囲んで同心状に配置されるよう構成された内径58を有する。そのようないくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターが取り付けられているスプレーノズルの部分は、スプレーノズルの長さの一部分、ノズル先端、噴霧構成要素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、この切頭円錐部分及び中空円筒部分は一体式構造体として形成されている。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、この切頭円錐部分及び中空円筒部分は別々の構造体として形成され、これらは互いに、当該技術分野で周知の任意の方法で連結されている。好適な方法としては、接着剤の使用(例えば、中空円筒部分の遠位縁部/端、及び/又は切頭円錐部分の近位縁部に、接着剤を塗布する)、あるいは、切頭円錐部分と中空円筒部分を、例えば連結要素を用いて(例えば、中空円筒部分の遠位縁部及び/又は切頭円錐部分の近位縁部に、クリップ、タブ、スロット、ねじ切り、ピン、ノブなどを設ける)、並びに/又は、溶接を用いて、嵌合可能なように構成することが挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターはスプレーノズルに直接取り付けられている。そのようないくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、例えば、スプレーノズルを包囲するチューブを用いて、及び/又は、スプレーノズル先端の上の位置でこの周りを取り囲み、乾燥ガスデフレクターを支持する1本又は2本以上のロッドを用いて、スプレーノズル上に保持される。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、液滴形成を妨げないような方法で、スプレーノズルに直接取り付けられている。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは噴霧構成要素に直接取り付けられている。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターのスプレーノズルへの取り付けが、スプレーノズルの外側表面に乾燥ガスデフレクターを設置することを含むように、この乾燥ガスデフレクターの一部分の内径58は、スプレーノズルの外側表面の少なくとも一部分の周りに直接、しっかりフィットするよう構成されてよい。そのようないくつかの実施形態において、この乾燥ガスデフレクターとスプレーノズルのうち一方又は両方が、これら2つを一緒に固定するための部品(例えば、バネ付勢の戻り止めボール又はピン)を含み得る。いくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターが取り付けられているスプレーノズルの外側表面の部分は、スプレーノズル先端の外側表面の一部分である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、このデフレクター及びノズルは別々の構造体として形成され、これらは一方を他方に、液滴形成を妨げないような方法で、当該技術分野で周知の任意の方法で連結される。好適な方法としては、液滴形成を妨げないような方法で、接着剤の使用、あるいは、連結部品の使用(例えば中空円筒部分の遠位縁部及び/又は切頭円錐部分の近位縁部に、クリップ、タブ、スロット、ねじ切り、ピン、ノブなどを設ける)、及び/又は、溶接することが挙げられる。この乾燥ガスデフレクターは、乾燥ガスデフレクターをシリコーンなどのエラストマー材料から形成することによって、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端に連結することができ、この場合、乾燥ガスデフレクターは、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端の外側断面(例えば直径)よりも小さい、内側断面58(例えば直径)を有しており、これによって、乾燥ガスデフレクターの弾性特性により生じる圧力で嵌め合いが達成される。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、このデフレクター及びノズルは、一体式構造体として形成されている。
【0091】
本明細書で使用される用語「エラストマー材料」は、形状記憶を有する材料を指し、例えばゴム、準剛性又は硬質のプラスチックなどの、軟質又は準剛性材料を含む。エラストマー材料の非限定的な例としては、シリコーン、Viton、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、天然ゴム、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))からなる群から選択される材料で形成されている。
【0093】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターを形成する材料は、約30 Shore A〜約70 Shore A、例えば約30 Shore A〜約50 Shore Aの範囲の弾性を有する。
【0094】
Shore Aは、エラストマー性物質の硬度を測定するデュロメータの使用により測定することができる。
【0095】
いくつかのそのような実施形態において、デフレクター58の内側断面は、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端の外側断面よりも、約1%〜約30%(デフレクターの弾性特性に依存する)小さい。
【0096】
いくつかのそのような実施形態において、デフレクターと、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端との間には、物理的な隙間は実質的にない。
【0097】
そのようないくつかの実施形態において、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端及び/又は噴霧構成要素25は、デフレクターがその表面に取り付けられたときに変形しないような、剛性/硬質の材料(例えばステンレス鋼など)で形成されている。
【0098】
そのようないくつかの実施形態において、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端に取り付けられているデフレクターの部分の形状と、デフレクターが取り付け/配置されているスプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端の形状とは、嵌合可能である。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクターの近位端59の内側部分58と、スプレーノズルの外側部分は、それぞれ嵌合可能な部品(例えば、合致するねじ切り、又は合致するピン・溝部品)を備えて提供され、これによって、乾燥ガスデフレクターのスプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端への取り付けは、乾燥ガスデフレクターを、スプレーノズル及び/又はスプレーノズル先端に対して回転させることを含む。
【0100】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、例えば、デフレクターを乾燥チャンバ内壁、乾燥チャンバ近位端、又はスプレードライヤー装置の他の任意の部分に連結することにより、スプレーノズルに間接的に固定され、これによってデフレクターは、上述のように機能することができる。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、スプレードライ装置の、スプレーノズル以外又はスプレーノズル先端以外の部分に取り付けられる。例えば、いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターはスプレーノズル上には取り付けられず、スプレーノズル先端が乾燥ガスデフレクターの遠位端を超えて突出しないように、スプレーノズル先端と乾燥ガスの流れとの間の位置に設置される。そのような実施形態において、この乾燥ガスデフレクターは、例えば、開いた平坦な又は湾曲した表面を含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは例えば、300Kにおいて2W/(m・K)以下(例えば0.5W/(m・K)以下、1W/(m・K)以下、1.5W/(m・K)以下)の熱伝導度を有する材料などの断熱材料で形成されている。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターは、その遠位端44において開いた底部を備え、この開いた底部は実質的に円形であり、約0.1〜約10mm、約1〜約50mm、約5〜約15mm、好ましくは約6〜約10mmの範囲の、例えば6mm、7mm、8mm、9mm又は10mmの周長を有する。
【0104】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクター40の側面部46の長さ50は、約0.1〜約10mm、約0.5〜約7mm、約1〜約5mm、好ましくは約2〜約4mmの範囲で、例えば約2mm、約3mm、約4mmであり、より好ましくは約2.9mmである。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、遠位端44の開いた底部の周長と、側面部46の長さ50との比は、約1:100〜約100:1の範囲であり、例えば約1:7〜約100:1、1:1〜5:1、又は約1.5:1〜約5:1の範囲である。いくつかの実施形態において、この比は約3.45:1である。
【0106】
そのようないくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターの側面部は、開口角66が、約0〜約180°、約1〜約180°、約20〜約170°、約40〜約160°、約60〜約150°、約80〜約140°、約100〜約130°、約110〜約120°、好ましくは約115〜約120°の範囲であり、例えば115°、116°、117°、118°、119°又は120°であり、より好ましくは約118°である。
【0107】
いくつかの実施形態によれば、乾燥ガスデフレクター40の長さ63、すなわち、乾燥ガスデフレクターの第1の端(遠位端)から第2の端(近位端)までの距離は、約1〜約10mm、約2〜約8mm、好ましくは約3〜約7mmの範囲であり、例えば約3mm、約4mm、約5mm、約6mm又は約7mmであり、より好ましくは約6.5mmである。
【0108】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターの中空円筒の長さ62は、約1〜約10mm、約1.5〜約5mm、好ましくは約2〜約3mmの範囲であり、例えば約2.1mm、約2.2mm、約2.3mm、約2.4mm、約2.5mm、約2.6mm、約2.7mm、約2.8mm、約2.9mm又は約3mmであり、より好ましくは約2.5mmである。
【0109】
いくつかの実施形態によれば、デフレクター40の長さ63と、円筒部分56の長さ62との比は、約1:10〜約10:1、例えば約1:2.5〜約5.33:1、約1:1〜約2.33:1の範囲である。いくつかの実施形態において、この比は約2.6:1である。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスデフレクターの内側及び/又は外側寸法は、スプレーの伝播を妨げないようになっている。
【0110】
本方法のいくつかの実施形態によれば、この液体は、タンパク質(例えばフィブリノゲン)などの熱感受性物質を含む。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、この液体は、この熱感受性物質を含む、溶液、懸濁液及び乳濁液からなる群から選択される。
【0112】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は約50℃〜約200℃の範囲である。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は、約100℃〜約200℃、約120℃〜約180℃、約140℃〜約170℃の範囲である。いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は、少なくとも100℃であり、例えば140℃である。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、この乾燥ガスの温度は約140℃である。
【0114】
本明細書で使用される用語「乾燥ガスデフレクター」は、スプレードライ装置内の乾燥ガスの流れの向きを、スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させる装置を指す。
【0115】
いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの流れの方向は、元の方向に対して、最大約90°、最大約80°、最大約70°、最大約60°、又は最大約50°、偏向される。いくつかの実施形態において、この乾燥ガスの流れの方向は、最大約59°偏向される。
【0116】
一実施形態において、乾燥ガスの流れをスプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることにより、乾燥ガス出口から出る乾燥ガスが、ノズル先端から最大約5mm以内(例えば、ノズル先端の最大約1mm、最大約2mm、最大約3mm、最大約4mm又は最大約5mm)の空間を加熱することを、最小限に抑えるか、及び/又は防止する。
【0117】
本明細書で使用される用語「熱感受性物質」は、加熱されたときに、構造変化及び/又は力価の低下を被る可能性がある、化学的又は生物学的力価を有する材料(例えばタンパク質)を指す。構造変化には、変性、凝集、及び/又は重合が挙げられるがこれらに限定されない。
【0118】
本明細書において使用するとき、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、及びその文法的変形は、記載される特徴、完成体、工程、又は構成要素を特定するものとして理解されるが、1つ以上の追加的特徴、完全体、工程、構成要素、又はこれらの群の追加を排除するものではない。これらの用語は、用語「〜からなる」、及び「〜から本質的になる」を包含する。
【0119】
本明細書において使用するとき、不定冠詞「a」及び「an」は、文脈が明確にそうでない旨を表さない限り、「少なくとも1つの」又は「1つ又は2つ以上の」を意味する。
【0120】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、±10%を指す。
【0121】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。加えて、記載、材料、方法、及び実施例は、単に例示的なものであり、限定することを意図するものではない。本発明を実施する上で、本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、本明細書において記載される。図面と共に説明を読むことにより、本発明のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかということが、当業者にとって明らかとなる。図面は、例示的な記載の目的のためであり、実施形態における構造の詳細を、本発明の基本的理解に必要である以上に詳細に示そうとするものではない。明確性のため、図面に示されるいくつかの物体は、縮尺通りではない。
【0123】
図面において、
図1】(先行技術)先行技術のスプレードライ装置の模式図である。
図2】(先行技術)図1のスプレードライ装置の一部分の模式図であり、先行技術のスプレードライノズルを示す。
図3】本発明の原理による乾燥ガスデフレクターの一実施形態の模式図であり、断面が示されている。
図4A図3の乾燥ガスデフレクターの、斜視図、近位端図、側面図、及び遠位端図の概略表示である。
図4B図3の乾燥ガスデフレクターの、斜視図、近位端図、側面図、及び遠位端図の概略表示である。
図4C図3の乾燥ガスデフレクターの、斜視図、近位端図、側面図、及び遠位端図の概略表示である。
図4D図3の乾燥ガスデフレクターの、斜視図、近位端図、側面図、及び遠位端図の概略表示である。
図5図3の乾燥ガスデフレクターと、この乾燥ガスデフレクターが取り付けられるスプレーノズルの、模式図である。
図6】スプレーノズルに取り付けられた、図3の乾燥ガスデフレクターの模式図である。
図7】スプレーノズルに間接的に取り付けられた乾燥ガスデフレクターを備えるスプレードライ装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0124】
本発明は、このいくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクターを含むスプレードライ装置とその使用方法に関するものである。
【0125】
本明細書における教示の原理、使用法、及び実施は、添付の記載を参照してよりよく理解され得る。この記載を精査することにより、当業者は、過度な努力又は実験を行うことなく、本発明を実施することができる。
【0126】
少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、理解されたいこととして、本発明は、その用途において、以下の説明に記載した各構成要素及び/又は方法の構造又は構成の詳細に必ずしも限定されない。本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法によって実行又は実施することが可能である。
【0127】
本明細書において使用される表現及び用語は、記述的目的のためであり、限定としてみなされるべきではない。
【0128】
図3は、本発明の原理による乾燥ガスデフレクター40の例示的な一実施形態の模式図であり、この図は、遠位端を有する中空の切頭円錐部分42を含み、この接頭円錐部分が乾燥ガスデフレクター44の遠位端を構成し、乾燥ガスデフレクターは、円形の辺縁を備えた開いた底部と、近位端48に向かって内向きに先細になった側面部46と、遠位端44よりも小さい寸法を有する近位端48とを含み、近位端48は、乾燥ガスデフレクターが取り付けられる遠位端20の近くで、スプレーノズル14の一部分の外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された周長を有する開口部49を備える。乾燥ガスデフレクター40の側面部46は、長さ50及び厚さ52を有する。切頭円錐部分42の開いた底部を備える乾燥ガスデフレクター40の遠位端44は、直径54を有する。
【0129】
乾燥ガスデフレクター40は更に、遠位端57及び近位端59を含む中空円筒部分56を備え、遠位端57は、切頭円錐部分42の近位端48から、乾燥ガスデフレクター40の遠位端とは反対の方向に延在する。中空円筒部分56は、乾燥ガスデフレクターが取り付けられるスプレーノズル14の一部分の周囲に同心状に配置されるようなある内径と、外径60と、長さ62と、壁の厚さ64とを備えた、円形開口部49を有する内径58を有する。
【0130】
図3に示す例示的な一実施形態において、乾燥ガスデフレクター40の遠位端44の外径54(乾燥ガスデフレクター40の切頭円錐部分42の開いた底部を含む)は10mmであり、側面部46は2.9mmの長さ50と、1mmの厚さ52を有し、側面部46は、相対する部分46a及び46b(図3の側断面図に示す)の間に約118°の開口角66を設けるよう構成され、すなわち、ガスデフレクターが取り付けられるスプレーノズルの長手方向軸67から59°となるように構成される。中空の円筒部分56は、約3mmの内径58、約5mmの外径60、約2.5mmの長さ62、及び約1mmの壁の厚さ64を有する。
【0131】
図4A〜4Dは、図3の例示的な乾燥ガスデフレクター40の概略表示であり、それぞれ、遠位端44を向けた斜視図(図4A)、近位端59側の図(図4B)、側面図(図4C)、及び遠位端44側の図(図4D)である。
【0132】
図5は、上述の例示的な乾燥ガスデフレクター40と、乾燥ガスデフレクター40が取り付けられるスプレーノズル14の模式図であり、乾燥ガスデフレクターはスプレードライノズル先端22を包囲するよう遠位部分の上にスライドして取り付けられる。図5に示すように、乾燥ガスデフレクター40の中空円筒部分56の近位端59は、スプレーノズル14の遠位端に位置する噴霧構成要素25の周りに同心状に配置されるよう構成される。
【0133】
図5に示す実施形態において、乾燥ガスデフレクター40の中空円筒部分56の近位端59は、スプレーノズル14の遠位端の外側部分の周りに直接しっかりとフィットするよう構成され、これにより、乾燥ガスデフレクター40をスプレーノズル14に取り付けることは、乾燥ガスデフレクターを、スプレーノズル14の遠位端に押し込むことを含む。場合により、スプレーノズル14と乾燥ガスデフレクター40の中空円筒部分56とは、相互に嵌合可能な部品(例えば適合するねじ部)を備えて提供されてよく、これにより、乾燥ガスデフレクター40をスプレーノズル14に取り付けることは、乾燥ガスデフレクター40をスプレーノズル14に対して回転させることを含む。
【0134】
図5に示すように、乾燥ガスデフレクター40を取り付ける前は、スプレーノズル14の遠位端に、乾燥ガス導管16(図1を参照、図5には図示されていない)からの乾燥ガスは、スプレーノズル14の長手方向軸に対して実質的に平行に流れ、矢印68に示す方向に、スプレードライノズル先端22を通過し、よってノズル先端22はこの乾燥ガスによって加熱される。
【0135】
図6は、スプレーノズル14の遠位端に取り付けられた乾燥ガスデフレクター40の模式図である。スプレードライノズル先端22は、乾燥ガスデフレクター40の切頭円錐部分42により画定される中空部分内に配置され、この切頭円錐部分42の遠位端44を超えて突出していない。乾燥ガス導管16からの乾燥ガスは最初、スプレーノズル14の長手方向軸に実質的に平行に流れる。この乾燥ガスの流れは、切頭円錐部分42の側面部46の外側表面に当たると、矢印70で示す方向に、外向きに偏向され、ノズル先端22から離れる。乾燥ガスデフレクター40は断熱材として機能し、ノズル先端22、及び/又は、乾燥ガスデフレクターの切頭円錐部分42の側面部46により画定される内側体積が、高温の乾燥ガスにより実質的に加熱されることを防ぐ。
【0136】
いくつかの実施形態において、乾燥ガスデフレクター40を備えたスプレードライは、温度を約25%〜90%低下させる。いくつかの実施形態において、ノズル先端22の温度は、約40%〜50%低下する。いくつかの実施形態において、内側体積の温度は、約25%〜30%低下する。そのような実施形態において、この低下パーセンテージは、スプレードライプロセス中にデフレクターを使用せずに同じ場所で測定した、高温乾燥ガスの温度に比較したものである。
【0137】
図7は、乾燥ガスデフレクター40を含むスプレードライ装置10の模式図であり、この乾燥ガスデフレクター40は、例えば、デフレクターを乾燥チャンバ内壁、乾燥チャンバ近位端、又はスプレードライヤー装置の他の任意の部分に連結することにより、スプレーノズルに間接的に固定され、これによってデフレクターは、上述のように機能することができる。
【実施例】
【0138】
材料及び方法
それぞれ本明細書の教示の一実施形態による、3つの異なる乾燥ガスデフレクター40が提供された。具体的には、それぞれ外径54が6mm、8mm及び10mmの遠位端44を有する乾燥ガスデフレクター40a、40b、及び40cが提供された。直径54を6mm、8mm又は10mmのいずれかにできるようにするために、長さ50も変更された。他の寸法はすべて、図3に関して上述した通りであった。
【0139】
スプレーノズル14のための循環冷水機構(図2に示す)を含むスプレードライ装置10(4M8 trix、Procept、Belgium)を、メーカーの使用説明書に従って使用し、スプレードライプロセス中は下記の設定を用いた。
流入ガス流量:0.3m/分、
流入空気温度:140℃、
流入循環冷水温度:5℃、及び
ノズルアトマイジング空気流量:11L/m。
【0140】
スプレーノズル先端は、直径1.2mmのオリフィスを有していた。
【0141】
実施例1:スプレーノズルに取り付けられた乾燥ガスデフレクターの、スプレードライ中の温度に対する影響。
各実験において、3つの乾燥ガスデフレクター40a、40b、40cのうち1つを、実質的に図6に示すようにスプレーノズル14に取り付けた。乾燥ガスは、乾燥ガス導管16内に温度140℃で通し、液体導管24を通過する液体はなかった。ガスデフレクター40a、40b、40cそれぞれについて、スプレーノズル先端22に対して異なる位置A、B、C及びDでの温度が測定された。比較対照として、位置A、B、C及びDそれぞれの温度を、乾燥ガスデフレクターがない状態で測定した。
【0142】
位置A、B及びCは、スプレーノズルの長手方向軸に沿った位置を表わす:ノズル先端22(A)、ノズル先端22から1mm下(B)、及びノズル先端22から5cm下(C)。位置Dは、ノズル先端22から5cm下で、軸から約5cm外れた位置であり、これは、スプレードライ装置10の操作中に生成される液体スプレーの外縁に近い。位置A及びBは、ガスデフレクター40a、40b、40cの切頭円錐部分42の側面部46により画定される内側体積の中にあり、位置C及びDはこの体積の外側にある。位置Dは、スプレーノズル14の長手方向軸の外側にある。位置C及びDは、ノズル先端22を出る液体から形成されたスプレーの乾燥が起こる点を表わす。
【0143】
温度測定は、データロガーTM−747D(MRC、Israel)及び空気熱電対ワイヤ(タイプT、MRC、Israel)を含む熱電対装置を用いて、下記のように実施された。
【0144】
ガイドワイヤ(熱電対ワイヤを定位置に配置するのに用いられる)を液体導管24を通して挿入し、センサを位置A、B、C及びDに配置した。温度センサは、センサの遠位端以外をシリコーンチューブで覆った。センサの遠位端は露出したままであり、温度測定のために構成されていた。
【0145】
表1は、スプレーノズル14に取り付けられた乾燥ガスデフレクター40がある場合とない場合に測定された、異なる場所での温度を℃で示す。デフレクターがない場合の温度と比較した、デフレクターを使用した場合の温度の低下を、カッコ内に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
この結果、本明細書の教示による乾燥ガスデフレクター40a、40b又は40cがスプレーノズル14の噴霧構成要素25に取り付けられた場合、スプレーノズル先端22(位置A)での温度は、62℃から、31℃〜35℃へと低下した(温度が44〜50%低下)。この温度では、スプレードライプロセス中に使用される短い加熱時間中には、実質的なタンパク質変性は起こらない。スプレーノズル先端22(位置B)から1mmの距離では、温度低下程度は少なくなり、56℃から、40℃〜42℃への低下が観察された(25〜29%低下)。スプレーノズル先端22(位置C)から5cmの距離では、110℃から、45℃〜50℃への温度低下が観察され(55〜59%低下)、位置Dでは(この位置では、乾燥ガスの変更は起こらないと考えられる)、ガスデフレクター40a、40b、又は40cがある状態で、顕著な低下は観察されなかった(5〜9%低下)。これにより、スプレーの乾燥は、この位置での望ましくない温度低下による影響を受けない。
【0148】
実施例2:スプレーノズルに取り付けられた乾燥ガスデフレクターの、スプレードライ中のタンパク質溶液のスプレーパターンに対する影響。
40mLのフィブリノゲン含有溶液、BAC2(EVICEL(登録商標)フィブリンシーラントを、等容積の二段蒸留水(DDW)で希釈したもの)(フィブリノゲン濃度30mg/mLを有し、総タンパク質濃度は50mg/mL)を、スプレーノズル14に乾燥ガスデフレクター40cを取り付けて、上述のようにスプレードライした。
【0149】
このフィブリノゲン含有溶液が、液体導管24に、流量400mL/時で供給され、スプレーパターン(スプレーの形状)に対する影響を目視検査した。
【0150】
比較対照として、乾燥ガスデフレクター40がない状態でのスプレーパターンを観察した。
【0151】
乾燥ガスデフレクター40cがない状態で、フィブリノゲン含有溶液30mLを上述の条件でスプレードライした後は、粒子の凝集がノズル先端22の縁部に観察された。その結果、時間が経つと、スプレーパターンは対称的な円錐形状からずれることが観察され、液滴が乾燥筒12の内側表面に蓄積した。また、時間が経つと、生成される液滴のサイズが増大したことが観察され、これにより、スプレードライプロセスの開始時に観察された微細液滴ではなく、大きな液滴が生成された。
【0152】
スプレードライの完了時に、スプレーノズル先端22は、スプレーノズル先端22のオリフィスを調べた。スプレーノズル先端22のオリフィスに、固体物質が詰まっていたことが観察された。
【0153】
次に、10mmの外径54を備えた遠位端44を有する乾燥ガスデフレクター40cを、スプレーノズル14に取り付け、フィブリノゲン含有溶液を上述のようにスプレードライした。乾燥ガスデフレクター40cをスプレーノズル14に取り付けた状態で、40mLのフィブリノゲン含有溶液を上述のようにスプレードライした。均一な円錐形のスプレーパターンが観察され、元の方向からのスプレー流のずれは見られなかった。液滴のサイズは不変であり、プロセス全体を通じて微細であり、乾燥筒12の壁に液体又は固体の蓄積は観察されなかった。スプレードライの完了時に、スプレーノズル先端22を調べ、スプレーノズル先端22のオリフィスがクリーンであり、固体物質がないことが観察された。
【0154】
本発明は、その特定の実施形態と共に記載されてきたが、多くの代替、修正、及びバリエーションが、当業者には明白であることが、明らかである。したがって、添付の請求項の範囲内である、これらの代替、修正、及びバリエーション全てを包含することが意図される。
【0155】
本出願のいずれの参照文献の引用又は指定も、このような文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0156】
〔実施の態様〕
(1) スプレードライ装置(10)であって、
(i)近位端(18)及び遠位端(20)を有するスプレーノズル(14)であって、該スプレーノズルが、
該スプレーノズルの該遠位端にあるスプレーノズル先端(22)と、
スプレードライされる液体を該スプレーノズル先端から外へ導くための液体導管(24)と、
該スプレーノズルを出る該液体から液滴のスプレーを生成するための噴霧構成要素(25)と、
を備える、スプレーノズル、
(ii)該液滴のスプレーを乾燥させるための乾燥ガスを導くための、出口(28)を備える乾燥ガス導管(16)、
及び、
(iii)該乾燥ガスの流れを該スプレーノズル先端から離れる方向に偏向するよう配置された、乾燥ガスデフレクター(40)、を備える、スプレードライ装置。
(2) 液体をスプレードライする方法であって、
実施態様1に記載のスプレードライ装置(10)を設けることと、
スプレーノズル先端(22)から、液滴のスプレーとして液体をスプレーすることと、
乾燥ガスの流れを、該液滴のスプレーに導くことと、
前記乾燥ガスデフレクターを用いて、該乾燥ガスの流れを、該スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることと、
を含む、方法。
(3) 前記噴霧構成要素が、噴霧ガスの流れを噴霧ガス出口から外へ導き、前記スプレーノズル先端から出る液体に接触させるための、噴霧ガス導管を備える、実施態様1又は2に記載のスプレードライ装置又は方法。
(4) 前記乾燥ガスの流れを前記スプレーノズル先端から離れる方向に偏向させることにより、前記乾燥ガス出口から出る該乾燥ガスが、該スプレーノズル先端の任意の方向に最大3mm以内の空間を、加熱することを防止する、実施態様1〜3のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(5) 前記乾燥ガスデフレクターが、遠位端において、開いた底部を備える、実施態様1〜4のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
【0157】
(6) 前記乾燥ガスデフレクターは、前記スプレーノズル先端が該乾燥ガスデフレクターの前記遠位端(44)を超えて突出しないように、前記スプレーノズルの前記遠位端に近い位置において該スプレーノズルに取り付けられている、実施態様1〜5のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(7) 前記乾燥ガスデフレクターが、多角形、円形、及び楕円形からなる群から選択される形状を有する、実施態様1〜6のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(8) 前記開いた底部の辺縁が、多角形、円形及び楕円形からなる群から選択される形状を有する、実施態様5に記載のスプレードライ装置又は方法。
(9) 前記多角形が、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、及び十角形からなる群から選択される、実施態様7又は8に記載のスプレードライ装置又は方法。
(10) 前記多角形が星形多角形である、実施態様7又は8に記載のスプレードライ装置又は方法。
【0158】
(11) 前記乾燥ガスデフレクターが、円形の開いた底部を有する中空の切頭円錐部分(42)と、近位端(48)に向かって先細になる側面部(46)とを含み、該近位端は、前記スプレーノズルの前記遠位端の近くの位置の外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された周長を有する開口部(49)を備える、実施態様1〜10のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(12) 前記乾燥ガスデフレクターが更に、遠位端(57)及び近位端(59)を含む中空円筒部分(56)を備え、該遠位端は、前記切頭円錐部分の前記近位端から、該切頭円錐部分の前記底部とは反対の方向に延在する、実施態様11に記載のスプレードライ装置又は方法。
(13) 前記中空円筒部分が、前記スプレーノズルの外周を少なくとも部分的に取り囲んで配置されるように構成された内径(58)を有する、実施態様12に記載のスプレードライ装置又は方法。
(14) 前記切頭円錐部分及び前記中空円筒部分が、一体式構造体として形成されている、実施態様13に記載のスプレードライ装置又は方法。
(15) 前記乾燥ガスデフレクターが、前記スプレーノズル及び/又は前記ノズル先端に直接取り付けられている、実施態様1〜14のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
【0159】
(16) 前記乾燥ガスデフレクターが、前記噴霧構成要素に直接取り付けられている、実施態様1〜14のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(17) 前記乾燥ガスデフレクターが、前記スプレードライ装置の、前記スプレーノズル以外又は前記ノズル先端以外の部分に取り付けられている、実施態様1〜14のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(18) 前記乾燥ガスデフレクターが断熱材料で形成されている、実施態様1〜17のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(19) 前記材料が、300Kにおいて、2W/(m・K)以下の熱伝導度を有する、実施態様18に記載のスプレードライ装置又は方法。
(20) 前記乾燥ガスデフレクターが、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))からなる群から選択される材料で形成されている、実施態様1〜19のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
【0160】
(21) 前記乾燥ガスデフレクターの前記底部が、約0.1〜約10mmの範囲の周長を有する実質的に円形である、実施態様5〜20のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(22) 前記乾燥ガスデフレクターの前記側面部が、約0.1〜約10mmの範囲の長さ(50)を有する、実施態様5〜21のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(23) 前記乾燥ガスデフレクターの前記近位端から前記遠位端までの距離(63)が、約1〜約10mmの範囲である、実施態様5〜22のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(24) 前記乾燥ガスデフレクターの前記側面部の間の開口角(66)が、約1〜約180°の範囲である、実施態様5〜23のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(25) 前記乾燥ガスデフレクターの前記中空円筒部分が、約1〜約10mmの範囲の長さ(62)を有する、実施態様12〜24のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
【0161】
(26) 前記乾燥ガスデフレクターの前記内側寸法が、スプレーの伝播を妨げないようになっている、実施態様1〜25のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(27) 前記液体が熱感受性物質を含む、実施態様1〜26のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(28) 前記液体が、前記熱感受性物質を含む、溶液、懸濁液及び乳濁液からなる群から選択される、実施態様27に記載のスプレードライ装置又は方法。
(29) 前記熱感受性物質がタンパク質である、実施態様27又は28に記載のスプレードライ装置又は方法。
(30) 前記タンパク質がフィブリノゲンを含む、実施態様29に記載のスプレードライ装置又は方法。
【0162】
(31) 前記乾燥ガスの温度が、少なくとも100℃である、実施態様1〜30のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
(32) 前記乾燥ガスの温度が、約100℃〜約200℃の範囲である、実施態様31に記載のスプレードライ装置又は方法。
(33) 前記乾燥ガスの温度が約140℃である、実施態様32に記載のスプレードライ装置又は方法。
(34) 前記中空の切頭円錐部分の前記遠位端の前記開いた底部の前記周長と、該中空の切頭円錐部分の前記側面部の長さとの比が、約1:100〜約100:1の範囲である、実施態様11〜33のいずれかに記載のスプレードライ装置又は方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7